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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E02D
管理番号 1269758
審判番号 無効2010-800046  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-03-15 
確定日 2013-02-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4392001号「マンホール蓋枠取替え工法」の特許無効審判事件についてされた平成23年 1月14日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成23年(行ケ)第10062号平成23年 6月23日言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4392001号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成15年 4月 1日:原出願(特願2003-349490号)出願
優先権主張 平成14年4月26日
平成18年 4月24日:本件特許出願
(特願2006-119236号)分割出願
平成21年10月16日:設定登録
平成22年 3月15日:本件無効審判の請求
平成22年 5月31日:被請求人より答弁書提出
平成22年 6月29日:無効理由通知,職権審理結果通知
平成22年 8月 2日:被請求人より意見書提出
平成22年 8月18日:審理事項通知
平成22年10月22日:被請求人より陳述要領書提出
平成22年10月22日:請求人より陳述要領書提出
平成22年11月 5日:口頭審理
平成22年11月24日:被請求人より上申書提出
平成22年12月10日:請求人より上申書提出
平成23年 1月14日:1回目審決(請求成立)
平成23年 2月23日:被請求人 知的財産高等裁判所出訴
(平成23年行ケ10062号)
平成23年 5月12日 訂正審判請求
(訂正2011-390052号,後日取下げ)
平成23年 6月23日 特許法第181条第2項による審決取消決定
平成23年 7月25日 被請求人 訂正の請求
(特許法第134条の3第5項による)
平成23年 9月15日 請求人より弁駁書提出

なお,特許法第134条の3第5項の規定により,同条第2項の規定により指定された期間の末日である平成23年7月25日に,訂正2011-390052の審判請求書に添付された特許請求の範囲,明細書を援用した本件無効審判の「訂正の請求」がされたものとみなした。以下,上記審判請求書による訂正の請求を「訂正請求」という。

第2 請求人の主張
1 無効理由について
請求人は,特許第4392001号の特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として,以下の無効理由を主張し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
[無効理由]
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は,甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件発明に係る特許は特許法第123条第1項第2号に該当し,無効にすべきである。
[証拠方法]
甲第 1号証 特開2000-336682号公報
甲第 2号証 特開昭62-125109号公報
甲第 3号証 特開昭63-55204号公報
甲第 4号証 特開2001-295216号公報
甲第 5号証 特開2000-144773号公報
甲第 6号証 特開平9-158114号公報
甲第 7号証 実用新案登録第2502400号公報
甲第 8号証 特許第2779264号公報
甲第 9号証 特許第2979389号公報
甲第10号証 登録実用新案第3070638号公報
甲第11号証 特開平4-131407号公報
甲第12号証 実願昭61-45971号
(実開昭62-159510号)のマイクロフィルム

2 訂正請求による訂正について
訂正請求による訂正について,請求人は概略以下の主張をした。
(1)訂正請求による特許請求の範囲の請求項1に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮ではないから特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的としていない。
また,訂正請求による訂正は,願書に添付された特許請求の範囲,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではないから,特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項の規定に適合しない。
(2)仮に,訂正が認められたとしても,訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は,刊行物1?3(後記「第4」参照)記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件訂正発明に係る特許は特許法第123条第1項第2号に該当し,無効にすべきである。
また,訂正を認めることにより,本件訂正発明は,特許法第36条第4項第1号,同条第6項第1号,第2号の要件を満たさないものとなるから,本件訂正発明に係る特許は,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効にすべきである。

第3 被請求人の主張
1 請求人主張の無効理由について
被請求人は,請求人主張の無効理由に対して,答弁書を提出し,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定に違反しておらず,特許法第123条第1項第2号に該当しない旨主張した。

2 当審が通知した無効理由について
被請求人は,後述する当審より通知した無効理由に対し,意見書及び平成22年11月24日付けの上申書を提出し,本件特許の請求項1に係る発明は,刊行物1?3に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定に違反しておらず,特許法第123条第1項第2号に該当しない旨主張し,証拠方法として乙第1号証を提出した。被請求人の主張の内容は概略,次のとおりである。

