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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1270208
審判番号 不服2012-11260  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-15 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2008-331094「クリーニングブレード及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日出願公開、特開2010-152156〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年12月25日の出願であって、平成23年3月2日及び同年11月17日付けで手続補正がなされ、平成23年11月17日付け手続補正が平成24年3月8日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年9月14日付けの審尋に対して同年11月16日付けで回答書を提出している。

第2 平成24年6月15日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成24年6月15日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成24年6月15日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、本件補正前の請求項1(平成23年3月2日付け手続補正後のもの)に、
「先端部が像担持体の表面と当接させられ、像担持体の表面に残留する現像剤を除去するクリーニングブレードにおいて、
(a)像担持体の回転に伴ってクリーニングブレードにスティック-スリップ運動が発生するのを抑止するために、クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度及びヤング率が、クリーニングブレードの伸びに影響を与える指標として引張り強さが規定され、
(b)前記tanδピーク温度が8.6〔℃〕以上、かつ、45〔℃〕未満であり、ヤング率が13〔Mpa〕以上、かつ、140〔Mpa〕未満であり、前記引張り強さが37.3〔Mpa〕以上、かつ、76〔Mpa〕未満である弾性体から成ることを特徴とするクリーニングブレード。」とあったものを、

「接点位置において、回転自在に配設された像担持体の接線とブレードカット面とがクリーニング角度を成すように、先端部が像担持体の表面と当接させられ、像担持体の表面に残留する現像剤を除去するクリーニングブレードにおいて、
(a)像担持体の回転に伴ってクリーニングブレードにスティック-スリップ運動が発生するのを抑止するために、クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度及びヤング率が、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの伸びに影響を与える指標として引張り強さが、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの硬さに影響を与える指標として硬度が規定され、
(b)前記tanδピーク温度が8.6〔℃〕以上、かつ、45〔℃〕未満であり、ヤング率が13〔Mpa〕以上、かつ、140〔Mpa〕未満であり、前記引張り強さが37.3〔Mpa〕以上、かつ、76〔Mpa〕未満であり、前記硬度が83〔°〕以上、かつ、97〔°〕未満であるゴム製の弾性体から成ることを特徴とするクリーニングブレード。」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「クリーニングブレードの先端部の像担持体の表面への当接」、「クリーニングブレードの伸び」、「規定」及び「弾性体」が、それぞれ、「接点位置において、回転自在に配設された像担持体の接線とブレードカット面とがクリーニング角度を成すように」なされる、「クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分における」延びである、「クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの硬さに影響を与える指標として硬度」を含む、及び、「前記硬度が83〔°〕以上、かつ、97〔°〕未満であるゴム製の」ものである、との限定を付加するものである。

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-265190号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真複写機等の感光ドラム外周面に残留するトナーを除去するクリーニングブレードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真複写機としては、感光ドラム外周面を一様に帯電させ、ついで被複写体の複写像を介してその外周面を露光することにより、上記外周面上に静電潜像を形成し、この静電潜像に、帯電されたトナーを付着させてトナー像を形成し複写紙等に転写することにより複写を行う形式のものが一般的である。
【0003】このような電子写真複写機では、トナー像の転写後に、感光ドラム外周面上にトナーが残留するため、上記感光ドラム外周面に、例えば図2に示すような板状保持具22に支持されたクリーニングブレード21を摺接し、残留トナーをこれで掻き落として除去することが行われている。
【0004】上記クリーニングブレード21に用いられる弾性体としては、耐摩耗性等の力学的特性に優れるポリウレタンが賞用されている。しかしながら、このようなポリウレタンからなるクリーニングブレード21は、長期間使用していると、感光ドラムと摺接するクリーニングブレード21のエッジ部が摩耗してしまい、残留トナーの除去(クリーニング)を良好に行えないという問題がある。
【0005】そこで、上記ポリウレタン表面をコーティング剤でコーティングしたり、ポリウレタン内部に潤滑剤を分散させたりする方法が提案され、実用化されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような方法では、コーティング剤や潤滑剤を新たに必要とするため、コスト面に問題がある。また、固形潤滑剤を分散させる場合は、クリーニングブレード成形用のポリウレタン組成物の粘度が高くなってしまい、加工性が悪くなるという問題がある。一方、液体潤滑剤を分散させる場合は、液体潤滑剤のブリードアウト(滲み出し)により、画像に悪影響を及ぼすという問題がある。したがって、コーティング剤や潤滑剤を用いずに、クリーニングブレードへのストレスを軽減できる方法の開発が望まれている。
【0007】また、最近は、電子写真複写機の高速化や高画質化が強く要求され、さらなる高温環境下での信頼性を高める必要がある。すなわち、感光ドラムとクリーニングブレードが高速で摺接したとしても、また帯電ローラからの放電量アップに伴う感光ドラムの高摩擦係数化によって、クリーニングブレードにこれまで以上に大きなストレスがかかったとしても、エッジ部に欠けが発生せず、クリーニングを良好に行える必要がある。このような要求に対して、一般に、クリーニングブレードのtanδピーク温度を高温に設定する方法が考えられるが、これでは低温環境下におけるクリーニング性能を損なうことになり、広い温度域で良好なクリーニング性を発揮しうるものとはならない。
【0008】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低温環境下におけるクリーニング性を損なうことなく、高温環境下における欠けの発生を有効に防止でき、広い温度域で良好なクリーニング性を発揮しうるクリーニングブレードの提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明のクリーニングブレードは、ポリイソシアネートおよびポリオールを含有するポリウレタン組成物の硬化体からなるクリーニングブレードであって、上記硬化体が、下記の特性(A)?(C)を備えているという構成をとる。
(A)50℃における引張強度が12MPa以上。
(B)tanδピーク温度が15℃以下。
(C)硬度が80°以下。
【0010】本発明者らは、低温環境下におけるクリーニング性を損なうことなく、高温環境下における欠けの発生を有効に防止でき、広い温度域で良好なクリーニング性を発揮しうるクリーニングブレードを得るべく、鋭意研究を重ねた。その過程で、クリーニングブレード成形用のポリウレタン組成物の配合設計を種々変更し、ポリウレタン組成物硬化体の特性(モジュラス,伸び,強度,硬度等)に着目して検討を重ねた結果、50℃における引張強度、tanδピーク温度、硬度の3つの特性を特定の範囲に設定すれば、高温および低温のいずれの環境下であっても、良好な状態でクリーニングを行うことができることを見いだし、本発明に到達した。」

