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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1269375
審判番号 不服2010-2272  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-02 
確定日 2013-01-29 
事件の表示 特願2000-563819「尿酸オキシダーゼ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月17日国際公開、WO00/08196、平成14年 8月 6日国内公表、特表2002-524053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年8月5日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年8月6日 米国)とする出願であって、平成21年9月1日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたが、平成21年9月30日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年2月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。

2.平成22年2月2日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年2月2日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】1個から10個の間のリジン残基を挿入するように修飾されている哺乳動物種の組換え体ウリカーゼタンパク質から成るタンパク質。」から、
「【請求項1】1個のリジン残基を導入するように修飾されている哺乳動物種の組換え体ウリカーゼタンパク質から成るタンパク質であって、修飾された残基はカルボキシ末端の3つのアミノ酸中には位置せず、そして、上記修飾はウリカーゼ酵素の尿酸分解活性に有害でない、前記タンパク質。」へと補正された。

(2)新規事項について
補正後の請求項1には、「修飾された残基はカルボキシ末端の3つのアミノ酸中には位置せず」という発明特定事項が追加された。
一方、本件の外国語書面の翻訳文(以下、「本件翻訳文」という。)には、リジン残基を導入する位置について特に記載されていない。また、関連する記載としては、段落【0013】に、「一つの態様において、本発明は哺乳動物種の組換え体ウリカーゼタンパク質を製造するために使用でき、そのタンパク質は、組換え体ウリカーゼタンパク質のPEG化後のPEG化ウリカーゼ生成物が実質的に非修飾ウリカーゼと同様に酵素的に活性であり、およびPEG化ウリカーゼ生成物が受容可能な免疫原性である点までリジンの数を増加するように修飾されている。本発明の端が切断されたウリカーゼもまた考慮されており、ウリカーゼのアミノおよび/またはカルボキシ末端は存在していないであろう。好適には、該ウリカーゼはリジンが除去されない程度に端が切断されているであろう。」と、段落【0015】には、「PBCおよびPKSの端が切り取られた誘導体もまた考慮される。好適な端切断誘導体形は、6アミノ末端アミノ酸または3カルボキシ末端アミノ酸またはその両方が欠失するように切断されたPBCおよびPKSタンパク質である。代表的配列は配列番号:8(PBCアミノ切断)、9(PBCカルボキシ切断)、10(PKSアミノ切断)および11(PKSカルボキシ切断)に示されている。PBCウリカーゼ、PKSウリカーゼおよびそれらの端切断形の各々は、クローン化されている他の哺乳動物ウリカーゼに観察されるよりも1つから4つ以上多いリジン残基を持っている。」と、記載されている。
このように、本件翻訳文には、端切断誘導体形には、カルボキシ末端(以下「C末端」という。)の3アミノ酸が欠失した態様が含まれることが記載されているにすぎず、C末端が欠失していない態様において、修飾された残基がC末端の3つのアミノ酸中に位置しないことは記載も示唆もされていない。
確かに、C末端の3アミノ酸が欠失した態様においては、修飾された残基は必然的にC末端の3つのアミノ酸中には位置しないことになるが、補正後の請求項1に係る発明は、端切断型に限定されているわけではなく、C末端が欠失していない態様において、修飾された残基がC末端の3つのアミノ酸中に位置しないことは記載されておらず、また、そのようなことが本件翻訳文の記載から自明な事項であるともいえない。
したがって、上記請求項1に係る補正は、本件翻訳文のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、この補正は、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内でおいてしたものでなく、平成18年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項において読み替えて適用される特許法第17条の2第3項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年2月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願出願に係る発明は、平成21年9月1日付手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1及び請求項17に係る発明は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】1個から10個の間のリジン残基を挿入するように修飾されている哺乳動物種の組換え体ウリカーゼタンパク質から成るタンパク質。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項17】ウリカーゼタンパク質を突然変異させることから成る、利用可能な無毒性PEG結合部位を増加させる方法であって、それによりアルギニンの場所に1個から10個の間のリジン残基が導入される、前記方法。」(以下、「本願発明17」という。)

