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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1270523 |
審判番号 | 不服2011-24431 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-11 |
確定日 | 2013-02-21 |
事件の表示 | 特願2006-523879「明度上昇物品」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月 3日国際公開、WO2005/019879、平成19年 2月15日国内公表、特表2007-503019〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続きの経緯 本願は平成16年8月4日を国際出願日(優先権主張 平成15年8月18日 米国)とする出願であって、平成22年10月20日及び平成23年5月13日付けで手続補正がなされ、平成23年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年11月11日付けで審判請求がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1ないし26に係る発明は、平成23年5月13日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 入射光を透過し、見る方向内に当該光を選択的に向け直すための明度上昇物品であって、実質的に台形断面を有する一連の相隔たるプリズム要素を含む、前記光を受けるためのプリズム表面を含み、 前記台形プリズム要素が: (a) 入射光に向いて配置された表平面; (b) 入射光から離れて配置され、前記プリズム要素の基部を接続する、前記表平面より大きな基部平面;および (c) 前記表平面から後ろに前記基部平面まで延びる第1および第2の非平行面であって、前記プリズム要素内で、当該非平行面と前記表平面との間に90度より大きく120度より小さい角度(β)をそれぞれ形成する第1および第2の非平行面 を含んで成り、 前記物品の隣接するプリズム内の同一点間のピッチ(P)または距離に対する前記表平面と基部平面との間の高さ(H)または垂直距離の比により出射光についてのカットオフ角度が規定され、該カットオフ角度は絶対値θc1、θc2、およびθc3の最大値として規定され、θc1、θc2、およびθc3は次式: 【数1】 (式中、α=180°-β度であり、nはプリズム要素物質の屈折率である) により規定される、明度上昇物品。」 3 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-311419号公報(以下、「引用例1」という。)、同じく特表2000-507736号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同じ。) (1)引用例1 ア「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液晶の応答によって画像を表示するための液晶表示パネル、この液晶表示パネルに設けられる透明基板、及び、この液晶表示パネルを備える立体視映像表示装置に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、液晶表示装置は、アレイ基板と、このアレイ基板に対向する対向基板と、このアレイ基板とこの対向基板との間に挟持される液晶層等とを備えている。前記アレイ基板における前記対向基板に対向する面には、平行に配列された複数の走査線と、これら走査線に対して直交するように配列された複数の信号線と、走査線と信号線とにより囲まれる領域に配置される画素電極と、前記走査線と前記信号線との交差する箇所或いは交差する箇所付近に配置されたスイッチング素子とが設けられている。前記画素電極とスイッチング素子は、電気的に接続されている。また、前記対向基板における前記アレイ基板と対向する面には、共通電極が設けられている。カラー液晶表示装置は、これらの構成に加えて、例えば、対向基板と共通電極との間にカラーフィルターが介在している。」 イ「【0018】 【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る液晶表示装置について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、図面は発明が理解できる程度に概略的に示してあり、発明の範囲を図示例に限定するものではない。 【0019】図1は、本発明に係る液晶表示装置が具備する液晶表示パネルの平面図であり、図2は、図1の切断線A-Aに対応する断面図である。