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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1270123
審判番号 不服2010-19303  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-26 
確定日 2013-02-12 
事件の表示 特願2007-504013「信頼性ネットワークからのユーザ注釈を一体化したサーチシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日国際公開、WO2005/089291、平成19年10月25日国内公表、特表2007-529822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年3月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年3月15日,米国、2004年10月28日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年9月4日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年3月12日付けで手続補正がなされたが、同年4月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、当審において、平成24年2月3日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年7月25日付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年8月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「ユーザ問合せに応答するための方法において、
問合せ応答モジュールによって、複数のユーザのうちの問合せユーザの装置により提示された問合せを受信するステップと、
問合せ応答モジュールによって、複数のドキュメントより成るコーパスをサーチして、1つ以上のヒットを識別するステップであって、各ヒットは、その問合せに関連していると判断されたコーパスにおけるドキュメントであるようなステップと、
信頼性ネットワークモジュールによって、友人リストを確立して、前記問合せユーザに対する信頼性ネットワークを構築するステップであって、前記信頼性ネットワークは、前記問合せユーザ以外の少なくとも1人のユーザを含む前記複数のユーザのサブセットをメンバーとして有するようなステップと、
ユーザ注釈モジュールによって、前記複数のユーザにより生成された注釈の記憶装置にアクセスするステップであって、各注釈は、前記複数のユーザのうちの生成ユーザに関連され、そして各注釈は、レーティングを含むユーザ特有のメタデータを含むようなステップと、
問合せ応答モジュールによって、少なくとも1つの注釈がマッチングする前記ドキュメントである各々のヒットを注釈付きヒットとして識別するステップであって、各マッチングする注釈の生成ユーザは、前記信頼性ネットワークのメンバーの1人であるようなステップと、
ユーザ注釈モジュールによって、各々の注釈付きヒットに対して、各々のマッチングする注釈からレーティングを抽出して、平均レーティングを計算するステップと、
問合せ応答モジュールによって、前記ヒットのリストを含むサーチレポートを発生するステップであって、前記注釈付きヒットの各々に対して、前記サーチレポートが、少なくとも1つのマッチングする注釈に関する情報を含み、前記注釈付きヒットの前記平均レーティングに少なくとも一部分基づいて、前記ヒットのリストの順序を決定するようなステップと、
ネットワークを介して前記サーチレポートを前記問合せユーザの装置へ送信するステップと、
を備えたコンピュータ・ソフトウェアによる情報処理方法。」

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-254886号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(以下の摘記中の下線は、当審において付与したものである。)

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は検索システムにおける検索結果コンテンツへの付加的情報の付加及び検索システムに関する。具体的には、ユーザが検索システムを利用して検索結果として得られたコンテンツに対して、その検索を行なったユーザ自身が任意のコメントを付加することが可能であり、また他のユーザが過去に付加したコメント及びその際に発生した種々の付加的情報(両者を一括してアノテーションという)を参照、またはそれ自体を検索することにより、効率的な検索を行ない得るシステムに関する。」

イ.「0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係る検索システムにおける検索結果コンテンツへの付加的情報の付加及び検索システムは、電子ネットワークを介してコンテンツを検索するコンテンツ検索手段と、コンテンツ検索手段による検索結果を表示する検索結果表示手段と、検索結果表示手段により表示されている検索結果のコンテンツにアクセスして表示するコンテンツ表示手段と、検索結果表示手段により表示されているコンテンツに付加的情報を付加する付加的情報入力手段と、付加的情報入力手段により入力された付加的情報を、それが付加されたコンテンツと関連付けて管理する付加的情報管理手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】このような本発明のシステムでは、コンテンツ検索手段により電子ネットワークを介してたとえば任意のキーワードでコンテンツが検索されて検索結果表示手段に表示され、コンテンツ表示手段によりその表示されている検索結果のコンテンツがアクセスされて表示される。そして、検索結果表示手段により表示されているコンテンツに付加的情報入力手段により付加的情報が付加され、それが付加されたコンテンツと関連付けて付加的情報管理手段により管理される。」

