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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F03B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F03B
管理番号 1269228
審判番号 不服2011-28307  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-10 
確定日 2013-01-21 
事件の表示 特願2011-142267「海中での海流発電設備船と各海中設備の安定用設備扇」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年5月20日の出願であって、平成23年7月27日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年8月2日)、これに対し、平成23年9月6日付で手続補正書が提出されたが、平成23年10月24日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成23年11月1日)、これに対し、平成23年12月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願
平成23年9月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
回転扇、ドラム缶式発電等今後次々と開発される各海中発電設備に於て、最大の難敵は海上での荒天候、台風等による巨大な“波のうねり”であり、より安定的に海中発電を行なう為にはいかにして“波のうねり”を押さえる事が出来るものかと本考案申請をしたものである。
まず図1の通り各海中発電船外に円盤型の“円盤形海中翼”を設けこの翼内には毎日の表層海流の動き天候の具合等に応じて内側の海水の量、空気の量の調整をするものであり、荒天時には円盤形海中翼内を海水で満タンとし海中発電全体を数m海中に沈み込ませて常時“海中発電船”全体の安定を目指すものである。 外側部分の各海流調整扇は円盤型設置の外側部分の為に、波浪の高い方向部分の波動を抑える為に“海中発電船”内部分より当然自由に調整が行なわれ、波動を押さえる大切な役目をする設備である。
又鋼鉄ロープによる数百m?数千mの海底部分にしっかりと“海中発電船”をある程度のあそび部分を残してほぼ完全に固定するものであるが、当然その調整は発電船内にて簡単に行なえるものである。
【請求項2】
強力な1秒間に100万トンといわれる深層海流の活用を狙った設備であり本深層海流は一定方向に移動している為に、先般申請の「大深度深海水排圧深海船」を設置をし、その途中部分に図2の如く海流の直接流入による発電装置「ドラム缶式水圧発電機」の設置を行ない、より発電の効率を上げる為に周辺部分に「深海海流集圧壁」の設置を行なう事により、より多くの深層海流の流入移動圧力を高める事を狙ったものである。
当然この発電設備は「ドラム缶式水圧発電機」内を深層海流が通過する時に内側部分の回転主軸容器(図2)A.B各内に高圧移動海流が侵入を行ない通り抜けるだけであり、一切の排海水は生じないものである。
又「ドラム缶式水圧発電機の回転筒部分が10m?と巨大な為にいくら深層海流の移動速度が遅くても強力な移動水圧により回転さえ行なわれれば回軸、発電軸等の調整、ギア比の調整等により巨大な発電力が確保出来もし深層海流の滞流時にはモーター室のモーターの稼働にて継続して発電を行ない常時、四六時中自然の深層海流の力を利用しての発電装置である。
当然これだけの設備をするのに「ドラム缶式水圧発電機」のみの設備ではと思い下部分の活用の為に「大深度深海水排圧深海船」を同時に設置を行なうものである。」


3.拒絶の理由
平成23年7月27日付で通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

『この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



本願発明については、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その発明がどのような発電装置であるかが特定できない。
請求項、明細書及び図面を参酌しても、本願発明について把握されることは、例えば、外側にドラム缶を具備した回転扇の上流側に円盤形海中扇を設け、回転扇の下流側に海流調整扇を設けることにより、海流の状況により何らかの調整を行い、高効率かつ安定した水力発電を行うとともに、回転扇を回転させるための海水を設備から排水するために空気容器安定船なる構成を設け、該空気容器安定船に鋼鉄ロープを介して錨を具備させた程度のことであり、例えば、どのように発電を行うのか、ドラム缶、円盤形海中扇、及び、海流調整扇をどのように設けるのか、ドラム缶、円盤形海中扇、及び、海流調整扇を具備させたことが発電装置のどの部分に対して具体的にどのような影響を及ぼすのか、実際にどのように排水を行うのか等が、把握できない。
よって、請求項1-2に係る発明は明確でなく、また、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

本願発明は、上記のとおり不明確な記載及び把握できない構成を含む。本願発明のうちポイントとなる構成は、例えば、発電するための機構、排水機構、及び、ドラム缶と円盤形海中扇と海流調整扇とを具備させた構成であると推測される。したがって、少なくとも上記機構が明確に把握できるよう、補正により記載を改められたい。』


4.当審の判断
特許法第36条第4項第1号は、
「4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」
と規定されており、特許法第36条第6項第2号は、
「6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。 」
と規定されている。

そこで、本願の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしているか否か検討する。

(1)請求項1には、回転扇、ドラム缶式発電とあるが、回転扇、ドラム缶式発電は、一般的な用語ではなく、回転する扇、ドラム缶又はドラム缶形状のものを用いた発電とは理解できるが、発明の詳細な説明には、回転扇軸、ドラム缶式発電設備との単語が記載されるのみで、回転扇、ドラム缶式発電が具体的にどの様な構成であるのか何等開示が無く不明である。図面を参照しても、具体的に、正面図、側面図、平面図等が示されていないため、回転扇、ドラム缶式発電が具体的にどの様な構成であって、発電設備のためにどの様な動作を行うのか全く不明である。

