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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B |
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管理番号 | 1269923 |
審判番号 | 不服2012-1439 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-25 |
確定日 | 2013-02-04 |
事件の表示 | 特願2001-259474「エレベータの照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 5日出願公開、特開2003- 63758〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成13年8月29日の出願であって、平成23年7月15日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年9月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年10月21日付けで拒絶査定がなされ、平成24年1月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで明細書を補正する手続補正書が提出され、当審において平成24年8月7日付けで書面による審尋がなされ、平成24年10月9日付けの回答書が提出されたものである。 第2.平成24年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年1月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 (1)本件補正の内容 平成24年1月25日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし8に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年9月20日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1ないし8の下記(ア)を、下記(イ)と補正するものである。 (ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし8 「【請求項1】 被照明空間の天井部分に配設された円形断面を有する光源と、 前記光源から照射された光線を透過して前記被照明空間内に拡散させる、前記光源の下方に配設された照明板と、 前記光源から隙間を開けかつ前記光源の表面に沿って平行に延びるように湾曲状に形成され、前記照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光部材と、 を備えることを特徴とするエレベータの照明装置。 【請求項2】 前記遮光部材は、前記照明板のうち前記光源によって直接照射されたときに所定値を上回る照度となる部分に対して前記光線が到達しないように遮光可能な形状を有することを特徴とする請求項1に記載したエレベータの照明装置。 【請求項3】 前記遮光部材は、前記光線が通過する複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載したエレベータの照明装置。 【請求項4】 前記遮光部材は、前記光線が通過する複数の切り欠きをその周縁に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項5】 第1の前記光源から隣接する第2の前記光源の側に照射された光線を前記第1の光源の下方に配設された照明板側に反射させる、前記第1の光源と前記第2の光源との間に配設された第1の反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項6】 前記光源から上方に照射された光線を前記照明板側に反射させる、前記光源を上方から覆うカバー状の第2の反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項7】 前記光源から照射された光線を透過して前記照明板の上方に拡散させる、前記光源および前記遮光部材を一体に覆うカバー状の第1の光線拡散部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項8】 前記光源から照射された光線を下方に透過して前記照明板に向かって拡散させる、前記光源と前記照明板との間に配設された板状の第2の光線拡散部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載したエレベータの照明装置。」 (イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8 「【請求項1】 被照明空間の天井部分に配設された円形断面を有する光源と、 前記光源から照射された光線を透過して前記被照明空間内に拡散させる、前記光源の下方に配設された照明板と、 前記光源から隙間を開けかつ前記光源の表面に沿って平行に延びるように湾曲状に形成され、前記照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光部材と、 を備え、 光源からの光線の一部が遮光部材によって遮光され、光源からの光線の残りの部分が照明板に直接照射されることを特徴とするエレベータの照明装置。 【請求項2】 前記遮光部材は、前記照明板のうち前記光源によって直接照射されたときに所定値を上回る照度となる部分に対して前記光線が到達しないように遮光可能な形状を有することを特徴とする請求項1に記載したエレベータの照明装置。 