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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1270089
審判番号 不服2011-19500  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-09 
確定日 2013-02-13 
事件の表示 特願2006-536254「ユーザインタフェースを備える診断撮像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月 6日国際公開,WO2005/040843,平成19年 4月12日国内公表,特表2007-508890〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年10月21日(パリ条約による優先権主張 平成15年10月24日,欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願であって,平成23年4月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。そして,平成23年10月25日付けで審尋がなされ,回答書が平成24年1月26日付けで請求人より提出された。


第2 平成23年9月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年9月9日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲について,

「【請求項1】
診断撮像システムにおいて、
-前記診断撮像システムにより操作項目の実施を制御する制御システム、及び
-操作項目の順列を発生させるスケジューラーモジュールを含む、前記制御システムに結合されるユーザインタフェース
を有し、 前記操作項目の順列が、前記操作項目を実施する際の関係に関する情報を含む、診断撮像システム。
【請求項2】
-前記操作項目は夫々のパラメタ設定を有し、及び
-前記スケジューラーモジュールは、前記夫々のパラメタ設定に基づいて前記操作項目の順列を形成するように設定される
請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項3】
-前記制御システムは、実施リストに基づいて前記操作項目の実施を制御し、及び
-前記スケジューラーモジュールは、前記順列に従って操作項目を発する
請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項4】
前記スケジューラーモジュールは、先行する前記順列の操作項目が正常に終了したこと
に依存して操作項目をリリースする請求項3に記載の診断撮像システム。
【請求項5】
前記スケジューラーモジュールは、スキャンスケジュールを記憶するためのメモリを具備する請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項6】
前記スケジューラーモジュールは、前記操作項目により要求される、ユーザへの命令を発するように構成される請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項7】
前記スケジューラーモジュールは、前記ユーザインタフェースに前記操作項目の説明を、前記実施リストにリリースされる前記操作項目に依存して利用可能となるように構成される請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項8】
前記スケジューラーモジュールは、前記ユーザインタフェースに進捗情報を供給するように構成され、前記進捗情報は、前記操作項目の実施の進み具合に関連している請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項9】
前記制御システムが
-移動可能な患者支持体を様々な撮像位置間に移動させ、及び
-個々の撮像位置において幾つかの撮像シーケンスを実行し、前記患者支持体を前記様々な撮像位置間に移動することと、前記幾つかの撮像シーケンスを実行することとを交互に行う
ように設定される前記移動可能な患者支持体を含む、請求項1に記載の磁気共鳴撮像システム。」を

「【請求項1】
診断撮像システムにおいて、
-前記診断撮像システムにより操作項目の実施を制御する制御システム、及び
-操作項目の順列を発生させるスケジューラーモジュールを含む、前記制御システムに結合されるユーザインタフェース
を有し、
前記操作項目の順列が、前記操作項目を実施する際の関係に関する情報を含み、 前記操作項目を実施する際の関係に関する情報が、実行されるべき操作項目に対し遂行されるべき条件を含む、診断撮像システム。
【請求項2】
-前記操作項目は夫々のパラメタ設定を有し、及び
-前記スケジューラーモジュールは、前記夫々のパラメタ設定に基づいて前記操作項目の順列を形成するように設定される
請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項3】
-前記制御システムは、実施リストに基づいて前記操作項目の実施を制御し、及び
-前記スケジューラーモジュールは、前記順列に従って操作項目を発する
請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項4】
前記スケジューラーモジュールは、先行する前記順列の操作項目が正常に終了したことに依存して操作項目をリリースする請求項3に記載の診断撮像システム。
【請求項5】
前記スケジューラーモジュールは、スキャンスケジュールを記憶するためのメモリを具備する請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項6】
前記スケジューラーモジュールは、前記操作項目により要求される、ユーザへの命令を発するように構成される請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項7】
前記スケジューラーモジュールは、前記ユーザインタフェースに前記操作項目の説明を、前記実施リストにリリースされる前記操作項目に依存して利用可能となるように構成される請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項8】
前記スケジューラーモジュールは、前記ユーザインタフェースに進捗情報を供給するように構成され、前記進捗情報は、前記操作項目の実施の進み具合に関連している請求項1に記載の診断撮像システム。
【請求項9】
前記制御システムが
-移動可能な患者支持体を様々な撮像位置間に移動させ、及び
-個々の撮像位置において幾つかの撮像シーケンスを実行し、前記患者支持体を前記様々な撮像位置間に移動することと、前記幾つかの撮像シーケンスを実行することとを交互に行う
ように設定される前記移動可能な患者支持体を含む、請求項1に記載の磁気共鳴撮像システム。」とするものである。

2 本件補正の目的
(1)特許請求の範囲についての本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「前記操作項目の順列が、前記操作項目を実施する際の関係に関する情報を含む」点に関して,さらに「前記操作項目を実施する際の関係に関する情報が、実行されるべき操作項目に対し遂行されるべき条件を含む」と限定するもので,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を減縮することを目的とするものであるということができる。

(2)そうしてみると,特許請求の範囲についての本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的するものに該当するといえる。

3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか,すなわち,本件の特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願特許出願前に頒布された刊行物である,特開2003-210433号公報(以下,「引用例」という。)には,図面の図示と共に,次の事項が記載されている(下線は当審が付与したもの)。

(ア)「【請求項1】 医療撮像セッションを指示するGUI(118)であって、 撮像アプリケーションのワークフローを容易にするように構成された複数のモジュール化選択部(119)と、
複数のステータスインディケータ(181)であって、モジュール化選択部(119)と関係し、前記モジュール化選択部(119)の選択と前記モジュール化選択部(119)に関するタスクの完了のうちの少なくとも1つを表示するように構成された、当該ステータスインディケータ(181)の各々と、
前記撮像アプリケーションを関するメッセージを自動表示するように構成されたメッセージモジュール(116)を備えるGUI。

