• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1269888
審判番号 不服2011-11013  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-25 
確定日 2013-02-06 
事件の表示 特願2008-238516「基板アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日出願公開、特開2009- 55617〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1999年2月18日を国際出願日とする出願である特願2000-532879号(パリ条約による優先権主張・外国庁受理 1998年2月20日 米国、1998年2月23日 米国)の一部を平成20年9月17日に新たな特許出願としたものであって、平成23年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年5月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成22年9月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「内部に組み込まれた回路に対する平面的接地面を有する無線通信機器における使用のための基板アンテナにおいて、
所定の厚みと長さを有し、前記接地面から離間した構成を有する非導電体支持基板と、
前記支持基板上に形成され、給電端と開放端を有し、少なくとも一つの所定の周波数で、電磁エネルギーの能動放射装置として作動するように選択された長さであって、前記電磁エネルギーのおよそ4分の1波長の長さを有する前記支持基板の上に形成された導電トレースの形であるアンテナ放射素子を備え、
前記支持基板が、前記無線機器の中に、前記平面的接地面端の付近に、かつ越えて配設されており、前記支持基板が、前記接地面端に隣接して配置され、前記接地面と90度未満の角度を成して対向している平面を有していることを特徴とする基板アンテナ。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「内部に組み込まれた回路に対する平面的接地面を有する無線通信機器における使用のための基板アンテナにおいて、
所定の厚みと長さを有し、前記接地面から離間した構成を有する非導電体支持基板と、
前記支持基板上に形成され、給電端と開放端を有し、少なくとも一つの所定の周波数で、電磁エネルギーの能動放射装置として作動するように選択された長さであって、前記電磁エネルギーのおよそ4分の1波長の長さを有する前記支持基板の上に形成された導電トレースの形であるアンテナ放射素子を備え、
前記支持基板が、前記無線機器の中に、前記平面的接地面端の付近に、かつ越えて配設されており、前記支持基板が、前記接地面端に隣接して配置され、前記接地面と90度未満の角度を成して空間的に離間した態様で対向している平面を有していることを特徴とする基板アンテナ。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、支持基板に関し、補正前の「前記接地面と90度未満の角度を成して対向している平面を有している」という構成を「前記接地面と90度未満の角度を成して空間的に離間した態様で対向している平面を有している」という構成に補正することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された特開平5-7109号公報(以下、「引用例」という。)には「携帯電話用内蔵アンテナ」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 (1)携帯電話機側面付近に幅を持った形状で先端側から終端側に配設し、前記携帯電話機に内蔵したフレキシブルプリント基板と、前記フレキシブルプリント基板上に前記基板形状に沿って幅方向に分布させたスパイラル状もしくはジグザグ状にパターンを形成させたアンテナ導体とを具備した携帯電話用内蔵アンテナ。」(2頁1欄)

ロ.「【0008】
【実施例】実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1において、1は携帯電話機(主にコードレス電話機)、2はプリント基板、3はプリント基板2に実装されている無線送受信機、5は送信アンテナ、6は受信アンテナ、7は無線送受信機3と送受信アンテナ5、6を接続するための中継基板である。図2は一例として送信アンテナ5の導体パターン図である。この導体パターンはパターン幅を35μmの銅箔で作り、その周囲を25μmのポリイミドで包んで絶縁し、プリント基板の厚さを100μm以下とする。
【0009】次に動作について説明する。電気的な信号の流れについては従来技術と同様であるため、ここでは説明を省略する。図2において、導体長は導体をスパイラル状に形成することにより目標とする携帯電話機(コードレス電話機)の搬送波(254MHz)の1/4λ(0.295m)をとっている。また一番問題となる導体パターンを囲むフレキシブル材料の誘電正接(以下tanδという)といわれる損失に関するファクターであるが、絶縁材料であるポリイミドは高周波特性に優れていて殆ど問題にならず、導体と絶縁材料を接着する接着材の特性も一般に1GHz位までの高周波で使われているプリント基板であるガラスエポキシ基板と殆ど変らない。かつ厚さが100μm以下と非常に薄くなるため、この部分での損失は少ないと考えられる。また携帯電話機などに使用されるアンテナの帯域幅はある程度広いことが望まれるが、この帯域幅を広くするためには一般的に線状アンテナの径を太くすることにより実現できるとされているが、従来の線状アンテナでは径もある程度限られていた。これに対しこの発明のアンテナでは導体をスパイラル状に形成することにより、図4に示すように等価的にアンテナの径を太くする働きがあり、前述のようにアンテナの帯域幅を広くとることができる。人体の影響を受けにくく、送受信電波の干渉を受けにくい様にするために、送受信用アンテナを各々分離して、携帯電話機の先端部側面に配設している。」(2頁2欄?3頁3欄)

