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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1269409
審判番号 不服2011-23837  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-04 
確定日 2013-01-30 
事件の表示 特願2007-329420「リソグラフィ装置およびデバイス製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月17日出願公開、特開2008-166777〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年12月21日(パリ条約による優先権主張2006年12月28日、2007年5月2日、米国)の出願であって、平成23年2月25日付けで手続補正がなされたが、同年7月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月4日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成24年2月22日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年5月21日付けで回答書が提出された。
また、合議体が上記回答書に添付の補正案に関連して、同年8月21に求釈明を行ったところ、同年8月29日付けでファクシミリによる釈明が行われた。

第2 平成23年11月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年11月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成23年11月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。
「リソグラフィ装置の照明源を構成する方法であって、
前記照明源を、照明システムの瞳面内で、それぞれ1つまたは複数の照明源ポイントを含む画素グループに分割することと、
パターンを露光するために、少なくとも1つの画素グループで形成された照明形状を選択することと、
複数の画素グループに対してリソグラフィメトリックを繰り返し計算することと、
前記繰り返し計算に基づき前記照明形状を調整することと、を含み、
前記計算の繰り返しは、前記複数の画素グループの中の一つの画素グループの状態変化に関して行われ、前記画素グループの状態変化は修正された照明形状を形成し、
前記繰り返し計算することは、前記修正された照明形状を形成するために前記画素グループを前記初期照明形状に追加すること又は前記初期照明形状から前記画素グループを取り除くことと、前記追加すること又は前記取り除くことに続いて、前記修正された照明形状を用いて前記リソグラフィメトリックを計算することと、を含み、
前記リソグラフィメトリックは、前記パターンのCD均一性、プロセスウインドウ、前記プロセスウインドウの寸法、MEEF、最大NILS、または焦点外れにおける最大NILSである、
方法。」(以下「補正発明」という。)