【請求項3】 前記遮光部材は、前記光線が通過する複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載したエレベータの照明装置。 【請求項4】 前記遮光部材は、前記光線が通過する複数の切り欠きをその周縁に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項5】 第1の前記光源から隣接する第2の前記光源の側に照射された光線を前記第1の光源の下方に配設された照明板側に反射させる、前記第1の光源と前記第2の光源との間に配設された第1の反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項6】 前記光源から上方に照射された光線を前記照明板側に反射させる、前記光源を上方から覆うカバー状の第2の反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項7】 前記光源から照射された光線を透過して前記照明板の上方に拡散させる、前記光源および前記遮光部材を一体に覆うカバー状の第1の光線拡散部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載したエレベータの照明装置。 【請求項8】 前記光源から照射された光線を下方に透過して前記照明板に向かって拡散させる、前記光源と前記照明板との間に配設された板状の第2の光線拡散部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載したエレベータの照明装置。」(なお、下線は審判請求人が付したものである。) (2)本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「光源から照射された光線」について、その一部が遮光部材によって遮光され、残りの部分が照明板に直接照射される旨の限定を付加するものである。そして、請求項1を引用する請求項3についても、本件補正前の請求項1を引用する請求項3に記載された発明の発明特定事項について同様の限定を付加するものである。 したがって、本件補正は、請求項3に関し、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 前述したように、本件補正における特許請求の範囲の補正は、請求項3に関し、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3に記載された事項により特定される次の発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。 「 被照明空間の天井部分に配設された円形断面を有する光源と、 前記光源から照射された光線を透過して前記被照明空間内に拡散させる、前記光源の下方に配設された照明板と、 前記光源から隙間を開けかつ前記光源の表面に沿って平行に延びるように湾曲状に形成され、前記照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光部材と、 を備え、 光源からの光線の一部が遮光部材によって遮光され、光源からの光線の残りの部分が照明板に直接照射され、 前記遮光部材は、前記光線が通過する複数の貫通孔を有することを特徴とするエレベータの照明装置。」(以下、「本願補正発明」という。) 2.-1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-183670号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0007】そこで、本発明の目的は、照明ムラまたは陰を生じさせず、しかも、かご室の吊天井の高さを低くさせ、かご室上部に配設されるエレベータ機器とのスペースを拡大できると共に軽量化したエレベータのかご室照明装置を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的と達成するため、かご室の天井下面に光源を装着し、この光源より下部に照明板が配設されるように吊天井を構成したエレベータのかご室照明装置において、光源と照明板との間に、光を透過および反射する特性を備えた板状の中間部材を、少なくとも一層以上配設するように構成したものである。 【0009】 【作用】以上のように構成することにより、光源から照射される光は、中間部材を透過した後照明板に達し、この照明板の特性に応じた光のみ透過してかご室内を照明するものと、また、中間部材で反射されて天井下面に達し、この天井下面で反射した後照明板に達してかご室を照明するものと、再び中間部材に達して以上のような経路をとるものがあり、吊天井内部でこれらの光が拡散されることになって、照明ムラや陰等が照明板に映し出されることがなく、かご室の意匠性を向上することができる。また、吊天井の高さを低くしてかご室の全高を低くし、かご室の軽量化を実現できる。」(段落【0007】ないし【0009】) (イ)「【0014】次に、以上のように構成された実施例の作用を説明する。光源4から照射された光は、まず、ハーフミラー10により約10?30%が透過され、残りは全て反射される。このハーフミラー10を透過した光は、次に照明板5に到達するが、到達した光のうち照明板5の特性(透過率)に応じた光のみ透過され、かご室内を照明する。」(段落【0014】) (ウ)「【0016】したがって、以上のように構成された実施例によれば、吊天井3内部で光を拡散させるため、光源4と照明板5の間隔を小さくしても、照明ムラや陰を照明板に映し出されることがない。しかも、この間隔は、光源4,ハーフミラー10および照明板5を配設でき、調整・交換ができるスペースがあれがよく(審決注:「あればよく」の誤記と認める。)、これによって、吊天井3の高さH2を小さくすることができ、従来のように照明ムラや陰を映し出せないようにするための吊天井3の高さを大きくするという欠点を解消できる。」