ウ.「【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る検索システムにおける検索結果コンテンツへの付加的情報の付加及び検索システムが適用されるクライアント・サーバ形式のシステム構成例を示すブロック図である。
【0027】図1に示されているように、このシステムはハードウェア的には、クライアント端末(CL) 100-1, 100-2, 100-3…100-n とデータベースサーバ(Sv) 200と他のサーバ(Sv) 210とがLAN(Local Area Network) 回線LANLにて接続されて構成されている。なお、 LAN回線LANLは更に外部の電子ネットワークNWを介してインターネットに接続している。
【0028】データベースサーバ200 には、各種コンテンツ及びそのコンテンツに付加されたアノテーション(後述する)が蓄積されると共に、それらのコンテンツ及びアノテーションの管理処理を行なっている。各クライアント端末100-1, 100-2, 100-3 …100-n では、ユーザがデータベースサーバ200 に蓄積管理されるコンテンツ及びアノテーションを利用すること(検索及びそれに伴う表示, 編集等)が可能になっている。
【0029】なお、以下の説明では、コンテンツはデータベースサーバ200 に蓄積されており、またアノテーションもデータベースサーバ200 に蓄積されるようになっているが、これはあくまでも一例であって、コンテンツはクライアント端末 100-1,100-2, 100-3…100-n が接続されている LAN回線LANLまたはこの LAN回線LANLが接続されているネットワークに接続されているデータベース, 個々の端末等に蓄積されていてもよいし、またアノテーションに関しても同様である。要は、コンテンツ及びアノテーション共にクライアント端末 100-1, 100-2, 100-3…100-nから検索可能であり且つアクセス可能であればどのような場所に蓄積されていてもよい。
【0030】他のサーバ210 は、当該システム内で、他の処理(他のシステム, ネットワークとの通信, プリント処理等)を行なうものである。
【0031】上述のように、クライアント・サーバ形式で構成されたシステム内に、本発明のシステムが構築される。それらシステムの機能的な構成例を図2の機能ブロック図に示す。
【0032】このシステムは、内部機構として、コンテンツ管理部110, アノテーション管理部130 及びパッケージ部140 を有している。これらの内部機構110, 130, 140は、図1におけるデータベースサーバ200 内に構築される。なお、コンテンツ管理部110 には、与えられた検索条件に従ってコンテンツを検索するコンテンツ検索部111 が、またアノテーション管理部130 には、与えられた検索条件に従ってアノテーションを検索するアノテーション検索部131 がそれぞれ備えられている。更に、このシステムはユーザインタフェイスとして、検索条件入力部150, アノテーション入力部160, コンテンツ表示部171 及び検索結果表示部172 を有している。これらのユーザインタフェイスは、図1における各クライアント端末100-1, 100-2, 100-3 …100-n 内に構築される。
【0033】検索条件入力部150 は、コンテンツ及びアノテーションを検索するための検索条件をユーザが各クライアント端末 100-1, 100-2, 100-3…100-n において入力するために備えられている。アノテーション入力部160 は、コンテンツに対する印象, 感想等を表すアノテーションをユーザがシステム内に入力するために各クライアント端末 100-1, 100-2, 100-3…100-n に備えられている。
【0034】コンテンツ管理部110 は、データベースに蓄積されたコンテンツを管理すると共に、ユーザにより検索条件入力部150 から入力された検索条件に従ってコンテンツ検索部111 によりコンテンツの検索を行なう。図3はこのコンテンツ管理部110 に備えられているコンテンツ管理テーブルの内容を示す模式図である。このコンテンツ管理テーブルには、たとえば図3に示されているように、コンテンツそれ自体を特定するコンテンツID (C1, C2, C3…), コンテンツを作成した者を特定する作成者ID (U1,U2,U3…), コンテンツのタイトル, コンテンツの作成日付(年月日時分秒), コンテンツ本体の格納ポインタ (本文ポインタ) の関係が記述されている。
【0035】アノテーション管理部130 は、たとえば図4に示されているようなコンテンツ-アノテーション関係管理テーブル,図5に示されているようなアノテーション管理テーブルを有している。【0036】図4に示されているコンテンツ-アノテーション関係管理テーブルには、各アノテーションを特定するアノテーションID (A11, A12, A13, A21…) と、そのアノテーションが付加されたコンテンツを特定するコンテンツID (C1, C2, C3…)との関係が記述されている。
【0037】図5に示されているアノテーション管理テーブルには、、アノテーションそれ自体を特定するアノテーションID (A11, A12, A13 …), アノテーションを登録した者を特定する登録者ID (U4,U5…), 個々のアノテーションが付加されたコンテンツのコンテンツID (C1, C1, C1…) とそれぞれのタイトル, アノテーションのタイトル,登録日付,アノテーションの本文との関係が記述されている。なお、「適/不適」は後述する(図8参照)アノテーション入力用の画面においてユーザが入力した「Good」または「No Good 」に対応している。
【0038】パッケージ部140 は、コンテンツ管理部110,アノテーション管理部130 から転送されたコンテンツ識別子, アノテーション識別子(タイトル)とに従って所定の形式 (たとえば、HTML形式)の表示データ (仮想パッケージ)を作成する。この表示データに基づいて、検索結果表示部172 が検索結果を表示し、その内容の表示が指示された場合にはコンテンツ管理部110,アノテーション管理部130 からコンテンツ, アノテーションの内容がコンテンツ表示部171 へ転送されて表示される。
【0039】上述のようなシステムでは、通常、各クライアント端末100-1, 100-2, 100-3…100-n においてデータベースサーバ200 に蓄積されたコンテンツをキーワードで検索して利用 (表示,編集等)する。その際、ユーザはそのコンテンツに対する印象や感想を表したアノテーションを入力することができる。たとえばクライアント端末の表示装置に検索結果のコンテンツが表示された状態で、ユーザがそのコンテンツに対してアノテーション (タイトル,本文(コメント))を入力すると、アノテーション入力部160 がその入力されたアノテーションをデータベースサーバ200 に格納すると共に、アノテーション管理部130 におけるアノテーション管理テーブル (図5参照)に当該アノテーションに関する情報が登録され、更にコンテンツ-アノテーション関係管理テーブル (図4参照)にアノテーションIDが当該コンテンツに対応するように登録される。
【0040】いまたとえば、ユーザが「テレビ」というキーワードでコンテンツの検索を行なったとすると、キーワード「テレビ」がそのユーザのクライアント端末の検索条件入力部150 から入力されてコンテンツ管理部110 のコンテンツ検索部111 に与えられる。そして、コンテンツ検索部111 により検索が行なわれ、その結果がコンテンツ表示部171 に表示される。この検索手順そのものは従来一般的なキーワードからコンテンツを検索する手順と基本的な相違はない。
【0041】あるキーワード(この場合は「テレビ」)を入力して検索を行なった場合、検索結果がユーザのクライアント端末のコンテンツ表示部171 に図6の模式図に示されているように表示される。この図6に示されている例では、「(1) 営業本部」,「(2) 半導体開発部」,「(3) ソフトウェア開発部」の各部門が管理している電子情報に「テレビ」をキーワードとしたコンテンツが存在することが示されている。従って、ユーザがこれらのいずれかを指定すれば、たとえばマウスでクリックすれば、当該コンテンツそのもの(ページ)が表示される。
【0042】たとえば、ユーザが「(2) 半導体開発本部」を見るためにそれをクリックして当該コンテンツを表示させると同時に、図7のフローチャートに示されているような手順で処理が行なわれ、図8の模式図に示されているようなアノテーションの入力画面が表示される。
【0043】図6に示す表示画面において、ユーザが上述のようなコンテンツを指定する操作を行なうとそれが検出され (ステップS21)、図8に示すような入力ウインドウが画面上に表示される (ステップS22)。そして、ユーザが、アノテーションの本文(コメント)を入力して所定の操作(たとえばOKボタンのクリック) を行なうと、その入力されたアノテーションが図6の画面に示されているコンテンツに付加されたアノテーションとしてデータベースサーバ200 へ転送される (ステップS23)。
【0044】なお、図8に示されているアノテーションの入力画面では、「Good」は検索結果のコンテンツに対してそのキーワードが適切と思われる場合に、「No Good 」は検索結果のコンテンツに対してそのキーワードが不適切と思われる場合にユーザがそれぞれ感じた場合に対応するチェックボックスをクリックする。このようなアノテーションを個々のコンテンツに付加しておくことにより、あるキーワードで検索された多数のコンテンツを更にそれに付加されている「Good」というアノテーションで検索して検索結果を絞り込めば、あまり有意義ではないコンテンツを振るい落とす(フィルタリング)することが可能になる。
【0045】また、コメントを入力したユーザの名前 (ユーザID, E-mailアドレス等を含む) をアノテーションとして個々のコンテンツに付加しておけば、あるキーワードで検索された多数のコンテンツを更にそれに付加されているユーザの名前というアノテーションで検索して検索結果を絞り込むことも可能になり、この場合には特定の人物の考え方等も窺い知ることが可能になる。あた、ユーザ自身のユーザ名 (ユーザID, E-mailアドレス等を含む) で検索すれば、メモ代わりに利用することが可能になる。更に、「ひとこと」のウィンドウはユーザがコメントを入力するために(審決注:原文の「たに」との記載は、「ために」の明らかな誤記であると認められる。)用意されており、単語または簡単な文章を感想として入力することが可能であり、これがアノテーションの本文に相当する。
【0046】データベースサーバ200 では、転送されてきたアノテーションをアノテーション管理部130 が図5に示されているアノテーション管理テーブルに登録する (ステップS24)。具体的には、アノテーションを特定するID (たとえば、コンテンツC1に付加されるアノテーションを表わすA11), 登録者U4,アノテーションが付加されたコンテンツのコンテンツID, 登録日付,アノテーション本文(コメント)がそれぞれ登録される。また、このアノテーションID (たとえば、A11)が、図4に示されているコンテンツ-アノテーション関係管理テーブルのコンテンツC1の項に登録されて関連付けられる。
【0047】以上のようにして、データベースサーバ200 には種々のコンテンツとそれに付加されたアノテーションとが相互に関連付けられて蓄積される。」

