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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1269412
審判番号 不服2012-9629  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-24 
確定日 2013-01-30 
事件の表示 特願2011-138279「モバイル無線アクセスポイントを提供する方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日出願公開、特開2011-239430〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年3月2日(パリ条約に基づく優先権主張 2005年3月2日 米国、2005年6月1日 米国)を国際出願日とする国際出願である特願2007-558309号の一部を平成23年6月22日に特願2011-138279号として新たな特許出願としたものであって、平成24年1月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年5月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年5月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
モバイルアクセスポイントであって、
ユーザによる使用のために、音声通信アプリケーション又はデータ通信アプリケーションを含む1又は複数の端末機能を提供するように構成された端末モジュールと、
少なくとも1つのクライアントデバイスによる使用のために、前記少なくとも1つのクライアントデバイスに対してコンピュータネットワークへのアクセスを提供することを含む1又は複数のゲートウェイ機能を提供するように構成されたゲートウェイモジュールとを備え、
前記ゲートウェイモジュールは更に、前記複数のクライアントと第1の無線通信プロトコルを使用して前記モバイルアクセスポイントとの間の通信を達成するように更に構成され、及び宛先コンピュータネットワークにアクセスするために、前記複数のクライアントによって使用可能なアクセスポイントサービスを提供することによって、クライアントデバイスにアクセスを提供するように更に構成された前記ゲートウェイモジュールであって、IP技術に基づくネットワークにおいて、第2の無線通信プロトコルを使用して前記コンピュータネットワークとの通信を達成するように構成され、
前記モバイルアクセスポイントは更に、
対応する機能を有効にするために前記端末モジュール及び前記ゲートウェイモジュールを実行するように構成されたプロセッサを備え、
前記第1の無線通信プロトコルは802.11ファミリを含み、前記第2の無線通信プロトコルは音声通信とは区別されたデータ通信を提供することができるパケットデータサービスノード通信プロトコルを含むモバイルアクセスポイント。」


第3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(米国特許出願公開第2002/0163895号明細書)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。


(a)段落番号[0041]-[0045]
「[0041] I. System Overview
[0042] The following description and claims relate to a system that accesses information from a wide area network (“WAN”), such as the Internet, and local wireless devices in response to short-range radio signals. The network may also be an IP based public or private network, such as a corporate secured network using VPN.
[0043] FIG. 1 illustrates system 100 according to an embodiment of the present invention. System 100 includes terminals 107 coupled to wireless gateway device 106 . In an embodiment of the present invention, gateway device 106 and one or more terminals 107 communicate to form a personal area network (“PAN”). In an embodiment of the present invention, terminals 107 are coupled to gateway device 106 by short-range radio signals 110 . In an embodiment of the present invention, terminals 107 are a desktop computer, a laptop computer, a personal digital assistant, a headset, a pager, a printer, a watch, thin terminal, digital camera or an equivalent thereof. In an embodiment of the present invention, terminals 107 include a Bluetooth^(TM) 2.4 GHz transmitter/receiver. Likewise, gateway device 106 includes a Bluetooth^(TM) 2.4 GHZ transmitter/receiver. In an alternate embodiment of the present invention, a Bluetooth^(TM) 5.7 GHZ transmitter/receiver is used. Gateway device 106 and terminals 107 hardware are illustrated in FIGS. 3 a - b.
[0044] In alternate embodiments of the present invention, other local wireless technologies such as 802.11 or HomeRF signals are used to communicate between gateway device 106 and terminals 107 .
[0045] In an embodiment of the present invention, gateway device 106 is coupled to cellular network 105 by cellular signals 111 using a protocol, such as a Global and System for Mobile communications (“GSM”) protocol. In alternate embodiments, a Code Division Multiple Access (“CDMA”), CDMA 2000 or Time Division Multiple Access (“TDMA”), or General Packet Radio Service (“GPRS”) protocol is used. 」
(当審訳:
[0041]I. システム概要
[0042]以下に述べる発明の詳細な説明と、特許請求の範囲は、インターネットのようなWAN上の情報にアクセスするシステムと、ショートレンジ無線信号に反応するローカルな無線デバイスと関連するものである。ネットワークは、IPによるパブリックネットワーク、あるいはVPN(仮想専用網)安全性の確保された企業内ネットワークのようなプライベートネットワークである。
[0043]図1は、本発明の具体例におけるシステム100を示している。システム100は、ゲートウェイデバイス106に繋がれた端末107を含んでいる。ここで、ゲートウェイデバイス106と1つ以上の端末107は、PANを形成するために通信する。端末107は、ショートレンジ無線信号110により、ゲートウェイデバイス106に繋がれる。端末107は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、PDA(携帯情報端末)、ヘッドセット、ページャ、プリンター、時計、薄型端末、デジタルカメラ、及びその均等物である。端末107は、ブルートゥース2.4GHz送受信機を含んでいる。同様に、ゲートウェイデバイス106も、ブルートゥース2.4GHz送受信機を含んでいる。本発明の別の具体例においては、ブルートゥース5.7GHz送受信機が使われている。ゲートウェイデバイス106と端末107のハードウェアについては、図3a,bに示される。
[0044]本発明の別の具体例では、IEEE802.11規格の信号や、HomeRF信号のような他のローカル無線技術が、ゲートウェイデバイス106と端末107の間の通信のために用いられる。
[0045]本発明の具体例において、ゲートウェイデバイス106は、GSMのようなプロトコルを用いて、セルラー信号111により、セルラーネットワーク105に繋がれる。別の具体例では、CDMA(符号分割多元接続)、CDMA2000、TDMA(時分割多元接続)、あるいはGPRSといったプロトコルが用いられる。」