(段落【0016】) (エ)「【0018】なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、種々変形実施できる。図4は、本発明の他の実施例を示す断面図である。同図において、14は透過および反射する特性を有する中間板で、光源4と照明板5の間に、ほぼZ字状に形成された支持ブラケット15やちょうボルト13等により取付けられている。ここで、中間板14は、SUS材で形成され中心で両端部側に向って下がるように折曲げられており、光源4に向う面14aを鏡面のように仕上げて反射面を形成し、図5に示すように複数の適宜大きさの孔14bを設けて光を直接透過するようにしている。以上のような構成にしても、上述した実施例と同様の効果が得られる。」(段落【0018】) (オ)「【0020】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、かご室の天井下面に光源を装着し、この光源より下部に照明板が配設されるように吊天井を構成したエレベータのかご室照明装置において、光源と照明板との間に、光を透過および反射する特性を備えた板状の中間部材を、少なくとも一層以上配設するようにしているので、照明ムラや陰等が照明板に映し出されることがなく意匠性が向上する。また、従来方式に比べて吊天井の高さを低くすることができ、かご室の全高を実質的に低くしてかご上部機器と天井面とのスペースを大きくして余裕を持たせることができる。さらに、かご室の全高を低くすることによって、かご室を構成する側板等の高さが低くなり、かご室の軽量化とエレベータシステムの小型化を実現できる等の効果を有するエレベータのかご室照明装置を提供できる。」(段落【0020】) (2)引用文献1記載の事項 (カ)上記(1)(イ)の記載から、「照明板5」は、照明板5に到達した光のうち、その透過率に応じた光のみが透過され、かご室内を照明するものであるから、光源から照射された光線を透過して被照明空間内に拡散させるものであることが分かる。 (3)引用文献1記載の発明 上記(1)、(2)及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているといえる。 「被照明空間の天井部分に配設された光源4と、 前記光源4から照射された光線を透過して前記被照明空間内に拡散させる、前記光源の下方に配設された照明板5と、 前記光源4から隙間を開け、前記照明板5に照射される光線の一部を遮光する板状の中間板14と、 を備え、 光源4からの光線の一部が中間板14によって遮光され、光源4からの光線の残りの部分が照明板5に直接照射され、 前記中間板14は、中心で両端部側に向って下がるように折曲げられた板状体で光線が通過する複数の適宜大きさの孔14bを有するエレベータの照明装置。」 2.-2 引用文献2 (1)引用文献2の記載 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-289461号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は上記問題を解決し、上記目的を達成するためになされたものであって、受診者に対して撮影装置と反対側に設けて受診者の画像を撮影して輪郭を抽出するときに使用され、反射体と拡散板と蛍光灯と遮光材とからなる撮影用照明装置であって、前記反射体の前方に蛍光灯が設けられ、この蛍光灯の前方に蛍光灯の直径1に対して0.2?0.9の幅の遮光材が蛍光灯の中心線部分を遮るように設けられ、更に、この前方に蛍光灯の光を遮るように拡散板が設けられているものである。」(段落【0005】) (イ)「【0010】本発明に使用される遮光材とは光を全部または一部通さないものであって、鉄、アルミニウム、プラスチック、木材、乳白色のガラス等の板状物や鉄やプラスチックの網状物がある。そして本発明においては、この遮光材として蛍光灯の直径1に対して0.2?0.9の幅のものを、蛍光灯の中心線部分を遮るように設けて使用し、蛍光灯の中心線部分の極めて明るい部分の光を遮るものである。 【0011】本発明に使用される拡散板とはこの拡散板を通過する光を種々な方向に拡散する性質を有するもので、本発明においては蛍光灯の光が直接撮影装置を照射して輪郭をボカさないように、蛍光灯の光を遮る位置に設ける。この拡散板の材質は透明または半透明の板の中に屈折率の異なる物質の微粉末を入れてこの微粉末で光を拡散させたり、この透明または半透明の板の表面に微細な凹凸を設けたり白色塗料を塗布して、この微細な凹凸面や白色塗料で光を拡散させたりするものがある。具体的には、ガラス板の表面に微細な凹凸を設けたものやアクリル板の中に炭酸カルシウム粉末、酸化チタン粉末等を混入したもの等が好適である。」(段落【0010】及び【0011】) (ウ)「【0013】又、本発明においては蛍光灯の直径1に対して0.2?0.9の幅の遮光材が蛍光灯の前方に蛍光灯の中心線部分を遮るように設けられているから、光源部分とその他の部分とに照度の差がなくなる。従って、画像に光の濃淡の縞模様ができない。‥(後略)‥」(段落【0013】) (エ)「【0016】図1?3において、1は撮影用照明装置であり、この撮影用照明装置1は縦2100mm、横1300mm、幅280mmの箱体の中に反射体2と拡散板3と蛍光灯4と遮光材5とが設けらたものであり、図2に示すように、側壁6の後面と側面に反射体2が設けられ、前面に拡散板3が設けられている。そして、この側面6に蛍光灯4と遮光材5が差し渡されて設けられている。反射体2は拡散反射率が75%である白色の紙製のスクリーンを側壁6に張ったものである。 【0017】拡散板3は酸化チタン粉末を混入した白色のアクリル樹脂製の厚み3mmの板である。蛍光灯4は直径32.5mm、出力が40Wの水平方向に長い円筒状のものであって4本並列に設けられている。