【請求項10】 MR撮像スキャンを指示するグラフィカルワークフロー管理ツールであって、前記ツールは医療撮像システム(10)のコンソール(16)上に視覚的に表示されるように構成されるGUI(118)を含み、 前記GUI(118)上に垂直方向に配列された複数の指示タブ(119)と、
複数のステータスインディケータ(181)であって、その各々が、対応する指示タブ(119)のアクティビティのステータスを表示するように構成された、当該インディケータ(181)と、
前記GUI(118)上に水平方向に配列された複数の特定コンテンツ向けタブ(152-158)を備えるツール。

【請求項25】 医療画像を獲得する方法であって、
アプリケーション開始インストラクションを受けとるステップと、
前記アプリケーションを開始するステップと、
受けとられたユーザ入力に基づいて複数の指示ステップを決定するステップと、 撮像セッションに対して指示するためのGUI(118)を表示するステップとを備え、
前記GUI(118)は、複数の指示ステップに対応する垂直方向に配列された複数のモジュール化タブ(119)を備える方法。」

(イ)「【0001】
【発明の背景】
本発明は一般的に、医療撮像データの獲得とグラフィカルユーザインターフェイスに関し、特に、医療撮像セッションの指示ワークフローを管理し、この管理されたワークフローに基づいて医療画像を獲得する方法と装置に関する。
【0002】
本発明は、医療撮像セッションに対する指示と獲得と後処理のワークフローの管理に関する。特に、本発明は、MR画像獲得を指示するときに役に立つ。…MR撮像セッションや実験に対する指示には、MR撮像データを獲得するために再生時のパルスシーケンスで利用されるパラメータと視覚化システムを設定することが含まれる。…
【0003】
…一般的に、これらのGUIは全スキャンパラメータを同時にユーザに提供するが、限定数の特定アプリケーション向けパラメータだけが利用され、これらのパラメータは論理的なクラスタにグループ化されてユーザに提供される。しかしながら、一般的には、一般化された論理的ワークフローを支援しない方法で、スキャンパラメータのクラスタはGUI上に提供される。さらに、これらの周知のシステムでは、1つのパラメータセットからその他のパラメータセットにユーザを論理的にガイドするメカニズムを提供することができないことが多い。…さらに、全スキャンパラメータが1つのウィンドーでユーザに提供されるので、ウィンドーは複雑であって一杯に詰め込まれていることが多いため、ユーザが困惑し、入力エラーが起こる可能性がある。…
【0004】
一般的に、これらのMRシステムのワークフローは、全スキャンパラメータとそれに関連するアプリケーションの特徴を1つのGUIの表現に提供することに限定される。その結果、GUIはアプリケーションに対する指示や獲得によってユーザを効果的にガイドするものではなく、アプリケーションの情報を提供せず、モジュール性がなく、ニーズに合致せず、MR実験に対する指示を出してMR画像を獲得するには不要な複雑さがある。
【0005】
従って、特定のMRアプリケーションに適用可能で、指示パラメータの表現が直感的で論理的なMR撮像セッションと実験に対する指示を行うワークフローを管理する方法と装置を設計することが望ましい。」

(ウ)「【0006】
本発明は、MR実験とMRデータ処理アプリケーションに対して指示し獲得する処理を合理化する方法と装置に関する。本アプリケーションは、個々のアプリケーションの各々に対して1つであってユニークになるように調整され作成されるグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を備えるガイドされたワークフローと直感的に認識されるモジュラーをさらに備える。GUIは、スクリーンの左上部でユーザのアクティビティが始まり、左から右に、また、トップからボトムに向かって移動するスクリーンを水平方向に進むという一般原理を認めるものである。GUIには複数のタブが組み込まれ、各タブは主要な指示、もしくは画像の後処理ステップに対応するものである。タブはオプションとしてスクリーンのトップに水平方向に配列することができるが、タブはスクリーンの左側に沿って垂直方向に配列され、アプリケーションワークフローをモジュラー化するために利用される。これらのタブは、アプリケーションに対する指示を行い、また、タブラベルを介して各ステップの目的に関する価値のある情報をユーザに提供するために必要なステップにユーザを導くものである。また、各タブに関連するアクティビティの状態、即ち、タブが選択されているかどうか、もしくは、関連のタスクが成功裏に完了したかどうかについて知らせる各タブに対応するステータスインディケータも提供される。また、GUIは、ユーザがスキャンアクティビティを素早く開始するために必要なコンポーネントのリストとユーザメッセージとスキャン情報を利用可能にするものである。また、GUIは、現在のアプリケーションの状態を知らせ、ユーザは、現在のアプリケーションがスキャン可能であるかどうかと、その他のアプリケーションが現在スキャン中であるかどうかと、スキャン時間とその他の重要なスキャン情報を調べることができる。
【0007】
従って、本発明の一態様によれば、GUIは、医療撮像セッションに対して指示し、医療画像を獲得し、撮像データを処理するために提供される。GUIは、医療撮像アプリケーションのワークフローを容易にするように構成された複数のモジュール化選択部を備える。また、複数のステータスインディケータも提供され、各ステータスインディケータはモジュール化選択部に対応し、モジュール化選択部での選択とモジュール化選択部に関連するタスクの完了のうちの少なくとも1つを表示するように構成される。GUIは、医療撮像アプリケーションに関するメッセージを自動的に表示するように構成されるメッセージモジュールをさらに備える。
【0008】
本発明のその他の態様によれば、グラフィカルワークフロー管理ツールは、撮像スキャンを指示するために提供される。ツールには、医療撮像システムのコンソールに視覚的に表示されるように構成されるGUIが含まれる。ツールには、GUI上に垂直方向に配列された複数の指示タブがさらに含まれる。また、複数のステータスインディケータがGUI上に提供され、各インディケータは対応する指示ステップのアクティビティのステータスを表示するように構成される。ツールには、選択されると特定コンテクスト向けユーザインターフェイスを表示するGUI上に水平方向に配列された複数のタブがさらに含まれる。…
【0009】
…コンピュータは、コンソール上にGUIを表示するようにさらにプログラムされるが、このGUIは、識別されたアプリケーションステップの数に等しい数のタブを備える。各タブは、ユーザによって実行される指示やスキャンなどの相互作用に対応するものである。また、コンピュータは、アプリケーションステップのステータスを表示するようにプログラムされる。また、コンピュータは、その他の指示コマンドを受けとり、その他のアプリケーションステップがそれを受けとったことに応じて画像を獲得するようにプログラムされる。
【0010】
本発明のさらに別の態様によれば、画像獲得方法が提供され、それには、アプリケーション開始インストラクションを受けとってアプリケーションを開始することが含まれる。本方法には、受けとったユーザ入力情報に基づいて複数の指示ステップを決定することがさらに含まれる。また、本方法には、撮像セッションを指示するGUIを表示することがさらに含まれる。GUIは複数のモジュール化タブを含むように構成され、各モジュール化タブは指示ステップを表すものである。」

