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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1269150
審判番号 不服2012-8736  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-14 
確定日 2013-01-24 
事件の表示 特願2006-216669「凹版印刷機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月21日出願公開、特開2008- 37037〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年8月9日の出願であって、平成23年9月12日付けの拒絶理由通知に対して、同年11月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年2月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年11月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「シート状物の一方の面に凹版印刷を施す第一の凹版印刷部と、
前記第一の凹版印刷部で凹版印刷を施された前記シート状物の一方の面を乾燥する第一の乾燥手段と、
前記第一の乾燥手段で乾燥された前記シート状物に凹版印刷を施す第二の凹版印刷部と、
前記第二の凹版印刷部で前記シート状物に施す凹版印刷を当該シート状物の一方の面と他方の面とのいずれかに切り換えできるように、前記第一の凹版印刷部から前記第二の凹版印刷部へ前記シート状物を受け渡す印刷面切換手段と
を備えていることを特徴とする凹版印刷機。」

3 引用刊行物及び引用発明
原審の拒絶の査定に引用された、本願出願前に頒布された特開2004-34641号公報(以下「刊行物」という。)には、次の記載が図(特に図4、図11参照)とともにある。
以下、下線は審決にて付すものである。
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】
本発明は1つの機械フレ-ムに用紙給紙装置と、少なくとも2つの印刷形式が異なる印刷機構で構成される印刷モジュ-ル集合体、または前記少なくとも2つの印刷モジュ-ル集合体及び検査モジュールと、排紙装置とを連接し、製品の仕様に応じて各モジュ-ルを取り外し、取り付け又は順序を入れ替えて印刷するモジュ-ルで構成された印刷機械及びその印刷方法に関する。」
イ 段落【0014】1?8行
「図1は、本発明によるモジュ-ルで構成された印刷機械の一概略構成図である。機械フレ-ム(1)上に、1つの用紙供給装置(2)と、1つの排紙装置(3)と、印刷モジュ-ル(4)(3つのボックス)を配置した例である。この印刷モジュ-ル(4)は、ユニット型胴配列のオフセット印刷モジュール(A)、サテライト型胴配列のオフセット印刷モジュール(B)、凹版印刷モジュール(C)、スクリーン方式の印刷モジュール(D)及びグラビア方式の印刷モジュール(E)と、検査モジュ-ル(F)と、どのモジュ-ルの組み合わせでも良く、製品の仕様に応じて組み合わせを決定し、リフトで吊り上げることにより、取り付け、取り外し及び入れ替えを行う。」
ウ 段落【0022】
「図4は、凹版方式の印刷モジュ-ル(C)の概略構成図である。この場合の印刷モジュ-ルは、少なくとも1つ以上の凹版版面(図示せず)を把持した凹版胴(19)と、該凹版胴に連接する圧胴(20)と、該凹版胴に連接するワイピングロ-ラ(21)と、該凹版胴と連動しインキ付けを行うインキ付けロ-ラ(22)と、インキ付けロ-ラ(22)にインキを供給するインキ供給ロ-ラ(23)とを備える凹版印刷用の印刷モジュ-ルであって、用紙供給装置(図示せず)または別の印刷モジュ-ルから供給された枚葉紙(図示せず)を紙渡胴(24)を介して圧胴(20)に受け渡し、予め版面(図示せず)にインキ付けロ-ラ(22)でインキが着肉され、ワイピングロ-ラ(21)で非画線部のインキを拭き取り、印刷状態になった凹版胴(19)との間を印刷に適した圧力を加えながら通過することで枚葉紙に凹版版面の画線部に残ったインキを転移させ、印刷を行う。その後、枚葉紙は搬送用デリバリ(25)に受け渡され、乾燥胴(26)に搬送される。乾燥胴(26)には枚葉紙を保持するグリッパー機構が組み込まれており、枚葉紙を保持したまま乾燥装置(27)を通過する。乾燥装置(27)はUV光による乾燥機構を備えており、枚葉紙に転写された画線部のインキを乾燥させる。この凹版印刷モジュールでは表面に3色の凹版印刷が行える。」
エ 段落【0031】1?5行
「(第1の実施の形態) 図8は、1つの機械フレーム(1)上に用紙供給装置(2)、2つのユニット型胴配列の印刷モジュ-ル(A)、凹版印刷モジュ-ル(C)、検査モジュ-ル(F)及び排紙装置(3)を配置した印刷機械の実施例である。用紙供給装置(2)から供給された枚葉紙(図示せず)は、1番目のユニット型胴配列の印刷モジュ-ル(A)に渡され、表面3色、裏面3色の計6色の印刷を行う。」
オ 段落【0035】
「(第4の実施の形態) 図11は、前記第1の実施の形態における凹版印刷モジュール(C)と、検査モジュール(F)の間にグラビア印刷モジュール(E)を取り付けた構成とした印刷機械の実施例であり、この印刷機械では裏面にオフセット印刷6色、表面にオフセット印刷6色+凹版印刷3色+グラビア印刷1色の印刷が1回通しで行うことができる。」