‥(後略)‥」(段落【0016】及び【0017】) (オ)「【0018】遮光材5は幅10mmのアルミニウム製の帯状体であり、上から3本の蛍光灯4の前面に中心線を遮るように設けられていて、一番下の蛍光灯4には遮光材5が設けられてない。‥(後略)‥」(段落【0018】) (カ)「【0019】次に、この撮影用照明装置を使用して受診者の輪郭を撮影する実施状況を説明する。撮影装置7と撮影用照明装置1との間に受診者8を立たせる。そして、撮影用照明装置1の蛍光灯4を点灯する。すると、蛍光灯4から放射された光が直接または反射体2に反射され、拡散板3で拡散されて受診者8の背後から照らす。この状態で撮影装置1で受診者8の画像を撮影する。 【0020】このようにして撮影するから、蛍光灯4の光は蛍光灯4の前の拡散板3で拡散され、蛍光灯4から直接撮影装置1に照射されない。従って、蛍光灯4と撮影装置1とを結ぶ線上の受診者8の輪郭部分が輝き過ぎてボケることがない。又、蛍光灯4の中心線部分には遮光材5があるから、蛍光灯4とその他の部分とに照度の差がない。従って、撮影した画像に縞模様の明暗ができない。 【0021】又、拡散反射率が75%というように大きな反射体2を使用するから、反射体2の表面を照射した光はほとんど拡散されて反射する。従って、前記拡散板3、遮光材5の作用とが相まって、拡散板全体がほぼ均一に明るくなり、撮影装置7で撮影した画像の輪郭は極めてハッキリしていて、この画像から輪郭が良好に抽出できる。尚、この拡散板3の表面から100mm離れた場所の照度を測定したところ、図3に示すような結果になった。」(段落【0019】ないし【0021】) (キ)「【0023】 【発明の効果】本発明撮影用照明装置は蛍光灯の前に拡散板が設けられているから、蛍光灯の光が受診者の背後から直接照らさない。従って、蛍光灯と撮影装置とを結ぶ線上の受診者の輪郭が輝き過ぎてこの部分がボケることがない。又、本発明においては、蛍光灯の直径1に対して0.2?0.9の幅の遮光材が蛍光灯の前方に蛍光灯の中心線部分を遮るように設けられているから、光源部分とその他の部分とに照度の差がない。従って、明暗の縞ができない。」(段落【0023】) (2)引用文献2記載の技術 上記(1)(ア)ないし(キ)及び図面から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「円形断面を有する蛍光灯4と、該蛍光灯4から照射された光線を透過して前方に拡散させるべく配設された拡散板3と、蛍光灯4の直径1に対して0.2?0.9の幅をもって、蛍光灯4の中心線部分を遮るように、蛍光灯4から隙間を開けかつ蛍光灯4の表面に沿って平行に延びるように形成され、拡散板3に照射される光線の一部を遮光する板状の遮光材5とを備え、蛍光灯4から拡散板3に向って照射される光線につき、その一部が遮光材5によって遮光され、残りの部分が拡散板3に直接照射されるように構成されてなる撮影用照明装置。」 2.-3 対比 本願補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「光源4」は、その構成及び機能からみて、本願補正発明における「光源」に相当し、同様に「照明板5」は「照明板」に相当する。 また、「光源から隙間を開け、照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光体」という限りにおいて、引用文献1記載の発明における「前記光源4から隙間を開け、前記照明板5に照射される光線の一部を遮光する板状の中間板14」は、本願補正発明における「前記光源から隙間を開けかつ前記光源の表面に沿って平行に延びるように湾曲状に形成され、前記照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光部材」に相当する。 さらに、引用文献1記載の発明における「孔14b」は、その構成及び機能からみて、本願補正発明における「貫通孔」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用文献1記載の発明は、 「被照明空間の天井部分に配設された光源と、 前記光源から照射された光線を透過して前記被照明空間内に拡散させる、前記光源の下方に配設された照明板と、 前記光源から隙間を開け、前記照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光体と、 を備え、 光源からの光線の一部が遮光体によって遮光され、光源からの残りの部分が照明板に直接照射され、 前記遮光体は、光線が通過する複数の貫通孔を有するエレベータの照明装置。」 である点で一致し、次の2点において相違する。 (1)本願補正発明においては、光源が、円形断面を有する光源であるのに対し、引用文献1記載の発明においては、光源4が円形断面を有するものであるのか不明である点(以下、「相違点1」という。)。 (2)「光源から隙間を開け、照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光体」に関し、本願補正発明においては、「前記光源から隙間を開けかつ前記光源の表面に沿って平行に延びるように湾曲状に形成され、前記照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光部材」であるのに対し、引用文献1記載の発明においては、「前記光源4から隙間を開け、前記照明板5に照射される光線の一部を遮光する板状の中間板14」である点(以下、「相違点2」という。)。 2.-4 判断 相違点1について検討すると、エレベータの照明装置において、光源として円形断面を有する蛍光灯を用いることは、周知の技術事項(以下、「周知の技術事項1」という。例えば、特開平4-20491号公報の第1ページ左下欄第19行ないし右下欄第18行並びに第8図及び第9図、実願昭60-92949号(実開昭62-2582号)のマイクロフィルムの明細書の第3ページ第2行ないし第6行並びに第1図及び第2図等参照)であるから、引用文献1記載の発明において、光源4を円形断面を有する光源とすることにより、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が必要に応じて適宜設定し得たことである。 