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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1269907
審判番号 不服2012-2667  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-10 
確定日 2013-02-06 
事件の表示 特願2005-244696号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年3月8日出願公開、特開2007-54403号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成17年8月25日の特許出願であって、平成23年11月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月10日)、これに対し、平成24年2月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年2月10日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年2月10日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「遊技球の始動入賞口への入賞に基づいて抽選を行い、該抽選の結果に基づいて、変動表示する図柄の停止図柄を決定する遊技機であって、遊技者からの入力操作を受け付ける入力手段と、図柄関連オブジェクトに関連付けて前記図柄を表示する画像表示手段と、遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトの移動を制御する移動制御手段と、前記図柄の変動表示処理中に、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合に、前記抽選の結果に整合するように前記図柄の停止図柄を再決定する停止図柄再決定手段とを備えることを特徴とする遊技機。」とあったものを「遊技球の始動入賞口への入賞に基づいて抽選を行い、該抽選の結果に基づいて、変動表示する図柄の停止図柄を決定する遊戯機であって、遊戯者からの入力操作を受け付ける入力手段と、図柄関連オブジェクトに関連付けて前記図柄を表示する画像表示手段と、遊戯者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトの移動を制御する移動制御手段と、前記図柄の変動表示処理中に、遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトが移動された結果、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合に、前記抽選の結果に整合するように前記図柄の停止図柄を再決定する停止図柄再決定手段とを備えることを特徴とする遊技機。」(下線は当審にて付与。以下同様。)と補正するものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、本件補正前に「図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合」とあったものを「遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトが移動された結果、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合」と限定することを含むものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-160867号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシンなどで代表される遊技機に関する。詳しくは、各々を識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる変動表示装置を備え、該変動表示装置における変動表示の表示結果が予め定められた特定の表示態様となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御される遊技機に関する。」(段落【0001】。下線は当審により付与。以下同様。)
イ 「本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、変動表示装置8に特定の変動表示パターンが表示されたときに、遊技者が可動部材を操作し、可動部材の動作に応じた図柄等の演出表示を可能とすることにより、興趣を向上させることのできる遊技機を提供することである。」(段落【0005】)
ウ 「さらに、パチンコ遊技機1の左下方前面側に操作ボタン61が設けられている。操作ボタン61は、特定の変動表示パターン(可動部材リーチ)となったときに、遊技者が操作可能となるものであり、遊技者が操作ボタン61を操作することによって変動表示装置8に設けられている後述の可動部材63が可動制御される。」(段落【0023】)