イ 「【0026】このようにして得られるクリーニングブレードにおいて、上記硬化体の50℃における引張強度(特性A)は、12MPa以上に設定されている必要がある。好適には12?20MPaの範囲である。すなわち、50℃における引張強度が12MPa未満であると、高温環境下においてエッジ部に欠けが発生し、高速化,高画質化要求に対応した電子写真複写機のクリーニングブレードとして不適だからである。なお、50℃における引張強度は、50℃雰囲気下にて、試験片の厚みおよび引張速度を除いてはJIS K 6251に準じて測定される強度である。
【0027】また、上記硬化体のtanδピーク温度(特性B)は、15℃以下に設定されている必要がある。好適には、6?15℃の範囲である。すなわち、tanδピーク温度が15℃を超えると、低温環境下におけるクリーニング性が悪くなるからである。なお、tanδピーク温度は、動的粘弾性特定の一つであって、動的粘弾性測定機によって測定されるtanδ(損失正接)のうち、最大(ピーク)となるときの温度である。
【0028】さらに、上記硬化体の硬度(特性C)は、80°以下に設定されている必要がある。好適には70?80°の範囲である。すなわち、硬度が80°を超えると、固すぎて、高温および低温のいずれの環境下であってもクリーニング性を充分に果たすことができないからである。なお、硬度は、ウォーレス(H.W.WALLACE)社製のウォーレス測微硬度計を用い、JIS K 6253に準じて測定される硬度である。」

ウ 「【0031】
【実施例1】〔ウレタンプレポリマー(主剤液)の調製〕予め、80℃にて1時間真空脱泡したPBA(日本ポリウレタン工業社製、N4010、Mn:2000)34重量部(以下「部」と略す)に対し、MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT)66部を添加し、窒素雰囲気下で、80℃にて3時間反応させ、主剤液を得た。
【0032】〔硬化剤液の調製〕まず、PBA(日本ポリウレタン工業社製、N4010、Mn:2000)82部に対し、TCDAM4部を添加し、窒素雰囲気下で、150℃にて1時間加熱し、PBA中にTCDAMを溶解させた。ついで、この溶解物に対し、1,4-BDを10部と、TMPを5部と、触媒であるトリエチレンジアミン(三共エアプロダクツ社製、DABCO)を硬化物中の濃度が100ppmとなるように配合し、窒素雰囲気下で、80℃にて1時間混合した後、さらに80℃にて1時間真空脱泡,脱水することで、硬化剤液を調製した。
【0033】〔クリーニングブレードの作製〕まず、クリーニングブレード成形用金型を準備し、この金型の所定の位置に板状保持具を配置した後、140℃にて予備加熱した。ついで、上記主剤液(液温:70℃)と硬化剤液(液温:70℃)を100:101の重量比で配合し、真空脱泡しながら攪拌羽根で30秒間混合したものを、上記金型内に注入し、140℃で30分間反応させることで硬化させ硬化体を得た。その後、脱型し、これをナイフを用いて所定の形状に成形することにより、目的とするクリーニングブレードを得た。」

エ 「【0036】
【実施例4】PBAとして日本ポリウレタン工業社製のN3027(Mn:2400)を用い、このPBAを38部に、MDIを62部に変更した以外は、実施例1と同様にして主剤液を調製した。また、PBAとして日本ポリウレタン工業社製のN3027(Mn:2400)を用い、このPBAを81部に、TMPを3部に、TCDAMを10部に変更した以外は、実施例1と同様にして硬化剤液を調製した。そして、これら主剤液および硬化剤液を用いて、実施例1と同様にして、クリーニングブレードを作製した。なお、主剤液と硬化剤液の配合比は、重量比で、主剤液:硬化剤液=100:104であった。」

オ 「【0044】このようにして得られた実施例および比較例のクリーニングブレードを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を後記の表1?表3に示した。
【0045】〔引張強度,M100〕室温(25℃)および50℃における引張強度と、50℃における100%モジュラス(M100)とを、試験片の厚みおよび引張強度を除いてはJIS K6251に基づいて測定した。すなわち、まず、クリーニングブレードの硬化体から、スライサーにて厚み1.0±0.1mmのシートを切り出し、このシートを打ち抜き刃にて、JIS6号ダンベル形状に成形し、サンプルを得た。そして、このサンプルを用い、室温(25℃)または50℃雰囲気下、標線間20mm、引張速度300mm/分にて引っ張ることにより、引張強度とM100を測定した。【0046】〔tanδピーク温度〕まず、クリーニングブレードの硬化体を1.5mm×1.5mm×30.0mmに成形採寸して、サンプルを準備した。ついで、このサンプルを、レオロジ社製のDVEレオスペクトラーに、引張治具のチャック間が20.0mmになるようにセットし、変位振幅±10μm、周波数10Hzの正弦波歪を与え、-20℃?50℃の範囲におけるtanδ(損失正接)を、昇温速度3℃/minで1℃毎に測定した。そして、このtanδの値が最大(ピーク)となる温度をtanδピーク温度とした。
【0047】〔硬度〕ウォーレス(H.W.WALLACE)社製のウォーレス測微硬度計を用い、JIS K 6253に基づいて測定した。
【0048】〔低温低湿(L/L)環境〕
*:クリーニング性
各クリーニングブレードを市販のレーザープリンター(LBP)に組み込み、L/L環境下(15℃×10%RH)にて、A3サイズで3万枚画出しを行った。そして、画像に問題がなく、細線が鮮明に画出しでき、クリーニングが正常に行われたものを○、かぶり、白抜け等が多量に発生し、クリーニングが正常に行われなかったものを×として評価した。
*:耐欠け性
上記3万枚画出し後のクリーニングブレードのエッジ部の欠けの有無を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率500倍で観察した。そして、欠けがないものを○、欠けがあるものを×として評価した。
【0049】〔高温高湿(H/H)環境〕
*:クリーニング性
各クリーニングブレードを市販のレーザープリンター(LBP)に組み込み、H/H環境下(35℃×85%RH)にて、A3サイズで3万枚画出しを行った。そして、画像に問題がなく、細線が鮮明に画出しでき、クリーニングが正常に行われたものを○、かぶり、白抜け等が多量に発生し、クリーニングが正常に行われなかったものを×として評価した。
*:耐欠け性
上記3万枚画出し後のクリーニングブレードのエッジ部の欠けの有無を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率500倍で観察した。そして、欠けがないものを○、欠けがあるものを×として評価した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】表1?表3の結果から、実施例品はいずれも、L/L環境下におけるクリーニング性が良好で、しかもH/H環境下における耐欠け性にも優れていることがわかる。これに対して、比較例1品は、硬度が高いため、L/LおよびH/Hのいずれの環境下においても、クリーニング性に劣ることがわかる。また、比較例2品,3品は、tanδピーク温度が高いため、L/L環境下におけるクリーニング性に劣ることがわかる。さらに、比較例4品,5品は、50℃における引張強度が低いため、H/H環境下における耐欠け性に劣ることがわかる。」

