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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1270060
審判番号 不服2011-4945  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-04 
確定日 2013-02-15 
事件の表示 特願2006- 18494「燃料処理装置および燃料処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日出願公開、特開2007-197582〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年1月27日の特許出願であって、平成22年9月13日付けの拒絶理由通知に対し、同年11月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「平成22年 9月13日付け拒絶理由通知書に記載した理由2」であって、要するに、本願の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開昭59-20382号公報
引用文献2:特開昭59-122592号公報
引用文献3:特開昭60-186586号公報

3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成22年11月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
炭素を主成分とした液体または固体の燃料と水素化反応を促進する触媒と5MPa以上の高圧水素とを収納してこれらを450°以上の高温に加熱することが可能な耐熱耐圧容器を備え、前記耐熱耐圧容器内で水素化反応を行うことにより熱および水素化合物燃料を発生させ、前記水素化反応で発生した熱および前記水素化合物燃料を燃焼させて発生した熱により物質を加熱することを特徴とする燃料処理装置。」
なお、上記「450°」は、本願明細書及び図面(段落【0016】、図2等)の記載からみて「450℃」を意味することは明らかである。

4 刊行物の記載事項
本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開昭59-20382号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。
a 「1 炭素質物質をガス化又は液化するに当り、周期律表第VIII族金属元素の酸化物、水酸化物、及び炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の化合物の存在下、圧力35?250Kg/cm^(2)(ゲージ圧)の実質的な水素ガス雰囲気中で、温度500?950℃に急速加熱して分解させることを特徴とする炭素質物質の熱分解法。」(特許請求の範囲第1項)
b 「本発明方法において用いる周期律表第VIII族金属元素としては、Fe、Co、Ni、・・・・、Ptなどが挙げられ、・・・・
これら周期律表第VIII族金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩の使用によつて、炭素質物質の分解温度が低下し、ガソリン留分への転化率が向上すると共に、エタンへの転化率が従来になく大巾に増加する。・・・・
本発明方法においては前記の金属化合物を単独で用いてもよいし、・・・・。添加方法としては、石炭と該金属化合物を別々に分解反応器中に導入することもできるが、ガス及び液体生成物への転化率を効率よく増加するには、予め石炭と該金属化合物を混合しておき、その混合物を反応器へ送り込むことが望ましい。」(2頁右下欄15行?3頁左上欄18行)
c 「本発明方法において原料として用いる炭素質物質としては、例えば・・・・かつ炭、・・・・などの石炭及び・・・・などが挙げられる。」(4頁左下欄16?20行)
d 「実施例1
オーストラリヤ産の褐炭を粉砕し、100メツシユ(JIS規格)のふるいを通し微粉炭とした。・・・・
この微粉炭10gを、予め硝酸第二鉄0.7g(無水基準)を溶解した蒸留水500ml中に加え30分間かきまぜた。この混合液に水酸化カリウム0.6gを溶解した蒸留水60mlを添加し、更に一昼夜かきまぜた。この液から吸引濾過によつて沈澱した酸化鉄と石炭の混合物を分離し、更に濾液に水酸化カリウムが検出されなくなるまで充分に水洗した。
次いで20mmHg、75℃の減圧加熱条件下で乾燥し、混合物100重量部に対し水分量を5重量部に調製した。
この添加炭1gを、温度680℃、水素圧力70Kg/cm^(2)(ゲージ圧)の条件で水素ガスを流通しているインコロイ800製の反応管に1分間かけて均一に供給し反応させた。この時、加熱反応部を通過する水素ガスの滞留時間、すなわち反応時間は7秒であり、また供給炭に対する反応用供給水素量の重量比は1.8であつた。反応管から出た生成物のうち、チヤーはチヤートラツプで分離し、またガソリン留分及びオイルは-68℃の冷媒を用いた間接冷却器で凝縮分離させ、ガスは減圧後、サンプリング容器に採集し分析した。
これら反応生成物を分析した結果、炭素基準における石炭からの各生成物への転化率は第2表のとおりであつた。」(4頁右下欄12行?5頁右上欄13行)
e 「以上の結果から、本発明による周期律表第VIII族金属元素の酸化物、水酸化物、あるいは炭酸塩を添加した石炭の熱分解は、無添加の石炭に比べてエタン、ガソリン留分及びオイルが著るしく増加し、総転化率が高くなつたこと、またガソリン留分の最大転化率を与える反応温度が低下し、熱分解反応が促進されていることは明白である。」(6頁左下欄18行?同頁右下欄4行)
f (9頁、訂正された第2表)


