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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1269379
審判番号 不服2011-8601  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-21 
確定日 2013-01-28 
事件の表示 特願2000-403386「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月19日出願公開、特開2002-202772〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
(1)経緯
本願は、平成12年12月28日の出願であって、明細書の特許請求の範囲について、平成22年8月20日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、同年11月22日付けで補正がなされ(以下、「補正2」という。)、平成23年1月28日付けで、補正2を決定をもって却下するとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、明細書の特許請求の範囲についての補正(以下、「補正3」という。)がなされたものである。
その後、前置審査において、平成23年9月1日付けで、明細書の特許請求の範囲についての補正(以下、「補正4」という。)がなされ、さらにその後、平成24年9月11日付けで当審より拒絶理由を通知したところ(以下、「当審拒絶理由」という。)、同年11月8日付けで、明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「補正5」という。)がなされた。

(2)当審拒絶理由
当審拒絶理由の概要は、本願の各請求項に係る発明は、いずれも、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である特開平11-327516号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、補正1、補正3、補正4、及び補正5によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりである。
「所定の表示周波数にて表示する表示装置において、
該表示周波数を切換えるための表示周波数切換部を備え、
該表示周波数切換部は、
ユーザの入力操作に応じて表示周波数設定指令を出力する入力手段と、
該入力手段からの表示周波数設定指令に基づいて表示周波数を制御する表示周波数切換え手段とを有し、
該表示周波数を漸増方向および漸減方向の何れかに多段階または連続に切換えるように構成されており、
該入力手段は、出力する該表示周波数設定指令により指令される表示周波数の範囲が、該地域の電源周波数以下の周波数を含むよう構成されており、
該表示周波数切換え手段は、該入力手段からの該表示周波数設定指令により該表示周波数を切換える範囲が、該地域の電源周波数以下の周波数を含むよう構成されている、表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用例に記載の事項・引用発明
(1)記載事項
これに対し、当審拒絶理由で引用した引用例である特開平11-327516号公報には、表示装置(発明の名称)に関し、次の事項(a)?(d)が図面とともに記載されている。
(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は表示装置であって、特にインバータ式の交流電源から出力される電圧によって発光されるバックライトを備えた液晶表示装置のような透過型のものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来この種の表示装置は、その発光効率の良さから発光手段として蛍光灯を使用する一方、表示回路の駆動用として使用される低圧の直流電圧を、インバータ回路を用いて昇圧および交流化することにより、所定のバックライト点灯用の電圧を供給することが一般に行われている。
【0003】また蛍光灯を使用したバックライトは、インバータ回路から供給される電圧のパルスレートを変更することによりその発光輝度を容易に変更できることから、インバータ回路における周波数が手動で変更できるものも提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した蛍光灯式の発光手段を使用した表示装置は、その使用環境によっては表示画面に横縞や波打ち状態が発生するなど、表示品質が悪くなることが知られている。
【0005】かかる不都合について本発明者は考察を行った結果、発光手段を点灯するためのインバータ回路における発振周波数と液晶表示板に画像を表示するためのフレーム周波数とが互いに接近あるいは逓倍関係になると、両者が干渉して画像の表示品質に悪影響を及ぼすことを知見した。
