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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1269897
審判番号 不服2011-16990  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-05 
確定日 2013-02-06 
事件の表示 特願2007-522528「高速自動焦点システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月23日国際公開、WO2006/019570、平成20年 3月13日国内公表、特表2008-507727〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年7月6日(パリ条約による優先権主張 2004年7月21日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年12月7日付けで拒絶理由が通知され、その後、意見書及び手続補正書が提出されることなく、平成23年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成24年1月4日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったが、回答書は提出されなかった。

第2 平成23年8月5日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年8月5日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成23年8月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。
「複数のマイクロミラーを有する少なくとも1枚のマイクロミラーアレイレンズを備えた自動焦点システムであって、
上記各マイクロミラーは、上記マイクロミラーアレイレンズの焦点距離、及び収差を修正すべく光の位相を調整する駆動部によって制御されている自動焦点システム。」(以下「補正発明」という。)

そこで、上記補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるかものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物
(1)引用文献1:特開2004-191424号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)
(a)「【0020】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。ここでは、撮像装置を電子カメラに適応した場合について説明する。
【0021】
図1に示す本実施の形態の撮像装置は、レンズ1,2,3と反射面の形状を可変可能なアクティブ光学素子たる形状可変ミラー4とからなる撮影光学系と、この撮影光学系を介して結像された被写体像を受光し、光電変換して撮像信号を生成する撮像手段20と、撮影光学系1,2,3,4とは異なる光路で被写体からの反射光を受光して被写体までの距離を測定し、その結果を測距信号として出力する測距手段たるAFセンサー60と、撮像信号から得られる輝度(Y)信号から、或るタイミングで取得された撮像信号のコントラストに係るコントラスト信号を生成すると共に、異なるタイミングにおけるコントラスト信号間の変化量を求め、その変化量に応じた信号を合焦判定信号として出力するコントラスト検出手段30と、形状可変ミラー4を制御する制御信号がアドレスに対応させて記憶されている記憶手段70と、記憶手段70から読み出された制御信号に基づいて形状可変ミラー4を駆動するアクティブ光学素子駆動手段たる可変ミラー駆動手段80と、コントラスト検出手段30からの信号に応じてアドレスを指定して記憶手段70から制御信号を読み出し、形状可変ミラー4を駆動する可変ミラー駆動手段80を制御する制御手段たるCPU40と、測距動作と撮影動作をそれぞれ開始させる レリーズスイッチ(以下、レリーズSW)90,91と、動画モード,静止画(スチル)モード,連写モード等の撮影モードを設定するモードスイッチ(以下、モードSW)92と、閃光発光を制御する閃光発光制御手段100と、を備えている。
【0022】
上記形状可変ミラー4は、反射面と、この反射面の形状を変化させるように該反射面の裏側に設けられた複数の駆動電極4aとを有して構成されている。」
(b)「【0035】
なお、図1における撮影光学系の光路上に、収差補正ミラーや、もう1つの別の形状可変ミラーを、さらに配置した構成としてもよい。・・・
【0037】
図7は、図1における撮影光学系1?4と撮像手段20を構成する撮像素子21との間の、光路上に形状可変ミラー6をさらに配置した例である。これにより、形状可変ミラーの機能性(収差補正機能も含む)の向上を図ることができる。」
(c)「【0038】
〔第1の実施の形態〕
次に、図8のフローチャートを参照しながら、第1の実施の形態の動作を説明する。
まず、CPU40は、ステップS1で第1のレリーズ(以下、1stレリーズ)手段であるレリーズスイッチ(以下、レリーズSW)90のオン/オフを判断し、オンであれば、昇圧回路82を動作させる。そして、図2または図3のようなAFセンサー60によりAFセンサー測距を行なう(ステップS2)。次に、ステップS3で測距判定の結果が良好であるか否かを判定し、測距判定の良好(すなわち、判定結果が異常値でない)であれば、その測距結果をもとに記憶手段70から合焦となる手前(近傍)のアドレスデータを参照し、可変ミラー駆動回路81を介して形状可変ミラー4を駆動する(ステップS4)。」
(d)「【0044】
これに対し、本発明の実施の形態では、フォーカシングレンズの代わりに、形状可変ミラー4を用いて焦点合わせの動作を行うようにしている。駆動前、駆動信号を供給していない状態では、形状可変ミラー4の反射面は、平面の状態を保っているため、AF動作の開始は平面からとなり、フォーカシングレンズ使用時のレンズ繰出し方向の確認動作が不要となり、さらに、重量のあるレンズを駆動させないことから、無駄な時間や消費電力を抑えることが可能となる。」
(e)図7には、撮影光学系中に、「形状可変ミラー4」と「形状可変ミラー6」の2つの形状可変ミラーが配置されている構成を読み取ることができる。
(f)引用文献1の全記載事項を総合すると、引用文献1には、AFを行うために、形状可変ミラーを有する撮影光学系、撮像手段20、AFセンサー60、コントラスト検出手段30、記憶手段70、可変ミラー駆動手段80、CPU40等を備えるシステムを構築することが開示されていることは、当業者には明かである。そして、該システムは、AFを行うシステム、すなわち、AFシステムということができる。
(g)上記記載事項(b)(特に「(収差補正機能も含む)」参照。)では、形状可変ミラーが撮影光学系の収差補正をも行うことが示唆されている。

