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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G |
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管理番号 | 1270205 |
審判番号 | 不服2012-8231 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-07 |
確定日 | 2013-02-14 |
事件の表示 | 特願2005-326916「画像処理による車両安全管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月27日出願公開、特開2006-195959〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成17年11月11日(パリ条約による優先権主張2004年11月12日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年10月14日付けで拒絶理由が通知され、平成22年11月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成23年5月2日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成23年7月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年2月28日付けで上記平成23年7月7日付けの手続補正書による手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、平成24年5月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成24年8月13日付けで書面による審尋がなされ、平成24年10月10日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成24年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年5月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「 【請求項1】 自車両の周辺領域を画像化するようになっている画像処理システムであって、この画像処理システムが、 撮像装置により自動的に捕捉された自車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報を受信するようになっている画像処理プロセッサを含み、 自車両のすぐ近くの画像を示す情報を解析して、自車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報が少なくとも1つの所定の環境を示すかどうかを自動的に判断するように画像処理プロセッサが構成されている、画像処理システムと、 画像処理プロセッサからの情報を受信するようになっている安全管理プロセッサであって、画像処理プロセッサからの情報を解析して自車両の走行条件の現状を判断する論理を含むこの安全管理プロセッサと、 安全管理プロセッサからの情報を受信するようになっている車両制御プロセッサであって、安全管理プロセッサからの情報を解析して自車両の動作特性を変化させる論理を含む車両制御プロセッサと を含み、 自車両の動作特性が、 (a_(1))速度、 (b_(1))加速度、 (c_(1))エンジントルク、 (d_(1))各車輪のトルク制御、 (e_(1))操縦 のうちの少なくとも1つを含む、車両安全管理システム。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。) と補正された。 上記補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「車両」を「自車両」と限定し、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「車両制御プロセッサ」について「変化させる自車両の動作特性が、(a_(1))速度、(b_(1))加速度、(c_(1))エンジントルク、(d_(1))各車輪のトルク制御、(e_(1))操縦のうちの少なくとも1つを含む」との限定を付加する補正を含むものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.-1 引用文献 (1)引用文献の記載 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2002-62148号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0005】本発明は上記従来の問題を解決するもので、見通しの悪い交差点での運転支援を行う優れた車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とする。 【0006】また本発明はナビゲーション機能と運転支援機能を自動的に切り替える優れた車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とする。」 (イ)「【0009】(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態における車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。この車載用ナビゲーション装置は、GPS等により自車の現在位置を算出する位置算出手段101と、地図情報を格納する地図情報格納手段102と、リモコン等の操作手段103と、CCDカメラなどの撮像手段104および105と、複数の撮像手段104および105からのステレオ映像により物体の位置や移動速度および移動方向を算出する物体位置算出手段106と、地図情報格納手段102から自車位置付近の地図を読み出してナビゲーションの映像を出力すると共に、物体位置算出手段106で算出された物体の位置と操作手段103から入力された指令とをもとにナビゲーションの映像を加工する制御手段107と、操作手段103からの入力に従って提示方法を決定する提示方法決定手段108と、提示方法決定手段108の決定された合成方法で複数の映像を合成する映像合成手段109と、映像合成手段109で合成された映像を表示する表示手段110とを有する。 