乙第1号証 特開昭62-125109号公報

ア 刊行物1記載の発明に刊行物2記載のカッターを採用する動機付けとして,無効理由通知書において合議体は,刊行物2が路面の切断片を容易に取り出し除去可能という作用を奏するものであることを挙げているが,刊行物2記載の発明の路面カッターで切断した疑似扁平お椀形の切断片の除去作業は,切断片を外周端部から一部ずつ順次剥がして掘り起こすことにより除去する作業であると理解するのが当業者の通常の理解である。この取り出し除去作業は,円筒状の切り込みで切断された舗装と蓋体の受枠とが一体になった一つの切断片をクレーンなどを用いて上方に吊り上げて撤去する刊行物1記載の発明とは取り出し除去作業が全く異なるため,刊行物2記載の発明を刊行物1記載の発明に適用する動機付けがなく,この適用は当業者にとって容易に想到し得るものではない。
イ また,刊行物2記載の発明のカッターが,該カッターを使用した際に切断面が球面状となることにより路面の新規施工部分の沈下や陥没等の不都合を解消できるという作用効果を奏するものであるが,刊行物1記載の発明のマンホール蓋枠取替え工法は,刊行物1図1,図2(5)のようにマンホール補修部がマンホールの上面によって下から支えられることになるから,当該部分が当業者が解決すべき必要を感じるほど陥没することはなく,よって,刊行物2が当該作用効果を奏することは,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明のカッターを採用しようとする動機付けにならない。
ウ 仮に,刊行物1記載の発明において,円形カッターに代えて刊行物2記載の発明の回転円弧状のカッターを採用して,切断された舗装を蓋体の受枠ごと吊り上げるだけで舗装と受枠とを一体で撤去できるように,その回転円弧状のカッターによる切り込みの先端(切り込みの下端部)が,マンホール孔部の上面に至るように切り込みを形成すると,切り込みの上端部の位置(路面上の位置)は下端部よりもマンホール蓋の中心から離れた位置をとることとなるため,円筒状の円形カッターを用いた場合に比較して撤去される切断片の大きさが大きくなり,復旧面積が大きくなってしまう。復旧面積が大きくなると刊行物1記載の発明の「低廉なコストで短時間のうちに確実な補修が行えるようにする」という目的に反する不利な結果をもたらすから,適用を妨げる阻害要因となる。この阻害要因を越える強い動機付けを示唆する記載はいずれの刊行物にも存在しないから,刊行物1記載の発明において,円形カッターに代えて刊行物2記載の発明の回転円弧状のカッターを採用することが当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ また,刊行物2記載の発明のカッターで刊行物1記載の発明のマンホールの上面に達するように切り込みを形成するようにすると,カッターの切断開始前の調整や切断中の駆動制御が難しくなり,マンホール上面を一部欠損させてしまう可能性が高くなるという不利な結果をもたらすから,適用の阻害要因となる。
オ 本件発明は,下桝の上面に設置したアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して新しい蓋受枠を取り付けて,蓋受枠の下面と下桝の上面との間に空間が形成される前提構成において,回転円弧状又は球面状の切り込みからなる傾斜面と高流動性の充填材とを組み合わせることにより,当該空間に充填材をスムーズに流し込むように充填することができるため,蓋受枠の下側の隠れた位置にある当該空間に充填材を確実に且つ容易に充填することができるという刊行物1?3から予測し得ない効果を奏する。
カ 本件発明の「転圧しない」との工程は,転圧によるマンホール蓋受枠の調整済みの高さのずれを防止するためのものであるが,マンホール蓋受枠の調整済みの高さがずれるという課題は,各工程を組み合わせることではじめて生じる課題である。本件発明は「転圧しない」工程とすることにより該課題を解決したものであり,転圧に起因する振動等によりマンホール蓋受枠の調整済みの高さがずれるのを防止できるという刊行物1?3から予測し得ない効果を奏する。
キ 本件発明は,各工程が有機的に組み合わされて,蓋受枠の下面と下桝の上面との間に空間にも充填材を確実に且つ容易に充填するという特有の効果を奏するものであり,各工程は個別に容易想到性を検討すべきものではない。このような特有の効果を奏するように各相違点に係る工程を一体として組み合わせて構成したマンホール蓋枠取替え工法が開示された刊行物は存在しない。よって,本件発明の上記相違点に係る各工程のすべてを一体として組み合わせて構成したマンホール蓋枠取替え工法は,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 訂正請求による訂正について
被請求人は,訂正請求による特許請求の範囲及び明細書の訂正は,適法になされたものであるとした上で,本件訂正発明は,刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない旨主張し,その理由として概略,次のように主張している。
ア 刊行物2記載の発明には,路面の断面円弧状を呈する路面の切り込みと下枡との位置関係について,何らの開示も示唆もされておらず,刊行物2記載の発明を刊行物1記載の発明に適用しても,回転円弧状または球面状の切り込みを下枡の外方に入れることにならない。
イ 刊行物2記載の発明は,新規施工部分の沈下や陥没の防止を課題とするところ,刊行物1記載の発明は,新規施工部分の全体がマンホールの上壁11に支えられるものであり,新規施工部分の沈下や陥没が生じないから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を採用する動機付けは何ら存在しない。
ウ 刊行物3には,充填材が蓋受枠と回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間に注入されることについては何らの開示も示唆もされていないから,刊行物1記載の発明に刊行物3を適用しても,充填材が蓋受け枠と回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間に充填されることにはならない。
エ 復旧面積内に埋め込む材料を少なくするという観点からして,刊行物1において,上壁11の外方にまで円形開口部を広げる動機付けは存在しない。根巻きブロックを配置することが望ましいとされる刊行物3においても,蓋受け枠と回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間に充填材を充填するものとする動機付けは存在しない。

第4 当審の無効理由通知(職権審理結果通知)
当審からの無効理由通知(職権審理結果通知)の内容は,概略以下のとおりである。
本件特許の請求項1に係る発明は,以下の刊行物1?3に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し,無効にすべきである。
刊行物1 登録実用新案第3070638号公報(甲第10号証)
刊行物2 特開2001-295216号公報 (甲第 4号証)
刊行物3 特許第2779264号公報 (甲第 8号証)

第5 訂正の適否についての当審の判断
1 訂正の内容
本件の訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1を,訂正前の「回転円弧状または球面状カッターを,マンホール蓋の中心を中心として,前記マンホール蓋の外周外方に沿って360°旋回させて回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程と,前記舗装切断工程で形成された切り込みと,前記蓋を受ける蓋受枠との間の前記蓋受枠と舗装材を一体構造とした擬似円環状の切断片を形成する切断片形成工程と,前記切断片形成工程で得られる切断片を除去する切断片除去工程と,下桝の上面を清掃し,調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程と,前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して,新しい蓋受枠を取付ける蓋受枠取り付け工程と,前記擬似円環状の切断片を除去して形成される空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,路盤材,調整部材として充填し,さらに,表層材を充填し,転圧しない材料充填工程と,より成ることを特徴とするマンホール蓋枠取替え工法。」
から,「回転円弧状または球面状カッターを,マンホール蓋の中心を中心として,前記マンホール蓋の外周外方に沿って360°旋回させて,下枡の外方に回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程と,前記舗装切断工程で形成された切り込みと,前記蓋を受ける蓋受枠との間の前記蓋受枠と舗装材を一体構造とした擬似円環状の切断片を形成する切断片形成工程と,前記切断片形成工程で得られる切断片を除去する切断片除去工程と,下桝の上面を清掃し,調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程と,前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して,新しい蓋受枠を取付ける蓋受枠取り付け工程と,前記擬似円環状の切断片を除去して形成される,蓋受枠と前記回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間,及び,前記蓋受枠と前記下枡との間の空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,それぞれ,路盤材,調整部材として充填し,さらに,表層材を充填し,転圧しない材料充填工程と,より成ることを特徴とするマンホール蓋枠取替え工法。」とする。
(2)訂正事項2
本件特許明細書の段落【0010】を,「【0010】
(1)回転円弧状または球面状カッターを,マンホール蓋の中心を中心として,前記マンホール蓋の外周外方に沿って360°旋回させて,下枡の外方に回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程と,
前記舗装切断工程で形成された切り込みと,前記蓋を受ける蓋受枠との間の前記蓋受枠と舗装材を一体構造とした擬似円環状の切断片を形成する切断片形成工程と,
前記切断片形成工程で得られる切断片を除去する切断片除去工程と,
下桝の上面を清掃し,調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程と,
前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して,新しい蓋受枠を取付ける蓋受枠取り付け工程と,
前記擬似円環状の切断片を除去して形成される,蓋受枠と前記回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間,及び,前記蓋受枠と前記下枡との間の空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,それぞれ,路盤材,調整部材として充填し,さらに,表層材を充填し,転圧しない材料充填工程と,より成ることを特徴とするマンホール蓋枠取替え工法。」とする。

2 訂正の目的についての判断
(1)訂正事項1で請求項1の「・・・回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程」を「・・・,下枡の外方に回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程」とする訂正は,切り込みを入れる位置を,下枡の外方,すなわち,下枡の外周よりも外側の位置に限定したものと認められるから,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする。
(2)訂正事項1で請求項1の「前記擬似円環状の切断片を除去して形成される空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,路盤材,調整部材として充填し」を,「前記擬似円環状の切断片を除去して形成される,蓋受枠と前記回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間,及び,前記蓋受枠と前記下枡との間の空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,それぞれ,路盤材,調整部材として充填し」とする訂正は,擬似円環状の切断片を除去して形成される空間に充填されるモルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材が,擬似円環状の切断片を除去して形成される空間のうち,蓋受枠と回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間においては路盤材として,蓋受枠と下枡との間の空間においては調整部材として機能していることを明確にしたものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
(3)訂正事項2の明細書段落【0010】を訂正する訂正は,上記訂正事項1における特許請求の範囲の訂正に伴い,特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載の整合性をとるためにするものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

