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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1269784
審判番号 不服2011-14830  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-08 
確定日 2013-02-07 
事件の表示 特願2006-522871「衛生看護ベッド」拒絶査定不服審判事件〔平成17年3月24日国際公開、WO2005/025475、平成19年2月15日国内公表、特表2007-502625〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年8月12日(パリ条約による優先権主張 平成15年8月16日 中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成22年4月12日付けで拒絶理由が通知され、同年9月17日付けで手続補正がなされたものの、平成23年3月28日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、前記拒絶査定を不服として、平成23年7月8日に請求された拒絶査定不服審判事件であって、当該請求と同時に手続補正がなされた。その後、当審において、前置報告書の内容について意見を求めるための審尋を行ったが、当該審尋に対して何ら応答はなかった。

第2 平成23年7月8日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年7月8日付け手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容と目的
平成23年7月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を補正するものであって、本件補正後の請求項1は、補正前(平成22年9月17日付けで補正。以下同じ。)の請求項1について、補正前の請求項2,3に記載されていた「経線と緯線の交接部が互いに固定的に連結され」ているという事項、及び、「防水繊維が、表面に防水接着剤を塗布された植物繊維或いは人造繊維である」という事項で限定して減縮したものであるから、本件補正後の請求項1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を行ったものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2 本件補正発明
本件補正発明は以下のとおりのものである。
「防水繊維の糸を用いて製作したメッシュ構造を有する織物からなり、
網の目の直径或いは対角線の長さが、編まれたメッシュの経線と緯線の直径より大きいか等しく、且つ経線と緯線の直径の30倍より小さく、
前記経線と前記緯線の交接部が互いに固定的に連結され、
前記防水繊維が、表面に防水接着剤を塗布された植物繊維或いは人造繊維である、
ことを特徴とする介助用ベッド。」

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-258940号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人を運搬または載置するための用具に関する。より詳細には、本発明は、地震などの天災の発生時、火災、急病などの緊急時、寝たきりの老人や病人などの入浴介助時などに、人命救助、介助などの目的で、怪我人、病人、老人、未だ歩けなかったり、よちよち歩きの乳幼児などを速やかに且つ円滑に運搬する用具または載置するための用具に関する。
…(中略)…
【0007】さらに、寝たきりの老人や病人などに対して、施設でまたは各家庭を回る入浴巡回サービスなどによって入浴のサービスが行われるようになってきている。その際に、起き上がったり、座ったりすることのできない人に対しては、入浴用ベットを用いて、入浴用ベットに移す前または移した後に着衣を脱がせ、入浴用ベットに載せたままの状態でベットごと浴槽に入れて身体を洗浄するか、或いは浴槽の直前で人をベットから浴槽に移して洗浄することがよく行われている。そのような入浴介助に用いられるベットは、軽量で取り扱い性に優れていること、耐水性に優れていること、水に濡れても簡単に乾燥できることが求められている。さらに、浴槽に直接入れて用いる入浴介助用ベットでは浴槽に入れた時にお湯がベットを容易に通過して体の周りへと速やかに流れること、入浴が済んで浴槽からベットごと人を引き上げる際に水切れがよいことが求められている。しかしながら、そららの要件十分に満足する入浴用ベッドが未だ得られていないのが現状である。」