【0006】本発明はかかる知見に基づいてなされたものであって、手動または自動でフレーム周波数を微調整できる様に構成することにより、バックライトと表示画像が干渉することにより発生する表示品質の低下を的確に防止可能とするととともに、表示環境が変化しても最適な表示品質が容易に得られる表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる表示装置15は、図1(a)にその全体的な構成を概略的に示す如く、インバータ式の交流電源10で点灯される発光手段11を備えた透過型のものであって、表示画面12に表示される画像のフレーム周波数を、例えばフレーム周波数変更手段48の操作手段45を介し手動によって変更可能としたことを特徴とする。
【0008】また図1(b)の如く、上記したインバータ式の交流電源10の発振周波数および、表示画面12に表示される画像のフレーム周波数の検知手段41・42を各々備え、例えば所定の表示制御手段43を使用して、一方の周波数を他方の周波数変化に対応して自動制御される様に構成してもよい。
【0009】なお、上記した表示画面12上に表示される画像のフレーム周波数とインバータ式交流電源10の発振周波数とが、略同一または逓倍関係になることを阻止される様に設定されることが好ましい。
【0010】
【発明の効果】上記の如く、表示画面12上に表示される画像のフレーム周波数を手動または自動で変更できる様に構成したので、温度変化などによって使用する液晶表示板23の表示環境が変わった場合にあっても、最適の表示品質を容易に得ることができる。
【0011】更に上記したフレーム周波数と発光手段点灯用の電源周波数とが略同一または逓倍関係となるのを避けることにより、発光手段11と表示された画像とが互いに干渉することに起因する表示品質の悪化が未然に防止できる。」
(b)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる表示装置15は、図1(a)にその全体的な構成を概略的に示す如く、インバータ式の交流電源10で点灯される発光手段11を備えた透過型のものであって、表示画面12に表示される画像のフレーム周波数を、例えばフレーム周波数変更手段48の操作手段45を介し手動によって変更可能としたことを特徴とする。
【0008】また図1(b)の如く、上記したインバータ式の交流電源10の発振周波数および、表示画面12に表示される画像のフレーム周波数の検知手段41・42を各々備え、例えば所定の表示制御手段43を使用して、一方の周波数を他方の周波数変化に対応して自動制御される様に構成してもよい。
【0009】なお、上記した表示画面12上に表示される画像のフレーム周波数とインバータ式交流電源10の発振周波数とが、略同一または逓倍関係になることを阻止される様に設定されることが好ましい。
【0010】
【発明の効果】上記の如く、表示画面12上に表示される画像のフレーム周波数を手動または自動で変更できる様に構成したので、温度変化などによって使用する液晶表示板23の表示環境が変わった場合にあっても、最適の表示品質を容易に得ることができる。
【0011】更に上記したフレーム周波数と発光手段点灯用の電源周波数とが略同一または逓倍関係となるのを避けることにより、発光手段11と表示された画像とが互いに干渉することに起因する表示品質の悪化が未然に防止できる。」
(c)「【0019】本発明は上記した構成にあって、表示画面12上に表示される画像のフレーム周波数を手動によって変更可能とした構成に特徴を有する。
【0020】すなわちディスプレイ18に対する画像の表示は、例えば図5(b)の様に1画面を480本の走査線37で構成する場合にあっては、図5(a)に示す様に、垂直同期信号38と連動してビデオRAM36から1ライン分ずつ画像データ39を読み出し、表示画面12上の左上隅に設定した原点位置から列方向に線状に画像データ39を表示していく動作を、水平同期信号40と同期させて480回行方向に繰り返すことによって1枚の画像が表示される。更にこの1枚の画面表示動作を、垂直同期信号38の入力と連動して1秒間に数十ないし数百回繰り返すことにより、ちらつきのない動画再生を可能とする。
【0021】ところで、上記した画面表示の1秒当たりの繰り返し数で規定されるフレーム周波数は、各表示デバイス毎に最適値があり、その最適値よりも周波数が低くなると輝度が低下するとともに画像のちらつきが大きくなり、逆に周波数が高くなると輝度が高くなるとともにクロストークが発生する。
【0022】そこで本実施例にあっては、フレーム周波数の最適範囲が例えば65?75[Hz]に設計された液晶表示板23をディスプレイ18として使用した場合にあっては、その最適範囲の中央値である70[Hz]を初期設定値とする一方、上記した垂直同期信号38および水平同期信号40のパルスレートを手動で変更できる様に構成することにより、フレーム周波数が前記した指定範囲内あるいはそれを超えて変更できる様にしている。」
(d)「【0025】すなわち図2に例示するごとく、テストパターン46と、フレーム周波数の設定変更用ボタン47、および現在の設定値表示48とを同一の表示画面12上に備えることにより、画像表示の初期設定画面が構成される。更に、設定変更用ボタン47を操作することにより設定値表示48が増減するとともにテストパターン46でその設定状態が確認できるので、最適な表示状態となった時点でその値を確定することにより、設定は終了する。
【0026】上記した様に、表示画像を確認しながらフレーム周波数を手動で変更することにより画像品質の一番いい状態に調整するのに加えてあるいは代えて、自動的に制御させることも可能である。」