(エ)「【0013】
【発明の実施の形態】
図1を参照すると、本発明を組み込んだ好適な核磁気共鳴撮像(MRI)システム10の主要なコンポーネントが示されている。本システムのオペレーションは、キーボードやその他の入力デバイス13と制御パネル14とディスプレイ16を備えるオペレータコンソール12から制御される。コンソール12は、画像を生成してスクリーン16に表示するようにオペレータが制御できる独立したコンピュータシステム20とリンク18を介して通信する。…コンピュータシステム20は、画像データとプログラムを記憶させるディスク記憶装置28とテープドライブ装置30に接続され、高速のシリアルリンク34を介して独立したシステム制御部32と通信する。…
【0014】
システム制御部32には、バックプレーン32aによって互いに接続された一連のモジュールが含まれている。これらには、シリアルリンク40を介してオペレータコンソール12に接続されるパルス生成モジュール38とCPUモジュール36が含まれる。システム制御部32は、実行されるスキャンシーケンスを示すコマンドをオペレータからリンク40を介して受けとる。パルス生成器モジュール38は、システムコンポーネントを動作させて、所望のスキャンシーケンスを実行し、生成されたRFパルスのタイミングと強度と波形と、データ獲得ウィンドーのタイミングと長さを示すデータを生成する。…

【0016】
RFコイル56によってピックアップされるMR信号はトランシーバモジュール58によってデジタイズされ、システム制御部32のメモリモジュール66に送られる。…これらの各々は、データにフーリエ変換を施して画像データアレイを生成するアレイプロセッサ68に入力される。この画像データは、シリアルリンク34を介してコンピュータシステム20に送られ、そこでディスク記憶装置28などのメモリに格納される。オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、この画像データをテープドライブ装置30などの長期記憶装置に保管することができる、即ち、画像プロセッサ22によってそれをさらに処理して、オペレータコンソール12に送り、ディスプレイ16に表示することができる。」

(オ)「【0017】
本発明は、医療撮像の実験とセッションのワークフローを規定する方法と装置に関する。本発明は、階層的なスキームを利用して、ワークフローの改善を容易にするものである。ワークフロー・ツールは、末梢血管の「最高の」アプリケーションと考えられる、MR撮像技術を利用する(PV)アプリケーションに関して説明される。…
【0018】
本発明では、アプリケーションワークフローの直観的な認識を深めることによってワークフローが改善され、アプリケーションがより柔軟となり、利用可能性が改善され、ユーザとの対話/ステップ数が減り、耐障害性が得られることになる。好適な一実施形態では、図1のコンソール16に表示されたアイコンを「ダブルクリック」することによってPVアプリケーションを起動することができる。PVアプリケーションを起動することによって、ユーザは、新しい検査を生成したり、既存のプロトコルを編集したり、患者情報を入力することができる。」

(カ)「【0022】
ここで、図4を参照すると、初期のセットアップウィンドーを備えるGUI118が示されている。まず、PVアプリケーションが起動するときか、もしくは、ユーザがタブアレイ119をモジュール化する「初期セットアップ(INITIAL SETUP)」タブ119(a)を選択する際にGUI118が表示される。このビューは、ユーザに「初期セットアップ」ウィンドー120を提供するものである。ウィンドー120によって、ユーザはPVアプリケーションのための初期セットアップを行うことができる。ユーザは、獲得環境121などの環境を確立することができる。獲得環境121には、コイル(COIL)122とステーション数(NUMBER OF STATIONS)124とトリガモード(TRIGGERUNG MODE)126が含まれる。コイル122に対応するものは、PVアレイなどのユーザがコイルを選択できるドロップダウンメニュー128である。ユーザは、フィールドボックス130にステーション数を入力して、フルオロトリガ(fluoro triggered)ラジアルボタン132かタイミングボーラス(TIMING BOLUS)ラジアルボタン134を選択することによって、トリガモード126を選択することができる。ユーザが3台よりも多いステーションの数を入力する場合は、GUI118は、アレイ119に対してさらにモジュール化する複数のタブを追加するように自動的に更新される。
【0023】
アレイ119には、初期セットアップに対応する「モジュール化」タブ119(a)を含むだけでなく、「ローカライザ(LOCALIZERS)」タブ119(b)と「ステーション1(STATION 1)」タブ119(c)と「ステーション2(STATION 2)」タブ119(d)と、「ステーション3(STATION 3)」タブ119(e)と、「概要(SUMMARY)」タブ119(f)と、「2Dフルオロ(2Dfluro)」タブ119(g)と、「ランオフ(RunOff)」タブ119(h)も含まれている。モジュール化タブアレイ119は、ウィンドー120の左側に沿って垂直に配置されている。タブ119(a)-(h)は、医療撮像スキャンセッションの各指示ステップに対応する。…タブは垂直に配置され、好適な一実施形態では、実行順に配置される。即ち、タブ119(a)-(h)は、医療撮像スキャンセッションの指示によってユーザをガイドするように論理的に配置される。…
【0024】
さらに、GUI118は、ユーザが画像処理環境(IMAGE PROCESSING SETTINGS)136を選択すること、例えば、適切な自動減算(AUTO-SUBTRACTION)138を見分けることをさらに容易にするものである。好適な一実施形態では、ユーザは、動脈-マスク(ARTERIAL-MASK)140と静脈-マスク(VENOUS-MASK)142と静脈-動脈(VENOUS-ARTERIAL)144のうちの1つを選択することができる。また、ユーザは、チェックボックス146を選択することによって投影画像を作成するか、もしくは、チェックボックス148を選択することによって画像を生成するかを指示することができる。GUI118には、「注(NOTES)」ボタン150がさらに含まれており、これをユーザが一旦選択すると、瞬間的な医療撮像スキャンセッションやプロトコルに関する注を入力するためのGUI、即ち、ウィンドーが現れる。また、「患者」ボタン152も提供されており、これをユーザが一旦アクティブにすると、患者に関する情報を表示することができる。…「ランドマーク」ボタン154を選択することによって、スキャン対象の適切な位置決めを容易にするように構成されるその他のウィンドー(不図示)が現れる。…