イ 「【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、担架などのような災害時や緊急時に怪我人や病人などを運搬するための運搬具を、目合(目開き)が5mm以上であるメッシュ状布帛を用いて製作すると、重布等を用いて作製されている従来の担架等の運搬具に比べて、軽量で運搬する際の負担が少ないこと、血液等が付着しにくいこと、血液等が付着した際にも除去や除去後の乾燥が容易であり、取り扱い性に極めて優れることが見出した。
…(中略)…
さらに、本発明者らは、目合が5mm以上である上記したメッシュ状布帛から簡易ベットや入浴介助用ベットなどのような人を載置する用具を作製すると、軽量で、血液等が付着しにくく、また付着した場合もその除去が容易であり、水切れがよく、簡単に乾燥でき、取り扱い性に優れることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】すなわち、本発明は、
(1) メッシュの目合(目開き)が5mm以上であるメッシュ状布帛を用いて製作したことを特徴とする人を運搬または載置するための用具である。
【0013】そして、本発明は、
(2) メッシュ状布帛が、格子状または菱目状のメッシュ構造を有するメッシュ状織編物である前記(1)の用具;
(3) メッシュ状布帛が、経糸または経糸群を5mm以上の間隔をあけて経方向に平行に配列し、緯糸または緯糸群を5mm以上の間隔をあけて緯方向に平行に配列し、且つ経糸または経糸群と緯糸または緯糸群の交点で両者を固定してなる格子状のメッシュ構造を有するメッシュ状織編物である前記(1)または(2)の用具;
(4) メッシュ状布帛を構成している糸が、有機重合体により含浸および/または被覆されている前記(1)?(3)のいずれかの用具;および、
(5) 担架、乳幼児の運搬具またはベッドである前記(1)?(4)のいずれかの用具;である。」
ウ 「【0019】格子状のメッシュ構造を有するメッシュ状織編物としては、経糸または経糸群を5mm以上の間隔をあけて経方向に平行に配列し、緯糸または緯糸群を5mm以上の間隔をあけて緯方向に平行に配列し、且つ経糸または経糸群と緯糸または緯糸群の交点で両者を固定したメッシュ状織編物が好ましく用いられる。ここでいう「経糸群」および「緯糸群」とは、格子状のメッシュ構造を形成する経糸または緯糸がそれぞれ複数本集まったものをいい、格子状のメッシュ構造が、そのような経糸群および/または緯糸群によって形成されていることを意味する。何ら限定されるものではないが、本発明の用具に好ましく用いられる格子状のメッシュ構造を有するメッシュ状織編物の例を図1の(a)?(d)に示す。」
エ 「【0026】ここで、本明細書における「メッシュ状布帛の目合(目開き)」とは、メッシュ状布帛のメッシュ構造における空間部(網目)の距離(長さ)をいう。該空間部(網目)の形状によって複数の距離(長さ)が生ずる場合は、本発明の用具では、空間部(網目)における最も短い距離が5mm以上であるメッシュ状布帛を用いる。具体的には、図1の(a)?(d)に例示する格子状のメッシュ構造を有するメッシュ状織編物では、その方形の空隙部(網目)での対向する2つの辺間の距離L_(1)およびL_(2)を“目合”という。距離L_(1)とL_(2)が同じ長さでない場合(空間部が長方形の場合)は、距離L_(1)とL_(2)のうちの短い方の長さが5mm以上であるメッシュ状織編物を用いて本発明の用具を作製する。また、図2に例示する菱目状のメッシュ構造を有するメッシュ状布帛では、その菱形の空隙部(網目)での対角線M_(1)およびM_(2)の長さ“目合”(目開き)という。距離M_(1)とM_(2)が同じ長さでない場合は、距離M_(1)とM_(2)のうちの短い方の長さが5mm以上であるメッシュ状織編物を用いて本発明の用具を作製する。
【0027】本発明の用具に用いるメッシュ状布帛を構成する糸は、有機合成繊維、天然繊維、半合成繊維、人造繊維、それらの2種以上の併用などのいずれから形成されていてもよい。具体的には、有機合成繊維としてはポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル系繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリアミド系繊維、アラミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、アクリル繊維などを挙げることができ、半合成繊維、人造繊維としてはビスコース繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維などを挙げることができ、天然繊維としては綿、麻、羊毛などを挙げることができる。…(以下略)」
