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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1269152
審判番号 不服2012-15832  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-14 
確定日 2013-01-24 
事件の表示 特願2007- 92790「精細パターンの印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月16日出願公開、特開2008-246938〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年3月30日の出願であって、平成24年3月15日付けで手続補正書が提出され、同年5月11日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年8月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記の平成24年3月15日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書、及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「少なくとも、
(a)巻き出しロール部から供給されたフィルム基材の表面を、大気圧プラズマによってフッ化処理してインキ剥離性を有するフィルム基材を作製する工程と、
(b)前記インキ剥離性を有するフィルム基材上にインキ液膜を形成する工程と、
(c)前記インキ剥離性を有するフィルム基材上の前記インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を形成する工程と、
(d)必要な画像部パターンが凹部に形成された凸版を前記インキ剥離性を有するフィルム基材上の前記予備乾燥インキ膜に押し当て、前記予備乾燥インキ膜の不要部を前記凸版の凸部に転移させ、前記インキ剥離性を有するフィルム基材上に予備乾燥インキ膜からなる画像部パターンを形成する工程と、
(e)前記インキ剥離性を有する略平板状態の前記フィルム基材上に形成された予備乾燥インキ膜からなる画像部パターンを略平板状態の前記被印刷基材上に転写することにより、被印刷基材上に画像パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする精細パターンの印刷方法。」

3.引用例
(3-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成18年2月9日に頒布された「特開2006-37060号公報 」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下、同じ。)
・「請求項1?4いずれか1項記載の印刷インキ組成物を塗布層形成基材上に塗布して印刷インキ組成物の塗布層を形成する塗布層形成工程と、該塗布層に対し所定形状の凸版を接触させて凸版の凸部分に該塗布層を転写して除去する除去工程と、該塗布層形成基材上に残った該塗布層を基板に転写する転写工程とを有することを特徴とする凸版反転オフセット法。」(【請求項5】)
・「本発明の凸版反転オフセット法は、ピンホールを発生せず、塗膜の均一性、剥離性を向上させることができる。本発明のレジストパターン形成法は、ピンホールを発生せず、良好なパターン精度及び形状で転写することが可能である。」(段落【0016】)
・「次に印刷インキ組成物の印刷方法について説明する。図1に示すように印刷インキ組成物1はキャップコータ7等を使用してロール形状の塗布層形成基材3上に塗布し、印刷インキ組成物1の塗布層を形成する。この塗布層形成基材3の塗布層を形成する面は離型性を有することが好ましい。」(段落【0037】)
・「キャップコータ7は毛管現象を利用して印刷インキ組成物1を供給する。数分間風乾させた後、ロール状又は平板状凸板5を接触させ、不要な印刷インキ組成物1の塗布層を転写除去する。この凸板5の接触は押圧であることが好ましい。その後、残った印刷インキ組成物1の塗布層をロール形状の塗布層形成基材3から基板6面に転写させ所望のパターンを得る。」(段落【0038】)
・「塗布層形成基材3の塗布層を形成する面は、離型性を有する面であることが好ましく、例えば、ロール表面に離型処理を施したロール状のものや、フィルム自体が離型性を有するもの、また、離型処理を施したフィルム等が挙げられる。」(段落【0041】)
・「塗布層形成基材3がフィルムである場合、連続した塗布層を形成することができ生産性を向上させることができる。フィルムの場合、連続して塗布層を形成でき図1の主胴2の表面に沿わすことにより、次工程の除去工程、転写工程を行うことができる。」(段落【0042】)
