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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1269801 |
審判番号 | 不服2011-27741 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-26 |
確定日 | 2013-02-07 |
事件の表示 | 特願2004-279296「差分画像検出システムおよび差分画像検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月 6日出願公開、特開2006- 94293〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成16年9月27日の出願であって、平成21年11月26日付で拒絶の理由が通知され、平成22年1月25日付で意見書・手続補正書が提出され、平成22年11月9日付で拒絶の理由が通知され、平成23年1月13日付で意見書・手続補正書が提出されたものの、平成23年9月30日付で拒絶査定がなされたものである。 本件は、上記拒絶査定を不服として平成23年12月26日に請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、当審において、前置報告書の内容について審判請求人の意見を求めるために、平成24年8月7日付で審尋がなされ、平成24年9月20日付で回答書が提出されている。 第2.平成23年12月26日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年12月26日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲については、補正前(平成23年1月13日付手続補正書で補正されたもの)である、 「【請求項1】 動画像データを保存する画像ファイル保存部と、 前記動画像データからそれぞれ切り出された基準画像と比較対象画像とを順次比較し、該比較に基づいて前記基準画像と前記比較対象画像との差分を検出する差分画像検出部と、 該差分画像検出部により差分が検出された場合に前記比較対象画像を保存する差分画像ファイル保存部と、を有し 前記基準画像と前記比較対象画像とを順次比較していき、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出された場合には前記比較対象画像を保存し、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とすることを特徴とする差分画像検出システム。 【請求項2】 前記差分画像ファイル保存部に保存される比較対象画像に、前記動画像データと関連付けする関連付け情報を付加し、前記差分画像ファイル保存部に保存されている比較対象画像と前記関連付け情報とに基づいて、前記画像ファイル保存部を検索する検索手段を有することを特徴とする請求項1に記載の差分画像検出システム。 【請求項3】 コンピュータなどの画像処理手段によって実現される差分画像検出方法において、 保存された動画像データに基づいて基準画像と比較対象画像とを切り出す第1ステップと、 前記基準画像と前記比較対象画像とを順次比較していき、差分の有無を検出し、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出された場合には前記比較対象画像を保存し、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする第2ステップを含むことを特徴とする差分画像検出方法。 【請求項4】 前記第1のステップで動画像データから切り出された前記基準画像として、動画像データから取得した複数の画像の平均値を用いることを特徴とする請求項3に記載の差分画像検出方法。 【請求項5】 数フレーム分の画像の変化の大小に基づいて大小いずれかの差分を真の差分として前記差分の有無を検出するステップを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の差分画像検出方法。」 を、 「【請求項1】 動画像データを保存する画像ファイル保存部と、 前記動画像データからそれぞれ切り出された複数の画像のうちから選択された1からN(Nは2以上の整数)までの画像の平均値を用いた基準画像と比較対象画像とを順次比較し、該比較に基づいて前記基準画像と前記比較対象画像との差分を検出する差分画像検出部と、 該差分画像検出部により差分が検出された場合に前記比較対象画像を保存する差分画像ファイル保存部と、を有し、 前記基準画像と前記比較対象画像とを順次比較していき、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出された場合には前記比較対象画像を保存し、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とすることを特徴とする差分画像検出システム。 【請求項2】 前記差分画像ファイル保存部に保存される比較対象画像に、前記動画像データと関連付けする関連付け情報を付加し、前記差分画像ファイル保存部に保存されている比較対象画像と前記関連付け情報とに基づいて、前記画像ファイル保存部を検索する検索手段を有することを特徴とする請求項1に記載の差分画像検出システム。 【請求項3】 コンピュータなどの画像処理手段によって実現される差分画像検出方法において、 保存された動画像データに基づいて複数の画像のうちから選択された1からN(Nは2以上の整数)までの画像の平均値を用いた基準画像と比較対象画像とを切り出す第1ステップと、 前記基準画像と前記比較対象画像とを順次比較していき、差分の有無を検出し、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出された場合には前記比較対象画像を保存し、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする第2ステップを含むことを特徴とする差分画像検出方法。 