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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1270187
審判番号 不服2011-27635  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-22 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2007-202429「太陽電池用接続リード線及びその製造方法並びに太陽電池」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月24日出願公開、特開2008- 98607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成19年8月3日(優先権主張平成18年9月13日)の出願であって、その請求項に係る発明は、平成23年12月22日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のものである。

「断面平角状の導体の表面に被覆めっき層を備え、太陽電池のSiセルの所定の接点領域に接続させるための太陽電池用接続リード線において、該リード線全体の0.2%耐力が60MPa以下であり、上記被覆めっき層の、上記Siセルに対向する面の被覆めっき層の合計厚さが5μm以下であることを特徴とする太陽電池用接続リード線。」

2 刊行物の記載
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-49666号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。

(1)「【0001】
本発明は、太陽電池用平角導体及び太陽電池用リード線に関し、特に、太陽電池のシリコン結晶に接続した際に、シリコン結晶ウェハの変形もしくは破損が生じにくい太陽電池用平角導体及び太陽電池用リード線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上にシリコン結晶を成長させた太陽電池においては、通常、シリコン結晶ウェハの所定の領域に接続用リード線を接合し、これを通じて電力を伝送する構成としている。
【0003】
上記接続用リード線は、導体の表面に、ウェハとの接続のためのはんだめっき膜が形成される。例えば、導体として、タフピッチ銅や無酸素銅などの純銅の平角導体を用い、はんだめっき膜として、Sn-Pb共晶はんだを用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、近年、環境への配慮から、はんだめっき膜の構成材として、Pbを含まないはんだ(Pbフリーはんだ)への切り替えが検討されている(例えば、特許文献2参照)。」

(2)「【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
(太陽電池用平角導体)
図1に、本発明の太陽電池用平角導体の一実施形態を示す。
この太陽電池用平角導体10は、純アルミニウムもしくはアルミニウム合金からなる軟質材の導体1を平角状に成形したものである。
【0018】
導体1は、高導電率なほど太陽電池の発電ロスを軽減できる。そこで、導体1の材料には純度99.0mass%以上、特に、99.5mass%以上のアルミニウム材が好適である。また、JISで規格された1050から1100までの合金材であっても構わない。更に、低強度および低耐力であるほど、接合時のシリコン結晶ウェハへの負荷が軽減する。このため、上記の導体1は、常温において引張強度が80MPa以下、特に、70MPa以下が好ましく、0.2%耐力が40MPa以下、特に、30MPaが好ましい。このような軟質のアルミニウム材又はアルミニウム合金材を選択することにより、シリコン結晶ウェハヘ導体接合の際の熱応力を低減することができる。
【0019】
この太陽電池用平角導体10は、導体1をダイス伸線もしくはロール圧延、あるいはそれらの複合工程により成形することで得られる。
【0020】
図2は、図1に示す導体1の表面に銅めっき2を施して太陽電池用平角導体20としたものである。」

(3)「【0026】
(太陽電池用リード線)
図5に、本発明の太陽電池用リード線の一実施形態を示す。
この太陽電池用リード線50は、図1に示す導体1の表面全体に、はんだめっき12を施したものである。また、図2に示すような外層に銅めっき2を形成した導体1の表面全体に、はんだめっき12を施すこともできる。はんだめっき12は、環境面から鉛フリー品とし、外周全体について実施する。その組成は溶解温度面から図1に示す導体1単独の場合にはSn-Zn系が好ましく、図2に示す外層に銅めっき2を施す場合にはSn-Ag-Cu系が好ましい。
【0027】
また、図6に示すように、図3に示す太陽電池用平角導体30の外周に、はんだめっき12を施して、太陽電池用リード線60とすることもできる。
【0028】
更に、図7に示すように、図4に示した太陽電池用平角導体40の外周に、はんだめっき12を被覆することで、太陽電池用リード線70とすることもできる。
【0029】
上記はんだめっき12によるめっき被覆は、太陽電池用平角導体の外周の一部(例えば、平角導体の上面及び下面)だけであってもよい。
【0030】
また、太陽電池用リード線について、所望の機械的特性が得られる様、はんだめっき前もしくは後に加熱処理を施すことが好ましい。
【0031】
これらの太陽電池用リード線を、シリコン結晶ウェハ(太陽電池モジュール(図示せず))におけるセル面の所定の接点領域(例えば、Agメッキ領域))に接続することで、太陽電池アセンブリが得られる。」

(4)「【0037】
本発明の効果を確認するため、機械的特性の異なる導体を複数試作し検証した。また、比較例として、常温引張強さ及び0.2%耐力が本発明に規定した範囲外のものを作製した。更に、従来技術として、はんだめっき平角軟銅線およびはんだめっき銅-インバー-銅クラッド軟質平角線(2:1:2)も併せて試作した。更に、実施例の導体の評価に当り、寸法を幅2.0mm×厚み0.15mmのタイプ、および銅単一の同抵抗タイプも試作した。実施例、比較例、及び従来技術の導体には、共にSn-Ag-Cuめっきを施した。尚、実施例ではアルミニウム導体の上に1μmの純銅めっきを施した。」

3 引用発明
上記2(2)、(4)の記載(特に下線を付した部分)によれば、引用刊行物には、
「0.2%耐力が40MPa以下の平角状の導体1の表面に1μmの銅めっき2を施した太陽電池用平角導体20」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