・「離型処理は、例えば、離型剤により処理したものであり、離型剤としては、例えば、流動パラフィン、ポリオレフィンワックス、それらの部分酸化物、フッ化物、塩化物等の鉱油系離型剤、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系離型剤、動植物油、天然ワックス等の油脂系離型剤、エチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル系離型剤、ポリオキシアルキレングリコール、グリコール類、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、高級脂肪族酸系アルコール等のアルコール系離型剤、ポリオキシエチレンアルキレンアミド、脂肪酸アマイド系等のアミド系離型剤、ポリオキシアルキレンリン酸エステル等のリン酸エステル系離型剤、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸ナトリウム等の金属石鹸系離型剤などが挙げられ、これらは耐熱性に劣るのでシリコン系の離型剤やフッ素系の離型剤を併用することが好ましい。このように、シリコン系の離型剤又はフッ素系の離型剤を併用するとことで耐熱性及び離型性を高くすることができる傾向がある。このような、シリコン系の離型剤又はフッ素系の離型剤としては、例えば、ジメチルシリコンオイル、ジメチルシリコンゴム、シリコンレジン、有機変性シリコン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。」(段落【0045】)
また、図1から、以下の事項が看取できる。
・基板6は、略平板状態である。
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「印刷インキ組成物を、フッ化物により処理したものである離型処理を施した塗布層形成基材であるフィルム上に、塗布して、印刷インキ組成物の塗布層を形成する塗布層形成工程と、
風乾させた後、該塗布層に対し所定形状の凸版を接触させて凸版の凸部分に該塗布層を転写して除去する除去工程と、
該塗布層形成基材であるフィルム上に残った該塗布層を略平板状態の基板に転写する転写工程とを有する凸版反転オフセット法。」
(3-2)引用例2
同じく引用された、本願の出願前である平成15年9月30日に頒布された特開2003-276161号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
・「また、第1および第3の実施の形態においては、転写シート11は、刷版9の版面9pとほぼ同じ大きさに切り出されている態様であったが、これに変わり、連続したシートであってもよい。図14は、これを説明する図である。図14において、転写シート501は収納部502から引き出され、シート反転部504に巻掛けられ、巻取部503で巻き取られる、幅が一定の長尺状をなすものである。シート反転部504は、回転中心505を中心に、1ステップに90°ずつ回転する四角柱をなしており、その四角柱の一辺の長さLは、刷版9の幅よりもやや大きく設定されている。すなわち、シート反転部504が1ステップ、すなわち、90°回転するたびに、転写シート501は、長さLずつ進むことになる。この場合、刷版9から転写シート501へのペーストの転写と、転写シート501から基板10への超音波素子63によるペーストの転写が同時に行われ、これらが終了するたびにシートが長さLずつ送られて、次の処理が引き続き行われることになる。」(段落【0092】)
また、図14から、以下の事項が看取できる。
・転写シート501の収納部502は、転写シート501をロール状に収納している。
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「転写シートは、連続したシートで、転写シートをロール状に収納している収納部から引き出され、刷版から転写シートへのペーストの転写と、転写シートから基板へのペーストの転写が行われる印刷方法。」
(3-3)引用例3
同じく引用された、本願の出願前である平成16年11月4日に頒布された特開2004-311111号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
・「[1] 有機電界発光素子の製造方法
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、版上に少なくとも一つの有機層を形成することにより転写材料を作製し、有機層側が第一の基板の被成膜面に対面するように転写材料を第一の基板に重ねて加熱処理及び/又は加圧処理を施し、版を引き剥がすことにより有機層を第一の基板の被成膜面に転写することを特徴とする(剥離転写法)。」(段落【0026】)
・「接触角を50°以上の範囲にするために、版の支持面に表面撥水処理を施してもよい。表面撥水処理としてはフッ素化処理を挙げることができる。フッ素化処理方法としては、フロロカーボンガス(CF_(4)ガス等)を用いたプラズマ処理を施す方法や、フッ素化アルキルカップリング剤の蒸気に曝す方法等が挙げられる。フッ素化アルキルカップリング剤としては、例えばパーフルオロアルキル官能性シランが挙げられる。パーフルオロアルキル官能性シランとしてはパーフロロアルキルトリメトキシシランが好ましい。」(段落【0056】)
・「以上詳述したように、所定のパターン部を有する版上に有機層を設け、その有機層を基板に転写することにより、基板上にパターン状の有機層を簡便に形成できるとともに、有機層の膜厚均一性、発光効率、発光量の均一性及び耐久性に優れた有機電界発光素子を低コストで製造する方法を提供することができる。」(段落【0151】)
これらの記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「プラズマ処理によってフッ素化処理して表面撥水処理を施した所定のパターン部を有する版の支持面上に有機層を設け、その有機層を基板に転写する剥離転写法。」