エ 「遊技領域7においては、各々が識別可能な複数種類の識別情報としての特別図柄を変動表示(可変表示、更新表示ともいう)させる特別図柄表示部9が設けられている。この特別図柄表示部9は、遊技領域7の中央に設けられた変動表示装置8の中央部に配置されている。特別図柄表示部9は、画像を表示する液晶表示器(LCD表示器)で構成された表示装置であり、左変動表示部、中変動表示部および右変動表示部の3つの変動表示部が画像上で設けられる。左変動表示部、中変動表示部、および、右変動表示部のそれぞれで変動表示される特別図柄は、それぞれ、左図柄、中図柄、および、右図柄と呼ばれる。特別図柄表示部9の各変動表示部においては、特別図柄がスクロール等の所定の変動表示パターンで個別に変動表示(可変表示)可能である。」(段落【0026】)
オ 「始動口14に入賞した始動入賞玉は、遊技盤6に設けられた始動口スイッチ17により検出される。始動入賞玉が始動口スイッチ17で検出されると、入賞記憶数が上限に達していないことを条件として特別図柄の変動表示の実行条件が成立し、所定の乱数値(大当り判定用のランダムカウンタのカウント値であり、始動入賞記憶データ、または、保留記憶データともいう)が抽出されてメモリ(後述するRAM55)に記憶される。このように記憶された始動入賞記憶データの数が始動記憶表示部において点灯状態で表示されたLED画像の数により表示される。また、始動入賞玉が始動口スイッチ17で検出されると、5個の賞球が払出される。」(段落【0041】)
カ 「図5は、図4に示す特別図柄プロセス処理における特別図柄通常処理を示すフローチャートである。
特別図柄通常処理では、まず、S21において、CPU56は、特別図柄の変動表示を開始することができる状態(たとえば特別図柄プロセスフラグの値がS11を示す値となっている場合)であるか否か判断する。特別図柄の変動表示を開始することができると判断した場合には、S22において、始動入賞記憶数の値を確認する。具体的には、始動入賞カウンタのカウント値を確認する。なお、特別図柄プロセスフラグの値がステップS11を示す値となっている場合とは、特別図柄表示部9において特別図柄の変動表示がなされておらず、かつ大当り遊技中でもない場合である。
始動入賞記憶数が0でなければ、S23において、始動入賞記憶数=1(始動入賞記憶のうち最初に記憶された始動入賞記憶)に対応する保存領域に格納されている各乱数値を読み出してRAM55の乱数バッファ領域に格納するとともに、S24において、始動入賞記憶数の値を「1」減らし、S25において、各保存領域の内容をシフトする。すなわち、始動入賞記憶数=n(n=2,3,4)に対応する保存領域に格納されている各乱数値を、始動入賞記憶数=n-1に対応する保存領域に格納する。
次に、S26において、S23で読み出された乱数値が特別図柄表示部9における特別図柄の変動表示の表示結果を大当りにする乱数値であるか否かを判定する処理が行なわれる。S27において、S26の大当り判定処理の結果が大当りであるか否かが判断される。大当りであると判断した場合には、S28において、CPU56は、大当りフラグをONにする。S27において、大当りでないと判断された場合には、S29において、CPU56は、大当りフラグをOFFにする。
S30において、特別図柄プロセスフラグの値を停止図柄設定処理に対応した値に更新する。
図6は、図4に示す特別図柄プロセス処理における停止図柄設定処理を示すフローチャートである。停止図柄設定処理では、まず、S41において、大当りフラグがONであるか否かが判断される。大当りフラグがONであると判断されたときは、S42において、図5のS23で読み出されたカウント値に従い大当り図柄を決定する処理が行なわれる。その後、S47に進む。
S41において、大当りフラグがONでないと判断されたときは、S43において、リーチ判定処理が行なわれる。リーチ判定処理では、図5のS23で読み出されたカウント値とリーチ判定値とを比較して、両値が合致するか否かが判断される。確率向上状態では、多くのリーチ判定値が設けられており、リーチとなる確率が向上する。
S44において、S43のリーチ判定処理の結果が、特別図柄表示部9において特別図柄が変動表示されているときにリーチ状態を成立させるという結果であるか否かが判断される。リーチ状態を成立させるという結果であると判断されたときは、S45において、図5のS23で読み出されたカウント値に従いリーチはずれ図柄を決定する処理が行なわれる。その後、S47に進む。
S44において、S43のリーチ判定処理の結果がリーチ状態を成立させないという結果あると判断されたときは、S46において、図5のS23で読み出されたカウント値に従いはずれ図柄を決定する処理が行なわれる。その後、S47に進み、S42,S45,S46で決定された予定停止図柄指定用コマンドがセットされ、遊技制御用マイクロコンピュータ53から表示制御用マイクロコンピュータ81へ送信される。S48において、特別図柄プロセスフラグの値が変動パターンテーブル設定処理に対応した値に更新される。」(段落【0080】?【0088】)