【請求項4】 数フレーム分の画像の変化の大小に基づいて大小いずれかの差分を真の差分として前記差分の有無を検出するステップを有することを特徴とする請求項3に記載の差分画像検出方法。」 と補正するものであって、補正された請求項に係る発明は、いずれも、「保存された動画像データに基づいて複数の画像のうちから選択された1からN(Nは2以上の整数)までの画像の平均値を用いた基準画像」とすること、および、「双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする」ことの双方を、特許を受けようとする発明を特定するための事項として含むものである。 2.判断 これに対し、この出願の願書に最初に添付した明細書及び図面には以下の記載がある。 「【0010】 本発明の実施の形態による画像差分検出システムについて、図面を参照しつつ説明を行う。図1は、本実施の形態による画像差分検出システムの一構成例を示す機能ブロック図である。本実施の形態による画像差分検出システムは、専用の回路などにより実行される場合もあるが、画像処理を行うコンピュータ01上で実行されるプログラムにより実現されるのが一般的である。」 「【0015】 図3は、差分検出ソフトウェア05による処理の流れを示すフローチャート図である。図3に示すように、差分検出ソフトウェア05の処理を開始し画像ファイル保存部02から画像を1枚読み込み(ステップ301)、読み込んだ1枚の画像を基準画像とする(ステップ302)。次に画像ファイル保存部02から画像をもう1枚読み込み(ステップ303)、それを比較対象画像とする(ステップ304)。基準画像と比較対象画像とを比較し(ステップ305)、双方の画像が一致する(予め指定した差分の下限のしきい値未満である)場合は、比較対象画像を差分画像ファイル保存部04に保存する(ステップ306)。次に、今回比較対象画像として使用した画像を基準画像にする(ステップ307)。画像ファイル保存部02に、まだ読み込んでいない画像が存在するか否かをチェック し(ステップ308)、まだ読み込んでいない画像が存在する場合は、再度、画像ファイル保存部02から画像を1枚読み込み(ステップ303)、読み込んだ画像を比較対象画像とし(ステップ304)、以降、同様の比較処理を継続して実行する。画像ファイル保存部02にまだ読み込んでいない画像が存在しなければ(ある単位で全ての画像を読み込んでいれば)処理を終了する。」 「【0019】 次に、本発明の第2の実施の形態による画像差分検出システムについて図面を参照しつつ説明を行う。第1の実施の形態による画像差分検出システムにおいては、例えば図2の画像11と画像12とを比較する際に、画像12に木の葉の揺れなど本質的でない些細な動きが生じただけで動体と判断してしまう可能性がある。本実施の形態による画像差分検出システムにおいては、かかる誤差を考慮している。」 「【0020】 図4及び図5は、本実施の形態による画像差分検出システムに用いられる差分検出ソフトウェア05において、誤差を考慮した画像差分検出処理の流れを示すフローチャート図である。図3に示す差分検出ソフトウェア05の基準画像とするステップ302は、画像ファイル保存部02から画像1枚を読み込み、それを基準画像にする。これに対して、本実施の形態による画像差分検出処理においては、1枚の画像に加えてさらに複数枚(n-1枚)の画像を読み込み(ステップ401)、読み込んだ合計n枚の画像の平均をとり(ステップ402)、これらの平均をとった平均画像データを基準画像データとする(ステップ403)。」 「【0021】 同様に、差分検出ソフトウェア05の基準画像を更新するステップ307(図3)の代わりに、平均化し基準画像とした元々のn枚の画像から、最も古い画像と比較画像とを入 れ替えて再度平均をとり(ステップ501)、この画像を基準画像とする(ステップ502)。このように、本実施の形態による画像差分検出システムによれば、n枚の画像の平均を基準画像とする処理を行うことにより、木の葉の揺れなどで生じる誤差を検出してしまう可能性を低減することができ、動体発見課程における誤差に起因する精度の低下を抑制することができる。」 「【図3】 」 「【図4】 」 「【図5】 」 ここで、この出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載からみて、この出願の明細書段落【0010】?【0018】には「本発明の実施の形態による画像差分検出システム」が、段落【0019】?【0021】には「本発明の第2の実施の形態による画像差分検出システム」が記載されているものと認められる。 第一に、補正された請求項に係る発明が「本発明の実施の形態による画像差分検出システム」が記載される明細書段落【0010】?【0018】に記載されているか検討する。そうすると、上記段落【0015】には「図3に示すように、差分検出ソフトウェア05の処理を開始し画像ファイル保存部02から画像を1枚読み込み(ステップ301)、読み込んだ1枚の画像を基準画像とする(ステップ302)。次に画像ファイル保存部02から画像をもう1枚読み込み(ステップ303)、それを比較対象画像とする(ステップ304)。」と記載されており、これは、補正された請求項に係る発明の「保存された動画像データに基づいて複数の画像のうちから選択された1からN(Nは2以上の整数)までの画像の平均値を用いた基準画像」とは相違しているから、補正された請求項に係る発明は、この出願の願書に最初に添付した明細書段落【0010】?【0018】に記載されたものであるということはできない。 第二に、補正された請求項に係る発明が「本発明の第2の実施の形態による画像差分検出システム」が記載される明細書段落【0019】?【0021】に記載されているか検討する。