【0026】
領域110には、特定の指示に関する様々な情報を表示するRxマネージャ・インターフェイス170が含まれる。Rxマネージャ170には、「閲覧/編集(View/Edit)」タブ172と、「スキャン準備(PREPARE TO SCAN)」タブ174と、「プロトコルとしてRxの退避(SAVE Rx AS PROTOCOL)」タブ176と、「自動スキャン(AUTOSCAN)」タブ178と、「自動ステップ(AUTOSTEP)」タブ180が含まれる。タブ172-180によって、ユーザが選択したものの上に、対応する一つのウィンドーが表示されるので、ユーザは、選択したタスク、即ち、アクティビティを完了させることが容易になる。また、その他にも多数のステータスインディケータとタブが領域110に備えられているので、スキャンセッションのステータスに関する情報がユーザに提供される。

【0029】
「動脈-マスク」オプション140は、動脈のラン画像の獲得後に、マスクを使って一連の減算画像を自動生成すべきであることを示すものである。自動減算オプション138は、このアプリケーションを自動化して簡単化するように既存のシステムを改善したものであることに注目されたい。」

(キ)「【0030】
このアプリケーションのワークフローは以下のように機能する。ユーザは、スクリーン114の左側のタブ119によって持ってこられる一連のステップによって一つのアプリケーションをナビゲートする。PVアプリケーションのタブ119bの数と、多くのステップの数には1対1の関係がある。従って、この実施形態では、PVアプリケーションには、タブ119の数に対応する8つのステップがある。ユーザは、これらのタブ119によってトップからボトムまで移動することが好ましい。これは、このアプリケーションを遂行する好適な方法と期待されるが、ユーザは、ステップをどのような順番で遂行してもよい。…また、動脈と静脈のランを獲得するために、「ランオフ」ステップ(即ち、最終ステップ)前の7つの全ステップは成功裏に完了したに違いない。即ち、PVアプリケーションは、動脈/静脈獲得の最終ステップ前の全ステップを実行することが必要である。全ての前ステップを完了することなく、ディスエーブルにされた「スキャン」ボタン166と、「アプリケーションメッセージ」エリア116に表示されたメッセージを介して「ラン」を獲得しようとする場合には、ユーザにこの要件が通知される。
【0031】
ここで図5を参照すると、ユーザが「ローカライザ」タブ119(b)を選択したときのGUI118の様子が示されている。ウィンドー184はGUI118内に出現するので、ユーザは、(上述した「初期セットアップ」と定義される)各ステーションのローカライザのスキャンパラメータを見直したり変更することができる。図5は、システムがその他の一般のシリーズをスキャンすることでビジーである間に、ユーザがローカルなアプリケーションに対して「先行指示」することによって効果的にマルチタスク処理を行う方法を示す。ユーザは、患者名とIDを含むスクリーン上の「グローバル情報アクセス」エリアのボタン152をクリックすることによって「患者情報」を見ることができる。次に、ポップアップに基づく対話が、(以下で説明される)図6で示されるもとと同様のPVアプリケーションGUI118上に表示される。
【0032】
ウィンドー184によって、ユーザは各ステーションのスキャンパラメータを見直したり変更することができる。ユーザは、各ステーションでのFOV186とスライス厚(SLICE THICKNESS)188とスライス/フレーム(SLICE PER FRAME)190とスライス間隔(SLICE SPACING)192を調整することができる。また、ユーザは、FOV194の中心に関係するスキャンパラメータを見直して編集することができる。」

(ク)「【0045】
ここで図10を参照すると、各ステーションのための全マスク画像セットが得られた後で、ユーザは「概要」タブ119(f)に進むことができる。「概要」ウィンドー264の目的は、獲得順序を見直すオプションと動脈と静脈の画像の獲得時間をユーザに提供したり、動脈や静脈の相の獲得を「スキップ」したり、相数を変えることである。この全ては「ヒューマノイド」196の左に表示される情報パネル265によって達成される。
【0046】
ウィンドー264は、動脈と静脈の画像の獲得中に発生するように計画された全てをユーザに明確に示すものである。図示されたものには、色レベル(即ち、動脈には赤、静脈には青)を使って動脈と静脈を獲得したことを示す2つの列が含まれる。
【0047】
色レベルには、各シリーズのスキャン時間が含まれる。
【0048】
ボックスの次のチェックボックスによって、ユーザは獲得したものを選択したりスキップすることができる。従って、ステップをスキップするためには、ユーザは、特定の獲得したものに関連するチェックボックスを非チェックにするだけでよい。
【0049】
パネルは、獲得開始と、獲得のためにリストされた総時間を明確に示すものである。この数字は、選択された順序と、獲得されたものと獲得されなかったものに基づいて動的に更新される。」