エ.「【0050】第2は、キーワードでコンテンツを検索する通常の利用方法に加えて、検索の結果により得られたコンテンツに付加されているアノテーションを更になんらかのキーワードで検索してその結果得られるアノテーションが付加されているコンテンツを抽出する。このような手法をとることにより、最初に得られたコンテンツが多過ぎるような場合に、ユーザ自身にとって適切と思われるキーワードでアノテーションを検索することにより、ユーザ自身が必要とするコンテンツを素早く見つけることが可能になる。
【0051】第3は、アノテーションそのものを適宜のキーワード、たとえばアノテーションを付加したユーザ名(ID), アノテーションが登録された日時, またはユーザが適当と思う言葉をキーワードとして検索し、対応するコンテンツを抽出することである。このような手法では、本来のコンテンツ自体には存在しないキーワードでコンテンツを検索することが可能になる。」

オ.「【0061】次に、コンテンツをあるキーワードで検索し、それに付加されているアノテーションを更にキーワードで検索する場合について説明する。
【0062】まず、従来同様の手法によりコンテンツの検索が行なわれる。いまたとえば「テレビ」というキーワードであるユーザが検索を行なったところ、図14の表示画面の模式図に示されているように、多数の検索結果が得られたとする。但し、図14に示されている例では1881個の検索結果が得られたが、実際の画面には5件の検索結果が表示されている。
【0063】このようにしてコンテンツの検索結果が表示される際に、本発明のシステムでは更にそれらの検索結果のコンテンツに付加されているアノテーションの検索を行なうためのコメント検索ボックスB2が図14に示されているように表示される。このコメント検索ボックスB2がクリックされるとアノテーション検索のためのキーワードを入力するためのボックスB3が表示されるので、それにキーワードを入力すると、検索結果のコンテンツの中から更に新たに入力されたキーワードに対応するアノテーションが付加されているものが検索される。図15はその検索結果を示す表示画面の模式図であり、この場合には「IWAYAMA 」をキーワードとしてアノテーション検索を行なった結果、二件が見つかったことが示されている。
【0064】このようなアノテーションの検索の具体的な手順を図16のフローチャートに示す。まず、ユーザがコンテンツを検索するためのキーワードをクライアント端末から入力する (ステップS61)。この入力されたコンテンツ検索のためのキーワードは検索条件入力部150 によりコンテンツ管理部110 へ送られてコンテンツ検索部111 が検索を実行する。 (ステップS62)。入力されたキーワードに対応するコンテンツが有った場合には (ステップS63 で”YES ”) 、そのコンテンツIDがパッケージ部140 によりパッケージ処理され (ステップS64)、表示データが検索結果表示部172 へ転送され (ステップS65)、図14に示されているように表示される。
【0065】更に、上述のようにユーザがアノテーション検索のためのキーワードを入力すると (ステップS66 で”YES ”) 、入力されたアノテーション検索のためのキーワードは検索条件入力部150 によりアノテーション管理部130 へ送られ、アノテーション検索部131 は上述の検索の結果既に得られているコンテンツに付加されているアノテーションIDに対応する個々のアノテーションをキーワードで検索する (ステップS67)。入力されたキーワードに対応するアノテーションが有った場合には (ステップS68 で”YES ”) 、それぞれの識別子をパッケージ部140 がパッケージ処理し (ステップS69)、所定の形式(たとえば、HTML形式)の表示データに変換して検索結果表示部172 へ転送し、図15に示されているように表示する(ステップS70)。また、実際のコンテンツ及びアノテーションの内容はその表示が指示されるとコンテンツ管理部110,アノテーション管理部130 からコンテンツ表示部171 へ転送されて表示される。」

上記ア.?オ.の記載及び関連する図面を参照すると、次のことがいえる。

(ア)上記ウ.の段落【0034】の「ユーザにより検索条件入力部150 から入力された検索条件に従ってコンテンツ検索部111 によりコンテンツの検索を行なう。」との記載から、引用例1には、「ユーザによる検索条件の入力に応答してコンテンツを検索するための方法」が開示されているといえる。

(イ)上記ウ.の段落【0027】に「このシステムはハードウェア的には、クライアント端末(CL) 100-1, 100-2, 100-3…100-n とデータベースサーバ(Sv) 200と他のサーバ(Sv) 210とがLAN(Local Area Network) 回線LANLにて接続されて構成されている。」と記載され、また、上記ウ.の段落【0033】に「検索条件入力部150 は、コンテンツ及びアノテーションを検索するための検索条件をユーザが各クライアント端末 100-1, 100-2, 100-3…100-n において入力するために備えられている。」と記載されている。
ここで、上記「クライアント端末(CL) 100-1, 100-2, 100-3…100-n 」を使用するのは、複数のユーザであると解されるから、上記ウ.の段落【0034】に記載される「ユーザにより検索条件入力部150 から入力された検索条件に従ってコンテンツ検索部111 によりコンテンツの検索を行なう。」との動作では、「コンテンツ検索部によって、複数のユーザのうちの、検索条件を入力するユーザのクライアント端末により入力された検索条件を受信するステップ」が遂行されると解される。