(3-4)引用例4
同じく引用された、本願の出願前である平成18年7月13日に頒布された特開2006-181989号公報(以下「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。
・「本発明は液晶ディスプレイ用カラーフィルタや有機ELディスプレイなどの電子ディスプレイ用画素パターンを始めとする高精細な画像を印刷にて形成する方法とその装置に関するものである。」(段落【0001】)
・「つぎに本発明を図に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の印刷装置1の構成を模式的に示しているもので、反転印刷法を行なう印刷装置1を示している。この印刷装置1は架台2にブランケット胴3が印刷方向に沿って移動可能にして支持されているとともに、架台2には除去版4と被印刷基板5とが配置されていて、ブランケット胴3が回転移動して除去版4、被印刷基板5の順に対応するように設けられているものである。そして、この印刷装置1では、ブランケット胴3が架台2の一端側に設定されている待機位置6にあるときに、インキ供給手段7からブランケット胴3の周面にあるブランケット8にインキの供給が行われてブランケット8の全面に膜厚均一にしてインキの塗工が行われ、供給したインキを半乾燥状態にした後、前記ブランケット胴3のブランケット8が、被印刷基板5に形成するパターンのネガパターンとした凸部を有する凹版の前記除去版4に押圧し、ブランケット胴3の回転移動でブランケット8上のインキが分離することで除去版4の凸部にインキを前記ネガパターンで転移させてそのブランケット8上に残されたインキからなるパターンを形成し、そして、ブランケット胴3が被印刷基板5に達してブランケット8をその被印刷基板5に押圧し、ブランケット胴3の回転移動でブランケット8上に残されたインキが剥離することで被印刷基板5にインキを転写してパターンが形成されるようにしている。被印刷基板5への転写が終了したブランケット胴3は待機位置に戻り、再びインキ供給手段7からインキの供給を受ける。また、除去版4の凸部に転移したインキは図示しない清浄機構にて取り除かれる。」(段落【0011】)
また、図1から、以下の事項が看取できる。
・被印刷基板5は、略平板状態である。
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。
「インキ供給手段からブランケット胴の周面にあるブランケットにインキの供給が行われてブランケットの全面に膜厚均一にしてインキの塗工が行われ、供給したインキを半乾燥状態にした後、前記ブランケット胴のブランケットが、略平板状態の被印刷基板に形成するパターンのネガパターンとした凸部を有する凹版の除去版に押圧し、ブランケット胴の回転移動でブランケット上のインキが分離することで除去版の凸部にインキを前記ネガパターンで転移させてそのブランケット上に残されたインキからなるパターンを形成し、そして、ブランケット胴が略平板状態の被印刷基板に達してブランケットをその略平板状態の被印刷基板に押圧し、ブランケット胴の回転移動でブランケット上に残されたインキが剥離することで被印刷基板にインキを転写してパターンが形成される高精細な画像を印刷にて形成する方法。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「塗布層形成基材であるフィルム」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「フィルム基材」に相当し、以下同様に、「印刷インキ組成物の塗布層」は、「インキ液膜」に、「凸部分」は、「凸部」に、「基板」は、「被印刷基材」に、それぞれ相当する。
また、後者の「塗布層形成基材であるフィルム」は、フッ化物により処理したものである離型処理を施されたものであるから、「塗布層形成基材であるフィルムの表面を、フッ化処理してインキ剥離性を有する塗布層形成基材であるフィルム」といえ、このようなインキ剥離性を有する塗布層形成基材であるフィルムを作成しているのであるから、当然当該フィルムを作成する工程を有するものといえる。
また、後者の「印刷インキ組成物を、フッ化物により処理したものである離型処理を施した塗布層形成基材であるフィルム上に、塗布して、印刷インキ組成物の塗布層を形成する塗布層形成工程」は、「インキ剥離性を有する塗布層形成基材であるフィルム上に印刷インキ組成物の塗布層を形成する工程」といえる。
また、後者は、印刷インキ組成物の塗布層を風乾させるのであるから、「インキ剥離性を有する塗布層形成基材であるフィルム上の印刷インキ組成物の塗布層を風乾し、風乾した印刷インキ組成物の塗布層を形成する工程」を有しているといえる。
また、後者は、印刷インキ組成物の塗布層を風乾させた後、該塗布層に対し所定形状の凸版を接触させて凸版の凸部分に該塗布層を転写して除去する除去工程と、該塗布層形成基材であるフィルム上に残った該塗布層を略平板状態の基板に転写する転写工程とを有するから、「必要な画像部パターンが凹部に形成された凸版をインキ剥離性を有する塗布層形成基材であるフィルム上の風乾した印刷インキ組成物の塗布層に押し当て、風乾した印刷インキ組成物の塗布層の不要部を前記凸版の凸部分に転移させ、インキ剥離性を有する塗布層形成基材であるフィルム上に風乾した印刷インキ組成物の塗布層からなる画像部パターンを形成する工程」と「インキ剥離性を有する塗布層形成基材であるフィルム上に形成された風乾した印刷インキ組成物の塗布層からなる画像部パターンを略平板状態の基板上に転写することにより、基板上に画像パターンを形成する工程」とを有しているといえる。