そこで、上記補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物
引用文献1:特開2004-191981号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(a)「【0008】
リソグラフィには、光学的近接効果として知られる問題がある。これは、高密度形態に比べた孤立した形態に対する回折パターンの固有の差によって生ずる。高密度形態は、入れ子になったパターンおよび密接した周期的形態を含むかも知れない。光学的近接効果は、高密度およびより孤立したラインを同時にプリントするときの限界寸法(CD)の差に繋がる。これらのラインは、マスク上で同じでもプリントしたとき異なる。
【0009】
光学的近接効果は、使用する照明設定にも依る。元来、所謂従来の照明モードは、投影レンズの瞳に照明放射線の円盤状強度分布を有するものを使った。しかし、より小さい形態を結像する趨勢で、小さい形態用のプロセスウインドウ、即ち、露出および/または合焦ラチチュードを改善するために、軸外し照明モードが標準になった。しかし、光学的近接効果は、環状照明のような、軸外し照明に対して悪くなることがある。
【0010】
この問題の一解決法は、レチクル上の異なる形態にバイアスを掛けることにより光学的近接補正(OPC)を適用した。バイアス掛けの一つの形によれば、レチクル上のより孤立したラインを、基板上の像でそれらが高密度ラインと同じ横寸法でプリントされるように、幾らか太くすることによってこれらの形態にバイアスを掛けた。バイアス掛のもう一つに形では、ラインが、孤立であろうと高密度であろうと、正しい長さにプリントされるように、端の補正を適用する。しかし、ピッチが小さく且つ軸外し照明では、CDがピッチの関数として大きく変動し、それでより多くのラインバイアス掛けを適用しなければならず、バイアス掛けがより複雑になる。光学的近接補正(OPC)のもう一つの形は、例えば、孤立した形態の回折を変えて、それらが正しい寸法でプリントされるように、レチクル上に、“散乱バー”としても知られる所謂“補助形態”を使うことである。OPCは、例えば、US5,821,014でおよびSPIE第4000巻、頁1015?1023、“自動平行光学的近接補正および検証システム”、ワタナベ外で議論されている。
【0011】
結像するパターンに依って放射線源の空間強度分布を最適化するための手法も知られている。一方法によれば、放射線源をブロックに分け、このシステムを、オンであるかオフである各ブロックで点線源に相当するとしてモデル化する。各線源に対して、今度は、基板上の選択した点での結果強度を計算する。次に最適化ルーチンを使って、基板での計算した強度とこのパターンを最高にプリントするための基板での理想的強度との間の差を最小にするように複数の照明源ブロックを含む最適線源分布を計算する。もう一つの手法は、この放射線源の全ブロックに対して実際の強度と理想的強度の差を計算し、それらをランク順に並べることである。この照明が閾値に達するまでランク順の線源ブロックを受入れることによって全体の照明強度分布を得る。これらの手法の更なる詳細は,US6,045,976から得ることができ、それを参考までにここに援用する。」
(b)「【0025】
図2は、図1のリソグラフィ投影装置に使うためにこの発明を具体化する方法のフローチャートである。ステップS10で、基板上に結像したいパターンについて、複数の形態を選択し、且つそれらの許容サイズマージン、即ち限界寸法を指定する。図3は、結像すべきパターンの一部を概略的に示し、輪によって指示する三つの形態11、12、13が選択した形態の例である。更に、初期化をステップS10で行って許容する光学的近接補正(OPC)範囲、即ち許可できる形態のバイアス(例えば、拡幅または伸長)の量の限界および補助形態サイズの限界を定め、および許容できる最小の重複プロセスウインドウ(OPW)閾値を選択する。どのOPWがまだ許容できるかを示す下限は:1)OPWの最大合焦ラチチュード;2)OPWの最大露出ラチチュード;3)1)と2)の関数、例えば二つの積;4)OPWの面積;または5)上記の要因の組合せ、例えばANDおよびORのような論理演算子を使う組合せによって定めることができる。
【0026】
先のステップおよびステップS20ないしS40も図1に描くような実際のリソグラフィ投影装置で実行する必要はなく、勿論、この物理的装置をシミュレートするコンピュータモデルを使って実行し、それでパターン、照明システム、投影レンズ等がディジタルデータとして表される。これらの部材を参照することは、勿論、コンピュータモデルでの対応する仮想部材を含むと読むべきである。
【0027】
S20で、放射線源を概念的に複数の要素に分割する。“放射線源”またはここで同等に使う“投影ビーム源”という表現は、レーザのような、放射線を発生する実際の線源を指すことができ、または、放射線を状態調節する積分器またはその他の手段のような、仮想または“二次”線源として作用し、且つビーム経路の後の部材に対して“線源”として効果的に作用する、放射線経路内の一部を指すことができる。以下の実施例で、この放射線源は、照明システムの瞳にビームを含む。この瞳は、典型的には円形で、図4(a)に概略的に円14によって表す。完全な放射線源は、マスクに入射する放射線の角強度分布に対応する、瞳14での位置の関数としての強度分布を有する。
【0028】
上記のように、この実施例の方法による計算のために、放射線源は複数の要素に分割され、各要素が線源の領域または画素に対応する。各線源要素は、“オン”か“オフ”のどちらでもよい。全体の線源は、“オン”である要素の和と考えることができる。計算を単純化するために、各線源要素は、図4(c)にバツ印15によって示すように、点線源によって近似することができる。一実施例によれば、ステップS20について以下に説明する計算は、全瞳にわたる、この線源を分割したあらゆる要素領域、即ち図4(a)のグリッド上のあらゆる点について順番に行う。」
(c)「【0034】
各線源要素(例えば、図4(c)のサブ要素15、16、17および18から成る)についてステップS20を続け、各選択した形態に対するプロセスウインドウを、例えば“プロリスの内部”クリスAマック著1997年、ISBN0-9650922-0-8、特に第10章に説明してあるように、計算する。
【0035】