(ウ)上記ウ.の段落【0028】には「データベースサーバ200 には、各種コンテンツ・・・が蓄積される」と記載されており、該「データベースサーバ200 」に蓄積されるコンテンツは、複数であると解される。そして、引用例1のものは、その複数のコンテンツから、検索条件に合致すると判断されたものを、検索結果として出力するものであると解される。
よって、引用例1のものにおいては、「コンテンツ検索部によって、複数のコンテンツより成るデータベースを検索して、1つ以上の検索結果を得るステップであって、各検索結果は、前記検索条件に合致すると判断されたデータベースにおけるコンテンツであるようなステップ」が遂行されると解される。

(エ)上記ウ.の段落【0035】?【0037】の「アノテーション管理部130 は、・・・図5に示されているようなアノテーション管理テーブルを有している。・・・図5に示されているアノテーション管理テーブルには、・・・アノテーションを登録した者を特定する登録者ID (U4,U5…)・・・が記述されている。」との記載、上記ウ.の段落【0045】の「コメントを入力したユーザの名前 (ユーザID, E-mailアドレス等を含む) をアノテーションとして個々のコンテンツに付加しておけば、あるキーワードで検索された多数のコンテンツを更にそれに付加されているユーザの名前というアノテーションで検索して検索結果を絞り込むことも可能」との記載、上記エ.の段落【0050】の「検索の結果により得られたコンテンツに付加されているアノテーションを更になんらかのキーワードで検索してその結果得られるアノテーションが付加されているコンテンツを抽出する。」との記載、上記エ.の段落【0051】の「アノテーションを付加したユーザ名(ID)」との記載、及び、上記オ.の段落【0065】の「アノテーション検索部131 は上述の検索の結果既に得られているコンテンツに付加されているアノテーションIDに対応する個々のアノテーションをキーワードで検索する (ステップS67)。入力されたキーワードに対応するアノテーションが有った場合には (ステップS68 で”YES ”) 、それぞれの識別子をパッケージ部140 がパッケージ処理し (ステップS69)、所定の形式(たとえば、HTML形式)の表示データに変換して検索結果表示部172 へ転送し、図15に示されているように表示する(ステップS70)。」との記載、及び、図15において、絞り込まれた検索結果の一覧が表示されていることが見て取れることから、引用例1のものにおいては、「アノテーション検索部によって、複数のユーザにより付加されたアノテーションを検索するステップであって、各アノテーションは、前記複数のユーザのうちの付加ユーザに関連され、そして各アノテーションは、ユーザ特有のコメントを含むものであり、前記検索結果のコンテンツを前記アノテーションの付加ユーザで絞り込むようなステップ」及び「アノテーション検索部によって、絞り込まれた検索結果の一覧を発生するステップ」が遂行されると解される。

(オ)上記ウ.の段落【0027】の「このシステムはハードウェア的には、クライアント端末(CL) 100-1, 100-2, 100-3…100-n とデータベースサーバ(Sv) 200と他のサーバ(Sv) 210とがLAN(Local Area Network) 回線LANLにて接続されて構成されている。」との記載、及び、上記ウ.の段落【0032】の「このシステムはユーザインタフェイスとして、検索条件入力部150, アノテーション入力部160, コンテンツ表示部171 及び検索結果表示部172 を有している。これらのユーザインタフェイスは、図1における各クライアント端末100-1, 100-2, 100-3 …100-n 内に構築される。」との記載から、引用例1のものにおいては、「絞り込まれた検索結果の一覧を、LAN回線LANLを介して、検索条件を入力するユーザのクライアント端末へ送信するステップ」が遂行されると解される。

(カ)上記(イ)?(オ)の各ステップは、コンピュータ・ソフトウェアによって実現されるものであることは、当業者に自明である。

上記(ア)?(カ)の事項を踏まえると、引用例1には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「ユーザによる検索条件の入力に応答してコンテンツを検索するための方法において、
コンテンツ検索部によって、複数のユーザのうちの、検索条件を入力するユーザのクライアント端末により入力された検索条件を受信するステップと、
コンテンツ検索部によって、複数のコンテンツより成るデータベースを検索して、1つ以上の検索結果を得るステップであって、各検索結果は、前記検索条件に合致すると判断されたデータベースにおけるコンテンツであるようなステップと、
アノテーション検索部によって、前記複数のユーザにより付加されたアノテーションを検索するステップであって、各アノテーションは、前記複数のユーザのうちの付加ユーザに関連され、そして各アノテーションは、ユーザ特有のコメントを含むものであり、前記検索結果のコンテンツを前記アノテーションの付加ユーザで絞り込むようなステップと、
アノテーション検索部によって、絞り込まれた検索結果の一覧を発生するステップと、
前記絞り込まれた検索結果の一覧を、LAN回線LANLを介して、検索条件を入力するユーザのクライアント端末へ送信するステップと、
を備えたコンピュータ・ソフトウェアによる情報処理方法。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された「宇山 政志、他、『HARP:出会い、相互扶助、評判共有のためのハイパーアノーテーション・システム』、情報処理学会研究報告 Vol.96 No.69、96-GW-19、社団法人情報処理学会、1996年07月25日、第96巻 第69号、pp. 31?36.」(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(以下の摘記中の下線は、当審において付与したものである。)

