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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1269991
審判番号 不服2011-25101  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-22 
確定日 2013-02-08 
事件の表示 特願2006-353850「複反射鏡アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月17日出願公開、特開2008-167114〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成18年12月28日の出願であって、平成23年10月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

(本願発明)
「円形凹面型の主反射鏡と、主反射鏡の凹面中心から突出する1次放射器と、1次放射器の前方位置に、円形凸面型の反射面を主反射鏡に向けて保持された副反射鏡とを有する複反射鏡アンテナにおいて、副反射鏡の反射面円周後方側に円周に沿って、深さの往復と底面幅の合計長が使用波長の3分の1ないし3分の2の長さとなるチョークを形成する円形調整板を有することを特徴とする複反射鏡アンテナ。」

2.引用発明及び周知技術
(1)原審の拒絶理由に引用された実願昭58-141067号の願書に添付した明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭60-50513号参照、以下、「引用例」という。)には、「カセグレンアンテナ」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「直径数波長程度の回転双曲面又は,その近似曲面からなる副反射鏡を持つカセグレンアンテナにおいて,副反射鏡端部からの不要散乱波を抑制するため副反射鏡周囲に,副反射鏡と同一方向の凸曲面からなり,かつその幅を副反射鏡の半径の1/10程度とする散乱抑制リングを設けたことを特徴とするカセグレンアンテナ。」(1頁5行?11行、実用新案登録請求の範囲)

ロ.「第2図は従来のカセグレンアンテナの副反射鏡端部における電波の散乱を表したものであり,図中(4)は不要散乱波を示す。副反射鏡の直径が十分大きくない場合,副反射鏡からの反射波へ及ぼすこの散乱波の影響が大きくなり,アンテナの性能劣化をまねく。」(2頁18行?3頁3行)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「カセグレンアンテナ」はその大きさが直径や半径で表現されその断面が第1図で示されるのであるから、当該アンテナは「円形凹面型の主反射鏡と、主反射鏡の凹面中心から突出する1次放射器と、1次放射器の前方位置に、円形凸面型の反射面を主反射鏡に向けて保持された副反射鏡とを有する複反射鏡アンテナ」である。
また、副反射鏡の周囲には円周に沿って、副反射鏡端部からの不要散乱波を抑制するための散乱抑制リングが設けられている。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「円形凹面型の主反射鏡と、主反射鏡の凹面中心から突出する1次放射器と、1次放射器の前方位置に、円形凸面型の反射面を主反射鏡に向けて保持された副反射鏡とを有する複反射鏡アンテナにおいて、副反射鏡の周囲に円周に沿って、副反射鏡端部からの不要散乱波を抑制するための散乱抑制リングを有する複反射鏡アンテナ。」

(2)例えば、特開2003-309419号公報(以下、「周知例1」という。)又は特開2000-77930号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例1)
イ.「【0014】図7、図8は、本発明の実施の形態のグランドプレーンアンテナの他の変形例を示す要部断面図である。図7に示すグランドプレーンアンテナは、指向特性調整板3の周辺部に溝部5が形成されるように、指向特性調整板3の周辺部を2重構造としたものである。この溝部5の深さをλo/4とすることにより、指向特性調整板3のモノポール素子1と反対側の面に、電流が誘起されるの防止することができる。図8に示すグランドプレーンアンテナは、指向特性調整板3の形状をホーン形状にしたものである。なお、図7、図8において、6は同軸接栓である。図7、図8に示すような形状でも、前記した作用・効果を得ることが可能となる。
【0015】本願発明のように、グランドプレーン2に平行になるように指向性調整板3を配置すると、モノポール素子1によって励振され二つの導電板間を伝送した電磁波が、開放部で放射されるため、開放部の電磁姿態に加え、指向性調整板端部からの散乱波、グランドプレーン2からの反射波や、グランドプレーン2の端部からの散乱波によって、指向特性が決定される、指向特性を決定する要素が多く、これらは、指向性調整板3の大きさや、グランドプレーン2の大きさを調整することで、変化させることが可能である。また、本発明のグランドプレーンアンテナは、グランドプレーン2に指向特性調整板3を配置すると言った簡単な構成である。したがって、本発明のグランドプレーンアンテナによれば、安価に、Z方向に近い領域で、広角にわたり変動が少ない指向特性を得ることが可能となる。従って、本発明のグランドプレーンアンテナを、天井等に設置される移動通信の基地局や無線LANのアクセスポイント用のグランドプレーンアンテナとして応用すると、広い無線エリアで高速で高品質な通信を実現することが可能となる。以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。」(4頁6欄?5頁7欄、段落14?15)

