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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
管理番号 1270160
審判番号 不服2011-7389  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-07 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2004-251081「プローブ針の製造方法および三次元立体構造の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月9日出願公開、特開2006-64676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、平成16年8月30日にされた特許出願である。そして、平成21年7月24日付け手続補正書により明細書及び特許請求の範囲についての補正がされ、平成22年12月27日付けで拒絶査定がされ、平成23年1月11日に査定の謄本が送達された。これに対して、同年4月7日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書についての補正がされた。
その後、平成24年9月13日付けで当審により拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月16日付け手続補正書により明細書及び図面についての補正がされるとともに、同日付け意見書が提出された。

2.本願に係る発明
本願の請求項1から14までのそれぞれに係る発明は、特許請求の範囲の請求項1から14までのそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものである。特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
長く延びる梁と、梁の先端部に設けられるコンタクタとを有するプローブ針の製造方法であって、
基板を準備するステップと、
前記基板の上に、前記梁の形状の溝を有する膜を形成するステップと、
前記溝の内部に金属の層を形成するステップと、
前記基板から前記溝を有する膜を分離するステップと、
前記分離された膜を重ね合わせるステップと、
前記膜を除去して前記金属層を取出すステップとを含む、プローブ針の製造方法。」

3.当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

「本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
したがって、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」

4.判断
請求項1に記載されているとおり、本願発明は、「基板を準備するステップ」、「前記基板の上に、前記梁の形状の溝を有する膜を形成するステップ」及び「前記溝の内部に金属の層を形成するステップ」を備えている。そして、これらのステップについて、発明の詳細な説明には次の記載がある。

「【0037】
図2(A)は平面図であり、図2(B)は、図2(A)において、B-Bで示す部分の断面図である(以下の図3、4においても同様である)。図2を参照して、まず、基板としての、Siウエハ20を準備し、その表面にシード層(たとえば、Auの層)21を形成する。
【0038】
次いで、図3に示すように、シード層21の上に、たとえば、フォトレジスト23を用いて、プローブ針の梁となる部分として、所望の形状の溝を形成する。図3では、1枚のSi(SiO2または、SiN)ウエハ20上に、相互に、中心線に対して線対称となるように折れ曲がった(以下、「位相が異なる」という)、一対のつづら折り形状の溝25a、25bと、一対のつづら折り形状の溝25a、25bを囲って設けられた、4つの合わせ辺27および中央辺28と、合わせ穴(溝)26とが露出するようにレジストで溝をパターニングしている。
【0039】
なお、ここで、合わせ辺27および合わせ穴26とは、後に説明するように、位置決めのために使用される。
【0040】
このように、プローブ針10の梁となる部分をSiウエハ20上で平面的に形成するため、任意の形状の梁を形成可能である。
【0041】
なお、このとき、一対のつづら折形状の溝25a、25bの、ブロック15に固定される、基部17a、17bの位置、および、接続部12に接続される自由端18a、18bの位置は、フォトリゾグラフを用いて詳細に位置決め可能である。
【0042】
次に、図4(A)および(B)に示すように、一対のつづら折形状の溝25a、25bの上に、つづら折形状のメッキ層(たとえばAuの層)24a、24bを形成する。
【0043】
その後、シード層21の露出している部分、すなわち、一対のつづら折り形状のメッキ層24a、24bを囲って設けられた、4つの合わせ辺27および中央辺28を含めてシード層から基板を、たとえば、溶解によって除去し、図4(C)に示すように、つづら折形状のメッキ層24と合わせ穴26とを有する、フォトレジストの層31を取り出す。ここでは、図4(A)の左側の部分のみを示している。」

段落0037及び0038並びに図2及び3に記載された事項を参照すると、「基板を準備するステップ」及び「前記基板の上に、前記梁の形状の溝を有する膜を形成するステップ」を経て「シード層21」及び「フォトレジスト23」が形成された「Siウエハ20」は、「溝25a、25b」、「合わせ辺27」及び「中央辺28」の部分で「シード層21」が露出している。そして、段落0042及び0043並びに図4に記載された事項を参照すると、次に「前記溝の内部に金属の層を形成するステップ」を経ることにより、これら露出した「シード層21」のうち、「溝25a、25b」の部分だけに「メッキ層24a、24b」が形成され、「合わせ辺27」及び「中央辺28」の部分は、メッキ層が形成されることなく、露出したまま残されることになる。
しかし、発明の詳細な説明の記載からは、「溝25a、25b」の部分と同じく露出した「シード層21」である「合わせ辺27」及び「中央辺28」の部分に、メッキ層が形成されない理由が分からない。すなわち、どのようにすれば、「溝25a、25b」の部分だけに「メッキ層24a、24b」を形成することができるのかを理解することができない。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が「前記溝の内部に金属の層を形成するステップ」を含む本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

5.請求人の主張について
請求人は、上記4.で述べた点について、意見書の(2)(i)で以下のように主張している。

「これは、確かにご指摘の通りですが、明細書には発明のポイントのみを記載しているため、図3(B)のように記載しています。
また、このように形成することは当業者にとって自明です。すなわち、溝の部分25a,25bは明細書の段落番号0038、図3(A),(B)に示すように、フォトレジスト23で形成されており、型として使用するため、メッキ層24a,24bが形成されます。そのため、フォトレジスト23を除去すると溝25a,25bに形成されたメッキ層25a,25bのところだけが残ります。」

請求人は、「合わせ辺27」及び「中央辺28」の部分にメッキ層が形成されない理由が分からないという当審の指摘に対し、そのとおりであることを認めた上で、「明細書には発明のポイントのみを記載しているため、図3(B)のように記載しています。」と主張している。
請求人のいう「発明のポイント」とは、何を指しているのか明らかでないが、それが何であろうと、発明の詳細な説明の記載からは、「合わせ辺27」及び「中央辺28」の部分にメッキ層が形成されない理由が分からない以上、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
また、請求人は、「このように形成することは当業者にとって自明です。」と主張している。ここで、「このように形成すること」の具体的な内容は、「すなわち」以降に記載されている。つまり、「溝25a、25b」の部分だけに「メッキ層24a、24b」を形成した後、「フォトレジスト23」を除去すれば、「溝25a、25b」の部分に形成した「メッキ層24a、24b」だけが残るということである。
請求人が主張するとおり、「溝25a、25b」の部分だけに「メッキ層24a、24b」を形成した後、「フォトレジスト23」を除去すれば、「溝25a、25b」の部分に形成した「メッキ層24a、24b」だけが残ることは、当業者にとって自明である。
しかし、問題は、どのようにして「溝25a、25b」の部分だけに「メッキ層24a、24b」を形成するのかということであって、「溝25a、25b」の部分だけに「メッキ層24a、24b」を形成した後、どのようにして「メッキ層24a、24b」だけを残すのかということではない。
請求人の主張は、採用することができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-05 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2004-251081(P2004-251081)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽飼 知佳関根 洋之  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 飯野 茂
森 雅之
発明の名称 プローブ針の製造方法および三次元立体構造の製造方法  
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所  
代理人 吉田 博由  
代理人 森下 八郎  
代理人 伊藤 英彦  

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