オ 「【0029】メッシュ状布帛を形成する1本の糸の太さは、メッシュ状布帛を構成する繊維や糸の種類、メッシュの形状、目合の大きさ、メッシュ状布帛を用いてなる用具の種類や構造などに応じて調節することができる。メッシュ状布帛が群になさない糸から形成されている場合[1本の編み糸を用いて形成されている場合、または1本の経糸と1本の緯糸を用いて例えば図1の(a)に示す格子状のメッシュ状布帛とした場合、図1の(c)および(d)におけるようにメッシュ構造の緯方向または経方向を群をなさない1本の緯糸または経糸を用いて形成する場合など]は、該1本の糸(各経糸および各緯糸)の太さは、50?250g/500m(1000?5000dtex)、特に100?200g/500m(2000?4000dtex)であることが、メッシュ状布帛の強度、5mm以上の目合のメッシュ状布帛の製造の容易性などの点から好ましい。」
カ 「【0032】本発明の用具に用いるメッシュ状布帛は、有機重合体で処理されていない編製または織製したままのメッシュ状布帛であってもよいが、メッシュ状布帛を形成している糸が有機重合体によって含浸および/または被覆されていることが好ましい。メッシュ状布帛が有機重合体によって含浸および/または被覆されていると、メッシュ状布帛を用いて作製した本発明の用具を人の運搬や載置に使用する際の作業性や取り扱い性が向上し、血液などに対する耐汚染性、用具の強度、耐水性、耐水濡れ性、剛性、速乾性などが一層向上する。メッシュ状布帛の含浸および/または被覆に用いる有機重合体の種類は特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴムなどのいずれであってもよいが、メッシュ状布帛に剛性を付与しながら可撓性をも維持できる点で、熱可塑性樹脂および/またはゴムが好ましく用いられる。」
キ 「【0050】《製造例1》[ポリビニルアルコール繊維製メッシュ状布帛の製造]
(1) ポリビニルアルコールフィラメント糸[単糸太さ100g/500m(2000dtex)]を2本合糸して200g/500m(4000dtex)の太さの糸とし、この糸を経方向に5本引き揃えて経糸群とした。また、ポリビニルアルコールフィラメント糸[単糸太さ100g/500m(2000dtex)]を2本引き揃えて200g/500m(4000dtex)とし、さらにこれを2本合糸して400g/500m(8000dtex)の太さの糸とし、この糸を緯方向に2本引き揃えて緯糸群とした。
(2) 上記(1)で準備した経糸群と緯糸群を用いて、ラッセル編み機を使用して、経方向と緯方向の目合がいずれも20mmである、図1の(b)に示す格子状のメッシュ構造を有するメッシュ状編物を製造した。
(3) 上記(2)で得られたメッシュ状編物のメッシュ構造を形成している経糸群および緯糸群にアクリル樹脂を塗布して、アクリル樹脂で含浸・被覆したメッシュ状編物を製造した(メッシュ状編物の重量に対するアクリル樹脂の付着量=104重量%)。
(4) 上記(3)で得られたアクリル樹脂で含浸・被覆されたメッシュ状編物の経方向および緯方向の引張強度は5000kg/mおよび4000kg/mであり、また経方向および緯方向の交点強度は20kgおよび8kgであった。」
ク 【図1】 【図2】


上記記載事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「有機合成繊維、天然繊維、半合成繊維、人造繊維あるいはそれらの2種以上の併用などによってメッシュ状布帛に形成され、有機重合体によって含浸および/または被覆することにより、血液などに対する耐汚染性、用具の強度、耐水性、耐水濡れ性、剛性、速乾性などを一層向上せしめたメッシュ状織編物からなり、
前記メッシュ状織編物は、前記メッシュ状布帛を形成する経糸または経糸群と緯糸または緯糸群が、そのメッシュ構造の網目の最も短い距離、あるいは、菱目状メッシュ構造の2つの対角線の長さのうちの短い方の長さが5mm以上であって、前記経糸または経糸群と緯糸または緯糸群の交点で両者が固定されたものである、
起き上がったり、座ったりすることのできない人に対する入浴介助に用いられるベット。」