キ 「最初、特別図柄表示部9において、3つの図柄(左,中,右特別図柄)が変動表示されている(図19(a))。次に、左変動表示部に左特別図柄の「7」が停止表示され(図19(b))、続いて、右変動表示部に右特別図柄の「7」が停止表示される(図19(c))。
ここで、図15のSub72により可動部材リーチと判定されたときには、図15のSub73eにより、「好きな図柄をGET!ボタンを押して好きなところではなしてネ!」のように、横移動用のボタン操作が有効であることを報知する画面が表示される(図19(d))。そして、遊技者が操作ボタンを押すと(図19(e))、図18のSub125に示すように操作時間がカウントされ、操作時間に応じてUFOキャッチャーを模した可動部材が右方向へ移動する(図18のSub126、図19(f))。
遊技者が図19(f)に示すように、リーチ構成図柄「7」の横方向の位置と一致するように可動部材を移動させることができると(図17のSub104においてYES)、背景図柄は修正されることなく(図17のSub105)、図15のSub73hにより「ボタンを押して好きな高さではなしてネ!」のように、遊技者に縦移動用のボタン操作が有効であることを報知する画面が表示される(図19(g))。 遊技者が、再び操作ボタンを押すと(図19(h))、図18のSub130に示すように操作時間がカウントされ、操作時間に応じて可動部材が下方向へ移動する(図20(a))。そして、図20(b)に示すように、リーチ構成図柄「7」の縦方向の位置と一致するように可動部材を移動させることができると(図17のSub110においてYES)、背景図柄は修正されることなく表示される(図17のSub111)。
その後、可動部材は、リーチ構成図柄「7」をキャッチするような動作演出をし(図20(c))、可動部材と画像が連動して、リーチ構成図柄「7」を引き上げる演出を行なう(図20(d))。そして、大当りが事前決定されている場合には(図17のSub113においてYES)、リーチ構成図柄「7」を持ち上げた後(図17のSub114)、確定図柄「777」を導出表示する(図20(e))。
一方、大当りとはならないことが事前決定されている場合には(図17のSub113においてNO)、可動部材を引き上げる演出の途中で、リーチ構成図柄「7」を落下させる演出(図17のSub115)が行なわれ(図21(d))、その後、確定図柄「757」を導出表示する(図21(e))。なお、図21(a)?(c)については、図20(a)?(c)と同様であるので、説明を省略する。」(段落【0153】?【0158】)
ク 「そして、可動部材は、リーチ構成図柄「7」をキャッチするような動作演出をし(図23(c))、可動部材と画像が連動して、リーチ構成図柄「7」を引き上げる演出を行なう(図20(d))。そして、大当りが事前決定されている場合には(図17のSub113においてYES)、リーチ構成図柄「7」を持ち上げた後(図17のSub114)、確定図柄「777」を導出表示する(図23(e))。」(段落【0164】)
ケ 「第2演出画面(D)の表示が終わると、続いて図柄引上/落下演出画面(E)が表示される。図柄引上/落下演出画面(E)が表示されている期間中に、可動部材はリーチ構成図柄をキャッチし(図20(c)参照)、演出画面に連動して上方向へ移動する(図20(d)参照)。大当りが事前決定されている場合には、そのまま引き上げ演出がされるが、大当りではないことが事前決定されている場合には、図柄を引き上げ途中で落下させる演出がされる(図21(d)参照)。
その後、図20(e),図21(e),図23(f)に示すような確定図柄表示画面(F)が、特別図柄表示部9に導出表示される。」(段落【0173】?【0174】)

上記ア?ケの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案して、リーチ外れ演出を行う実施例を中心にまとめると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「始動口14に入賞した始動入賞玉が始動口スイッチ17で検出されると、所定の乱数値が抽出されてメモリに記憶され、
大当りフラグがONであるか否かにより、さらに、大当りフラグがONでないと判断されたときはリーチ判定処理により、S23で読み出された各乱数値に従い、変動表示されている図柄について、大当り図柄、リーチはずれ図柄、はずれ図柄のいずれかの停止図柄を設定する遊技機において、
特定の変動表示パターンとなったときに、遊技者が操作可能となる操作ボタン61と、
可動部材が、リーチ構成図柄「7」をキャッチするような動作演出をする特別図柄表示部9とが設けられ、
可動部材は、遊技者が横移動用の操作ボタンを押すと、操作時間に応じて右方向へ移動し、遊技者が、再び操作ボタンを押すと操作時間に応じて可動部材が下方向へ移動し、