図6(a)は、一つの線源要素について、選択した形態11、12および13に対するプロセスウインドウを概略的に示す。これらのプロセスウインドウは、結果として定めたサイズマージン内の形態の許容可能プリントを生ずることになる、線量および合焦(即ち、露出ラチチュードELおよび合焦ラチチュード(焦点深度DOF))の範囲を定める。次にこれらのプロセスウインドウの重複を最適化するOPC規則を決定する。これは、局部線量を効果的に減少するために、例えば構造体に大きい間隔のバイアスを掛けることによって、簡単であることができる。局部線量を効果的に減少すると、その形態に対するプロセスウインドウが押上げられ、それでその形態を露出するために高い線量が必要である。これは、図6(b)に概略的に表し、決定したOPC規則を適用する結果、プロセスウインドウ21、22および23が、最大に重複するように、図6(a)から移動する。バイアスを掛けるのと同様またはその代りに、プロセスウインドウの重複を最適化するために、補助形態の使用をOPCに含めることができる。OPC規則決定についての更なる情報は、“シリコン処理”SウオルフおよびRNタウバー著(ISBN0-9616721-6-1)からおよびそれに含まれている文献を参照することによって得ることができる。決定したOPC規則を適用する上記結果は、図6(b)の線量-合焦軸に沿うプロセスウインドウの位置に加えて、図6(b)のプロセスウインドウの形状および大きさに影響するかも知れない。従って、この発明によれば、プロセスウインドウ21、22および23の形状および大きさの変化を計算する追加のステップに続いて、プロセスウインドウの重複を最適化するOPCを決定する追加のステップおよび決定したOPC規則を適用する追加のステップをこの方法に含めることができる。
【0036】
図6(c)は、与えられた線源要素に対しおよび計算したOPC規則を適用することによって、選択した形態を全て成功裡にプリントできる、利用可能なプロセスウインドウを表す、結果として生じた重複プロセスウインドウOPWを示す。各線源要素に対し1組のOPC規則を決定し且つ最適化したOPWを得るように、これを繰返す。
【0037】
図7は、ステップS20の結果の概略的プロットである。各バツ印は、特定の線源要素に対するOPCおよびOPWのプロットを表す。図7は、この発明の理解を支援するための純粋に概略的な2Dプロットである。実際には、各組のOPC規則を多次元ベクトルおよび多次元ベクトル空間にあるバツ印として数学的に表すことができる。先に説明したように、このOPWは、多くのパラメータ、例えば露出ラチチュード、合焦ラチチュード、ウインドウ面積またはそれらの組合せによって特徴付けることができる。このOPC基準は、図7で垂直にプロットした一つの値に組合わせることができる。例えば、垂直にプロットした量は、関数:[OPWの最大DOF]についての閾値を有する[OPWの最大DOF]AND[OPWの最大露出ラチチュード]についての閾値、を表すことができる。数学的には、この関数は次のように書く:MaxDOF&(MaxDOF>F&MaxEL>E)。これは、最大DOFが選択した値Fより大きく且つ同時に最大ELが選択した値Eより大きい線源点についての最大DOFをプロットするだろう。これは単なる例に過ぎない。多くの他の組合せを案出することができる。
【0038】
ステップS30に従って、放射線源要素を評価し、最適化した線源の強度分布を形成することになっているものを選択しなければならない。先ず第1に、選択した線源要素は、ステップS10で指定した最小閾値を満たすOPWを持たねばならない。この閾値を図7に断続水平線で示す。この閾値は、例えば、最大焦点深度(DOF)が0.3μmより大きく且つ最大露出ラチチュード(EL)が7%より大きいかも知れない。この例では、閾値が二つ以上のパラメータを使う。その線以下のバツ印に対応する線源要素は、除去することができる。これは、図7の点のプロットに対して上に説明した関数を使って効果的に行うことができる。
【0039】
第2に、線源要素は、マスクのようなパターニング手段を設計するとき一貫性があるように、OPC規則の実質的に共通の組を持たねばならない。この発明を具体化する一方法によれば、図7のプロットで類似のOPCと共に高密度のバツ印を有する領域を指定することによってこれを行う。適する領域を図7に破線楕円形30で示す。数学的に言えば、この方法のステップは、多次元ベクトル空間で高密度の点を有する領域を探す。次に、この高密度領域で、全体の照明が適当に明るく;例えば、実際的目的のためにこの線源瞳の面積の少なくとも10%が照明されるように十分な線源要素がなければならないという1次基準で出発して点を選択する。従って、選択した線源要素のOPC値の範囲について必ずしも何か厳密な制限があるのではなく;特定のケースに対する点の密度に依るが、しかし、好適基準は、勿論、選択した線源要素点のOPC値の広がりが最小になるように、OPC値ができるだけ同じに近いことである。
【0040】
勿論、この発明の方法のためには、線源要素点を図7のようにプロットすることは必要なく、実際これは多次元OPCベクトルに対して物理的に可能ではないことは言うまでもない。そうではなく、図7は、この発明の理解を助けるための例示である。計算は、関連データを処理するプロセッサによって行うことができる。
【0041】
線源要素の組を選択してから、ステップS35でOPC規則の最終組を決定する。この組のOPC規則は、これらの選択した線源要素に対する共通のOPCベクトルに近似するOPCベクトルによって効果的に与えられる。ステップS35では、この最終組のOPC規則を、線源要素を別々に使うのではなく、選択した線源要素の和を含む、全体の最適化した線源を使って決定するのが好ましい。これらのOPC規則は、先に説明したように、OPWを最適化する既知のソフトウエアルーチンを使って決定する。
【0042】
ステップS40で、この最適化した方法の結果を出力する。これらの結果は、選択した放射線源要素のグループを表すデータおよびこの組のOPC規則を含む。任意に、選択した線源要素のグループに対するプロセスウインドウも出力できるが、これは本質的でない。図7を参照して、選択した放射線源要素のグループは、領域30内のバツ印に対応するものである。最適化した放射線源強度分布は、これらの要素の和によって与えられる。このプロセスウインドウ情報は、このOPC規則および最適化した線源を使ってパターンの正しい露出を助けることができるが、この情報は、ステッパまたはスキャナのようなリソグラフィ装置を設定するために必要不可欠ではない。」
(d)「【図2】


