• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1269383
審判番号 不服2012-7079  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-18 
確定日 2013-01-28 
事件の表示 特願2006-219995「現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月28日出願公開、特開2008- 46240〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年8月11日の出願であって、平成23年8月30日及び同年12月12日付けで手続補正がなされ、平成24年1月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年9月10日付け審尋に対して同年11月13日付けで回答書を提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成24年4月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成24年4月18日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤を表面上に担持して回転し、潜像担持体と対向する箇所で該潜像担持体の表面の潜像にトナーを供給して現像する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の軸線方向に沿って該二成分現像剤を搬送し、該現像剤担持体に該二成分現像剤を供給する現像剤供給搬送部材を備えた現像剤供給搬送路と、
該潜像担持体と対向する箇所を通過後の該現像剤担持体上から回収された該二成分現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該現像剤供給搬送部材と同方向に搬送する現像剤回収搬送部材を備えた現像剤回収搬送路と、
現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された余剰現像剤と、該現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された回収現像剤との供給を受け、該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該余剰現像剤と該回収現像剤とを攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する現像剤攪拌搬送部材を備え、攪拌後の攪拌現像剤を該現像剤供給搬送路に供給する現像剤攪拌搬送路とを有し、
上記現像剤攪拌搬送路と、上記現像剤供給搬送路とを仕切る仕切り部材を備え、
上記現像剤攪拌搬送部材として上記現像剤攪拌搬送路の下流側において現像剤を搬送して上記現像剤供給搬送路の上流側端部側へ供給する、スクリュピッチを有するスクリュ部材を用い、上記現像剤供給搬送部材として該現像剤攪拌搬送部材のスクリュピッチよりも長いスクリュピッチを有するスクリュ部材を用いたことを特徴とする現像装置。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-249545号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に現像剤のトナー濃度を均一にする現像器を備えた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来知られている複写機等の画像形成装置においては、像担持体にレーザー光を照射して形成する画像データに基づいて露光を行って静電潜像を形成し、形成した潜像をトナーにより現像した後、シートに転写し熱定着を行うことによって画像を形成している。画像形成装置の現像は、1成分現像剤またはトナーとキャリアから成る2成分現像剤を用いて像担持体に形成した静電潜像を可視化している。
【0003】2成分現像剤を用いる場合においては、像担持体の周囲に設けた位置が固定された複数の磁極の外周に回転可能なスリーブを配置した現像マグネットローラにより、磁気的に吸着されて磁気ブラシが形成されるとともに、スリーブの回転により像担持体に磁気ブラシが搬送される。像担持体に搬送された磁気ブラシは、像担持体上に形成された潜像の電位に応じたトナーを付着させて顕像化する。現像終了後の現像剤は回収され、外部から適宣補給されるトナーとともに再び現像に用いられる。このような構成に用いられる現像剤は、安定したトナー画像を形成するために一定のトナー量(トナー濃度)と潜像の電位に応じて付着するための帯電量を維持する必要がある。トナーの濃度は現像で消費したトナーと補給トナーとの分布、トナーの帯電量はキャリアとトナーとの混合時の摩擦により決定される。そこで、現像器はトナーとキャリアからなる現像剤の撹拌を充分に行って、トナー濃度分布を均一にするとともに、トナーに付与する帯電量を飽和させて、トナー画像の安定化を行っている。
