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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1270091 |
審判番号 | 不服2011-19868 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-09-14 |
確定日 | 2013-02-13 |
事件の表示 | 特願2006-546467「未レンダリング色空間を経由してマッピングされる環境光ビデオ内容から導かれる環境光のためのちらつきのない適応閾値処理」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日国際公開、WO2005/069638、平成19年 8月 2日国内公表、特表2007-521774〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯と本願発明 1 手続の経緯 本願は、平成17年1月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2004年1月5日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月6日付けで拒絶理由の通知がされ、これに応答して同年4月8日付で手続補正がされ、その後、同年5月10日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月14日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 2 本願発明 特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年4月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 環境光源によってエミュレートされるべきビデオ内容を出力閾値処理を使って抽出および処理するための方法であって: [1]前記ビデオ内容の少なくとも一部をエンコードするビデオ信号から強度を含む色情報を抽出し、 [2]前記色情報を未レンダリング色空間に変換し、 [3]前記色情報を前記未レンダリング色空間から前記環境光源を駆動することを許容するように形成された第二のレンダリング色空間に変換し、 [4]前記色情報を閾値処理して、該色情報によって制御される前記環境光源のオン/オフの状態変化が前記強度がある閾値を通過したあとに開始されうるようにする、 ことを含み、 ステップ[2]および[3]がさらに、前記レンダリング色空間および第二のレンダリング色空間の原色からの、第一および第二の三刺激原色行列を使っての前記未レンダリング色空間への行列変換を含み、前記色情報の前記第二のレンダリング色空間への変換を、前記レンダリング色空間の前記原色と前記第一の三刺激行列と前記第二の三刺激行列の逆行列との行列乗算によって導出する、ことを含む、 方法。」 第2 引用発明 1 引用例の記載事項 原審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2001-343900号公報(以下、「引用例」という。)には、「照明システム及び照明制御データ作成方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0020】また、本発明の照明制御データを作成する方法は、画像表示デバイスに表示される画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを作成する方法であって、前記画像データは、複数の周辺領域を含み、前記方法は、前記複数の周辺領域のそれぞれの代表色を定義するステップと、前記画像表示デバイスの入出力特性に基づいて前記代表色を第1の輝度値に変換するステップと、前記第1の輝度値を第1の色彩量に変換するステップと、前記第1の色彩量を色相、明度および彩度を含む第1の色知覚量に変換するステップと、前記第1の色知覚量の色相、明度、彩度の少なくとも1つを補正することにより前記第1の色知覚量を第2の色知覚量に変換するステップと、前記第2の色知覚量を第2の色彩量に変換するステップと、前記第2の色彩量を第2の輝度値に変換するステップと、前記照明器具の入出力特性に基づいて、前記第2の輝度値を前記照明器具の調光信号に変換するステップとを包含し、これにより、上記課題が解決される。 【0021】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の照明システム1の構成を示す。照明システム1は画像表示デバイス100とともに使用される。 【0022】照明システム1は、映像信号401を受け取り画像データ411に変換する映像信号入力部18と、画像データ411に基づいて照明制御データ420を作成し、画像データ412と照明制御データ420を出力する演算部12と、照明制御データ420を受け取り、複数の照明器具201?206に入力する制御電圧430に変換する照明制御データ入力部5と、複数の照明器具201?206とを含む。 【0023】映像信号入力部18は、照明システム1の外部に設けられる映像再生装置110から提供される映像信号401を受信し、映像信号401を画像データ411に変換する。画像データ411は、演算部12に出力される。 【0024】映像信号入力部18は、例えば、ビデオキャプチャボードであり得る。映像再生装置110は、例えば、DVD-ROM再生装置やS-VHSビデオ再生装置であり得る。映像信号401は、例えば、S-VHS信号であり得る。映像再生装置110は、テレビ放送受信機や衛星放送受信機であってもよい。画像データ411および画像データ412は、例えば、Aviファイルの形式で表されるが、画像データの形式はこれに限定されない。 【0025】図2は、演算部12の構成を示す。演算部12は、CPU10と主メモリ16と補助記憶装置15とを含む。CPU10は、演算部12の全体を制御および監視するとともに、補助記憶装置15に格納されている照明制御データ作成プログラム17を実行する。主メモリ16は、画像データ411、画像データ412および照明制御データ420などのデータや照明制御データ作成プログラム17を実行するのに必要なデータを一時的に格納する。主メモリ16は、CPU10によってアクセスされる。」(第3頁第4欄第40行?第4頁第5欄第43行) (2)「【0040】図7は、照明制御データ作成プログラム17の処理手順を示す。