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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1270190
審判番号 不服2012-1469  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-25 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2007-130440「ランド形状及びそれを備える基板」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月27日出願公開、特開2008-288311〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成19年5月16日の出願であって、平成23年10月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成24年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年1月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明

平成24年1月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
基板上において該基板の表面を被覆するレジストの開口部に形成されるランドのランド形状であって、
半田付けによって搭載される搭載部品の円形座とほぼ同径である円形部と、
前記円形部の外周に放射状に複数設けられた凸部と、を備え、
前記複数の凸部は、半田が流入するようにそれぞれ間隔を空けて形成されている、
ことを特徴とするランド形状。」
と補正された。(なお、下線は補正箇所を示す。)

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるランド形状について、「基板上において該基板の表面を被覆するレジストの開口部に形成されるランドのランド形状であって」との前提構成に関する限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物は、次のとおりである。なお、刊行物1は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に相当し、また同様に、刊行物2は引用文献4に相当する。

刊行物1:特開2004-55582号公報
刊行物2:特開平9-107173号公報

(1)刊行物1(特開2004-55582号公報)の記載事項

刊行物1には、「電極端子の接続構造」に関し、図面(特に、図1)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モジュール部品の下面に設けられた円柱状の電極端子と、前記円柱状の電極端子と対向するように基板上に設けられた半田付けランドとを半田により電気的に接続するための電極端子の接続構造に関するものである。」

イ 「【0002】
【従来の技術】
近年、機器の小型化、薄型化に伴い、実装されるモジュールの端子構造もこれに対応したものが要望されており、円柱サポート端子もその1つとして提案されている。これは導電性材料を円柱状に成型し、モジュールとマザー基板の電気的な接続をこの円柱サポート端子を介して行うものである。
【0003】
一般に、この種の円柱サポート端子とその半田付けランド部との接続構造は、図9に示されるようなものであった。
【0004】
すなわち、22はモジュール部品(図示せず)の下面に設けられた円柱サポート端子であり、この円柱サポート端子22と対向するように基板24上に半田付けランド部21が設けられており、クリーム半田23を介してこの円柱サポート端子22と半田付けランド部21とが電気的に接続されるように構成されている。
【0005】
ここで、半田付けランド部21は、円柱サポート端子22よりも一回り大きな同心円状のランド部で形成されており、接続の際に半田付けランド部21の中心と円柱サポート端子22の中心とがほぼ一致するように接続している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、円柱サポート端子22と半田付けランド部21の中心を一致させて接続することが困難であるため位置精度に限界があるとともに、円柱サポート端子22を基板24に対して傾くことなく垂直に接続することが困難であるため平坦度に限界があり、さらに、円柱サポート端子22と半田付けランド部21との間に入り込むクリーム半田23の半田量を一定にすることが困難であるため、そのバラツキにより実装時の高さバラツキが生じてしまう等の課題を有するものであった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、より位置精度および平坦度が高く、より高さバラツキの少ない電極端子の接続構造を実現することを目的とする。」

ウ 「【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の電極端子の接続構造は、モジュール部品の下面に設けられた円柱状の電極端子と、前記円柱状の電極端子と対向するように基板上に設けられた半田付けランドとを半田により電気的に接続するための接続構造であって、前記半田付けランドは前記円柱状の電極端子よりも大きく同心円状の形状を有するとともに、前記半田付けランドの外周から延伸するように設けられた突出部を複数個有し、前記複数個の突出部が前記半田付けランドの外周に均等に配設されていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成により、熱により半田が溶融した際に、半田付けランドと円柱サポート端子間に入り込む半田の量が不均一になった場合に、突出部が半田溜りの機能を果たし、半田付けランドと円柱サポート端子間に入り込む半田の量を一定にするように作用し、円柱サポート端子を基板に対して垂直に接続することが容易にでき、また接続後の円柱サポート端子の高さも一定のものとなるものである。
【0010】
また、複数個の突出部より円柱サポート端子へ均等に力が作用するため、円柱サポート端子と半田付けランドの中心を一致させて接続することが容易にできるため、非常に安定性の高いまた位置精度の高い円柱サポート端子の実装接続を実現することができるものである。」