【0004】図1は、従来の画像形成装置の現像器の模式図である。図において、現像器20は、像担持体10に対してほぼ平行に設置され2成分現像剤を撹拌搬送する第一のスクリューオーガ7、第二のスクリューオーガ8、補助スクリューオーガ8Aと、位置が固定された複数の磁極を内蔵する磁気ローラの外周に回転可能なスリーブを配置した現像マグネットローラ3を備えている。第一のスクリューオーガ7は、現像マグネットローラ3に現像剤を供給する。供給された現像剤は、現像マグネットローラ3の磁力により保持され、像担持体10上の潜像を現像する。現像後の現像剤は補助スクリューオーガ8Aと第二のスクリューオーガ8が配置された撹拌槽に回収される。回収された現像剤は補助スクリューオーガ8Aによって撹拌搬送され、搬送方向の下流位置で外部からトナーが補給される。第二のスクリューオーガ8は、補助スクリューオーガ8Aと逆方向に撹拌槽の現像剤を搬送して、搬送方向の下流位置で現像剤の滞留により第一のスクリューオーガ7の上流に現像剤を受け渡して、現像剤を再利用している。すなわち、補助スクリューオーガ8Aは、第二のスクリューオーガ8と逆方向に現像剤を搬送して、第二のスクリューオーガ8の下流位置で現像剤が過剰に滞留するのを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来の構成において、補助スクリューオーガ8Aの上流位置付近で回収されたトナー濃度の低下した現像剤の一部がトナーの補給を受ける前に、第二のスクリューオーガ8の下流位置で滞留している現像剤とともに第一スクリューオーガに受け渡される場合がある。トナー濃度が低下した現像剤が、第一のスクリューオーガ7に受け渡されて、現像に再利用されてしまうと、現像剤のトナー濃度が不均一になりシートに形成される画像の濃度が不安定になる。
【0006】本発明の目的は上記問題に鑑みなされたもので、その目的は安定した画像を形成する画像形成装置を提供することにある。」

(2)「【0016】次に、本発明に係る、現像器について説明する。図3は、現像器内の現像剤を撹拌搬送するスクリューオーガの模式図で、図において、スクリューオーガは回転軸11とスクリュー翼12を備え、回転駆動力が回転軸11に伝わると回転軸11に据え付けられたスクリュー翼12が回転して、回転軸11の軸線方向に現像剤を撹拌しながら搬送する。
【0017】まず、本発明の第一の実施の形態を図4を用いて説明する。図4は、複数のスクリューオーガを有する現像器の模式図で、(A)は現像器20の断面図、(B)は(A)のY方向からみた現像器20の内部を透視した側面図、(C)は現像器20における現像剤の搬送方向を示す説明図である。(C)において、矢印は現像剤の搬送方向を示す。
【0018】現像器20は、現像マグネットローラ3と少なくとも3本のスクリューオーガ7、8、9とブレード4を有している。スクリューオーガ7、8、9それぞれの回転軸11は、像担持体10に対して互いに平行で、かつ、上下関係に配置した上方の第一のスクリューオーガ7と下方の第二のスクリューオーガ8の間の高さの位置に第三のスクリューオーガ9が設けられている。スクリューオーガ7、8、9は図示しない駆動源の駆動力によって回転して現像器20内の現像剤を撹拌搬送する。
【0019】第一のスクリューオーガ7は、現像マグネットローラ3に現像剤を撹拌搬送しながら供給する。反時計廻りに回転する現像マグネットローラ3のスリーブは供給された現像剤を磁力により保持して磁気ブラシを形成する。ブレード4は、形成された磁気ブラシの高さを規制して第一のスクリューオーガ7に規制した現像剤を戻している。現像マグネットローラ3は、一定の高さに規制された磁気ブラシを像担持体10に搬送して、像担持体10上の潜像に現像剤のトナーを付着させて現像を行いトナー像とする。現像マグネットローラ3に供給されずに第一のスクリューオーガ7の下流位置(図中右側)に撹拌搬送された現像剤は、滞留により移動して開口部N3から第二のスクリューオーガ8の下流位置(図中右側)に落下する。また、現像によってトナー濃度が低下した現像剤は、現像マグネットローラ3からスクリューオーガ8の周囲に落下する。落下した現像剤はスクリューオーガ8の撹拌搬送によって回収され、スクリューオーガ8の下流位置(図中右側)に搬送される。スクリューオーガ8の下流位置に搬送されたそれぞれの現像剤は、一定量の滞留により開口部N1を通り斜め上方にある第三のスクリューオーガ9に移動する。移動した現像剤は補給口N4から補給されたトナーとともにスクリューオーガ9の撹拌搬送によって、下流位置(図中左側)に搬送される。第三のスクリューオーガ9の現像剤の撹拌搬送は、像担持体が潜像を形成する画像領域の幅において、他のスクリューオーガの撹拌搬送している現像剤と混じらないように設けた隔壁5で遮蔽されて行っている。スクリューオーガ9の下流位置に搬送された現像剤は、滞留により開口部N2を通り斜め上方にある第一のスクリューオーガ7に移動する。スクリューオーガ7に移動した現像剤は、撹拌搬送によって再び現像マグネットローラ3に供給され像担持体10の現像を行う。スクリューオーガの下流位置の滞留によって移動する現像剤が通る開口部N1、N2、N3は、像担持体10が潜像を形成する画像領域の幅より外側に設けて、像担持体10に対して現像剤の回収と供給を確実に行うとともに、開口部近傍で発生する現像剤の過剰な滞留を低減している。