(周知例2)
イ.「【0018】図2は平面アンテナ装置全体の構成を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。同図において5は金属板から成るグランドプレーンであり、平面アンテナ10の周囲に、平面アンテナを構成する誘電体板とほぼ同一平面上に配置している。このグランドプレーン5の下面側にはリング状の導体板(以下「リング状導体板」という。)6を導体壁7を介して取り付けている。導体壁7およびリング状導体板6はグランドプレーン5の全周に亘って連続して設けている。したがってこの導体壁7とグランドプレーン5およびリング状導体板6によって一端が開放され、他端が導体壁7によって短絡された共振器が構成される。等価的にはリング状導体板6の外縁を開放端、導体壁7を短絡端とする共振器がリング状導体板6の外周に沿って配列され、同時にリング状導体板6の内縁を開放端、導体壁7を短絡端とする共振器がリング状導体板6の内周に亘って配列されたものとなる。この平面アンテナ装置11は平面アンテナ10のケース下部をマスト9に取り付けることによって使用する。
【0019】この平面アンテナ装置はGPS衛星から送信される1.5GHz帯の電波を受信するGPSアンテナであり、リング状導体板6の内径Dを280mm、径方向の幅Wを100mm、導体壁7の高さHを20mm、導体壁7の厚みを5mmとしている。上記W1,W2は1575MHzにおける1/4波長(47.5mm)に等しい。したがって上記共振器は、グランドプレーンの下面側から入射する1.5GHz帯の電波に共振して、それをトラップする。
【0020】図3は上記平面アンテナ装置の放射パターンの測定例である。図7に示した特性と比較すれば明らかなように、水平線から真下の地面方向にかけて、入射波(反射波)に対する感度が充分に抑圧されている。これによりマルチパスによる影響を受けにくくなっていることが分かる。」(3頁4欄、段落18?20)

上記周知例1?2に開示されているように「電磁波の後方散乱を防止するために、導体板の円周後方側に円周に沿って、深さの往復と底面幅の合計長が使用波長の1/2強の長さとなるチョークリングを設ける」技術手段は周知である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明にかかる「円形調整板」は本願明細書の例えば段落3、13?15の説明によると「副反射鏡の円端部」で起こる「回折現象」を防止し、「-70度から70度の方向で増大するスピルオーバー(漏れ放射)」を減少させるための部材、即ち、散乱放射を防止する部材のことであるから、本願発明の「副反射鏡の反射面円周後方側に円周に沿って、深さの往復と底面幅の合計長が使用波長の3分の1ないし3分の2の長さとなるチョークを形成する円形調整板を有する」構成と引用発明の「副反射鏡の周囲に円周に沿って、副反射鏡端部からの不要散乱波を抑制するための散乱抑制リングを有する」構成はいずれも「副反射鏡の周囲付近に円周に沿って、端部散乱特性調整部を有する」構成である点で一致している。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「円形凹面型の主反射鏡と、主反射鏡の凹面中心から突出する1次放射器と、1次放射器の前方位置に、円形凸面型の反射面を主反射鏡に向けて保持された副反射鏡とを有する複反射鏡アンテナにおいて、副反射鏡の周囲付近に円周に沿って、端部散乱特性調整部を有する複反射鏡アンテナ。」

<相違点>
「副反射鏡の周囲付近に円周に沿って、端部散乱特性調整部を有する」構成に関し、本願発明は「副反射鏡の反射面円周後方側に円周に沿って、深さの往復と底面幅の合計長が使用波長の3分の1ないし3分の2の長さとなるチョークを形成する円形調整板を有する」構成であるのに対し、引用発明は「副反射鏡の周囲に円周に沿って、副反射鏡端部からの不要散乱波を抑制するための散乱抑制リングを有する」構成である点。

4.検討・判断
上記相違点について検討するに、例えば上記周知例1、2に開示されているように「電磁波の後方散乱を防止するために、導体板の円周後方側に円周に沿って、深さの往復と底面幅の合計長が使用波長の1/2強の長さとなるチョークリングを設ける」技術手段は周知であり、当該周知技術を同じ目的で設けられる引用発明の構成に代えて用いる上での阻害要因は何ら見あたらない。また、本願発明の「使用波長の3分の1ないし3分の2の長さ」が当該周知技術における「使用波長の1/2強の長さ」を含む構成であることを考慮すると、当該周知技術に基づいて、引用発明の「副反射鏡の周囲に円周に沿って、副反射鏡端部からの不要散乱波を抑制するための散乱抑制リングを有する」構成を本願発明のような周知の「副反射鏡の反射面円周後方側に円周に沿って、深さの往復と底面幅の合計長が使用波長の3分の1ないし3分の2の長さとなるチョークを形成する円形調整板を有する」に替える程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-13 
結審通知日 2012-12-14 
審決日 2012-12-26 
出願番号 特願2006-353850(P2006-353850)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 美香  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 菅原 道晴
矢島 伸一
発明の名称 複反射鏡アンテナ  
代理人 八幡 義博  

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