カ 「【0054】
【発明の効果】以上のように、本発明のクリーニングブレードは、50℃における引張強度、tanδピーク温度、硬度がそれぞれ特定の範囲に設定された硬化体からなっている。このため、低温環境下におけるクリーニング性を損なうことなく、高温環境下における欠けの発生が有効に防止され、広い温度域で良好なクリーニング性を発揮することができる。したがって、本発明のクリーニングブレードを実機(高速機であっても)に組み込んで使用した場合、優れた画像を得ることができるようになる。」

キ 上記アないしカから、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「感光ドラム外周面を一様に帯電させついで被複写体の複写像を介してその外周面を露光することにより上記外周面上に静電潜像を形成し、この静電潜像に帯電されたトナーを付着させてトナー像を形成し複写紙等に転写することにより複写を行い、トナー像の転写後に感光ドラム外周面上に残留するトナーを、上記感光ドラム外周面に板状保持具に支持されたクリーニングブレードを摺接しこれで掻き落として除去する電子写真複写機のクリーニングブレードにおいて、
ポリウレタンからなる弾性体を用いたクリーニングブレードは、長期間使用していると、感光ドラムと摺接するクリーニングブレードのエッジ部が摩耗してしまい、残留トナーの除去を良好に行えないという問題があり、該ポリウレタンからなる弾性体表面をコーティング剤でコーティングしたり、ポリウレタンからなる弾性体内部に潤滑剤を分散させたりすると、コスト面に問題があり、固形潤滑剤を分散させる場合は、クリーニングブレード成形用のポリウレタン組成物の粘度が高くなってしまい、加工性が悪くなるという問題があり、液体潤滑剤を分散させる場合は、液体潤滑剤のブリードアウト(滲み出し)により、画像に悪影響を及ぼすという問題があり、また、コーティング剤や潤滑剤を用いずに、クリーニングブレードへのストレスを軽減でき、クリーニングブレードにこれまで以上に大きなストレスがかかったとしてもエッジ部に欠けが発生せずクリーニングを良好に行うといった要求に対して、クリーニングブレードのtanδ(損失正接)ピーク温度を高温に設定すると、低温環境下におけるクリーニング性能を損なうことになり、広い温度域で良好なクリーニング性を発揮しうるものとはならないことから、低温環境下におけるクリーニング性を損なうことなく、高温環境下における欠けの発生を有効に防止でき、広い温度域で良好なクリーニング性を発揮しうるクリーニングブレードの提供をその目的とし、
前記弾性体を、ポリイソシアネートおよびポリオールを含有するポリウレタン組成物の硬化体とし、50℃における引張強度が12MPa未満であると、高温環境下においてエッジ部に欠けが発生し、高速化,高画質化要求に対応した電子写真複写機のクリーニングブレードとして不適だから、50℃における引張強度を12MPa以上とし、tanδピーク温度が15℃を超えると、低温環境下におけるクリーニング性が悪くなるから、tanδピーク温度を15℃以下とし、硬度が80°を超えると、固すぎて、高温および低温のいずれの環境下であってもクリーニング性を充分に果たすことができないから、硬度を80°以下として、高温および低温のいずれの環境下であっても、良好な状態でクリーニングを行うことができるようにしたクリーニングブレードであって、
クリーニングブレード成形用金型を準備し、この金型の所定の位置に板状保持具を配置した後予備加熱し、主剤液と硬化剤液を配合し混合したものを上記金型内に注入し反応させることで硬化させ硬化体を得、脱型し、これをナイフを用いて所定の形状に成形することにより目的とするクリーニングブレードを得るとともに、
前記硬化体から得たサンプルを用い、室温(25℃)における引張強度を測定し、前記硬化体から得たサンプルをセットしtanδを測定し、このtanδの値が最大となる温度をtanδピーク温度とし、硬度をJIS K 6253に基づいて測定したところ、室温における引張強度は45.3MPaであり、tanδピーク温度は13℃であり、硬度は80°であり、
前記クリーニングブレードを市販のレーザープリンターに組み込み、L/L環境下(15℃×10%RH)及びH/H環境下(35℃×85%RH)にてA3サイズで3万枚画出しを行って、画像に問題がなく細線が鮮明に画出しできクリーニングが正常に行われたものを○、かぶり、白抜け等が多量に発生しクリーニングが正常に行われなかったものを×として評価するとともに、クリーニングブレードのエッジ部の欠けの有無を倍率500倍で観察して欠けがないものを○、欠けがあるものを×として評価したところ、いずれの環境下でも、いずれの評価も○であった、
L/L環境下におけるクリーニング性が良好で、しかもH/H環境下における耐欠け性にも優れている、広い温度域で良好なクリーニング性を発揮することができるクリーニングブレード。」(以下「引用発明1」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-290404号公報(以下「引用例2」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【請求項1】 表面にトナー像が担持されるトナー像担持体に圧接され、該トナー像担持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードであって、
正弦波振動を与えたときのひずみの遅れを示す複素弾性率をG=G’+iG”としたときに、
少なくとも前記トナー像担持体と圧接される部分が、正接損失tanδ(=G”/G’)のピーク温度が10℃以上、30℃以下のウレタン材料からなることを特徴とするクリーニングブレード。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トナー像担持体上のトナー像を被転写体に転写した後に、該トナー像担持体の表面に残留するトナーを除去するクリーニングブレード、クリーニング装置、及びこれらが適用される電子写真複写機、プリンター等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来広く用いられている画像形成装置は、たとえば、感光体上に静電潜像を形成し、それを乾式トナーで現像してトナー像とした後、静電的にそのトナー像を記録媒体に転写し、これを加圧・加熱により記録媒体に定着して画像を形成する。このような画像形成装置においては、感光体上のトナー像を記録媒体に転写した後に、感光体表面に残留するトナーを除去しなければならない。
【0003】感光体表面に残留するトナーの除去には、ファーブラシ、静電ブラシ、磁気ブラシ、ウエブ、ブレードなどがあるが、スペース、コスト、及び性能などの点から、ウレタンゴムを先端に有するクリーニングブレードが主流となっている。クリーニングブレードには、さらにドクタータイプとワイパータイプとがあり、これらの故障モードには、摩耗、ゴム先端の欠け、ゴムめくれ、クリープによるトナー像のふき残しなどがある。
【0004】ワイパータイプのブレードは、突発的に生じるゴムのめくれには強いが、トナー除去そのものの性能では、ドクタータイプに劣る。ワイパータイプのブレードのクリーニング性能をドクタータイプと同等にするためには、圧力を上げなければならないので、トルクの上昇によりモーターの負荷が増大したり、感光体表面の摩耗などが発生する。またワイパータイプでは、感光体表面に付着する用紙成分の除去ができず、画像流れなどを引き起こす。以上の理由から、ドクタータイプのブレードが主流となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来のドクタータイプのブレードでは、以下に示すような問題点がある。ドクタータイプのブレードは、使用される環境の温度が高くなったり、画像流れを防止するために感光体を温めたりして感光体表面の温度が上がったり、また、画像形成システムの関係からクリーニングブレード周辺の温度が上がったりすると、ゴムめくれが発生してしまう。
【0006】また、現在高画質を達成できる画像形成方式として、転写定着方式の画像形成装置が広く研究されている。この転写定着方式は、従来広く用いられてきた画像形成装置、すなわち感光体上にトナー像を静電的に記録媒体に転写し、その後に定着するという画像形成技術における、画像濃度むらや、転写領域でのトナーの飛散による解像力低下、及びドット再現性不良などを改善するための技術である。
【0007】この転写定着方式は、感光体上に形成したトナー像を中間転写体に静電的に、あるいは粘着によって、又はその両方を用いて転写し、次いで、トナー像の載った中間転写体と記録媒体とを密着させた状態で加熱及び加圧する。そして、トナー像を記録媒体表面及び内部に溶融せしめ、トナーを或程度凝集させた後に記録媒体を中間転写体から剥離し、記録媒体表面に定着画像を得る方式である。
【0008】この転写定着方式では、中間転写体が感光体表面と接触しているので、中間転写体上のトナー像を記録媒体に定着した後に、中間転写体の温度が通常の、中間転写体を転写にのみ用いている場合に比べて、温度が下がりきらないため、感光体の温度を上昇させてしまう場合がある。このため、感光体表面の残留トナーを除去するクリーニングブレードのめくれが発生するおそれがある。このようなゴムめくれが発生すると、専門の保守作業者でないと対処できず、画像形成装置の使用ができなくなる。
【0009】本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、トナー像担持体表面の残留トナーを除去する際に、ドクタータイプのクリーニングブレードを高温環境下で使用しても、ブレードめくれの発生を防止することができるクリーニングブレード、クリーニング装置、及びこれらを用いた画像形成装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、表面にトナー像が担持されるトナー像担持体に圧接され、該トナー像担持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードであって、正弦波振動を与えたときのひずみの遅れを示す複素弾性率をG=G’+iG”としたときに、 少なくとも前記トナー像担持体と圧接される部分が、正接損失tanδ(=G”/G’)のピーク温度が10℃以上、30℃以下のウレタン材料からなることを特徴とするクリーニングブレードを提供する。」