特別図柄表示部9には、3つの図柄が変動表示された後、左変動表示部に左特別図柄の「7」が停止表示され、続いて、右変動表示部に右特別図柄の「7」が停止表示されるとき、可動部材がリーチ構成図柄「7」をキャッチするような動作演出をし、大当りとはならないことが事前決定されている場合に、可動部材を引き上げる演出の途中で、リーチ構成図柄「7」を落下させる演出が行われ、その後、確定図柄を導出表示する遊技機。」

(2)原査定において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-95232号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア「本発明は、遊技機に関し、特にいわゆるセブン機、羽根物、権利物又はアレンジボール等の弾球遊技機に関する。」(段落【0001】)
イ「 次に、上記メインジョブの一連の流れの中で実行される当否判定ジョブを図17?図19のフローチャートを参照して説明する。図17は当否判定ジョブのフローチャート、図18は大当り処理のフローチャート、図19は外れ処理のフローチャートである。当否判定ジョブは、始動入賞、すなわち第一種始動口17への入賞(始動入賞)時に実行される。これらのジョブでは、上記図16に示した主制御部140の内蔵RAM481に格納された各種メモリ等が用いられる。
まず、図17に示すように、始動入賞があったか否かを判定する(S200)。この結果、始動入賞が無い場合にはS250にスキップし、保留の有無を確認する。この結果、保留が無い場合(保留数が零の場合)にはS200に戻り、保留が有る場合(保留数が1?4の場合)にはS255に進む。
一方、始動入賞がある場合は、保留数(未始動回数)が一定値(遊技機1では「3」)を超えているか否かを判定する(S210)。保留数(未始動回数)が一定値を超えている場合には、その始動入賞は無効となってS255にスキップする。また、保留数(未始動回数)が一定値を超えていない場合には、特別図柄保留数メモリ481bに記憶されている保留数を1増加させる(S220)。
次に、特別図柄当否判定乱数(以下、当否用乱数、又は判定乱数ともいう)を発生させるとともに(当否用乱数発生手段)、読み込みを行う(S230)。当否用乱数発生手段は、ソフトウェアを用いても、ハードウェアを用いてもよい。そして読み込んだ判定乱数値を、特別図柄当否判定乱数メモリ481a(以下、判定乱数メモリともいう)に記憶する(S240)。このメモリは、読み込んだ判定乱数値を始動入賞の時系列にシフトメモリ形式で記憶している。
次に、判定乱数メモリ481aから記憶している最も古い先頭の判定乱数値を読み出し(S255)、ROM482内の大当り番号メモリ482aから大当り番号(当り用判定値)を読み出す(S260)。そして、判定乱数値と大当り番号が一致しているか否かを判定する(S265)。この結果、両者が一致していれば大当り判定となり、大当り処理を行い(S270)、一致していなければ外れ判定となり、外れ処理を行う(S310)。」(段落【0118】?【0122】)
ウ「次に、外れ処理(S310)について図19に基づいて説明する。まず、外れリーチジョブを行うかどうかを乱数により決定する。具体的には、リーチ態様決定乱数を発生させ、これを読み込み(S315)、リーチ番号メモリ481iに記憶されているリーチ番号を読み出す(S320)。リーチ態様決定乱数とリーチ番号とが一致していれば外れリーチジョブに、一致していなければ通常外れジョブとなる(S330)。
外れリーチジョブの場合は、揃えるべき少なくとも2つの特別図柄(例えば、3種類の特別図柄のうち、左図柄と右図柄)を、外れリーチ図柄決定乱数を使用して決定する(S340)。あるいは、左図柄の乱数を参照し、それに右図柄を一致させるようにしてもよい。決定した図柄を外れリーチ図柄番号メモリ481mに記憶する(S350)。また、外れ中図柄を乱数により同様に決定し(S360)、決定した乱数値を外れ中図柄番号メモリ481gに記憶する(S370)。そして、「外れリーチ」という判定結果(遊技機1では「2」)を判定結果メモリ481jに記憶する(S380)。
一方、通常外れジョブの場合は、各特別図柄(例えば左図柄、右図柄、中図柄)をそれぞれ乱数により決定し、決定した各乱数値をそれぞれ対応する外れ図柄番号メモリ481e、481f、481gに記憶する(S390?S440)。また、「通常外れ」という判定結果(遊技機1では「3」)を判定結果メモリ481jに記憶する(S450)。
次に、上記メインジョブの一連の流れの中で実行される、特別図柄メインジョブの概略の流れを図20のフローチャートに基づいて説明する。
まず、第一種始動口17への遊技球の入賞に基づき、液晶表示装置27上で各特別図柄の変動表示を開始させる(S500)。例えば、左右及び中図柄を上から下、下から上へスクロール変動させる。
次に、判定結果メモリ481jから図17?図19に示した当否判定ジョブで得られた各入賞に対する判定結果を読み出し(S510)、判定結果が大当り判定か否かを判定する(S520)。
