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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25F
管理番号 1269902
審判番号 不服2011-23989  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-07 
確定日 2013-02-06 
事件の表示 特願2003- 85140「ファスナー打ち込みツール」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 1193〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、優先権主張を伴う平成15年3月26日(第一国:アメリカ合衆国、優先日、平成14年5月24日、出願番号:10/155766号)の出願であって、平成23年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審から平成24年4月27日付けの拒絶理由通知がなされ、これに対して同年8月8日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年8月8日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。
「ファスナー打込みツールであって、動作中に大きな振動及び衝撃力による力の少なくとも1つを、このツール部品に対して与えるツールであり、
少なくとも1つのバッテリー挿入のための空洞を規定するハウジングと、
前記空洞に挿入するように構成され、かつ少なくとも1つのバッテリーコンタクトエレメントを有するバッテリーと、
前記空洞内に配置され、前記バッテリーコンタクトエレメントとかみ合うように作られかつ配置されると同時に電気的接続が行われる端子モジュールと、を具備し、
該端子モジュールは、少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントを含み、
該電気的接続は、ツールの動作中にかつ大きな振動及び衝撃力による力に晒されるときにマイクロアークの影響を受ける前記少なくとも1つのバッテリーコンタクトエレメントと、対向している前記少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントと、の間に形成され、
コンタクトエレメント間の構造は、ツールの動作が少なくとも300Gの力を与えるときに、酸化防止の機能を果たすために、
前記のような大きな振動及び衝撃力による力が、潜在的に、前記コンタクトエレメント間の接続を妨げるようなツールにおいて、
対向するコンタクトの各々の組合せの中で、前記バッテリーコンタクトエレメントおよび前記少なくとも1つの端子コンタクトエレメントのうち1つだけは、銀、金またはプラチナのいずれかが含まれる貴金属合金を含み、残りの対向するコンタクトは導電性であり、該導電性のエレメントにステンレススチールを含み、前記貴金属合金を有する前記少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントは、対応するスプリングクリップの開口にはめ込まれるリベットの形で提供され、
前記貴金属合金は、前記少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントに提供され、前記少なくとも1つのバッテリーコンタクトエレメントは、概ね平らな接触面と角に丸みをつけた端子かみ合わせ端部を有することを特徴とするファスナー打込みツール。」(以下、請求項1に記載の発明を「本願発明」という。)

第3.引用刊行物
○引用刊行物1
当審で通知した拒絶の理由に引用された特開平6-206178号公報(以下、「引用刊行物1」という。)は、「ファスナの内燃式打込み工具」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

ア.段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、ファスナの内燃式打込み工具の燃焼室内の可燃の燃料(以下単に燃料と言う)を点火するために閉じるスイッチを有する該工具の燃料系統に関し、これにより、燃料は、スイッチが作動された後に所定の時間間隔にわたり燃料源から燃焼室へ流入できる。」

イ.段落【0003】
「該工具は、その燃焼室内の燃料に点火するために閉じるスイッチを備えている。これ等のスイッチは、ヘッドスイッチと、トリガースイッチとを含む。ヘッドスイッチは、工具のノーズ片に作用可能に装着されるワーク接触部材をワークに向って強く押圧することによって閉じられる。トリガースイッチは、工具のハンドルに作用可能に装着されるトリガーを引張ることによって閉じられる。ヘッドスイッチ及びトリガースイッチを使用する工具の改良された点火系統は、ロッドセス等の米国特許第5,133,329号に開示されている。」

ウ.段落【0015】
「【実施例】図1,2に示す様に、ファスナの内燃式打込み工具10は、本発明の好適実施例を構成する燃料系統を使用する。工具10は、他の要素中、電池12と、ヘッドスイッチ14と、トリガースイッチ16とを有する点火系統を備えている。好ましくは、燃料系統は、ヘッドスイッチ14が作動された後に所定の時間間隔にわたり燃料が工具10の燃焼室Cに流入する事ができる様に点火系統と協働する。代りに、燃料系統は、トリガースイッチ16が作動された後に所定の時間間隔にわたり燃料が燃焼室Cに流入する事ができる様に点火系統と協働する。こゝに図示説明する特定の特徴を除き、該工具は、イリノイ州リンカーンシアーに在るITWパスロードと言うイリノイ ツール ワークス社の一部門からインパルス(IMPULSE)の商標で市販されているファスナの内燃式打込み工具に類似する。」

