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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J |
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管理番号 | 1269891 |
審判番号 | 不服2011-14908 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-07-11 |
確定日 | 2013-02-06 |
事件の表示 | 特願2008-507884「ハイブリッド直交周波数分割多元接続システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日国際公開、WO2006/116003、平成20年 9月11日国内公表、特表2008-537451〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2006年4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年4月22日、および2006年4月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、 原審において平成22年6月22日付け拒絶理由通知に対し、同年9月24日に意見書および手続補正書の提出があったが、平成23年3月7日付けで拒絶査定となり、これに対し同年7月11日に審判請求がなされるとともに手続補正書の提出があったものである。 なお、平成24年5月30日付けの当審よりの審尋に対し、同年8月8日に回答書の提出があった。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年7月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、以下のように補正前の平成22年9月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 (本願発明) 「 【請求項1】 ハイブリッド直交周波数分割多元接続(OFDMA)通信を実行するように構成された無線送信機/受信機ユニット(WTRU)であって、 第1グループの副搬送波上の複数ユーザ拡散入力データと第2グループの副搬送波上の非拡散入力データとを含んだハイブリッドOFDMAシンボルを受信するように構成された受信機を備え、 前記受信機は、前記第1グループの副搬送波上の複数ユーザの拡散入力データと前記第2グループの副搬送波上の非拡散入力データから単一ユーザ拡散入力データを回復するために、前記受信されたハイブリッドOFDMAシンボルを処理するように構成されていて、 前記受信機は、 コード領域ユーザ分離を実行することにより前記複数ユーザ拡散入力データから単一ユーザ入力データを回復するように構成された拡散OFDMAサブアセンブリと、 前記非拡散入力データから第2入力データを回復するように構成された非拡散OFDMAサブアセンブリと、 を含むことを特徴とするWTRU。」 (補正後の発明) 「 【請求項1】 ハイブリッド直交周波数分割多元接続(OFDMA)通信を実行するように構成された無線送信機/受信機ユニット(WTRU)であって、 第1グループの副搬送波上の複数ユーザ拡散入力データと第2グループの副搬送波上の非拡散入力データとを含んだハイブリッドOFDMAシンボルをシンボル時間間隔において受信するように構成された受信機を備え、 前記受信機は、前記第1グループの副搬送波上の複数ユーザの拡散入力データと前記第2グループの副搬送波上の非拡散入力データから単一ユーザ拡散入力データを回復するために、前記受信されたハイブリッドOFDMAシンボルを処理するように構成されていて、 前記受信機は、 コード領域ユーザ分離を実行することにより前記複数ユーザ拡散入力データから単一ユーザ入力データを回復するように構成された拡散OFDMAサブアセンブリと、 前記非拡散入力データから第2入力データを回復するように構成された非拡散OFDMAサブアセンブリと、 を含むことを特徴とするWTRU。」 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 上記本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「ハイブリッドOFDMAシンボルを受信する」という記載を、「ハイブリッドOFDMAシンボルをシンボル時間間隔において受信する」と「シンボル時間間隔において」の構成を追加して限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明] 原審の拒絶理由に引用された特開特開2003-152679号公報(以下、「引用例」という。)