(1)本願発明1について
本願請求項1に記載の「挿入」について、本件翻訳文には定義が記載されておらず、上記2.により補正却下された平成22年2月2日付手続補正書の請求項1に記載の「導入」を意味するのか、あるいは、当該技術分野で通常用いられている「タンパク質のアミノ酸の数を増加させる変異」を意味するのかが、一義的に明確でない。
そこで、本件翻訳文の記載をみると、段落【0028】に記載の「挿入」が意味する変異は、段落【0027】に記載のアルギニンからリジンへの置換又はグルタミンからリジンへの置換であるし、本件翻訳文全体の記載及び実施例にも、タンパク質のアミノ酸を増加させる変異は記載されていない。また、請求項1を引用する形式の請求項2をさらに引用する形式の請求項3及び4に記載されたキメラタンパク質は、いずれもタンパク質のアミノ酸の数を変化させない変異に相当するから、本件翻訳文の記載を参酌すると、本願発明1における「挿入」とは、タンパク質のアミノ酸の数を変化させない変異である置換であると解され、「導入」に相当するものと認められる。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願優先日前の1981年に頒布された刊行物である Biochim.Biophys.Acta.(1981)Vol.660,No.2,P.293-298 (以下、「引用例1」という。)には、
(i)「ブタ肝臓及びカンジダ ユーティリス由来の尿酸オキシダーゼ(尿酸:酸素 酸化還元酵素、EC1.7.3.3)調製物に、5000ダルトンのポリエチレングリコールを共有結合させた。両方の尿酸オキシダーゼへの十分なポリエチレングリコールの付着は、その酵素によるマウスでの抗体産生の惹起や、非修飾尿酸オキシダーゼに対する抗体との反応を不可能にする。ポリエチレングリコール:尿酸オキシダーゼ接合体は、非修飾尿酸オキシダーゼより高いKmとより低いV値を示す。至適pH値は、ポリエチレングリコール:尿酸オキシダーゼ接合体で高くなり、至適温度は低くなる。静注した修飾尿酸オキシダーゼの血液循環期は、非修飾尿酸オキシダーゼのそれよりもかなり長い。90日間にわたる繰り返し注射では、ポリエチレングリコール:尿酸オキシダーゼ接合体の血中循環期に変化を与えなかった。一方、非修飾酵素は、数回の静注後、極めて速やかに血中から消去された。」(第293頁要約の項)、
(ii)「ブタ肝臓尿酸オキシダーゼは、United States Biochemical Corporation(catalog.no.23095)から購入した。」(第294頁左欄第20行-第22行)、
(iii)「ポリエチレングリコールは、カンジダ ユーティリス尿酸オキシダーゼのアミノ基の57%に結合して、本来の活性の23%を保持し、ブタ肝臓尿酸オキシダーゼのアミノ基の58%に結合し、本来の活性の28%を保持することがわかった。これら調製物は、ここで報告された研究の大部分で用いられた。それらは非免疫原性のようである。他のポリエチレングリコール:尿酸オキシダーゼ調製物が、アミンに対するポリエチレングリコールがより少ない比で用いて作成された。これら調製物はより活性があるが、免疫原性である証拠を示した。」(第294頁右欄第26行-第37行)、
と記載されている。
また、原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願優先日前の1991年に頒布された刊行物である Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)Vol.88,No.16,P.7185-7189(以下、「引用例2」という。)には、
(iv)「ポリエチレングリコール(PEG)の共有結合による修飾で、タンパク質の免疫原性を減少させ、循環期を延長させることができるが、いくつかのタンパク質については、PEG結合サイト(例えば、リジン残基のεアミノ基)の数や配置のため、このアプローチの有効性が制限されている。我々は、アルギニンコドンをリジンコドンに選択的に置換するための部位特異的変異導入法を用いて、付加的なPEG結合サイトの導入方法を開発した。そして、遺伝的PNP欠損症の治療に使用され得るものであって、非常に安定しているが免疫原性のある酵素である大腸菌由来プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)で、この手法をテストした。三重変異体RK3は3つのアルギニン→リジン置換を有しており、PNPサブユニット当りのリジンの数を14個から17個に増加するように構築され、6量体当りでは18箇所の付加的なPEG結合サイトを提供する。野生型とRK3酵素は同様な触媒活性、抗原性、及び免疫原性を有していた。PEG修飾後、両酵素とも触媒活性を保持しており、マウスにおける血清半減期は、両酵素とも4時間から4日に増加し、さらに各非修飾酵素に対する抗血清による両酵素への結合は著しく減少した。しかしながら、野生型PEG-PNPに対して惹起された抗体は、PEG-RK3酵素には結合しなかった。PEG-RK3PNPは、野生型PEG-PNPよりも実質的に免疫原性が低かった。PEG-RK3PNPで処理されたマウスでは、加速されたPEG-PNPの抗体介在クリアランスは、12匹のうち2匹のマウスで起こったが、修飾された野生型酵素で処理されたマウスでは、16匹のうち10匹で起こった。この特異的変異法とPEG修飾の組み合わせ使用は、遺伝的及び後天的疾患の治療に使用される遺伝的、化学的エンジニアリングの産物を含むタンパク質を、最も広く選択できることを目的としている。」(第7185頁要約の項)、
(v)「タンパク質の表面に大部分限局されている第一級アミノ基の、活性化型PEGでの修飾は、穏やかな条件で行われ得る。上手くいくと、触媒活性は維持されているが、免疫原性と抗原性が実質的に減少する。おそらく、柔軟な親水性PEG鎖が、抗原プロセッシングと抗体結合とを妨げるが、より内部のPEGフリーな環境に位置する活性部位への小分子の接近を妨げない。我々は、タンパク質表面の相対的にリジン残基の少ない領域は、免疫原性が維持されるかもしれないと想定する。我々は、これらの残ったエピトープをより効率的にマスクするために、選択されたアルギニンコドンをリジンコドンに置換する部位特異的変異によって、付加的なPEG結合サイトを導入する手法を採用した。穏やかな化学反応性とSS-PEGによる誘導体化の特異性を維持するこのアプローチは、アルギニン残基もタンパク質表面に生じる可能性が高く、また、多くのアルギニン→リジン置換が酵素の折り畳み、サブユニットの集合、安定性又は機能について、有害な効果をもたらさないことを前提としている。」(第7188頁右欄第10行-第7189頁左欄第15行)、
と記載されている。

