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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L |
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管理番号 | 1269827 |
審判番号 | 不服2010-9452 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-06 |
確定日 | 2013-02-06 |
事件の表示 | 特願2005- 90477「調理用の抗酸化アルカリイオン水」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-271206〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年3月28日の出願であって、平成22年2月3日付け拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年5月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成24年8月20日付けで当審の拒絶理由通知と平成22年5月6日付けの手続補正の補正却下の決定がなされ、平成24年10月24日に意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成24年10月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1は、以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 「【請求項1】 製造直後にpH8?9の微アルカリ性又は弱アルカリ性を示すアルカリイオン水と、該アルカリイオン水1リットルに対し0.01?0.5グラム添加した抗酸化ビタミンであるアスコルビン酸-2-グルコシドとからなり、無色、無臭かつ無味であって、通常の水の替わりに調理用の水として使用されることを特徴とする調理用の抗酸化アルカリイオン水。」 第3 引用刊行物とその記載事項 本願出願前に頒布された刊行物1(原査定の引用文献1)、刊行物2(前置報告書の引用文献3)、刊行物3及び刊行物4には以下の事項がそれぞれ記載されている。なお、下線は当審が付した。 (1)刊行物1:特開2000-351905号公報の記載事項 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】アルカリイオン水中に、下記一般式(I) 【化1】 ![]() (式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立して、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基またはその水酸基とアルデヒドとのアセタール基を表す。ただし、R^(1)及びR^(2)が同時に水酸基を表すことはない。)で表されるアスコルビン酸誘導体またはその塩の少なくとも1種を含有する組成物であって、ただしイオン導入液組成物ではないことを特徴とする高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項3】アルカリイオン水中にアスコルビン酸誘導体またはその塩を0.01?50重量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。」 【請求項4】アスコルビン酸誘導体含有組成物が、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗浄剤、食品または飼料である請求項1ないし3のいずれかに記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。 【請求項5】アスコルビン酸誘導体含有組成物の用途が、持続型還元剤、ビタミンC強化剤、美白剤、ざそう予防治療剤、色素沈着予防治療剤、メラニン色素抑制還元剤、ラジカル疾患予防治療剤、アレルギー性疾患予防治療剤及び創傷治癒剤からなる群より選ばれる1種以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。 【請求項6】アスコルビン酸誘導体含有組成物の剤型が、クリーム、ローション、化粧水、ジェル、スプレー、パウダー、パップ剤、浴用剤、育毛養毛剤、シャンプー、リンス、パック、ドリンク及び点眼剤からなる群より選ばれる1種である請求項1ないし5のいずれかに記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。 【請求項7】アスコルビン酸誘導体含有組成物の溶液のpH値が8以上14未満であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。 【請求項8】安定性が、組成物中のアスコルビン酸誘導体またはその塩の温度安定性、酸化安定性、澱安定性及び/または色安定性であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。 【請求項9】水溶性高分子を含有し、増粘安定性が高いことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。 【請求項10】水溶性高分子が、多価アルコール類、カルボキシル基を含有する酸またはその塩から選択される一種以上の水溶性高分子であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。」 (1b)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリイオン水にアスコルビン酸誘導体またはその塩を溶解することにより安定化した、アスコルビン酸誘導体含有アルカリイオン水水溶液またはその水分散液(イオン導入液組成物を除く)に関する。 