上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「1つの機械フレ-ムに、用紙給紙装置と少なくとも2つの印刷モジュ-ル集合体及び検査モジュールと排紙装置とを連接した印刷機械であって、
1つの用紙供給装置と、1つの排紙装置と、印刷モジュ-ルを配置し、前記印刷モジュ-ルは、ユニット型胴配列のオフセット印刷モジュール(A)、サテライト型胴配列のオフセット印刷モジュール(B)、凹版印刷モジュール(C)、スクリーン方式の印刷モジュール(D)及びグラビア方式の印刷モジュール(E)と、検査モジュ-ル(F)の内、どのモジュ-ルの組み合わせでも良く、製品の仕様に応じて組み合わせを決定するものであり、
前記凹版印刷モジュ-ル(C)は、凹版胴と該凹版胴に連接する圧胴とを備え、用紙供給装置または別の印刷モジュ-ルから供給された枚葉紙を紙渡胴を介して圧胴に受け渡し、印刷状態になった凹版胴との間を印刷に適した圧力を加えながら通過することで枚葉紙に印刷を行い、その後、枚葉紙は搬送用デリバリに受け渡され、乾燥胴に搬送され、乾燥胴は枚葉紙を保持したまま乾燥装置を通過するものであり、
印刷モジュ-ルの組み合わせの一例として、
1つの機械フレームに、用紙供給装置、2つのユニット型胴配列の印刷モジュ-ル(A)、凹版印刷モジュ-ル(C)、グラビア印刷モジュール(E)、検査モジュ-ル(F)及び排紙装置を配置した印刷機械があり、この印刷機械では、裏面にオフセット印刷6色、表面にオフセット印刷6色+凹版印刷3色+グラビア印刷1色の印刷が1回通しで行うことができる、
印刷機械。」

4 対比
本願発明と引用発明とを比較する。
a 引用発明の「枚葉紙」は、本願発明の「シート状物」に相当し、同様に、「凹版印刷モジュール」は「第1の凹版印刷部」に、「乾燥装置」は「乾燥手段」に、それぞれ相当する。
b 引用発明において、「凹版印刷モジュール」は、枚葉紙の一方の面に凹版印刷を施し、且つ、凹版印刷した一方の面を、乾燥装置が乾燥することは明らかである。
c 引用発明における「グラビア印刷モジュール」が凹版印刷の一種であることは言うまでもなく、且つ、「凹版印刷モジュール」の下流に配置されているから、引用発明の「グラビア印刷モジュール」は、本願発明の「第2の凹版印刷部」に相当する。
d 引用発明の「グラビア印刷モジュール」が、「凹版印刷モジュール」により凹版印刷した一方の面を乾燥装置で乾燥させた枚葉紙に、印刷を施していることは明らかである。
e 引用発明の「印刷機械」は、枚葉紙を印刷するについて、「凹版印刷モジュ-ル」と「グラビア印刷モジュール」とを備えるもの、即ち、「第1の凹版印刷部」と「第2の凹版印刷部」とを備えるものであるから、「凹版印刷機」と言い換えることができ、又、そのように言い換えても矛盾はない。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点を有するものである。
[一致点]
シート状物の一方の面に凹版印刷を施す第一の凹版印刷部と、
前記第一の凹版印刷部で凹版印刷を施された前記シート状物の一方の面を乾燥する第一の乾燥手段と、
前記第一の乾燥手段で乾燥された前記シート状物に凹版印刷を施す第二の凹版印刷部と、
を備えていることを特徴とする凹版印刷機。
[相違点]
本願発明が、「前記第二の凹版印刷部で前記シート状物に施す凹版印刷を当該シート状物の一方の面と他方の面とのいずれかに切り換えできるように、前記第一の凹版印刷部から前記第二の凹版印刷部へ前記シート状物を受け渡す印刷面切換手段」を備えているのに対して、引用発明では、そのような切換手段について特に記載がない点。

5 判断
印刷の多様化に伴ない、一台で片面刷と両面刷とに使い分けることのできるように、枚葉印刷機において2つの印刷機構の間に印刷面切換手段を設けることは、例えば、特公平6-41202号公報(〔従来の技術〕、図12、13等参照)、特開平2-72952号公報(〔従来の技術〕特に3頁左下欄参照)、特開2001-322243号公報(【従来の技術】特に段落【0004】参照)等に記載されるように、周知の技術事項である。
即ち、上記相違点に係る「印刷面切換手段」自体は、周知の技術事項である。
なお、この点に関し、請求人は、「印刷面切換手段」が公知の構造であることを認めている(本願明細書の段落【0015】参照)。

そこで、上記周知の「印刷面切換手段」を、引用発明の凹版印刷モジュール(第1の凹版印刷部)とグラビア印刷モジュール(第2の凹版印刷部)との間に設置することの容易想到性について検討する。
引用発明は、印刷モジュールについて、「どのモジュ-ルの組み合わせでも良く、製品の仕様に応じて組み合わせ」ることができるものであるところ、製品の仕様として、片面印刷か両面印刷か、一色刷りか多色刷りか、印刷方式として何を選択するか、表・裏面で印刷方式を変えるのか否か、表・裏面の印刷について印刷順序をどうするか、等々、種々の態様があることは言うまでもない。
引用発明では、前後して設置された凹版印刷モジュ-ルとグラビア印刷モジュールとは、どちらも枚葉紙の表面に印刷を施す(凹版印刷3色+グラビア印刷1色)ものであるところ、上記のとおり、製品の仕様には種々の態様が含まれるから、凹版印刷とグラビア印刷とにより、枚葉紙の表面と表面を、表面と裏面を印刷することは、当業者にとって普通に想定し得る技術事項であり、且つ、それらの印刷を1台の印刷機で行えるようにすることは自明の課題であるから、上記周知の「印刷面切換手段」を、凹版印刷モジュールとグラビア印刷モジュールとの間に設置することは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
結局、本願発明の上記相違点に係る構成は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-21 
結審通知日 2012-11-27 
審決日 2012-12-10 
出願番号 特願2006-216669(P2006-216669)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 石川 好文
東 治企
発明の名称 凹版印刷機  
代理人 田中 康幸  
代理人 光石 春平  
代理人 光石 俊郎  
代理人 松元 洋  
代理人 光石 忠敬  

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