(e)「【図4(a)】

【図4(b)】

【図4(c)】



これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「リソグラフィ投影装置に使うための、照明システムの瞳にビームを含む放射線源の空間強度分布を最適化するための方法であって、
前記放射線源が複数の要素に分割され、
各要素が線源の領域または画素に対応し、各線源要素は、“オン”か“オフ”のどちらかであって、全体の線源は、“オン”である要素の和と考えることができ、
全瞳にわたり、この線源を分割したあらゆる要素領域について順番に計算を行うことを含み、
前記計算は、それぞれの線源要素に対するプロセスウインドウの形状および大きさの変化を計算するステップ、及び、
プロセスウインドウの重複を最適化するOPCを決定する追加のステップを有し、
放射線源要素を評価し、最適化した線源の空間強度分布を形成することになっている線源要素を選択する、
方法。」(以下「引用発明」という。)

3.対比
補正発明と引用発明を比較する。
(あ)引用発明の「放射線源」は補正発明の「照明源」に相当するから、引用発明の「リソグラフィ投影装置に使うための」「放射線源の空間強度分布を最適化するための方法」は、補正発明の「リソグラフィ装置の照明源を構成する方法」に相当する。
(い)また、引用発明の「照明システムの瞳にビームを含む放射線源」「が複数の要素に分割され」ることは、補正発明の「照明源を、照明システムの瞳面内で、画素グループに分割すること」に相当する。ここで、引用発明の「複数の要素に分割され」た「放射線源」は、「“オン”か“オフ”のどちらかであ」るから、該放射線源がそれぞれ1つの照明源ポイントを含むことは明らかである。
(う)引用発明は「全体の線源は、“オン”である要素の和と考えることができ」しかも「最適化した線源の強度分布を形成することになっている線源要素を選択する」から、補正発明の「パターンを露光するために、少なくとも1つの画素グループで形成された照明形状を選択すること」に相当する構成を有する。
(え)引用発明は「それぞれの線源要素に対するプロセスウインドウの形状および大きさの変化を計算するステップ」を有し、変化を計算する場合、変化する前後の状態を計算するのが通常であるから、引用発明は補正発明の「プロセスウインドウ、前記プロセスウインドウの寸法であるリソグラフィメトリックを計算すること」に相当する構成を有する。また、引用発明の「全瞳にわたり、この線源を分割したあらゆる要素領域について順番に計算を行うこと」は、補正発明の「複数の画素グループに対してリソグラフィメトリックを繰り返し計算すること」に相当する。
(お)引用発明の「放射線源要素を評価し、最適化した線源の強度分布を形成することになっている線源要素を選択する」ことは、補正発明の「繰り返し計算に基づき前記照明形状を調整すること」に相当する。