には、「無線通信装置及び無線通信方法」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 送信信号に対して直交周波数分割多重処理を施すことによりOFDM信号を形成するOFDM変調手段と、 前記送信信号に対して拡散処理及び直交周波数分割多重処理を施すことによりOFDM-拡散信号を形成するOFDM-拡散変調手段と、 前記OFDM変調手段及び前記OFDM-拡散変調手段により形成された前記OFDM信号と前記OFDM-拡散信号とが混在した送信フレームを構成するフレーム構成手段と、 前記フレーム構成手段により構成された送信フレーム信号を送信する送信手段と、 を具備する無線通信装置。 【請求項2】 (・・・中略・・・) 【請求項3】 前記フレーム構成手段は、 周波数-時間軸において、同一の時間に前記OFDM信号と前記OFDM-拡散信号を混在させて配置すると共に各周波数帯域ではいずれか一方の信号を時間方向に配置することにより、前記送信フレームを構成する請求項1に記載の無線通信装置」 (2頁1欄) ロ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は無線通信装置及び無線通信方法に関し、例えば画像情報等の大容量の情報を高速及び高品質で無線伝送することが求められる無線通信システムに適用される無線通信装置及び無線通信方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、このように大容量の情報を高速及び高品質で無線伝送する方法として、種々の方法が提案され実現されている。例えばCDMA方式では、送信データに対して各通信端末に対応した拡散符号を用いて拡散処理を施して送信する。これによりCDMA方式では、無線伝搬路における送信信号間の干渉を抑制できることにより、受信側で高品質の受信信号を得ることができる。 【0003】またOFDM変調方式とCDMA方式とを組み合わせたOFDM-CDMA方式が、最近注目されている。OFDM-CDMA方式には、大別して、時間領域拡散方式と周波数領域拡散方式とがある。このうち周波数領域拡散方式について説明する。 【0004】図33は、変調処理前のディジタルシンボルの状態を示す模式図であり、図34は、周波数領域拡散方式での変調処理後の各チップの配置を示す模式図である。周波数領域拡散方式では、直列データ系列であるN個のディジタルシンボル(図33)について、1シンボルづつ拡散率Mの拡散符号が乗算される。拡散後のチップはM個並列的に、1シンボルづつ順次IFFT処理がなされる。この結果、MサブキャリアのOFDMシンボルがN個生成される。つまり、周波数領域拡散方式では、拡散後のチップが、周波数軸方向に配置される形になる(図34)。換言すれば、拡散後のチップが、それぞれ異なるサブキャリアに配置される形になる。 【0005】ここで変調処理前の1ディジタルシンボルが、時間幅T、周波数帯域幅Bの無線リソースを使用すると仮定すると(図33)、変調処理後では、1チップが時間幅N×T、周波数帯域幅B/Nを使用することになる。したがって、時間-周波数領域に占める1ディジタルシンボル当たりの面積は、M×T×Bとなり、変調処理前の1ディジタルシンボルが占める面積のM倍となる。 【0006】ここで、例えば、ディジタルシンボル数N=8、拡散率M=8とした場合、周波数領域拡散方式により生成されるOFDMシンボルの信号パターンは、図35に示すようになる。この図に示すように、周波数領域拡散方式では、時間軸上の白黒の濃淡で区別する8個のディジタルシンボルに対応して、t0?t7で8個のOFDMシンボルが順次生成される。その際、各ディジタルシンボルにおける8個のチップが、それぞれ異なるサブキャリアf1?f8に割り当てられる。 【0007】以上説明したようなOFDM変調方式とCDMA変調方式を組み合わせることにより、効率の良いリユースを実現したり、統計多重効果を得ることができる。尚かつ、シングルキャリアのCDMAより高速なデータ伝送も実現することができる。なお、リユースとは、隣接セルにおいて同一周波数を使用可能とすることである。また、統計多重効果とは、データ有無がユーザによってランダムに生じる場合に、互いに送信しない区間のエネルギー低減によって、連続送信する場合に比べ、より多くのユーザの信号を収容できることである。」 (3頁3欄?4頁5欄) ハ.