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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1270375
審判番号 不服2011-25247  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-24 
確定日 2013-02-20 
事件の表示 特願2007-553264号「ループプラグ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日国際公開、WO2006/081424、平成20年 7月31日国内公表、特表2008-529240号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2006年1月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年1月27日、米国)を国際出願日とする特許出願であって 、平成23年8月3日付け(発送:8月9日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年11月24日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月24日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成23年11月24日の手続補正により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「 【請求項1】
ハウジングの前面でハウジングを通り第1と第2の開口の間に延在するループバック通路を形成する第1と第2の同一の半部品を有する導電性ハウジングと、
ループバック通路に配置されたU字形を持ち、第1と第2の開口から延在する第1と第2の端部を有する中央導電体と、
少なくとも前記中央導電体の部分の周りの絶縁体と、
ハウジングに設けられ、ハウジングと導電接触する、分離された第1と第2の導電バレルであって、前記第1と第2の導電バレルは中央導電体の第1と第2の端部の周りに設けられ、前記第1と第2の導電バレルはハウジングの第1と第2の開口から相互に平行に延在しており、前記絶縁体は中央導電体を、第1と第2の導電バレルとの接触から分離することを特徴とする第1と第2の導電バレルと、
ハウジングに設けられた非導通ハンドルであって、前記ハウジングの第1と第2の半部品が押し込まれるポケットをもつ非導電ハンドルと、
を有し、前記ハウジングの第1と第2の半部品の形状と前記ハンドルのポケットの形状は、前記ハウジングの第1と第2の半部品を前記ポケットに押し込むことができるような形状であることを特徴とするループプラグ。」(下線部は補正箇所)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ハウジングの第1と第2の半部品」の形状と「前記ハンドルのポケット」の形状に関して「前記ハウジングの第1と第2の半部品を前記ポケットに押し込むことができるような形状である」との限定を付すものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることが出来るものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶理由にて引用された、本願の優先日以前に頒布された刊行物である英国特許第957032号明細書(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

ア.「This invention relates to electrical shorting links and particularly to electrical shorting links for shorting an electrical signal being transmitted by the so-called coaxial cable.」(第1頁第9行?第13行)
当審仮訳:本発明は電気的短絡リンクに関し、特に、いわゆる同軸ケーブルで伝送される電気信号を短絡するための電気的短絡リンクに関する。(下線は当審にて付与、以下同じ。)

イ.「According to the present invention there is provided an electrical shorting link comprising two electrical contact elements arranged side by side in spaced relationship and each comprising an inner contact element and outer sleeve coaxial therewith, an electrical conductor linking the two inner contact elements, said contact elements and conductor being supported by a housing of electrical conducting material formed with an internal conduit in which the conductor is so supported by at least one electrically insulating support plate arranged with its face substantially normal to the axis of the conduit that the electrical conducting housing simulates the electrical characteristics of the outer screening conductor of coaxial cable.」(第1頁第14行?第31行)
本発明によれば、互いに間隔を置いて並んで配置され、それぞれ内部コンタクト部材と同軸の外側スリーブとから構成される二つのコンタクトと、前記二つの内部コンタクト部材を結ぶ導電体と、前記コンタクト部材と導電体を内部の溝に、該溝部の軸線方向に対し端面が実質的に垂直になるように配置された少なくとも一つの絶縁性支持板によって支持することにより同軸ケーブルの外部スクリーニング導体と同じ電気的特性を発揮する電気導体ハウジングと、からなる電気的短絡リンクが提供される。

ウ.「For ease of manufacture and assembly it is preferred to make the housing in two halves, for example, as complementary castings with each half formed with a groove in one face thereof so that when the two grooved faces of the halves are fitted together, the grooves in each half are in alignment with one another to form a conduit, preferably of circular cross section.」(第1頁第61行?第69行)
製造と組立を容易とするため、ハウジングは、例えば、二つの半部品が面と面を合わされた時、両者に形成された凹部が整列し、円形断面の溝を形成されるような、二つの半部として鋳造されることが好ましい。