(2)引用発明
まず、上記記載事項(b)、(c)、及び基本的な構成を示す説明図であって、手動で調整が行われるものである図1(a)に記載されている操作手段45とフレーム周波数変更手段48とを併せて、フレーム周波数切換部と呼ぶこととする。
また、設定値変更ボタン47を手動操作すると、フレーム周波数変更手段48によりフレーム周波数が変更されるというのであるから、設定値変更ボタン47からフレーム周波数変更手段48を制御するためのなんらかの信号が出力されることは明らかであり、この出力信号をフレーム周波数設定信号と呼ぶこととする。
この点を踏まえ、上記記載事項(a)ないし(d)、及び図1(a)や表示装置を示す正面図である図2の記載を総合すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「所定のフレーム周波数にて表示する表示装置15において、
該フレーム周波数を変更するためのフレーム周波数切換部を備え、
該フレーム周波数切換部は、
手動によってフレーム周波数設定信号を出力する設定値変更ボタン47と、
該設定値変更ボタン47からのフレーム周波数設定信号によりフレーム周波数を変更するフレーム周波数変更手段48とを有し、
該フレーム周波数を70Hzを中央値として増減するように構成されており、
該設定値変更ボタン47は、出力するフレーム周波数設定信号により制御されるフレーム周波数の範囲が、65?75Hz、あるいはそれを超えて変更できるように構成されており、
該フレーム周波数変更手段48は、該設定値変更ボタン47からのフレーム周波数設定信号により該フレーム周波数を変更する範囲が、65?75Hz、あるいはそれを超えて変更できるように構成されている、表示装置15。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
(1)本願発明と、引用発明とを対比する。
ア まず、主たる構成要素に着目するに、引用発明における「フレーム周波数」、「表示装置15」、「フレーム周波数切換部」、「フレーム周波数設定信号」、「設定値変更ボタン47」、及び「フレーム周波数変更手段48」は、本願発明における「表示周波数」、「表示装置」、「表示周波数切換部」、「表示周波数設定指令」、「入力手段」、及び「表示周波数切換え手段」に、それぞれ相当する。

イ 以上の相当関係を踏まえると、引用発明における「該フレーム周波数を70Hzを中央値として増減するように構成され」は、本願発明における「該表示周波数を漸増方向および漸減方向の何れかに多段階または連続に切換えるように構成され」に相当するといえる。

ウ また、引用発明における「該設定値変更ボタン47は、出力するフレーム周波数設定信号により制御されるフレーム周波数の範囲が、65?75Hz、あるいはそれを超えて変更できるように構成されており、該フレーム周波数変更手段48は、該設定値変更ボタン47からのフレーム周波数設定信号により該フレーム周波数を変更する範囲が、65?75Hz、あるいはそれを超えて変更できるように構成されている」ことも、本願発明における「該入力手段は、出力する該表示周波数設定指令により指令される表示周波数の範囲が、該地域の電源周波数以下の周波数を含むよう構成されており、該表示周波数切換え手段は、該入力手段からの該表示周波数設定指令により該表示周波数を切換える範囲が、該地域の電源周波数以下の周波数を含むよう構成されている」ことも、共に、「該入力手段は、出力する該表示周波数設定指令により指令される表示周波数の範囲が、地域の電源周波数付近の所定の範囲となるよう構成されており、該表示周波数切換え手段は、該入力手段からの該表示周波数設定指令により該表示周波数を切換える範囲が、地域の電源周波数付近の所定の範囲となるよう構成されている」点で、共通する。