【0010】以上のように構成された車載用ナビゲーション装置の動作について図2乃至図5を用いて説明する。 【0011】位置算出手段101で算出された自車位置は制御手段107に入力される。また撮像手段104および105により取得された自車付近の映像は物体位置算出手段106に入力されると共に、映像合成手段109に入力される。物体位置算出手段106は、撮像手段104および105からのステレオ映像により物体の位置や移動速度および移動方向を算出して制御手段107に入力する。制御手段107は、位置算出手段101で算出された自車位置付近の地図を地図情報格納手段102から読み出してナビゲーションの映像を生成し、映像合成手段109へ出力する。また後述するように、物体位置算出手段106で算出された位置によりナビゲーションの映像の表示状態を変化させる。 【0012】操作手段103によって、撮像手段104の映像と、撮像手段105の映像と、ナビゲーションの映像のいずれを表示するか提示方法決定手段108に指示する。映像合成手段109は提示方法決定手段108の決定に従って映像を合成し、表示手段110ヘ出力する。 【0013】図2は、見通しの悪い交差点を上方から見た図である。この図において矢印は自車と物体の移動方向を示している。撮像手段104および105が例えば図2の様に自車の左前方と右前方に設置されているものとする。 【0014】図3は、提示方法決定手段108が、映像合成手段109に対して、ナビゲーションの映像と撮像手段104および105で取得した自車左前方および右前方の映像を合成することを指示し、合成映像を表示手段110で表示した場合を示している。 【0015】図4は、物体位置算出手段106で算出された位置によりナビゲーションの映像の表示方法を変化させる処理の一例であり、図5はその画面表示である。 【0016】通常はナビゲーションの映像を表示しているものとする。図4において、フローの開始に伴い、まずステップ(図ではSt. と表記されている。以下同じ)101において物体位置算出手段106より物体の位置情報を取得する。ステップ101で物体の位置が算出された場合、すなわち撮像手段104および105の視野内に物体が存在し、その位置が算出された場合、ステップ102に進む。ステップ102では、画面の点滅や色を変える等の強調表示を行って運転手に注意を促す。 【0017】図5は、画面を点滅表示している場合の例である。この図において、矢印は時間の経過を示している。つまり、上段に図示されている高輝度の画面の次に中段に図示されている低輝度が画面が表示され、その次に下段に図示されている高輝度の画面が表示される。 【0018】以上のように、本発明の第1の実施の形態によれば、撮像手段104および105により、自車左前方および右前方の映像を取得してそれらの映像をナビゲーション映像と共に表示したり、前記映像をもとに物体の存在が検知された場合にナビゲーション映像を強調表示したりすることで、見通しの悪い交差点での運転支援を行うことができる。 【0019】なお、ナビゲーションの映像と左前方および右前方の映像を合成して表示する例を示したが、左前方の映像と右前方の映像だけを合成して表示しても構わない。また左前方の映像だけ、もしくは右前方の映像だけを表示しても構わない。さらにナビゲーションの映像と左前方の映像、もしくはナビゲーションの映像と右前方の映像を表示しても構わない。 【0020】また、物体位置算出手段は、複数の撮像手段からのステレオ映像で物体の位置や移動速度および移動方向を算出したが、レーダーで算出しても構わない。そして撮像手段は左前方と右前方に設置されている例を示したが、これ以外に左後方、右後方等複数台の撮像手段を設置しても構わない。 【0021】(第2の実施の形態)本発明の第2の実施の形態では、自車位置から一定の距離内に物体が存在する場合にナビゲーション映像の強調表示を行うことで運転者に注意を促すように構成した。 【0022】本発明の第2の実施の形態における車載用ナビゲーション装置は制御手段107が実行する処理以外は第1の実施の形態における車載用ナビゲーション装置と同一である。 【0023】次に、本発明の第2の実施の形態における車載用ナビゲーション装置の動作について図6のフローチャートでその動作を説明する。図6のフローチャートにおいて図4と同じ符号が付されたステップは図4のステップと同じ処理を実行する。 【0024】通常はナビゲーションの映像を表示しているものとする。図6において、フローの開始に伴い、まずステップ201において物体位置算出手段106より物体の位置を取得する。ステップ201で物体の位置が自車位置から一定以内の距離の場合、ステップ102に進む。ステップ102では画面の点滅や色を変える等の強調表示を行って運転手に注意を促す。 【0025】以上のように、本発明の第2の実施の形態によれば、撮像手段104および105により、自車左前方および右前方の映像を取得してそれらの映像をナビゲーション映像と共に表示したり、前記映像をもとに自車位置から一定以内の距離に物体の存在が検知された場合にナビゲーション映像を強調表示したりすることで、見通しの悪い交差点での運転支援を行うことができる。 【0026】なお物体が自車位置から一定以下の距離に存在する場合であってもその物体が自車位置から遠ざかっている場合には強調表示を行わなくても構わない。」 (ウ)「【0035】(第4の実施の形態)本発明の第4の実施の形態では、物体が検出された場合に音声出力を行うことで運転者に注意を促すように構成した。 【0036】図9は、本発明の第4の実施の形態における車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。この図において、図1と同じ符号が付されたブロックは図1のブロックと同じ構成を有し、同じ機能を有する。 【0037】この車載用ナビゲーション装置は、図1に示した車載用ナビゲーション装置に対して音声出力手段202を付加すると共に、音声出力手段202に対して音声の出力を制御する機能を有する制御手段201を設けたことである。 【0038】以上の構成を有する車載用ナビゲーション装置の動作について図10のフローチャートでその動作を説明する。図10のフローチャートにおいて図4と同じ符号が付されたステップは図4のステップと同じ処理を実行する。 