エ.「Referring to the drawings, a U-shaped length of brass has the ends of its limbs 2 and 3 rounded so that the limits constitute plug pins. This length of brass constitutes the inner conductor of the coaxial cable shorting link of the invention. It is adapted to be supported symmetrically within a U-shaped groove 4 in an aluminium alloy casting 5 by means of polypropylene discs 6, 7, 8 and 9.」(第2頁第6行?第15行)
図面を参照すると、U字形の長尺真ちゅう部材が両端にプラグピンとして機能する突出部2、3を設けるよう曲げられている。前記長尺真ちゅう部材は本発明の同軸ケーブル短絡リンクの内部導体を構成する。また、前記長尺真ちゅう部材はアルミニウム合金の鋳物部材5に形成されたU字形溝4内にポリプロピレンディスク6、7、8、9によって対称的に取り付けられる。

オ「The distance of the discs 6 and 9 from the respective ends of limbs 2 and 3 is such that when one of two metal sleeves 13 or 14 is supported coaxially about the said ends of these limbs, as hereinafter described, a limb end and sleeve constitutes a conventional coaxial plug pin contact as seen in Fig 4.」(第2頁第29行?第36行)
突出部2、3の端部とディスク6、9との距離は、後述するように、一方の金属スリーブ13又は14が突起部の周りに同軸に取り付けられる際に、突起部端部とスリーブが第4図に示すように従来の同軸プラグピンコンタクトを構成するような距離となる。

カ.「To assemble the component parts of the shorting link the flanges 20 and 21 of sleeves 20 and 21 are fitted into recesses 16 and 19 to give the arrangement of Fig 3.」(第2頁第53行?第56行)
短絡リンクの構成部品組立のため、スリーブ20、21のフランジ部20、21は、第3図の配置を与えるように窪み16、19に嵌め込まれる。

キ.「To facilitate correct location and mating of the two castings, casting 5 has an aperture 23 and spigot 24 matina with a complementary spigot and aperture in casting 22.」(第2頁第76行?第80行)
二つの鋳物部材の正確な位置合わせ容易とするため、鋳物部材5には、鋳物部材22の突部と凹部に合致する凹部23と凸部24が形成されている。

ク.図面には、以下の事項が図示されている。
・ハウジング(鋳物部材5、22)下端面でハウジングを通り、両端が開口するU字形溝4が半部品である鋳物部材5、22に形成されていること
・U字形溝4に配置されたU字形の長尺真ちゅう部材がその周囲のポリプロピレンデスク6、7、8、9を介して取り付けられ、その端部はU字形溝4開口部領域に位置していること
・金属スリーブ13、14が、U字形の長尺真ちゅう部材の両端部の周りに設けられた分離されたスリーブであり、ハウジングのU字形溝4両端開口から相互に平行に延在していること
・FIG2?4の記載から、ポリプロピレンデスク6、9により金属スリーブ13、14が長尺真ちゅう部材1との接触から分離されていること

ケ.上記記載事項から、以下の事項が認定できる。
・ハウジングを構成する半部品が「アルミ鋳物部材」であり、スリーブが「金属スリーブ」であることから、「金属スリーブ」が「アルミ鋳物部材」に嵌め込まれると両者は「導電接触」を行うこと

以上の事項を総合すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ハウジング下端面でハウジングを通り両端が開口するU字形溝4が形成された半部品であるアルミ鋳物部材5、22を有するハウジングと、
U字形溝4に配置された、U字形溝4開口部領域位置にその端突出部2、3が位置するU字形の長尺真ちゅう部材1と、
前記長尺真ちゅう部材1の周囲のポリプロピレンデスク6、7、8、9と、
ハウジングに嵌め込まれ、ハウジングと導電接触する、分離された二つの金属スリーブ13、14であって、両金属スリーブはU字形の長尺真ちゅう部材1の両端突出部2、3の周りに設けられ、前記両金属スリーブ13、14はハウジングのU字形溝4両端開口から相互に平行に延在しており、前記ポリプロピレンデスク6、7、8、9により長尺真ちゅう部材1との接触から分離されている金属スリーブ13、14と、
を有する電気的短絡リンク。」

(2)原査定の拒絶理由にて引用された、本願の優先日以前に頒布された刊行物である実願昭62-93393号(実開昭64-276号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

コ.「〔産業上の利用分野〕
本考案は、組立てと分解が容易で、しかもシールド効果が良好であり、多心シールドケーブルの接続に使用して効果的なシールドコネクタに関するものである。」(明細書第2頁第1行?第5行)

サ.「(17)(18)は、上下対をなす金属性のシールドカバーで、その互に平行をなす中央片(17a)(18a)の左右両側端と後端には、それぞれ、互に対向する方向を向く側片(17b)(18b)と後片(17c)(18c)が連設されている。」(明細書第5頁第20行?第6頁第4行)