4 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用刊行物においては、上記2(1)(【0003】)の「上記接続用リード線は、導体の表面に、ウェハとの接続のためのはんだめっき膜が形成される。」との記載や上記2(3)の記載に照らして、導体にウェハとの接続のためのはんだめっき膜を形成したものを「太陽電池用リード線」あるいは「接続用リード線」と称しているものと認められる。
一方、本願明細書の【0034】には、「以上に述べた本実施の形態に係る太陽電池用接続リード線12は、太陽電池のSiセルの所定の接点領域に接続される。具体的には、太陽電池用接続リード線12の、接点領域と接続される部分に予め導電性接着剤あるいははんだを塗布しておき、太陽電池の接点領域と導電性接着剤あるいははんだを塗布した太陽電池用接続リード線12を接触させる。その後、高温に加熱して導電性接着剤あるいははんだを溶融させた後、導電性接着剤あるいははんだを固化させることで、太陽電池の接点領域と太陽電池用接続リード線12が接着、接続され、太陽電池が得られる。」と記載されており、この記載によれば、本願においては、太陽電池のSiセルの所定の接点領域に接続させるための導電性接着剤あるいははんだを塗布する前のものについて「太陽電池のSiセルの所定の接点領域に接続させるための太陽電池用接続リード線」と称しているものと認められる。
してみると、引用発明の「太陽電池用平角導体20」は、ウェハとの接続のためのはんだめっき膜が形成される前のものであり、引用刊行物においては、上記のように「太陽電池用リード線」あるいは「接続用リード線」と称されていないが、上記2(3)に記載されるように、太陽電池のシリコン結晶ウェハにおけるセル面の所定の接点領域にはんだを介して接続されるものであるから、本願発明でいう「太陽電池のSiセルの所定の接点領域に接続させるための太陽電池用接続リード線」に相当するものと認められる。
また、引用発明の「太陽電池用平角導体20」は、断面平角形状であって、その表面には被覆めっき層である銅めっき2が施されており、このめっきは被覆めっき層といえるから、引用発明の「太陽電池用平角導体20」は、本願発明でいう「断面平角状の導体の表面に被覆めっき層を備え、太陽電池のSiセルの所定の接点領域に接続させるための太陽電池用接続リード線」に相当するものと認められる。

(2)本願明細書の「先ず、導体3を構成する体積抵抗率が50μΩ・mm以下の金属材料を平角状に圧延形成し、平角導体が形成される。その平角導体にバッチ式加熱による熱処理を施し、平角導体の0.2%耐力を低減させ、所定値(目標とする0.2%耐力値(60MPa以下))に調整がなされる。その熱処理後の平角導体の周囲に厚さ5μm以下のめっき層14を設け、0.2%耐力値が60MPa以下の太陽電池用接続リード線12が得られる。」(【0029】、【0030】)との記載によれば、厚さが5μm以下のめっき層は、平角導体の0.2%耐力に影響を与えないものと解される。
そして、引用発明の「太陽電池用平角導体20」は、「0.2%耐力が40MPa以下の導体1の表面に1μmの銅めっき2を施した」ものであって、1μmの銅めっき2により、40MPa以下とされる導体1の0.2%耐力が60MPaを超える程大きくなるものとは想定しがたいから、引用発明の「太陽電池用平角導体20」も本願発明の「太陽電池用接続リード線」と同様に「リード線全体の0.2%耐力が60MPa以下」であると認められる

(3)本願発明において、「被覆めっき層の合計厚さが5μm以下」とされているが、この「合計厚さ」との事項について、請求人は、審判請求書に『前記手続補正書における請求項1の「上記被覆めっき層の、上記Siセルに対向する面の被覆めっき層の合計厚さが5μm以下」、前記手続補正書における請求項7の「その被覆めっき層の、上記Siセルに対向する面の全被覆めっき層の合計厚さを5μm以下」における「合計」という補正事項は、第1図、出願当初明細書の[0023]における「図1に示すように、本実施の形態に係る太陽電池用接続リード線12は、導体3の表面にめっき層(薄めっき)14を設けてなり、」出願当初明細書の[0044]における「Cu材料を幅2.0mm、厚さ0.16mmの平角線状に圧延成形した後、その導体に300℃×90分の熱処理を施し、その熱処理した導体の周囲をNiで薄めっきし、太陽電池用接続リードを製作した。」の記載に基づくものです。』と記載している。
ここで、本願の第1図、出願当初明細書の【0023】及び【0044】の記載を参照しても、結局、導体の表面に設けられているめっき層が薄めっきであり、その厚さが5μm以下であるということ以上の技術事項は読み取れない。
してみると、引用発明においても、導体1の表面に施される銅めっき2の厚さは1μmであるから、引用発明の「太陽電池用平角導体20」も本願発明の「太陽電池用接続リード線」と同様に「上記被覆めっき層の、上記Siセルに対向する面の被覆めっき層の合計厚さが5μm以下である」と認められる。

(4)以上のとおりであるから、本願発明と引用発明との間に格別の相違があるものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明と認められる。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明と認められ、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-05 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2007-202429(P2007-202429)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 小松 徹三
星野 浩一
発明の名称 太陽電池用接続リード線及びその製造方法並びに太陽電池  
代理人 沖川 寛  
代理人 沖川 寛  

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