上記引用例の摘記事項イ.、ロ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記引用例の「携帯電話用内蔵アンテナ」は、上記摘記事項イ.、ロ.及び【図1】の記載によれば、「携帯電話機1」に内蔵配置され使用される「送信アンテナ5」であって、「プリント基板2」に実装されている「無線送受信機3」に「中継基板7」を介して電気的に接続されて給電されるものであり、前記携帯電話機12の先端部側面に配置されている。
また、上記摘記事項ロ.及び【図2】の記載によれば、前記「送信アンテナ5」は、アンテナ導体として作用する銅箔で作られたスパイラル状もしくはジグザグ状の「導体パターン」を、フレキシブルな絶縁材料であるポリイミド製の基板、すなわち、「非導電体支持基板」上に形成して、基板全体として所定の厚み(100μm以下)と長さを持って構成されたいわゆる「基板アンテナ」である。
また、上記摘記事項ロ.の段落【0009】の記載によれば、前記「導体パターン」の導体長は「携帯電話機(コードレス電話機)の搬送波(254MHz)の1/4λ(0.295m)をとっている」とあり、送信アンテナが電磁エネルギーを電波として能動放射する装置として作動するものであること、「254MHz」が一つの「周波数」であること、「λ」が電波の「波長」を慣用的に表現する記号であるなどの技術常識も参酌すれば、引用例の「導体パターン」は『少なくとも一つの所定の周波数で、電磁エネルギーの能動放射装置として作動するように選択された長さであって、前記電磁エネルギーのおよそ4分の1波長の長さを有する』という構成を備えるものである。
また、【図2】の「導体パターン」の左端部分は、「アンテナ放射素子」としての導体パターン部分に電磁エネルギーを給電する「給電端」にあたり、【図2】のスパイラル形状の導体パターンの先端部分が「開放端」にあたることは技術常識である。
そして、【図1】の記載から明らかなように、前記「送信アンテナ5」を構成する「非導電体支持基板」は、携帯電話機用内蔵アンテナを構成するものであるから、「携帯電話機1」の中にあることは自明であって、携帯電話機の先端部と異なる外形を有する「プリント基板2」に対して、「空間的に離間し」て、「プリント基板2」の左端の付近に、かつ(左端を)越えて、前記先端部側面に配設されている。そして、前記「非導電体支持基板」は前記「給電端」付近を除き、「プリント基板2」にほぼ垂直に配設されている。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「プリント基板を有する携帯電話機における使用のための基板アンテナにおいて、
所定の厚みと長さを有し、前記プリント基板から離間した構成を有する非導電体支持基板と、
前記支持基板上に形成され、給電端と開放端を有し、少なくとも一つの所定の周波数で、電磁エネルギーの能動放射装置として作動するように選択された長さであって、前記電磁エネルギーのおよそ4分の1波長の長さを有する前記支持基板の上に形成された導体パターンの形であるアンテナ放射素子を備え、
前記支持基板が、前記携帯電話機の中に、前記プリント基板端の付近に、かつ越えて配設されており、前記支持基板が、前記プリント基板端に隣接して配置され、前記給電端付近を除き、前記プリント基板とほぼ垂直の角度を成して空間的に離間した態様で対向している平面を有している基板アンテナ。」