3 新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の有無についての判断
(1)上記「2(1)」の,カッターで切り込みを入れる位置を「下枡の外方」とする補正は,本件図面において,断面円弧状ないし球面状切り込みが下枡の外周外方に描かれていることを根拠として特許請求の範囲を減縮するもので,本件出願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであり,特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。
(2)上記「2(2)」の訂正は,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を擬似円環状の切断片を除去して形成される空間に路盤材,調整部材として充填するにあたり,本件図面の【図3】に示されるように,蓋受枠と回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間には路盤材として,蓋受枠と下枡との間の空間には調整部材として充填することを明確にしたに過ぎないものであるから,本件出願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであり,特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。
(3)上記「2(3)」の訂正事項2に係る訂正は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載の整合性をとるための補正であり,上記「3(1)」「3(2)」同様,本件出願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものである。

4 訂正の適否についての判断のまとめ
以上のとおりであるから,本件の訂正請求による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,同条第5項において準用する同法第126条第3,4項の規定に適合する。よって,当該訂正を認める。

第6 本件発明
前述のとおり,本件訂正は認められるから,本件の審理の対象となる発明は,訂正請求によって訂正された明細書及び図面の記載からみて,訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,これを発明特定事項により分節すると次のとおりである(以下,「本件発明」という。)。

【請求項1】
A 回転円弧状または球面状カッターを,マンホール蓋の中心を中心として,前記マンホール蓋の外周外方に沿って360°旋回させて,下枡の外方に回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程と,
B 前記舗装切断工程で形成された切り込みと,前記蓋を受ける蓋受枠との間の前記蓋受枠と舗装材を一体構造とした擬似円環状の切断片を形成する切断片形成工程と,
C 前記切断片形成工程で得られる切断片を除去する切断片除去工程と,
D 下桝の上面を清掃し,調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程と,
E 前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して,新しい蓋受枠を取付ける蓋受枠取り付け工程と,
F 前記擬似円環状の切断片を除去して形成される,蓋受枠と前記回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間,及び,前記蓋受枠と前記下枡との間の空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,路盤材,調整部材として充填し,さらに,表層材を充填し,転圧しない材料充填工程と,
G より成ることを特徴とするマンホール蓋枠取替え工法。

第7 当審の無効理由についての判断
1 刊行物の記載内容
(1)平成22年6月29日付け無効理由通知で引用され,本件の優先権主張の日前に頒布された刊行物である刊行物1(登録実用新案第3070638号公報 甲第10号証)には,図面と共に次の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は,マンホールの蓋体周囲の舗装面を整備したり,蓋体を新たなものと交換するような場合に用いられるマンホール補修部の構造に関するものである。・・・【0002】
【従来の技術】
一般にマンホールの補修を行うにあたっては,マンホールの蓋体周囲の舗装を直線切りカッターを用いて矩形状に切断し,この矩形範囲内にある舗装を破砕して取り除いた後,この矩形開口部と蓋体の受枠との間にコンクリートなどを埋め込んでいる。ところが,このような補修工法では,マンホールの蓋体周囲の舗装を矩形状に切断するとき,矩形範囲内にある舗装を正確に取り除くため,カッターによる切断線が互いに交差するように,矩形範囲を越えた舗装の切断つまり余り切りを行う必要がある。また,蓋体周囲の切断される矩形範囲内の面積つまり復旧面積も大きくなる。これらのことから,施工に長時間がかかり,また復旧面積内に埋め込むコンクリートなどの必要材料も多くなって,それだけ施工コストが高くなる。
【0003】
特に近年では,交通量や車両重量の増加に伴いマンホールに大きな荷重がかかって,このマンホールの蓋体や蓋体周囲の舗装面が傷み易いことから,マンホールの早期補修を行う必要がある。また,補修作業は交通を遮断して行う必要があるため,低廉な施工コストで短時間のうちに確実な補修が行える補修工法が求められている。
【0004】
そこで従来,復旧面積をできるだけ小さくするため,マンホールの蓋体周囲の舗装を円切りカッターを用いて円形に切断する工法が提案されている。このように円切りカッターにより蓋体周囲の舗装を円形に切断した後には,この切断された円形舗装を蓋体の受枠ごと外部に取り出し,この受枠から舗装を取り除いた後または新たな受枠を用いてマンホール上に設置して,この受枠と切断により形成された円形開口部との間にエポキシ樹脂系モルタルを埋め込む。」
(1b)「【0007】
【課題を解決するための手段】
・・・本考案にかかる補修部の構造は,マンホールの蓋体周囲の舗装が円形に切断され,切断された舗装が蓋体の受枠ごと取り出されて,その切除後の円形開口部のマンホール上に受枠が再設置されて構成されるマンホール補修部の構造であって,新たに設置される受枠と円形開口部の間に,早強無収縮性モルタルが装填されてなることを特徴とする。」
(1c)「【0009】
前記早強無収縮性モルタルは,セメンと細骨材からなる主材料に,ケイ酸三石灰とケイ酸二石灰を主成分とする早強剤と,カルシウムサルホアルミネートを主成分とする膨張剤とを配合して調製されている。・・・また,膨張剤が添加されているので,モルタルが水和硬化するとき収縮がほとんど起らず,これにより施工後にひび割れなどが起り難くて,マンホールの補修後に長期にわたって安定した補修状態に保持される。」
(1d)「【0010】
【考案の実施の形態】
以下,本考案の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は,補修後のマンホール1の状態を示す断面図である。同図の実施形態では,路盤Aに埋設されたマンホール1の上壁11で孔部12の上方に複数のボルト13を介して受枠2が固定され,この受枠2に蓋体3が取り付けられている。また,前記受枠2の周囲には,舗装4の一部が円形に切断されて円形開口部40が形成され,この円形開口部40と受枠2の間に早強無収縮性モルタル5が装填されている。」
(1e)「【0016】
図1の実施形態では,前記早強無収縮性モルタル5の上層側に,舗装4と受枠2の上面側に対し面一状となるように表層材6が設けられている。この表層材6は,平坦性を確保するために設けられるもので,前記舗装4との馴染性の良好な例えば水溶性の常温硬化型アスファルト混合材料が用いられる。」
(1f)「【0017】
次に,本考案にかかるマンホール補修部の構造のための工法について,図2を参照しながら説明する。
先ず,同図(1)に示すように,マンホール1の蓋体周囲の舗装4を円形カッターを用いて円形状に切断する。この円形カッターは,円形に配置された複数の切断刃を備え,これをモータなどの駆動源に連結させたものである。
・・・
【0019】
次に,同図(3)のように,切断された舗装41を蓋体3の受枠2ごとクレーンなどを用いて吊り上げ撤去する。すると,残りの舗装4に円形開口部40が形成される。
【0020】
この後,同図(4)のように,・・・円形開口部40の内部でマンホール孔部12の上方に受枠2を再設置する。この受枠2としては,前記で取出されたものから舗装41を取り除いた受枠または新たな受枠が用いられる。
【0021】
さらにこの後,同図(5)のように,前記受枠2と円形開口部40の間に,早強無収縮性モルタル5を装填し,その上層側に舗装4と受枠2の上面側と面一状となるように表層材6を装填する。これらの早強無収縮性モルタル5及び表層材6としては,前述したものが用いられる。」
(1g)【図2】には,マンホール1の蓋体周囲の舗装4が,蓋体3の中心を中心として同心円状に切断されることが示されている。

