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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F
管理番号 1270406
審判番号 不服2012-7947  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-27 
確定日 2013-02-18 
事件の表示 特願2006-331133号「偏平伝熱管の製造方法及び該製造方法によって得られる偏平伝熱管並びに該偏平伝熱管を組込んだガス冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月26日出願公開、特開2008-145024号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年12月7日の出願であって、平成24年2月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成24年7月27日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成24年9月26日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年4月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
本件補正により請求項1は、次のように補正された。
「方形の金属製薄板に対してUOフォーミングを施すことによって偏平伝熱管を製造する方法において、金属製薄板が2枚合せにされて相互に対向して平坦面が形成されるそれぞれの部位に、プレス成形を施すことによって予め複数の中空リブを形成する工程、次いでUOフォーミングによる縁曲げ加工および折り曲げ加工を施すことによって偏平管状素管を形成し、前記UOフォーミングによる偏平管状素管の形成時に、フィン部材を内装し、しかる後に該素管の端縁を全長にわたって突き合せ、一体として接合する工程とからなることを特徴とする偏平伝熱管の製造方法。」

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「・・・中空リブを形成し、・・・、さらに前記UOフォーミングによる・・・一体として接合する・・・」とあるものと、「・・・中空リブを形成する工程、・・・、前記UOフォーミングによる・・・一体として接合する工程とからなる・・・」と補正するものであり、「偏平伝熱管の製造方法」を2つの「工程」として特定することにより限定したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-294382号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0007】この例では、インナーフィン6としてオフセットフィン型のものが用いられる。これは金属板を波形に曲折形成すると共に、その波の稜線方向に多数の切り起こし部を設けたマルチエントリー型のものである。なお、インナーフィン6はこのオフセットフィン型に限らず、単に幅方向のみに波が進行するものであってもよい。偏平チューブ1は金属板をプレス成形すると共に、それを幅方向に丸めて偏平状に曲折し、その継目を溶接またはろう付け等の手段により接合したものを用いることができる。偏平チューブ1の両平面部1aの内面側には、多数の傾斜溝7がハの字状に定間隔で凹陥され、その外面側にはそれに整合する凸条7aが突設される。」(下線は当審で付与。以下、同様。)

イ 「【0008】このようにしてなる偏平チューブ1は、図2の如くヘッダプレート2aのチューブ挿通孔3にその両端部が挿通される。各偏平チューブ1の内部には、その平坦部1aの幅のインナーフィン6が挿入されている。そしてこの状態で隣り合う偏平チューブ1の外面間は凸条7aにおいて互いに接触する。夫々の偏平チューブ1の凸条7aは互いに整合する位置にあり、夫々の稜線どうしが接触する。なお、傾斜溝7の下端は図1において偏平チューブ1の曲面部1bに達する。このようにして組立てられた各部品は、互いに接触する少なくとも一方側の部品表面にろう材が被覆されたものが用いられ、高温の炉内においてろう付け固定される。なお、一対のヘッダプレート2aには図5に示す如く、夫々ヘッダ本体2bが被嵌される。また、一対のヘッダプレート2a間にはケーシング8が被着される。そして夫々の接合部が一体的にろう付け固定される。」

ウ 図1には、対向する平坦面に複数の凸条が設けられた偏平チューブが図示されている。

エ 対向する平面部に複数の凸条が設けられた偏平チューブは、金属板をプレス成形すると共に、それを幅方向に丸めて偏平状に曲折し、その継目を溶接またはろう付け等の手段により接合して製造されることから(記載事項ア)、複数の凸条は、金属板の対向する平面部に、プレス成形することにより形成されるものと認められる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「金属板によって偏平チューブを製造する方法において、金属板の対向する平面部にプレス成形することにより複数の凸条を形成し、それを幅方向に丸めて偏平状に曲折し、その継目を溶接またはろう付け等の手段により接合して偏平チューブを形成し、
インナーフィンは偏平チューブの内部に挿入されており、互いに接触する少なくとも一方側の部品表面にろう材が被覆されたものが用いられ、高温の炉内においてろう付け固定される偏平チューブの製造方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、特開2005-55153号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

オ 「【0023】
<3.製造方法>
図3は、上記第1実施形態に係る熱交換器におけるパイプ2の製造工程を示す図であり、図5は、上記第2実施形態に係る熱交換器におけるパイプ3の製造工程を示す図である。これらの図に示すように、オーステナイト系ステンレス製鋼板9、10を適切な大きさに裁断し、溝11、5を複数形成したものを、筒状に丸めることによってパイプ2、3を製造する。パイプ2内にフィン1を挿入する第1実施形態においては、予めフィン1を鋼板9に挟んでから筒状のパイプ2に加工する。筒状に丸めた後は鋼板9、10の両端の接合部分を溶接する。以上のような作業はせいぜい3?5分程度で済み、ロウ付けの場合と比べて製造時間の大幅な短縮を図ることができる。」