(ケ)「【0053】
フルオロ獲得を指示した後で、ユーザは「ランオフ」タブ119(h)を選択して、撮像アプリケーションの最終ステップを完了させる。
【0054】
図12を参照すると、タブ119(h)が選択されるとウィンドー280が出現する。ウィンドー280から、ユーザは2つの方式のうちの一方で動脈と静脈の画像を獲得することができる。始めに、ユーザはリアルタイムのX線透視技術を利用して画像を獲得することができる。…この点で、ユーザは以下の項目の1つか両方かを行うか、もしくは、どの項目も行わない。
【0055】
A。「ROI」ボタン286を選択して、閲覧者284の注目画像エリアに注目領域(ROI)288を描く。このステップは、ユーザがボーラスの到達を視覚的に検出するときにも不要である。この特定のケースでは、ROIを利用し、それを画像に配置するとすぐにウィンドー280のトップの290が画素輝度情報で更新される。
【0056】
B。「獲得遅延(ACQUISITION DELAY)」テキストフィールド292に時間を手動入力する。これは、「自動トリガ」294が選択された場合になされる。このケースでは、ユーザはテキストフィールド292を0にするが、この0は、ユーザがスキャンを開始させるために「Go3D」や「スキャン」ボタン296を手動押下すべき旨をシステムに伝えるものである。
【0057】
X線透視後に、ユーザは、造影剤の本質的な注入を行うための「注射開始(START INJECTOR)」ボタン298を押すことによって注射器を起動することができる。「獲得遅延」292が0より大きな値である場合は、閲覧者はタイマーを起動し、「自動トリガ」294が選択された場合にそれが「獲得遅延」テキストフィールド292に表示された同じ値に達すると自動スキャンが実行される。ユーザは、造影剤が到達したことを検出するために、閲覧者の画像284とグラフ290を観察することができる。一旦造影剤が検出されると、それがスキャンの開始時刻となる。ユーザが、必要なインストラクション(即ち、息を止めなさい)を患者に与え、「スキャン」ボタン296を押下すると、動脈と静脈画像の獲得シーケンスが「概要」ステップで指定されたように発生する。…

【0060】
「注射開始」ボタン298を押すと、最大量の造影剤が患者に注入され、テキストフィールドの値と画像のタイマーのカウントダウンが始まるので、ユーザにとって視覚的なキュー/リマインダとして機能する。自動トリガ294が選択された場合は、テキストフィールドと画像の値はゼロになり、スキャナーは動脈と静脈の画像の獲得を自動的に開始する。…
【0061】
ユーザが動脈と静脈画像の獲得を終えた後で、ユーザは、各パラメータを再入力することなく、PVアプリケーションのこの特定の例を後で利用可能なプロトコルとして退避させることができる。これによって、将来利用可能なプロトコルのデータベースを構築することができる。プロトコルを退避させるために、ユーザはGUIの左側のRxマネージャ170内の「プロトコルとしてRxの退避」ボタン176を選択する。」

上記の記載事項(ア)?(ケ)と図面を総合すると,引用例には,以下の発明が記載されていると認められる。

「ディスプレイ(16)を備えたオペレータコンソール(12)と,
前記オペレータコンソール(12)に接続されたコンピュータシステム(20)と,
前記オペレータコンソール(12)に接続され,前記オペレータコンソール(12)から受け取ったMR撮像スキャンシーケンスを実行する,システム制御部(32)とを備えた,核磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)において,
医療撮像セッションを指示するグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)であって,医療撮像セッションの指示ワークフローを容易にするように構成されるとともに,前記オペレータコンソールの前記ディスプレイ(16)上に視覚的に表示されるように構成されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)を含み,
前記グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)は,医療撮像セッションの複数の指示ステップに対応して,垂直方向にその実行順に配列された複数のモジュール化タブ(119)を含むものである,
核磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)。」(以下,「引用発明」という。)

(2)補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比すると,その構造および機能からみて,引用発明の「核磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)」及び「前記オペレータコンソール(12)から受け取ったMR撮像スキャンシーケンスを実行する,システム制御部(32)」は,それぞれ,補正発明の「診断撮像システム」及び「前記診断撮像システムにより操作項目の実施を制御する制御システム」に相当する。
また,引用発明において,オペレータコンソール(12)はシステム制御部(32)に接続されるものであるから,引用発明の「前記オペレータコンソールの前記ディスプレイ(16)上に視覚的に表示されるように構成されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」は,補正発明の「操作項目の順列を発生させるスケジューラーモジュールを含む、前記制御システムに結合されるユーザインタフェース」と,「前記制御システムに結合されるユーザインタフェース」である点で共通する。

そうすると,両者は,次の点で一致し,以下の点で相違するといえる。

[一致点]
「診断撮像システムにおいて,
-前記診断撮像システムにより操作項目の実施を制御する制御システム,及び
-前記制御システムに結合されるユーザインタフェース
を有する診断撮像システム。」

[相違点]
補正発明の「ユーザインタフェース」が「操作項目の順列を発生させるスケジューラーモジュールを含む」ものであって,かつ,「前記操作項目の順列が、前記操作項目を実施する際の関係に関する情報を含」むとともに「前記操作項目を実施する際の関係に関する情報が、実行されるべき操作項目に対し遂行されるべき条件を含む」ものであるのに対して,引用発明の「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」についてはこれらの点が明らかではない点。