B.例えば特開平9-270731号公報(以下、「周知例1」という。)又は特開平9-298347号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例1)
ハ.「【請求項1】 表面に操作キー(75)を配列したケーシング(7)の内部に回路ユニット(8)を収容して構成され、該回路ユニット(8)は、グランド層(11)及び誘電体層を有する積層プリント配線基板(1)上に信号処理回路及びストリップ導体(5)を形成し、前記グランド層(11)、誘電体層及びストリップ導体(5)によって内蔵アンテナが構成されている携帯電話機において、前記グランド層(11)は、内蔵アンテナとして最適寸法を有する第1グランド層部(12)と、第1グランド層部(12)と共に前記信号処理回路のグランドとして機能すべき第2グランド層部(13)に分離して形成され、第1グランド層部(12)と第2グランド層部(13)の間には、第1グランド層部(12)が内蔵アンテナとして機能すべき高周波域では両者を分断し、且つ第1及び第2グランド層部(12)(13)がグランドとして機能すべき低周波域では両者を連結する手段が介在していることを特徴とする携帯電話機。」(2頁1欄)

ニ.「【0002】
【従来の技術】一般に、携帯電話機は、図9に示す如く、表面にディスプレイ(74)及び操作キー(75)が配列された上半ケース(71)と下半ケース(72)を組み合わせることによって、ケーシング(7)が構成されている。上半ケース(71)にはカバー(73)が開閉操作可能に取り付けられ、該カバー(73)を開くことによって、前記操作キー(75)の操作及び通話が可能となる。又、ケーシング(7)の内部には、図8に示す回路ユニット(80)が内蔵されている。
【0003】回路ユニット(80)は、図示の如く、グランド層(14)及び誘電体層(図示省略)を有する積層プリント配線基板(10)の表面に、高周波回路(3)、デジタル信号回路(4)及びストリップ導体(5)が形成され、グランド層(14)、誘電体層及びストリップ導体(5)によって、内蔵アンテナが構成されている。又、前記高周波回路(3)は、シールド板(6)によって覆われている。」(2頁1欄)

(周知例2)
ホ.「【0002】
【従来の技術】従来、例えば携帯電話の送信回路や受信回路に用いる電圧制御発振(VCO)回路のような高周波(RF,Radio Frequency)回路を板厚の薄い多層基板上に構築する場合、図3に示すような高周波用のプリント配線板1が用いられている。この種のプリント配線板1は、例えば4層の導体パターン層を有している。この場合、プリント配線板1は表裏の表面層を部品面2及び3として、それぞれ高周波回路6を設けるようにして、その間に2層の導体パターン層でなるアース層4及び5を絶縁性の基板材料であるエポキシ樹脂を間に挿んで積層している。
【0003】このように部品面2及び3の間に2層のアース層を設けて、部品面2及び3にそれぞれ実装される高周波回路6相互の電磁的な輻射を遮つている(シールド)。ここでアース層を二層としているのは、シールド効果を高めるため、若しくはいずれか一方のアース層に信号線を設ける場合があるからである。」(2頁1欄)

例えば上記周知例1の摘記事項ハ.、ニ.及び周知例2の摘記事項ホ.ならびに各摘記事項に関連する図面に開示されているように、
「高周波回路を実装する携帯電話機のプリント基板に平面的な接地面を設ける」
ことは周知である。