カ.「本稿では、コンテンツに対して第三者が提供するコメント、評価、分類などの様々な情報のうち、元のコンテンツと双方向に関連づけて保管された情報をアノーテーションと呼ぶ。WWWの普及に伴い、アノーテーションの集積、管理、応用に再び関心が集まっている[2][3]。
アノーテーションを利用する既存のシステム[4][5][1]の多くは、アノーテーションを付与するために利用者の負荷の大きい特別な操作を必要とした。特に、不特定多数の読者が参加する場に対し、自分の興味、視点をコトバにして表明することは、心理的な負荷が大きく、強い動機と検討時間とを必要とする。
一方、平岩らのInfo-Plaza[6]では、カテゴリ化という日常の整理活動とアノーテーションの公開とを、連続的な操作として埋め込むことで、利用者の負荷を軽減している。HARPでは、「参照した」「保存した」「キイワードのタグをつけた」などの、利用者の「コトバになる以前の」日常的な活動をアノーテーションとして収集する。これにより、個人の興味を早い時点で集積し、企業組織全体の関心事にまで高めることができると考えた。
アノーテーションは元のコンテンツを補足拡充する。HARP-0は、コンテンツに対する印象や感想などを、そのコンテンツと関連づけて保管することで、以下の機能を実現した。
◆共助フィルタリング(collaborative filtering)
利用者のアクションは集計値表に集計される。集計値表から、個人の関心の対象・程度や、コンテンツのコミュニティ内での評判を推測することができる。コミュニティ内の評判を用いて、有用そうなコンテンツを事前に選別することができる[5][7]。HARP-0は、複数の手法を組み合わせたクリッピングサービスを提供する。以下の3つの手法の組み合わせにより、「今現在起こっていることを知りたい」「世間一般にホットな話題を知りたい」「自分の好みに合った情報を知りたい」といった利用者の多様な要求に応えることができる。
content-based filtering
コンテンツ中に現れる単語と.利用者が個人情報として定義したキイワード群との一致度に基づくフィルタリング
credibility-based filtering
利用者が個人情報として定義した「信頼できるユーザ」が推薦しているかどうかに基づくフィルタリング[4]
correlation-based filtering
今までの自分のアノーテーションと、他者のアノーテーションの傾向から、趣味傾向が良く似た未知の利用者を算出する相関係数計算に基づくフィルタリング[5]」(第33頁左欄第1行?右欄第20行)

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-250076号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(以下の摘記中の下線は、当審において付与したものである。)

キ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、個人が持つ知識やノウハウなどの情報を、組織内の複数の利用者で共有可能にする情報共有支援システムに関する。」

ク.「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る情報共有支援システムの構成例を示したものである。図1に示すように、公開する情報(公開情報)を蓄積する情報蓄積部1、情報蓄積部1に蓄積された個々の公開情報に対する評価の履歴を蓄積する評価蓄積部2、情報蓄積部1に蓄積する公開情報を登録・修正するための登録修正部3、情報蓄積部1に蓄積された公開情報を検索して利用者に提示するための検索提示部4、提示された公開情報に対する評価を入力するための評価入力部5、公開情報の登録・修正時に自動的に評価を生成する評価生成部6、評価蓄積部2に蓄積された評価情報の内容に基づいて利用者に対し評価の入力を要求するための評価要求部7とから構成される。
【0019】利用者は、公開した情報を登録修正部3を用いて公開情報として登録し、情報蓄積部1に蓄積された公開情報を利用したい場合には検索提示部4を用いて情報を検索する。利用者が評価入力部5を用いて入力した評価、および、評価生成部6で生成された評価は評価蓄積部2に蓄積される。【0020】登録修正部3、検索呈示部4、評価入力部5には、それぞれ、利用者と情報をやりとりするためのユーザインタフェースを具備している。例えば画面上のアイコンをマウス等で操作するGUI画面等が所定のディスプレイ装置に呈示するようになっている。
【0021】評価蓄積部2に蓄積された各公開情報の評価情報は、登録修正部3、検索提示部4、評価要求部7の各々の処理において利用される。図2は、公開情報蓄積部1に蓄積される公開情報の具体例を示したものである。図2に示すように、1単位の公開情報は、ID(識別子)、登録者、登録日、タイトルという属性もつ。これらの属性値はフィールド21?24のそれぞれに登録され、公開情報の内容そのものはフィールド25に登録される。公開情報の内容は、図2に示すようなテキストの他に、画像、動画、音声や、他の情報源へのリンクなどでも良い。
【0022】図3は、評価蓄積部2に蓄積される評価情報の具体例を示したものである。公開情報の評価の次元とは、情報の有用性、正当性、新規性、永続性、詳細度、適用範囲の広さ、娯楽性、分り易さ、など別個独立した(あるいは関連し合うものであっても良いが)尺度、評価軸をもつ評価基準である。
【0023】本発明では、これらの次元各々について適切な評価が、十分に多くの利用者から得られた状態を、公開情報が精確に評価された状態と考え、このような精確な評価を、大量の公開情報の各々について得ることを目的とする。
【0024】図3に示すように、1つの評価情報は、評価対象の公開情報のID、評価日時、評価者といった属性をもつ。その各属性値はフィールド31?33のそれぞれに登録され、当該評価対象の公開情報に対する評価内容はフィールド34に各次元別に登録される。
【0025】例えば、評価情報36では、ID「#04920」の公開情報に対して、その評価情報36の登録日時がフィールド32に登録され、評価者がフィールド33に登録され、評価内容がフィールド34に登録されている。
【0026】また、評価情報35の評価者を登録するフィールド33には、「SYSTEM」と登録されているが、この場合、この評価情報35は、図1の評価生成部6が自動的に生成した評価情報であることを示す。
【0027】さらに、評価情報35のフィールド33に登録されている評価者が「aoki*」と「*」という記号が付されているが、この場合、評価情報36は、「aoki」という評価者が、ID「#4920」の公開情報の登録者であり、この評価情報35は、登録者自身が入力した評価であることを表すこととする。
【0028】「有用性」「正当性」などの評価の次元は、本実施形態では「1」から「-1」までの数値で表し、数値が大きいほど評価が大きいこととする。また、評価が入力あるいは生成されていない次元の項目には、例えば「-」なる記号が登録されている。
【0029】本実施形態では、後述する図7のような評価入力部5にて表示される評価入力画面を用いて、全ての次元の評価を任意の利用者が任意の時点で入力できるようにしているが、大量の公開情報の各々に対して、利用者が逐一詳細な評価を入力する作業には、多大な労力がかかる。この問題を解決するために、本発明では、情報の評価を段階的に精確にしていくために必要な入力のみを利用者に要求するという方法を採る。その処理の流れを、図4に示すフローチャートを参照して説明する。」