(3)相違点についての検討・判断
上記相違点について検討する。

まず,補正発明の上記相違点にかかる構成についてみるに,本願明細書には,「操作項目」及び「操作項目の順列」に関し,以下の記述がある(下線は当審が付与したもの)。

「【0006】
本発明の診断撮像モダリティは、この診断撮像モダリティの自動操作を大いにサポートするユーザインタフェースを備える。これを目的とするために、スケジューラーモジュールは、前記操作項目の順列を発生又は作成する。この制御システムは、診断撮像モダリティにより、操作項目の実施を制御する。これら操作項目は前記順列に基づいて実施される。この操作項目の順列は、連続の順序と、操作項目が実行される順序に従うタイミングとを含んでいる。操作項目間の如何なる関係、例えば次の操作項目が実施される前には完了した状態となるある操作項目の完了、又は操作項目が先行する操作項目の結果に依存して実施される正確な方法もこの順列に含まれる。特に、スケジューラーモジュールは様々な形式の操作項目の順列を発生させる。これら様々な形式は、診断撮像システムの異なる機能、例えばデータの取得、この取得したデータからの画像の復元を含む取得したデータの処理及び画像処理機能、ビュー機能、例えばディスプレイのレイアウトを設定する、患者取り扱い機能、及び患者情報を扱う、命令を発する、進捗を示す又は追加の情報を供給するようなユーザインタフェース機能に関連する。例えば上記追加の情報は、オペレータによる手動の介入が必要とされる場合、オペレータへの追加の情報又は命令を含んでいる。
【0007】
本発明は、磁気共鳴撮像システムに用いられる場合、特に有利である。前記操作項目は、例えば様々な画像取得シーケンス、関心領域(ROI)の計画、上記1つ又は幾つかの断面スライスである。操作項目は、造影剤を投与して(すなわちコントラスト強調MRアンギオグラフィにおいて)、(移動するベッドの撮像のように)検査すべき患者を移動することに関する。

【0010】
本発明の診断撮像システムの好ましい実施例において、スケジューラーモジュールは、実際のパラメタ設定に基づいて、操作項目の順列を形成するように設定される。操作項目のパラメタ設定は、操作項目の形式、操作項目が伴う活動、及びそれら活動が行われる方法を明記している。これらパラメタは、取得シーケンス、特に磁気共鳴信号を取得するパルスシーケンス、及びこのような取得シーケンスの幾つかの順序を規定するスキャンパラメタ形式でもよい。他のパラメタ形式は、ビュー機能、例えばディスプレイにより使用されるスクリーンレイアウトに関する。特に、このスクリーンレイアウトの設定は、検査の形式に依存している。さらに他のパラメタ形式は、ウィンドウ(windowing)及びズーム(zooming)の選択、又は最大若しくは最小値投影(MIP若しくはmIP)の利用のような画像処理にも関する。さらに他のパラメタ形式は、造影剤の位置特定及び注入のような患者を取り扱う様々な態様に関する。造影剤の注入に適当なパラメタは、例えば注入するのに最適なタイミングと同様に、造影剤の投与量及び注入速度である。さらに患者情報に関するデータが含まれてもよい。操作項目及びこれら操作項目のパラメタ設定の実施例は、取得シーケンスの形式、並びにRFパルス及び印加される一時的な勾配磁場の詳細及び順序であり、さらにSENSE又はSMASHのような並行撮像技術が磁気共鳴撮像に用いられる場合、アンダーサンプリング(undersampling)の度合いも適当なパラメタ設定である。特に、並行撮像が用いられる場合、他の適当な操作項目は、RF励起及び/又は特に表面コイル形式である受信コイルの組の選択及び位置特定である。他の操作項目は、追加の(表面)コイルの組と、用いられる他のコイル、例えば身体コイルとの電磁気的な整合に関する。操作項目の他の実施例は、RFコイル、特に使用される表面コイル形式、及びこれらコイルが位置特定される方法である。次の実施例は、検査すべき患者の位置特定に関し、これは、1つの位置における磁気共鳴画像のような診断画像を取得するために患者が位置特定される方法の詳細に関するが、様々な検査は、検査すべき患者の連続する位置特定における磁気共鳴画像の取得を含んでいる。磁気共鳴画像は、検査すべき患者が連続して移動している間に取得されてもよい。操作項目の他の実施例は造影剤の投与であり、この造影剤の投与の際に磁気共鳴信号を取得するのにどの取得シーケンスが用いられるかである。さらに、これら操作項目のパラメタは事前に設定されてもよいが、検査すべき患者の診断スキャンに基づいて設定されてもよい。本発明によれば、スケジューラーモジュールは、実際のパラメタ設定に基づく適当な順列でこれら操作項目を整列させる。スケジューラーモジュールは、実際のパラメタ設定に基づいて、できるだけ自律的にこの整列を行う。次いで、このスケジューラーモジュールは、実行されるべき検査の特定な要件を考慮して、オペレータが順列を編集することができる編集モードもサポートしている。故に、オペレータは、操作項目の選択が、含まれている実際のパラメタ設定に関して正しいことを確認するのに僅かな手間しか必要ない。その上、これら順列は、簡単且つ正確に復元される。さらに、この順列は、現在の順列の変化が容易に実施される柔軟性もサポートしている。
【0011】
他の好ましい実施例において、制御システムは、実施リストにおける操作項目に従って、診断撮像システムを稼動させる。前記スケジューラーは、順列により与えられる適当な順序で実施リストに操作項目を発して、診断撮像システムにより実行されるべき操作項目に対し、遂行されるべき条件も考慮している。例えば、このような条件は、取得シーケンスに対するROI(Region of interest)及び/又はFOV(Field of view)の実行されている幾何学的プランニングを含んでいる。他の実施例は、コントラスト強調撮像に対し取得する前に、造影剤が投与され、例えば問題になっているROIに到達していることが必要である。さらに他の遂行されるべき条件は、適当なRFコイルが正しく所定の位置に置かれたかである。本発明のこの態様に従い、特定の操作項目、例えば取得シーケンスの実施に対する特定の条件が遂行されたかのチェックに関し、オペレータは僅かしか又は全く関わらない。さらに一般的には、このような条件は、順列における以前の操作項目の正常な完了も含むので、オペレータは、操作項目が完了したか診断撮像システムをモニタリングする必要はなく、次の操作項目を稼動させる又は失敗した操作項目を繰り返すように手動で干渉する必要も無い。その上、本発明は、データ取得処理に焦点を合わさせるのではなく、取得したデータから復元される磁気共鳴画像のような得られる結果にオペレータがさらに焦点を合わせることを可能にする。従って、患者の処理量(スループット)が向上し、オペレータが検査すべき患者に対しさらに注意することができるように、ワークフローがさらに効率的になる。この改善された効率は、診断撮像手順の管理及び金銭的取り扱いにも適用される。
【0012】
興味のある実施例において、操作項目は、実際の取得シーケンスに次いで、これら取得シーケンスに対する幾何学的プランニングも含んでいる。この幾何学的プランニングは特に、取得シーケンスに対するFOVの大きさ及び位置の設定に関する。このプランニングした幾何学的形状に対し実行される磁気共鳴信号を入力するために、この実際の取得は、取得パルスシーケンスの実施に関する。幾つかの取得シーケンスが同じ幾何学的プランニングを共有してもよい。本発明の1つの態様によれば、幾何学的形状の共有は、取得シーケンスに対する属性として、前記共有する幾何学的プランニングを追加することにより、順列に含まれる。同じ幾何学的プランニングを持つ取得シーケンスは、これら取得シーケンスの少なくとも1つに対する幾何学的プランニングが一度行われると、実施リストと一緒に発せられる。故に、オペレータは、単に幾何学的プランニングを一度だけ実行する必要があり、同じ幾何学的形状を持つ残り取得シーケンスは、同じプランニングされた幾何学的形状を正確に自律的に始動する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明による診断撮像モダリティ1の概略的表示を示す。…制御システムは、実施リスト5に含まれる一連の操作項目に基づいて磁気共鳴撮像システムを動作させる。この実施リスト5は、磁気共鳴撮像システムのユーザインタフェース3の一部であるスケジューラーモジュール4により操作項目で満たされている。…ユーザインタフェースは、オペレータにスケジューラーモジュールのメモリから操作項目の順列を設定することを可能にする。実際に、操作項目の順列は、“検査カード”と呼ばれる。これら検査カードは、前記活動を適当な順序でリスト化し、検査すべき患者の診断撮像中に実行されるべき活動間において適当な関連性を含んでいる。