ウ 「【0014】本発明者らは、従来のウレタンブレードが、常温や低温では正常にクリーンニグ性能を満足するのに対し、高温ではブレードめくれを発生してしまうことを、温度によるウレタンゴムの粘弾性の変化と捉え、高分子材料の温度特性を現す正接損失tanδのピーク温度に着目した。そこで、さまざまなウレタン材料を試作し、動的粘弾性測定装置(例えば、株式会社オリエンテック製のレオバイブロンModel DDVー01FP)を用いて、加振周波数10Hzでtanδのピーク温度を測定した。
【0015】動的粘弾性測定装置は、高分子材料に正弦波で小さな振動を与え、その外力に対するひずみの遅れを測定し、弾性的性質と粘性的性質とを同時に測定するものであり、正接損失tanδは、その遅れの比例定数である複素弾性率G=G’+iG”の虚数部を実数部で除したものである。試作したウレタンブレードを用いて、トナー像担持体の周囲を高温にし、実験を繰り返したところ、正接損失tanδ(=G”/G’)のピーク温度がある値以上であれば、めくれの発生を防止できることを見出した。
【0016】請求項1に記載の発明に係るクリーニングブレードでは、少なくとも前記トナー像担持体と圧接される部分が、tanδのピーク温度が10℃以上、30℃以下のウレタン材料で形成されており、長時間の使用によりトナー像担持体表面の温度が上昇しても、ブレードめくれや、ブレード先端が震えるいわゆるチャタリングなどの発生を抑制することができる。このため、トナー像担持体表面に残留したトナーのふき残しなどの発生が防止され、良好なクリーニング性能を維持することができる。」