この結果、大当り判定(「1」)の場合は、上述したリーチ態様決定乱数値に対応するリーチ態様決定用値メモリ481lに記憶されているリーチ態様決定用値を読み出し(S580)、大当り番号(識別情報決定用値)を大当り番号メモリ(決定用値記憶手段)482aから読み出す(S600)。次に、S610に進んで、例えば左図柄及び右図柄を同一図柄に揃えて所定のリーチ表示態様を経た後に、中図柄を左図柄及び右図柄と同一図柄に揃えて停止表示させ確定させる(S610)。
一方、大当り判定でない場合には、外れリーチ判定(「2」)か否かを判定する(S530)。この結果、外れリーチ判定(「2」)の場合には、上述の外れリーチ図柄番号メモリ481mから外れリーチ図柄番号を読み出し、外れ中図柄番号メモリ481gから外れ中図柄番号を読み出す(S570)。そして、外れリーチ図柄番号と外れ中図柄番号との番号の差(例えば左図柄と中図柄との差)を算出し(S571)、これらの差異に基づいて外れリーチ態様メモリ481nから外れリーチ態様を決定する(S572)。例えば、中図柄が左図柄の1つ前の図柄であり差が「-1」の場合には、複数種類(例えば3種類)の外れリーチの中から1種が選択され(例えば、所定の乱数取得により選択することができる)、読み出される。その後、例えば左図柄及び右図柄を同一図柄に揃えて所定のリーチ表示態様を経た後に、中図柄を他の図柄とは異なる図柄で停止表示させ確定させる(S610)。」(段落【0146】?【0152】)
エ「 次に、S295だけではなくS315において発生されるリーチ態様決定乱数によっても決定されるリーチ態様の一例について説明する。これは、リーチ時に遊技者がリーチ図柄を自由に変えることができるという態様である。変更先となる図柄は、図柄の変動時や大当り時にストックされ、ストック時および当該リーチ態様の発生時に液晶表示装置27に表示される。後者の一例を図24(a)に示す。本図に示すように、当該リーチ態様の発生時には、液晶表示装置27の画面が左右2分され、その左領域78の下部に、リーチとなった図柄76が表示され、その上方に「リーチ図柄を選択してください」というメッセージ78が表示される。画面の右領域80には、現在までにストックされている図柄82が表示される。本図では「3」「7」「9」の3種類の図柄がストックされていることを示している。なお、ストックされる図柄は奇数図柄、すなわち確変図柄に限られている。また、本図ではストックされている図柄は3種類であるが、このリーチ態様が発生した時にストックされている図柄の数により決まり、2?5種類となる。またストックされている図柄が0?1種類の時は本態様は発生しない。
これらストックされた図柄の中からチャンスボタン8を用いて遊技者が図柄を選択する。具体的にはBボタン8bを押すと、図24(b)のようにストックされた図柄の1つ(この例では「7」)が大きく表示され、更にBボタン8bを押すことにより、大きく表示される図柄が「7」→「9」→「3」→「7」と変化していく。そしてAボタン8aを押すと、その時に大きく表示されていた図柄が選択される(この例では「7」)。選択された図柄は、リーチ図柄76に差し替わり、その図柄(この例では「7」)でリーチ態様が続行される。このリーチ態様によれば、遊技者が好む確変図柄にリーチ図柄を差し替えることが可能となる。なお、この態様を変更し、通常図柄同士または確変図柄同士のみ差し替え可能としてもよい。また、通常図柄を確変図柄に変更する際には、昇格図柄のリーチとなったときのみ可能としても良い。」(段落【0158】?【0159】)

上記ア?エの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「リーチ時に遊技者がボタン8a、8bを押すを押すことにより図柄が選択されると、外れリーチ判定の場合、外れリーチ図柄決定乱数を使用して決定された揃えるべき少なくとも2つの特別図柄である、リーチとなった図柄76を差し替えられた図柄とする弾球遊技機。」

3 対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「始動口14に入賞した始動入賞玉が始動口スイッチ17で検出されると、所定の乱数値が抽出されてメモリに記憶され」ることは、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「遊技球の始動入賞口への入賞に基づいて抽選を行」うことに相当し、以下同様に、
「大当りフラグがONであるか否かにより、さらに、大当りフラグがONでないと判断されたときはリーチ判定処理により、S23で読み出された各乱数値に従い、変動表示されている図柄について、大当り図柄、リーチはずれ図柄、はずれ図柄のいずれかの停止図柄を設定する遊技機」は、各乱数値が抽選により抽出された値であることから、「抽選の結果に基づいて、変動表示する図柄の停止図柄を決定する遊戯機」に、
「特定の変動表示パターンとなったときに、遊技者が操作可能となる操作ボタン61」は、「遊戯者からの入力操作を受け付ける入力手段」に、