してみると両者は、
「リソグラフィ装置の照明源を構成する方法であって、
前記照明源を、照明システムの瞳面内で、それぞれ1つまたは複数の照明源ポイントを含む画素グループに分割することと、
パターンを露光するために、少なくとも1つの画素グループで形成された照明形状を選択することと、
複数の画素グループに対してリソグラフィメトリックを繰り返し計算することと、
前記繰り返し計算に基づき前記照明形状を調整することと、を含み、
前記リソグラフィメトリックは、プロセスウインドウ、前記プロセスウインドウの寸法である、
方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
補正発明が「前記計算の繰り返しは、前記複数の画素グループの中の一つの画素グループの状態変化に関して行われ、前記画素グループの状態変化は修正された照明形状を形成し、前記繰り返し計算することは、前記修正された照明形状を形成するために前記画素グループを前記初期照明形状に追加すること又は前記初期照明形状から前記画素グループを取り除くことと、前記追加すること又は前記取り除くことに続いて、前記修正された照明形状を用いて前記リソグラフィメトリックを計算すること」を含んでいるのに対して、引用発明がそれらの事項を含んでいるかどうか不明な点。

4.判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、「全瞳にわたり、この線源を分割したあらゆる要素領域について順番に計算を行うこと」によって「放射線源要素を評価し、最適化した線源の強度分布を形成することになっている線源要素を選択する」ものであり、しかも「それぞれの線源要素に対する・・・変化を計算するステップ」を有するものであるところ、変化を計算する手法として、各要素の状態を変化させながら修正し、繰り返し計算することは、ごく普通に行われている周知の手法である。また、引用発明が「各線源要素は、“オン”か“オフ”のどちらかであって、全体の線源は、“オン”である要素の和と考えることができ」るものであることを考慮すれば、前記繰り返し計算することを「修正された照明形状を形成するために画素グループを前記初期照明形状に追加すること」とする点に、格別の技術的困難性も阻害要因もない。

してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、補正発明全体の効果も、引用発明に基いて当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人が上記回答書に添付した補正案、及びそれに関する釈明結果(前記「第1 手続の経緯」参照)を参酌しても、上記判断に変わりはない。

5.小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成23年11月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年2月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「リソグラフィ装置の照明源を構成する方法であって、
前記照明源を、照明システムの瞳面内で、それぞれ1つまたは複数の照明源ポイントを含む画素グループに分割することと、
パターンを露光するために、少なくとも1つの画素グループで形成された照明形状を選択することと、
複数の画素グループに対してリソグラフィメトリックを繰り返し計算することと、
前記繰り返し計算に基づき前記照明形状を調整することと、を含み、
前記計算の繰り返しは、前記複数の画素グループの中の一つの画素グループの状態変化に関して行われ、前記画素グループの状態変化は修正された照明形状を形成し、
前記繰り返し計算することは、前記修正された照明形状を形成するために前記画素グループを前記初期照明形状に追加すること又は前記初期照明形状から前記画素グループを取り除くことと、前記追加すること又は前記取り除くことに続いて、前記修正された照明形状を用いて前記リソグラフィメトリックを計算することと、を含む、
方法。」(以下「本願発明」という。)

1.引用刊行物
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。

2.対比
本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、少なくとも「前記リソグラフィメトリックは、前記パターンのCD均一性、プロセスウインドウ、前記プロセスウインドウの寸法、MEEF、最大NILS、または焦点外れにおける最大NILSである、」という事項を削除することにより拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-04 
結審通知日 2012-09-05 
審決日 2012-09-20 
出願番号 特願2007-329420(P2007-329420)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋田 将行  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 森林 克郎
吉川 陽吾
発明の名称 リソグラフィ装置およびデバイス製造方法  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  

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