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「インターネットのようなWAN上の情報にアクセスするシステム100であって、
無線デバイスは、ショートレンジ無線信号に反応し、
ネットワークは、IPによるパブリックネットワーク、あるいはVPN(仮想専用網)安全性の確保された企業内ネットワークのようなプライベートネットワークであり、
システム100は、ゲートウェイデバイス106に繋がれた端末107を含んでおり、ここで、ゲートウェイデバイス106と1つ以上の端末107は、PANを形成するために通信し、端末107は、ショートレンジ無線信号110により、ゲートウェイデバイス106に繋がれ、端末107は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、PDA(携帯情報端末)、ヘッドセット、ページャ、プリンター、時計、薄型端末、デジタルカメラ、及びその均等物であり、
IEEE802.11規格の信号のようなローカル無線技術が、ゲートウェイデバイス106と端末107の間の通信のために用いられ、
ゲートウェイデバイス106は、GPRSといったプロトコルを用いて、セルラー信号111により、セルラーネットワーク105に繋がれる、
システム100。」


第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点

引用発明において、端末107は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、PDA(携帯情報端末)、ヘッドセット、ページャ、プリンター、時計、薄型端末、デジタルカメラ、及びその均等物であり、端末107は、ショートレンジ無線信号110により、ゲートウェイデバイス106に繋がれている。したがって、ゲートウェイデバイス106が、ユーザによる端末107の使用のために、ショートレンジ無線信号110により、音声通信アプリケーション又はデータ通信アプリケーションを含む1又は複数の端末機能を提供するように構成された部分を備えていることは明らかである。よって、引用発明のゲートウェイデバイス106は、本願発明のモバイルアクセスポイントと、「ユーザによる使用のために、音声通信アプリケーション又はデータ通信アプリケーションを含む1又は複数の端末機能を提供するように構成された端末モジュール」を備える点で一致している。

本願発明の第1の無線通信プロトコルは802.11ファミリを含むから、引用発明のIEEE802.11規格が、本願発明の「第1の無線通信プロトコル」に相当する。

例えば、国際公開第2004/084500号(2004年3月8日 国際公開)の第1頁第6-14行に、
「 Background of the Invention
Mobile radio networks such as the Global System for Mobiles (GSM) and the Universal Mobile Telecommunications System (UMTS) can provide a facility for communicating data in circuit switched mode or using data packets. In circuit switched mode a physical communications channel is allocated for a logical communications channel throughout a call. For the communication of data packets, the General Packet Radio Service (GPRS) has been developed. GPRS provides support for a packet-orientated service, which attempts to optimise network and radio resources for packet data communications such as for example Internet Packets (IP).」
(当審訳:
背景技術
例えば、モバイル機器のためのグローバルシステム(Global System for Mobiles:以下、GSMという。)及びユニバーサルモバイル電気通信システム(Universal Mobile Telecommunications System:以下、UMTSという。)等の移動体無線ネットワークは、回線交換モード又はパケット交換モードでデータを通信するための機能を提供できる。回線交換モードでは、呼の全体に亘る論理的な通信チャンネルに、物理的な通信チャンネルを割り当てる。一方、データパケット通信については、汎用パケット無線サービス(General Packet Radio Service:以下、GPRSという。)が開発されている。GPRSは、例えば、インターネットパケット(IP)等のデータパケット通信のためにネットワーク及び無線リソースを最適化することを試みるパケット指向サービスをサポートする。)
と記載されているように、GPRSは、GSMの音声通信とは区別されたデータ通信を提供する。
本願発明の第2の無線通信プロトコルは、音声通信とは区別されたデータ通信を提供することができるパケットデータサービスノード通信プロトコルを含むから、引用発明のGPRSといったプロトコルが、本願発明の「第2の無線通信プロトコル」に相当する。