エ.段落【0025】
「図6に示す様に、回路100は、点火回路の電池12と、点火回路のヘッドスイッチ14とを使用する。電池12は、6.5ボルトの最高電圧を有している。蓄電器112(4.7μF)は、電池12の正負の端子を横切って接続されている。」

そして、図1によれば、電池12を工具10の本体に収容していることが明らかである。
以上によれば、引用刊行物1には、
「燃料を使った内燃式のファスナ打込み工具であって、
点火回路の電池12を工具10の本体内に収容している、
ファスナ打込み工具。」
との発明(以下、「引用刊行物発明1」という。)が開示されていると認められる。

○引用刊行物2
同じく、当審で通知した拒絶の理由に引用された登録実用新案第3018959号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「整形手術具駆動装置と付設バッテリ」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

オ.実用新案登録請求の範囲、【請求項1】
「夫々の長手軸線を規定した長尺の駆動部分とハンドル部分とを含み、該ハンドル部分が該駆動部分から突出している構成にあるハウジング;
該ハウジング駆動部分に装置されてモータシャフトを有している直流式モータ及び該モータシャフトの動力を手術具に伝動するための駆動部材を含む伝動機構を含んで成る駆動機;
該ハウジングハンドル部分に対し相対動可能な引き金装置;及び
該引き金装置と連携して作動して、該モータを制御する電気回路手段を含んで成る駆動装置であって、
該ハウジング駆動部分は整形手術中に駆動される整形ワイヤを受容するようにしたワイヤ受容部室を規定した面部を有し、当該ワイヤ受容部室の少なくとも1部分が該モータシャフト内にあり、
該ハウジングハンドル部分は:
少なくとも1個のセルと、バッテリハウジングと、1対のバッテリ接点とを含む着脱可能に付設されるバッテリ;該バッテリがバッテリ受容部分に付設されたときに該バッテリ接点と係合するようにしたバッテリ端子を有する斯ゝるバッテリ受容部分;及び該ハウジングハンドル部分の長手方向とは異なる方向に該バッテリを該バッテリ受容部分に離脱可能に付設するバッテリ付設手段を含んで成る、整形手術具駆動装置。」

カ.段落【0001】
「【産業上の利用分野】
本考案は整形手術機具を駆動するための、再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置に関する。」

キ.段落【0002】
「【従来の技術】
整形外科用駆動装置(ドライブアッセンブリ)は技術的に周知のものである。この種の駆動装置は穴明け、ねじ込み、穴広げ(リーミング)、ワイヤドライビング、ピンニング、のこ切り〔往復動と1方動(sagittal)の両方の〕等の色々な整形外科処置のために利用される。この代表的な駆動装置は再充電可能バッテリシステム(例えばコードレスシステム)によるか、或いは装置を駆動するのに圧縮流体を利用する空圧式システムにより動力が供給される。」

ク.段落【0004】
「整形用駆動装置内のバッテリは再充電可能なものが好ましいので、先行技術の装置の或る種のものでは離脱可能付設手段を設け、これによりバッテリパックを装置の残部に離脱可能に付設(即ちアタッチ)させている。代表的なバッテリ(蓄電器)は装置のハンドル部分の長手軸に実質的に平行な方向にハンドル部分に対し着脱させるようになっている。個々のバッテリはハウジングに入れて、バッテリパックとし、これを装置に対しそのハンドル部分の長手軸に概して平行な方向に滑り込ませることによって付設される。このバッテリパックは代表的にはこのパックを装置の電子回路に接続させるための電気回路接続手段を含む。代表的な装置はバッテリパックを装置の残部に確保している。」

ケ.段落【0005】
「この種の着脱可能な付設手段は一般的に受け入れられるものであるが、これらはまだ改良の余地がある。この付勢手段の欠陥は、バッテリパックに重力が作用して装置からこのパックを排出させてしまう傾向のあることである。或る種の従来式装置では、整形用駆動装置の使用中に生じる過大な振動力のために電気回路接続手段が損われがちになるというもう1つの欠陥がある。この種の損傷はフレッティング損傷(fretting corrosion)として知られている。こゝで使用する用語「フレッティング損傷」とは電気接点のインターフェースで生じて、電気導通の低下や不通さえももたらす表面劣化(退化)を意味する。」