【0020】すなわち、外部からトナーを補給して行う現像剤の循環搬送において、第二のスクリューオーガ8が撹拌搬送した現像剤は、像担持体10が潜像を形成する画像領域の幅より外側に設けた開口部N1を通して第三のスクリューオーガ9に移動し、他のスクリューオーガの撹拌搬送している現像剤が混じらない隔壁5により遮蔽されて第三のスクリューオーガ9が撹拌搬送を行い、連通する開口部N1を通して第一のスクリューオーガ7に移動するように構成している。
【0021】第三のスクリューオーガ9を設けたことにより2つの効果が挙げられる。1つめは、現像剤の滞留による移動は2段階に分けて行っているので、直接上方に移動させるより少ない滞留量で現像剤の移動を行える。このため、現像剤の過剰な滞留による、現像剤自身の温度上昇やスクリューオーガの回転軸にかかる応力が減少して安定した現像剤の搬送が行える。2つめは、第二のスクリューオーガ8の下流位置付近で回収した現像剤は外部から補給したトナーとともに、所定の搬送長で他のスクリューオーガが撹拌搬送している現像剤と混じらないように隔壁5で遮蔽して確実に第三のスクリューオーガ9で撹拌搬送を行っているので、現像剤の所定の撹拌が確保されトナー濃度の安定化が図れる。
【0022】また、第一の実施の形態においては、3本のスクリューオーガの構成により、現像剤の滞留による移動を2回に分けているが、滞留量をより小さくするために2回以上の複数回に分けて現像剤を移動させる構成、すなわち、少なくとも3本以上のスクリューオーガの構成でもよい。
【0023】次に、本発明の第二の実施の形態を図5を用いて説明する。図5は、複数のスクリューオーガを有する現像器の模式図で、(A)は現像器20の中央の断面図、(B)は現像器20の一端部、(C)は現像器20の他端部、(D)は(A)のY方向からみた現像器20の内部を透視した側面図である。
【0024】第一の実施の形態の図4においては、第三のスクリューオーガ9の回転軸11は他のスクリューオーガの回転軸と平行にした構成を示したが、…(略)…。」

(3)「【0037】
【発明の効果】本発明により、現像器の現像剤のトナー濃度の安定した画像形成装置が提供された。」

(4)現像器20の断面図である図4(A)、図4(A)のY方向からみた現像器20の内部を透視した側面図である図4(B)は、現像器20における現像剤の搬送方向を矢印で示す説明図である図4(C)からなる、複数のスクリューオーガを有する現像器の模式図である図4の記載から、3本のスクリューオーガ7、8、9は互いに隔壁5によって隔てられている3つの現像剤搬送路にそれぞれ備えられており、第一のスクリューオーガ7は第一の現像剤搬送路に備えられ、第二のスクリューオーガ8は第二の現像剤搬送路に備えられ、第三のスクリューオーガ9は第三の現像剤搬送路に備えられていること、及び、第一及び第二のスクリューオーガ7、8はいずれも第一の搬送方向(図4(B)、(C)中、右側)に現像剤を搬送し、第三のスクリューオーガ9は第一の搬送方向とは逆方向である第二の搬送方向(図4(B)、(C)中、左側)に現像剤を搬送することが見て取れる。

(5)上記(1)ないし(4)の記載からみて、引用例には、
「像担持体に対してほぼ平行に設置されトナーとキャリアから成る2成分現像剤を撹拌搬送する第一のスクリューオーガ、第二のスクリューオーガ、補助スクリューオーガと、位置が固定された複数の磁極を内蔵する磁気ローラの外周に回転可能なスリーブを配置した現像マグネットローラを備え、第一のスクリューオーガが現像マグネットローラに現像剤を供給し、供給された現像剤を現像マグネットローラの磁力により保持して像担持体上の潜像を現像し、現像後の現像剤を補助スクリューオーガと第二のスクリューオーガが配置された撹拌槽に回収し、回収された現像剤を補助スクリューオーガによって撹拌搬送し、搬送方向の下流位置で外部からトナーが補給され、この補助スクリューオーガは、第二のスクリューオーガと逆方向に現像剤を搬送して、第二のスクリューオーガの下流位置で現像剤が過剰に滞留するのを防止しており、第二のスクリューオーガが補助スクリューオーガと逆方向に撹拌槽の現像剤を搬送して、搬送方向の下流位置で現像剤の滞留により第一のスクリューオーガの上流に現像剤を受け渡して現像剤を再利用するようになっている従来の現像器では、補助スクリューオーガの上流位置付近で回収されたトナー濃度の低下した現像剤の一部がトナーの補給を受ける前に、第二のスクリューオーガの下流位置で滞留している現像剤とともに第一スクリューオーガに受け渡される場合があり、トナー濃度が低下した現像剤が第一のスクリューオーガに受け渡されて現像に再利用されてしまうと、現像剤のトナー濃度が不均一になりシートに形成される画像の濃度が不安定になる問題があることに鑑み、安定した画像を形成する画像形成装置を提供することを目的として、