これら記載事項によれば,刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「a 円形カッターを用いて,マンホール蓋体3の中心を中心として,受枠2の周囲を円形に切断して舗装を切断する工程と,
bc 切断された舗装41を蓋体3の受枠2ごとクレーンなどを用いて吊り上げ撤去する工程と,
e マンホール1上壁11に接触させるように新たな受枠を再設置する工程と,
f 新たな受枠と舗装41を受枠2ごと撤去して形成される円形開口部40との間に,路盤材として早強無収縮性モルタル5を装填し,さらに,水溶性の常温硬化型アスファルト混合材料よりなる表層材6を受枠2の上面側と面一状となるように装填する材料充填工程と,
g を備えるマンホール蓋枠取替え工法。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)同じく刊行物2(特開2001-295216号公報 甲第4号証)には,図面と共に次の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,道路工事等の際に用いられる路面用カッターに関する。」
(2b)「【0003】また,路面を円形にカットする装置としては,特開平7-279118(特許第2528787)号公報に知られる球冠体に近似の縦断面台形のブレードを用いたものや,実開昭62-159509,159510号公報に開示の球冠状ブレードを用いた例が知られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】然しながら上述の従来例において,球冠体に近似の縦断面台形のブレードを用いた所謂截頭円錐形状の回転体の周縁部に切断刃を設けたもので,この場合には,切り込み深さが進行するに従って直線状の稜線で形成される円錐面が切断部の壁面に干渉して大きな抵抗が生じ,過負荷状態を呈し,所定の深さの切断加工が不可能である。
【0005】実開昭62-159509,159510号公報に開示の球冠状ブレードの場合は,手作業を主体とした簡易な構成によるもので,操作性,作業性等の実用面で難がある。」
(2c)「【0007】なおまた,切断部が垂直の場合では,切断面の接合性が悪く,例えば,補修部分が沈下または陥没し易い等の欠点があった(図6(b)参照)。」
(2d)「【0010】(1)切断刃を周設した断面円弧状回転体を回転させて路面を円形にカットする路面用カッターであって,・・・」
(2e)「【0028】円形切断加工において,所望の切断刃8aと切断円の大きさに応じて断面円弧状回転体8の寸法を選定し,第2の可傾回動手段Kbを作用させ,フレーム5を上方に傾斜回動し,前記選定した切断刃8aを周設した断面円弧状回転体8を従動軸9の先端所定位置に装着し,円形切断加工個所の中心位置にアーム12の長さを調節して支軸14を位置決めし,係止部となるアンカー13を打ち込み前記支軸14をボルト等の固定具で固定する。
【0029】次いで,駆動部6を形成するエンジンを始動し,切断刃8aを周設した断面円弧状回転体8を回転させ乍ら前記第2の可傾回動手段Kbを操作し,蝶番4を支点としてフレーム5を駆動部6や従動軸9と共に前記断面円弧状回転体8を路面と平行になる所定の深さまで下げて路面に切り込み所定の深さを保持しながら作業者が手押しハンドル15を押して所定の円形上を一周し切断加工操作を終了する。
【0030】尚,図8(a)に示すように,断面円弧状のカッターを使用することにより,切断部が断面円弧状,切断面が球面状を呈する為に,同(b)に示すような垂直切断面とは異なり,切断面の接合性が極めて良く新規に施工した部分が沈下したり陥没したり等の不都合な現象を防止することが出来,美観を維持すると共に,恒久的工事として施工可能である。更に付け加えるとすれば,切り取った切断片が疑似扁平お椀形となり,取り出し除去作業が容易となる利点がある。」
(2f)「前記断面円弧状回転体8を・・・所定の円形上を一周し切断加工操作を終了する」との記載(記載事項(2e))を参酌すれば,【図1】には,切断刃を360°旋回させて路面に切り込みを入れることが示されている。

これら記載事項によれば,刊行物2には,次の発明が記載されていると認められる。
「切断刃を360°旋回させて路面に切り込みを入れるカッターであって,切り込みを回転円弧状または球面状にし,切り取った疑似扁平お椀形の切断片を容易に取り出し除去可能とする路面用カッター。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)

(3)同じく刊行物3(特許第2779264号公報 甲第8号証)には,図面と共に次の事項が記載されている。
(3a)「【請求項3】躯体の開口部周縁に嵩調整具を配設して受枠の設置高さを設定し,該嵩調整具上に受枠を載置し,該受枠の下面と躯体の上面との間に生じる空隙部を請求項1若しくは請求項2に記載の内型枠を配置して内周面から密閉し,前記受枠の外側から前記空隙部に無収縮性で且つ急硬性のセメントモルタルを注入することを特徴とする地下構造物用蓋の受枠設置方法。
【請求項4】躯体の開口部周縁には固定ボルトを設け,該固定ボルトに嵩調整具を配設したことを特徴とする請求項3に記載の地下構造物用蓋の受枠設置方法。」

これら記載事項によれば,刊行物3には,次の発明が記載されていると認められる。
「地下構造物用蓋の受枠を躯体の上面に固定する際に,躯体の上面に嵩調整具を螺合させた固定ボルトを設置して地下構造物用蓋受枠の高さを調整しつつ蓋受枠を取り付け,受枠の下面と躯体の上面との間に生じる空隙部に無収縮性で且つ急硬性のセメントモルタルを注入して硬化させるマンホール蓋受枠設置方法。」(以下,「刊行物3記載の発明」という。)

2 本件発明について
(1)対比
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「マンホール蓋体3」,「切断された舗装41及び蓋体3の受枠2」,「受枠2」,「マンホール1上壁11」,「新たな受枠」,「円形開口部40」は,本件発明の「マンホール蓋」,「切断片」,「蓋受枠」,「下桝の上面」,「新しい蓋受枠」,「切断片を除去して形成される空間」に,それぞれ相当する。
そうすると,両者は,