(2)請求項1には、海中発電船とあるが、海中発電船は一般的な用語ではなく、海中で即ち潜水艦が潜航したような状態で発電する船と解釈でき、又、海中での発電ができる通常の船とも解釈でき、様々な解釈ができるため構成を特定できず不明であり、しかも、船である以上、停止状態で使用するとしても航行可能でなければならないが、どのように航行できるのか不明である。また、発明の名称に海流発電設備船とあるのみで、発明の詳細な説明には、海中発電船、海流発電設備船との記載すらなく、海中発電船が具体的にどの様な構成であるのか何等開示が無く不明である。図面を参照しても、具体的に、正面図、側面図、平面図等が示されていないため、海中発電船が具体的にどの様な構成であって、発電設備のためにどの様な動作を行うのか全く不明である。

(3)請求項1には、円盤形海中翼とあるが、円盤形海中翼は一般的な用語ではなく、円盤形で海中にある翼とは理解できるが、発明の詳細な説明には、「又本海中翼を利用する事により強力な海中潮流を大規模な発電資源として一部分に集中させる事により超強力な海中発電を実現させるものである。」、「本図の中で円盤形海中翼とその先の海流調整扇を設け海中の海流方向、強弱、波の強弱等により毎日、調整を行ない海中発電設備のより良い状態と安定を目指すものである。」とはあるが、円盤形とはどの様な形状で円盤形海中翼がどの様な構成であるのか何等開示が無く不明である。
円盤形海中翼に関し、請求項1には「この翼内には毎日の表層海流の動き天候の具合等に応じて内側の海水の量、空気の量の調整をするものであり、荒天時には円盤形海中翼内を海水で満タンとし海中発電全体を数m海中に沈み込ませて常時“海中発電船”全体の安定を目指すものである」とあるから、円盤形海中翼内に海水を注入したり排出したりできることとなるが、図面にこの設置翼の内部は浮力のある巨大な容器船とはあるが、明細書及び図面には円盤形海中翼が海水の注排水をできる点は記載が無く、どの様な場合にどの様に海水の注排水を行うのか不明であり、しかも海水の注排水で海中発電船を安定させるなら海中翼の形状が円盤形である必要性はなく、何故円盤形とするのか不明である。また、円盤形海中翼であるから、当該翼は海中にあるものと認められるが、「荒天時には?海中発電全体を数m海中に沈み込ませて」とあるから、凪のときは円盤形海中翼は海面上にあり、図1から判断すれば、発電機を駆動すると思われる回転扇が海面上にあることとなり発電できないこととなるが、この点不明である。
図面を参照しても、具体的に、正面図、側面図、平面図等が示されていないため、円盤形海中翼が具体的にどの様な構成であって、発電設備のためにどの様な動作を行うのか全く不明である。

(4)請求項1には、海流調整扇とあるが、海流調整扇は一般的な用語ではなく、海流を調整する扇であるとは理解できるが、発明の詳細な説明には、「本図の中で円盤形海中翼とその先の海流調整扇を設け海中の海流方向、強弱、波の強弱等により毎日、調整を行ない海中発電設備のより良い状態と安定を目指すものである。」とはあるが、海流調整扇が具体的にどの様な構成であるのか何等開示が無く不明である。
海流調整扇に関し、請求項1には「外側部分の各海流調整扇は円盤型設置の外側部分の為に、波浪の高い方向部分の波動を抑える為に“海中発電船”内部分より当然自由に調整が行なわれ、波動を押さえる大切な役目をする設備である」とあるから、各海流調整扇は波浪の高い方向部分の波動を抑えることとなるが、明細書及び図面には各海流調整扇が波浪の高い方向部分の波動を抑えることができる点は記載が無く、どの様な場合にどの様に波浪の高い方向部分の波動を抑えるのか不明であり、しかも波浪とは水面の高低運動のことであるから、図1の海流調整扇イ、ニが仮に波浪の高い方向部分の波動を抑えるとすると、それ以外の海流調整扇は海中であるから波浪の高い方向部分の波動を抑えることはできず、図1の海流調整扇ハ、ヘが仮に波浪の高い方向部分の波動を抑えるとすると、それ以外の海流調整扇は水面より上であるから波浪の高い方向部分の波動を抑えることはできず、何故各海流調整扇が所望の動作を行えるのか不明である。また、各海流調整扇は海中発電船内部分より自由に調整できることとなるが、海中発電船内部分とは何処に存在するのか開示が無く構成上不明であり、自由に調整するのは誰が行えるのか開示が無く不明であり、どの様に調整すれば波動を抑えることが可能であるのか開示が無く不明である。
図面を参照しても、具体的に、正面図、側面図、平面図等が示されていないため、各海流調整扇が具体的にどの様な構成であって、発電設備のためにどの様な動作を行うのか全く不明である。