エ 「【0035】このため、本発明者は、ゴムの粘弾性の指標である、正接損失tanδに着目して実験を進めた。ここで評価に用いた装置・条件などを示す。
評価マシン Acolor935改造機
トナー Acolor935用トナー
感光体ドラム Acolor935用感光体
スピード 260mm/sec
感光体ドラムの表面温度 50±3℃
【0036】ここで用いた感光体ドラム1は、アルミ基体上に下引層、電荷発生層、電荷輸送層が順次コートしてある有機感光体であり、表面保護層はポリカーボネートを主材料としている。また、その表面粗さは、Ra 0.003μm?0.005μmである。
【0037】またトナーは、ポリエステル樹脂の結着樹脂と、着色剤を含有するトナー粒子と、現像性、搬送性、転写性、保存性、耐電性、クリーニング性などを改善するための、酸化チタン、酸化珪素、脂肪族アルコールワックスなどの添加剤とからなる組成物である。
【0038】クリーニングブレードは、ウレタン材料のtanδのピーク値をかえて試作した。そのクリーニングブレードは、以下に示すものである。
ゴム硬度 68Hs?79Hs (Jis A)
厚み 2mm
せり出し量 10mm
荷重 196mN/cm
設定角度 10?20°
【0039】設定角度は、ゴム硬度が異なるクリーニングブレードに196mN/cmの荷重をかけた時に、その先端と感光体ドラム表面とのなす角度が、9±2°になるように調節した。上記条件にて、さまざまな tanδのクリーニングブレードについて、クリーニング維持性を評価した。上記評価マシンにおいて、まず感光体ドラムの内部に面上発熱体を装着し、表面温度を50℃±2℃に制御する。原稿を白紙にして、現像、転写を行う。感光体ドラム上にはかぶりトナーと言われる、わずかなトナーしかのらないようにし、30分間連続で回転させて、クリーニングブレードのめくれ状況、つまり、トナーのふき残しの発生を調べる。またクリーニングブレードの性能は、ブレードの温度が低いときも発揮されなければならないので、不使用状態が続いた後の装置起動時、すなわち感光体ドラムの周りが暖まっていない時に同じテストを実施した。それらの結果を図2に示す。
【0040】装置起動時のクリーニングブレード付近、及び感光体ドラム付近の温度は、約16℃であった。図2は、同じクリーニングブレードを高温時(50℃±2℃)と装置起動時(低温時)の両方の評価をして、同じ位置にプロットしている。上側が高温時で、すぐ下に装置起動時(低温時)の結果を載せている。判断基準は、○が30分間クリーニング不良が発生しない場合を示している。×は、25分までの間にめくれ、チャタリング、溜まったトナーのふき残しなどのクリーニング不良が発生した場合で、△は、25分から30分までの間で発生した場合を示している。
【0041】その結果、高温時のクリーニング性能は、Tanδのピーク温度が、10℃以上であれば良く、装置起動時(低温時)のクリーニング性能は、Tanδのピーク温度が30℃以下でなければならないことがわかった。そこで、ゴム硬度79Hs、Tanδのピーク温度が20℃のクリーニングブレードを用いて、実際の走行テストを2回行ったところ、ともに用紙走行枚数が7万枚までは、クリーニング不良は発生しなかった。
【0042】なお、本実施形態のクリーニングブレードは、感光体の表面層の種類、ロールタイプかベルトタイプかの違い、またトナーの結着樹脂、着色剤、添加剤の種類に特に制限されるものではない。感光体表面の粗さは、粗いとクリーニングブレードが滑りやすく、ブレードめくれは発生しにくいが、現在使用されている有機感光体の表面粗さは、Ra0.01μmであり、殆どの感光体に適応できると考えられる。
【0043】なお、上記画像形成装置は、中間転写体上のトナー像を用紙へ転写すると同時に定着する方式であるが、中間転写体上のトナー像を用紙へ静電転写する方式では、中間転写体上の残留トナーを除去するクリーニング手段として、上記クリーニングブレード17と同じものを用いることができる。」

オ 「【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本願発明によれば、トナー像担持体表面の残留トナーを除去するドクタータイプのクリーニングブレード、これを用いるクリーニング装置、またはプリンターや複写機などの画像形成装置において、トナー像担持体上の像流れの防止やシステムの制約から、トナー像担持体の表面温度が上昇しても、ブレードめくれや、チャタリングなどのクリーニング不良の発生を長期にわたって防止することができる。」

カ 図2の記載を、上から順にかつ左から順に下へかつ右へ見ていくと、図2の記載から、実験で用いたクリーニングブレードのウレタン材料のtanδのピーク温度及びゴム硬度の組み合わせが、次のとおりであることが見て取れる。
1番 tanδのピーク温度:20.0℃、ゴム硬度:79°
2番 tanδのピーク温度: 7.5℃、ゴム硬度:78°
3番 tanδのピーク温度:30.0℃、ゴム硬度:78°
4番 tanδのピーク温度:27.5℃、ゴム硬度:76°
5番 tanδのピーク温度:35.0℃、ゴム硬度:76°
6番 tanδのピーク温度:-1.0℃、ゴム硬度:75°
7番 tanδのピーク温度:25.0℃、ゴム硬度:73°
8番 tanδのピーク温度: 4.5℃、ゴム硬度:72°
9番 tanδのピーク温度:14.5℃、ゴム硬度:72°
10番 tanδのピーク温度:32.0℃、ゴム硬度:72°
11番 tanδのピーク温度:-2.0℃、ゴム硬度:71°
12番 tanδのピーク温度:10.0℃、ゴム硬度:70°
13番 tanδのピーク温度: 0.0℃、ゴム硬度:68°
14番 tanδのピーク温度:11.5℃、ゴム硬度:68°

キ 上記アないしカから、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。
「表面にトナー像が担持される感光体ドラムに圧接され、該感光体ドラムの表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードにおいて、
ドクタータイプのブレードは、使用される環境の温度が高くなったり、画像流れを防止するために感光体ドラムを温めたりして感光体ドラム表面の温度が上がったり、また、画像形成システムの関係からクリーニングブレード周辺の温度が上がったりすると、ゴムめくれが発生してしまい、また、感光体ドラム上に形成したトナー像を中間転写体に静電的に、あるいは粘着によって、又はその両方を用いて転写し、次いで、トナー像の載った中間転写体と記録媒体とを密着させた状態で加熱及び加圧して、トナー像を記録媒体表面及び内部に溶融せしめ、トナーを或程度凝集させた後に記録媒体を中間転写体から剥離し、記録媒体表面に定着画像を得る方式である転写定着方式では、中間転写体が感光体ドラム表面と接触しているので、中間転写体上のトナー像を記録媒体に定着した後に、中間転写体を転写にのみ用いている場合に比べて温度が下がりきらないため、感光体ドラムの温度を上昇させてしまう場合があるため、感光体ドラム表面の残留トナーを除去するクリーニングブレードのめくれが発生するおそれがあり、このようなゴムめくれが発生すると専門の保守作業者でないと対処できず、画像形成装置の使用ができなくなるといった問題点に鑑み、
感光体ドラムの残留トナーを除去する際に、ドクタータイプのクリーニングブレードを高温環境下で使用しても、ブレードめくれの発生を防止することができるクリーニングブレードを提供することを目的として、
従来のウレタンブレードが、常温や低温では正常にクリーニング性能を満足するのに対し、高温ではブレードめくれを発生してしまうことを、温度によるウレタンゴムの粘弾性の変化と捉え、高分子材料の温度特性を現す正接損失tanδのピーク温度に着目し、
クリーニングブレードを構成するウレタン材料のtanδのピーク温度及びゴム硬度がそれぞれ(20.0℃、79°)、(7.5℃、78°)、(30.0℃、78°)、(27.5℃、76°)、(35.0℃、76°)、(-1.0℃、75°)、(25.0℃、73°)、(4.5℃、72°)、(14.5℃、72°)、(32.0℃、72°)、(-2.0℃、71°)、(10.0℃、70°)、(0.0℃、68°)、(11.5℃、68°)で、いずれも厚み2mm、せり出し量10mmであるさまざまなクリーニングブレードを試作し、設定角度10?20°でゴム硬度が異なるクリーニングブレードに196mN/cmの荷重をかけた時にその先端と感光体ドラム表面とのなす角度が9±2°になるように調節して、感光体ドラムの表面温度を50℃±2℃の高温に制御し、原稿を白紙にして30分間連続で回転させて、クリーニングブレードのめくれ状況、つまり、トナーのふき残しの発生を調べ、また、クリーニングブレードの性能はブレードの温度が低いときも発揮されなければならないので、不使用状態が続いた後の装置起動時、すなわち感光体ドラムの周りが暖まっておらず、クリーニングブレード付近、及び感光体ドラム付近の温度が約16℃の低温時に同じテストを実施して、高温時と低温時の両方でクリーニング維持性を評価したところ、高温時のクリーニング性能は、tanδのピーク温度が10℃以上であれば良く、低温時のクリーニング性能は、tanδのピーク温度が30℃以下でなければならないことを見出し、更に、tanδのピーク温度及びゴム硬度がそれぞれ20℃及び79°の上記クリーニングブレードを用いて、実際の走行テストを2回行ったところ、ともに用紙走行枚数が7万枚までクリーニング不良は発生しないことから、tanδのピーク温度がある値以上であればめくれの発生を防止できることを見出し、
前記クリーニングブレードの少なくとも前記感光体ドラムと圧接される部分を、tanδのピーク温度が10℃以上、30℃以下のウレタン材料から構成することにより、長時間の使用により感光体ドラムの温度が上昇しても、ブレードめくれや、ブレード先端が震えるいわゆるチャタリングなどの発生を抑制することができ、このため感光体ドラムに残留したトナーのふき残しなどの発生が防止され、良好なクリーニング性能を維持することができるようにしたクリーニングブレード。」(以下「引用発明2」という。)