C.例えば特開平9-252212号公報(以下、「周知例3」という。)又は特開平10-13287号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例3)
ヘ.「【請求項1】 筐体に設けられたプリント基板と、筐体に設けられたアンテナと、前記プリント基板に設けられた給電線路に接続されるアンテナの第1の導体と、前記プリント基板に設けられたグランドに接続されるアンテナの第2の導体と、前記アンテナの第1の導体と一体に設けられた第1の接続部分と、前記アンテナの第2の導体と一体に設けられた第2の接続部分と、前記プリント基板に設けられ、その給電線路に接続された給電用導電性ばねと、前記プリント基板に設けられ、そのグランドに接続されたグランド用導電性ばねとを備え、前記給電用導電性ばねを前記アンテナの第1の接続部分に弾性をもって圧接し、前記グランド用導電性ばねを前記アンテナの第2の接続部分に弾性をもって圧接することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】 コードレス電話機に搭載されているアンテナにおいて、給電とグランドへの接続が必要なアンテナで、アンテナに給電するための接続部分とグランドのための接続部分をアンテナ自体に備え、また電話機筐体内にはプリント基板を備え、前記プリント基板に設けられた給電線路に接続された給電用導電性ばねと、グランドに接続されたグランド用導電性ばねを使用して、前記アンテナに設けられた接続部分にそれぞれが確実に接続することでアンテナに給電することを特徴とするアンテナ装置。
(・・・中略・・・)
【請求項9】アンテナを銅箔パターンによってプリント基板状に製作し、そのプリント基板アンテナの一方の面にアンテナ給電のための接続部分を設け、それと同一面にグランドのための接続部分を設け、給電用とグランド用の導電性ばねがアンテナに設けられたそれぞれの接続部分に弾接することで電気的に接続されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。」(2頁1欄)

ト.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アンテナ装置、特に、コードレス電話機におけるアンテナの給電装置に関するものである。」(3頁3欄)

(周知例4)
チ.「【0002】
【従来の技術】従来のアンテナ給電方式を、図2の(a)、図2の(b)に示す。図1の(a)は、給電金具7を使用した場合であり、フロントケース6の無線基板3上に、無線部と接続した板状の給電金具7を折り曲げて取り付け、リアケース5内の外部アンテナ1の端子を、給電金具7に接続して給電する。図2の(b)は、接続ケーブルを使用した場合であり。フロントケース5内の無線基板3上に、無線部と接続した接続コネクタ8を取り付け、リアケース側には、外部アンテナ1の端子と接続した線状のアンテナ素子9を設け、まず、このアンテナ素子9と接続コネクタ8とを接続した後、フロントケース3とリアケース5とを組み合わせて、電気的に結合させている。」(2頁1欄)

例えば上記周知例3の摘記事項ヘ.、ト.及び周知例4の摘記事項チ.ならびに各摘記事項に関連する図面に開示されているように、
「携帯電話等のアンテナ構造において、装置側基板から離間しているアンテナ側の給電端子部を装置側基板まで延長することなく、前記端子部と装置側基板に設けたバネ部材を接触させることにより電気的接続を行う」
構造は周知である。

(3)対比
補正後の発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「携帯電話機」は、補正後の発明の「無線通信機器」及び「無線機器」に相当する。
補正後の発明の「内部に組み込まれた回路に対する平面的接地面」(単に「接地面」という場合もある。)は、本願明細書の段落【0051】の記載によれば、多層のプリント配線基板である「回路基板302」中の金属導体層504あるいは508のいずれかであるから、「回路基板」に設けられた接地面のことであり、一方、引用発明の「プリント基板」も接地面を備えているか否かは不明であるものの「回路基板」であるから、補正後の発明の「内部に組み込まれた回路に対する平面的接地面」(単に「接地面」という場合もある。)と引用発明の「プリント基板」とは「回路基板」である点で一致している。
また、引用発明の「導体パターン」は幅35μmの導電線路、すなわち、「導電トレース」を有する構成であるから、引用発明の「導体パターンの形であるアンテナ放射素子」と補正後の発明の「導電トレースの形であるアンテナ放射素子」の間に実質的な差異はない。
また、補正後の発明の「接地面と90度未満の角度を成」す基板アンテナと引用発明の「前記給電端付近を除き、プリント基板とほぼ垂直の角度を成」す基板アンテナはいずれも「回路基板と所定の角度を成」す基板アンテナである点で一致している。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「回路基板を有する無線通信機器における使用のための基板アンテナにおいて、
所定の厚みと長さを有し、前記回路基板から離間した構成を有する非導電体支持基板と、
前記支持基板上に形成され、給電端と開放端を有し、少なくとも一つの所定の周波数で、電磁エネルギーの能動放射装置として作動するように選択された長さであって、前記電磁エネルギーのおよそ4分の1波長の長さを有する前記支持基板の上に形成された導電トレースの形であるアンテナ放射素子を備え、
前記支持基板が、前記無線機器の中に、前記回路基板端の付近に、かつ越えて配設されており、前記支持基板が、前記回路基板端に隣接して配置され、前記回路基板と所定の角度を成して空間的に離間した態様で対向している平面を有している基板アンテナ。」