また、後者の「凸版反転オフセット法」は、良好なパターン精度で転写するレジストパターンを形成する(段落【0016】)から、「精細パターンの印刷方法」といえる。
また、後者の「風乾」と前者の「予備乾燥」とは、「乾燥」との概念で共通する。
したがって、両者は、
「少なくとも、
(a)フィルム基材の表面を、フッ化処理してインキ剥離性を有するフィルム基材を作製する工程と、
(b)前記インキ剥離性を有するフィルム基材上にインキ液膜を形成する工程と、
(c)前記インキ剥離性を有するフィルム基材上の前記インキ液膜を乾燥し、乾燥インキ膜を形成する工程と、
(d)必要な画像部パターンが凹部に形成された凸版を前記インキ剥離性を有するフィルム基材上の前記乾燥インキ膜に押し当て、前記乾燥インキ膜の不要部を前記凸版の凸部に転移させ、前記インキ剥離性を有するフィルム基材上に乾燥インキ膜からなる画像部パターンを形成する工程と、
(e)前記インキ剥離性を有する前記フィルム基材上に形成された乾燥インキ膜からなる画像部パターンを略平板状態の前記被印刷基材上に転写することにより、被印刷基材上に画像パターンを形成する工程と、を有する精細パターンの印刷方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明は、「巻き出しロール部から供給された」フィルム基材の表面を、「大気圧プラズマによって」フッ化処理したのに対して、引用発明1は、この点につき明らかでない点。
[相違点2]
乾燥に関して、本願発明は、「予備乾燥」であるのに対して、引用発明1は、「風乾」である点。
[相違点3]
本願発明は、フィルム基材上に形成された画像部パターンを被印刷基材上に転写する際に、フィルム基材を「略平板状態」としたのに対して、引用発明1は、この点につき明らかでない点。

5.当審の判断
上記相違点について以下検討する。
(5-1)相違点1について
引用発明2は、上記3.(3-2)のとおりであって、引用発明2における「転写シート」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明における「フィルム基材」に相当し、以下同様に、「収納部」は、転写シートをロール状に収納しているから、「巻き出しロール部」に、相当する。
また、引用発明2の「転写シート」は、転写シートをロール状に収納している収納部から引き出されて転写されているから、「転写シートをロール状に収納している収納部から供給された転写シート」といえる。
してみると、引用発明2は、「転写シートをロール状に収納している収納部(巻き出しロール部)から供給された転写シート(フィルム基材)」を備える。
また、引用発明1と引用発明2とは、共に転写による印刷方法という技術分野に属し、また、本願発明において、フィルム基材を巻き出しロール部から供給することに、格別の技術的意義はないことから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
引用発明3は、上記3.(3-3)のとおりであって、引用発明4における「フッ化処理」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明における「フッ素化処理」に相当し、以下同様に、「所定のパターン部」は「画像部パターン」に、「表面撥水処理を施した」は「インキ剥離性を有する」に、「有機層」は「インキ液膜」に、「基板」は「被印刷基材」に、「剥離転写法」は「印刷方法」に、それぞれ相当する。
また、引用発明3の「プラズマ処理」と本願発明の「大気圧プラズマ」とは、「プラズマ処理」との概念で、引用発明3の「版の支持面」と本願発明の「フィルム基材の表面」とは、「印刷基材の表面」との概念で、それぞれ共通する。
してみると、引用発明3は、版の支持面上を、「プラズマ処理によってフッ素化処理し」たものを備えている。
そして、一般にプラズマ処理において、大気圧プラズマによる処理は本願出願前に常套手段(例えば、特開2004-109209号公報の段落【0071】、特開平11-27153号公報の段落【0016】?段落【0017】参照。)である。
また、本願発明において、フッ化処理を「大気圧プラズマ」によるものとすることに格別の技術的意義はない。
また、引用発明1と引用発明3とは、共に転写による印刷方法という技術分野に属し、フッ化処理するという共通の機能、作用を有するものであるから、引用発明1に引用発明3を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願発明において、「巻き出しロール部から供給された」フィルム基材の表面に対して、「大気圧プラズマによって」フッ化処理した点に格別の技術的意義はない。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用すると共に、上記常套手段を照らし、引用発明3を適用することにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(5-2)相違点2について