照明制御データ作成プログラム17は、画像データの1フレーム毎に実行され、1フレームについて1個の照明制御データ420が作成される。以下、照明制御データ作成プログラム17の処理手順を各ステップ毎に説明する。 【0041】ステップS1:1フレーム分の画像データが主メモリ16(図2)に読み込まれる。画像データは、映像信号入力部18から直接主メモリ16に読みこまれてもよいし、一旦補助記憶装置に格納された画像データが主メモリ16に読みこまれてもよい。読みこまれた画像データは複数の周辺領域を含んでいる。複数の周辺領域の配置は、予め定められている。以下の処理手順の説明のために、画像データに含まれる周辺領域の1つを周辺領域Dとする。 【0042】ステップS2:周辺領域Dを代表する代表色が定義される。周辺領域Dは複数の画素を含み、それぞれの画素は3個の色要素R(赤)、G(緑)およびB(青)に割り当てられた3個のサブピクセルを含む。画像データには、これらのサブピクセルを所望の輝度レベルで発光させるための情報(画像情報)が含まれる。ある画素に含まれる3個の色要素R(赤)、G(緑)およびB(青)に割り当てられた3個のサブピクセルのそれぞれの輝度レベルをV_(R)、V_(G)およびV_(B)とする。輝度レベルV_(R)、V_(G)およびV_(B)は例えば、0?255の値により表されるが、これに限定されない。輝度レベルVRを周辺領域Dに含まれる全ての画素にわたって平均(単純平均)した値をV_(RM)とし、輝度レベルV_(G)を周辺領域Dに含まれる全ての画素にわたって平均した値をV_(GM)とし、輝度レベルV_(B)を周辺領域Dに含まれる全ての画素にわたって平均した値をV_(BM)とすると、周辺領域Dの代表色は、(V_(RM),V_(GM),V_(BM))と表される。 【0043】ステップS3:画像表示デバイスの入出力補正が行われる。すなわち、周辺領域Dの代表色(V_(RM),V_(GM),V_(BM))が、入出力補正後の輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))に変換される。この画像表示デバイスの入出力補正は、図8を参照して後述される。 【0044】ステップS4:画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))が、色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))に変換される。この変換は、以下の式(1)に示される関係式によって行われる。 【0045】 【数1】 【0046】ただし、M_(DIS)は画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列である。色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))は、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量である。」(第5頁第8欄第16行?第6頁第10欄第4行) (3)「【0052】 ・・・(略)・・・ ステップS8:色彩量(X_(C)’,Y_(C)’,Z_(C)’)が、周辺領域Dと対応付けられた照明器具の輝度値(L_(RM)’,L_(GM)’,L_(BM)’)に変換される。この変換は、以下の式(15)に示される関係式によって行われる。 【0053】 【数2】 【0054】ただし、M_(LAMP)は周辺領域Dと対応付けられた照明器具の特性に依存する3×3行列である。L_(RM)’、L_(GM)’およびL_(BM)’はそれぞれ、照明器具に含まれるR、GおよびBの色要素に割り当てられた蛍光管3R、3Gおよび3Bの発光する輝度値である。輝度値の単位は例えば[cd/cm2]である。 【0055】ステップS9:照明器具の入出力補正が行われる。すなわち、輝度値(L_(RM)’,L_(GM)’,L_(BM)’)が、調光信号(V_(RM)’,V_(GM)’,V_(BM)’)に変換される。V_(RM)’、V_(GM)’およびV_(BM)’のそれぞれは、照明器具に含まれる蛍光管3R、3Gおよび3Bをそれぞれ輝度値L_(RM)’、L_(GM)’およびL_(BM)’で発光させるために必要な入力レベルである。この照明器具の入出力補正は、図9を参照して後述される。 【0056】ステップS10:1フレーム分の画像データに含まれる全ての周辺領域についいて、ステップS2?S9の処理が完了したか否かが判定される。この判定がYesであれば1フレーム分の画像データに対する照明制御データの作成処理は終了する。照明制御データは、1フレーム分の画像データに含まれる全ての周辺領域についての調光信号の集合として定義される。上記の判定がNoであれば処理はステップS2に戻り、他の周辺領域について処理が行われる。 【0057】なお、図7に示される処理手順のステップS6で、色知覚量の補正を行わない場合、すなわちP_(H)=0、P_(L)=1、P_(C)=1の場合、ステップS4で求められた色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))と、ステップS7で求められる色彩量(X_(C)’,Y_(C)’,Z_(C)’)とは等しくなる。この場合、ステップS5?S7は省略可能である。」(第6頁第9欄第29行?第7頁第11欄第10行) (4)「【0067】上述された処理手順により照明制御データ420が生成される。照明制御データ420はさらに、スムージングとフィルタリングを施されてもよい。 ・・・(略)・・・ 【0069】フィルタリング処理は、照明制御データに含まれる予め定められたレベル以下の調光信号をカットする処理である。照明が点灯するか点灯しないかの境界の調光信号をカットすることにより、ちらつきを防止することができる。予め定められたレベルとは例えば、照明器具を最大の輝度値で点灯させるための調光信号の25%の値の調光信号のレベルである。」(第7頁第12欄第17?43行) 2 引用例に記載された事項 (1)画像表示デバイスに表示される画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを予め定められたレベル以下の信号をカットする処理により作成する方法 上記引用例の摘記事項(1)の段落【0020】には、「本発明の照明制御データを作成する方法は、画像表示デバイスに表示される画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを作成する方法」と記載されており、 同摘記事項(4)の段落【0067】および段落【0069】には、「照明制御データ420はさらに・・・フィルタリングを施されてもよい。