シ.「(21)は、たとえばゴムあるいは軟質の合成樹脂等の、弾性ある可撓性のカバーで、その内面前部には、シールドカバー(17)(18)の前部において外方に突出する係合凹部(19)が嵌入しうる、有底の凹入孔(22)が形成されている。」(明細書第7頁第1行?第5行)

ス.「このカバー(21)は、両ケーブル押え(9)(10)と、両シールドカバー(17)(18)の前部以外の大部分に、後方より強制的に弛みなく外嵌され、ケーブル押え(9)のフック(11)が、凹溝(23)を通過して、貫通孔(24)に係合することにより、後方への抜け外れが防止され、かつ各部材を一体に結合して、保持している。
カバー(21)の弾性により、内方に向けて押圧されたシールドカバー(17)(18)の後面の半円溝(20)(20)は、上下のケーブル押え(9)(10)の係合溝(15)に嵌入して、シールド外皮(7)の端部に強く圧接することにより、シールドカバー(17)(18)とシールド外皮(7)は、電気的に確実に接続されている。」(明細書第7頁第10行?第8頁第3行)

セ.「本考案のコネクタは、ねじ止め個所がなく、かつ端子とシールドケーブルの心線の接続部以外には、半田付け個所がないので、組立てが容易で作業性が良好である。組立てられたコネクタは、各部材を一体に保持するカバーが、シールドケーブルに固着するケーブル押えに、貫通孔とフックにより係合しているので、抜け外れる恐れがなく強固であり、スクリュードライバ等により、貫通孔とフックの係合を解除すれば、簡単にカバーを取り外して分解しうるので、保安点検や修理の際に甚だ便利である。」(明細書第9頁第7行?第17行)

ソ.第1図には、以下の事項が図示されている。
・カバー(21)にはシールドカバー(17)(18)が弛みなく嵌入される形状の空所が設けられていること

以上の事項を総合すると、刊行物2には、シールドコネクタの半部品であるシールドカバー(17)(18)を一体に確実に保持し、組立・分解の容易化を図るための技術手段として、次の技術手段(以下「刊行物2記載の技術手段」という。)が記載されているものと認められる。

「シールドカバー(17)(18)に弛みなく外嵌されるゴムあるいは軟質の合成樹脂等のカバー(21)であって、前記シールドカバー(17)と(18)が嵌入される空所をもち、前記シールドカバー(17)と(18)の形状と前記カバー(21)の空所の形状は、前記シールドカバー(17)と(18)を前記空所に嵌入できる形状であるカバー(21)。」

3.発明の対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明におけるは「ハウジングの下端面」は本願補正発明における「ハウジングの前面」に相当し、以下同様に、「両端が開口するU字形溝4が形成された」は「第1と第2の開口の間に延在するループバック通路を形成する」に、「アルミ鋳物部材5、22を有するハウジング」は「導電性ハウジング」に、「U字形溝4」は「ループバック通路」に、「U字形の長尺真ちゅう部材1」は「中央導電体」に、「ポリプロピレンデスク6、7、8、9」は「絶縁体」に、「嵌め込まれ」は「設けられ」に、「二つの金属スリーブ13、14」は「第1と第2の導電バレル」に、「長尺真ちゅう部材1の両端突出部2、3」は「中央導電体の第1と第2の端部」に、「ハウジングのU字形溝4両端開口」は「ハウジングの第1と第2の開口」に、「電気的短絡リンク」は「ループプラグ」に、各々相当する。

また、本願補正発明における「第1と第2の導電バレル」の修飾語である「前記絶縁体は中央導電体を、第1と第2の導電バレルとの接触から分離することを特徴とする」は、その文意が必ずしも明確ではないが、本願明細書段落【0009】における「一対の絶縁体122はループ導電体120をバレル内102で支持し、中央導電体とバレルを電気的に絶縁している。」の記載を参酌すると「絶縁体122により中央導電体(ループ導電体120両端)との接触から分離されている」の意味と解され、刊行物1記載の発明における「前記ポリプロピレンデスク6、7、8、9により長尺真ちゅう部材1との接触から分離されている」に相当する。