一致点「円形カッターにより,マンホール蓋の中心を中心として,マンホール蓋の外周外方の路面に円形状の切り込みを入れる舗装切断工程と,
前記舗装切断工程で形成された切り込みと,前記蓋を受ける蓋受枠との間の前記蓋受枠と舗装材を一体構造とした擬似円環状の切断片を形成する切断片形成工程と,
前記切断片形成工程で得られる切断片を除去する切断片除去工程と,
新しい蓋受枠を取付ける蓋受枠取り付け工程と,
前記擬似円環状の切断片を除去して形成される空間に,路盤材としてモルタル類からなる自硬性の無収縮充填材を充填し,さらに,表層材を充填する材料充填工程と,
より成るマンホール蓋枠取替え工法。」の点で一致し,以下の点で相違する。

相違点1(特定事項A,Fに関して)
舗装切断工程において,本件発明は,舗装切断のためのカッターが「回転円弧状または球面状カッター」であって,「切断刃を360°旋回させて,下枡の外方に回転円弧状または球面状に切り込みを入れる」ものであり,材料充填工程において高流動性無収縮充填材が路盤材として充填される,擬似円環状の切断片を除去して形成される空間が「蓋受枠と回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間」であるのに対し,刊行物1記載の発明では,カッターが「円形カッター」であって舗装に円形の切り込みを入れるものであり,したがって,材料充填工程において高流動性無収縮充填材が路盤材として充填される,擬似円環状の切断片を除去して形成される空間が回転円弧状または球面状切り込みにより規定されるものに特定されない点。

相違点2(特定事項D,Eに関して)
本件発明は,蓋受枠取り付け工程に先だって「下桝の上面を清掃し,調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程」を備え,蓋受枠取り付け工程においては,「前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して」新しい蓋受枠を取付けるのに対し,刊行物1記載の発明は,マンホール1上壁11に接触させるように新たな受枠を再設置するものであり,上記のようなアンカーボルト設置工程及び蓋受枠取り付け工程に係る構成を備えていない点。

相違点3(特定事項Fに関して)
モルタル類からなる自硬性の無収縮充填材が,本件発明は,高流動性であるのに対し,刊行物1記載の発明では,高流動性であるか否かが不明な点。

相違点4(特定事項Fに関して)
本件発明は,材料充填工程において,モルタル類からなる自硬性の無収縮充填材を,蓋受枠と下枡との間の空間に調整部材として充填するのに対し,刊行物1記載の発明では,このような構成となっていない点。

相違点5(特定事項Fに関して)
本件発明は,材料充填工程において,材料を転圧しないのに対し,刊行物1記載の発明は,材料を転圧するか否かが不明な点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

相違点1について
刊行物2記載の発明の路面用カッターは,「道路工事等の際に用いられる路面用カッター(記載事項(2a))」であって,切断刃を360°旋回させて路面に回転円弧状または球面状切り込みをいれるものであり,本件発明の「回転円弧状または球面状カッター」に相当する。
刊行物2は,実開昭62-159510号公報(甲12号証)を従来から知られる「路面を円形にカットする装置」として挙げているが,該公報に係る考案の球冠状のブレード9を備えた円形切断装置は「道路占用物2の蓋4」の周囲の路面を切断するものであり,刊行物2に接した当業者は,刊行物2記載の路面用カッターが,マンホールの蓋の周囲に切り込みを入れることにも使用されることを当然に認識できるものと認められる。
また,マンホール周囲の舗装を切断すれば切断された舗装を受枠とともに一体に取り出せることは刊行物1(記載事項(1a))にも記載のように従来から知られたことであるとともに,刊行物2(記載事項(2e))に「切り取った切断片が疑似扁平お椀形となり,取り出し除去作業が容易となる利点がある。」との記載があり,刊行物2記載の発明のカッターでマンホール周囲の舗装を切断した場合,マンホール内側からくさびを打ち込む等により,切断された舗装を疑似扁平お椀形切断片として一体に取り出せることは当業者が認識できることと認められる。
よって,刊行物1記載の発明において,切断片の取り出し除去作業を容易にする等の目的で,カッターとして刊行物2記載の発明の回転円弧状のカッターを採用することは,当業者が容易に想到し得ることである。

そして,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明のカッターを採用するにあたり,当業者は切り込みを入れる位置を決定することとなるが,その位置を,カッターによる切断面の下端が下枡に載置された蓋受枠の外周より外側となる位置とすることは,刊行物1記載の発明の舗装を蓋受枠ごと取り出すという目的を考慮すれば当然になされることである。刊行物2記載の発明のカッターは,切り込みが回転円弧状または球面状であって下方へ行く程切断円の径が小さくなるものであるから,そのような刊行物2記載の発明のカッターの性質や作業性等を勘案して,舗装面における切り込みを入れる位置を蓋受枠の外周から十分離れた位置とすることは当業者が適宜なし得ることであり,回転円弧状または球面状の切り込みを入れる位置が下枡の外方となることは,その結果にすぎない。
そして,切り込みを入れる位置は,蓋受枠の外周より外側であればよいものであって,下枡の外方であることに特段の技術的意義があるものではない。本件発明も,本件図面において切り込みが下枡の外方に描かれていたことを根拠に特許請求に範囲における切り込みの位置を下枡の外方と特定する訂正がなされたものであって,切り込みの位置を下枡の外方とすることに格別の技術的意義があると認識されるものとはいえない。

また,刊行物1記載の発明において刊行物2記載のカッターを用いて切り込みを入れれば,材料充填工程において高流動性無収縮充填材が路盤材として充填される擬似円環状の切断片を除去して形成される空間が,蓋受枠と「回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間」により規定されるものとなることは自明である。

ここで,刊行物2記載の発明のカッターを刊行物1記載の発明に適用する動機付けや阻害要因についての被請求人の主張について,順に検討する。

[第3 2 ア]について
被請求人は,刊行物2記載の路面カッターで切断した疑似扁平お椀形の切断片の除去作業は,切断片を外周端部から一部ずつ順次剥がして掘り起こすことにより除去する作業であるとした上で,取り出し除去作業を異にする刊行物2記載の発明を刊行物1記載の発明に適用する動機付けがない旨主張する。

上記主張について検討する。被請求人が主張するような除去作業は,刊行物2に記載されておらず,疑似扁平お椀形の切断片の除去作業を被請求人主張のような除去作業として解釈することはできない。

また,被請求人の上記主張は,刊行物2の発明の詳細な説明や図面等にマンホール蓋や下部構造物に関する記載がないことを根拠に,刊行物2記載の発明のカッターは切断加工部分が中央部にマンホール蓋受枠などの開口部が設けられていない路盤部分を対象とするものであることを前提とする。
しかし,上記のとおり,刊行物2記載の発明のカッターをマンホールの周囲を切断することに使用することも,切断された舗装を疑似扁平お椀形切断片として一体に取り出せることも当業者が刊行物2から認識できることと認められる。
よって,被請求人の主張の前提となる,刊行物2記載の発明のカッターの切断加工部分は全てが路面部分であるとの主張自体が採用できないものであり,該前提をもってする被請求人の主張も認めることができない。