4 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「メッシュ状織編物」が、本件補正発明の「メッシュ構造を有する織物」に相当することは明らかである。そして、前記メッシュ状織編物に関する、引用発明の「有機合成繊維、天然繊維、半合成繊維、人造繊維あるいはそれらの2種以上の併用などによってメッシュ状布帛に形成され、有機重合体によって含浸および/または被覆することにより、血液などに対する耐汚染性、用具の強度、耐水性、耐水濡れ性、剛性、速乾性などを一層向上せしめた」という事項について検討すると、引用発明のメッシュ状布帛を形成する繊維は、本件補正発明の「植物繊維或いは人造繊維」に相当するといえ、引用発明において「(メッシュ状布帛を)有機重合体によって含浸および/または被覆することにより、血液などに対する耐汚染性、用具の強度、耐水性、耐水濡れ性、剛性、速乾性などを一層向上せしめた」という事項は、本件補正発明の「表面に防水接着剤を塗布された」「防水繊維の糸を用いて製作した」ことに相当するといえる。
(2)また、引用発明の「メッシュ状布帛を形成する経糸または経糸群」と「(メッシュ状布帛を形成する)緯糸または緯糸群」は、それぞれ、本件補正発明の「編まれたメッシュの経線」と「(編まれたメッシュの)緯線」に相当するから、引用発明の「菱目状メッシュ構造の2つの対角線の長さ」は、本件補正発明の「網の目の」「対角線の長さ」に相当するといえるし、引用発明の「メッシュ構造の網目」が、対角線を有することは明らかである。そうすると、引用発明の「そのメッシュ構造の網目の最も短い距離、あるいは、菱目状メッシュ構造の2つの対角線の長さのうちの短い方の長さが5mm以上」という事項と、本件補正発明の「網の目の」「対角線の長さが、編まれたメッシュの経線と緯線の直径より大きい」という事項は、「網の目の対角線の長さが所定値より大きい」点で共通する。加えて、引用発明の「前記経糸または経糸群と緯糸または緯糸群の交点で両者が固定された」という事項は、本件補正発明の「前記経線と前記緯線の交接部が互いに固定的に連結され」という事項に相当する。
(3)さらに、引用発明の「起き上がったり、座ったりすることのできない人に対する入浴介助に用いられるベット」が、本件補正発明の「介助用ベッド」に相当することは明らかである。
(4)以上の関係からして、本件補正発明と引用発明は、
「防水繊維の糸を用いて製作したメッシュ構造を有する織物からなり、
網の目の対角線の長さが所定値より大きく、
前記経線と前記緯線の交接部が互いに固定的に連結され、
前記防水繊維が、表面に防水接着剤を塗布された植物繊維或いは人造繊維である、
介助用ベッド。」
の点で一致する。
(5)一方、本件補正発明と引用発明は、以下の点で相違する。
〈相違点〉
網の目の対角線の長さが、
本件補正発明は、「編まれたメッシュの経線と緯線の直径より大きいか等しく、且つ経線と緯線の直径の30倍より小さい」のに対し、引用発明は、メッシュを形成する経糸または経糸群と緯糸または緯糸群の直径といかなる関係を有するか明らかでない点。

5 検討・判断
上記相違点について検討する。
引用例に記載されているメッシュ状布帛を形成する経糸または経糸群と緯糸または緯糸群の太さについて、1本の経糸と1本の緯糸を用いた場合の例(上記「3」の「オ」参照)、及び、経糸群と緯糸群を用いた「《製造例1》」の例(上記「3」の「キ」参照)に基づき、ポリビニルアルコール繊維の比重の一般的な値である1.26?1.30(必要なら、“化学大事典”,共立出版株式会社発行の「ポリビニルアルコール系合成繊維」の項の記載参照)を用いて検討すると以下のとおりである。
(1)最初に、1本の経糸と1本の緯糸を用いる場合について検討する。
引用例に特に好ましいと記載されている100?200g/500mの1本の糸の直径は、
[100?200(g)/{π×(500×100(cm))×1.26?1.30(g/cm^(3))}]^(1/2)×2≒0.44?0.63mm
と算出できる。
そうすると、引用例の目合の定義(上記「3」の「エ」参照)からして、引用例のメッシュ構造、すなわち網の目の対角線の長さは約7mm(5mm×2^(1/2))より大であるから、引用例の網の目の対角線の長さが1本の糸の直径より大きいことは明らかであるし、前記7mmは、上記1本の糸の直径の約11?16倍に相当していて、少なくとも「経線と緯線の直径の30倍より小さい」範囲を含んでいる。