現像マグネットローラと少なくとも3本のスクリューオーガとブレードを有し、駆動源の駆動力によって3本のスクリューオーガを回転して内部の現像剤を撹拌搬送する現像器において、
3本のスクリューオーガそれぞれの回転軸を、像担持体に対して互いに平行で、かつ、上下関係に配置し、上方の第一のスクリューオーガと下方の第二のスクリューオーガの間の高さの位置に第三のスクリューオーガを設けて、開口部近傍で発生する現像剤の過剰な滞留を低減した現像器であって、
第一のスクリューオーガは第一の現像剤搬送路に備えられ、第二のスクリューオーガは第二の現像剤搬送路に備えられ、第三のスクリューオーガは第三の現像剤搬送路に備え、第一ないし第三の現像剤搬送路は互いに隔壁によって隔てられており、
第一及び第二のスクリューオーガはいずれも第一の搬送方向に現像剤を搬送し、第三のスクリューオーガは第一の搬送方向とは逆方向である第二の搬送方向に現像剤を搬送するものであり、
第一のスクリューオーガは、現像マグネットローラに現像剤を撹拌搬送しながら供給し、
現像マグネットローラのスリーブは反時計廻りに回転して供給された現像剤を磁力により保持して磁気ブラシを形成し、
ブレードは、形成された磁気ブラシの高さを規制して第一のスクリューオーガに規制した現像剤を戻し、
現像マグネットローラは、一定の高さに規制された磁気ブラシを像担持体に搬送して、像担持体上の潜像に現像剤のトナーを付着させて現像を行ってトナー像とし、
現像マグネットローラに供給されずに第一のスクリューオーガの下流位置に撹拌搬送された現像剤は、滞留により移動して第一の開口部N3から第二のスクリューオーガの下流位置に落下し、
また、現像によってトナー濃度が低下した現像剤は、現像マグネットローラから第二のスクリューオーガの周囲に落下し、
落下した現像剤は第二のスクリューオーガの撹拌搬送によって回収され、第二のスクリューオーガの下流位置に搬送され、
第二のスクリューオーガの下流位置に搬送されたそれぞれの現像剤は、一定量の滞留により第二の開口部N1を通り斜め上方にある第三のスクリューオーガに移動し、
移動した現像剤は補給口N4から補給されたトナーとともに第三のスクリューオーガの撹拌搬送によって下流位置に搬送され、
第三のスクリューオーガの現像剤の撹拌搬送は、像担持体が潜像を形成する画像領域の幅において他のスクリューオーガの撹拌搬送している現像剤と混じらないように設けた前記隔壁で遮蔽されて行われ、
第三のスクリューオーガの下流位置に搬送された現像剤は、滞留により第三の開口部N2を通り斜め上方にある第一のスクリューオーガに移動し、
第一のスクリューオーガに移動した現像剤は、撹拌搬送によって再び現像マグネットローラに供給され像担持体の現像を行い、
第一ないし第3のスクリューオーガの下流位置の滞留によって移動する現像剤が通る第一ないし第3の開口部N3、N1、N2を設ける箇所は、像担持体が潜像を形成する画像領域の幅より外側にして像担持体に対して現像剤の回収と供給を確実に行うとともに、開口部近傍で発生する現像剤の過剰な滞留を低減するようにし、
外部からトナーを補給して行う現像剤の循環搬送において、第二のスクリューオーガが撹拌搬送した現像剤は、像担持体が潜像を形成する画像領域の幅より外側に設けた開口部N1を通して第三のスクリューオーガに移動し、他のスクリューオーガの撹拌搬送している現像剤が混じらない隔壁により遮蔽されて第三のスクリューオーガが撹拌搬送を行い、連通する開口部N1を通して第一のスクリューオーガに移動するように構成して、
現像剤の滞留による移動を2段階に分けて行い直接上方に移動させるより少ない滞留量で現像剤の移動を行えるようにし、現像剤の過剰な滞留による、現像剤自身の温度上昇やスクリューオーガの回転軸にかかる応力を減少して安定した現像剤の搬送が行えるようにし、
さらに、第二のスクリューオーガの下流位置付近で回収した現像剤を外部から補給したトナーとともに、所定の搬送長で他のスクリューオーガが撹拌搬送している現像剤と混じらないように隔壁で遮蔽した第三のスクリューオーガで確実に撹拌搬送を行って現像剤の所定の撹拌を確保しトナー濃度の安定化を図った現像器。