・・・フィルタリング処理は、照明制御データに含まれる予め定められたレベル以下の調光信号をカットする処理である。」と記載されていることから、 引用例には、画像表示デバイスに表示される画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを予め定められたレベル以下の信号をカットする処理により作成する方法が開示されている。 (2)映像信号を受け取り画像データに変換し、1フレーム分の画像データから画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を抽出し 上記引用例の摘記事項(1)の段落【0022】?【0023】には、「映像信号401を受け取り画像データ411に変換する・・・画像データ411に基づいて照明制御データ420を作成し・・・出力する」と記載されており、 同摘記事項(2)の段落【0041】?【0043】には、「1フレーム分の画像データが主メモリに読み込まれる。・・・読み込まれた画像データは複数の周辺領域を含んでいる。・・・画像データに含まれる周辺領域の1つを周辺領域Dとする。・・・画像データには、・・・サブピクセルを所望の輝度レベルで発光させるための情報(画像情報)が含まれ・・・輝度レベルV_(R)、V_(G)およびV_(B)・・・を周辺領域Dに含まれる全ての画素にわたって平均(単純平均)した値をV_(RM)・・・V_(GM)・・・V_(BM)とすると、周辺領域Dの代表色は、(V_(RM),V_(GM),V_(BM))と表される。画像表示デバイスの入出力補正が行われ・・・周辺領域Dの代表色(V_(RM),V_(GM),V_(BM))が、入出力補正後の輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))に変換される。」と記載されていることから、 引用例には、映像信号を受け取り画像データに変換し、1フレーム分の画像データから画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を抽出していることが開示されているということができる。 (3)画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量に変換し 上記引用例の摘記事項(2)の段落【0044】および段落【0046】には、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))が、色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))に変換される。・・・色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))は、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量である。」と記載されていることから、 引用例には、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量に変換していることが開示されている。 (4)画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量から照明器具の輝度値に変換し 上記引用例の摘記事項(3)の段落【0057】には、「図7に示される処理手順のステップS6で、色知覚量の補正を行わない場合・・・ステップS5?S7は省略可能である。」と記載されているから、この場合には、同摘記事項(2)の段落【0044】および段落【0046】に記載されている「ステップS4:画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))が、色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))に変換される。・・・色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))は、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量である。」の処理手順のあとに、同摘記事項(3)の段落【0052】に記載されている「ステップS8:色彩量(X_(C)’,Y_(C)’,Z_(C)’)が、周辺領域Dと対応付けられた照明器具の輝度値(L_(RM)’,L_(GM)’,L_(BM)’)に変換される。」の処理手順が実行されるものであって、ステップS4の「色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))」は、当然、ステップS8の「色彩量(X_(C)’,Y_(C)’,Z_(C)’)」のことであると解される。 したがって、引用例には、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量から照明器具の輝度値に変換していることが開示されている。 (5)画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を変換し、予め定められたレベル以下の信号をカットする処理を行なって、照明器具を点灯するか点灯しないかの制御が行われうるようにする 上記引用例では、上記(4)のとおり、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を照明器具の輝度値に変換し、 その後、上記引用例の摘記事項(3)の段落【0055】?【0056】に記載されるように、「照明器具の入出力補正が行われる。すなわち、輝度値(L_(RM)’,L_(GM)’,L_(BM)’)が、調光信号(V_(RM)’,V_(GM)’,V_(BM)’)に変換される。・・・1フレーム分の画像データに含まれる全ての周辺領域についいて、ステップS2?S9の処理が完了したか否かが判定される。この判定がYesであれば1フレーム分の画像データに対する照明制御データの作成処理は終了する。照明制御データは、1フレーム分の画像データに含まれる全ての周辺領域についての調光信号の集合として定義される。」ものであって、 さらに、同摘記事項(4)の段落【0067】および段落【0069】には、「照明制御データ420はさらに・・・フィルタリングを施されてもよい。・・・フィルタリング処理は、照明制御データに含まれる予め定められたレベル以下の調光信号をカットする処理である。