4 引用発明1との対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「感光ドラム」、「感光ドラム外周面」、「トナー」、「光ドラム外周面上に残留するトナー」、「クリーニングブレード」、「tanδ(損失正接)ピーク温度」、「室温(25℃)における引張強度」及び「硬度」は、それぞれ、本願補正発明の「像担持体」、「像担持体の表面」、「現像剤」、「像担持体の表面に残留する現像剤」、「クリーニングブレード」、「tanδピーク温度」、「引張り強さ」及び「硬度」に相当する。

イ 引用発明1において、「クリーニングブレード」は、感光ドラム外周面を一様に帯電させついで被複写体の複写像を介してその外周面を露光することにより上記外周面上に静電潜像を形成し、この静電潜像に帯電されたトナーを付着させてトナー像を形成し複写紙等に転写することにより複写を行う電子写真複写機に用いられ、板状保持具に支持されて、上記感光ドラム外周面に摺接してトナー像の転写後に感光ドラム外周面上に残留するトナーを掻き落として除去するものであって、クリーニングブレード成形用金型内で硬化させた硬化体をナイフを用いて所定の形状に成形したものであり、上記感光ドラムが回転自在に配設されていること、及び、上記「クリーニングブレード」は、該感光体と接し該接点位置において上記ナイフによる成形面が感光ドラム外周面上に残留するトナーを掻き落として除去(クリーニング)できるような角度になるように当接されることが、当業者に自明であるから、引用発明1の「クリーニングブレード」と本願補正発明の「クリーニングブレード」とは「接点位置において、回転自在に配設された像担持体の接線とブレードカット面とがクリーニング角度を成すように、先端部が像担持体の表面と当接させられ、像担持体の表面に残留する現像剤を除去する」ものである点で一致するといえる。

ウ 引用発明1において、所定の形状に成形することにより「クリーニングブレード」を得ることができるポリイソシアネートおよびポリオールを含有するポリウレタン組成物の硬化体は、弾性体であり、室温における引張強度は45.3MPaであり、tanδピーク温度は13℃であり、硬度は80°であるから、引用発明1の「クリーニングブレード」と本願補正発明の「クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度及びヤング率が、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの伸びに影響を与える指標として引張り強さが、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの硬さに影響を与える指標として硬度が規定され、前記tanδピーク温度が8.6〔℃〕以上、かつ、45〔℃〕未満であり、ヤング率が13〔Mpa〕以上、かつ、140〔Mpa〕未満であり、前記引張り強さが37.3〔Mpa〕以上、かつ、76〔Mpa〕未満であり、前記硬度が83〔°〕以上、かつ、97〔°〕未満であるゴム製の弾性体から成るクリーニングブレード」とは、「クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度が、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの伸びに影響を与える指標として引張り強さが、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの硬さに影響を与える指標として硬度が規定され、前記tanδピーク温度が13〔℃〕であり、前記引張り強さが45.3〔Mpa〕であるゴム製の弾性体から成る」点で一致するといえる。

エ 引用発明1の「広い温度域で良好なクリーニング性を発揮しうるクリーニングブレードの提供をその目的と」している点は、本願補正発明の「像担持体の回転に伴ってクリーニングブレードにスティック-スリップ運動が発生するのを抑止するために、規定」する点に相当するといえる。

オ 上記アないしエから、本願補正発明と引用発明1とは、
「接点位置において、回転自在に配設された像担持体の接線とブレードカット面とがクリーニング角度を成すように、先端部が像担持体の表面と当接させられ、像担持体の表面に残留する現像剤を除去するクリーニングブレードにおいて、
(a)像担持体の回転に伴ってクリーニングブレードにスティック-スリップ運動が発生するのを抑止するために、クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度が、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの伸びに影響を与える指標として引張り強さが、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの硬さに影響を与える指標として硬度が規定され、
(b)前記tanδピーク温度が13〔℃〕であり、前記引張り強さが45.3〔Mpa〕であるゴム製の弾性体から成るクリーニングブレード。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願補正発明では、ヤング率も規定され、その値が、13〔Mpa〕以上、かつ、140〔Mpa〕未満であるのに対して、引用発明1では、ヤング率は規定されておらず、その値も不明である点。

相違点2:
前記硬度は、本願補正発明では、83〔°〕以上、かつ、97〔°〕未満であるのに対して、引用発明1では、80°である点。

(2)判断
上記相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
(ア) ヤング率が142Kg/cm^(2)ないし159Kg/cm^(2)のクリーニングブレードは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開2008-276005号公報(【0146】の「142Kg/cm^(2)」参照。)、特開2005-352310号公報(【0198】の(ブレードA)の「159Kgf/cm^(2)」参照。)、特開2006-99099号公報(【0408】の「159Kgf/cm^(2)」参照。))。

