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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
管理番号 1270389
審判番号 不服2011-2697  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-04 
確定日 2013-02-22 
事件の表示 特願2000-403903「螺旋形成電導体構造物をその電気回路中に備えた電気機器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月21日出願公開、特開2002-175910〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件の審判請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成12年12月7日に出願されたものであって、平成22年11月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に同日付けで手続補正がなされた。
その後、平成23年12月7日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、平成24年1月27日付けで回答書が提出され さらに、当審において平成24年5月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年7月27日付けで手続補正がなされ、同年9月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年11月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、これらの発明を総称して単に「本願発明」という。)は、平成24年11月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
電導体の表面に螺旋状の溝又は螺旋状の突起を形成した第1の導電体と、
この第1の電導体の外側にコイル状に配置した第2の電導体と、
該第2の電導体の外側に配置されたドーナツ状磁石と、
前記第1の電導体とドーナツ状磁石の空間に充填された、無機質粉末を含む合成樹脂からなる充填剤と、
を有する螺旋形成電導体構造物をその電気回路中に備えた電気機器。
【請求項2】
電気機器が照明器具、発熱器具、電動器具又は医療器具であることを特徴とする請求項1記載の電気機器。」

3.当審で通知した拒絶理由
当審における平成24年9月27日付けで通知した拒絶理由は、本件出願は、明細書及び図面の記載に不備があるので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない(以下「理由1」という。)、及び、本願発明は、自然法則を利用した技術思想でないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない(以下「理由2」という。)というものである。
そして、理由1、2の概要は以下のとおりである。

<理由1>
この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(1)請求人は、審尋に対する回答書において、『科学雑誌「ニュートン」の2009年1月号に次の記載「…電子や原子などにも波動としての性質がある…」「…電磁波は、波長によって大きく特徴が異なっている。…また、波長が短いほどエネルギーが高い。…赤外線は、物を暖める作用がある。…」「紫外線…、エネルギーが高く、…X線(波長…)と、ガンマ線(波長…)はさらにエネルギーが高く、…」がある。
これらの例示された記載からみて、本願明細書の「波動エネルギー」の技術的意味は、十分理解できよう。』旨主張している。
しかしながら、上記記載内容は、電磁波に関する周知の技術的特徴を記載したものにすぎず、本願明細書に記載された「螺旋形成導電体」の「波動エネルギー」がどのような自然法則に基づく概念で、その周波数やエネルギー強度がどの程度であるかが規定されていないため、本願明細書に記載された「波動エネルギー」の技術的内容が不明である。
(2)本願明細書には、螺旋形成電導体Z(1)及び螺旋形成電導体構造物Zが波動エネルギーを高めると記載されているが、本発明を用いない場合の試験結果(比較例)が示されていないため、本願発明の効果を認めることができない。
(3)本願明細書には、螺旋形成電導体Z(1)及び螺旋形成電導体構造物Zを電子機器に使って波動エネルギーを高めると記載されているが、螺旋形成導電体(構造物)の波動エネルギーと各電子機器が発生する熱、風、遠赤外線等との対応関係が不明である。
(4)特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならないところ、上記(1)?(3)から、本願の発明の詳細な説明には、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

<理由2>
この出願の請求項1及び2に係る発明は、下記の理由で自然法則を利用した技術思想でないから、特許法第29条柱書きに規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

<理由1>で検討したように、本願明細書に記載された「波動エネルギー」の技術的内容が明らかでなく、本願明細書の記載や技術常識を考慮しても、該「波動エネルギー」が自然法則に基づくものとは認められない。
したがって、請求項1及び2に係る発明は、自然法則を利用した技術思想の創作とはいえない。

4.当審の判断
(1)当審で通知した理由1について検討する。

本願発明は、波動エネルギーを確実に高められた電気機器を提供することを目的とするものであり、発明特定事項である「螺旋形成電導体構造物」の「波動エネルギー」についての技術事項が理解できるものでなければならない。
そこで、発明の詳細な説明において、「波動エネルギー」に関する記載について、以下検討する。
本願明細書には、
「【0008】【発明の実施の形態】次に、波動エネルギーを有効に高める電導体(導体)の例を示す。…」
「【0015】…ここで、以上述べた螺旋形成電導体は、それを電気機器に組み込むことにより、後述するように、電気機器が極めて高い波動エネルギーを持つものとなる。…」
「【0021】…以上の螺旋形成電導体構造物によれば、中央部(中心部)に配設されている螺旋形成電導体1(2,3,4,5)の波動エネルギーが、それを単独で使用するよりも更に効率よく高まるものとなる。以上説明した螺旋形成電導体Z(1)及び螺旋形成電導体構造物Zを電気機器に使って波動エネルギーを高める例を示す。…」
「【0022】…ここで照明される光は、極めて波動エネルギーの高いものとなる。」
「【0023】…この発熱器具に発熱された熱は、極めて波動エネルギーの高いものとなる。」
「【0024】…ここで電動器具により駆動される装置、例えば、扇風機は極めて波動エネルギーの高いものとなる。」
と記載され、螺旋形成電導体(構造物)が波動エネルギーを高めることができるというのみであり、「波動エネルギー」についての格別な説明や定義付けがなされておらず、本願出願時における技術常識を考慮しても「波動エネルギー」が、技術的にどのような内容を有するものであるのか不明である。
以上のように、本願明細書における「波動エネルギー」は、本願出願時において当業者に一般的に使用されている技術事項とは異なる技術内容を有するものと解されるところ、本願明細書には何ら格別な説明や定義付けがなされていない。
したがって、「波動エネルギー」に関して、依然として技術内容が不明であり、当業者が本願出願時の技術常識に基づいて理解しうる程度に記載されておらず、結局、本願明細書には波動エネルギーについて本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