【0002】 【従来の技術】アスコルビン酸の誘導体は、医薬品、化粧品、食品、飼料等に幅広く利用されている。最近では、日焼けによるシミ、そばかす等を予防するためにアスコルビン酸が効果があるとされ、医薬部外品や化粧品などにアスコルビン酸の誘導体が使用されているが、通常のL-アスコルビン酸の誘導体は酸化分解されやすく製剤にしても不安定なためにそのままでは実用に耐えるものではなかった。 【0003】従来のL-アスコルビン酸の誘導体の中には、安定性が十分でないもの、特に水溶液中での安定性が悪く熱ストレスや酸化による加水分解、沈殿の発生、着色、臭気の発生、増粘剤併用時の粘性の変化等の問題があった。 【0004】また、アルカリ電解水中に有効成分としてアスコルビン酸、アスコルビン酸のエステル及びアスコルビン酸のエーテル(当該アスコルビン酸、そのエステル及びそのエーテルは塩の形態にあるものを含む。)の少なくとも1種を含有し、皮膚外用剤のイオン導入液として使用することは特開平11-60481号公報において公知であるが、このイオン導入液はイオン導入法と呼ばれ、特殊な機械を用いて皮膚に電位差を生じさせイオン化されたアスコルビン酸の誘導体を皮膚に浸透させやすくするために用いられるための限定された薬品であり、本発明の安定化されたアスコルビン酸誘導体またはその塩を含有するイオン導入液を除く組成物とは明確に異なるものである。 【0005】アスコルビン酸の誘導体は一般にアルカリ性で安定であり、従来は水酸化ナトリウムやアルカリ性の有機酸を添加し組成物の水溶液をアルカリに調整していた。しかし、水溶液のpHが9以下ではアスコルビン酸の誘導体は十分な安定性を保てず着色等の問題が発生し、さらにpH9以上では生体毒性が高まり広範な用途に使用できないという問題があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、アスコルビン酸の誘導体またはその塩の水溶液中での安全性を損ねず、従来問題となっていた熱ストレスや酸化による加水分解、沈殿の発生、着色、臭気の発生、増粘剤併用時の粘性の変化等の問題を解決し、安定性を改善したアスコルビン酸誘導体含有組成物を提供することを目的とする。」 (1c)「【0013】 【発明の実施の形態】本発明において用いるアスコルビン酸誘導体またはその塩は、下記一般式(I) 【0014】 【化3】 ![]() 【0015】(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立して、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基またはその水酸基とアルデヒドとのアセタール基を表す。ただし、R^(1)及びR^(2)が同時に水酸基を表すことはない。)で示される化合物またはその塩である。 【0016】具体的には、より具体的には以下のアスコルビン酸誘導体またはその塩をあげることができる。L-アスコルビン酸-2-リン酸又はその塩、L-アスコルビン酸-2-配糖体、6-アルキルカルボニルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸又はその塩等が挙げられる。6-アルキルカルボニルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸又はその塩においては、R4が-OC(O)Rである。ここで、Rは炭素数9?21のアルキル基が好ましい。具体的には6-ドデカノイルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、6-テトラデカノイルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、6-パルミトイルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、6-ステアリルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、6-(シス-9-オクタデセノイルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、6-リノーリルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、6-リノレニルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、6-アラキドニルオキシ-L-アスコルビン酸-2-リン酸、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸-2-リン酸又はこれらの塩が例示される。2位のリン酸基についてはモノリン酸基が好ましい。 【0017】L-アスコルビン酸-2-配糖体としては、好ましくはL-アスコルビン酸-2-グルコシド(2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸)等のグルコース配糖体等が挙げられる。」 (1d)「【0021】本発明に使用されるアルカリイオン水とは、通常、アルカリイオン水、強アルカリ性水、強アルカリ性イオン水、超アルカリ水などの様々な名称で呼ばれているものを総称して示すものである。このようなアルカリイオン水は、水道水や電解質含有水を電気分解して得ることができ、既に数社より家庭用、工業用として市販されている酸性水製造機の副産物であるアルカリイオン水を利用することもできる。通常、補助剤として塩化ナトリウムを触媒的に加えて電気分解を行い製造されている。」 (1e)「【0026】本発明の高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物(イオン組成物を除く)へのアルカリイオン水溶液中のアスコルビン酸誘導体またはその塩の添加量は、0.01?50重量%であり、好ましくは0.1?20重量%である。 