ケ.「【0030】図4は、図1の情報共有支援システムの処理動作を説明するためのフローチャートである。利用者がシステムに対して行なう処理要求には、大きく分けて、情報の新規登録・修正と、情報の検索・利用がある。図4のステップS1?S7は、情報の新規登録・修正に関わる処理であり、ステップS10?S21は、情報の検索・利用に関わる処理である。
・・・(中略)・・・
【0044】次に、図4のステップS10?S21の処理は、情報を利用する利用者から評価を集めていく処理である。利用者からの情報の検索要求があった場合には(ステップS10)、検索提示部4にて利用者が要求する検索の条件で検索を実行する(ステップS11)。図8は、検索提示部4にて提示される検索要求画面の一例を示したもので、「質問」という入力フィールド81に利用者が所望の質問文を入力することにより、その意図に合った公開情報を検索する場合を示している。本実施形態では、自然言語による検索要求を解釈して、その意図に合った情報を検索するという方法をとっているが、この方法は従来技術に属するものであるし、また、この検索方法以外にも、たとえば、キーワードの論理式を検索条件とする検索方法であってもよい。情報の検索方法自体に関しては、本発明は限定しない。
【0045】図8の検索要求画面には、さらに、検索される公開情報の提示順序を指定するフィールド82も設けられている。例えば、「新規性」「詳細度」「娯楽性」「分かり易さ」等の評価の次元のそれぞれに対し評価値の高低を指定し、その指定した次元の評価値の高い公開情報を優先して提示するよう指示することもできる。
【0046】検索を実行した結果、情報が検索できた場合には(ステップS12)、検索された複数の公開情報の各々について、今まで入力された評価情報から当該公開情報の総合評価を計算し(ステップS13)、その計算結果に基づいた提示方法で公開情報を利用者に提示する(ステップS14)。
【0047】ステップS13における総合評価の計算は、例えば、公開情報の提示時に利用者が指定した評価の次元、すなわち、利用者がどういう次元の評価の大きい情報を要求したかに応じて計算する。利用者は図8に示した検索要求画面のフィールド82に、例えば、「新規性」が大きい(新しい)情報、「詳細度」がやや大きい(やや詳しい)情報を優先して提示するよう指定することができる。利用者が評価の次元を指定しない場合には、たとえば、デフォルトとして「有用性」の次元を選んでその大きさに基づいて(最も値の大きいものから順に)提示順を決定してもよいし、過去に利用者が頻繁に指定した次元に基づいてもよい。
【0048】ステップ13において、個々の公開情報について指定された次元での総合評価を計算する方法の1つは、評価情報中、対象とする公開情報についての評価の各々の値に重みをつけて平均をとるという方法である。その計算式を下記に示す。
【0049】
【数1】
(略)
【0050】wi は、評価の各次元に対する重みで、たとえば、図8に示したように、提示順の優先度が、次元「新規性」を次元「詳細度」より優先して提示するよう利用者から指定されている場合には、次元「新規性」に対する重みのほうを大きくして計算する。
【0051】uj は、評価者の種類に対する重みで、情報の登録者、利用者自身、システムの各々による評価のうち、誰の評価を重要とみなすかを意味する。たとえば、登録者自身が入力した評価は精確であるとみなす場合には、登録者の評価に対する重みを大きくし、逆に、システムが自動的に生成した評価は信頼性が低いとみなす場合には、システムの評価に対する重みを小さくする。また、利用者自身か過去に行なった評価に配慮した提示を行ないたい場合には、利用者の評価に対する重みを重くする。これにより、たとえば、過去に利用者が「役立たない(有用性が小)」と評価した情報の総合評価の値が小さくなるよう計算し、結果として、この情報を再度提示しないようにすることが可能となる。
【0052】このようにして、評価の次元や評価者の種類に対する重みを考慮して計算した個々の情報の総合評価は、ステップS14にて、情報の提示の順序付けや、提示件数の足切りなどに用いる。すなわち、総合評価の値が大きい情報が先頭になるよう順序付けて提示したり、総合評価が小さい情報は提示しないようにする、などである。
【0053】このように順序付けされた検索結果は、例えば、図8の検索結果提示フィールド83に提示される。図8の検索結果提示フィールド83には、検索された個々の公開情報の新規性、詳細度の総合評価Ei を求めて、その各値を各次元に対応させて提示し、かつ、新規性の総合評価と詳細度の総合評価を重み付けして加算した値が大きい順に、各公開情報を並べて提示されている。
【0054】図9に検索結果提示フィールド83の検索結果の他の提示例を示す。図9(a)では、評価の計算結果を、より視覚的に分りやすいように、例えば、「新しい!」「ちょっと詳しい」「注意!古い」といった表記のあるマーク86?88にて表し、利用者が必要な情報をすぐに見つけることができるようにしている。また、図9(b)では、評価の全ての次元をグラフにして表示した例である。これによれば、利用者は、情報の評価の詳細を把握することが可能となる。図9(c)は、図9(b)の評価の表示を単純にしたものであるが、この方法を用いても、図9(b)と同様、情報の評価の大きさが多角形の面積としてすぐに把握できるという利点がある。」

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用例1記載の発明における「ユーザによる検索条件の入力」は、本願発明における「ユーザ問合せ」に相当する事項である。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、「ユーザ問合せに応答するための方法」に係るものであるといえる。

イ.引用例1記載の発明における「検索条件を入力するユーザのクライアント端末」、「入力された検索条件」は、それぞれ、本願発明における「問合せユーザの装置」、「提示された問合せ」に相当する。
よって、引用例1記載の発明における「複数のユーザのうちの、検索条件を入力するユーザのクライアント端末により入力された検索条件を受信するステップ」は、本願発明における「複数のユーザのうちの問合せユーザの装置により提示された問合せを受信するステップ」に相当するステップであり、引用例1記載の発明における「コンテンツ検索部」の、前記ステップを遂行する機能部分は、本願発明における「問合せ応答モジュール」に相当するといえる。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、「問合せ応答モジュールによって、複数のユーザのうちの問合せユーザの装置により提示された問合せを受信するステップ」を備えるものであるといえる。