さらに、刊行物1記載の発明における「半部品であるアルミ鋳物部材5、22を有するハウジング」と、本願補正発明における「第1と第2の同一の半部品を有する導電性ハウジング」は、共に「第1と第2の半部品を有する導電性ハウジング」という点で共通している。

同様に、刊行物1記載の発明における「U字形溝4開口部領域位置にその端部3、4が位置するU字形の長尺真ちゅう部材1」と、本願補正発明における「第1と第2の開口から延在する第1と第2の端部を有する中央導電体」は、共に「第1と第2の開口部領域位置に第1と第2の端部を有する中央導電体」という点で共通している。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
ハウジングの前面でハウジングを通り第1と第2の開口の間に延在するループバック通路を形成する第1と第2の半部品を有する導電性ハウジングと、
ループバック通路に配置されたU字形を持ち、第1と第2の開口部領域位置に第1と第2の端部を有する中央導電体と、
前記中央導電体の部分の周りの絶縁体と、
ハウジングに設けられ、ハウジングと導電接触する、分離された第1と第2の導電バレルであって、前記第1と第2の導電バレルは中央導電体の第1と第2の端部の周りに設けられ、前記第1と第2の導電バレルはハウジングの第1と第2の開口から相互に平行に延在しており、前記絶縁体は中央導電体を、第1と第2の導電バレルとの接触から分離することを特徴とする第1と第2の導電バレルと、
を有るループプラグ。

(相違点1)
導電性ハウジングを構成する第1と第2の半部品が、本願補正発明においては「同一の半部品」と特定されているのに対し、刊行物1記載の発明においては「同一の半部品」であるのか否かが明確でない点。

(相違点2)
中央導電体の第1と第2の端部位置である開口部領域位置が、本願補正発明においては 「第1と第2の開口から延在する」位置であるのに対し、刊行物1記載の発明においては「第1と第2の開口から延在する」か否かが不明な点。

(相違点3)
本願補正発明においては「ハウジングに設けられた非導通ハンドルであって、前記ハウジングの第1と第2の半部品が押し込まれるポケットをもち、前記ハウジングの第1と第2の半部品の形状と前記ハンドルのポケットの形状は、前記ハウジングの第1と第2の半部品を前記ポケットに押し込むことができるような形状である非導通ハンドル」を有しているのに対し、刊行物1記載の発明においてはかかる非導通ハンドルを具備していない点。

4.判断
そこで、上記各相違点につき検討する。

(相違点1について)
刊行物1において、「製造と組立を容易とするため、ハウジングは、例えば、二つの半部品が面と面を合わされた時、両者に形成された凹部が整列し、円形断面の溝を形成されるような、二つの半部として鋳造され」ていること(摘記事項ウ)、「U字形溝4内に長尺真ちゅう部材が対称的に取り付けられ」ていること、「半部材の正確な位置合わせを容易とするため凹部23と凸部24」が二つの半部品の両者に形成されていること(摘記事項キ)等を参酌するならば、刊行物1記載の発明における導電性ハウジングを構成する第1と第2の半部品である「アルミ鋳物部材5、22」も実質的に「同一の半部品」であるものと解され、相違点1は実質的相違点ではない。

また、仮に、刊行物1記載の発明における「アルミ鋳物部材5、22」が「同一の半部品」でなかったとしても、 複数の部品を同一形状として共通化して組立作業の効率化とコスト低減化を図ることは、電気コネクタの技術分野において、本願優先日前に慣用されていた技術手段であり、刊行物1記載の発明において、第1と第2の半部品である「アルミ鋳物部材5、22」を「同一の半部品」とすることは、当業者が、上記慣用技術手段に基づいて、容易になしえた事項である。

(相違点2について)
刊行物1に「前記長尺真ちゅう部材は本発明の同軸ケーブル短絡リンクの内部導体を構成する 」(摘記事項エ)、「突起部端部とスリーブは、第4図に示すように従来の同軸プラグピンコンタクトを構成する。」(摘記事項オ)と記載されているように、中央導電体(長尺真ちゅう部材)の第1と第2の端部(突出部2、3)は同軸コネクタのプラグピンとして機能するものである。

よって、その端部位置は、ループプラグ(電気的短絡リンク)が装着される相手方部品におけるソケットの端部位置により定まるものであり、中央導電体の第1と第2の端部位置を「第1と第2の開口から延在する」位置と特定した点は、ループプラグが装着される相手方部品のソケットの端部位置に応じて、当業者が、適宜選択すべき設計的事項である。