コ.段落【0006】
「フレッティング損傷は通電中に互いに独立して可動を許される接点形成要素(コンポーネント)の場合に見い出される。この独立可動が表面を摩耗させる機械的摩損の原因と考えられる。通電中の電気接点間の離間は接点面を溶融するだけの熱を付隋発生させながらアーク放電を生み出す。ピッチング、ウェルディング、燃焼等も同様の結果をもたらす。接点材料の物理的変化も起こり得る。電気的接触を向上させるメッキは欠落し、カーボンが累積されて、導通度を低下させてしまう。」

サ.段落【0020】
「【実施例】
図1-図11には、整形手術具(インストルメント)を駆動するための本考案に係る再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置の1例が全体的に参照番号10で指定されて示されている。この駆動装置10は長尺の駆動部分4と取っ手部分6とを有するハウジングを含む。駆動部分4と取っ手部分(ハンドル部分)6は長手軸線DとHを夫々規定している。駆動部分4と取っ手部分6の重要部分は2個の大きなハウジング個片(図8参照)で修理に際して装置分解の便宜に供し得るように組み合わせることにより組立られている。」

シ.段落【0034】
「図2と図7から一番良く分るように、駆動装置10は更にバッテリ端子39を含む。各バッテリ端子39は3種の概して平坦な面を有し、これらの平坦面はその中間面とこれに対し角度付けられた配位の両端面を含む。バッテリ端子39の機能は後に詳述される。」

ス.段落【0035】
「バッテリ端子39は整形手術具を作るのに適した適宜の材料で製作される。例えば、バッテリ端子は銅、真鍮、青銅、ベリリウム銅合金、ステンレス鋼、鋼及びアルミニウム等で作り得る。1種以上のメッキを施こして、バッテリ端子39の導電性と腐食抵抗を高めることも出来る。この種のメッキ例には、例示のものに限定されるものではないが、銅、ニッケル、金、銀、錫、無電解ニッケル、ロジウム、サルファメイト (sulfamate)、ニッケル、カドミウム、亜鉛等のメッキを挙げ得る。」

セ.段落【0048】
「図1-8、及び図10,11に示すバッテリ30はバッテリハウジング、或いはケーシング31と、1対のバッテリ接点(コンタクト)33を含み、1方の接点は正の端子であり、他方が負の端子である。バッテリ接点33は薄い円弧状(弓形)部材を含む。この弓形接点部材はその1端でハウジング31に接続されていて、セル32に電気的に導通している(セルは導電条片により直列に接続している)。接点部材の他端は解放されていて、ハウジング(ケーシング)31の頂部に沿って浮上している。好ましくは、接点33は可撓性のある導電性弾性材、例えば銅、真鍮、青銅、ベリリウム銅、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、鋼等から選択された材料で製作される。オプションとしては、1種以上の材料を接点にメッキして、接点性能と腐食抵抗を高めるようにすることが出来る。このメッキ材料としては、例示のものに限定されるものではないが、例えば金、銅、ニッケル、銀、錫、無電解ニッケルロジウム、サルファメイトニッケル、カドミウム及び/或いは亜鉛を包含する。弓形接点部材33の形状はハンドル部分6の軸線Hに実質的に平行な方向に、バッテリ端子39に当接させられたときに、弾力的に変形させられる。」

ソ.段落【0049】
「図12,14-15,16-17;19-21及び25には、本考案に係る協働するバッテリ端子とバッテリ接点の第2例として、バッテリ接点を参照番号33A、バッテリ端子を39Aで指定したものが示されている。」

タ.段落【0050】
「図17に良く表されているように、ハンドグリップ部分5は電気絶縁性材106で作られた局部を有している。バッテリ端子39Aは各々ねじ87により絶縁材106に付設されている。クリンプ・オンコネクタ107はねじ87とバッテリ端子39Aの間に配置されている。このコネクタ107はバッテリ端子を絶縁ワイヤ108を介して電気回路手段の残部と電導状になるように設定する。」

チ.段落【0055】
「バッテリ端子39Aと併せて使用されるバッテリ接点33Aは図14,15、及び25に示されている。バッテリ接点33Aの各々は1対の可撓性の弾性そり可能部材81,82を含む。これらの接点部材81,82はバッテリハウジング31に固設される第1端とそれに対立する第2端を有している。接点部材81,82の第2端は両部材が偏位させられるとき、ケーシング(バッテリハウジング)31の頂部に沿って摺動自在になっている。当該ハウジング頂部の支承肩面115は両接点部材81,82の第2端を受容して両部材の第2端が摺動出来るようになっている。」