(3)対比
そこでまず、本願発明1と引用例1に記載された事項を比較すると、上記引用例記載事項(i)?(iii)の「ブタ肝臓尿酸オキシダーゼ」は、本願発明1における「哺乳動物種のウリカーゼタンパク質から成るタンパク質」に相当し、両者は、哺乳動物種のウリカーゼタンパク質から成るタンパク質に関するものである点で共通するが、(イ)該タンパク質が、前者では、1個から10個の間のリジン残基を挿入するように修飾されている組換え体であるのに対して、後者では、購入したものであり組換え体かどうかは不明であり、また、1個から10個の間のリジン残基を挿入するように修飾することは記載されていない点、で相違する。
また、本願発明17と引用例1に記載された事項を比較すると、両者は、ウリカーゼタンパク質から成るタンパク質に関連する発明である点で共通するが、(ロ)前者では、当該ウリカーゼタンパク質において利用可能な無毒性PEG結合部位を増加させるために、アルギニンの場所に1個から10個の間のリジン残基が導入する方法であるのに対して、後者では、ウリカーゼタンパク質においてそのように変異をさせることは記載されていない点、で相違する。

(4)当審の判断
上記引用例1、2にも記載のように、タンパク質をPEG化することにより、タンパク質本来の活性を保持しつつも、血中半減期を長くして、かつ、免疫原性を低下させることは、本願優先日前既に自明の技術的課題であり、かつ周知の手段であった。また、PEG化反応後にPEGが共有結合するのは、タンパク質のN末端のアミノ基とリジンの側鎖のアミノ基であることも、既に周知の技術的事項であった。
このような本願優先日当時の技術水準の下、例えば上記引用例2記載事項(v)の「我々は、タンパク質表面の相対的にリジン残基の少ない領域は、免疫原性が維持されるかもしれないと想定する。我々は、これらの残ったエピトープをより効率的にマスクするために、選択されたアルギニンコドンをリジンコドンに置換する部位特異的変異によって、付加的なPEG結合サイトを導入する手法を採用した。」という記載に接した当業者であれば、引用例1に記載のブタ肝臓尿酸オキシダーゼのPEG化において、さらにリジン残基の少ない領域にリジン残基を導入することは、容易に想到し得ることである。そしてその際、本願優先日前既に周知(必要があれば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)Vol.86,p.9412-0416、第1図参照。)のブタ肝臓尿酸オキシダーゼのアミノ酸配列及び核酸配列から、アルギニンコドンをリジンコドンに置換する部位特異的変異導入法により、リジン残基が1個以上導入された組換え体を製造することは、当業者であれば何ら困難なくなし得たことであり、そのようにして、本願発明1のタンパク質は得られるものであり、同様に、本願発明17の方法はなし得るものである。
また、本願明細書の実施例で具体的に製造した2つのキメラタンパク質以外のさまざまな態様のリジン残基導入ウリカーゼ又はその製法を包含する本願発明1及び17において奏される効果は、引用例1、2及び上記周知事項から予測し得えない程の格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1及び17は、引用例1、2の記載及び周知事項から当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1及び請求項17に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-05 
結審通知日 2012-09-06 
審決日 2012-09-19 
出願番号 特願2000-563819(P2000-563819)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 561- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名和 大輔  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 鵜飼 健
六笠 紀子
発明の名称 尿酸オキシダーゼ  
代理人 千葉 昭男  
代理人 富田 博行  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 社本 一夫  
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