「【0049】 【発明の実施の形態】本発明の骨子は、送信データに対して、高速伝送が可能なOFDM変調を施すと共にOFDM変調と比較して高速伝送の点ではやや劣るが伝送品質の点では優れているOFDM-拡散変調を施し、これら2つの変調方式により形成したOFDM信号とOFDM-拡散信号(以下、OFDM-拡散信号をOFDM-CDM信号と呼ぶ)を選択的に送信相手局に割り当てて送信するようにしたことである。これにより通信端末では、自分の置かれている受信環境に応じてこれら2つの信号のうちいずれかを適応的に選択して復調することにより、高速受信及び高品質受信を両立することができる。 【0050】これを実現するため本発明では2つの送信方法を提案する。先ず第1に、送信信号のフレーム構成を図1(A)、図1(B)に示すように、周波数-時間軸で見たときに、同一の周波数帯域にOFDM信号とOFDM-CDM信号を混在させて配置すると共に各時点ではいずれか一方の信号を周波数方向に配置し、各信号を異なる時間に送信する方法である。これにより通信端末側では、各時点の信号を選択的に抽出すれば、OFDM信号又はOFDM-CDM信号を選択的に受信復調できるようになる。 【0051】また第2に、送信信号のフレーム構成を図2(A)、図2(B)に示すように、周波数-時間軸で見たときに、同一の時間にOFDM信号とOFDM-CDM信号を混在させて配置すると共に各周波数帯域ではいずれか一方の信号を時間方向に配置し、各信号を同一時間に送出する方法である。これにより通信端末側では、各周波数帯域の信号を選択的に抽出すれば、OFDM信号又はOFDM-CDM信号を選択的に受信復調できるようになる。 【0052】さらに送信フレームの中のどの位置にOFDM信号があり、どの位置にOFDM-CDM信号があるのかを示すフレーム構成情報を含む制御情報シンボルを、図3に示すように配列してOFDM信号及びOFDM-CDM信号と共に送信する。」 (6頁9?10欄) ニ.「【0053】(実施の形態1)図4において、1は全体として、本発明の実施の形態1に係る無線基地局装置の構成を示す。無線基地局装置1は、送信ディジタル信号D1をシリアルパラレル変換部(S/P)2に入力させる。また無線基地局装置1は、送信ディジタル信号D1を拡散部4により所定の拡散符号を用いて拡散した後、シリアルパラレル変換部(S/P)5に入力させる。さらに無線基地局装置1は、OFDM信号とOFDM-CDM変調信号が混在されたときのフレーム構成を示すフレーム構成信号D5がシリアルパラレル変換部(S/P)8に入力させる。 【0054】ここでシリアルパラレル変換部(S/P)2、5、8は、フレーム構成部9を形成し、フレーム構成手段として機能する。すなわちフレーム構成部9は、図1(A)、図1(B)、図2(A)又は図2(B)に示すようなOFDM信号とOFDM-CDM信号とが混在した送信フレームが構成されるように、送信データに対してパラレルシリアル変換処理を行う。 【0055】例えば図1(A)及び図1(B)に示すように、同一の周波数帯域にOFDM信号とOFDM-CDM信号を混在させて配置すると共に各時点ではいずれか一方の信号を周波数方向に配置した送信フレームを構成する場合には、ある時点ではシリアルパラレル変換部(S/P)2からのみ、送信ディジタル信号D1をサブキャリア数分にパラレルシリアル変換したパラレル信号D2を出力する。また、別の時点ではシリアルパラレル変換部(S/P)5からのみ、拡散された送信ディジタル信号D1をサブキャリア数分にパラレルシリアル変換したパラレル信号D3を出力する。 【0056】また例えば図2(A)及び図2(B)に示すように、同一の時間に前記OFDM信号と前記OFDM-CDM信号を混在させて配置すると共に各周波数帯域ではいずれか一方の信号を時間方向に配置した送信フレームを構成する場合には、例えばシリアルパラレル変換部(S/P)2からは2つのサブキャリア分の2系統のパラレル信号D2を出力すると共にシリアルパラレル変換部(S/P)5からは4つのサブキャリア分の4系統のパラレル信号D3を出力すればよい。 【0057】逆離散フーリエ変換部(IDFT)は、入力されたパラレル信号D2、D3、フレーム構成パラレル信号に対して逆離散フーリエ変換処理を施すことにより、フレーム構成情報信号、OFDM信号、OFDM-CDM変調信号が混在した送信データD4を形成する。 【0058】このように、シリアルパラレル変換部(S/P)2及び逆離散フーリエ変換部(IDFT)3は、送信信号に対して直交周波数分割多重処理を施すことによりOFDM信号を形成するOFDM変調手段として機能する。また拡散部4、シリアルパラレル変換部(S/P)5及び逆離散フーリエ変換部(IDFT)3は、送信信号に対して拡散処理及び直交周波数分割多重処理を施すことによりOFDM-CDM信号を形成するOFDM-拡散変調手段として機能する。 【0059】無線部6はOFDM信号とOFDM-CDM信号の存在した送信信号D4に対してディジタルアナログ変換やアップコンバート等の所定の無線処理を施し、処理後の信号を送信電力増幅部7に送出する。