以上によれば、引用刊行物2には、
「整形手術機具を駆動するための、再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置であって、整形駆動装置の使用中に生じる過大な振動力に基づく、通電中の電気接点間の離間によって生み出されるアーク放電に基づくフレッティング損傷を防止するため、バッテリー側のバッテリー接点33Aを可撓性のある導電性弾性材、例えば銅、真鍮、青銅、ベリリウム銅、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、鋼等から選択された材料で製作し、本体側のバッテリ端子39Aは銅、真鍮、青銅、ベリリウム銅合金、ステンレス鋼、鋼及びアルミニウム等で作り、1種以上のメッキを施こして、バッテリ端子39Aの導電性と腐食抵抗を高め、メッキは、銅、ニッケル、金、銀、錫、無電解ニッケル、ロジウム、サルファメイト、ニッケル、カドミウム、亜鉛等からなり、バッテリ端子39Aは絶縁材106からなる局部に付設されている、駆動装置。」
との事項(以下、「引用刊行物2事項」という。)が開示されていると認められる。

第4.対比・判断

本願発明と引用刊行物発明1とを比較すると、後者の、「ファスナ打込み工具」は、本願発明の「ファスナー打込みツール」に相当し、また、後者は、「燃料を使った内燃式のファスナ打ち込み工具」であるから、「動作中に大きな振動及び衝撃力による力の少なくとも1つを、このツール部品に対して与えるツール」であるということもできる。
そして、後者の、「点火回路の電池12を工具10の本体内に収容している」点は、前者のハウジングが「少なくとも1つのバッテリー挿入のための空洞を規定し、前記空洞に挿入するように構成されるバッテリー」に相当する。

してみれば、両者の一致点は以下のとおりである。
<一致点>
「ファスナー打込みツールであって、動作中に大きな振動及び衝撃力による力の少なくとも1つを、このツール部品に対して与えるツールであり、少なくとも1つのバッテリー挿入のための空洞を規定するハウジングと、前記空洞に挿入するように構成されるバッテリーと、を具備する、ファスナー打ち込みツール。」

そして、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、電気的接続に関して、「バッテリー」が、「少なくとも1つのバッテリーコンタクトエレメント」を有するものであり、また、ハウジングの空洞に、「前記バッテリーコンタクトエレメントとかみ合うように作られかつ配置されると同時に電気的接続が行われる端子モジュールと、を具備し、該端子モジュールは、少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントを含」むものであり、「該電気的接続は、ツールの動作中にかつ大きな振動及び衝撃力による力に晒されるときにマイクロアークの影響を受ける前記少なくとも1つのバッテリーコンタクトエレメントと、対向している前記少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントと、の間に形成され、コンタクトエレメント間の構造は、ツールの動作が少なくとも300Gの力を与えるときに、酸化防止の機能を果たすために、前記のような大きな振動及び衝撃力による力が、潜在的に、前記コンタクトエレメント間の接続を妨げるようなツール」であって、「対向するコンタクトの各々の組合せの中で、前記バッテリーコンタクトエレメントおよび前記少なくとも1つの端子コンタクトエレメントのうち1つだけは、銀、金またはプラチナのいずれかが含まれる貴金属合金を含み、残りの対向するコンタクトは導電性であり、該導電性のエレメントにステンレススチールを含み、前記貴金属合金を有する前記少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントは、対応するスプリングクリップの開口にはめ込まれるリベットの形で提供され、前記貴金属合金は、前記少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントに提供され」るものであるのに対して、引用刊行物発明1は、本願発明のバッテリーに相当する「電池12」を備えているから、「電池12」と本体の電気回路との間には何らかの電気的接続があるはずではあるが、その電気的接続が具体的にどのような構造でなされるかは不明である点。

<相違点2>
本願発明は、「前記少なくとも1つのバッテリーコンタクトエレメントは、概ね平らな接触面と角に丸みをつけた端子かみ合わせ端部を有する」ものであるのに対して、引用刊行物発明1は、そのようなバッテリー側端子を備えているか不明である点。