図1及び図2に示すように、液晶表示装置は、画像を表示する液晶表示パネル14と、液晶表示パネル14の表示面14aに対向配置されたレンチキュラレンズ板15と、表示面14aの反対の面から液晶表示パネル14に向けて光を発するバックライト9とを備えており、いわゆる透過型液晶表示装置である。この液晶表示装置は、レンチキュラレンズ板15によって観察者が立体映像を観察し得るようにしたものであり、いわゆる立体視映像表示装置と呼ばれるものである。 【0020】レンチキュラレンズ板15は、三画素分のピッチにほぼ一致する間隔でストライプ状のマイクロレンズ(シリンドリカルレンズ)が多数配列されたものである。この場合、各画素から発した光束はレンチキュラレンズ板15のレンズ屈折作用によって、レンチキュラレンズ板15の前方に位置する観察者の左右の眼に夫々到達する。即ち、左眼用の映像情報を表示した画素から発せられた光束は左眼のみに到達し、右眼用の映像情報を表示した画素から発せられた光束は右眼のみに到達する。尚、人間が両眼視差によって立体知覚を行う状況と同様な場合の視差を有するように、左眼用の画素及び右眼用の画素それぞれに表示がなされ、これにより、観察者は立体映像を認識する。なお、マイクロレンズが二画素、或いはそれ以上の画素分のピッチにほぼ一致する間隔で多数配列されていても良い。 【0021】液晶表示パネル14は、透明なアレイ基板8と、このアレイ基板8に対向配置された透明基板1と、透明基板1とアレイ基板8の間に介在する液晶層7等とを備えている。 【0022】アレイ基板8は、ガラス製の透明な基板であり、バックライト9に対向配置されている。バックライト9にて発した光は、このアレイ基板8を透過する。アレイ基板8における表示面14a側の面には、光を透過する透明な画素電極10,10,…と、画素電極10,10,…に対するスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)11,11,…と、導電性の信号線12,12,…と、同じく導電性の走査線13,13,…とが設けられている。 【0023】信号線12,12,…は互いに平行に配列されており、信号線12,12,…に対して直交するように走査線13,13,…が互いに平行に配列されている。信号線12,12,…と走査線13,13,…とに囲まれる領域に、画素電極10,10,…が配置されている。各画素電極10は、走査線13に電気的に接続されており、かつ、TFT11に電気的に接続されている。各TFT11は、信号線12と走査線13との交わる交点近傍に配置されており、信号線12に接続されている。TFT11,11,…、信号線12,12,…及び走査線13,13,…は、クロムや酸化クロム等のクロム系の遮光膜に被覆されていても良い。 【0024】画素電極10,10,…、TFT11,11,…、信号線12,12,…及び走査線13,13,…は、配向膜5bに覆われている。この配向膜5bは、配向処理されており、液晶層7の液晶組成物を配向させるためのものである。 【0025】透明基板1における表示面14aと反対側の面には、三原色に着色されたカラーフィルタ3と、光を透過する透明な共通電極6と、配向処理された配向膜5aとが、順次積層されている。配向膜5aは、液晶層7の液晶組成物を配向させるためのものである。カラーフィルタ3は、赤、青、緑に着色されており、各画素電極10に対して一色の領域が対向配置している。更に、カラーフィルタ3には、ブラックマトリックス4が形成されており、ブラックマトリックス4は信号線12,12,…及び走査線13,13,…に対して対向配置されている。なお、TFT11,11,…に対して、ブラックマトリックス4が対向配置されていても良い。ブラックマトリックス4は、光を遮光するものであり、例えば、クロムや酸化クロム等により形成されている。 【0026】配向膜5aと配向膜5bとの間に液晶組成物が充填されて、液晶層7が形成される。 【0027】さて、画素電極10及び共通電極6により液晶層7に電圧が印加されると、画素電極10と共通電極6との間にある液晶組成物が応答するが、TFT11や信号線12、走査線13と共通電極6との間にある液晶組成物は応答しない。即ち、液晶表示パネル14を平面視すると、液晶組成物の応答する領域は、画素となる領域となり、TFT11のスイッチングによって明暗に変化する領域である。一方、液晶組成物の応答しない領域は、TFT11のスイッチングによっても常に暗状態を維持している。本明細書では、液晶表示パネル14を平面視して、TFT11のスイッチングによって明暗に変化する領域を画素領域と称し、画素領域以外の領域を非画素領域と称する。なお、基本的には、液晶表示パネル14を平面視して、画素領域は画素電極10(二本の信号線12と二本の走査線13とにより囲まれる四角形領域)に対応する領域となる。但し、画素電極10の一部に重なるようにブラックマトリックス等の遮光層が形成された場合には、この遮光層に対応する領域もTFT11のスイッチングに関わらず常に暗状態に維持されるため、この場合の遮光層に対応する領域は非画素領域である。 