[第3 2 イ]及び[第3 3 イ]について
被請求人は,刊行物1記載の発明は,新規施工部分の全体がマンホールの上壁に支持されるものであり,新規施工部分に沈下や陥没が生じないから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明のカッターを採用する動機が存在しない旨主張する。

しかし,先に検討したように,切断片の取り出しを容易にするという刊行物2記載の発明の効果も,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明のカッターを採用する動機となり得るものである。
また,刊行物1には実施例として下枡の外径が蓋受枠よりも大きいマンホールが図示されており,該実施例においては路面からマンホール1上壁11に至る切り込みをいれるものとなっているものであるが,刊行物1記載の発明がこのような下枡の外径が蓋受け枠よりも大きいものに限定されず,例えば,甲第1号証や甲第7号証のように蓋受枠と下枡の外径が同じ大きさのものも当然に刊行物1記載の発明に想定されることは上記したとおりであり,そのような場合に刊行物2記載のカッターを採用すれば,新規施工部分が沈下や陥没を生じないとの効果を奏することは当業者に自明であるから,新規施工部分が沈下や陥没を生じないとの効果も,刊行物1記載の発明に刊行物2記載のカッターを採用する動機付けとなり得るものである。

[第3 2 ウ]及び[第3 3 エ]について
被請求人は,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明のカッターを採用すると復旧面積が広くなって刊行物1記載の発明の「低廉なコストで短時間のうちに確実な補修が行えるようにする」という目的に反する不利な結果をもたらすから,適用を妨げる阻害要因となる旨主張する。

以下,上記主張について検討する。
記載事項(1a)(1b)によれば,刊行物1記載の発明は,「従来の技術」において舗装の形状と復旧面積に言及しているものである。すなわち,矩形状の切断では復旧面積が大きくなる問題があったが,この問題に対応して復旧面積をできるだけ小さくするため,マンホールの蓋体周囲の舗装を円切りカッターを用いて円形に切断する工法が提案されていることを従来の技術として述べているものである。
そして,刊行物1記載の発明は,この従来の技術を採用して「円形に切断することで復旧面積を小さくした」マンホール蓋枠取替え工法において,さらに「エポキシ樹脂系モルタルに代えて早強無収縮モルタルを使用する」ことにより,被請求人のいう刊行物1記載の発明の目的である「低廉なコストで短時間のうちに確実な補修が行えるようにする」ことを達成しているものと認められる。

これら記載によれば,刊行物1記載の発明において,上記目的は,主として充填材に早強無収縮モルタルを使用することにより達成されるものであって復旧面積を極限まで狭くすることによって達成されているものとは解されない。
よって,このような復旧面積の広狭は,刊行物1記載の発明においてどのようなカッターを採用するかを決定する際にカッターの他の長所短所とともに考慮すべき一要素に過ぎないものと認められ,刊行物2記載の発明のように復旧面積が少しでも広がる可能性があるカッターはすべからく刊行物1記載の発明が上記の目的を達成することを阻害するから適用できない,というような阻害要因があるとはいえない。
そして,刊行物2記載の発明のカッターも路面を矩形ではなく円形に切断するものであって復旧面積は仮に広がるとしても程度の差に過ぎないものである一方,刊行物2記載の発明のカッターは前記のとおり切断片の除去作業が容易になる等の利点を有するものであるから,被請求人が主張するように路面切断による復旧面積が大きくなることをもって刊行物1記載の発明に刊行物2記載のカッターを採用する際の阻害要因があるということはできない。
したがって,被請求人の主張は採用できない。

相違点2について
調整駒(嵩調整具10)を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整することは,刊行物3記載の発明にも記載のように周知技術である。
蓋受枠を高さ調整可能に設置することは周知の課題であるから,刊行物1記載の発明において,蓋受枠を高さ調整可能に設置すべく上記周知技術を採用し,「調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程」を備え,蓋受枠取り付け工程においては,「前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して」取り付けるものとすることは,当業者が容易になし得ることである。
また,蓋受枠の新規設置作業に先立って下枡の上面を清掃することは,当業者が適宜なし得ることである。

相違点3について
充填作業効率等を考慮してモルタルを高流動性とすることは,例えば特開平9-295848号公報【0002】,特開平11-35362号公報【0002】等に記載のように周知技術であり,刊行物1記載の発明において,モルタル類からなる自硬性の無収縮充填材を「高流動性」と特定することは,当業者が容易になし得ることである。

相違点4について
本件発明の「調整部材」は,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を蓋受枠と下枡との間の空間に充填してなるものであり,硬化した際に高さ方向の調整部材として機能する部分を示していると解される。
よって,高さ調整部材を介して蓋受枠を設置する蓋受枠設置工法であり,蓋受枠と下枡との間に空間が形成されてかつ該空間に無収縮充填材を充填するものは,皆同様に無収縮充填材を「調整部材として」蓋受枠と下枡との間の空間に充填するものと理解される。
そして,刊行物3記載の発明も,高さ調整部材を介して蓋受枠を設置するものであり,蓋受枠(受枠6)の下面と下枡(躯体7)の上面との間の空間にモルタル類からなる自硬性の無収縮充填材(無収縮性で且つ急硬性のセメントモルタル14)を充填するものであるから,モルタル類からなる自硬性の無収縮充填材を蓋受枠と下枡との間の空間に「調整部材として」充填するものである。
したがって,刊行物1記載の発明に,刊行物3記載の調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを用いる工法を採用するに際し,充填材を,蓋受枠と下枡との間の空間に調整部材として充填することは,当業者が容易になし得ることである。

相違点5について
舗装の表面層を,材料を転圧せずに均し作業のみで仕上げることは,特開平10-265253号公報(【0102】等)に記載のように周知技術であり,転圧する工程を入れるか否かは,施工する場所や用いる材料等を考慮して当業者が適宜決定すべき事項である。
刊行物1記載の発明の材料充填工程において,転圧の必要のない材料を用いる等して,転圧しないものとすることは,当業者が容易になし得ることである。