ウ.引用例1のものは、その段落【0008】に、「【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のインターネット上の電子的な情報資源を検索する際には、WWW のような構造化されたドキュメントを対象とする場合、・・・」と記載されているように、「各種コンテンツ」として「ドキュメント」を含むものであることを前提としている。
ここで、「コンテンツ」が「ドキュメント」である場合、データベース化したコンテンツの集まりは、「コーパス」と呼べるものである。
そして、引用例1記載の発明において、「検索して、1つ以上の検索結果を得る」こと、及び「各検索結果は、前記検索条件に合致すると判断されたデータベースにおけるコンテンツである」ことは、それぞれ、本願発明において、「サーチして、1つ以上のヒットを識別する」こと、及び「各ヒットは、その問合せに関連していると判断されたコーパスにおけるドキュメントである」ことに相当する事項であるといえる。
よって、引用例1記載の発明における「複数のコンテンツより成るデータベースを検索して、1つ以上の検索結果を得るステップであって、各検索結果は、前記検索条件に合致すると判断されたデータベースにおけるコンテンツであるようなステップ」は、本願発明における「複数のドキュメントより成るコーパスをサーチして、1つ以上のヒットを識別するステップであって、各ヒットは、その問合せに関連していると判断されたコーパスにおけるドキュメントであるようなステップ」に相当するステップであり、引用例1記載の発明における「コンテンツ検索部」の、前記ステップを遂行する機能部分も、本願発明における「問合せ応答モジュール」に相当するといえる。

エ.引用例1記載の発明における「アノテーション検索部によって、複数のユーザにより付加されたアノテーションを検索するステップであって、各アノテーションは、前記複数のユーザのうちの付加ユーザに関連され、そして各アノテーションは、ユーザ特有のコメントを含むものであり、前記検索結果のコンテンツを前記アノテーションの付加ユーザで絞り込むようなステップ」において、まず、「アノテーション」をどのようにして「付加」するかについて、引用例1の段落【0045】には、「ユーザがコメントを入力する」との記載がなされており、ここで、「入力する」ことは「生成する」ことに他ならないから、引用例1記載の発明における「複数のユーザにより付加されたアノテーション」は、本願発明における「複数のユーザにより生成された注釈」に相当するものである。
そして、引用例1の段落【0029】に、「なお、以下の説明では、コンテンツはデータベースサーバ200 に蓄積されており、またアノテーションもデータベースサーバ200 に蓄積されるようになっているが、これはあくまでも一例であって、コンテンツはクライアント端末 100-1,100-2, 100-3…100-n が接続されている LAN回線LANLまたはこの LAN回線LANLが接続されているネットワークに接続されているデータベース, 個々の端末等に蓄積されていてもよいし、またアノテーションに関しても同様である。要は、コンテンツ及びアノテーション共にクライアント端末 100-1, 100-2, 100-3…100-nから検索可能であり且つアクセス可能であればどのような場所に蓄積されていてもよい。」と記載されているように、前記「複数のユーザにより付加されたアノテーション」は、「アクセス可能」なデータベースサーバ等の蓄積場所に蓄積されているものであり、その蓄積場所は、本願発明における「記憶装置」に相当するものである。
ここで、引用例1記載の発明において、「アノテーション検索部によって、複数のユーザにより付加されたアノテーションを検索する」にあたり、当然、該「アノテーション(注釈)」の蓄積場所(記憶装置)にアクセスすると解される。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、「複数のユーザにより生成された注釈の記憶装置にアクセスするステップ」を備えるものであるといえ、引用例1記載の発明における「アノテーション検索部」の、前記ステップを遂行する機能部分は、本願発明における「ユーザ注釈モジュール」に相当するといえる。
また、引用例1記載の発明における「付加ユーザ」、「ユーザ特有のコメント」は、それぞれ、本願発明における「生成ユーザ」、「ユーザ特有のメタデータ」に相当する。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、「ユーザ注釈モジュールによって、複数のユーザにより生成された注釈の記憶装置にアクセスするステップであって、各注釈は、前記複数のユーザのうちの生成ユーザに関連され、そして各注釈は、ユーザ特有のメタデータを含むようなステップ」を備える点において、共通するものである。

オ.次に、引用例1記載の発明における「アノテーション検索部によって、複数のユーザにより付加されたアノテーションを検索するステップであって、各アノテーションは、前記複数のユーザのうちの付加ユーザに関連され、そして各アノテーションは、ユーザ特有のコメントを含むものであり、前記検索結果のコンテンツを前記アノテーションの付加ユーザで絞り込むようなステップ」において、「検索結果のコンテンツをアノテーションの付加ユーザで絞り込む」という動作は、引用例1の段落【0063】に「図15はその検索結果を示す表示画面の模式図であり、この場合には『IWAYAMA』をキーワードとしてアノテーション検索を行なった結果、二件が見つかったことが示されている。」と記載されている図15の具体例では、1881個のコンテンツ検索結果のうち、「IWAYAMA」のコメント(アノテーション)が付加された2個のコンテンツがマッチングしてアノテーション付き検索結果として識別されるという動作を表しており、「少なくとも1つのアノテーションがマッチングするコンテンツである各々の検索結果をアノテーション付き検索結果として識別する」動作を表しているといえる。
そして、引用例1記載の発明における「アノテーション」、「コンテンツ」、「検索結果」、「アノテーション付き検索結果」は、それぞれ、本願発明における「注釈」、「ドキュメント」、「ヒット」、「注釈付きヒット」に相当するから、引用例1記載の発明における「アノテーション検索部」の、上記のような動作を遂行する機能部分は、本願発明における「問合せ応答モジュール」の、「少なくとも1つの注釈がマッチングするドキュメントである各々のヒットを注釈付きヒットとして識別する」動作を遂行する機能部分に相当するといえる。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、「問合せ応答モジュールによって、少なくとも1つの注釈がマッチングするドキュメントである各々のヒットを注釈付きヒットとして識別するステップ」を備える点において、共通するものである。

カ.引用例1記載の発明における「絞り込まれた検索結果の一覧」は、本願発明における「ヒットのリストを含むサーチレポート」に相当するものである。
そして、引用例1記載の発明における「アノテーション検索部」の、「絞り込まれた検索結果の一覧を発生するステップ」を遂行する機能部分は、本願発明における「問合せ応答モジュール」の、「ヒットのリストを含むサーチレポートを発生するステップ」を遂行する機能部分に相当するといえる。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、「問合せ応答モジュールによって、ヒットのリストを含むサーチレポートを発生するステップ」を備える点において、共通するものである。