【0027】本発明において溶媒として使用されるアルカリイオン水は、pH値は8?14がよく、好ましくは9?13である。 【0028】本発明のアスコルビン酸誘導体含有組成物(イオン組成物を除く)は、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗浄剤、食品、飼料に使用できる。用途としては、アスコルビン酸誘導体またはその塩が一般に用いられている用途に使用可能で、特に持続型還元剤、ビタミンC強化剤、美白剤、ざそう予防治療剤、色素沈着予防治療剤、メラニン色素抑制還元剤、ラジカル疾患予防治療剤、アレルギー性疾患予防治療剤、創傷治癒剤に優れた効果を発揮する。 【0029】本発明のアスコルビン酸誘導体含有組成物(イオン組成物を除く)の剤型に特に制限はなく、具体的にはクリーム、ローション、化粧水、ジェル、スプレー、パウダー、パップ剤、浴用剤、育毛養毛剤、シャンプー、リンス、パック、ドリンクまたは点眼剤などが挙げられる。」 (1f)「【0058】 【発明の効果】本発明のイオン導入液組成物ではない高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物は、従来のアスコルビン酸誘導体またはその塩の、水溶液中での安定性が悪く熱ストレスや酸化による加水分解、沈殿の発生、着色、臭気の発生、増粘剤併用時の粘性の変化等の問題点を飛躍的に改善したものであり、高安定性であるという特徴を有するため、特に医薬品、医薬部外品、化粧品、食品及び飼料等の幅広い分野に有用である。」 (2)刊行物2:特開平3-135992号公報の記載事項 (2a)「L-アスコルビン酸の最大の欠点は、それが直接還元性を示すため、極めて不安定で、酸化分解を受け易く、容易にその生理活性を失うことである。」(第2頁左下欄2行目?5行目) (2b)「その結果、先に特許出願した特願平1-127072号明細書に記載したように、直接還元性を示さず、安定性に優れ、しかも生体内で容易に加水分解され、生理活性の点でも申し分のない新規物質、α-グリコシル-L-アスコルビン酸、とりわけ、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アルコルビン酸を見出し、更に、その製造方法並びに飲食物、抗感受性疾患剤、化粧品などへの用途を確立した。」(第3頁右上欄10行目?17行目) (2c)「また結晶2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸は、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの呈味を有する各種物質ともよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きいので、普通一般の飲食物、嗜好物、例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャツプ、焼肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの各種調味料、せんべい、あられ、おこし、カリントウ、求肥、絣類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、クツキー、パイ、プリン、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンデーなどの各種洋菓子、アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓、果実のシロップ漬、水蜜などのシロップ類、バタークリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのスプレッド、ペースト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖果などの果実、野菜の加工食品類、パン類、麺類、米飯類、人造肉などの穀類加工食品類、サラダオイル、マーガリンなどの油脂食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬などの漬物類、たくあん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素類、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、ハンペンなどの魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、ふぐのみりん干しなどの各種珍味類、のり、山菜、するめ、小魚、貝などで製造されるつくだ煮類、煮豆、ポテトサラダ、コンブ巻、天ぷらなどのそう菜食品、錦糸卵、乳飲料、バター、チーズなどの卵、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜などのビン詰、缶詰類、合成酒、増醸酒、果実酒、洋酒などの酒類、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席ジュース、即席コーヒー、即席しるこ、即席スープなど即席飲食品などに、ビタミンC強化剤、呈味改善剤、酸味剤、品質改良剤、安定剤、抗酸化剤などの目的で有利に利用することができる。また、家畜、家禽、蜜蜂、蚕、魚などの飼育動物のための飼料、餌料などにビタミンC強化剤、呈味改善剤、抗酸化剤、嗜好性向上などの目的で配合して利用することも好都合である。」(第8頁左上欄第9行?左下欄第17行) (2d)「実験2 結晶2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸の理化学的性質 実験1の方法で再結晶させて得た結晶の理化学的性質を調べたところ、従来全く知られていない無水型の結晶2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸であることを見出した。 以下、本発明の結晶の諸性質について述べる。 ・・・(略)・・・ (12)物性、物質の色 無色透明な結晶。微結晶は白色粉末で酸味を有し、臭はない。吸湿性はなく、潮解しない。また、130℃、2時間の条件で乾燥減量を測定すると0.5W/W%未満である。 過飽和水溶液から晶出中の結晶例を顕微鏡写真で第5図に示す。」(第10頁右上欄第3行?第11頁左上欄第19行) (2e)「[発明の効果] 本文で述べたごとく、本発明の新規物質結晶2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸は、実質的に吸湿性を示さず、潮解、固着もなく取扱い容易で、また、直接還元性を示さず、安定性に優れ、しかも、生体内で容易に加水分解され、L-アスコルビン酸本来の抗酸化性、生理活性を発揮する。その上、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸が、生体内で生成され、代謝される物質でもあることが判明したことより、その安全性も極めて高い物質である。 また、結晶2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸が、L-アスコルビン酸とα-グルコシル糖化合物とを含有する溶液に糖転移酵素または糖転移酵素とグルコアミラーゼとを作用させ生成せしめた2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸含有溶液を精製、濃縮して過飽和液とし、この過飽和液から容易に晶出しうることを見い出したことにより、この結晶の製造方法は、経済性に優れ、その工業的実施も容易である。 更に、この実質的に吸湿性を示さず、取扱い容易な結晶2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸は、安定性、生理活性も充分で、ビタミンC強化剤としてばかりでなく、安定剤、品質改良剤、抗酸化剤、生理活性剤、紫外線吸収剤、医薬原料、化学品などとして、飲料、加工食品、嗜好物などの飲食物、感受性疾患の予防剤、治療剤、更には美肌剤、色白剤など化粧品などに含有せしめて有利に利用できる。従って、本発明の結晶2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸は広範な用途を有し、これら産業界に与える工業的意義は極めて大きい。」(第17頁左下欄12行?第18頁左上欄4行) (3)刊行物3:特開平9-122645号公報の記載事項 (3a)「【従来の技術】医療飲料水として使用されているアルカリイオン水は、電解槽に原水を導入して電気分解するアルカリイオン水生成器により、殺菌水や化粧水等に使用される酸性水とともに生成することができる。このアルカリイオン水生成器は、生成器本体内に浄水器、電解電源および電解槽等を内蔵して構成される。この電解槽は、電解隔膜によって仕切られた陽極室と陰極室とからなり、陽極室に陽電極が、陰極室に陰電極がそれぞれ配設される構成となっている。 【0003】この電解槽は、下部側に原水の導入口が設けられるとともに、陽極室の下部側に酸性水を排出する酸性水排出口が設けられている。一方、陰極室の上部側には、アルカリイオン水を排出するアルカリイオン水排出口が設けられている。そして、前記原水の導入口は、連結管を介して生成器本体の下部に配設される給水管に接続され、アルカリイオン水排出口および酸性水排出口も、連結管を介して生成器本体の下部に配設される各排水管にそれぞれ接続されるようになっている。上記アルカリイオン水生成器は、原水を電解槽に導入し、電解電源から陽電極と陰電極とに電解電圧を印加することにより、原水を電解してpH8?9程度のアルカリイオン水とpH5?6程度の酸性水とを生成する。この生成器は、運転の開始、終了時および印加電圧の反転時等に、電解槽内の水を外部へ排出させるようになっているが、生成されたアルカリイオン水は、電解槽の上部側のアルカリイオン水排出口からアルカリイオン水排水管を経て取水用の蛇口側に送出される。一方、酸性水は、前記電解槽の下部側の酸性水排出口から酸性水排水管を介して外部の酸性水貯留タンク等に送出されるようになっている。したがって、通常の生成動作中は蛇口を開けることによってアルカリイオン水を取水することができ、酸性水は生成とともに貯留される酸性水貯留タンクから取水することができる。」 (4)刊行物4:特公平8-15600号公報の記載事項 (4a)「【0002】 【従来の技術】最近各種の書物、文献にアルカリイオン水に関するる記事、報文が掲載または報告されるようになった。アルカリイオン水は、通常、電解水生成器で造られている。電解水生成器は、先ず飲料に供される水道水をこの装置に内蔵された浄水フイルタ-を通し不純物や、塩素その他の有害物質を除去した後、電解槽に導かれ電気分解されてマイナス極に集まった水がアルカリイオン水に、反対のプラス極に集まった水が酸性イオン水になって、それぞれ設けられた出口から出るようになっている。現在市販されている電解水生成器は、ほとんどの製品が、pHを任意にレベルに調節できるようになっている。 【0003】アルカリイオン水は、pH8?11のアルカリ性を示す水で、pH6の通常の水に比べてカルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等人体にとつて有用かつ吸収され易いミネラル類の含有率が高いことが特徴とされている。」 第4 対比・判断 刊行物1の上記記載事項(特に上記(1a)(1e))から、刊行物1には、 「アルカリイオン水中に、下記一般式(I) 【化1】 ![]() (式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立して、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基またはその水酸基とアルデヒドとのアセタール基を表す。