【0018】
前記検査カードに関するビューポート311は、メモリから検査カードを集めたものを利用可能にし、これらがリスト314に示される。アクティブである選択した検査カードの様々な操作項目が実行リスト5の表示部315に示される。これら検査カードは、例えばリスト314における選択したエントリーをマウスでクリックすることにより選択されてもよい。検査カードに関するビューポートの詳細は図3に示される。
【0019】
図3は、図2に示されるユーザインタフェースの詳細を示す。検査カードに関するビューポート311がさらに詳しく示されている。特に、実施リストの表示315は、例えば取得シーケンスのような実際の操作項目を示す。実際に、図3に示される状況では、サーベイスキャン及び2つのT1重み付きスキャンは終了し、他のT1重み付きスキャンが進行中である。実施リストの表示315から、T2重み付きサジタルスキャン(sagittal scan)、T1重み付きコロナルスキャン(coronal scan)及び他のT2重み付きサジタルスキャンが続くことが明らかである。実施リストにおけるこれら標識は、これら操作項目に対し、幾何学的プランニングが終了した又は利用可能であることを示す。さらに、スキャン特性情報も示される、つまり第1のT2重み付きサジタルスキャンはテーブルの移動を含み、T2重み付きサジタルスキャンは予想される高いSARを含んでいる。後続する操作項目は、比較を含むコントラスト強調アンギオスキャン(angio scan)、ROIにおけるコントラストボーラス(contrast bolus)の到達を判断するためのボーラストラック、及び実際のコントラスト強調取得を含む。これらは有効な幾何学的プランニングを持つ。最後に、幾何学的プランニングが未だ利用可能ではないT2重み付きTSEシーケンスが考えられる。」

このように,補正発明の「操作項目」は本願明細書において明確に定義づけられていないものの,上記記載事項(特に下線部参照。)における例示列挙を参酌すると,(1)制御システムによって磁気共鳴撮像システムを動作させる実際の取得シーケンス(実施リスト5)に加え,(2)実際の取得シーケンスの前に行われる,コイルの選択及び位置設定や取得シーケンスに対するROI(Region of interest)及び/又はFOV(Field of view)の実行されている幾何学的プランニングなどの事前環境設定,及び,コントラスト強調撮像の場合の造影剤の投与など事前準備,並びに,(3)実際の取得シーケンスの後に行われる,比較を含むコントラスト強調アンギオスキャン(angio scan)や実際のコントラスト強調取得などの画像処理を主とした事後操作を含む概念であるといえ,「操作項目の順列」とは,これら想定されうる「操作項目」のうちから実際の取得シーケンスのために必要とされる具体的な「操作項目」を選択した上で,適当な順序に整列させることを含むものであるといえる。そして,補正発明の「スケジューラーモジュール」は,「実際のパラメタ設定に基づいて、できるだけ自律的にこの整列を行う」ものであるが,同時に,「実行されるべき検査の特定な要件を考慮して、オペレータが順列を編集することができる編集モードもサポートしている」とされている。

これに対して,引用発明の「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」は,「医療撮像セッションの指示ワークフローを容易にするように構成される」ものであって「医療撮像セッションの複数の指示ステップに対応して,垂直方向にその実行順に配列された複数のモジュール化タブ(119)を含むものである」ところ,引用例の特に上記記載事項(カ)及び(キ)等の記載に照らし,「指示ステップ」には,補正発明の「操作項目」と同様に,コイルの選択やスキャン対象の位置決めなどの実際の医療撮像スキャンの前に行うべき事前環境設定,医療画像獲得のための当該事前設定に応じたMR撮像スキャンシーケンスの実行,医療画像獲得後に前記事前環境設定に応じて自動的に行われる画像処理が含まれるものであることは明らかである。また,MR撮像スキャンシーケンスには,引用例の上記記載事項(ク)の記載及び図10の図示に照らし,医療画像の獲得の順序及びタイミングが含まれることは明らかである。
そうすると,引用発明の「その実行順に配列された」「指示ステップ」及び「MR撮像スキャンシーケンス」は補正発明の「操作項目の順列」に相当するといえるか,あるいは少なくとも,補正発明の「操作項目の順列」は引用発明の「その実行順に配列された」「指示ステップ」又は「MR撮像スキャンシーケンス」を包含する概念であるといえる。