(相違点1)
「回路基板」に関し、補正後の発明は「内部に組み込まれた回路に対する平面的接地面」(単に「接地面」という場合もある。)であるのに対し、引用発明は「プリント基板」である点。
(相違点2)
「回路基板と所定の角度を成」す基板アンテナに関し、補正後の発明は「接地面と90度未満の角度を成」す基板アンテナであるのに対し、引用発明は「前記給電端付近を除き、プリント基板とほぼ垂直の角度を成」す基板アンテナである点。

(4)判断
(4-1)上記相違点1の「回路基板」について
例えば上記周知例1、2に開示されているように「高周波回路を実装する携帯電話機のプリント基板に平面的な接地面を設ける」ことは周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「プリント基板」に平面的な接地面を設ける程度のことは当業者であれば適宜なし得ることであり、当該プリント基板に設けた平面的な接地面を補正後の発明のような「内部に組み込まれた回路に対する平面的接地面」と呼称する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

(4-2)上記相違点2の「回路基板と所定の角度を成」す基板アンテナについて
回路基板としての引用発明の「プリント基板」に補正後の発明のような「接地面」を設けることが当業者であれば適宜なし得ることであることは前項で説示したとおりである。
一方、本願明細書の段落【0018】の「該支持基板は、アンテナを使用するための機器の中の回路と構成部品に関連している接地面からずらされてまた接地面に対して垂直に取り付けられている。即ち、該基板は、接地面端に隣接して取り付けられており、接地面から90度未満ずらされている面を有している」という記載によれば、補正後の発明においても所定の角度は垂直(90度)が原則であって、場合によりその前後の角度でもよいとされている。したがって、補正後の発明の「接地面と90度未満の角度を成」す構成と引用発明の「プリント基板とほぼ垂直の角度を成」す構成の間に実質的な差異はない。
また、例えば上記周知例3、4に開示されているように「携帯電話等のアンテナ構造において、装置側基板から離間しているアンテナ側の給電端子部を装置側基板まで延長することなく、前記端子部と装置側基板に設けたバネ部材を接触させることにより電気的接続を行う」構造は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因もまた何ら見あたらないから、これらの周知技術に基づいて、引用発明のプリント基板と平行になっている「前記給電端付近」の構成を例えばプリント基板側のバネ等に置換することにより、引用発明の「前記給電端付近を除き、プリント基板とほぼ垂直の角度を成」す基板アンテナの構成を、補正後の発明のような「接地面と90度未満の角度を成」す基板アンテナという構成とする程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

(5)まとめ
以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び各周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び各周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-05 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-25 
出願番号 特願2008-238516(P2008-238516)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻生 哲朗  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 矢島 伸一
神谷 健一
発明の名称 基板アンテナ  
代理人 白根 俊郎  
代理人 野河 信久  
代理人 高倉 成男  
代理人 竹内 将訓  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 砂川 克  
代理人 村松 貞男  
代理人 岡田 貴志  
代理人 中村 誠  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 堀内 美保子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