送信電力増幅部7により増幅された信号はアンテナAN1に送出される。このようにして無線基地局装置1からOFDM信号とOFDM-CDM変調信号との混在信号が送信される。」 (6頁10欄?7頁11欄) ホ.「【0060】次に、無線基地局装置1から送信されるOFDM信号とOFDM-CDM信号との混在信号を受信する通信端末の構成を、図5に示す。通信端末10は、アンテナAN2により受信した、OFDM信号とOFDM-CDM信号が混在した受信信号S10を無線部11に入力する。無線部11は受信信号S10に対してダウンコンバートやアナログディジタル変換処理等の所定の無線処理を施し、処理後の信号を離散フーリエ変換部(DFT)12に送出する。 【0061】離散フーリエ変換部12は受信混在信号に対して離散フーリエ変換処理を施し、これにより得た受信パラレル信号をパラレルシリアル変換部(P/S)13、14、18にそれぞれ送出する。パラレルシリアル変換部13は受信パラレル信号を入力とし、送信側でOFDM変調された信号に対応する信号をシリアル信号に変換して続く復調部15に送出する。復調部15は入力信号に対して例えばQPSK復調処理を施す。これによりOFDM変調される前の送信データが復元される。 【0062】一方、パラレルシリアル変換部14は受信パラレル信号を入力とし、送信側でOFDM-CDM変調された信号に対応する信号をシリアル信号に変調して続く逆拡散部16に送出する。逆拡散部16は入力したシリアル信号に対して、送信側と同じ拡散符号を用いて逆拡散処理を施し、逆拡散後の信号を復調部17に送出する。復調部15は入力信号に対して例えばQPSK復調処理を施す。これによりOFDM-CDM変調される前の送信データが復元される。 【0063】またパラレルシリアル変換部18は受信パラレル信号をパラレルシリアル変換した後、制御情報復調部19に送出する。制御情報復調部19はフレーム構成情報を復調する。このフレーム構成情報は、復調部15、逆拡散部16及び復調部17の制御情報として使われる。これにより復調部15はOFDM信号とOFDM-CDM信号の混在信号からOFDM信号のみを復調できるようになる。同様に、逆拡散部16及び復調部17はOFDM信号とOFDM-CDM信号の混在信号からOFDM-CDM信号のみを復調できるようになる。」 (7頁11?12欄) ヘ.「【0064】次に図6を用いて、実施の形態1の動作について説明する。ここで無線基地局装置1から離れた位置に通信端末A、通信端末Bが存在し、一方、無線基地局装置1に比較的近い位置に通信端末Cが存在する場合を考える。ここで図中の実線で示される円の内側がOFDM-CDM信号を高品質で受信可能な領域AR1となっており、点線で示される円の内側がOFDM信号を高品質で受信可能な領域AR2となっている。この領域の限界の差は、スペクトル拡散方式を使っているか否かで生じるものである。 【0065】上述したように無線基地局装置1は、各通信端末A?Cに対してOFDM信号とOFDM-CDM信号の混在した信号を発信する。このとき無線基地局装置1に比較的近い通信端末Cでは、OFDM信号を受信品質の良い状態で受信できるので、OFDM変調方式を用いて発信された信号を復元データとして用いることができる。 【0066】これに対して無線基地局装置1から比較的遠い通信端末A、Bでは、OFDM変量信号を受信品質の良い状態では受信できないので、OFDM-CDM変調方式を用いて発信された信号を復元データとして用いるようになる。 【0067】これにより通信端末Cでは、受信品質が良くかつ伝送レートの高い受信データを得ることができる。また通信端末A、Bでは、伝送レートの点では通信端末Cよりも若干落ちるが受信品質の良い受信データを得ることができる。 【0068】ここでOFDM方式のみを使って信号を送信した場合を考えると、全ての通信端末A?Cで伝送レートの高い信号を受信できるが無線基地局装置1から遠い通信端末A、Bでは受信品質が劣化し、場合によっては再び同じデータを送らなければならないため実質的な伝送効率が低くなるおそれがある。またOFDM-CDM方式のみを使って信号を送信した場合を考えると、全ての通信端末A?Cで受信品質の良い信号を受信できるが、OFDM方式に比べて伝送レートが低くなる。 【0069】かくして以上の構成によれば、送信データに対して、OFDM変調を施すと共にOFDM-CDM変調を施し、これら2つの変調方式により形成したOFDM信号とOFDM-CDM信号の2種類の変調信号が混在した信号を送信するようにしたことにより、高速通信及び高品質通信の両立した無線基地局装置1及び無線通信方法を実現できる。」 (7頁12欄?8頁13欄) ト.