「可動部材が、リーチ構成図柄「7」をキャッチするような動作演出をする特別図柄表示部9」は、特別図柄表示部9が可動部材にリーチ構成図柄「7」を関連付ける動作を表示する表示手段といえることから、「図柄関連オブジェクトに関連付けて図柄を表示する画像表示手段」に、
「可動部材は、遊技者が横移動用の操作ボタンを押すと、操作時間に応じて右方向へ移動し、遊技者が、再び操作ボタンを押すと操作時間に応じて可動部材が下方向へ移動」することは、遊技機が可動部材を遊技者のボタン操作により移動させる手段を具備しているといえることから、「遊戯者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトの移動を制御する移動制御手段」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「特別図柄表示部9には、3つの図柄が変動表示された後、左変動表示部に左特別図柄の「7」が停止表示され、続いて、右変動表示部に右特別図柄の「7」が停止表示されるとき、可動部材がリーチ構成図柄「7」をキャッチするような動作演出をし、大当りとはならないことが事前決定されている場合に、可動部材を引き上げる演出の途中で、リーチ構成図柄「7」を落下させる演出が行われ、その後、確定図柄を導出表示する」ことと、本件補正発明の「図柄の変動表示処理中に、遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトが移動された結果、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合に、抽選の結果に整合するように図柄の停止図柄を再決定する停止図柄再決定手段とを備える」こととは、刊行物1に記載された発明において、3つの図柄のうち、中図柄が依然として変動表示されている状態であり、この状態で可動部材が右方向及び下方向への移動により、リーチ構成図柄「7」をキャッチするという所定の条件を満たすものといえ、また、大当りとはならないことが事前決定されている場合には、大当たりの図柄が導出表示されないように停止図柄が決定されることは明らかであり、さらに、停止図柄の決定に際して、まず、リーチ構成図柄「7」をキャッチする動作演出をし、その後、確定されていた図柄を導出表示するものであることから、刊行物1には、図柄決定を行うための手段を具備しているといえ、また、本件補正発明において、遊技球の始動入賞口への入賞に基づいて抽選により決定された停止図柄を再決定するものであるから、両者は、「遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトが移動された結果、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合に、抽選の結果に整合するように図柄を決定する停止図柄決定手段」を備える点で共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「遊技球の始動入賞口への入賞に基づいて抽選を行い、該抽選の結果に基づいて、変動表示する図柄の停止図柄を決定する遊戯機であって、遊戯者からの入力操作を受け付ける入力手段と、図柄関連オブジェクトに関連付けて前記図柄を表示する画像表示手段と、遊戯者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトの移動を制御する移動制御手段と、遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトが移動された結果、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合に、前記抽選の結果に整合するように前記図柄の停止図柄を決定する停止図柄決定手段とを備える遊技機。」

[相違点]
停止図柄を決定する停止図柄決定手段が、本件補正発明では、図柄の変動表示処理中に抽選の結果に整合するように図柄の停止図柄を再決定する停止図柄再決定手段であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、可動部材がリーチ構成図柄「7」をキャッチするような動作演出をし、大当りとはならないことが事前決定されている場合に、可動部材を引き上げる演出の途中で、リーチ構成図柄「7」を落下させる演出が行われ、その後、確定図柄を導出表示するものであるが、図柄の変動表示中に停止図柄が再決定されるものでない点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「リーチ時」は、リーチ変動表示が行われている最中のことであるから、本件補正発明の「変動表示処理中」に相当し、以下同様に、
「遊技者がボタン8a、8bを押すを押すことにより図柄が選択される」ことは、ボタン8a、8b操作により、図柄が選択されるという条件が成立したとみなせることから、「遊技者の入力操作に基づいて、所定の条件が成立した場合」に、