照明が点灯するか点灯しないかの境界の調光信号をカットすることにより、ちらつきを防止することができる。」と記載されている。 以上を要すれば、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を、照明器具の輝度値に変換し、調光信号に変換し、調光信号の集合から照明制御データを作成し、照明制御データに含まれる予め定められたレベル以下の調光信号をカットする処理を行なって、照明器具を点灯するか点灯しないかの制御が行われうるようにするものであることが記載されているということができる。 すると、引用例には、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を変換し予め定められたレベル以下の信号をカットする処理を行なって、照明器具を点灯するか点灯しないかの制御が行われうるようにすることが開示されている。 (6)画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値からの、画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列を使っての画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量への行列変換、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量からの、照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列を使っての照明器具の輝度値への行列変換を含み、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値の照明器具の輝度値への変換を、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列との演算、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との演算によって導出する、ことを含む 上記引用例の摘記事項(2)の段落【0044】?【0046】には、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))が、色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))に変換される。この変換は、以下の式(1)に示される関係式によって行われる。・・・ 【数1】 ・・・ただし、M_(DIS)は画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列である。色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))は、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量である。」と記載されているから、ここには、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値からの、画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列を使っての画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量への行列変換を含むことが開示されている。 また、同摘記事項(3)の段落【0052】?【0054】には、「色彩量(X_(C)’,Y_(C)’,Z_(C)’)が、周辺領域Dと対応付けられた照明器具の輝度値(L_(RM)’,L_(GM)’,L_(BM)’)に変換される。この変換は、以下の式(15)に示される関係式によって行われる。・・・ 【数2】 ・・・ただし、M_(LAMP)は周辺領域Dと対応付けられた照明器具の特性に依存する3×3行列である。」と記載されているから、ここには、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量からの、照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列を使っての照明器具の輝度値への行列変換を含むことが開示されている。 そして、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値から、照明器具の輝度値への変換を、まず、上記式(1)によって行い、さらに上記式(15)によって行っているから、ここには、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値から照明器具の輝度値への変換を、まず、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列の演算により画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量を求め、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列の演算によって照明器具の輝度値を導出する、ことを含むことが開示されている。 以上を踏まえると、上記(3)および(4)の処理手順について、引用例には、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値からの、画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列を使っての画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量への行列変換、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量からの、照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列を使っての照明器具の輝度値への行列変換を含み、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値の照明器具の輝度値への変換を、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列との演算、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との演算によって導出する、ことを含むことが開示されている。 3 引用発明 したがって、上記(1)?