「【0129】○8(当審注:引用例原文にある丸数字の8を「○8」のように表す、以下同様)図20に、1送信フレーム内にOFDM信号とOFDM-CDM信号を混在させる第8の方法を示す。この方法では、OFDM-CDM信号が各端末毎に異なる拡散符号を使ってマルチコード多重されている点を除いて、○7の場合と同様のフレームを構成する。つまり、1送信フレーム内で、各端末に割り当てる周波数帯域を固定とし、OFDM-CDM信号を送信する周波数帯域f20?f21、f20?f23とOFDM信号を送信する周波数帯域f21?f22、f23?f22を、各変調信号を送信する端末数に応じて可変とすると共に、OFDM-CDM信号をマルチコード多重し、各端末宛のチップを周波数軸方向及び時間方向に拡散する。 【0130】因みに、図20(A)は端末A?DにOFDM-CDM信号を送信し、端末EにOFDM信号を送信する場合のフレームフォーマットであり、図20(B)は端末A、BにOFDM-CDM信号を送信し、端末C、D、EにOFDM信号を送信する場合のフレームフォーマットである。 【0131】この方法の場合も、○7の方法と同様に、送信データ量の点で、各端末に対して公平性のあるデータ送信を行うことができる。」 (12頁22欄?13頁23欄) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 まず、引用例記載の「無線通信装置」(無線基地局装置1)は、上記イ.【請求項1】、ハ.【0051】、図2、ニ.、【0054】図4にあるように、「OFDM信号とOFDM-CDM信号を混在させて配置」した「送信フレーム」を送信するものであって、 上記ホ.【0060】、図5にある「通信端末10」は、該「送信フレーム」(OFDM信号とOFDM-CDM信号との混在信号)を受信することによって、前記「無線通信装置」(無線基地局装置1)と通信を実行する『受信機』を備えた端末であり、 全体としては例えば上記ヘ.図6にあるように、複数の端末A?Cが基地局1と通信する『多元接続』(Multiple Access:MA)の通信を行うものである。 ここで前記「OFDM信号とOFDM-CDM信号との混在信号」は、2種類のOFDM信号が混在しているから『ハイブリッド』(hybrid:混成の)OFDM信号ということができ、「OFDM」(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)とは『直交周波数分割多重』のことであるから、引用例記載の通信方式は『ハイブリッド直交周波数分割多元接続(OFDMA)通信』ということができ、引用例には『ハイブリッド直交周波数分割多元接続(OFDMA)通信を実行するように構成された通信端末10』が記載されている。 また、前記「OFDM信号とOFDM-CDM信号との混在信号」(ハイブリッドOFDM信号)の構成について、引用例の記載を検討すると、 上記ハ.【0051】、図2にあるように、送信フレームの周波数軸方向の一列を構成する複数の「周波数帯域」は、「OFDM-CDMシンボル」を含む『第1グループ』と「OFDMシンボル」を含む『第2グループ』に分けることができ、 各「周波数帯域」に『副搬送波』(サブキャリア)が対応するのは上記上記ニ.【0056】にも記載があるが、OFDM技術における技術常識であって、 図2の「OFDM-CDMシンボル」に対応する送信側入力データは、CDM(符号分割多重)のための拡散処理を受けている(図4の「拡散部4」)から『拡散入力データ』ということができ、 図2の「OFDMシンボル」に対応する送信側入力データは、CDM(符号分割多重)のための拡散処理を受けていないから『非拡散入力データ』である。 そして、これら2種類の入力データを含む、例えば周波数軸方向の一列分のシンボルをまとめて『ハイブリッドOFDMAシンボル』と呼ぶことも任意であり、該『ハイブリッドOFDMAシンボル』は、受信機側にシンボル単位の時間間隔で順次到来して受信されることも図2から明らかである。 結局、引用例の「通信端末10」にある『受信機』は、『第1グループの副搬送波上の拡散入力データと第2グループの副搬送波上の非拡散入力データとを含んだハイブリッドOFDMAシンボルをシンボル時間間隔において受信するように構成された受信機』ということができる。 また、引用例の「通信端末10」にある「受信機」は、上記ホ.【0060】?