(2)してみると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「所定の表示周波数にて表示する表示装置において、
該表示周波数を切換えるための表示周波数切換部を備え、
該表示周波数切換部は、
ユーザの入力操作に応じて表示周波数設定指令を出力する入力手段と、
該入力手段からの表示周波数設定指令に基づいて表示周波数を制御する表示周波数切換え手段とを有し、
該表示周波数を漸増方向および漸減方向の何れかに多段階または連続に切換えるように構成されており、
該入力手段は、出力する該表示周波数設定指令により指令される表示周波数の範囲が、地域の電源周波数付近の所定の範囲となるよう構成されており、
該表示周波数切換え手段は、該入力手段からの該表示周波数設定指令により該表示周波数を切換える範囲が、地域の電源周波数付近の所定の範囲となるよう構成されている表示装置。」
(相違点)
本願発明では、「該入力手段は、出力する該表示周波数設定指令により指令される表示周波数の範囲が、該地域の電源周波数以下の周波数を含むよう構成されており、該表示周波数切換え手段は、該入力手段からの該表示周波数設定指令により該表示周波数を切換える範囲が、該地域の電源周波数以下の周波数を含むよう構成されている、」とあるように、要すれば、表示周波数を切り換える範囲が、地域の電源周波数以下の周波数を含むようにされているのに対し、引用発明では、「該設定値変更ボタン47は、出力するフレーム周波数設定信号により制御されるフレーム周波数の範囲が、65?75Hz、あるいはそれを超えて変更できるように構成されており、該フレーム周波数変更手段48は、該設定値変更ボタン47からのフレーム周波数設定信号により該フレーム周波数を変更する範囲が、65?75Hz、あるいはそれを超えて変更できるように構成されている、」とあるように、フレーム周波数(本願発明における「表示周波数」に相当する。以下、同様。)を切り換える範囲に地域の電源周波数が含まれるかどうかが明らかではない点。
5.当審の判断
(1)検討
上記相違点について、検討する。
表示周波数を下げることで、表示画面にちらつきは残るものの、表示装置の消費電力を抑えるようにすることは、この種の表示装置において周知技術であり、また、表示周波数を39Hz(すなわち、地域の電源周波数以下の周波数)に設定することも普通に行われている技術事項である。
この点については、当審拒絶理由で周知例として示した特開平11-3063号公報の「【0047】すなわち、第2の表示モードにおいて、図4に示すように、LCDコントローラ23から出力されるシフトクロック(SCK)の周波数を低くする。これにより、データの表示期間つまりフレーム周期が遅くなる。フレーム周期が遅くなると、LCD21にはフリッカが目立ち、画面自体は見にくくなるが、動作周波数が下がるため、LCD21の消費電力が下がるといった利点がある。」との記載や、同じく特開平6-119079号公報の「【0055】図8によると例えば、分周数が2の場合、転送クロックは3.0MHz、フレーム周波数は78Hzであり、ちらつきのない良好な画質が得られる。分周数が3で、フレーム周波数が52Hzの場合、表示画面にややちらつきがみられるが、転送クロック周波数が2.0MHzと低くなるので消費電力を抑えることができる。さらに、分周数が4で、フレーム周波数が39Hzの場合、表示画面はちらつきがみられるが、消費電力はさらに低く抑えることができる。」との記載を参照されたい。
してみると、表示装置の消費電力を抑えるために、フレーム周波数を変更する範囲が、65?75Hz、あるいはそれを超えて変更できるように構成されている引用発明において、その周波数の変更の範囲に、地域の電源周波数、すなわち、50Hz又は60Hz以下の周波数を含むようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たものであるといえる。

6.むすび
したがって本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおり、本願発明が特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-04 
結審通知日 2012-12-05 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2000-403386(P2000-403386)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 亮居島 一仁  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 雅之
山川 雅也
発明の名称 表示装置  
代理人 大塩 竹志  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  

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