【0039】まずステップ101において物体位置算出手段106より物体の位置を取得する。ステップ101で物体の位置が算出された場合、ステップ401に進む。ステップ401では、音声出力手段202において合成音声の出力やブザーを鳴らすことで運転手に注意を促す。 【0040】以上のように、本発明の第4の実施の形態によれば、撮像手段104および105により、自車左前方および右前方の映像を取得してそれらの映像をナビゲーション映像と共に表示したり、自車左前方および右前方の映像を取得してそれらの映像をもとに物体の存在が検知された場合に音声出力を行うことにより、見通しの悪い交差点での運転支援を行うことができる。 【0041】なお、物体が自車位置から一定以下の距離に存在する場合のみ音声出力を行っても構わない。また物体が自車位置から遠ざかる場合は音声出力を行わなくても構わない。さらに物体位置検出手段106の構成の変形例、および撮像手段の設置位置の変形例については第1の実施の形態におけるそれぞれの変形例と同様である。」 (2)引用文献1記載の事項 上記(1)(ア)ないし(ウ)、及び図面の記載から、以下の事項が分かる。 (エ)段落【0009】、【0036】、【0037】の記載及び図9の記載からみて、物体位置算出手段106は、撮像手段104、105からのステレオ映像により物体の位置や移動速度および移動方向を算出して制御手段201に入力し、制御手段201は、物体が自車位置から一定以下の距離に存在する場合に、音声出力手段202から音声の出力を行うから、 物体位置算出手段106は、自車付近の映像を解析して、自車付近の映像が物体の位置や移動速度および移動方向がどのようなものであるかを示すかを自動的に判断することが分かる。 (オ)また、同様に、物体位置算出手段106は、撮像手段104、105からのステレオ映像により物体の位置や移動速度および移動方向を算出して制御手段201に入力し、制御手段201は、物体が自車位置から一定以下の距離に存在する場合に、音声出力手段202から音声の出力を行うから、 制御手段201は、物体位置算出手段106からの情報を解析して、物体が自車位置から一定以下の距離に存在することを判断する論理を含むとともに、報知をするという自車両の動作特性を変化させる論理を含むことが分かる。 (3)引用発明 上記(1)(ア)ないし(ウ)及び図面の記載、並びに、(2)(エ)(オ)から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 自車付近の映像を取得するようになっている物体位置算出手段106であって、この物体位置算出手段106が、 撮像手段104、105により取得された自車付近の映像が入力されるようになっている物体位置算出手段106を含み、 自車付近の映像を解析して、自車付近の映像が物体の位置や移動速度および移動方向がどのようなものであるかを示すかを自動的に判断するように物体位置算出手段106が構成されている、物体位置算出手段106と、 物体位置算出手段106からの情報を受信するようになっている制御手段201であって、物体位置算出手段106からの情報を解析して、物体が自車位置から一定以下の距離に存在することを判断する論理を含むとともに、報知をするという自車両の動作特性を変化させる論理を含む制御手段201と を含む、見通しの悪い交差点での運転支援を行うナビゲーション装置。」 2.-2 対比・判断 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明における「自車付近の映像を取得する」態様は、その機能及び構成からみて、本願補正発明における「自車両の周辺領域を画像化する」態様に相当し、以下同様に、「物体位置算出手段106」は「画像処理システム」及び「画像処理プロセッサ」のそれぞれに、「撮像手段104、105」は「撮像装置」に、「撮像手段104、105により取得された自車付近の映像が入力される」態様は、「撮像装置により自動的に捕捉された自車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報を受信する」態様に、「制御手段201」は「安全管理プロセッサ」及び「車両制御プロセッサ」のそれぞれに、「見通しの悪い交差点での運転支援を行うナビゲーション装置」は「車両安全管理システム」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「自車付近の映像を解析して、自車付近の映像が物体の位置や移動速度および移動方向がどのようなものであるかを示すかを自動的に判断する」態様は、本願補正発明における「自車両のすぐ近くの画像を示す情報を解析して、自車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報が少なくとも1つの所定の環境を示すかどうかを自動的に判断する」態様に相当し、引用発明における「物体位置算出手段106からの情報を解析して、物体が自車位置から一定以下の距離に存在することを判断する論理を含む」態様は、本願補正発明における「画像処理プロセッサからの情報を解析して自車両の走行条件の現状を判断する論理を含む」態様に相当する。 したがって、両者は、 「 自車両の周辺領域を画像化するようになっている画像処理システムであって、この画像処理システムが、 撮像装置により自動的に捕捉された自車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報を受信するようになっている画像処理プロセッサを含み、 自車両のすぐ近くの画像を示す情報を解析して、自車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報が少なくとも1つの所定の環境を示すかどうかを自動的に判断するように画像処理プロセッサが構成されている、画像処理システムと、 画像処理プロセッサからの情報を受信するようになっている安全管理プロセッサであって、画像処理プロセッサからの情報を解析して自車両の走行条件の現状を判断する論理を含むこの安全管理プロセッサと、 自車両の動作特性を変化させる論理を含む車両制御プロセッサと を含む、車両安全管理システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (1)本願補正発明においては、安全管理プロセッサが、画像処理プロセッサからの情報を解析して自車両の走行条件の現状を判断するとともに、車両制御プロセッサが、安全管理プロセッサからの情報を受信し、安全管理プロセッサからの情報を解析して自車両の動作特性を変化させるのに対して、引用発明においては、制御手段201が、画像処理プロセッサからの情報を解析して自車両の走行条件の現状を判断する安全管理プロセッサと、自車両の動作特性を変化させる車両制御プロセッサの両者の機能を有する構成であり、車両制御プロセッサが、安全管理プロセッサから受信した情報を解析して自車両の動作特性を変化させるというような特定はなされていない点(以下、相違点1という。)