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「キャリア」、「トナー」、「2成分現像剤」、「トナーとキャリアから成る2成分現像剤」、「現像剤」、「像担持体」、「現像マグネットローラ」、「第一のスクリューオーガ」、「第一の現像剤搬送路」、「第二のスクリューオーガ」、「第二の現像剤搬送路」、「第三のスクリューオーガ」、「第三の現像剤搬送路」、「隔壁」、「スクリューオーガ」、「現像マグネットローラに供給されずに第一のスクリューオーガの下流位置に撹拌搬送された現像剤」、「『現像マグネットローラから第二のスクリューオーガの周囲に落下』し、『第二のスクリューオーガの撹拌搬送によって回収され、第二のスクリューオーガの下流位置に搬送され』た『現像によってトナー濃度が低下した現像剤』」、「第三のスクリューオーガの撹拌搬送によって、第三のスクリューオーガの下流位置に搬送された現像剤」及び「現像器」は、それぞれ、本願発明の「磁性キャリア」、「トナー」、「二成分現像剤」、「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤」、「現像剤」「潜像担持体」、「現像剤担持体」、「現像剤供給搬送部材」、「現像剤供給搬送路」、「現像剤回収搬送部材」、「現像剤回収搬送路」、「現像剤攪拌搬送部材」、「現像剤攪拌搬送路」、「仕切り部材」、「スクリュピッチを有するスクリュ部材」、「現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された余剰現像剤」、「現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された回収現像剤」、「攪拌後の攪拌現像剤」及び「現像装置」に相当する。

(2)引用発明において、「現像剤供給搬送部材(第一のスクリューオーガ)」は、「現像剤担持体(現像マグネットローラ)」に「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤(現像剤)」を撹拌搬送しながら供給し、「現像剤担持体」のスリーブは、反時計廻りに回転して供給された「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤」を磁力により保持して磁気ブラシを形成し、ブレードは、形成された磁気ブラシの高さを規制して「現像剤供給搬送部材」に規制した「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤」を戻し、「現像剤担持体」は、一定の高さに規制された磁気ブラシを「潜像担持体(像担持体)」に搬送して、「潜像担持体」上の潜像に「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤」のトナーを付着させて現像を行ってトナー像とし、かつ、「現像剤供給搬送部材」は「現像剤供給搬送路(第一の現像剤搬送路)」に備えられているから、
引用発明の「現像剤担持体」と本願発明の「現像剤担持体」とは「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤を表面上に担持して回転し、潜像担持体と対向する箇所で該潜像担持体の表面の潜像にトナーを供給して現像する」点で一致し、
引用発明の「現像剤供給搬送部材」と本願発明の「現像剤供給搬送部材」とは「現像剤担持体の軸線方向に沿って該二成分現像剤を搬送し、該現像剤担持体に該二成分現像剤を供給する」点で一致し、
引用発明の「現像剤供給搬送路」と本願発明の「現像剤供給搬送路」とは「現像剤担持体の軸線方向に沿って該二成分現像剤を搬送し、該現像剤担持体に該二成分現像剤を供給する現像剤供給搬送部材を備えた」点で一致する。

(3)引用発明において、「現像剤担持体(現像マグネットローラ)」により一定の高さに規制された磁気ブラシを「潜像担持体(像担持体)」に搬送して「潜像担持体」上の潜像に現像剤のトナーを付着させて行った現像によってトナー濃度が低下した「二成分現像剤(現像剤)」は、「現像剤担持体」から「現像剤回収搬送部材(第二のスクリューオーガ)」の周囲に落下し、落下した「二成分現像剤」は「現像剤回収搬送部材」の撹拌搬送によって回収され、「現像剤回収搬送部材」の下流位置に搬送され、かつ、「現像剤回収搬送部材」は「現像剤回収搬送路(第二の現像剤搬送路)」に備えられ、「現像剤供給搬送部材及び現像剤回収搬送部材(第一及び第二のスクリューオーガ)」はいずれも第一の搬送方向に現像剤を搬送しているから、
引用発明の「現像剤回収搬送部材」と本願発明の「現像剤回収搬送部材」とは「潜像担持体と対向する箇所を通過後の該現像剤担持体上から回収された該二成分現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該現像剤供給搬送部材と同方向に搬送する」点で一致し、
引用発明の「現像剤回収搬送路」と本願発明の「現像剤回収搬送路」とは「潜像担持体と対向する箇所を通過後の該現像剤担持体上から回収された該二成分現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該現像剤供給搬送部材と同方向に搬送する現像剤回収搬送部材を備えた」点で一致する。