そして,引用例の上記記載事項(ア),(ウ)及び(カ)等の記載(特に【請求項25】及び【0022】の記載参照。)に照らし,「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」を表示するアプリケーションはその起動時等に「受けとられたユーザ入力に基づいて複数の指示ステップを決定」するものであって,その上で,当該「複数の指示ステップ」を「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」上に「垂直方向にその実行順に配列された複数のモジュール化タブ(119)」として「表示する」ものである。また,MR撮像スキャンシーケンスに関し,引用例の上記記載事項(ク)及び図10の図示に照らし,引用発明の「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」は,医療画像獲得の直前の指示ステップである「概要」ステップにおいてユーザによる確認・見直しのために,医療画像の獲得の順序及びタイミングを含むMR撮像スキャンシーケンスを表示するものであるといえる。
してみると,引用発明の「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」は,補正発明の「ユーザインタフェース」と,「操作項目の順列を発生させる」という点でも共通するといえる。

さらに,引用発明は,引用例の上記記載事項(キ)からみて,最終ステップである医療撮像スキャンを実行するためには「最終ステップ前の全ステップを実行することが必要である」とされ,その条件が満たされない場合には「『スキャン』ボタン166」が「ディスエーブルにされ」るとともに「ユーザに対して要件が通知される」ように構成されたものである。
すなわち,引用発明の「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」には,複数の指示ステップの相互の関係に関する情報が含まれるとともに,実行されるべき一の指示ステップ(最終ステップ)に対し遂行されていなければならない条件(その前の全ステップ)が含まれることは明らかである。

そうしてみると,補正発明と引用発明との上記相違点は,実質的には,「ユーザインタフェース」において「操作項目の順列を発生させる」という機能を果たすものが,補正発明においては「スケジューラーモジュール」として含まれるのに対して,引用発明ではモジュール化されているか定かではないという点に帰着する。

そこで,補正発明における「スケジューラーモジュール」の構成についてみるに,本願明細書には,以下の記述がある(下線は当審が付与したもの)。

「 【0013】
好ましくは、診断画像システムは、スキャンスケジュールを記憶するためにスケジューラーモジュールによりアクセス可能であるメモリを備える。これらスキャンスケジュールは、操作項目の順列を表す。これらスキャンスケジュールはメモリにおいて利用可能であるため、特にこれらスケジュールが前の診断撮像手順において正常だと判明した場合、これらは容易に取り出される。故に、オペレータは以前のスキャンスケジュールを再プログラミングする必要はない。例えば、正確には、同じスキャンスケジュールが連続する検査において同じ患者に繰り返し利用されることができる。有利なことに、メモリがブラウザを備えたデータベース形式で設けられるので、以前のスキャンスケジュールが容易に見つけられる。好ましくは、このデータベースは、このスキャンスケジュールが異なるユーザにより快適に共有されることができるように、データネットワークにより機能的にアクセス可能である。例えば、ユーザインタフェースは、RIS(radiology information system)を介して、操作項目の順列、すなわち上記操作項目の参照箇所を伝達するように作用する。故に、操作項目の順列は、診断撮像モダリティから離れて編集されることができる。患者が撮像の予約を入れるとき、必要とされる操作項目の順列は、予約の際に入力される患者の情報に基づいて実施リストに簡単にロードされる。」

これに対して,引用発明の「グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)(118)」においても,引用例の上記記載事項(カ)及び(ケ)(特に【0026】及び【0061】参照。)からみて,事前環境設定における各種パラメータ設定を「プロトコル」として退避し,「将来利用可能なプロトコルのデータベース」として構築するものであるから,「プロトコル」を保存するためのメモリをオペレータコンソール(12)又はオペレータコンソール(12)に接続されたコンピュータシステム(20)に備えるものであることは明らかである。

そうしてみると,補正発明における「スケジューラーモジュール」が,本願明細書等に照らしてみても,ソフトウェア的観点からどのようにモジュール化されているのか明らかになされておらず,機能的にまとまった部分を単にモジュールと表現しているに過ぎず,モジュール化は,例を挙げるまでもなく従前周知の事項であって,引用例における「メッセージモジュール(116)」といった記載に見られるように引用発明においても当業者には十分想定されることである。したがって,引用発明において上記の実質的な相違点における補正発明のような構成とすることは,当業者にとって格別の技術的困難性がなく,容易になし得る程度のことであるというべきである。

そして,本願明細書に記載された補正発明の効果も,当業者であれば予測し得る範囲内のものであり,格別顕著なものとはいえない。

(4)小括
したがって,補正発明は,引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上を総合すると,補正発明は,特許法第29条第2項の規定によって特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,却下すべきものである。


第3 本願発明に対する判断
1 本願発明の認定
以上のとおり,平成23年9月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?9に係る発明は,平成23年1月24日付けの誤訳訂正書により訂正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであると認められ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項1】
診断撮像システムにおいて、
-前記診断撮像システムにより操作項目の実施を制御する制御システム、及び
-操作項目の順列を発生させるスケジューラーモジュールを含む、前記制御システムに結合されるユーザインタフェース
を有し、 前記操作項目の順列が、前記操作項目を実施する際の関係に関する情報を含む、診断撮像システム。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願特許出願前に頒布された刊行物である引用例の記載事項は,前記「第2の3(1)引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。

3 判断
本願発明は,上記「第2の1 本件補正の内容」及び「第2の2 本件補正の目的」において検討したとおり,補正発明の一部限定を省略したもの,言い換えれば,補正発明は本願発明の構成要件をすべて含むものであるということができる。
しかるに,本願発明の構成要件をすべて含む補正発明が,上記「第2の3 独立特許要件」に記載した理由によって,許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから,本願発明についても同様の理由により,特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるといえる。


第4 結び
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-19 
結審通知日 2012-09-20 
審決日 2012-10-02 
出願番号 特願2006-536254(P2006-536254)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大▲瀬▼ 裕久  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
福田 聡
発明の名称 ユーザインタフェースを備える診断撮像システム  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  

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