(2)次に、経糸群と緯糸群を用いる場合について、その直径を、経糸群と緯糸群を構成するフィラメント糸(単糸)の本数に、各糸群を形成する経糸と緯糸の各フィラメント糸(単糸)の直径を乗じたものとして検討すると、「《製造例1》」において、
経糸群の直径は、
10本×[100(g)/{π×(500×100(cm))×1.26?1.30(g/cm^(3))}]^(1/2)×2≒0.44?0.45cm
緯糸群の直径は、
8本×[100(g)/{π×(500×100(cm))×1.26?1.30(g/cm^(3))}]^(1/2)×2≒0.35?0.36cm
と算出できる。
これを上記「《製造例1》」の経方向と緯方向の両方向についての目合20mm、すなわち網の目の対角線の長さ28.3mm(20mm×2^(1/2))と対比すると、上記(1)と同様に、網の目の対角線の長さが1本の糸の直径より大きいことは明らかであるし、前記28.3mmは、上記経糸群及び緯糸群のそれぞれの直径に対して6.3倍?8.1倍となり、上記(1)の場合と同様に、少なくとも「経線と緯線の直径の30倍より小さい」範囲を含んでいる。
(3)そして、引用例に「メッシュ状布帛を形成する1本の糸の太さは、メッシュ状布帛を構成する繊維や糸の種類、メッシュの形状、目合の大きさ、メッシュ状布帛を用いてなる用具の種類や構造などに応じて調節することができる。」(上記「3」の「オ」参照)と記載されているように、用途や糸の材質に応じ、メッシュ状布帛を形成する糸の太さと網の目の粗密は互いに関連するものである。
(4)また、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「経線と緯線の直径の30倍より小さい」とすることの格別な技術的意義を見いだすことはできない。
(5)そうすると、網の目の対角線の長さを、編まれたメッシュの経線と緯線の直径を用いて適当な範囲に特定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるといわざるを得ないから、相違点のごとき発明特定事項を得ることは、引用発明に基いて当業者が容易になし得たことである。

6 小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年7月8日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成22年9月17日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「防水繊維の糸を用いて製作したメッシュ構造を有する織物からなり、網の目の直径或いは対角線の長さが、編まれたメッシュの経線と緯線の直径より大きいか等しく、且つ経線と緯線の直径の30倍より小さいことを特徴とする介助用ベッド。」

2 引用例
原査定において提示された本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例及びその記載事項と引用発明は、前記「第2 [理由]3」に記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明の対比、検討・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]1」で述べたとおり、上記「第2 [理由]2」に記載した本件補正発明から、「経線と緯線の交接部が互いに固定的に連結され」ているという事項、及び、「防水繊維が、表面に防水接着剤を塗布された植物繊維或いは人造繊維である」という事項を削除して拡張したものに相当する。
そうすると、上記「第2 [理由]5」で述べたとおり、本件補正発明が、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、本件補正発明と同様に、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-10 
結審通知日 2012-09-12 
審決日 2012-09-25 
出願番号 特願2006-522871(P2006-522871)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47C)
P 1 8・ 575- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 田合 弘幸
松下 聡
発明の名称 衛生看護ベッド  
代理人 齋藤 和則  

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