エ 「【0013】
また、本発明は、突出部を少なくとも3個以上有することを特徴とするものであり、これにより、半田が溶融した際の突出部と円柱サポート端子間に加わる力が均等で且つ半田付けランドの中心と円柱サポート端子の中心を一致させる方向に働き、より円柱サポート端子と半田付けランドの中心を一致させて接続させることができるものである。」

オ 「【0030】
図1は本発明の一実施の形態における円柱サポート端子の実装接続構成を示すものであり、(b)は基板上に半田付けランド部を設けクリーム半田を介して電極端子を接続実装した際の断面図で、(a)は前記半田付けランド部に円柱サポート端子を実装接続した際の上面図である。
【0031】
図1において、2は円柱サポート端子であり、マザー基板4上に設けられた半田付けランド部1とクリーム半田3を介して、モジュール部品(図示せず)が電気的に接続されるように構成されている。
【0032】
この半田付けランド部1は、円柱サポート端子2の底面よりも大きく、また、円柱サポート端子2の底面と同心円状の形状となっており、半田付けランド部1の外周から延伸するように半田付けランド突出部1aを半田付けランド部1の外周に均等に設けられている。
【0033】
従って、熱によりクリーム半田3が溶融した際に、半田付けランド部1と円柱サポート端子2間に入り込むクリーム半田3の量が均等にならなくても、突出部1aにクリーム半田3が流れ集まるため、半田付けランド部1と円柱サポート端子2間に入り込むクリーム半田3の量を一定にすることができる。
【0034】
よって、円柱サポート端子2をマザー基板4に対し、垂直に実装接続することが容易にでき、且つ、接続後の円柱サポート端子の高さも一定にすることができるため、生産性が向上するものである。
【0035】
また、突出部1aが半田付けランド部1の外周に均等に設けられているため、突出部1aより円柱サポート端子2に対し均等に力が作用するため、半田付けランド部1と円柱サポート端子2の中心を一致させて実装接続することが容易にできるため、非常に安定性の高いまた位置精度の高い円柱サポート端子2の実装接続を確実に行うことができる。」

これら記載事項及び図面(特に、図1)の記載を総合すると、刊行物1には、
「モジュール部品の下面に設けられた円柱状の電極端子(円柱サポート端子2)と、前記円柱状の電極端子と対向するように基板(マザー基板4)上に設けられた半田付けランド(半田付けランド部1)とを半田(クリーム半田3)により電気的に接続するための接続構造であって、前記半田付けランドは前記円柱状の電極端子よりも大きく同心円状の形状を有するとともに、前記半田付けランドの外周から延伸するように設けられた突出部(半田付けランド突出部1a)を複数個有し、前記複数個の突出部が前記半田付けランドの外周に均等に配設されている電極端子の接続構造。」(なお、括弧内は実施例の対応する用語を示す。)
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)刊行物2(特開平9-107173号公報)の記載事項

刊行物2には、「パッド構造及び配線基板装置」に関し、図面(特に、図2?5)とともに次の事項が記載されている。

カ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パッド構造及びそのようなパッド構造を備えた配線基板装置に関するものである。」

キ 「【0008】本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面実装部品の傾斜及び面方向への位置ズレの双方を確実に防止することができるパッド構造及び配線基板装置を提供することにある。」