(相違点3について)
刊行物2記載の技術手段と本願補正発明を対比すると、刊行物2記載の技術手段における「シールドカバー(17)(18)」は本願補正発明における「ハウジング」に相当し、以下同様に、「弛みなく外嵌される」は「設けられた」に、「シールドカバー(17)と(18)」は「ハウジングの第1と第2の半部品」に、「嵌入される空所」は「押し込まれるポケット」に、「嵌入できる形状」は「押し込むことができるような形状」に、各々相当する。

また、刊行物2記載の技術手段における「ゴムあるいは軟質の合成樹脂等のカバー(21)」はシールドコネクタ操作時に手で把持する部位であるので、本願補正発明における「非導通ハンドル」に相当する。

そうすると、シールドコネクタの半部品であるシールドカバー(17)(18)を一体に確実に保持し、組立・分解の容易化を図るための技術手段である刊行物2記載の技術手段は、次のように言い換えることができる。

「ハウジングに設けられた非導通ハンドルであって、前記ハウジングの第1と第2の半部品が押し込まれるポケットをもち、前記ハウジングの第1と第2の半部品の形状と前記ハンドルのポケットの形状は、前記ハウジングの第1と第2の半部品を前記ポケットに押し込むことができるような形状である非導通ハンドル。」

よって、刊行物1記載の発明において、電気的短絡リンク構成部材の確実な保持及び組立・分解のさらなる容易化を図るために、「ハウジングに設けられた非導通ハンドルであって、前記ハウジングの第1と第2の半部品が押し込まれるポケットをもち、前記ハウジングの第1と第2の半部品の形状と前記ハンドルのポケットの形状は、前記ハウジングの第1と第2の半部品を前記ポケットに押し込むことができるような形状である非導通ハンドル」を付加的に採用することは、刊行物2記載の技術手段に倣って、当業者が、容易になしえた事項である。

そして、本願補正発明により得られる効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術手段及び上記慣用技術手段から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術手段及び上記慣用技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成24年8月6日付け回答書において、本願補正発明に更に「チャネルを、前記ポケットの上部と底部に沿って形成し、リブが、前記ハウジングの前記第1の半部分及び前記第2の半部分の上部及び底部の端部から延在し、前記チャネルに受け入れられる」との発明特定事項を付加する補正案を提示しているが、コネクタ部品相互の嵌入の位置決めを行い嵌入を容易とするために、嵌合部材相互に凹部(チャンネル)及び凸部(リブ)を設けることは、例えば、特開平10-302880号公報(挿入ガイド用溝部6、挿入ガイド20参照)記載のように、本願優先日前、周知の技術手段であり、上記補正案を考慮しても,結論が左右されるものではない。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1?26に係る発明は、平成23年2月8日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ハウジングの前面でハウジングを通り第1と第2の開口の間に延在するループバック通路を形成する第1と第2の同一の半部品を有する導電性ハウジングと、
ループバック通路に配置されたU字形を持ち、第1と第2の開口から延在する第1と第2の端部を有する中央導電体と、
少なくとも前記中央導電体の部分の周りの絶縁体と、
ハウジングに設けられ、ハウジングと導電接触する、分離された第1と第2の導電バレルであって、前記第1と第2の導電バレルは中央導電体の第1と第2の端部の周りに設けられ、前記第1と第2の導電バレルはハウジングの第1と第2の開口から相互に平行に延在しており、前記絶縁体は中央導電体を、第1と第2の導電バレルとの接触から分離することを特徴とする第1と第2の導電バレルと、
ハウジングに設けられた非導通ハンドルであって、前記ハウジングの第1と第2の半部品がハンドルにより規定されるポケットに押し込まれる非導電ハンドルとを、
有するループプラグ。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由にて引用された刊行物とその記載事項は、上記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明における発明特定事項である「ハウジングの第1と第2の半部品」の形状と「前記ハンドルのポケット」の形状に関して「前記ハウジングの第1と第2の半部品を前記ポケットに押し込むことができるような形状である」との限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術手段及び慣用技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術手段及び慣用技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術手段及び慣用技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-21 
結審通知日 2012-09-25 
審決日 2012-10-11 
出願番号 特願2007-553264(P2007-553264)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 由希子  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 森川 元嗣
前田 仁
発明の名称 ループプラグ  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 森 啓  
代理人 水谷 好男  

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