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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1270199
審判番号 不服2012-7622  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-25 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2006-154273「電気機器の制御基板」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月13日出願公開、特開2007-324434〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年6月2日の出願であって、平成24年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成24年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には前記貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板に前記チョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁に当接するフランジを形成し、他端には先になるほど細くなる部分を形成して前記プリント基板の孔の下側孔縁に係合する変形自在な係合部を一体的に有し、
前記係合部は、割溝を間において複数の爪を配列した構成を採っており、前記爪を弾性に抗して内側へ変形することにより、前記爪の外側を結ぶ外径を孔よりも小さくできるようにし、かつ前記割溝は、前記締結部材において前記孔を貫通する深さまで形成された電気機器の制御基板。
【請求項2】
チョークコイルの貫通孔部はコイルを巻回したコアの中央孔で構成した請求項1記載の電気機器の制御基板。
【請求項3】
チョークコイルはコアとコアを覆うコアカバーとコアカバーに巻回したコイルとを備え、このコアカバーの中央に筒状部を設けて、これを貫通孔部に設定した請求項1記載の電気機器の制御基板。」に補正された。
上記補正は、請求項1についてみると、実質的に、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「係合部」について、「前記係合部は、割溝を間において複数の爪を配列した構成を採っており、前記爪を弾性に抗して内側へ変形することにより、前記爪の外側を結ぶ外径を孔よりも小さくできるようにし、かつ前記割溝は、前記締結部材において前記孔を貫通する深さまで形成された」という事項を追加して限定するものであって、これは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
実願昭63-122107号(実開平2-44308号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。なお、全角半角等の文字の大きさ、字体、促音、拗音、句読点などは記載内容を損なわない限りで適宜表記した。
(あ)「2.実用新案登録請求の範囲
1.楔状係止部(12)を有する軸部11と、該軸部から半径方向外側の延びた押圧部(14)とが非金属材で一体的に成形された止め具(10、20、30)を使用し、基板(4)に前記軸部が貫通する穴(4a)を設け、前記止め具の軸をリング状コイルの中心穴に通して前記プリント板の穴に挿入することにより、前記軸部の楔状係止部を該穴に係合させて前記押圧部でリング状コイルの一側面を押圧・固定するように構成したリング状コイルの取付け構造。」(明細書第1ページ第4?14行)
(い)「[従来の技術]
第10図は空心コイルをプリント板に実装した従来構造を示すものである。空心コイル1はリング状のボビン2と、このボビン2に円周方向に巻回された巻線3からなり、ボビン2の一側がプリント板4の面に接触するように接着剤5で固定される。第11図は…(略)…同様に接着剤5でプリント板4に固定される。このような従来のリング状コイルの取付構造によると、いずれも接着剤5でプリント板4に固定するため、接着剤5を塗布するための工数を必要であり、また接着剤5が乾くまでに時間を要する等作業性の点で問題があった。
[考案が解決しようとする課題]
従って、本考案では、簡単な止め具を使用することによりリング状コイルを簡単にかつ短時間にプリント板等の基板に実装しうる取付構造を提供することを目的とする。」(明細書第3ページ第1行?第4ページ第2行)
(う)「第1実施例に係る止め具10は、第3図に示すように、軸部11の先端に楔状係止部12を有し、また中心部にはスリット13が形成されている。また、軸部12の上端には傘状の押圧部14が半径方向外側の延びている。プリント板4のコイル取付位置には、止め具10の軸部11が貫通できる穴4aが設けられ、空心コイル1(第1図)の場合も、トロイダルコイル(第2図)の場合も、止め具10の軸部11をリング状コイルの中心穴に通してプリント板4の穴4aに挿入することにより、軸部11先端の楔状係止部12を穴4aの裏面に係合し、傘状の押圧部14がリング状コイルの一側面を押圧・固定する。この場合において、傘状の押圧部14は変形してリング状コイルの一側面(取付状態では上面)に押圧力を及ぼし、リング状コイルをしっかりと固定する。」(明細書第5ページ第14行?第6ページ第10行)
以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「プリント板4と、前記プリント板4に装着したリング状コイルとを備え、前記リング状コイルには、リング状のボビン2に巻線を巻回して、中心穴を、前記プリント板4の前記中心穴と対向する部分には前記中心穴より径小な穴4aをそれぞれ設け、前記中心穴および穴4aに挿通させた止め具10で前記プリント板4に前記リング状コイルを固定するようにし、かつ前記止め具10は、一端に中心穴の上部穴縁に当接する傘状の押圧部14を形成し、他端には先になるほど細くなる部分を形成して前記プリント板4の穴4aの下側穴縁に係合する変形自在な楔状係止部12を一体的に有し、
前記楔状係止部12は、中心部にスリット13が形成された複数の係止突起を配列した構成を採っており、前記係止突起を弾性に抗して内側へ変形することにより、前記係止突起の外側を結ぶ外径を穴4aよりも小さくできるようにした基板。」
(3)対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、後者の「プリント板4」は前者の「プリント基板」に相当し、以下同様に、「中心穴」は「貫通孔部」に、「穴4a」は「孔」に、「止め具10」は「締結部材」に、「上部穴縁」は「上部孔縁」に、「傘状の押圧部14」は「フランジ」に、「下側穴縁」は「下側孔縁」に、「楔状係止部12」は「係合部」に、「スリット13」は「割溝」に、「係止突起」は「爪」に、「中心部にスリット13が形成された複数の係止突起を配列した構成」は「割溝を間において複数の爪を配列した構成」に、「基板」は「電気機器の制御基板」に、それぞれ相当する。後者の「リング状コイル」と前者の「チョークコイル」は「コイル」である点で一致する。
したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、
「プリント基板と、前記プリント基板に装着したコイルとを備え、前記コイルには略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には前記貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板に前記コイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁に当接するフランジを形成し、他端には先になるほど細くなる部分を形成して前記プリント基板の孔の下側孔縁に係合する変形自在な係合部を一体的に有し、
前記係合部は、割溝を間において複数の爪を配列した構成を採っており、前記爪を弾性に抗して内側へ変形することにより、前記爪の外側を結ぶ外径を孔よりも小さくできるようにした電気機器の制御基板。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明のコイルは「チョークコイル」であり、「前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を」設けているのに対し、引用例1発明のコイルは「リング状コイル」であり、「前記リング状コイルには、リング状のボビン2に巻線を巻回して、中心穴を」設けている点。
「相違点2」
本願補正発明の「割溝」は「前記締結部材において前記孔を貫通する深さまで形成された」ものであるのに対し、引用例1発明の「スリット13」はそのような事項を備えるかどうか、不明である点。
(4)判断
(4-1)相違点1について
チョークコイル及びその構造は広く知られており、引用例1発明の「リング状コイル」を「チョークコイル」として、相違点1に係る本願補正発明の上記事項とすることは適宜の設計事項にすぎない。
(4-2)相違点2について
引用例1発明の楔状係止部12は、中心部にスリット13が形成された複数の係止突起を配列した構成を採っている。このスリット13の深さをどの程度とするかは、係止突起や穴4a等の種々の寸法関係に応じて、係止突起をプリント板4の穴4aに挿入して係合する際に必要な変形の程度や変形の柔軟性等を考慮して適宜設計する事項である。また、審判請求の理由に「(2)補正の根拠の明示 …また、請求項1の補正事項である『前記割溝は、前記締結部材において前記孔を貫通する深さまで形成された』は、出願当初の図面の図1、図4の記載に基づくものです。」と説明されているように、本願の請求項1の該事項は本願の図1、図4の記載に基づくものであるが、本願の図1、図4に示されている該事項と略同様の事項は、例えば、実願平1-100272号(実開平3-39811号)のマイクロフィルム(特に第2図、第4図)、特開2002-42923号公報(特に図1、図9)に示されているように周知であり、一般に、このようなスリットを基板等の穴を貫通する深さまで形成することは当業者にとって特別のものではない。以上からすると、引用例1発明のスリット13を穴4aを貫通する深さまで形成することは格別困難なことではない。
そして、本願補正発明の効果は、引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が予測し得たものであって、格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、本件補正における他の補正事項を検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成24年4月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成23年7月21日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】
プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁に当接するフランジを形成し、他端には先になるほど細くなる部分を形成してプリント基板の孔の下側孔縁に係合する変形自在な係合部を一体的に有する電気機器の制御基板。」

3-1.本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について
(1)本願発明1
本願発明1は上記のとおりである。
(2)引用例
引用例1、及び、その記載事項は上記2.に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明1は実質的に、上記2.で検討した本願補正発明から、その「前記係合部は、割溝を間において複数の爪を配列した構成を採っており、前記爪を弾性に抗して内側へ変形することにより、前記爪の外側を結ぶ外径を孔よりも小さくできるようにし、かつ前記割溝は、前記締結部材において前記孔を貫通する深さまで形成された」という事項を削除して拡張したものに相当する。
そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は、実質的に同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
したがって、本願発明1は引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、平成24年9月26日付け回答書において補正案が提示されているが、引用例1発明において、止め具10の軸部11の径がリング状コイルの中心穴の径より小さいとリング状コイルが水平方向にずれるおそれがあること、両者の径を略同じにすることが望ましいことは当業者に明らかである。

4.結語
以上のとおり、本願発明1(本願の請求項1に係る発明)が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?8に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-06 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2006-154273(P2006-154273)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 泰英  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 川本 真裕
常盤 務
発明の名称 電気機器の制御基板  
代理人 寺内 伊久郎  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 内藤 浩樹  

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