5 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「炭素質物質の熱分解法」(上記4a)が記載されているところ、これは「周期律表第VIII族金属元素の酸化物、水酸化物、及び炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の化合物の存在下、圧力35?250Kg/cm^(2)(ゲージ圧)の実質的な水素ガス雰囲気中で、温度500?950℃に急速加熱」することで「炭素質物質をガス化又は液化する」ものであり(上記4a)、これを実施するために、例えば「インコロイ800製の反応管」を備えた装置を用い得ること(上記4d)、この反応管は「温度680℃、水素圧力70Kg/cm^(2)(ゲージ圧)」の条件で用いられること(上記4d)、上記炭素質物質は、例えば「石炭」であり(上記4c及びd)、これを上記反応管で反応させるとメタン、エタン及びガソリン留分を含む反応生成物に転化すること(上記4d及びf)が記載されていると認められる。
そうすると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されているということができる。
「石炭の熱分解法に用いる装置であって、周期律表第VIII族金属元素の酸化物、水酸化物、及び炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の化合物の存在下、圧力70Kg/cm^(2)(ゲージ圧)の実質的な水素ガス雰囲気中で、温度680℃に急速加熱することで、石炭をガス化又は液化し、メタン、エタン及びガソリン留分を含む反応生成物に転化することができる、インコロイ800製の反応管を備えた装置。」

6 対比
本願発明と刊行1発明とを対比する。
ア 刊行1発明の「石炭」は、本願発明の「炭素を主成分とした液体または固体の燃料」に相当し、刊行1発明の「石炭の熱分解法に用いる装置」は、本願発明の「燃料処理装置」に相当するということができる。
刊行1発明の「メタン、エタン及びガソリン留分」は、いずれも本願発明の「水素化合物燃料」に相当するものであることは明らかであるから、刊行1発明の「メタン、エタン及びガソリン留分を含む反応生成物に転化する」は、本願発明の「水素化合物燃料を発生させ(る)」に相当する。
そして、刊行1発明の「石炭の熱分解法に用いる装置」において、「石炭をガス化又は液化し、メタン、エタン及びガソリン留分を含む反応生成物に転化する」ときの反応は、炭素質物質(石炭)を水素ガス雰囲気中で炭化水素(メタン、エタン及びガソリン留分)に転化する反応であり、これは「水素化反応」ということができるので、刊行1発明は、本願発明と「水素化反応」を行う点で共通する。
イ また、刊行1発明の「周期律表第VIII族金属元素の酸化物、水酸化物、及び炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の化合物」は、上記4b及びeによれば、炭素質物質(石炭)の分解温度を低下させ、総転化率を高くし、熱分解反応(水素化反応)を促進するものであり、これは炭素質物質(石炭)の熱分解反応(水素化反応)を促進する「触媒」とみることができるので、刊行1発明の同「化合物」は、本願発明の「水素化反応を促進する触媒」に相当するということができる。
ウ さらに、刊行1発明の「反応管」は、「圧力70Kg/cm^(2)(ゲージ圧)の実質的な水素ガス雰囲気中で、温度680℃に急速加熱」されるものであるところ、この圧力の「70Kg/cm^(2)(ゲージ圧)」はほぼ「7.0MPa(絶対圧)」と換算できるから、刊行1発明の「反応管」は、圧力7.0MPa(絶対圧)の水素ガス雰囲気中で、温度680℃に急速加熱することができる程度に「耐熱耐圧」のものであると解される。
そうすると、刊行1発明の「反応管」は、これが「容器」であるか否かはさておき、この中に「石炭」と「周期律表第VIII族金属元素の酸化物、水酸化物、及び炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の化合物」と「圧力70Kg/cm^(2)(ゲージ圧)」の「水素ガス」を共存させるのは明らかであることから、本願発明の「炭素を主成分とした液体または固体の燃料と水素化反応を促進する触媒と5MPa以上の高圧水素とを収納してこれらを450°以上の高温に加熱することが可能な耐熱耐圧容器」と、「炭素を主成分とした液体または固体の燃料と水素化反応を促進する触媒と5MPa以上の高圧水素とを収納してこれらを450°以上の高温に加熱することが可能な耐熱耐圧」反応器である点で共通するということができる。
エ 以上を踏まえると、本願発明と刊行1発明とは、「炭素を主成分とした液体または固体の燃料と水素化反応を促進する触媒と5MPa以上の高圧水素とを収納してこれらを450°以上の高温に加熱することが可能な耐熱耐圧反応器を備え、前記耐熱耐圧反応器内で水素化反応を行うことにより水素化合物燃料を発生させる燃料処理装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:反応器(の形状)が、本願発明では「容器」であるのに対し、刊行1発明では「管」である点。
相違点2:本願発明では、水素化反応を行うことにより熱を発生させることと、水素化反応で発生した熱および水素化合物燃料を燃焼させて発生した熱により物質を加熱することが特定されているのに対し、刊行1発明では、そのことが特定されていない点。

7 相違点についての検討
(1)相違点1
ア 一般に、高温高圧下で反応を行うために反応器として容器(反応容器)を用いることは、普通に行われていることである。そして、高温高圧下で石炭の水素化反応を行うために反応器として容器(反応容器)を用い得ることも、本願出願時、当業者には周知の技術である。このことは、例えば次の文献aないしcからも明らかである。
文献a:特開2001-323285号公報(請求項1、段落【0001】等参照)
文献b:特開平3-212490号公報(特許請求の範囲、4頁左上欄6?10行等参照)
文献c:特公平1-32276号公報(特許請求の範囲、2頁4欄31?36行等参照)
イ してみれば、刊行1発明において、上記周知の技術を転用し、反応器として反応管の代わりに容器(反応容器)を用いるとすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。