(イ)上記(ア)からみて、引用発明1において、「クリーニングブレード」の「弾性体」のヤング率を142Kg/cm^(2)ないし159Kg/cm^(2)の範囲内に規定することは、当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(ウ)1Kgfは9.80665「N」であり、1[Mpa]=1[N/mm^(2)]であるから、142Kg/cm^(2)ないし159Kg/cm^(2)は、換算すると、13.9(=142×9.80665÷100)[Mpa]ないし15.6(=159×9.80665÷100)[Mpa]である。

(エ)上記(イ)及び(ウ)からして、引用発明1において、「クリーニングブレード」の「弾性体」のヤング率を13.9[Mpa]ないし15.6[Mpa]の範囲内に規定すること、すなわち、引用発明1において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得た程度のことである。

イ 相違点2について
(ア)硬度が83°ないし90°のクリーニングブレードは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2007-292841号公報(【0224】【表1】の「ブレード2」及び「ブレード3」参照)、特開2006-301564号公報(【0229】【表1】の「本発明のクリーニング部材2」?「本発明のクリーニング部材5」、「本発明のクリーニング部材7」、「本発明のクリーニング部材9」参照。)、特開2002-55582号公報(4頁左欄最下行?同頁右欄10行参照。))。

(イ)引用発明1は、硬度が80°を超えると、固すぎて、高温および低温のいずれの環境下であってもクリーニング性を充分に果たすことができないから、クリーニングブレードの硬度を80°以下としているが、その上限を80°とした点に十分な根拠はなく、80°に臨界的な意義も認められないところ、上記(ア)のとおり、クリーニングブレードの硬度は90°程度まで許容されていることも事実であるから、引用発明1における硬度の上限を90°を限度に上げて、クリーニングブレードの硬度を83°ないし90°の範囲内の値となすことは、当業者が、周知技術2に基づいて、電子写真複写機の他の構成などに応じて適宜なし得た程度のことである。

(ウ)上記(イ)のようになすと、引用発明1のクリーニングブレードの硬度は、本願補正発明のクリーニングブレードの硬度の範囲である「83〔°〕以上、かつ、97〔°〕未満」の範囲内となるから、引用発明1において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、上記(イ)からみて、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得た程度のことである。

ウ 効果について
(ア)本願明細書の発明の詳細な説明には、次のa及びbの記載がある。
a 「【0059】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0060】
前記第1の実施の形態においては、tanδピーク温度及びヤング率を規定することによってクリーニング部材としてのクリーニングブレード19Bkのスティック-スリップ運動を抑止するようになっているが、本実施の形態においては、tanδピーク温度及び引張り強さを規定することによって、クリーニングブレード19Bkのスティック-スリップ運動を抑止するようにしている。
【0061】
図8は本発明の第2の実施の形態におけるクリーニングブレード使用時のフィルミングの発生状態及び画像品位の評価結果を示す図である。なお、図において、横軸にtanδピーク温度を、縦軸に引張り強さを採ってある。
【0062】
この場合、プリンタを常温常湿、すなわち、温度が22〔℃〕、湿度が50〔%〕の環境条件下に12〔h〕程度置いた後に実験を行った。そして、ポリウレタンの弾性体シートを使用してJIS K 6251に準拠して引張り強度を測定した。
【0063】
図から、tanδピーク温度が8.6〔℃〕以上、かつ、引張り強さが37.3〔Mpa〕以上の領域でフィルミングが発生していないことが分かる。
【0064】
これは、tanδピーク温度が高く、クリーニングブレード19Bkがガラス状態であるだけでなく、引張り強さが大きく、伸び方向に対して反対方向に働く応力が大きくなるので、像担持体としての感光体ドラム11Bkの表面に接触しているクリーニングブレード19Bkの先端部は伸びにくくなり、スティック-スリップ運動が安定して抑止されるからであると考えられる。
【0065】
これに対して、クリーニングブレード19Bkの引張り強さが37.3〔Mpa〕以上でも、tanδピーク温度が8.6〔℃〕未満である場合は、フィルミングが発生する。
【0066】
これは、tanδピーク温度が8.6〔℃〕未満になると、クリーニングブレード19Bkがゴム状態になるので、スティック-スリップ運動を安定して抑止することができないからであると考えられる。
【0067】
また、tanδピーク温度が45〔℃〕以上である場合、フィルミングは発生しないが、クリーニングブレード19Bkの先端部に欠けが発生し、現像剤としてのトナーtのすり抜けが発生する。
【0068】
これは、tanδピーク温度が45〔℃〕以上であると、クリーニングブレード19Bkがガラス状態になるが、tanδピーク温度が高い分だけクリーニングブレード19B
kの先端部が傷つきやすく、外添剤、紙粉等によって削り取られるからであると考えられる。
【0069】
また、引張り強さを76〔Mpa〕以上とした場合、クリーニングブレード19Bkの先端部に欠けが発生してしまい、それによってトナーtのすり抜けが発生してしまう。
【0070】
このように、本実施の形態においては、クリーニングブレード19Bkのtanδピーク温度を8.6〔℃〕以上、かつ、45〔℃〕未満とし、引張り強さを37.3〔Mpa〕以上、かつ、76〔Mpa〕未満とすることによって、スティック-スリップ運動を抑止することができ、フィルミングの発生を抑制することができる。」

b 「【0094】
なお、第1の実施の形態においてはtanδピーク温度とヤング率との関係について、第2の実施の形態においてはtanδピーク温度と引張り強さとの関係について、第3の実施の形態においてはtanδピーク温度と硬度との関係について、第4の実施の形態においてはtanδピーク温度と引裂き強度との関係について説明しているが、前記ヤング率はクリーニングブレード19Bkと感光体ドラム11Bkとの押圧によるクリーニングブレード19Bkの撓みに影響する指標であり、硬度はクリーニングブレード19Bkと感光体ドラム11Bkとが接する部分でのクリーニングブレード19Bkの硬さに影響する指標であり、引張り強さ及び引裂き強度はクリーニングブレード19Bkと感光体ドラム11Bkとが接する部分でのクリーニングブレード19Bkの伸びに影響する指標である。
【0095】
したがって、前記第1の実施の形態に対して、前記第2?4の実施の形態を組み合わせることができる。」