「外れリーチ判定の場合」は、抽選により外れとなるように停止図柄が選択されるものであることは明らかであることから、「抽選の結果に整合するように」停止図柄を決定することに、
「外れリーチ図柄決定乱数を使用して決定された揃えるべき少なくとも2つの特別図柄」は、「遊技球の始動入賞口への入賞に基づ」く「抽選の結果に基づいて」決定された「停止図柄」に、
「リーチとなった図柄76を差し替えられた図柄」とすることは、「停止図柄」を「再決定する停止図柄再決定手段」「を備える」ことに、
「弾球遊技機」は、「遊技機」に、
それぞれ相当する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、「変動表示処理中に、遊技者の入力操作に基づいて、所定の条件が成立した場合、抽選の結果に整合するように、遊技球の始動入賞口への入賞に基づく抽選の結果に基づいて決定された停止図柄を再決定する停止図柄再決定手段を備える遊技機。」と言い換えることができる。
そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、外れリーチ時の変動表示処理中に、遊技者の入力操作に基づいて、所定の条件が成立した場合、抽選の結果に整合するように図柄を決定する遊技機である点で共通するものである。
してみると、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を適用して、図柄の変動表示中に、大当りとはならないことが事前決定されている場合に、遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトが移動された結果決定される停止図柄を再決定されたものとして、上記相違点において、本件補正発明が具備する発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。
本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?2に記載された発明から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年2月10日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年4月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「遊技球の始動入賞口への入賞に基づいて抽選を行い、該抽選の結果に基づいて、変動表示する図柄の停止図柄を決定する遊技機であって、遊技者からの入力操作を受け付ける入力手段と、図柄関連オブジェクトに関連付けて前記図柄を表示する画像表示手段と、遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトの移動を制御する移動制御手段と、前記図柄の変動表示処理中に、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合に、前記抽選の結果に整合するように前記図柄の停止図柄を再決定する停止図柄再決定手段とを備えることを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由において提示された刊行物1?2、刊行物1?2の記載事項及び刊行物1?2に記載された発明は、前記「第2[理由]2 刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3 対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]」において検討した本件補正発明において、「遊技者の入力操作に基づいて図柄関連オブジェクトが移動された結果、図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合」とあったものを「図柄関連オブジェクトについて所定の条件が成立した場合」とその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 [理由]3 対比、及び、4 当審の判断」に記載したとおり、刊行物1?2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1?2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-06 
結審通知日 2012-12-07 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2005-244696(P2005-244696)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 木村 史郎
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  

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