(2)相違点2
ア 炭素質物質(石炭等)の水素化反応が発熱反応であることは、例えば以下の文献dないしfに記載されているように、本願出願時、当業者には技術常識である。すなわち、炭素質物質(石炭等)の水素化反応を行うことにより熱が発生することは、当業者には当然のこととして認識される。
文献d:特許第3231040号公報(請求項8及び14、9頁17欄22?30行等参照)
文献e:特開平10-331609号公報(請求項1、段落【0010】及び【0019】等参照)
文献f:特公昭60-11955号公報(特許請求の範囲、2頁4欄14?23行等参照)
イ また、例えば上記文献dに「水素化熱分解反応器10において、炭素質原料、および産生されるメタン1gモル当り約18kcalの熱エネルギーを放出する水素含有ガスとの間に発熱反応が起こる。この発熱反応の熱と入ってくるガスの過剰の顕熱が水素化熱分解反応器の内容物を加熱し、・・・・」(9頁17欄22?26行)と記載されているように、水素化反応等の発熱反応を行うことで熱が発生すれば、反応器の内容物(反応生成物等)を不可避的に加熱することになるのは当然である。よって、水素化反応等の発熱反応で発生する熱により物質を加熱することも、当業者には当然のこととして認識される。
ウ さらに、炭素質物質(石炭等)の熱分解反応等により得られるガス状又は液状の可燃性化合物(メタン等)を燃焼させて熱を発生させ、その熱により物質を加熱すること、及びそのことを利用して発電をすることは、本願出願時、当業者には周知の技術である。このことは、例えば上記アで提示した文献e(上記箇所の他、段落【0026】、【0029】等参照)の他、次の文献g及びhからも明らかである。
文献g:特開2000-109858号公報(請求項4、段落【0012】?【0014】等参照)
文献h:特開平2-23212号公報(特許請求の範囲、2頁左上欄1?20行等参照)
エ そして、刊行1発明では、その装置自体の加熱だけでなく、原料等にも加熱が必要となることは、当業者には明らかであるし(上記4d)、刊行1発明が属するエネルギー源の技術分野においては、発電をすること自体、一般的な課題でもあるから、上記ウで説示した周知の技術に照らせば、刊行1発明において、物質(装置や原料等)の加熱や発電をするために、石炭の熱分解(水素化反応)により得られるガス状又は液状の可燃性化合物である、メタン、エタン、ガソリン留分等の反応生成物を燃焼させて熱を発生させ、その熱により物質を加熱するとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、これと併せて、炭素質物質(石炭等)の水素化反応を行うことにより熱が発生すること(上記ア)及び水素化反応等の発熱反応で発生する熱により物質を加熱すること(上記イ)は、当業者に当然のこととして認識されるから、これらを発明特定事項として付加することとし、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を導くことは、当業者が容易になし得ることである。
また仮に、本願発明の「水素化反応で発生した熱」により加熱される「物質」が、発熱反応の熱により不可避的に加熱されるもの(反応生成物等、上記イ)を除く、他の物質を意味していると解したとしても、加熱された物質から熱を回収し、他の物質を加熱するために利用することは、ごく普通の技術であることを踏まえれば、相違点2に係る上記判断に変わりはない。

(3)まとめ
以上より、相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項は、いずれも刊行1発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に導き得ることである。
そして、それらの事項が特定された本願発明の効果について、本願明細書及び図面の記載を検討しても格別なものは見いだせない。

なお、請求人は、審判請求書において、本願発明の発熱現象は、通常の水素化反応熱と比較して、極めて大きな熱量の発生を伴うとか、本願発明の「炭素を主成分とした燃料の燃料水素化反応を行うことにより熱および水素化合物燃料を発生させ、前記水素化反応で発生した熱および前記水素化合物燃料を燃焼させて発生した熱により物質を加熱する」との構成は、特定の条件の基に、燃料水素化反応により、通常の化学反応で得られない異常に大きい発熱現象が生じるという知見により発明の構成要件となったものであるとの主張をしているが、この前提は、本願出願後に発表された論文に基づくものであって、本願出願時における技術常識ではないことから、このような前提に基づいた主張は失当であり、そもそも通常の水素化反応熱と比較して、極めて大きな熱量の発生を伴うということや、特定の条件下での燃料水素化反応により、通常の化学反応で得られない異常に大きい発熱現象が生じるということは、本願明細書に何ら記載されていないし、ましてや本願発明に係る請求項1の記載に基づくものではないから、請求人の上記主張は、採用することができない。

8 むすび
以上検討したところによれば、本願発明は、刊行1発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、本願発明に係る請求項1以外の、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-22 
結審通知日 2012-12-04 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2006-18494(P2006-18494)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 松浦 新司
目代 博茂
発明の名称 燃料処理装置および燃料処理方法  
代理人 柴田 昌雄  
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