そうすると、補正された請求項に係る発明の「保存された動画像データに基づいて複数の画像のうちから選択された1からN(Nは2以上の整数)までの画像の平均値を用いた基準画像」という点と、上記段落【0020】の「これに対して、本実施の形態による画像差分検出処理においては、1枚の画像に加えてさらに複数枚(n-1枚)の画像を読み込み(ステップ401)、読み込んだ合計n枚の画像の平均をとり(ステップ402)、これらの平均をとった平均画像データを基準画像データとする(ステップ403)。」との記載、および、【図4】の記載が対応する。しかしながら、それに続く上記段落【0021】には「同様に、差分検出ソフトウェア05の基準画像を更新するステップ307(図3)の代わりに、平均化し基準画像とした元々のn枚の画像から、最も古い画像と比較画像とを入れ替えて再度平均をとり(ステップ501)、この画像を基準画像とする(ステップ502)。」との記載があり、上記【図5】はこの段落【0021】に対応する記載であると認められるところ、補正された請求項に係る発明は「双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする」ものであって、結局、補正された請求項に係る発明においては「次の基準画像」は「比較対象画像」であるのに対し、願書に最初に添付した明細書及び図面においては「次の基準画像」は「平均化し基準画像とした元々のn枚の画像から、最も古い画像と比較画像とを入れ替えて再度平均をとり(ステップ501)、この画像を基準画像とする」という点で互いに異なっている。したがって、補正された請求項に係る発明は、この出願の願書に最初に添付した明細書段落【0019】?【0021】に記載されたものであるということもできない。 そして、上記摘記した以外に、この出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、補正された請求項に係る発明の「保存された動画像データに基づいて複数の画像のうちから選択された1からN(Nは2以上の整数)までの画像の平均値を用いた基準画像」、「双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする」に対応する記載は存在せず、また、この点は自明の事項でもない。 すなわち、補正された請求項に係る発明が「保存された動画像データに基づいて複数の画像のうちから選択された1からN(Nは2以上の整数)までの画像の平均値を用いた基準画像」とすること、および、「双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする」ことの双方を有するという点は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるということはできない。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成22年1月25日付、および、平成23年1月13日付手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は請求項1に記載された次のとおりである。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 動画像データを保存する画像ファイル保存部と、 前記動画像データからそれぞれ切り出された基準画像と比較対象画像とを順次比較し、該比較に基づいて前記基準画像と前記比較対象画像との差分を検出する差分画像検出部と、 該差分画像検出部により差分が検出された場合に前記比較対象画像を保存する差分画像ファイル保存部と、を有し 前記基準画像と前記比較対象画像とを順次比較していき、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出された場合には前記比較対象画像を保存し、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とすることを特徴とする差分画像検出システム。」 第4.引用刊行物及び引用刊行物記載の発明 1.引用例1 原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-38164号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】従来のこの種の装置は図2に示すように、ビデオ入力によって取り込まれた動画像は、ビデオ再生機1などを利用して人間がその内容をビデオモニタ2に遂次再生して確認をするか、あらかじめ、その動画像にアドレス付けしてその管理を行うことにより、動画像の検索を行う手法を採用していた。」 「【0007】図1において、ビデオ入出力装置3は、動画像の変化点、特徴点など状態変化抽出部4、複数のフレーム画像を蓄積できるフレームメモリ部5及びフレーム画像の符号化部6から構成され、符号化されたフレーム画像記憶媒体8と動画像の変化点、特徴点を指示し、画像検索、再生するための押ボタン入力装置7と接続される。」 「【0008】まず、押ボタン入力装置7により変化点、特徴点抽出に関する情報の指示を行う。これには、画像の領域指定、状態変化対象(色成分、輝度成分、パターン情報)とその差分指定及び動画像入力中のNTSC信号からフレーム画像として取り込むサンプリング時間の指定を意味する。上記により指定された条件で動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化が検出された場合、2つのサンプリングフレーム画像のうち時系列的に遅い方のフレーム画像は、フレーム画像符号化部6においてディジタル圧縮画像としてフレーム画像記憶媒体8に保存する。以降、状態変化が検出される毎に、符号化されたフレーム画像が遂次保存されることになる。」 「【0009】このようにして保存された画像情報は、画像検索用の押ボタン入力装置7を使用してビデオモニタ2に時系列順に多画面表示もしくは遂示表示されることにより目的の画像がすばやく表示できることが可能となる。」 