引用発明の1つ以上の端末107が、本願発明の「少なくとも1つのクライアントデバイス」に相当する。
引用発明において、ゲートウェイデバイス106は、セルラー信号111により、セルラーネットワーク105に繋がれ、且つ端末107は、ゲートウェイデバイス106に繋がれ、インターネットのようなWAN上の情報にアクセスするから、引用発明のゲートウェイデバイス106が、
「少なくとも1つのクライアントデバイスによる使用のために、前記少なくとも1つのクライアントデバイスに対してコンピュータネットワークへのアクセスを提供することを含む1又は複数のゲートウェイ機能を提供するように構成され」、
「宛先コンピュータネットワークにアクセスするために、前記複数のクライアントによって使用可能なアクセスポイントサービスを提供することによって、クライアントデバイスにアクセスを提供するように更に構成され」、
「IP技術に基づくネットワークにおいて、第2の無線通信プロトコルを使用して前記コンピュータネットワークとの通信を達成するように構成され」た部分を備えることは明らかである。
よって、引用発明のゲートウェイデバイス106は、本願発明のモバイルアクセスポイントと、
「少なくとも1つのクライアントデバイスによる使用のために、前記少なくとも1つのクライアントデバイスに対してコンピュータネットワークへのアクセスを提供することを含む1又は複数のゲートウェイ機能を提供するように構成され」、
「宛先コンピュータネットワークにアクセスするために、前記複数のクライアントによって使用可能なアクセスポイントサービスを提供することによって、クライアントデバイスにアクセスを提供するように更に構成され」、
「IP技術に基づくネットワークにおいて、第2の無線通信プロトコルを使用して前記コンピュータネットワークとの通信を達成するように構成され」たゲートウェイモジュールを備える点で一致している。


したがって、本願発明のモバイルアクセスポイントと引用発明のゲートウェイデバイス106の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「モバイルアクセスポイントであって、
ユーザによる使用のために、音声通信アプリケーション又はデータ通信アプリケーションを含む1又は複数の端末機能を提供するように構成された端末モジュールと、
少なくとも1つのクライアントデバイスによる使用のために、前記少なくとも1つのクライアントデバイスに対してコンピュータネットワークへのアクセスを提供することを含む1又は複数のゲートウェイ機能を提供するように構成されたゲートウェイモジュールとを備え、
前記ゲートウェイモジュールは、宛先コンピュータネットワークにアクセスするために、前記複数のクライアントによって使用可能なアクセスポイントサービスを提供することによって、クライアントデバイスにアクセスを提供するように更に構成された前記ゲートウェイモジュールであって、IP技術に基づくネットワークにおいて、第2の無線通信プロトコルを使用して前記コンピュータネットワークとの通信を達成するように構成され、
前記第1の無線通信プロトコルは802.11ファミリを含み、前記第2の無線通信プロトコルは音声通信とは区別されたデータ通信を提供することができるパケットデータサービスノード通信プロトコルを含むモバイルアクセスポイント。」である点。


[相違点1]
本願発明では、ゲートウェイモジュールは更に、前記複数のクライアントと第1の無線通信プロトコルを使用して前記モバイルアクセスポイントとの間の通信を達成するように構成されているのに対して、引用発明において、前記複数のクライアントと第1の無線通信プロトコルを使用して前記モバイルアクセスポイントとの間の通信を達成するものが、ゲートウェイモジュールであるのか否か不明な点。

[相違点2]
本願発明のモバイルアクセスポイントは、対応する機能を有効にするために前記端末モジュール及び前記ゲートウェイモジュールを実行するように構成されたプロセッサを備えるのに対して、引用発明には、対応する機能を有効にするために前記端末モジュール及び前記ゲートウェイモジュールを実行するように構成されたプロセッサが明記されていない点。


第5.相違点についての検討

[相違点1に対して]
引用発明において、 IEEE802.11規格の信号のようなローカル無線技術が、ゲートウェイデバイス106と端末107の間の通信のために用いられるから、ゲートウェイデバイス106が、「前記複数のクライアントと第1の無線通信プロトコルを使用して前記モバイルアクセスポイントとの間の通信を達成する」機能を有していることは明らかである。
そして、その「前記複数のクライアントと第1の無線通信プロトコルを使用して前記モバイルアクセスポイントとの間の通信を達成する」機能を、ゲートウェイデバイス106の中のどのモジュールが担当するのかは、設計的事項に過ぎないと認められる。

[相違点2に対して]
対応する機能を有効にするために、モジュールを実行するように構成されたプロセッサを備えることは、通常行われている周知技術に過ぎない。また、刊行物1のゲートウェイデバイス106の構成を示す図3aには、アプリケーションプロセッサ301が記載されているから、引用発明において、対応する機能を有効にするために端末モジュール及びゲートウェイモジュールを実行するように構成されたプロセッサを備えることは、容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-03 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-19 
出願番号 特願2011-138279(P2011-138279)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 実  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 加藤 恵一
本郷 彰
発明の名称 モバイル無線アクセスポイントを提供する方法及びシステム  
代理人 河野 直樹  
代理人 佐藤 立志  
代理人 高倉 成男  
代理人 白根 俊郎  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 竹内 将訓  
代理人 岡田 貴志  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 野河 信久  
代理人 中村 誠  
代理人 砂川 克  

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