(5)請求項1には、「鋼鉄ロープによる数百m?数千mの海底部分にしっかりと“海中発電船”をある程度のあそび部分を残してほぼ完全に固定するものであるが、当然その調整は発電船内にて簡単に行なえるものである」とあるが、発明の詳細な説明には、鋼鉄ロープとの記載すらなく、鋼鉄ロープが具体的にどの様な構成であるのか何等開示が無く不明であり、しかも、鋼鉄ロープの先端には碇があるわけではないから、鋼鉄ロープのみでどの様にして海中発電船を海底部分に対して固定するのか不明であり、発電船内とは何処に存在するのか開示が無く構成上不明であり、調整するのは誰が行えるのか開示が無く不明であり、船内からどの様に調整すれば鋼鉄ロープのみで海中発電船を海底部分に対して固定することが可能であるのか開示が無く不明である。

(6)請求項2には、大深度深海水排圧深海船とあるが、大深度深海水排圧深海船は一般的な用語ではなく、発明の詳細な説明には大深度深海水排圧深海船と記載があるのみで、大深度深海水排圧深海船が具体的にどの様な構成であるのか何等開示が無く不明である。大深度深海水排圧深海船に関し、請求項2には、「先般申請の「大深度深海水排圧深海船」を設置をし」とあるが、本願明細書中に開示が無ければ開示したことにはならず、したがって大深度深海水排圧深海船の構成が不明である。図面を参照しても、具体的に、正面図、側面図、平面図等が示されていないため、大深度深海水排圧深海船が具体的にどの様な構成であって、発電設備のためにどの様な動作を行うのか全く不明である。

(7)請求項2には、ドラム缶式水圧発電機とあるが、ドラム缶式水圧発電機は一般的な用語ではなく、ドラム缶又はドラム缶形状のものと水圧とを用いた発電機とは理解できるが、発明の詳細な説明には、「海底数百mに於てただ深海水が発電設備の内側を通り抜けるだけのドラム缶式発電設備」とあるが、ドラム缶式水圧発電機が具体的にどの様な構成であって、ドラム缶と水圧と発電機がどの様に関連し合うのか何等開示が無く不明である。しかも、内側を水が通り抜けるだけで何故発電ができるのか不明である。図面を参照しても、具体的に、正面図、側面図、平面図等が示されていないため、ドラム缶式水圧発電機が具体的にどの様な構成であって、発電設備のためにどの様な動作を行うのか全く不明である。

(8)請求項2には、深海海流集圧壁とあるが、深海海流集圧壁は一般的な用語ではなく、発明の詳細な説明には、深海海流集圧壁との記載すらなく、深海海流集圧壁が具体的にどの様な構成であるのか何等開示が無く不明である。深海海流集圧壁に関し、請求項2には、「より発電の効率を上げる為に周辺部分に「深海海流集圧壁」の設置を行なう事により、より多くの深層海流の流入移動圧力を高める事を狙ったものである」とあるが、単に深海に壁を設けただけでは深層海流の流入移動圧力を高めることはできず、具体的にどの様な構成を採用することにより深層海流の流入移動圧力を高めることができるのか不明である。図面を参照しても、具体的に、正面図、側面図、平面図等が示されていないため、深海海流集圧壁が具体的にどの様な構成であって、発電設備のためにどの様な動作を行うのか全く不明である。

(9)請求項2には、「ドラム缶式水圧発電機の回転筒部分が10m?と巨大な為にいくら深層海流の移動速度が遅くても強力な移動水圧により回転さえ行なわれれば回軸、発電軸等の調整、ギア比の調整等により巨大な発電力が確保出来もし深層海流の滞流時にはモーター室のモーターの稼働にて継続して発電を行ない常時、四六時中自然の深層海流の力を利用しての発電装置である。」とあるが、これに対応する記載が発明の詳細な説明に何等記載が無く、具体的にどの様すれば巨大な発電力が確保できるのか不明である。また、深層海流の滞流時にモーター室のモーターの稼働にて継続して発電を行えば、そもそも四六時中自然の深層海流の力を利用しての発電ではないから、意味するところが不明であり、モーター室は何処にあってモーターの起動停止は誰がどのタイミングで行うのか不明であり、モーターを稼働するには電源が必要であるが、電源が請求項2に存在せずどの様にモータを稼働するのか不明である。

したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-2に記載された事項を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、又、請求項1-2に記載された事項は、発明の詳細な説明を参照しても構成が不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、請求項1-2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願について特許を受けることができない。
 
審理終結日 2012-11-14 
結審通知日 2012-11-20 
審決日 2012-12-03 
出願番号 特願2011-142267(P2011-142267)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (F03B)
P 1 8・ 536- Z (F03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 昌弘  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 川口 真一
大河原 裕
発明の名称 海中での海流発電設備船と各海中設備の安定用設備扇  

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