ただし、R^(1)及びR^(2)が同時に水酸基を表すことはない。)で表されるアスコルビン酸誘導体またはその塩の少なくとも1種を含有する組成物であって、ただしイオン導入液組成物ではなく、アルカリイオン水中にアスコルビン酸誘導体またはその塩を0.01?50重量%含む、食品に使用する高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較する。 (ア)刊行物1発明の「アルカリイオン水」は、本願発明の「製造直後にpH8?9の微アルカリ性又は弱アルカリ性を示すアルカリイオン水」と、アルカリイオン水である点で共通する。 (イ)刊行物1発明の「下記一般式(I) 【化1】 ![]() (式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立して、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基またはその水酸基とアルデヒドとのアセタール基を表す。ただし、R^(1)及びR^(2)が同時に水酸基を表すことはない。)で表されるアスコルビン酸誘導体またはその塩」と、本願発明の「抗酸化ビタミンであるアスコルビン酸-2-グルコシド」とは、アスコルビン酸誘導体である点で共通する。 (ウ)刊行物1発明の「食品に使用する高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物」は、アスコルビン酸誘導体をアルカリイオン水に含有したものであって、食品に使用するものであるので、刊行物1発明の「食品に使用する高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物」と、本願発明の「無色、無臭かつ無味であって、通常の水の替わりに調理用の水として使用される」「調理用の抗酸化アルカリイオン水」とは、食品用アルカリイオン水である点で共通する。 したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。 (一致点)アルカリイオン水にアスコルビン酸誘導体を含有させた、食品用アルカリイオン水 (相違点1) アルカリイオン水に含有するアスコルビン酸誘導体が、本願発明では「抗酸化ビタミンであるアスコルビン酸-2-グルコシド」であるのに対し、刊行物1発明では「下記一般式(I) 【化1】 ![]() (式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立して、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基またはその水酸基とアルデヒドとのアセタール基を表す。ただし、R^(1)及びR^(2)が同時に水酸基を表すことはない。)で表されるアスコルビン酸誘導体またはその塩」である点。 (相違点2) アルカリイオン水にアスコルビン酸誘導体を、本願発明では「アルカリイオン水1リットルに対し0.01?0.5グラム添加」するのに対し、刊行物1発明ではアルカリイオン水中に0.01?50重量%含む点。 (相違点3) 「食品用アルカリイオン水」が、本願発明では、「無色、無臭かつ無味であって、通常の水の替わりに調理用の水として使用される」、「調理用」であって「抗酸化」であるのに対し、刊行物1発明では、色、臭い、味について、また調理用であって抗酸化のものであることについては特に規定していない点。 (相違点4) アルカリイオン水が、本願発明では「製造直後にpH8?9の微アルカリ性又は弱アルカリ性を示す」ものであるのに対し、刊行物1発明ではpHについて特に規定していない点。 そこで、上記各相違点について検討する。 (相違点1,2,3について) 本願発明のアスコルビン酸-2-グルコシドを「アルカリイオン水1リットルに対し0.01?0.5グラム添加」することについて、本願の明細書には次のように記載されている。 「【0027】 本発明の抗酸化飲料水を、例えば毎日500ミリリットル摂取することで、それぞれの抗酸化ビタミンの所要量の10?100%程度がほぼ確保できるようになっている。 【実施例1】 【0028】 以下に、本発明による抗酸化飲料水の成分配合の実施例を示すが、これらは例示であって成分配合を限定するものではない。 (1)第1の形態の抗酸化飲料水の実施例 ・アルカリイオン水:1リットル ・アスコルビン酸-2-グルコシド:0.01?0.5グラム (2)第2の形態の抗酸化飲料水の実施例 ・アルカリイオン水:1リットル ・アスコルビン酸-2-グルコシド:0.01?0.5グラム ・水可溶化トコフェロール:0.1?20ミリグラム」 本願の明細書には、この他に添加量を本願発明の如く決めた理由についての記載はない。 刊行物1発明の「食品に使用できる高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物」は、アスコルビン酸誘導体を0.01?50重量%含むアルカリイオン水であって、また、アルカリイオン水中に含有する「下記一般式(I) 【化1】 ![]() (式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立して、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基またはその水酸基とアルデヒドとのアセタール基を表す。ただし、R^(1)及びR^(2)が同時に水酸基を表すことはない。)で表されるアスコルビン酸誘導体またはその塩」の具体例として、刊行物1には「L-アスコルビン酸-2-配糖体」が挙げられる旨、記載され(1c)、さらに、「L-アスコルビン酸-2-配糖体」として、L-アスコルビン酸-2-グルコシド(2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸)が記載されている(1c)。 