してみると、上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「撮影光学系中に2つの形状可変ミラー4、6が配置されたAFシステムであって、
撮影光学系の焦点合わせの動作を行い、かつ、収差補正を行うように、形状可変ミラーを駆動する可変ミラー駆動手段80を制御するCPU40を備えるAFシステム。」(以下「引用発明」という。)

(2)引用文献2:James G. Boyd IV et al.,Fast-response Variable Focusing Micromirror Array Lens,Proceedings of SPIE,2003年3月,Vol.5055,p.278-p.286
本願の明細書で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。(仮訳)
(a)「マイクロミラーアレイを使用した反射型フレネルレンズは、MUMPs(登録商標)サーフェース・マイクロマシニング・プロセスにより設計・製造される。レンズの焦点距離は、静電的に駆動されるマイクロミラーの回転と平行移動を制御することにより、高速に変化させることができる。回転は光線を収束し、平行移動は光線の光路長がその波長の整数倍となるように調整する。」(「Abstract」第1?4行)
(b)「図1は、原理が類似するフレネルレンズとマイクロミラーアレイレンズの概略断面図である。各面は光線を一点に収束し、また、光線は波長の整数倍の光路長差を有する異なる面により屈折又は反射される。図2に示されるように、各マイクロミラーの回転は光線を集束するように制御され、平行移動は各光線が同位相となるように光路長差を調整するように制御される。(「1.1 Fresnel lens principle」第5?8行)

上記引用文献2の記載事項から、引用文献2には、マイクロミラーアレイレンズにおいて、各マイクロミラーの回転を制御することにより、マイクロミラーアレイレンズの焦点距離を変えることができ、また、各マイクロミラーの平行移動を制御することにより各光線が同位相となるように光路長差を調整することができるという技術事項が記載されている。

3.対比
補正発明と引用発明とを対比する。
(1)補正発明の「マイクロミラーアレイレンズ」は、引用発明の「形状可変ミラ-」の一種であることは、当業者には明かであるから、補正発明と引用発明は「少なくとも1枚の形状可変ミラー」を備えた点で一致する。
(2)引用発明の「AFシステム」は、補正発明の「自動焦点システム」に相当する。
(3)引用発明の「撮影光学系の焦点合わせの動作を行」うように、「形状可変ミラーを駆動する」ことは、具体的には「形状可変ミラー」の焦点距離を調整することであること、また、引用発明の「収差補正を行う」ことは、補正発明の「収差を修正す」ることに相当することは、当業者には明かであるから、引用発明と補正発明は、形状可変ミラーの焦点距離、及び収差を修正すべく調整する駆動部を有する点で一致する。
(4)引用発明の「形状可変ミラーを駆動する可変ミラー駆動手段80を」「CPU40」で「制御する」ことと、補正発明の「各マイクロミラーは、」「駆動部によって制御されている」こととは、「形状可変ミラー」は「駆動部によって制御されている」点で一致する。

してみると、両者は、
「少なくとも1枚の形状可変ミラーを備えた自動焦点システムであって、形状可変ミラーは、形状可変ミラーの焦点距離、及び収差を修正すべく調整する駆動部によって制御されている自動焦点システム。」で一致し、
補正発明では「形状可変ミラー」が「複数のマイクロミラーを有する」「マイクロミラーアレイレンズ」であって、「各マイクロミラーは、」「収差を修正すべく光の位相を調整する」のに対して、引用発明では「形状可変ミラー」の具体的構成が不明であって、「収差補正を行うように形状可変ミラーを駆動」して何を調整するのかが不明である点(以下「相違点(イ)」という。)で相違する。