カ 「【0024】
<4.適用例>
本発明は種々の熱交換器に適用することが可能であるが、特にフェライト系ステンレス鋼を使用するので、熱交換器の冷却水の流速が遅くキャビテーション腐食が起こりにくい条件で使用できるEGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラーなどに、好適に用いることができる。このEGRクーラーは、内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物を低減するために、排気ガスの一部を排気系から取り出し、吸気系へ再循環させる排気ガス再循環装置(EGR装置)において、高温の排気ガスを吸気系に再導入する前に冷却するための熱交換器である。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「凸条」、「偏平チューブ」、「インナーフィン」は、それぞれ、本願補正発明の「中空リブ」、「偏平伝熱管」、「フィン部材」に相当する。
そして、引用発明の「金属板」は、プレス成形すると共に、丸めて偏平状に曲折して偏平チューブに形成されるものであるから、本願補正発明の「方形の」「金属製薄板」に相当する。
また、引用発明の「金属板の対向する平面部」は、本願補正発明の「金属製薄板が2枚合せにされて相互に対向して平坦面が形成されるそれぞれの部位」に、引用発明の「プレス成形することにより複数の凸条を形成」することは、本願補正発明の「プレス成形を施すことによって予め複数の中空リブを形成する」ことに相当する。
さらに、引用発明の「それを幅方向に丸めて偏平状に曲折」することは、本願補正発明の「次いで」「偏平管状素管を形成」することに相当する。
引用発明の「その継目を溶接またはろう付け等の手段により接合」することは、本願補正発明の「該素管の端縁を全長にわたって突き合せ」ることといえる。
引用発明の「インナーフィンは偏平チューブの内部に挿入されて」いることは、本願補正発明の「フィン部材を内装」していることに相当し、引用発明の「互いに接触する少なくとも一方側の部品表面にろう材が被覆されたものが用いられ、高温の炉内においてろう付け固定される」ことは、「互いに接触する」「部品」が「固定」されることから、本願補正発明の「一体として接合する」ことに相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「方形の金属製薄板によって偏平伝熱管を製造する方法において、金属製薄板が2枚合せにされて相互に対向して平坦面が形成されるそれぞれの部位に、プレス成形を施すことによって予め複数の中空リブを形成する工程、次いで偏平管状素管を形成し、フィン部材を内装し、該素管の端縁を全長にわたって突き合せ、一体として接合する工程とからなる偏平伝熱管の製造方法。」

そして、両者は次の点で相違する。

本願補正発明では、UOフォーミングによる縁曲げ加工および折り曲げ加工を施すことによって偏平管状素管を形成し、UOフォーミングによる偏平管状素管の形成時に、フィン部材を内装し、しかる後に、該素管の端縁を全長にわたって突き合せているのに対して、引用発明では、偏平管状素管の形成する方法、及びフィン部材を偏平伝熱管に内装するタイミングについて不明である点。

3-3.相違点の判断
管を形成する際に、UOフォーミングによることは本出願前に周知の技術である(例えば、特開平8-93466号公報【0015】、特開平8-187517号公報【0007】、特開平4-74855号公報第5ページ左上欄参照。)。
そうすると、引用発明の金属製薄板を幅方向に丸めて偏平状に曲折して偏平管状素管を形成する際に、上記周知の技術であるUOフォーミングを採用し、縁曲げ加工や折り曲げ加工を行うことは当業者が適宜なし得たことである。
さらに、フィン部材を偏平伝熱管に内装するタイミングについて、引用例2の記載事項オに、「フィン1を鋼板9に挟んでから筒状のパイプ2に加工する。筒状に丸めた後は鋼板9、10の両端の接合部分を溶接する。」とあるように、フィン部材を板に挟んでから鋼板を筒状に丸めることはフィンを内装する伝熱管の形成方法として特別な方法ではなく、かつ、引用発明において、このような方法でフィンを内装することを阻害する事由もないことから、引用発明において、UOフォーミングによる偏平管状素管の形成時にフィン部材を内装し、しかる後に該素管の端縁を全長にわたって突き合せることは、当業者が容易になし得たことといわざるをえない。

また、本願補正発明によって、引用発明から当業者が予測し得ない程の効果を奏するものでもない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載の事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年10月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「方形の金属製薄板に対してUOフォーミングを施すことによって偏平伝熱管を製造する方法において、金属製薄板が2枚合せにされて相互に対向して平坦面が形成されるそれぞれの部位に、プレス成形を施すことによって予め複数の中空リブを形成し、次いでUOフォーミングによる縁曲げ加工および折り曲げ加工を施すことによって偏平管状素管を形成し、さらに前記UOフォーミングによる偏平管状素管の形成時に、フィン部材を内装し、しかる後に該素管の端縁を全長にわたって突き合せ、一体として接合することを特徴とする偏平伝熱管の製造方法。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明において、偏平伝熱管の製造方法を2つの「工程」とすることについての限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「3-3.」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載の事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例2に記載の事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-18 
結審通知日 2012-12-20 
審決日 2013-01-07 
出願番号 特願2006-331133(P2006-331133)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F28F)
P 1 8・ 121- Z (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿沼 善一  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長浜 義憲
山崎 勝司
発明の名称 偏平伝熱管の製造方法及び該製造方法によって得られる偏平伝熱管並びに該偏平伝熱管を組込んだガス冷却装置  
代理人 押田 良隆  

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