本件発明の作用効果について
本件発明の作用効果について検討すると,工事範囲を最小限とする効果は,舗装路面を四角形ではなく円形に切り込む刊行物1,2記載の発明も奏する効果である。転圧を不要とし,工事工程及び工事期間を削減及び短縮し,振動及び騒音を発生しないとの効果は,材料を転圧せずに仕上げる周知技術の奏する効果である。
切り込みが円弧状または球面状であるので補修部の沈下が抑制されるとの効果,切り込みの上記形状に起因して切断部底部に角張った隅部が発生しないために補修材の充填性が良好であるとの効果は,刊行物2記載の発明の奏する効果である。
被請求人が「第3 2 オ」で主張する,回転円弧状又は球面状の切り込みからなる傾斜面と高流動性の充填材とを組み合わせることにより,蓋受枠の下面と下桝の上面との間に空間に充填材をスムーズに流し込むように充填することができるため,当該空間に充填材を確実に且つ容易に充填することができるという効果は,モルタルを高流動性とする周知技術及び切り込みを回転円弧状または球面状とする刊行物2記載の発明から予測し得るものであり,技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果とまでいうことはできない。
被請求人は「第3 2 カ」で,「転圧しない」との工程は,マンホール蓋受枠の調整済みの高さがずれるという,各工程を組み合わせることではじめて生じる課題を解決するものであり,「転圧しない」ことにより,転圧に起因する振動等によりマンホール蓋受枠の調整済みの高さがずれるのを防止できるという刊行物1?3から予測し得ない効果を奏する旨主張する。
しかし,舗装の仕上げ工程を「転圧しない」工程とすることは,工事工程及び工事期間の削減及び短縮,振動及び騒音の発生防止といった課題の解決にも採用される周知の手段であり,このような目的で「転圧しない」との工程を採用することも,当然,当業者が容易になし得ることである。
そして,材料を転圧せずに仕上げる周知技術を採用したことによりマンホール蓋受枠の調整済みの高さのずれを防止することができることは,上記周知技術及び刊行物3記載の発明から予測し得る程度のことであって技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果ということはできない。