<相違点1>について検討する。
引用刊行物2事項は、「再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置」であるから、バッテリーを備えた工具に関するものである点で、基本的に同じ技術分野に属するものであり、バッテリー側に「バッテリー接点33A」、本体側に「バッテリ端子39A」を付設した局部を備えるのは、相違点1における「バッテリーコンタクトエレメント」、「端子モジュールコンタクトエレメント」を含む「端子モジュール」を備える点と共通している。
また、引用刊行物2事項において、「整形駆動装置の使用中に生じる過大な振動力に基づく、通電中の電気接点間の離間によって生み出されるアーク放電に基づくフレッティング損傷」は、相違点1における、「該電気的接続は、ツールの動作中にかつ大きな振動及び衝撃力による力に晒されるときにマイクロアークの影響を受ける前記少なくとも1つのバッテリーコンタクトエレメントと、対向している前記少なくとも1つの端子モジュールコンタクトエレメントと、の間に形成され、コンタクトエレメント間の構造は、ツールの動作が少なくとも300Gの力を与えるときに、酸化防止の機能を果たすために、前記のような大きな振動及び衝撃力による力が、潜在的に、前記コンタクトエレメント間の接続を妨げる」ものと共通しており、さらに、引用刊行物2事項における、「バッテリー側のバッテリー接点33Aを可撓性のある導電性弾性材、例えば銅、真鍮、青銅、ベリリウム銅、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、鋼等から選択された材料で製作し、本体側のバッテリ端子39Aは銅、真鍮、青銅、ベリリウム銅合金、ステンレス鋼、鋼及びアルミニウム等で作り、1種以上のメッキを施こして、バッテリ端子39の導電性と腐食抵抗を高め、メッキは、銅、ニッケル、金、銀、錫、無電解ニッケル、ロジウム、サルファメイト、ニッケル、カドミウム、亜鉛等のメッキからなる」点は、要するに、「バッテリー接点33A」を「ステンレス鋼」で製作し、「バッテリ端子39A」は「金、銀」でメッキするというものを含むから、相違点1における「バッテリーコンタクトエレメント」が、「ステンレススチールを含み」、「端子モジュールコンタクトエレメント」が、「貴金属合金を有する」ものと、共通している。
そして、電気的接続の技術において、端子部分に貴金属合金を用いる場合、その端子をリベット形状にして、接点板の開口にはめることは、当審における拒絶理由通知において指摘したとおり、例えば特開昭56-121212号公報に記載の「リベット状ヘッド3」と「貴金属製チップ7」及び「接点板1」、同じく、特開昭57-108207号公報に記載の「貴金属からなる粉末接点材料2a」等を焼結したのちフォーミング加工して形成した「リベット状の多層接点5」と、「電気接触子6」、同じく、特開昭57-128420号公報に記載の「リベット状ヘッド3」と「貴金属製の接点チップ7」及び「接点板1」にみられるように、周知事項である。
してみると、相違点1における、貴金属合金を含む端子モジュールコンタクトエレメントが、「対応するスプリングクリップの開口にはめ込まれるリベットの形で提供され」る点は、周知事項であるということができる

以上のとおりであるから、相違点1に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に引用刊行物2事項、及び周知事項を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について検討する。
バッテリーの端子技術において、概ね平らな接触面と角に丸みをつけた端子かみ合わせ端部を備えることは周知事項である。これは、例えば実願昭58-194312号(実開昭60-100182号)のマイクロフィルムに記載の「蓄電池電極接片7」(第2、3、6図、参照。)、同じく、実願昭63-29448号(実開平1-132056号)のマイクロフィルムに記載の「蓄電池の端子1b、1c」(第1図参照。)、同じく、実願平4-8815号(実開平5-70876号)のCD-ROMに記載の「電池端子9c」(第1図参照。)にみられる。
してみれば、相違点2に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に周知事項を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

作用ないし効果について
本願発明の作用ないし効果も引用刊行物発明1、引用刊行物2事項、及び周知事項から当業者が予想できる範囲のものである。

第5.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用刊行物発明1、引用刊行物2事項、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、その余の請求項に係る発明について見るまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2012-09-06 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-24 
出願番号 特願2003-85140(P2003-85140)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金本 誠夫  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 菅澤 洋二
刈間 宏信
発明の名称 ファスナー打ち込みツール  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 中村 健一  
代理人 鶴田 準一  

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