「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一例を示す構成図である。 【図2】従来の構成を説明するための図である。 【符号の説明】 1 ビデオ再生機 2 ビデオモニタ 3 ビデオ入出力装置 4 状態変化抽出部 5 フレームメモリ部 6 フレーム画像符号化部 7 押ボタン入力装置 8 フレーム画像記憶媒体」 「【図1】」 ここで、上記記載を検討する。 第一に、上記段落【0002】及び【図1】の記載からみて、引用例1記載の発明の「ビデオ再生機1」は「ビデオ入力によって取り込まれた動画像を保存する」ものである。 第二に、上記段落【0007】の記載からみて、引用例1記載の発明は「複数のフレーム画像を蓄積できるフレームメモリ部5」を有している。 第三に、上記段落【0007】の「動画像の変化点、特徴点など状態変化抽出部4」、段落【0008】の「上記により指定された条件で動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化が検出された場合」との記載からみて、引用例1記載の発明の「状態変化抽出部4」は「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する」ものである。 第四に、上記段落【0008】の「指定された差分以上の状態変化が検出された場合、2つのサンプリングフレーム画像のうち時系列的に遅い方のフレーム画像は、フレーム画像符号化部6においてディジタル圧縮画像としてフレーム画像記憶媒体8に保存する」との記載からみて、引用例1記載の発明の「フレーム画像記憶媒体8」は「指定された差分以上の状態変化が検出された場合、2つのサンプリングフレーム画像のうち時系列的に遅い方のフレーム画像を保存する」ものである。 第五に、上記段落【0008】の記載からみて、引用例1記載の発明は「状態変化が検出される毎に、符号化されたフレーム画像が遂次保存される」ものである。 したがって、引用例1には、 「ビデオ入力によって取り込まれた動画像を保存するビデオ再生機1と、複数のフレーム画像を蓄積できるフレームメモリ部5と、動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する変化抽出部4と、指定された差分以上の状態変化が検出された場合、2つのサンプリングフレーム画像のうち時系列的に遅い方のフレーム画像を保存するフレーム画像記憶媒体8を有し、状態変化が検出される毎に、符号化されたフレーム画像が遂次保存されるシステム。」 が、記載されている。(以下「引用発明1」という。) 2.引用例2 原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-50525号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】近年、入力画像の変化や動体の動き検出などを画像処理によって行う方式を採用した画像処理装置が数多く提案されている。このような画像処理装置は、例えば、監視システム等のような用途に用いられている。このような画像処理装置は、参照画像データと入力画像データとを比較し、その比較結果に応じて入力画像の変化や異常の検出を行うようにしている。」 「【0003】従来の画像処理装置における入力画像の変化や異常の検出手法としては、参照画像と入力画像との間の差分評価や、エッジ検出やパターン・マッチング演算による動体検出などの検出手法が多く用いられている。」 「【0004】また、参照画像として用いる画像は、動体が存在しない定常状態の画像をあらかじめ参照画像として記憶しておく方式や、直前の入力画像(フレーム画像)を参照画像として常に更新する方式等が一般的である。」 第5.対比 本願発明と引用発明1を対比する。 第一に、本願明細書段落【0011】の「ハードディスク又はリムーバブルディスクなどにより構成され、例えばデジタルビデオカメラなどにより撮影された動画像に基づく画像ファイルを保存する画像ファイル保存部02」との記載を勘案すると、本願発明の「動画像データを保存する画像ファイル保存部」は「動画像に基づく画像ファイルを保存する」ものと認められる。これに対し、引用発明1の「ビデオ再生機1」は「ビデオ入力によって取り込まれた動画像を保存する」ものであるが、この「ビデオ再生機1」が保存した動画像を「画像ファイル」ということができるか否かは明らかではない。したがって、引用発明1の「ビデオ入力によって取り込まれた動画像を保存するビデオ再生機1」と本願発明の「動画像データを保存する画像ファイル保存部」は、「動画像データを保存する画像保存部」という点で一致しているが、本願発明ではこの「画像保存部」が「画像ファイル保存部」であるのに対し、引用発明1ではその点が不明である点で相違する。 第二に、引用発明1の「変化抽出部4」は「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する」ものであるから、引用発明1の「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する変化抽出部4」と本願発明の「前記動画像データからそれぞれ切り出された基準画像と比較対象画像とを順次比較し、該比較に基づいて前記基準画像と前記比較対象画像との差分を検出する差分画像検出部」が一致する。 第三に、引用発明1の「フレーム画像記憶媒体8」は「指定された差分以上の状態変化が検出された場合、2つのサンプリングフレーム画像のうち時系列的に遅い方のフレーム画像を保存する」ものであって、この保存されたフレーム画像は、ディジタルデータのまとまりとして保存されており「ファイル」であるということができるから、引用発明1の「指定された差分以上の状態変化が検出された場合、2つのサンプリングフレーム画像のうち時系列的に遅い方のフレーム画像を保存するフレーム画像記憶媒体8」と本願発明の「該差分画像検出部により差分が検出された場合に前記比較対象画像を保存する差分画像ファイル保存部」および「前記基準画像と前記比較対象画像とを順次比較していき、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出された場合には前記比較対象画像を保存し」という点が一致する。 