ク 「【0020】図2に示されるように、本実施形態のスタッド実装用のパッド7は、矩形状をした1つの主パッド部7aと、複数の副パッド部7bとによって構成されている。主パッド部7aは、スタッド6の底面6aとほぼ同じ外形寸法を有している。従って、被実装物であるスタッド6は、リフローによるはんだ付けを行うと、基本的にこの主パッド部7a内に収まることになる。各副パッド部7bは、主パッド部7aにおける複数の箇所からパッド7の外方へ向かって(より詳細にいうとパッド7が属する面において主パッド部7aの幾何学的中心O_(1)から遠ざかる方向へ)突設されている。また、各々の副パッド部7aの形状及び大きさは等しく、それらはともに矩形状を呈している。
【0021】主パッド部7aにおける複数の箇所とは、本実施形態では主パッド部7aの各々のコーナー部分を意味している。従って、ここでは副パッド部7bの数は4つである。また、各副パッド部7bは、主パッド部7aの幾何学的中心O_(1)を基準として対称となるような箇所に形成されていると把握することもできる。
【0022】次に、リフローによるはんだ付けの手順を説明する。まず、図3に示されるように、接合材料であるクリームはんだ10をパッド7上に塗布する。次に、図4に示されるように、クリームはんだ10にスタッド6の底面6aを押し付けることにより、スタッド6をパッド7上に仮固定する。なお、主パッド部7aの外形寸法はスタッド6の底面6aとほぼ等しいことから、主パッド部7aの幾何学的中心O_(1)とスタッド6の幾何学的中心とを比較的容易に一致させることができる。次に、基板2をリフロー炉に投入することにより、クリームはんだ10を溶融させる。その際、溶融したはんだ8の表面張力、特にスタッド6の側面に付着しているはんだ8の表面張力によって、スタッド6が4方向(図5の矢印A_(1)の方向)に引っ張られる。この結果、スタッド6は傾斜することなく接合される。そして、最後に超音波等を利用したワイヤボンダ等を用いてワイヤボンディングを行い、半導体チップ5とスタッド6とを接合する。」

ケ 「【0034】(4)主パッド部7a,16a…の形状は矩形状に限定されることはなく、スタッド6の底面6aの形状に応じて、例えば円形、楕円形、その他の多角形等に変更されることができる。」

3 発明の対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「モジュール部品」は、その機能からみて、本願補正発明の「搭載部品」に相当し、以下同様に、「円柱状の電極端子」は「円形座」に、「基板」は「基板」に、「半田付けランド」は「ランド」に、「半田」は「半田」に、「突出部」は「凸部」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の半田付けランドが、基板上に設けられた所定の形状を有するものであることは、本願補正発明の前提構成のうちの「基板上において形成されるランドのランド形状」に相当する。
また、引用発明の半田付けランドの「同心円状の形状」の部分は、円状の形状であることに限り、本願補正発明の「円形部」に相当する。
さらに、引用発明の「前記半田付けランドの外周から延伸するように設けられた突出部を複数個有」することは、本願補正発明の「前記円形部の外周に放射状に複数設けられた凸部」を備えることに相当する。
さらに、引用発明の「前記複数個の突出部が前記半田付けランドの外周に均等に配設されている」ことは、本願補正発明の「前記複数の凸部は、それぞれ間隔を空けて形成されている」ことに相当する。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「基板上において形成されるランドのランド形状であって、
円形部と、
前記円形部の外周に放射状に複数設けられた凸部と、を備え、
前記複数の凸部は、それぞれ間隔を空けて形成されている、
ランド形状。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
前記ランドの形成に関し、本願補正発明では、ランドが、「基板の表面を被覆するレジストの開口部」に形成されるの対して、引用発明では、半田付けランドが、基板の表面を被覆するレジストの開口部に形成されているかどうか明らかにされていない点。

[相違点2]
前記円形部の大きさに関し、本願補正発明では、円形部が、「半田付けによって搭載される搭載部品の円形座とほぼ同径である」のに対して、引用発明では、半田付けランドの同心円状の形状の部分が、「円柱状の電極端子よりも大き」い同心円状である点。

[相違点3]
前記複数の凸部の形成に関し、本願補正発明では、複数の凸部は、「半田が流入するように」それぞれ間隔を空けて形成されているのに対して、引用発明では、複数個の突出部が、半田付けランドの外周に均等に配設されているものの、本願補正発明のように「半田が流入するように」なっているかどうか明らかでない点。