そして、刊行物2には、生体内で容易に加水分解され、L-アスコルビン酸本来の抗酸化性、生理活性を発揮する物質として、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸が記載されている(2b,2c,2e)。なお、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸は、アスコルビン酸-2-グルコシドのことである(日本化学物質辞書 Web:http://nikkajiweb.jst.go.jp/nikkaji_web/pages/top.html 日化辞番号 J346.163G)。 さらに、刊行物2には、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸は、無色透明であって、酸味を有し、臭いはないこと(2d)、また、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの呈味を有する各種物質ともよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きく、普通一般の各種飲食物などに、ビタミンC強化剤などの目的で使用することができる(2c)旨、記載されている。 そうすると、刊行物1発明の「食品に使用する高安定型アスコルビン酸誘導体含有組成物」である食品用アルカリイオン水において、食品のビタミンCを強化させることを考えて、含有するアスコルビン酸誘導体として刊行物1に記載された具体例のうち、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸を選択することは、刊行物2に記載された技術事項を参酌して当業者が容易に想到し得たことであり、また、その際、刊行物2に記載されたとおり、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸は「L-アスコルビン酸本来の抗酸化性、生理活性を発揮する物質」であるので、これを含有させた食品用アルカリイオン水は、抗酸化の機能を有するものとなること、さらに、「無色透明であり、酸味を有し、臭いはなく、また、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの呈味を有する各種物質ともよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きい物質」であることから、加熱などして食品を調理する際に使用する水として使用可能な無色、無臭のものとなることは当然であり、そして、その含有量について、ビタミンC強化という目的に沿った摂取量とし、また、調理用としても違和感なく使用可能な水となるように、本願発明の如く「アルカリイオン水1リットルに対し0.01?0.5グラム添加」することで、酸味を感じない無味の水とし、通常の水の替わりに使用される調理用の抗酸化アルカリイオン水とする程度のことは、刊行物2に記載された発明を参照して当業者が容易になし得たことである。 (相違点4について) 本願発明のアルカリイオン水が「製造直後にpH8?9の微アルカリ性又は弱アルカリ性を示す」ことについて、本願の明細書を参照すると、段落【0008】に「通常の水が空気中の二酸化炭素を溶解しているため、微?弱酸性(pH5?6程度)を示すのに対し、アルカリイオン水は製造条件にもよるが、通常、製造直後は微?弱アルカリ性(pH8?9程度)を示す。」と記載されており、アルカリイオン水が通常、「製造直後にpH8?9」を示す旨、説明されているものの、pHの値の上限、下限の値に特別な作用効果を有する旨は記載されていない。 そして、刊行物1には、用いるアルカリイオン水について、水道水や電解質含有水を電気分解して得ることができるものであり、家庭用、工業用として市販されている酸性水製造機の副産物であるアルカリイオン水を利用することもできる旨、記載されており(1d)、さらにpH値については「pH値は8?14がよく、好ましくは9?13である。」と記載されていることから(1e)、pHが9?13が好ましいとしつつも、通常の電気分解によって得られるようなアルカリイオン水を利用することができるものである。そして、例えば、電気分解により陰電極で製造されるアルカリイオン水はpH8?9程度のものが製造されることも刊行物3に記載され(3a)、さらに、現在市販されている電解水生成器は、ほとんどの製品が、pHを任意にレベルに調節できるようになっていることが刊行物4に記載されていることからも(4a)、刊行物1発明のアルカリイオン水として、「製造直後にpH8?9の微アルカリ性又は弱アルカリ性を示す」ような通常のアルカリイオン水を用いることは、刊行物3,4の記載を参照して、当業者が適宜になし得たことである。 (本願発明の効果について) 通常のアルカリイオン水に比べて抗酸化機能が強化されておりかつその機能が安定に維持された抗酸化飲料水が得られること、また、その色、味、香りは通常の飲料水あるいは通常のアルカリイオン水と比較して、それほど大きな差異がないものが得られ、調理用の水として通常の飲料水の替わりに使用できること、との本願発明の効果は、刊行物1ないし4から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。 |
審理終結日 | 2012-11-14 |
結審通知日 | 2012-11-20 |
審決日 | 2012-12-07 |
出願番号 | 特願2005-90477(P2005-90477) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 晴絵 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
齊藤 真由美 菅野 智子 |
発明の名称 | 調理用の抗酸化アルカリイオン水 |
代理人 | 小島 高城郎 |
代理人 | 小島 高城郎 |