引用発明4は、上記3.(3-4)のとおりであって、引用発明4における「被印刷基板」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明における「被印刷基材」に相当し、以下同様に、「ネガパターンとした凸部」は「凸部」に、「凹版の除去版」は「凸版」に、「パターン」は「画像部パターン」に、それぞれ相当する。
また、引用発明4は、インキ供給手段からブランケット胴の周面にあるブランケットにインキの供給が行われてブランケットの全面に膜厚均一にしてインキの塗工が行われているから、ブランケット胴の周面にあるブランケット上にインキ液膜を形成する工程を有しているといえる。
また、引用発明4は、ブランケットの全面にインキの塗工が行われて、供給したインキを半乾燥状態にしているから、ブランケット胴の周面にあるブランケット上のインキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を形成する工程を有しているといえる。
また、引用発明4は、供給したインキを半乾燥状態にした後、前記ブランケット胴のブランケットが、略平板状態の被印刷基板に形成するパターンのネガパターンとした凸部を有する凹版の除去版に押圧し、ブランケット胴の回転移動でブランケット上のインキが分離することで除去版の凸部にインキを前記ネガパターンで転移させてそのブランケット上に残されたインキからなるパターンを形成しているから、必要なパターンが凹部に形成された凹版の除去版をブランケット胴の周面にあるブランケット上の半乾燥状態のインキに押し当て、半乾燥状態のインキの不要部を凹版の除去版のネガパターンとした凸部に転移させ、ブランケット胴の周面にあるブランケット上に半乾燥状態のインキからなるパターンを形成する工程を有しているといえる。
また、引用発明4は、ブランケット胴が被印刷基板に達してブランケットをその被印刷基板に押圧し、ブランケット胴の回転移動でブランケット上に残されたインキが剥離することで被印刷基板にインキを転写してパターンが形成されるから、ブランケット胴の周面にあるブランケット上に形成された半乾燥状態のインキからなるパターンを略平板状態の被印刷基板上に転写することにより、被印刷基板上にパターンを形成する工程を有しているといえる。
また、引用発明4は、被印刷基板上にパターンを形成して、高精細な画像を印刷にて形成する方法であるから、精細パターンの印刷方法といえる。
また、引用発明4の「ブランケット胴の周面にあるブランケット」と本願発明の「フィルム基材」とは、「印刷基材」との概念で共通する。
してみると、引用発明4は、「ブランケット胴の周面にあるブランケット上のインキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を形成する工程」を備える。
また、引用発明1と引用発明4とは、共に転写による印刷方法という技術分野に属し、インキ液膜を乾燥させるという共通の機能、作用を有するものであるから、引用発明1に引用発明4を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明4を適用することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(5-3)相違点3について
一般に転写による印刷方法において、印刷基材及び被印刷基材を略平板状態として、略平板状態の印刷基材上に形成された画像部パターンを略平板状態の被印刷基材上に転写することは、本願出願前に技術常識(例えば、特開昭50-106709号公報の第2頁右上欄第16?20行及び第2図、特開2002-36709号公報の段落【0009】?段落【0010】及び図4、5、並びに特開2003-39627号公報の段落【0020】?段落【0027】及び図1?4参照。)である。
そして、本願発明において、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別の技術的意義はない。
また、引用発明1と上記技術常識とは、共に転写による印刷方法という技術分野に属し、印刷基材上に形成された画像部パターンを略平板状態の被印刷基材上に転写するという共通の機能、作用を有するから、引用発明1に上記技術常識を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、上記周知の技術事項を適用することにより、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明における全体の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1?4、上記常套手段、及び上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5-5)むすび
したがって,本願発明は、引用発明1?4、上記常套手段、及び上記技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-21 
結審通知日 2012-11-27 
審決日 2012-12-10 
出願番号 特願2007-92790(P2007-92790)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 鈴木 秀幹
長島 和子
発明の名称 精細パターンの印刷方法  

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