第四に、引用発明1は「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する」ものであって「状態変化が検出される毎に、符号化されたフレーム画像が遂次保存される」ものであるから、「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する」ことを繰り返すことは明らかであるが、「指定された差分以上の状態変化を検出する」ことを繰り返すときに「動画像のサンプリングされた2フレーム」をそれぞれどのように変更していくかは明らかではない。すなわち、本願発明は「双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする」ものであるのに対し、引用発明1は「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する」ことを繰り返すときに「動画像のサンプリングされた2フレーム」をそれぞれどのように変更していくかは明らかではない点で相違する。 第五に、引用発明1は「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する変化抽出部4」「指定された差分以上の状態変化が検出された場合、2つのサンプリングフレーム画像のうち時系列的に遅い方のフレーム画像を保存するフレーム画像記憶媒体8」を有しているから、引用発明1は本願発明と同様に「差分画像検出システム」であるということができる。 したがって、本願発明と引用発明1は、 「動画像データを保存する画像保存部と、 前記動画像データからそれぞれ切り出された基準画像と比較対象画像とを順次比較し、該比較に基づいて前記基準画像と前記比較対象画像との差分を検出する差分画像検出部と、 該差分画像検出部により差分が検出された場合に前記比較対象画像を保存する差分画像ファイル保存部と、を有し 前記基準画像と前記比較対象画像とを順次比較していき、双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出された場合には前記比較対象画像を保存することを特徴とする差分画像検出システム。」 という点で一致し、 (1) 本願発明では「画像保存部」が「画像ファイル保存部」であるのに対し、引用発明1ではその点が不明である点。 (2) 本願発明は「双方の画像に所定のしきい値を越える差分が検出されなかった場合には比較対象画像を次の基準画像とする」のに対し、引用発明1は「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する」ことを繰り返すときに「動画像のサンプリングされた2フレーム」をそれぞれどのように変更していくかは明らかではない点。 で相違する。 第6.当審の判断 上記相違点(1)(2)について検討する。 [相違点(1)] 動画像を符号化し、符号化されたディジタルデータとして記憶装置にファイルとして保存することは、例を挙げるまでもなく極めて良く行われていることにすぎず、引用例1記載の発明の「ビデオ入力によって取り込まれた動画像を保存するビデオ再生機1」を、動画像を、符号化されたディジタルデータとして記憶装置にファイルとして保存するもの、すなわち、「画像ファイル保存部」とすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。 [相違点(2)] 上記摘記したように、引用例2には「このような画像処理装置は、参照画像データと入力画像データとを比較し、その比較結果に応じて入力画像の変化や異常の検出を行うようにしている。」(段落【0002】)、「直前の入力画像(フレーム画像)を参照画像として常に更新する方式等が一般的である」(段落【0004】)との記載があり、引用発明1と引用例2記載の発明は「入力画像の変化」を検出する点で一致していることから、引用発明1における「動画像のサンプリングされた2フレーム間の指定された領域において、指定された差分以上の状態変化を検出する」ことを繰り返すときに、引用例2の記載に基づいて「直前の入力画像(フレーム画像)を参照画像として常に更新」したことは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。 加えて、本願発明の奏する作用効果も、引用例1,2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7.むすび 以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2?5に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-28 |
結審通知日 | 2012-12-04 |
審決日 | 2012-12-17 |
出願番号 | 特願2004-279296(P2004-279296) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
P 1 8・ 561- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松田 岳士 |
特許庁審判長 |
松尾 淳一 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 藤内 光武 |
発明の名称 | 差分画像検出システムおよび差分画像検出方法 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 今村 健一 |
代理人 | 渡辺 敏章 |