【0062】、図5にあるように、前記『第1グループの副搬送波上の拡散入力データと第2グループの副搬送波上の非拡散入力データとを含んだハイブリッドOFDMAシンボル』からなる「受信信号S10」を受信し、「無線部11」、「DFT12」から「復調部15,17」に至る経路で「無線処理」、「離散フーリエ変換処理」、「復調処理」などの信号処理を行い、入力データを「復元」するから、 『前記受信機は、前記第1グループの副搬送波上の拡散入力データと前記第2グループの副搬送波上の非拡散入力データから入力データを復元するために、前記受信されたハイブリッドOFDMAシンボルを処理するように構成』されており、 このうち、「パラレルシリアル変換部14」、「逆拡散部16」、「復調部17」から構成された回路部分は、『拡散入力データから入力データを復元するように構成された』回路部分であり、 「パラレルシリアル変換部13」、「復調部15」から構成された回路部分は、『非拡散入力データから入力データを復元するように構成された』回路部分である。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「 ハイブリッド直交周波数分割多元接続(OFDMA)通信を実行するように構成された通信端末10であって、 第1グループの副搬送波上の拡散入力データと第2グループの副搬送波上の非拡散入力データとを含んだハイブリッドOFDMAシンボルをシンボル時間間隔において受信するように構成された受信機を備え、 前記受信機は、前記第1グループの副搬送波上の拡散入力データと前記第2グループの副搬送波上の非拡散入力データから入力データを復元するために、前記受信されたハイブリッドOFDMAシンボルを処理するように構成されていて、 前記受信機は、 拡散入力データから入力データを復元するように構成されたパラレルシリアル変換部14、逆拡散部16、復調部17と、 非拡散入力データから入力データを復元するように構成されたパラレルシリアル変換部13、復調部15と、 を含む通信端末10。」 [対比・判断] 補正後の発明と引用発明を対比すると、 まず、引用発明の「通信端末10」は、通信端末であるから双方向の通信が可能であるのは技術常識として明らかであるが、引用例の図12,27にもあるように「受信機」のみならず、基地局へ送信するための『無線送信機』をも備えたユニットであるから、補正後の発明の『無線送信機/受信機ユニット』(Wireless Transmitter Receiver Unit:WTRU)である。 また、引用発明の「復元」とは、受信信号からもとのデータを回復するための操作であるから、補正後の発明の「回復」に相当する。 そして、引用発明の「パラレルシリアル変換部14、逆拡散部16、復調部17」は、拡散された入力データから入力データを回復するための回路部分の集合であるから、補正後の発明の「拡散OFDMAサブアセンブリ」に相当し、 引用発明の「パラレルシリアル変換部13、復調部15」は、拡散されていない非拡散入力データから入力データを回復するための回路部分の集合であるから、補正後の発明の「非拡散OFDMAサブアセンブリ」に相当し、こちらで回復された入力データを特に「第2入力データ」と呼ぶのは任意である。 したがって、両者は以下の点で一致し、また相違している。 (一致点) 「 ハイブリッド直交周波数分割多元接続(OFDMA)通信を実行するように構成された無線送信機/受信機ユニット(WTRU)であって、 第1グループの副搬送波上の拡散入力データと第2グループの副搬送波上の非拡散入力データとを含んだハイブリッドOFDMAシンボルをシンボル時間間隔において受信するように構成された受信機を備え、 前記受信機は、前記第1グループの副搬送波上の拡散入力データと前記第2グループの副搬送波上の非拡散入力データから入力データを回復するために、前記受信されたハイブリッドOFDMAシンボルを処理するように構成されていて、 前記受信機は、 前記拡散入力データから入力データを回復するように構成された拡散OFDMAサブアセンブリと、 前記非拡散入力データから第2入力データを回復するように構成された非拡散OFDMAサブアセンブリと、 を含むことを特徴とするWTRU。」 (相違点1) 「拡散入力データ」が、補正後の発明では「複数ユーザ(の)拡散入力データ」であるのに対し、引用発明では単に「拡散入力データ」である点。 (相違点2) 回復される「入力データ」が、補正後の発明では「単一ユーザ(拡散)入力データ」であるのに対し、引用発明では単に「入力データ」である点。 (相違点3) 「拡散OFDMAサブアセンブリ」における「拡散入力データから入力データを回復する」構成が、補正後の発明では「コード領域ユーザ分離を実行することにより」、「複数ユーザ拡散入力データから単一ユーザ入力データを回復する」ように構成されるのに対し、引用発明は単に「拡散入力データから入力データを復元する」ように構成される点。 そこで、まず、上記相違点1の「複数ユーザ(の)拡散入力データ」について検討する。 そもそも引用発明の「通信端末」は、引用例図6、9などにも記載があるように、通常1つの無線基地局エリア内に「複数」存在するのが前提であるが、各端末は無線通信端末であるから、通常少なくとも1人のユーザが所持して通信を行うことも技術常識であって、1つの基地局エリア内には「複数ユーザ」が存在するものである。 