。 (2)自車両の動作特性を変化させる論理を含む車両制御プロセッサについて、本願補正発明においては、自車両の動作特性として、速度、加速度、エンジントルク、各車輪のトルク制御、操縦のうちの少なくとも1つを含むのに対して、引用発明においては、自車両の動作特性として、報知を含むものの、速度、加速度、エンジントルク、各車輪のトルク制御、操縦を含むという特定はなされていない点(以下、相違点2という。)。 相違点について検討する。 (1)相違点1について 複数の制御ステップを有する制御装置において、複数の制御ステップをそれぞれ複数のプロセッサにより処理を行うか、複数の制御ステップをまとめて一つのプロセッサで処理を行うかは、当業者が性能やコストや信頼性等を考慮して適宜選択し得る事項に過ぎないので、引用発明において、安全管理プロセッサと車両制御プロセッサの両者の機能を有する制御手段201を二つのプロセッサで構成するとともに、該二つのプロセッサ間で情報を受け渡すようにすることは、当業者が適宜行い得ることである。 (2)相違点2について 車両安全管理システムにおいて、安全管理上所定の状況(例えば、危険回避が必要な状況)となった場合に、速度、加速度、エンジントルク、各車輪のトルク制御、操縦等の自車両の動作特性を変化させるようなことは、周知の技術(例えば、特開2004-302621号公報(特に、段落【0023】記載のエンジン回転を落とす制御を行う点や、ブレーキング制御を行う点等を参照。)や、特開2004-220257号公報(特に、段落【0021】記載のステアリング制御を行う点等を参照。)等を参照のこと。以下、「周知技術」という。)であることを参酌すれば、引用発明において、上記周知技術を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明及び上記周知技術から予想される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 以上から、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2.-3 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 前記のとおり、平成24年5月7日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年11月15日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書、並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 車両の周辺領域を画像化するようになっている画像処理システムであって、この画像処理システムが、 撮像装置により自動的に捕捉された車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報を受信するようになっている画像処理プロセッサを含み、 車両のすぐ近くの画像を示す情報を解析して、車両のすぐ近くの領域の画像を示す情報が少なくとも1つの所定の環境を示すかどうかを自動的に判断するように画像処理プロセッサが構成されている、画像処理システムと、 画像処理プロセッサからの情報を受信するようになっている安全管理プロセッサであって、画像処理プロセッサからの情報を解析して車両の走行条件の現状を判断する論理を含むこの安全管理プロセッサと、 安全管理プロセッサからの情報を受信するようになっている車両制御プロセッサであって、安全管理プロセッサからの情報を解析して車両の動作特性を変化させる論理を含む車両制御プロセッサと を含む、車両安全管理システム。」 2.引用文献の記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2002-62148号公報)記載の発明(引用発明)は、第2.の[理由]2.-3(3)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.の[理由]1.で検討した本願補正発明から、発明特定事項である「自車両」から「自」の記載を省くとともに、発明特定事項である「車両制御プロセッサ」について「変化させる自車両の動作特性が、(a_(1))速度、(b_(1))加速度、(c_(1))エンジントルク、(d_(1))各車輪のトルク制御、(e_(1))操縦のうちの少なくとも1つを含む」との限定を省いたものに相当する。 そして、本願発明にさらに他の構成要件を付加した本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-2に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明の「車両の動作特性」には、本願の請求項2に係る発明に記載された「報知」を含むものであるので、本願発明も、相違点2についての検討が不要となるほかは、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-13 |
結審通知日 | 2012-12-18 |
審決日 | 2012-12-26 |
出願番号 | 特願2005-326916(P2005-326916) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(G08G)
P 1 8・ 121- WZ (G08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 則夫 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 川口 真一 |
発明の名称 | 画像処理による車両安全管理システム |
代理人 | 重野 剛 |