キ.引用例1記載の発明における「LAN回線LANL」、「検索条件を入力するユーザのクライアント端末」は、それぞれ、本願発明における「ネットワーク」、「問合せユーザの装置」に相当する。
よって、引用例1記載の発明における「絞り込まれた検索結果の一覧を、LAN回線LANLを介して、検索条件を入力するユーザのクライアント端末へ送信するステップ」は、本願発明における「ネットワークを介してサーチレポートを問合せユーザの装置へ送信するステップ」に相当する。

上記ア.?キ.の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「ユーザ問合せに応答するための方法において、
問合せ応答モジュールによって、複数のユーザのうちの問合せユーザの装置により提示された問合せを受信するステップと、
問合せ応答モジュールによって、複数のドキュメントより成るコーパスをサーチして、1つ以上のヒットを識別するステップであって、各ヒットは、その問合せに関連していると判断されたコーパスにおけるドキュメントであるようなステップと、
ユーザ注釈モジュールによって、前記複数のユーザにより生成された注釈の記憶装置にアクセスするステップであって、各注釈は、前記複数のユーザのうちの生成ユーザに関連され、そして各注釈は、ユーザ特有のメタデータを含むようなステップと、
問合せ応答モジュールによって、少なくとも1つの注釈がマッチングする前記ドキュメントである各々のヒットを注釈付きヒットとして識別するステップと、
問合せ応答モジュールによって、前記ヒットのリストを含むサーチレポートを発生するステップと、
ネットワークを介して前記サーチレポートを前記問合せユーザの装置へ送信するステップと、
を備えたコンピュータ・ソフトウェアによる情報処理方法。」
である点。

(相違点)
相違点1:本願発明は、「信頼性ネットワークモジュールによって、友人リストを確立して、問合せユーザに対する信頼性ネットワークを構築するステップであって、前記信頼性ネットワークは、前記問合せユーザ以外の少なくとも1人のユーザを含む前記複数のユーザのサブセットをメンバーとして有するようなステップ」を備えるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなステップを備えていない点。

相違点2:「ユーザ特有のメタデータ」が、本願発明においては、「レーティングを含む」ものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、「レーティングを含む」とはされていない点。

相違点3:「問合せ応答モジュールによって、少なくとも1つの注釈がマッチングするドキュメントである各々のヒットを注釈付きヒットとして識別するステップ」における「各マッチングする注釈の生成ユーザ」が、本願発明においては、「信頼性ネットワークのメンバーの1人である」のに対し、引用例1記載の発明においては、そのようなものではない点。

相違点4:本願発明は、「ユーザ注釈モジュールによって、各々の注釈付きヒットに対して、各々のマッチングする注釈からレーティングを抽出して、平均レーティングを計算するステップ」を備えるものであり、かつ、「問合せ応答モジュールによって、ヒットのリストを含むサーチレポートを発生するステップ」において、「注釈付きヒットの各々に対して、前記サーチレポートが、少なくとも1つのマッチングする注釈に関する情報を含み、前記注釈付きヒットの前記平均レーティングに少なくとも一部分基づいて、前記ヒットのリストの順序を決定する」ようにしているのに対し、引用例1記載の発明は、そのようにしているものではない点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点1?4について検討する。

(相違点1,3について)
一般に、コンテンツに対して付加されたアノテーションを利用する技術分野において、利用者が個人情報として定義した「信頼できるユーザ」が、当該コンテンツを推薦するアノテーションを付加しているか否かに基づいて、コンテンツのフィルタリングを行うようにすることは、引用例2に記載されているような公知の技術である。
ここで、コンテンツのフィルタリングを行うための「信頼できるユーザ」は、ネットワーク上に複数存在することが想定されるものであり、その場合、複数の情報を「リスト」化することは、ごく一般的なことにすぎないことから、複数の「信頼できるユーザ」の情報を「友人リスト」として確立することは、当業者が適宜になし得ることである。
そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の技術とは、ともに、コンテンツに対して付加されたアノテーションを利用する技術分野に属するものであり、引用例1記載の発明に対して引用例2記載の技術を適用することは、当業者が適宜になし得ることであって、その場合、「検索結果のコンテンツをアノテーションの付加ユーザで絞り込む」場合の「アノテーションの付加ユーザ」を「信頼できるユーザ」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
してみれば、引用例1記載の発明に対して引用例2記載の技術を参酌し、「信頼性ネットワークモジュールによって、友人リストを確立して、問合せユーザに対する信頼性ネットワークを構築するステップであって、前記信頼性ネットワークは、前記問合せユーザ以外の少なくとも1人のユーザを含む前記複数のユーザのサブセットをメンバーとして有するようなステップ」を備えるものとし、また、「問合せ応答モジュールによって、少なくとも1つの注釈がマッチングするドキュメントである各々のヒットを注釈付きヒットとして識別するステップ」における「各マッチングする注釈の生成ユーザ」を「信頼性ネットワークのメンバーの1人である」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2,4について)
一般に、情報に対して評価を与え、その評価に基づいて検索を行う技術分野において、個別の情報に対して数値化した評価を与え、その評価値の平均をとり、該平均値の大きい順に情報の提示を行うことは、引用例3に記載されているような公知の技術である。
ここで、情報に対する評価(レーティング)は、情報に付加するアノテーションの一種であるから、引用例1記載の発明に対して引用例3記載の技術を適用することにより、「ユーザ特有のメタデータ」を「レーティングを含む」ものとし、「ユーザ注釈モジュールによって、各々の注釈付きヒットに対して、各々のマッチングする注釈からレーティングを抽出して、平均レーティングを計算するステップ」を備えるようにし、かつ、「問合せ応答モジュールによって、ヒットのリストを含むサーチレポートを発生するステップ」において、「注釈付きヒットの各々に対して、前記サーチレポートが、少なくとも1つのマッチングする注釈に関する情報を含み、前記注釈付きヒットの前記平均レーティングに少なくとも一部分基づいて、前記ヒットのリストの順序を決定する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明及び引用例2,3記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2,3記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-10 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-01 
出願番号 特願2007-504013(P2007-504013)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波内 みさ  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 山崎 達也
石井 茂和
発明の名称 信頼性ネットワークからのユーザ注釈を一体化したサーチシステム及び方法  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  

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