(4)引用発明において、「現像剤担持体(現像マグネットローラ)」に供給されずに「現像剤供給搬送部材(第一のスクリューオーガ)」の下流位置に撹拌搬送された「二成分現像剤(現像剤)」は、滞留により移動して第一の開口部N3から「現像剤回収搬送部材(第二のスクリューオーガ)」の下流位置に落下し、また、現像によってトナー濃度が低下した「二成分現像剤は、「現像剤担持体」から「現像剤回収搬送部材」の周囲に落下し、落下した「二成分現像剤」は「現像剤回収搬送部材」の撹拌搬送によって回収され、「現像剤回収搬送部材」の下流位置に搬送され、「現像剤回収搬送部材」の下流位置に搬送されたそれぞれの現像剤は、一定量の滞留により第二の開口部N1を通り斜め上方にある「現像剤攪拌搬送部材(第三のスクリューオーガ)」に移動し、移動した現像剤は補給口N4から補給されたトナーとともに「現像剤攪拌搬送部材」の撹拌搬送によって下流位置に搬送され、かつ、「現像剤供給搬送部材」は第一の搬送方向に現像剤を搬送し、「現像剤攪拌搬送部材」は第一の搬送方向とは逆方向である第二の搬送方向に現像剤を搬送するから、
「現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された余剰現像剤(現像マグネットローラに供給されずに第一のスクリューオーガの下流位置に撹拌搬送された現像剤)」及び「現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された回収現像剤(現像マグネットローラから第二のスクリューオーガの周囲に落下し、第二のスクリューオーガの撹拌搬送によって回収され、第二のスクリューオーガの下流位置に搬送された、現像によってトナー濃度が低下した現像剤)」は、いずれも、「現像剤攪拌搬送部材」に移動され「現像剤攪拌搬送部材」の撹拌搬送によって、「現像剤供給搬送部材」とは逆方向に搬送されることになる。
したがって、引用発明の「現像剤攪拌搬送部材」と本願発明の「現像剤攪拌搬送部材」とは「現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された余剰現像剤と、該現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された回収現像剤との供給を受け、該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該余剰現像剤と該回収現像剤とを攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する」点で一致し、
引用発明の「現像剤攪拌搬送部材」と本願発明の「現像剤攪拌搬送部材」とは「現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された余剰現像剤と、該現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された回収現像剤との供給を受け、該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該余剰現像剤と該回収現像剤とを攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する現像剤攪拌搬送部材を備え」る点で一致する。
そして、引用発明において、「現像剤攪拌搬送部材」の下流位置に搬送された「現像剤」は、滞留により第三の開口部N2を通り斜め上方にある「現像剤供給搬送路」に移動するから、引用発明の「現像剤攪拌搬送路」と本願発明の「現像剤攪拌搬送路」とは、「攪拌後の攪拌現像剤を該現像剤供給搬送路に供給する」点でも一致し、引用発明の「現像剤攪拌搬送部材」はスクリューオーガであるから、引用発明は、本願発明の「上記現像剤攪拌搬送部材として上記現像剤攪拌搬送路の下流側において現像剤を搬送して上記現像剤供給搬送路の上流側端部側へ供給する、スクリュピッチを有するスクリュ部材を用いた」との事項を備えている。

(5)引用発明の「仕切り部材(隔壁)」は、「現像剤供給搬送路、現像剤回収搬送路及び現像剤攪拌搬送路(第一ないし第三の現像剤搬送路)」を互いに隔てるものであり、「現像剤攪拌搬送部材(第三のスクリューオーガ)」の「現像剤」の撹拌搬送が、「潜像担持体(像担持体)」が潜像を形成する画像領域の幅において「現像剤供給搬送路及び現像剤回収搬送路(他のスクリューオーガ)」が撹拌搬送している「現像剤」と混じらずに行えるように、遮蔽するために設られたものであるから、本願発明の「仕切り部材」と、「上記現像剤攪拌搬送路と、上記現像剤供給搬送路とを仕切る」点で一致する。

(6)引用発明の「現像剤供給搬送部材」もスクリューオーガであるから、引用発明は、本願発明の「上記現像剤供給搬送部材としてスクリュピッチを有するスクリュ部材を用いた」との事項を備えている。

(7)上記(1)ないし(6)からみて、本願発明と引用発明とは、
「磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤を表面上に担持して回転し、潜像担持体と対向する箇所で該潜像担持体の表面の潜像にトナーを供給して現像する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の軸線方向に沿って該二成分現像剤を搬送し、該現像剤担持体に該二成分現像剤を供給する現像剤供給搬送部材を備えた現像剤供給搬送路と、