4.判断
上記相違点(イ)について検討する。
まず、撮影光学系において、光の位相ずれにより収差が生じることは技術常識であり、この光の位相ずれによる収差を、光の位相を調整することによって修正することは、当業者であれば撮影光学系の設計時に当然に考慮することにすぎない。
また、撮影光学系中に、その焦点調節を行うべく、焦点距離が調整できるマイクロミラーアレイレンズを配置することは、特開平8-149355号公報(特に段落【0048】?【0049】、図6参照。)に示されるように周知技術である。
また、マイクロミラーアレイレンズにおいて、各マイクロミラーが、マイクロミラーアレイレンズの焦点距離、及び光の位相を調整する駆動部によって制御される構成は、上述のとおり、引用文献2により公知である。
ここで、引用発明は、撮影光学系中の2枚の形状可変ミラーにより撮影光学系の焦点合わせと収差補正を行うものであるが、機能の複合化により部品点数を削減するという普遍的な課題を解決するために、引用発明の「形状可変ミラー」として、引用文献2に記載された、焦点距離及び光の位相を調整するマイクロミラーアレイレンズを採用して、上記相違点(イ)に係る補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得ることである。

そして、補正発明が奏し得る効果は、引用発明、公知技術、周知技術及び技術常識から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

5.小括
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成23年8月5日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数のマイクロミラーを有する少なくとも1枚のマイクロミラーアレイレンズを備えた自動焦点システムであって、
上記各マイクロミラーは、上記マイクロミラーアレイレンズの焦点距離を調整する駆動部によって制御されている自動焦点システム。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、前記第2 2.(1)に記載したとおりの事項が記載されており、該記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「撮影光学系中に形状可変ミラーが配置されたAFシステムであって、
撮影光学系の焦点合わせの動作を行うように、形状可変ミラーを駆動する可変ミラー駆動手段80を制御するCPU40を備えるAFシステム。」(以下「引用発明2」という。)

3.対比
本願発明と引用発明2とを対比する。

(1)本願発明の「マイクロミラーアレイレンズ」は、引用発明の「形状可変ミラ-」の一種であることは、当業者には明かであるから、本願発明と引用発明は「少なくとも1枚の形状可変ミラー」を備えた点で一致する。
(2)引用発明の「AFシステム」は、本願発明の「自動焦点システム」に相当する。
(3)引用発明の「撮影光学系の焦点合わせの動作を行」うように、「形状可変ミラーを駆動する」ことは、具体的には「形状可変ミラー」の焦点距離を調整することであることは当業者には明かであるから、引用発明と本願発明は、形状可変ミラーの焦点距離を調整する駆動部を有する点で一致する。
(4)引用発明の「形状可変ミラーを駆動する可変ミラー駆動手段80を」「CPU40」で「制御する」ことと、本願発明の「各マイクロミラーは、」「駆動部によって制御されている」こととは、「形状可変ミラー」は「駆動部によって制御されている」点で一致する。

してみると、両者は、
「少なくとも1枚の形状可変ミラーを備えた自動焦点システムであって、形状可変ミラーは、形状可変ミラーの焦点距離を調整する駆動部によって制御されている自動焦点システム。」で一致し、
本願発明では「形状可変ミラー」が「複数のマイクロミラーを有する」「マイクロミラーアレイレンズ」であるのに対して、引用発明では「形状可変ミラー」の具体的構成が不明である点(以下「相違点(ロ)」という。)で、相違する。

4.判断
上記相違点(ロ)について検討する。
撮影光学系中に、その焦点調節を行うべく、焦点距離が調整できるマイクロミラーアレイレンズを配置し、各マイクロミラーはマイクロミラーアレイレンズの焦点距離を調整するように駆動される構成は、特開平8-149355号公報(特に段落【0048】?【0049】、図6参照。)に示されるように周知技術である。
すると、引用発明2の形状可変ミラーとして周知技術のマイクロミラーアレイレンズを採用して、上記相違点(ロ)に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏し得る効果は、引用発明2及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-26 
出願番号 特願2007-522528(P2007-522528)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 卓司荒井 良子吉川 陽吾  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 川俣 洋史
北川 清伸
発明の名称 高速自動焦点システム  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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