(イ)上記(ア)のa及びbからみて、引用発明1の奏する効果と本願補正発明の効果を奏する効果とは同じであり、上記相違点1ないし2に係る本願補正発明の構成により更なる効果が奏されるようなことは本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。

(ウ)してみると、本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明1の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から予測することができた程度のものである。

(3)まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 引用発明2との対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「感光体ドラム」、「感光体ドラムの表面」、「トナー」、「感光体ドラムの表面に残留したトナー」、「クリーニングブレード」、「ブレード先端が震えるいわゆるチャタリング」、「tanδのピーク温度」、「ウレタン材料」及び「硬度」は、それぞれ、本願補正発明の「像担持体」、「像担持体の表面」、「現像剤」、「像担持体の表面に残留する現像剤」、「クリーニングブレード」、「スティック-スリップ運動」、「tanδピーク温度」、「ゴム製の弾性体」及び「硬度」に相当する。

イ 引用発明2において、感光体ドラムが回転自在に配設されていることが当業者に自明であり、また、引用発明2では、表面にトナー像が担持される感光体ドラムに圧接され、該感光体ドラムの表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードは、設定角度10?20°でゴム硬度が異なるクリーニングブレードに196mN/cmの荷重をかけた時にその先端と感光体ドラム表面とのなす角度が9±2°になるように調節しているから、上記アに照らせば、引用発明2の「クリーニングブレード」と本願補正発明の「クリーニングブレード」とは「接点位置において、回転自在に配設された像担持体の接線とブレードカット面とがクリーニング角度を成すように、先端部が像担持体の表面と当接させられ、像担持体の表面に残留する現像剤を除去する」ものである点で一致するといえる。

ウ 引用発明2の「クリーニングブレード」は、少なくとも感光体ドラムと圧接される部分を、tanδのピーク温度が10℃以上、30℃以下のウレタン材料から構成することにより、長時間の使用により感光体ドラムの温度が上昇しても、ブレードめくれや、ブレード先端が震えるいわゆるチャタリングなどの発生を抑制することができ、このため感光体ドラムに残留したトナーのふき残しなどの発生が防止され、良好なクリーニング性能を維持することができるようにしたものであるから、上記アに照らせば、本願補正発明の「(a)像担持体の回転に伴ってクリーニングブレードにスティック-スリップ運動が発生するのを抑止するために、クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度及びヤング率が、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの伸びに影響を与える指標として引張り強さが、クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの硬さに影響を与える指標として硬度が規定され、(b)前記tanδピーク温度が8.6〔℃〕以上、かつ、45〔℃〕未満であり、ヤング率が13〔Mpa〕以上、かつ、140〔Mpa〕未満であり、前記引張り強さが37.3〔Mpa〕以上、かつ、76〔Mpa〕未満であり、前記硬度が83〔°〕以上、かつ、97〔°〕未満であるゴム製の弾性体から成ることを特徴とする」と、「像担持体の回転に伴ってクリーニングブレードにスティック-スリップ運動が発生するのを抑止するために、クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度が規定され、前記tanδピーク温度が10〔℃〕以上、かつ、30〔℃〕以下であるゴム製の弾性体から成る」点で一致する。

エ 上記アないしウから、本願補正発明と引用発明2とは、
「接点位置において、回転自在に配設された像担持体の接線とブレードカット面とがクリーニング角度を成すように、先端部が像担持体の表面と当接させられ、像担持体の表面に残留する現像剤を除去するクリーニングブレードにおいて、
像担持体の回転に伴ってクリーニングブレードにスティック-スリップ運動が発生するのを抑止するために、クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標としてtanδピーク温度が規定され、
前記tanδピーク温度が10〔℃〕以上、かつ、30〔℃〕以下であるゴム製の弾性体から成るクリーニングブレード。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点3:
本願補正発明では、クリーニングブレードの撓みに影響を与える指標として、さらに「ヤング率」が規定され、加えて、「クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの伸びに影響を与える指標として引張り強さ」が、「クリーニングブレードと像担持体とが当接する部分におけるクリーニングブレードの硬さに影響を与える指標として硬度」が規定され、前記ゴム製の弾性体は、「ヤング率が13〔Mpa〕以上、かつ、140〔Mpa〕未満」であり、「前記引張り強さが37.3〔Mpa〕以上、かつ、76〔Mpa〕未満」であり、「前記硬度が83〔°〕以上、かつ、97〔°〕未満」であるのに対して、引用発明2では、ヤング率、引張り強さ及び硬度は規定されておらず、ヤング率の値及び引張り強さの値は不明であり、硬度は、68°ないし79°のものの中では最も硬度の高い79°のものが良好であるが79°より高い硬度のものについては実験されていない点。

(2)判断
上記相違点3について検討する。
ア ヤング率が142Kg/cm^(2)ないし159Kg/cm^(2)のクリーニングブレードは、本願の出願前に周知である(周知技術1、上記4(2)ア(ア)参照。)。

イ 硬度が83°ないし90°のクリーニングブレードは、本願の出願前に周知である(周知技術2、上記4(2)ア(イ)参照。)。

ウ 引っ張強さが40.1Mpaないし47.1Mpaのクリーニングブレードは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術3」という。例.引用例1(【0050】【表1】の実施例2、4?6参照。)、特開2005-351940号公報(【0044】【表1】の実施例1参照。480kg/cm^(2)は換算すると47.1(=480×9.80665÷100)[Mpa]である。))。

エ 上記アないしウからみて、引用発明2において、前記「ゴム製の弾性体」の、ヤング率を142Kg/cm^(2)ないし159Kg/cm^(2)(13.9Mpaないし15.6Mpa(上記4(2)(ウ)参照。))の範囲内の値とし、硬度を83°ないし90°の範囲内の値とし、引っ張強さを40.1Mpaないし47.1Mpaの範囲内の値とすること、すなわち、引用発明2において、上記相違点3に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術1ないし3に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(3)効果について
本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明2の奏する効果、周知技術1の奏する効果、周知技術2の奏する効果及び周知技術3の奏する効果から予測することができた程度のものである。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用例2に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例2に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成23年3月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年3月2日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものと認める。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びそれらの記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を限定するものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕4及び5」に記載したとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-03 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2008-331094(P2008-331094)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵田 真彦大森 伸一  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 西村 仁志
住田 秀弘
発明の名称 クリーニングブレード及び画像形成装置  
代理人 清水 守  
代理人 川合 誠  
代理人 青木 俊明  

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