本件発明の作用効果は,全体として,刊行物1?3記載の発明及び周知技術から,予測し得る程度のものである。

したがって,本件発明は,刊行物1?3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8 むすび
以上のとおり,本件発明は,本件優先日前に国内で頒布された刊行物1?3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,他の無効理由について検討するまでもなく,本件発明についての特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
マンホール蓋枠取替え工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転円弧状または球面状カッターを,マンホール蓋の中心を中心として,前記マンホール蓋の外周外方に沿って360°旋回させて,下桝の外方に回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程と,
前記舗装切断工程で形成された切り込みと,前記蓋を受ける蓋受枠との間の前記蓋受枠と舗装材を一体構造とした擬似円環状の切断片を形成する切断片形成工程と,
前記切断片形成工程で得られる切断片を除去する切断片除去工程と,
下桝の上面を清掃し,調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程と,
前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して,新しい蓋受枠を取付ける蓋受枠取り付け工程と,
前記擬似円環状の切断片を除去して形成される,前記蓋受枠と前記回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間,及び,前記蓋受枠と前記下桝との間の空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,それぞれ,路盤材,調整部材として充填し,さらに,表層材を充填し転圧しない材料充填工程と,
より成ることを特徴とするマンホール蓋枠取替え工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気、電信、ガス、及び上下水道系等におけるマンホール蓋枠取替え工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気、電信、ガス、及び上下水道系等におけるマンホール蓋枠の取替え工事に際しては、平板状のカッター、コアカッター、等で四方形またはカット面がストレートな円版状に切断し、切断部を除去した後、補修部分に補修材を充填し、その後転圧機で転圧作業をして工事終了とするのが通例である。
【0003】
また、開示されている舗装路面開口工法では、「舗装路面を開口予定部の周囲に沿って切断すると共にその切断された柱状舗装版を引上げて取り外す工程を含み、柱状舗装版に1又は2以上のアンカーが埋設され、柱状舗装版は円形、または四角形に切断され、四角形の場合は少なくとも対向する二辺は深さ方向に先細りとなるように切断され」、と記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平2-15687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、上述の従来例では、四角形に切断する場合は勿論のこと、円形切断の場合でも、前者の場合は四隅と底部全縁に、後者の場合は底部全縁に角張った隅部が発生し(図4(b)参照)、補修材等の充填材を充填しても前記隅部に前記充填材が十分に行き渡らず空隙が生じ、切断部が略垂直な壁面となり、切断部側面の摩擦力のみで支持されているのでずれて沈下し易い為、路面に生じた隙間から雨水等が浸透し易く、沈下を助長し、事故の原因を誘起することとなる。
【0005】
また、四角形に切断する場合は、図4(b)に示すように4角部に余分なカットクロス部ができ、その分の補修も含まれることになる。
【0006】
上述のように従来工法では、カットクロス部のような余分な補修工事が発生したり、補修工事の際に、後工程で転圧作業をしなければ、経時的に表層部及び路盤部が沈下し、路面に凹凸が発生する虞がある等の不都合な問題があった。
【0007】
然も従来の充填材では、硬化時間も含めて工事期間が余り短縮できないという問題があり、更に騒音公害の点でも改善の余地がある、等々の課題がある。
【0008】
本発明は、上述の状況に鑑みて成されたもので、予定されたマンホール蓋枠の取替え工事に際して、工事範囲を最小限とすると共に、転圧工程を不要とし、工事工程及び工事期間を削減/短縮し、振動及び騒音等の公害をもクリア出来るマンホール蓋枠取替え工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0010】
(1)回転円弧状または球面状カッターを,マンホール蓋の中心を中心として,前記マンホール蓋の外周外方に沿って360°旋回させて,下桝の外方に回転円弧状または球面状切り込みを入れる舗装切断工程と,
前記舗装切断工程で形成された切り込みと,前記蓋を受ける蓋受枠との間の前記蓋受枠と舗装材を一体構造とした擬似円環状の切断片を形成する切断片形成工程と,
前記切断片形成工程で得られる切断片を除去する切断片除去工程と,
下桝の上面を清掃し,調整駒を螺合させた高さ調整部付きアンカーボルトを設置してマンホール蓋受枠の高さを調整するアンカーボルト設置工程と,
前記アンカーボルト設置工程のアンカーボルトの高さ調整部である調整駒を介して,新しい蓋受枠を取付ける蓋受枠取り付け工程と,
前記擬似円環状の切断片を除去して形成される,前記蓋受枠と前記回転円弧状または球面状切り込みとの間の空間,及び,前記蓋受枠と前記下桝との間の空間に,モルタル類からなる自硬性の高流動性無収縮充填材を,それぞれ,路盤材,調整部材として充填し,さらに,表層材を充填し転圧しない材料充填工程と,
より成ることを特徴とするマンホール蓋枠取替え工法。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、予定されたマンホール蓋枠の取替え工事に際して、工事範囲を最小限とすると共に、転圧工程を不要とし、工事工程及び工事期間を削減/短縮し、振動及び騒音等の公害をもクリア出来るマンホール蓋枠取替え工法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明に係るマンホール蓋枠取替え工法の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、回転円弧状または球面状カッターを有する路面用カッター装置を用いて予定されたマンホール蓋枠の周囲に回転円弧状または球面状に切り込みを入れた状況の一例を示す説明図、図2(a)は、切り込みを入れて分離除去可能とした切断片を除去した後の状況の一例を示す断面説明図、(b)は、切断片の模式的外観斜視図、図3は、マンホール蓋枠取替え後の最終工程施工状況の一例を示す詳細断面説明図、(a)は路盤材及び調整部材充填時の詳細断面説明図、(b)は表層材充填後の詳細断面説明図、図4は、本発明に係る本工法と従来から行われていた従来工法との比較説明図であり、(a)は本工法の回転円弧状(球面状)切断の場合、(b)は従来工法の四角形(四工程)切断、または円形切断の場合の例、図5(a)は、補強用鉄筋を網目状に配設した場合の状況を示す側断面図、(b)はA部拡大図である。
【0015】
本実施例は、特開2001-295216号公報に開示の路面用カッター、または特願2002-60514号出願の路面用カッター装置を用いて施工した場合であって、切断面となる壁面を回転円弧状または球面状に、且つ必要最小限の範囲で切断施工が可能である。
【0016】
前記装置を用いて、予定されたマンホール蓋枠の同心円上路面に所定深さの回転円弧状または球面状切り込み1を入れ、取替えを必要とする部分、例えば、蓋及び蓋受枠2′を交換し、切断片を分離除去した後の空間に、予め用意した、例えば、路盤材6となるカルシウム、サルフォ、アルミネート系等の金属系無収縮材を含有するモルタル類からなる自硬性を有する高流動性無収縮充填材を充填し、また路面の表層部に繊維質を含有する表層材8を、余分に盛り上げることをせず、既存の路面に合わせて仕上げればよい。
【0017】
以下、図面を参照して実施例について詳細に説明する。
【0018】
図1において、a 先ず、交換を必要とする蓋受枠2′の径dが654mmの場合、切断する直径Dは1000mmとし、予め用意した回転円弧状または球面状カッターを備えた路面用カッター装置の車輪角度を設定(ワンタッチ操作)し、装置を360°旋回して回転円弧状または球面状切り込み1を入れ(舗装切断)、b 次いで、図2(b)に示すように疑似円環状(ドーナツ状)の切断片を除去し、図2(a)に示すような疑似円環状(ドーナツ状)の空間を形成させ、旧い蓋受枠2′を取り外した後、下桝3の上面を清掃し、次に、c 高さ調整部付きアンカーボルト5(後施工型アンカーボルト)を設置し(図3(a)、(b)参照)、高さ調整し、新しい蓋受枠2、及び内型枠4を取り付ける。次に、d 路盤材6及び調整部材7を充填し、養生時間(約19分)経過後、e 表層材8を、例えば、厚み50mm(h)に充填し、そして仕上げ作業を行い、表層材8の養生時間約30分で実作業を終了する。
【0019】
本実施例では、実際の合計作業時間は2時間14分であった。
【0020】
路盤材6及び調整部材7は、前述したように、カルシウム、サルフォ、アルミネート系等の金属系無収縮材を含有するモルタル類からなる自硬性を有する高流動性無収縮充填材を使用している。
【0021】
然も本工法では、補修材となる充填材は、短時間で所定強度に硬化するので、施工を開始してから完工するまで、所要の施工合計時間は3時間以内であり(季節及び環境条件によって多少変動あり)、作業時間を従来法と比較して略1/2以下に短縮することが出来る。
【0022】
尚、本工法の最大の特徴は、切断部の壁面を従来の様な柱状ではなく、回転円弧状または球面状切断部1aとすることが出来るので、図4(a)に示すように、補修材(充填材)が、球面状を形成する切断部の摩擦力に加えて求心方向支持力により、例えば、図4(a)に示すように、上方からの圧力、即ち車両等の荷重Pを受ければ受けるほど、充填材と切断部1aの密着性が高まり、従来法での柱状切断壁面のように隙間からの雨水の浸透等による補修部の沈下現象(図4(b)参照)等を防止出来、トラブルを回避して全く安全且つ迅速なマンホール蓋枠取替え工事を行うことが出来る。
【0023】
(その他の実施例1)
その他の実施例1において、前述の実施例と異なる点は、高流動性無収縮充填材として、主として金属性骨材を含まない非金属系無収縮材を含むモルタル類からなることである。
【0024】
(その他の実施例2)
その他の実施例2は、高流動性無収縮充填材を充填する際に、補強用鉄筋を網目状に配設したことである。
【0025】
図5(a)、(b)に示すように、高流動性無収縮充填材となる路盤材の内部に所定太さの鉄筋を所定ピッチで網目状に配設することにより、万一周辺の路盤が崩壊しても、影響を受けず、安全を維持することが出来る。
【0026】
尚、本実施例では、高流動性無収縮充填材を指定して用いたが、本工法において、転圧もしくは転圧締め固め工程の必要の無い材料、または手作業程度の加圧操作で済む材料であれば良く、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】回転円弧状または球面状カッターを有する路面用カッター装置を用いて予定されたマンホール蓋枠の周囲に回転円弧状または球面状に切り込みを入れた状況の一例を示す説明図
【図2】(a)切り込みを入れて分離除去可能とした切断片を除去した後の状況の一例を示す断面説明図、(b)切断片の模式的外観斜視図
【図3】マンホール蓋枠取替え後の最終工程施工状況の一例を示す詳細断面説明図、(a)路盤材及び調整部材充填時詳細断面説明図、(b)は表層材充填後の詳細断面説明図
【図4】本発明に係る本工法と従来から行われていた従来工法との比較説明図、(a)本工法の回転円弧状(球面状)切断の場合、(b)従来工法の四角形(四工程)切断、または円形切断の場合の例
【図5】(a)補強用鉄筋を網目状に配設した場合の状況を示す側断面図、(b)A部拡大図
【符号の説明】
【0028】
1 回転円弧状または球面状切り込み
1a 回転円弧状または球面状切断部
2、2′ 蓋受枠
3 下桝
4 内型枠
5 高さ調整部付きアンカーボルト(後施工形アンカーボルト)
6 路盤材
7 調整部材
8 表層材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-11-24 
結審通知日 2011-11-28 
審決日 2011-12-12 
出願番号 特願2006-119236(P2006-119236)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (E02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄大森 伸一住田 秀弘  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
土屋 真理子
登録日 2009-10-16 
登録番号 特許第4392001号(P4392001)
発明の名称 マンホール蓋枠取替え工法  
代理人 黒田 壽  
代理人 関口 瑞紀  
代理人 佐藤 睦  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 根本 浩  
代理人 二宮 照興  
代理人 二宮 照興  
代理人 福田 伸一  
代理人 田村 拓也  
代理人 奥川 勝利  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 賢三  
代理人 中村 弘通  
代理人 西尾 美良  
代理人 根本 浩  
代理人 佐藤 睦  
代理人 西尾 美良  
代理人 中村 弘通  
代理人 奥川 勝利  
代理人 関口 瑞紀  
代理人 黒田 壽  
代理人 丹羽 宏之  
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