次に、相違点2について検討する。本願補正発明と引用文献2記載の技術を対比すると、両者は、照明装置において照明板に照明ムラが生じることを防止するものであって、引用文献2記載の技術における「円形断面を有する蛍光灯4」は、その構成及び機能からみて、本願補正発明における「円形断面を有する光源」及び「光源」に相当し、以下同様に、「拡散板3」は「照明板」に、「遮光材5」は「遮光部材」にそれぞれ相当する。 したがって、引用文献2記載の技術を本願補正発明の用語を用いて表現すると、「光源から隙間を開けかつ前記光源の表面に沿って平行に延びるように形成され、照明板に照射される光線の一部を遮光する、板状の遮光部材を備える照明装置。」であるといえる。 一方、光源からの直射光線を遮る遮光部材を光源の表面に沿って湾曲状に形成することは、周知の技術事項(以下、「周知の技術事項2」という。例えば、実公昭40-36378号公報の第1ページ右欄第5行ないし第30行及び第1図ないし第3図、特開昭62-188101号公報の第2ページ左下欄第18行ないし右下欄第9行並びに第1図及び第2図等参照)である。 したがって、引用文献1記載の発明において、周知の技術事項2を参酌しつつ、引用文献2記載の技術を適用することによって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が格別困難なく容易に想到し得たことである。 さらに、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに周知の技術事項1及び2から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。 以上により、本願補正発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに周知の技術事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3. むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の 2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 前記のとおり、平成24年1月25日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成23年9月20日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであり、請求項1及び請求項3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明3」という。)は、上記(第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】及び【請求項3】)のとおりのものである。 2.引用文献 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術は、それぞれ前記第2.の[理由]2.-1及び2.-2に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明3は、前記第2.の[理由]1.(1)及び(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当し、さらに、本願発明1は、本願発明3において「前記遮光部材は、前記光線が通過する複数の貫通孔を有する」との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明1及び本願発明3の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-1ないし2.-4に記載したとおり、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに周知の技術事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1及び本願発明3も、同様の理由により、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに周知の技術事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1及び本願発明3は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに周知の技術事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-05 |
結審通知日 | 2012-12-07 |
審決日 | 2012-12-18 |
出願番号 | 特願2001-259474(P2001-259474) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B66B)
P 1 8・ 121- Z (B66B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 杏子 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
久島 弘太郎 藤原 直欣 |
発明の名称 | エレベータの照明装置 |
代理人 | 名塚 聡 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 森 秀行 |
代理人 | 磯貝 克臣 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 永井 浩之 |