(6)によれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「画像表示デバイスに表示される画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを予め定められたレベル以下の信号をカットする処理により作成する方法であって [1]映像信号を受け取り画像データに変換し、1フレーム分の画像データから画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を抽出し、 [2]前記画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量に変換し、 [3]前記画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を前記画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量から照明器具の輝度値に変換し、 [4]前記画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を変換し、予め定められたレベル以下の信号をカットする処理を行なって、前記照明器具を点灯するか点灯しないかの制御が行われうるようにする、 ことを含み、 [2]および[3]の処理手順がさらに、前記画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値からの、画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列を使っての前記画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量への行列変換、および、前記画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量からの、照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列を使っての前記照明器具の輝度値への行列変換を含み、前記画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値の前記照明器具の輝度値への変換を、前記画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と前記画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列との演算、および、前記画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と前記照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との演算によって導出する、ことを含む、 方法。」 第3 対比 1 本願発明と引用発明の対比 (1)「環境光源によってエミュレートされるべきビデオ内容を出力閾値処理を使って抽出および処理するための方法」について 本願発明の「環境光源によってエミュレートされるべきビデオ内容を出力閾値処理を使って抽出および処理するための方法」は、環境光源の制御や駆動を行うことによって、ビデオ内容の光や色が再現されるようにするため、ビデオ内容を出力閾値処理を使って抽出および処理するための方法であると解されるところ、 引用発明の「画像表示デバイスに表示される画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを予め定められたレベル以下の信号をカットする処理により作成する方法」も、照明器具を制御することによって、画像表示デバイスに表示される画像データが照明器具と連動するように、予め定められたレベル以下の信号をカットする処理を用いて、画像データを処理する方法のことであって、 引用発明の「照明器具」は、本願発明の「環境光源」のことであり、 引用発明の「画像データ」は、本願発明の「ビデオ内容」のことであり、 引用発明の「予め定められたレベル以下の信号をカットする処理」は、ある閾値以下の信号の出力を抑制する処理であるから、本願発明の「出力閾値処理」のことであるということができ、 引用発明の「画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを作成する方法」とは、環境光源である照明器具を、ビデオ内容である画像データと連動させることにより、「環境光源」によって「ビデオ内容」の色を再現するための処理の方法であるから、本願発明の「環境光源によってエミュレートされるべきビデオ内容」を「抽出および処理するための方法」であるということができる。 以上より、引用発明の「画像表示デバイスに表示される画像データと連動させて照明器具を制御するための照明制御データを予め定められたレベル以下の信号をカットする処理により作成する方法」は、本願発明の「環境光源によってエミュレートされるべきビデオ内容を出力閾値処理を使って抽出および処理するための方法」と一致する。 (2)「ビデオ内容の少なくとも一部をエンコードするビデオ信号から強度を含む色情報を抽出」することについて 本願発明は、「ビデオ内容の少なくとも一部をエンコードするビデオ信号から強度を含む色情報を抽出」するものであるところ、 引用発明も、「映像信号を受け取り画像データに変換し、1フレーム分の画像データから画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を抽出」するものであって、 引用発明の「映像信号」は、通常のビデオ信号であり、当該技術分野の技術常識によれば、原画像内容が本来有している全情報量のうち、信号化可能な情報部分のみが映像信号とされているものであると理解されるから、本願発明の「ビデオ内容の少なくとも一部をエンコードするビデオ信号」と実質的に同じことということができ、 引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値」は、引用例の摘記事項(2)の段落【0042】に示されるように、赤、緑、青からなる色情報であり、各色についての強度である輝度値を含むものであるのだから、本願発明の「強度を含む色情報」と一致する。 以上より、引用発明の「映像信号を受け取り画像データに変換し、1フレーム分の画像データから画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を抽出」することとは、本願発明の「ビデオ内容の少なくとも一部をエンコードするビデオ信号から強度を含む色情報を抽出」することと一致する。 (3)「色情報を未レンダリング色空間に変換」することについて 本願発明は、「色情報を未レンダリング色空間に変換」するものであるところ、 引用発明は、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量に変換」するものであって、 引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値」は、上記(2)で検討したとおり、本願発明の「色情報」のことであり、 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量」は、X,Y,Zで示される、デバイスに依存しない色空間における値であり、本願発明の「未レンダリング色空間」も、本願明細書の段落【0055】に示されるように、標準的な色空間、すなわちデバイス固有でない色空間を表すものであって、X,Y,Zで示される値であるから、引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量」は、本願発明の「未レンダリング色空間」の値と実質的に同じものである。 すると、引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量に変換」することとは、本願発明の「色情報を未レンダリング色空間に変換」することと一致する。 (4)「色情報を未レンダリング色空間から環境光源を駆動することを許容するように形成された第二のレンダリング色空間に変換」することについて 本願発明は、「色情報を未レンダリング色空間から環境光源を駆動することを許容するように形成された第二のレンダリング色空間に変換」するものであるところ、 引用発明は、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量から照明器具の輝度値に変換」するものであって、 引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値」は、上記(2)で検討したとおり、本願発明の「色情報」のことであり、 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量」は、上記(3)で検討したとおり、本願発明の「未レンダリング色空間」の値のことであり、 引用発明の「照明器具の輝度値」は、環境光源である照明器具を制御する際に再現される色情報であり、引用例の摘記事項(3)の段落【0054】に示されるように、赤、緑、青からなる各色成分である輝度値によって表現される色空間の値となっているから、本願発明の「環境光源を駆動することを許容するように形成された第二のレンダリング色空間」の値と同じことである。 すると、引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量から照明器具の輝度値に変換」することとは、本願発明の「色情報を未レンダリング色空間から環境光源を駆動することを許容するように形成された第二のレンダリング色空間に変換」することと一致する。 (5)「色情報を閾値処理して、色情報によって制御される環境光源のオン/オフの状態変化が強度がある閾値を通過したあとに開始されうるようにする」ことについて 本願発明は、「色情報を閾値処理して、色情報によって制御される環境光源のオン/オフの状態変化が強度がある閾値を通過したあとに開始されうるようにする」ものであるところ、 引用発明も、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を変換し、予め定められたレベル以下の信号をカットする処理を行なって、照明器具を点灯するか点灯しないかの制御が行われうるようにする」ものであって、 引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値」は、上記(2)で検討したとおり、本願発明の「色情報」のことであり、 引用発明の「予め定められたレベル以下の信号をカットする処理を行なって、照明器具を点灯するか点灯しないかの制御」を行うことは、ある閾値以下の信号出力を抑制した上で、環境光源である照明器具を制御することであるから、本願発明の「閾値処理」して、「制御される環境光源のオン/オフの状態変化」が「ある閾値を通過したあとに開始」することであり、 引用発明の「照明器具」は、色情報によって制御される環境光源のことであるから、本願発明の「色情報によって制御される前記環境光源」のことであるということができる。 ここで、引用発明の処理は、同摘記事項(2)の段落【0055】や引用例の摘記事項(4)の段落【0069】に示されるように、「照明器具の輝度値」を「入出力補正」して「調光信号」が得られ、この「調光信号」に対して「定められたレベル以下の信号をカットする処理」が行われるものである。 一方、本願発明の処理も、本願明細書の段落【0051】や段落【0073】および図24に示されるように、RURマッピング変換で得られた「第二のレンダリング色空間」の値を「ガンマ補正」して「レンダリングされた出力」が得られ、この「レンダリングされた出力」に対して「閾値処理」が行われるものでもある。 そして、引用例に記載される「入出力補正」は、本願明細書に記載される「ガンマ補正」のことであり、引用例に記載される「調光信号」は、本願明細書に記載される「レンダリングされた出力」のことであり、引用発明の「信号」は、本願発明の「強度」のことであるから、 引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値を変換し、予め定められたレベル以下の信号をカットする処理を行なって、照明器具を点灯するか点灯しないかの制御が行われうるようにする」ことは、本願発明の「色情報を閾値処理して、色情報によって制御される環境光源のオン/オフの状態変化が強度がある閾値を通過したあとに開始されうるようにする」ことと一致する。 (6)「レンダリング色空間および第二のレンダリング色空間の原色からの、第一および第二の三刺激原色行列を使っての未レンダリング色空間への行列変換を含み、色情報の第二のレンダリング色空間への変換を、レンダリング色空間の原色と第一の三刺激行列との演算、および、第二の三刺激行列の逆行列との演算によって導出する」ことについて 本願発明は、「レンダリング色空間および第二のレンダリング色空間の原色からの、第一および第二の三刺激原色行列を使っての未レンダリング色空間への行列変換を含み、色情報の第二のレンダリング色空間への変換を、レンダリング色空間の原色と第一の三刺激行列と第二の三刺激行列の逆行列との行列乗算によって導出する」ものであるところ、 引用発明も、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値からの、画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列を使っての画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量への行列変換、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量からの、照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列を使っての照明器具の輝度値への行列変換を含み、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値の照明器具の輝度値への変換を、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列との演算、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との演算によって導出する」ものである。 ア 「第一の三刺激原色行列」について 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列」は、引用例の摘記事項(2)の段落【0044】?【0046】に示されるように、 画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))から、画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列(M_(DIS))を使って、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量(X_(C),Y_(C),Z_(C))への行列変換を行うものである。 これに対して、本願発明の「第一の三刺激原色行列」は、本願明細書の段落【0055】および図6に示されるように、 レンダリング色空間の原色(R,G,B)から、第一の三刺激原色行列(M_(1))を使って、未レンダリング色空間(X,Y,Z)への行列変換を行うものである。 そして、引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値」は、赤、緑、青の三原色からなる輝度値(L_(RM),L_(GM),L_(BM))であるから、本願発明の「レンダリング色空間の原色」(R,G,B)と同じことであり、 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量」(X_(C),Y_(C),Z_(C))は、上記(3)で検討したとおり、本願発明の「未レンダリング色空間」のことであり、 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列」は、人間の三刺激原色(赤、緑、青)に関する色空間を(X,Y,Z)で表される標準的な色彩空間へ変換するための行列であるから、本願発明の「第一の三刺激原色行列」と実質的に同じであるということができる。 イ 「第二の三刺激原色行列」について 引用発明の「照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列」は、引用例の摘記事項(3)の段落【0052】?【0054】に示されるように、 画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量(X_(C)',Y_(C)',Z_(C)')から、 照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列(M_(LAMP)^(-1))を使って、 照明器具の輝度値(L_(RM)',L_(GM)',L_(BM)')への行列変換を行うものである。 すると、「照明器具の特性に依存する3×3行列の行列」に関して、以下のように導かれることはごく自明なことであるといえる。 この場合、照明器具の輝度値(L_(RM)',L_(GM)',L_(BM)')から、照明器具の特性に依存する3×3行列の行列(M_(LAMP))を使って、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量(X_(C)',Y_(C)',Z_(C)')への行列変換を行うものである。 これに対して、本願発明の「第二の三刺激原色行列」は、本願明細書の段落【0055】および図7に示されるように、 第二のレンダリング色空間の原色(R',G',B')から、第二の三刺激原色行列(M_(2))を使って、未レンダリング色空間(X,Y,Z)への行列変換を行うものである。 そして、引用発明の「照明器具の輝度値」は、赤、緑、青の三原色からなる輝度値(L_(RM)',L_(GM)',L_(BM)')であるから、本願発明の「第二のレンダリング色空間の原色」(R',G',B')と同じことであり、 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量」(X_(C)',Y_(C)',Z_(C)')は、上記(3)で検討したとおり、本願発明の「未レンダリング色空間」のことであり、 引用発明の「照明器具の特性に依存する3×3行列の行列」は、人間の三刺激原色(赤、緑、青)に関する色空間を、X,Y,Zで表される標準的な色彩空間へ変換するための行列であるから、本願発明の「第二の三刺激原色行列」と実質的に同じであるということができる。 ウ 「色情報の第二のレンダリング色空間への変換」について 引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値の照明器具の輝度値への変換」は、上記アで示した式(1)、および上記イで示した式(15)を順次適用して演算するものであって、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列との演算、および、前記画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との演算によって導出する」ものである。 これに対して、本願発明の「色情報の第二のレンダリング色空間への変換」は、本願明細書の段落【0055】および図8に示されるように、 「レンダリング色空間の原色と第一の三刺激行列と第二の三刺激行列の逆行列との行列乗算によって導出する」ものである。 