4 当審の判断

(1)相違点1について

基板上に設けられた半田付けランドの周囲に、所定の幅を持ってレジスト膜を形成することは、本願出願前に周知の技術であり(例えば、原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2004-319778号公報の段落【0003】の「半田付けランド2の周囲には、所定の幅をもってレジスト膜境界領域6が形成されている。」との記載及び図12、本願明細書に特許文献2として記載された特開平6-6021号公報の段落【0002】の「この半田付けランド2を含む(接着用)領域2Aを除いて所要のソルダーレジスト6が塗布されている。」との記載及び図5を参照)、引用発明の基板に上記周知の技術を適用することによって、基板上に設けられた半田付けランドが、基板の表面を被覆するレジストの開口部に形成されるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について

刊行物2の上記記載事項クの段落【0020】には、「図2に示されるように、本実施形態のスタッド実装用のパッド7は、矩形状をした1つの主パッド部7aと、複数の副パッド部7bとによって構成されている。主パッド部7aは、スタッド6の底面6aとほぼ同じ外形寸法を有している。」との記載があり、また同じく記載事項ケには、「主パッド部7a……の形状は矩形状に限定されることはなく、スタッド6の底面6aの形状に応じて、例えば円形……に変更されることができる。」との記載がある。
これら記載及び図面(特に、図2?5)の記載を総合すると、刊行物2には、「円形をした主パッド部7aは、スタッド6の円形の底面6aとほぼ同じ外形寸法を有していること」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が実質的に記載されているものと認められる。
ここで、刊行物2記載の発明の「円形をした主パッド部7a」は、本願補正発明のランドの「円形部」に相当し、また同様に、「スタッド6の円形の底面6a」は「半田付けによって搭載される搭載部品の円形座」に相当するから、刊行物2記載の発明の「円形をした主パッド部7aは、スタッド6の円形の底面6aとほぼ同じ外形寸法を有していること」は、本願補正発明の、円形部が「半田付けによって搭載される搭載部品の円形座とほぼ同径である」ことに実質的に相当する。
一方、引用発明は、「より位置精度および平坦度が高く、より高さバラツキの少ない電極端子の接続構造を実現すること」(刊行物1の上記記載事項イの段落【0007】)を目的としており、この引用発明の目的は、刊行物2記載の発明の「表面実装部品の傾斜及び面方向への位置ズレの双方を確実に防止することができるパッド構造及び配線基板装置を提供すること」(刊行物2の上記記載事項キ)と共通するものである。
そして、上記目的を達成するために引用発明は、半田付けランドの外周から延伸するように設けられた突出部を複数個有し、複数個の突出部が半田付けランドの外周に均等に配設されている構成とすることにより、刊行物1の上記記載事項ウの段落【0010】に記載のように、複数個の突出部より円柱サポート端子へ均等に力が作用するため、円柱サポート端子と半田付けランドの中心を一致させて接続することが容易にできるため、非常に安定性の高いまた位置精度の高い円柱サポート端子の実装接続を実現することができるものである。
しかし、刊行物2の記載事項クの段落【0022】の「なお、主パッド部7aの外形寸法はスタッド6の底面6aとほぼ等しいことから、主パッド部7aの幾何学的中心O_(1)とスタッド6の幾何学的中心とを比較的容易に一致させることができる。」との記載を参酌すれば、引用発明のように、半田付けランドは円柱状の電極端子よりも大きく同心円状の形状を有する構成よりも、刊行物2記載の発明のように、「円形をした主パッド部7aは、スタッド6の円形の底面6aとほぼ同じ外形寸法を有している」構成とした方が、半田付けランドと円柱状の電極端子との位置精度をより高くできることは、当業者であれば容易に予測し得ることである。
よって、引用発明に刊行物2記載の発明を適用する動機付けはあるといえるから、引用発明おいて、半田付けランドの同心円状の形状の部分が、円柱状の電極端子よりも大きい同心円状であることに代えて、刊行物2記載の発明を適用して、半田付けランドの同心円状の形状の部分が、円柱状の電極端子とほぼ同じ外形寸法を有するようにすることによって、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について

上記相違点3に係る本願補正発明の「半田が流入するように」の技術的意義を一義的に明確に理解することは困難であるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、関連する記載として次のような記載がある。

・「そして、スプリングピン20の円形座21の外周から歯車型ランド30の凸部32上及びその間を含んで十分なフィレット40が形成されている。」(段落【0020】)
・「また、このフィレット40部と歯車の歯、すなわち、凸部32間によけいな半田の逃げ場があるので、半田浮きが抑えられるとともに、半田ボールも吸収することができる。」(段落【0021】)
これらの記載によれば、上記「半田が流入するように」とは、歯車型ランド30の凸部32上だけではなく、凸部32間にも溶融した半田が流入し得るようにすることを意味するものと解釈される。
そして、本願補正発明と引用発明とは、上記3で認定したとおり、相違点1及び2について構成上の相違があるが、それ以外の特段の構成上の差異はない。
そうすると、相違点1に関し上記(1)で説示したように、引用発明の基板に上記周知の技術を適用することによって、基板上に設けられた半田付けランドが、基板の表面を被覆するレジストの開口部に形成されるようにするとともに、相違点2に関し上記(2)で説示したように、引用発明において、半田付けランドの同心円状の形状の部分が、円柱状の電極端子よりも大きい同心円状であることに代えて、刊行物2記載の発明を適用して、半田付けランドの同心円状の形状の部分が、円柱状の電極端子とほぼ同じ外形寸法を有するようにすることによって、半田付けランドの突出部上だけでなく、突出部の間にも溶融した半田が流入するようになるといえる。
また、刊行物2の図5の記載をみると、主パッド7aは矩形状であるものの、主パッド部7aが、スタッド6の底面6aとほぼ同じ外形寸法を有している場合には、溶融したはんだ8が、突出部に相当する副パッド7b上だけでなく、副パッド7bと副パッド7bの間にも流入しているものと認められる。
そうすると、上記相違点3に係る本願補正発明の「半田が流入するように」することは、上記(1)及び(2)で説示したような構成とすることによって、達成されるものといえる。

(4)作用効果について

本願補正発明が奏する作用効果は、刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

(5)まとめ

したがって、本願補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)審判請求人の主張について

審判請求人は、平成24年1月25日付けで提出した審判請求書の請求の理由において、本願補正発明ではランドが、「基板上において該基板の表面を被覆するレジストの開口部に形成され」ており、具体的には、例えばランドの凸部を含む外径より大きくレジスト抜き(すなわち開口部を形成)をすることで、複数の凸部の間に半田が流れる領域が確保することができる旨を主張するとともに、当審における審尋に対する平成24年10月22日付けの回答書において、本願補正発明の「半田が流入するようにそれぞれ間隔を空けて形成されている」複数の凸部の構成については、刊行物1及び2の組み合わせからは容易に着想できない旨を主張している。
しかしながら、上記(1)で説示したとおり、基板上に設けられた半田付けランドの周囲に、所定の幅を持ってレジスト膜を形成することは、本願出願前に周知の技術であり、また、上記(3)で説示したとおり、上記相違点3に係る本願補正発明の「半田が流入するように」することは、上記(1)及び(2)で説示したような構成とすることによって、達成されるものといえる。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

5 むすび

以上のとおり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成24年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成22年1月12日付け及び平成23年4月18日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
半田付けによって搭載される搭載部品の円形座とほぼ同径である円形部と、
前記円形部の外周に放射状に複数設けられた凸部と、を備え、
前記複数の凸部は、半田が流入するようにそれぞれ間隔を空けて形成されている、
ことを特徴とするランド形状。」

2 引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2とその記載事項は、上記第2、2に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明から、ランド形状の前提構成についての限定事項である「基板上において該基板の表面を被覆するレジストの開口部に形成されるランドのランド形状であって」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定的に減縮した本願補正発明が、上記第2、3及び4に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-10 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2007-130440(P2007-130440)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中尾 麗  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
山岸 利治
発明の名称 ランド形状及びそれを備える基板  
代理人 木村 満  

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