該潜像担持体と対向する箇所を通過後の該現像剤担持体上から回収された該二成分現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該現像剤供給搬送部材と同方向に搬送する現像剤回収搬送部材を備えた現像剤回収搬送路と、
現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された余剰現像剤と、該現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の下流側まで搬送された回収現像剤との供給を受け、該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該余剰現像剤と該回収現像剤とを攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する現像剤攪拌搬送部材を備え、攪拌後の攪拌現像剤を該現像剤供給搬送路に供給する現像剤攪拌搬送路とを有し、
上記現像剤攪拌搬送路と、上記現像剤供給搬送路とを仕切る仕切り部材を備え、
上記現像剤攪拌搬送部材として上記現像剤攪拌搬送路の下流側において現像剤を搬送して上記現像剤供給搬送路の上流側端部側へ供給する、スクリュピッチを有するスクリュ部材を用い、上記現像剤供給搬送部材としてスクリュピッチを有するスクリュ部材を用いた現像装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
前記現像剤攪拌搬送部材のスクリュピッチに比較して、前記現像剤供給搬送部材として用いたスクリュ部材が有するスクリュピッチが、本願発明では、「長い」のに対して、引用発明では、長いか否か不明である点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)現像ローラに二成分現像剤を直接供給する第1のスクリューと、二成分現像剤を攪拌しトナーとキャリアとを混合して第1のスクリューを介して間接的に現像ローラに二成分現像剤を供給する第2のスクリューとを備えた現像器において、第2のスクリューの搬送能力を低減したり、二成分現像剤のトナーとキャリアとを均一に混合させたり、トナーを十分に帯電させたりするために、第2のスクリューの第2スクリューピッチを小さめにして、第2スクリューピッチを第1のスクリューの第1スクリューピッチよりも短くしたものは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開平4-254878号公報(【0008】、【請求項1】参照。)、特開2002-139901号公報(【請求項5】、【0010】、【0049】、図1参照。)、特開2003-122124号公報(【0004】、【0041】?【0043】、図1参照。)、特開2003-307924号公報(【0011】、【0054】?【0056】、図3、図4参照。)、原査定で引用された特開2004-233597号公報(【0006】?【0015】、【0027】、図1、図2参照。)、特開2005-345858号公報(【0012】?【0018】、【0184】?【0200】、【0215】【表1】の現像装置3,4,10,11,12など、図2参照。)、特開2006-47456号公報(【0012】?【0017】、【0182】?【0194】、【0208】【表1】の現像装置1、図2参照。))。

(2)上記(1)からみて、引用発明において、前記「現像剤攪拌搬送部材((第三のスクリューオーガ))」のスクリュピッチを、前記「現像剤供給搬送部材(第一のスクリューオーガ)」のスクリュピッチに比較して短くして、前記「現像剤攪拌搬送部材」の搬送能力を低減したり、二成分現像剤のトナーとキャリアとを均一に混合させたり、トナーを十分に帯電させたりできるようにすること、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得た程度のことである。

(3)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(4)したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-03 
結審通知日 2012-12-07 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2006-219995(P2006-219995)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 住田 秀弘
清水 康司
発明の名称 現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置  
代理人 黒田 壽  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