そして、基地局が送信する無線信号(ハイブリッドOFDMAシンボル)は、該「複数ユーザ」それぞれに宛てた入力データがまとめられた、多重化された入力データ、すなわち「複数ユーザ入力データ」を含むのは当然のことであって、各端末はこれを受信処理するものである。 特に「拡散入力データ」についてみても、上記ト.図20のほか、引用例図17?19にもあるように、拡散された入力データを含む「OFDM-CDMシンボル」は複数の端末A、B?Dに宛てたものであるから、前記「複数ユーザ入力データ」は「複数ユーザ(の)拡散入力データ」ということができる。 したがって、相違点1は格別のことではない。 ついで、相違点2の「単一ユーザ(拡散)入力データ」を回復する点について検討する。 上記相違点1の判断で前述のように、無線通信端末は通常少なくとも1人のユーザが所持して通信を行うものであるが、 各通信端末の受信機においては、端末を使用する通常1人のユーザに宛てたデータのみが必要であるのも自明なことであって、最終的には当該「単一ユーザ」に宛てた「入力データ」が回復されることとなるのも当然のことであり、これは「拡散入力データ」も同様である。 したがって、相違点2の「単一ユーザ(拡散)入力データ」を回復する点も格別のことではない。 最後に、相違点3の「拡散OFDMAサブアセンブリ」における「拡散入力データから入力データを回復する」構成について検討する。 本相違点3にかかる補正後の発明の構成のうち、「複数ユーザ拡散入力データから単一ユーザ入力データを回復する」点に関しては、上記相違点1,2の判断において検討したとおりである。 残る「コード領域ユーザ分離を実行することにより」の点について検討すると、 引用例の上記ト.【0129】、図20には、「OFDM-CDM信号が各端末毎に異なる拡散符号を使ってマルチコード多重されている」送信フレーム構成が開示されており、例えば図20(A)の「OFDM-CDM信号」にはA?D4つの端末(4人のユーザ)に対する信号が「異なる拡散符号を使ってマルチコード多重されている」ことを見て取ることができる。 このような「OFDM-CDM信号」を、例えば通信端末Aの受信機において回復処理する場合を考えると、引用例図5の「逆拡散部16」において、ユーザAに対する拡散符号(コード)を使って逆拡散処理することにより、ユーザAに対する拡散入力データを取り出す(回復する)こととなるから、コードA?Dの領域においてユーザAを(ユーザB?Dから)分離する操作ということができ、これは「コード領域ユーザ分離」ということができるものである。 したがって、「拡散OFDMAサブアセンブリ」において、「コード領域ユーザ分離を実行することにより」、「複数ユーザ拡散入力データから単一ユーザ入力データを回復する」とした相違点3は、当業者であれば引用例の記載に基づいて引用発明から容易に想到し得たものであり、相違点3も格別のことではない。 また、補正後の発明が奏する効果も前記引用発明及び引用例の記載から容易に予測出来る範囲内のものである。 そして、当審の審尋に対する回答書を参酌しても、上記認定を覆すに足りるものは見あたらない。 よって、補正後の発明は引用発明及び引用例の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明及び周知技術 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び引用例の記載に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び引用例の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-10 |
結審通知日 | 2012-09-11 |
審決日 | 2012-09-26 |
出願番号 | 特願2008-507884(P2008-507884) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04J)
P 1 8・ 121- Z (H04J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福田 正悟 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
藤井 浩 新川 圭二 |
発明の名称 | ハイブリッド直交周波数分割多元接続システムおよび方法 |
復代理人 | 濱中 淳宏 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |
復代理人 | 渡邉 直幸 |