請求人は、審尋に対する回答書等において、『審判請求書における〔本願発明が特許されるべき理由〕中の〔6〕理由3についての反論においても述べたように、本願発明における「波動エネルギー」とは、例えば、科学雑誌「ニュートン」の2009年1月号に記載された狭義の「波動エネルギー」を含む広義の「波動エネルギー」を意味するものである。
(ア)該雑誌「ニュートン」の例えば、p.36に、次の記載がある。
「・・・ミクロな世界の物理学である「量子論」によると、電子や原子などにも、波動としての性質がある。電子や原子は、身のまわりのすべての物質を構成する源なので、「自然界は波動に支配されている」といっても決して過言ではないのだ。・・・」
(イ)p.48,49には、次の記載がある。
「・・・電磁波は、波長によって大きく特徴がことなっている。波長が長いほど広がりながら進みやすく、波長が短いほど直進性が高い(広がりにくい)。これは波動一般の性質だ。また、波長が短いほどエネルギが高い。波長の長い電波は、・・・利用される。赤外線は、物を暖める作用がある。・・・」
「紫外線・・・、エネルギーが高く、・・・。X線(波長・・・)と、ガンマ線(波長・・・)はさらにエネルギーが高く、・・・」
(ウ)これらの例示された記載からみて、本願明細書の「波動エネルギー」の技術的意味は、十分理解できよう。』
と主張している。
しかしながら、上記記載を参酌しても、電子や原子には波動の性質があることや電磁波がエネルギーを有する点は理解できるとしても、本願発明における「螺旋形成電導体構造物」の「波動エネルギー」と電子・原子の波動や電磁波とどのような関連があるのか、そして、そのエネルギーの具体的な技術的内容の記載がなく、また、示唆する記載もなされていないところである。
したがって、本願発明における「螺旋形成電導体構造物」の「波動エネルギー」は、本願出願時の技術常識を勘案しても本願明細書の記載から当業者が直ちに想到しうる程度のものとも認められず、請求人の上記主張は採用できない。

また、請求人は、平成24年11月26日付け意見書等において、「本願発明は、先願と同じく(a)電導体の表面に螺旋状の溝を形成した第1の電導体を備えることで、基本的構造が同じであることから、本件発明の「螺旋形成電導体構造物」としては、少なくとも特許第4476445号の作用効果(ノイズに乱されない安定した磁界の発生が得られる等の狭義の「波動エネルギー」の効果B)を有するものであることは明らかである」と主張している。
しかしながら、「波動エネルギー」が、「エネルギー」の1概念であるとしても、ノイズはエネルギーとは異なる概念であり、「ノイズ」がエネルギーの下位概念であるとは認められないので、請求人の上記主張は採用できない。

さらに、本願明細書には、「ここで照明される光は、極めて波動エネルギーの高いものとなる。」【0022】、「ここの発熱器具に発熱された熱は、極めて波動エネルギーの高いものとなる。」【0023】及び「ここで電動器具により駆動される装置、例えば、扇風機は極めて波動エネルギーの高いものとなる。」【0024】と記載されているが、「波動エネルギー」の技術内容が不明であって、各種器具の波動エネルギーをいかに高いものとすることができるのか定かでなく、本願発明により、波動エネルギーを高めることができることを裏付ける技術的根拠や合理的な説明がなされておらず、当業者が本願出願時の技術常識に基づいて容易に理解しうる程度に記載されているとは認められず、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

(2)当審で通知した理由2について検討すると、以上述べた理由1と同様に、本願発明は「波動エネルギー」を高めることを目的とするものであるが発明の詳細な説明の記載を参酌しても「波動エネルギー」の技術的内容が不明であり、「波動エネルギー」に関して、自然法則に基づく内容とは認められないので、自然法則を利用した技術思想と認めることができない。
したがって、本願発明は、自然法則を利用した技術思想でないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本件出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、また、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-25 
結審通知日 2012-12-26 
審決日 2013-01-11 
出願番号 特願2000-403903(P2000-403903)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H01F)
P 1 8・ 1- WZ (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 昌晴  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 大澤 孝次
山田 洋一
発明の名称 螺旋形成電導体構造物をその電気回路中に備えた電気機器  
代理人 白崎 真二  

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