ここで、引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値」は、上記(2)や上記アで検討したとおり、本願発明の「色情報」あるいは「レンダリング色空間の原色」のことであり、 引用発明の「照明器具の輝度値」は、上記イで検討したとおり、本願発明の「第二のレンダリング色空間」の「原色」のことであり、 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列」は、上記アで検討したとおり、本願発明の「第一の三刺激行列」のことであり、 引用発明の「画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量」は、上記(3)で検討したとおり、本願発明の「未レンダリング色空間」のことであり、 引用発明の「照明器具の特性に依存する3×3行列の行列」は、上記イで検討したとおり、本願発明の「第二の三刺激行列」のことであるから、 引用発明の「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値の照明器具の輝度値への変換を、画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列との演算、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との演算によって導出する」点と、本願発明の「色情報の第二のレンダリング色空間への変換を、前記レンダリング色空間の前記原色と前記第一の三刺激行列と前記第二の三刺激行列の逆行列との行列乗算によって導出する」点とは、ともに、色情報の第二のレンダリング色空間への変換を、レンダリング色空間の原色と第一の三刺激原色行列との演算、および、第二の三刺激原色の逆行列との演算によって導出するといえる点で一致する。 しかしながら、引用発明は、「レンダリング色空間の原色と第一の三刺激行列と第二の三刺激行列の逆行列との行列乗算によって導出する」ものとはされていない点で相違する。 2 一致点および相違点 したがって、上記(1)?(6)から、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また相違している。 (一致点) 「環境光源によってエミュレートされるべきビデオ内容を出力閾値処理を使って抽出および処理するための方法であって [1]前記ビデオ内容の少なくとも一部をエンコードするビデオ信号から強度を含む色情報を抽出し、 [2]前記色情報を未レンダリング色空間に変換し、 [3]前記色情報を前記未レンダリング色空間から前記環境光源を駆動することを許容するように形成された第二のレンダリング色空間に変換し、 [4]前記色情報を閾値処理して、該色情報によって制御される前記環境光源のオン/オフの状態変化が前記強度がある閾値を通過したあとに開始されうるようにする、 ことを含み、 ステップ[2]および[3]がさらに、前記レンダリング色空間および第二のレンダリング色空間の原色からの、第一および第二の三刺激原色行列を使っての前記未レンダリング色空間への行列変換を含み、前記色情報の前記第二のレンダリング色空間への変換を、前記レンダリング色空間の前記原色と前記第一の三刺激行列との演算、および、前記第二の三刺激行列の逆行列との演算によって導出する、ことを含む、 方法。」 (相違点) ステップ[2]および[3]に関し、「前記色情報の前記第二のレンダリング色空間への変換を、前記レンダリング色空間の前記原色と前記第一の三刺激行列との演算、および、前記第二の三刺激行列の逆行列との演算によって導出する」ことが、本願発明では、「色情報の第二のレンダリング色空間への変換を、レンダリング色空間の原色と第一の三刺激行列と第二の三刺激行列の逆行列との行列乗算によって導出する」のに対し、引用発明では、そのように導出するとはされていない点。 第4 当審の判断 1 上記相違点についての検討 空間座標(R,G,B)に行列M_(1)を乗算して、空間座標(X,Y,Z)を求め、その空間座標(X,Y,Z)に行列M_(2)^(-1)を乗算して、別の空間座標(R',G',B')を求めることは、結果として、空間座標(R,G,B)にM_(2)^(-1)M_(1)の行列乗算して、別の空間座標(R',G',B')を求めていることと等しいことは、ごく自明なことでもあるから、 引用発明における「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列との演算、および、画像表示デバイスの特性に依存しない色彩量と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との演算によって導出する」ことを、「画像表示デバイスの入出力補正後の輝度値と画像表示デバイスの特性に依存する3×3行列と照明器具の特性に依存する3×3行列の逆行列との行列乗算によって導出する」ようにすることで、本願発明のように「レンダリング色空間の原色と第一の三刺激行列と第二の三刺激行列の逆行列との行列乗算によって導出する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 効果等 また、本願発明が奏する効果についても、いずれも引用発明および技術常識等から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。 3 むすび したがって、本願発明は引用発明、および技術常識等に基づいて容易に発明できたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、および技術常識等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-12 |
結審通知日 | 2012-09-18 |
審決日 | 2012-10-01 |
出願番号 | 特願2006-546467(P2006-546467) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 益戸 宏 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
猪瀬 隆広 松尾 淳一 |
発明の名称 | 未レンダリング色空間を経由してマッピングされる環境光ビデオ内容から導かれる環境光のためのちらつきのない適応閾値処理 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |