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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16B
管理番号 1270193
審判番号 不服2012-5223  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-21 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2007-281778「ケースの固定構造」拒絶査定不服審判事件〔平成21年5月21日出願公開、特開2009-108924〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年10月30日の出願であって、平成23年12月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成24年3月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年6月8日付け、及び平成24年11月22日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
第1のケース部材と、前記第1のケース部材に取り付けられる第2のケース部材と、前記第1のケース部材と前記第2のケース部材とを互いに固定する固定部と、を備えたケースの固定構造において、
前記固定部は、前記第1のケース部材と前記第2のケース部材とのうちいずれか一方に設けられたねじが螺合する螺合孔と、他方に設けられ且つ前記ケースの表面から該ケース内に向かって凹状に形成された凹部と、を備え、
前記凹部が、前記表面と平行で且つ前記螺合孔の位置に対応した貫通孔が設けられた底壁と、前記表面と前記底壁とを連結する側壁と、を有し、前記ケースの前記表面の外縁部に配されているとともに、
前記側壁が、前記表面及び前記底壁に対して垂直な垂直面と、前記底壁から前記ケースの外周面に向かうのにしたがって徐々に前記貫通孔から離れる方向に前記底壁に対して傾斜すると共に前記底壁から離れた側の端部が前記ケースの表面より低い位置で前記ケースの前記外周面に連なっている傾斜面と、で構成されている
ことを特徴とするケースの固定構造。」

2.本願の出願前に日本国内において頒布され、当審において平成24年9月19日付けで通知した拒絶理由に引用された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:実願昭62-78149号(実開昭63-187707号)のマイクロフィルム
(2)刊行物2:実願昭61-44947号(実開昭62-156537号)のマイクロフィルム
(3)刊行物3:実願昭59-190403号(実開昭61-104908号)のマイクロフィルム

(刊行物1)
刊行物1には、「筐体のねじ取付部の構造」に関して、図面(特に、第1図、及び従来技術に関する第6?8図を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「本考案は筐体のねじ取付部の構造に関し、更に詳しくは、筐体の表面に開口してねじの頭部を受容する筒状の凹部と、凹部の底面に開口するねじ挿通穴とを備えたねじ取付部の構造に関する。」(第2頁第6?9行)
(b)「筐体、例えば電話器等の上カバーと下カバーとからなるプラスチック製の筐体において、上カバーと下カバーとをプラスチック用ねじにより相互固定する場合、省力化、工数削減等による原価低減のため、ロボットによる自動組立が一般化しつつある。このようなロボットによる自動組立を円滑に行うためには、エアードライバー等によるねじの締込みが円滑に行われるように、ねじを所定の位置に正しく自立させる必要がある。」(第2頁第10?18行)
(c)「第6図ないし第8図は従来の筐体のねじ取付部の構造を示したものである。第6図を参照すると、プラスチック製の筐体1は下カバー2と上カバー3とを備えており、両カバー2,3の内側にはそれぞれ内方に突出して先端が互いに衝合するボス4,5が設けられ、上カバー3のボス5の先端にはねじ6のねじ部をねじ込むための穴7が形成され、下カバー2のボス4には下カバー2の表面に開口してねじ6の頭部を受容する筒状の凹部8と、凹部8の底面とボス4の先端とに開口するねじ挿入穴9とが形成されている。
[考案が解決しようとする問題点]
上述した従来の筐体のねじ取付部にねじを自動供給する場合、凹部8の開口を上に向けて凹部8内にねじ6が落とされるが、このとき、第7図に示すように、ねじ6の先端が凹部8の底面に当接してねじ挿通穴9内に適切に入らないことがある。このような状態はねじ6の長さに比して凹部8が深い程起こり易い。ねじ7(「6」の誤記と思われる。)がねじ挿通穴9内に適切に入らなかった場合には、第8図に示すように、ねじ6の先端がねじ挿通穴9内に納まるように、ねじ6を凹部8内に入れ直すことが必要になり、第7図に示す状態のまま、ねじ6をエアードライバー等で締め込むと、ねじ6の締付け不良や下カバー2の取付部8の底部の破損を招くこととなる。
ねじ挿通穴9の周縁に沿って凹部8の底面にテーパー状の座ぐりを形成すれば、ねじ6がねじ挿通穴9内に多少入り易くなるが、ねじ6の頭部の制約から、座ぐりを大きくすることはできないため、ねじ6の供給ミスを完全に防止することはできない。」(第3頁第2行?第4頁第13行)
(d)「第1図を参照すると、プラスチック製の筺体11は下カバー12と上カバー13とを備えており、両カバー12,13の内側にはそれぞれ内方に突出して先端が互いに衝合する複数個のボス14,15が設けられている。
第2図に詳細に示すように、上カバー13のボス15の先端にはねじ16のねじ部をねじ込むための穴17が形成され、下カバー12のボス14には下カバー12の表面に開口してねじ16の頭部を受容する筒状の凹部18と、凹部18の底面とボス14の先端とに開口するねじ挿通穴19とが形成されている。」(第6頁第2?13行)
(e)第6?8図から、凹部8が、表面と平行で且つ穴7の位置に対応したねじ挿通穴9が設けられた底面と、表面と底面とを連結する側壁と、を有しているとともに、側壁が、表面及び底面に対して垂直な垂直面で構成されていることが看取できる。
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
上カバー3と、前記上カバー3に取り付けられる下カバー2と、前記上カバー3と前記下カバー2とを互いに固定するボス4、5と、を備えた筺体1のねじ取付部の構造において、
前記ボス4、5は、前記上カバー3に設けられたねじ6がねじ込まれる穴7と、前記下カバー2に設けられ且つ前記筺体1の表面から該筺体1内に向かって筒状に形成された凹部8と、を備え、
前記凹部8が、前記表面と平行で且つ前記穴7の位置に対応したねじ挿通穴9が設けられた底面と、前記表面と前記底面とを連結する側壁と、を有しているとともに、
前記側壁が、前記表面及び前記底面に対して垂直な垂直面で構成されている筺体1のねじ取付部の構造。

(刊行物2)
刊行物2には、「インストルメントパネルの取付装置」に関して、図面(特に、第3図を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(f)「この考案は、自動車の運転席前部に設けられるインストルメントパネルの取付装置に関するものである。」(第1頁第20行?第2頁第2行)
(g)「自動車の運転席前部にはインストルメントパネルが取付けられ、速度計や燃料計等の計器ならびにラジオ、時計などを保持し、また助手席側のグローブボックスを形成するようになっている。このような機能を有するインストルメントパネルは、通常、樹脂成形品が用いられ、これを数個所においてスクリュにより、金属製の車体側パネル(カウルアッパパネル)に取付けた構造となっている。」(第2頁第4?12行)
(h)「インストルメントパネル1には凹部10があり、この凹部10の底部にはインストルメントパネル1の長手方向に延びる長孔11が設けられている。そしてこの凹部10は、第3図に示すようにカウルアッパパネル6の上部に溶接12で取付けられたブラケット13の上部に位置しており、このブラケット13の内側に溶着されたナット14にスクリュ15を螺合することにより、ブラケット13を介してインストルメントパネル1をカウルアッパパネル6に取付けるようになっている。」(第5頁第16行?第6頁第6行)
(i)第3図から、凹部10の対向する側壁のうち右側の側壁(構造上、スクリュ15よりも右側の側壁側からしかスクリュ15を螺合することができない点に留意されたい。)が、底部から表面に向かうにしたがって徐々に長孔11から離れる方向に底部に対して傾斜する傾斜面に構成されていることが看取できる。

(刊行物3)
刊行物3には、「車輛用灯具」に関して、図面(特に、第2図及び第4図を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、拗音及び促音は小書きで表記した。
(j)「この考案は車輛用灯具に関する。さらに詳細には車体への取付けにおいて改良した車輛用灯具に関するものである。」(第1頁第13?15行)
(k)「従来のリヤーコンビネーションランプDでは、作業者が上半身をトランクルームBの内部にかなり屈まなければナットを締めつけることができなかった。そのために、作業がやり難いばかりでなく腰痛の原因にもなり易く、組立効率の低下となる問題を有していた。」(第2頁第13?18行)
(l)「問題は、紙面に対してランプボディdの下側に位置するボルトkに対するナツトmの締めつけ作業である。このボルトkはランプボディdの横巾より短かいために、トランクルームBの開口部からではランプボディdに隠れて見えない。従って、作業者はトランクルームB内に矢印R方向に極端に屈み込んでボルトkが見える範囲、即ち少なくともボルトkの先端とランプボディdの下端縁とを結ぶ視線L上に目Eが位置する範囲まで屈み込んでナットmの中心軸をボルトkの中心軸に一致させてナットmの締めつけ作業をしなければならなかった。」(第3頁第17行?第4頁第8行)
(m)「下方のボルト63については、その近傍におけるハウジング3の背面が上方に向った傾斜面36を形成してバックカバー4と共に切欠き部1Aを形成しているために、作業者はトランクルームB内に上半身を矢印S方向に若干屈み込むだけで前記切欠き部1Aからボルト63の先端部が視線lの如く視認でき、従来と比較して容易にナット73の締めつけ作業ができるものである。」(第6頁第15行?第7頁第3行)
(n)「本考案の車輛用灯具は上記の如く構成されたものであるから、従来のように灯具の下側のボルトにナットを締めつける作業にあたって作業者が上半身をトランクルーム内に極度に屈み込む必要がなくなり、腰痛発生を低減できると共に、車体への組付け作業性が著しく向上する等の顕著な効果を奏する。」(第7頁第9?15行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「上カバー3」は本願発明の「第1のケース部材」に相当し、以下同様に、「下カバー2」は「第2のケース部材」に、「ボス4、5」は「固定部」に、「筺体1」は「ケース」に、「ねじ取付部の構造」は「固定構造」に、「ねじ6」は「ねじ」に、「ねじ6がねじ込まれる穴7」又は「穴7」は「ねじが螺合する螺合孔」又は「螺合孔」に、「筒状」は「凹状」に、「凹部8」は「凹部」に、「ねじ挿通穴9」は「貫通孔」に、「底面」は「底壁」に、それぞれ相当する。また、本願発明の「・・・のうちいずれか一方に設けられ・・・、他方に設けられ・・・」は選択的記載であることに鑑みれば、両者は下記の一致点、並びに相違点1及び2を有する。
<一致点>
第1のケース部材と、前記第1のケース部材に取り付けられる第2のケース部材と、前記第1のケース部材と前記第2のケース部材とを互いに固定する固定部と、を備えたケースの固定構造において、
前記固定部は、前記第1のケース部材と前記第2のケース部材とのうちいずれか一方に設けられたねじが螺合する螺合孔と、他方に設けられ且つ前記ケースの表面から該ケース内に向かって凹状に形成された凹部と、を備え、
前記凹部が、前記表面と平行で且つ前記螺合孔の位置に対応した貫通孔が設けられた底壁と、前記表面と前記底壁とを連結する側壁と、を有しているとともに、
前記側壁が、前記表面及び前記底壁に対して垂直な垂直面を有しているケースの固定構造。
(相違点1)
前記凹部が、本願発明は、「前記ケースの前記表面の外縁部に配されている」のに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。
(相違点2)
前記側壁が、本願発明は、前記表面及び前記底壁に対して垂直な垂直面と、「前記底壁から前記ケースの外周面に向かうのにしたがって徐々に前記貫通孔から離れる方向に前記底壁に対して傾斜すると共に前記底壁から離れた側の端部が前記ケースの表面より低い位置で前記ケースの前記外周面に連なっている傾斜面と、」で構成されているのに対し、引用発明は、表面及び底面に対して垂直な垂直面で構成されている点。
そこで、相違点1及び2について検討をする。
(相違点1について)
刊行物1には、「下カバー12の表面に開口してねじ16の頭部を受容する筒状の凹部18(中略)が形成されている。」(第6頁第10?13行、上記摘記事項(d)参照)と記載され、また、第1図から、凹部18は下カバー12の外縁部に近接して配置されている構成が看取できる。
上記記載からみて、第6?8図に係る引用発明において、凹部8を下カバー2のどの位置に設けるかは、筺体1の用途、下カバー2の形状、凹部8の大きさ等により、その位置が変わるものであるところ、筐体1の用途等に応じて適宜な位置に設けることは普通に行うことであるから、当業者における設計変更の範囲内の事項にすぎない。
してみれば、引用発明の凹部8を、ケースの表面の外縁部に配することにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
(相違点2について)
刊行物1には、「第7図に示すように、ねじ6の先端が凹部8の底面に当接してねじ挿通穴9内に適切に入らないことがある。(中略)ねじ挿通穴9内に適切に入らなかった場合には、第8図に示すように、ねじ6の先端がねじ挿通穴9内に納まるように、ねじ6を凹部8内に入れ直すことが必要になり、第7図に示す状態のまま、ねじ6をエアードライバー等で締め込むと、ねじ6の締付け不良や下カバー2の取付部8の底部の破損を招くこととなる。(中略)ねじ6の供給ミスを完全に防止することはできない。」(第3頁第17行?第4頁第13行、上記摘記事項(c)参照)と記載されており、刊行物1には、引用発明において、ねじ6をねじ挿通穴9内に適切に入れて、ねじ6の締付不良や、ねじ6の供給ミスを防止しようという動機付けが記載又は示唆されている。
また、引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項は、ともに締結具により固定する技術に関するものであって、刊行物2には、「自動車の運転席前部にはインストルメントパネルが取付けられ、速度計や燃料計等の計器ならびにラジオ、時計などを保持し、また助手席側のグローブボックスを形成するようになっている。」(第2頁第4?8行、上記摘記事項(g)参照)、及び「インストルメントパネル1には凹部10があり、この凹部10の底部にはインストルメントパネル1の長手方向に延びる長孔11が設けられている。そしてこの凹部10は、第3図に示すようにカウルアッパパネル6の上部に溶接12で取付けられたブラケット13の上部に位置しており、このブラケット13の内側に溶着されたナット14にスクリュ15を螺合することにより、ブラケット13を介してインストルメントパネル1をカウルアッパパネル6に取付けるようになっている。」(第5頁第16行?第6頁第6行、上記摘記事項(h)参照)と記載され、また、第3図から、凹部10の対向する側壁のうち右側の側壁(構造上、スクリュ15よりも右側の側壁側からしかスクリュ15を螺合することができない点に留意されたい。)が、底部から表面に向かうにしたがって徐々に長孔11から離れる方向に底部に対して傾斜する傾斜面に構成されていることが看取できる(上記摘記事項(i)参照)。
一方、引用発明及び刊行物3に記載された技術的事項は、ともに締結具により固定する技術に関するものであって、刊行物3には、「下方のボルト63については、その近傍におけるハウジング3の背面が上方に向った傾斜面36を形成してバックカバー4と共に切欠き部1Aを形成しているために、作業者はトランクルームB内に上半身を矢印S方向に若干屈み込むだけで前記切欠き部1Aからボルト63の先端部が視線lの如く視認でき、従来と比較して容易にナット73の締めつけ作業ができるものである。」(第6頁第15行?第7頁第3行、上記摘記事項(m)参照)、及び「本考案の車輛用灯具は上記の如く構成されたものであるから、従来のように灯具の下側のボルトにナットを締めつける作業にあたって作業者が上半身をトランクルーム内に極度に屈み込む必要がなくなり、腰痛発生を低減できると共に、車体への組付け作業性が著しく向上する等の顕著な効果を奏する。」(第7頁第9?15行、上記摘記事項(n)参照)と記載されていることから理解できるように、刊行物3には、作業者の視線lを遮る部分を傾斜面36とすることにより、ボルト63とナット73の締め付け作業を目視・視認できるようにして、組立作業をやり易くするとともに、組立効率を著しく向上することが記載又は示唆されている。
刊行物3に記載又は示唆された技術的事項によれば、刊行物2の第3図から看取できる傾斜面も、ボルト等の締め付け作業を目視・視認できる機能を有していることは、技術的に自明の事項にすぎないし、その際、傾斜面を、作業者がより容易に目視・視認し易いような角度とすることにより、底壁から離れた側の端部がケースの表面より低い位置でケースの外周面に連なるようにして、凹部の底壁とねじとの間をより容易に目視・視認できるようにすることは、必要に応じて当業者が行う設計変更の範囲内の事項にすぎない。
してみれば、上記(相違点1について)における判断の前提下において、引用発明の凹部8の側壁に、刊行物2及び3に記載又は示唆された傾斜面を適用するとともに、作業者がより目視・視認し易いような角度とすることにより、底壁から離れた側の端部がケースの表面より低い位置でケースの外周面に連なるようにして、ボルト等の締め付け作業をより容易に目視・視認できるようにし、ねじ6をねじ挿通穴9内に適切に入れて、ねじ6の締付不良や、ねじ6の供給ミスを防止し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。

また、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明、刊行物2及び3に記載又は示唆された技術的事項が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、当審における拒絶理由に対する平成24年11月22日付けの意見書において、「本発明(注:本審決における「本願発明」に対応する。)は、特に、『前記底壁から前記ケースの外周面に向かうのにしたがって徐々に前記貫通孔から離れる方向に前記底壁に対して傾斜すると共に前記底壁から離れた側の端部が前記ケースの表面より低い位置で前記ケースの前記外周面に連なっている傾斜面』を有し、この傾斜面は、『前記底壁から離れた側の端部が前記ケースの表面より低い位置で前記ケースの前記外周面に連なっている』ものであり、この構成により、『ねじを貫通孔に挿通し且つ螺合孔に螺合して、第1のケース部材と第2のケース部材とを互いに固定した際に、凹部の底壁とねじとの間を容易に目視することができるので、ねじ締めが完了しているか否かを視認することができる。』という効果を有しています。
このような構成は、単に『傾斜面の底壁から離れた側の端部がケースの外周面に連なる』ようにしただけでなく、さらに、『ケースの表面より低い位置で』ケースの外周面に連なるように構成することで、凹部の底壁とねじとの間をより容易に目視できる効果を奏するものです。」(「2.発明が特許されるべき理由」「(4)本願発明と引用文献との対比」の項参照)と主張している。
しかしながら、上述したように、刊行物3に記載又は示唆された技術的事項によれば、刊行物2の第3図から看取できる傾斜面も、ボルト等の締め付け作業を目視・視認できる機能を有していることは、技術的に自明の事項にすぎないし、その際、傾斜面を、作業者がより容易に目視・視認し易いような角度とすることにより、底壁から離れた側の端部がケースの表面より低い位置でケースの外周面に連なるようにして、凹部の底壁とねじとの間をより容易に目視・視認できるようにすることは、必要に応じて当業者が行う設計変更の範囲内の事項にすぎないものである。
よって、上記(相違点1について)及び(相違点2について)において述べたように、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるところ、審判請求人が主張する本願発明が奏する作用効果は、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものにすぎず、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の作用効果を奏するとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-12 
結審通知日 2012-12-18 
審決日 2012-12-28 
出願番号 特願2007-281778(P2007-281778)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鎌田 哲生  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
冨岡 和人
発明の名称 ケースの固定構造  
代理人 川崎 隆夫  
代理人 朴 志恩  
代理人 鳥野 正司  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 津田 俊明  

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