【0028】液晶層7に対向配置される透明基板1について、詳細に説明する。透明基板1は、ガラス製の透明な基板であり、その内部を光が通過することが可能である。透明基板1の表示面14aは、平坦な面となっている。表示面14aと反対側の面は、液晶層7に対向する面である。液晶層7と対向する面は、アレイ状に配列されるとともに表示面14aに対して平行となる平坦面1aと、平坦面1aに対して傾斜する傾斜面1bとを備える。一の平坦面1aは、一の画素領域に対向配置されており、この平坦面1aを囲むようにして傾斜面1bが形成されている。この傾斜面1bによって、断面V字状の溝1dが形成され、溝1dが信号線12や走査線13(或いはブラックマトリックス4)に対向する。 【0029】また、傾斜面1bに対する平坦面1aの角度θは、225度より大きく270度未満となっており、透明基板1の厚さが許される限り、90度に近い程良い。更に、光を反射する反射部1cが溝1dに形成されており、傾斜面1b上には反射部1cが付着されている。この反射部1cによって傾斜面1bに鏡面が形成される。この反射部1cは、アルミニウム或いは銀等の金属蒸着にて形成される。また、反射部1cは、クロム等の金属をエッチングにて形成されても良い。クロムの場合、光反射率は約60%となる。 【0030】次に、透明基板1の製造方法について説明する。まず、図3に示すように、ガラス製の基板20の両面を研磨して、その両面を互いに平行にする。次いで、図4に示すように、アレイ基板8に配列された信号線12,12,…の間隔と同一間隔となるように、基板20の一方の面20aにV字状の溝1dを互いに平行となるように形成する(削る)。この際、V字状の溝1dの幅が信号線12の幅とほぼ同一となるように、また、溝1dの深さが溝1dの幅の二分の一より大きくなるように、溝1dを形成する。また、アレイ基板8に配列された走査線13,13,…の間隔と同一間隔となるように、面20aにV字状の溝1dを互いに平行となるように形成する(削る)。この際、溝1dの幅が走査線13,13,…の幅とほぼ同一となるように、その深さが幅の二分の一より大きくなるように、溝1dを形成する。 【0031】次いで、図5に示すように、面20aの全面にアルミニウム或いは銀等を蒸着して、その全面に反射層20bを形成する。次いで、図6に示すように、反射層20bの形成された面を研磨することによって、平坦面1aに付着された反射層を除去する。以上のようにして、透明基板1が製造される。 【0032】次に、本実施の形態の液晶表示装置の作用効果について説明する。図7に示すように、表示面14aに対して入射する光(この光の向きは、観察者の視線ベクトルと同じである。)は、表示面14aを透過し、透明基板の内部を通過する。透明基板1の内部を通過する光が平坦面1aに入射すると、平坦面1aを透過して、画素領域に対応するカラーフィルタ3に到達する。言い換えれば、画素領域は明暗に変化する領域であり、画素領域から発せられた光は、表示面14aにおける画素領域に対応する領域W1に到達し、領域W1にはカラーフィルタ3の色が映し出される。 【0033】一方、透明基板1の内部を通過する光(この光の向きは、観察者の視線ベクトルと同じである。)が傾斜面1bに入射すると、その傾斜面1bに反射部1bが形成されているため、光が傾斜面1bにて反射する。そして、傾斜面1bにて反射した光は、平坦面1aに向かって入射する。言い換えれば、画素領域から発せられた光は、傾斜面1bにて反射して、表示面14aにおける画素領域以外(信号線12や走査線13)に対応する領域W2に到達し、領域W2にもカラーフィルタ3の色が映し出される。」 ウ「【0036】なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。 【0037】上記実施の形態では基板20を削ることによって溝1dを形成したが、図9に示すように、四角錐台形状でありガラス製のプリズム21をアレイ状に隣接して配列することによって、図8に示すような溝1dを形成しても良い。この場合では、プリズム21がアレイ状に配列されたものが透明基板1となる。プリズム21の側面が傾斜面1bとなり、プリズム21の小さい底面が平坦面1aとなり、プリズム21の大きい底面が表示面14aとなる。この場合でも、傾斜面1bに反射部1cが付着して、傾斜面1bに鏡面が形成されている。なお、図8については、上記実施の形態と同一な構成は、同一の符号を付す。 」 エ 上記アないしウからみて、引用例1には、 「ガラス製の透明な基板であり、その内部を光が通過することが可能である透明基板1であって、透明基板1の表示面14aは、平坦な面となっており、表示面14aと反対側の面は、液晶層7に対向する面であって、液晶層7と対向する面は、アレイ状に配列されるとともに表示面14aに対して平行となる平坦面1aと、平坦面1aに対して傾斜する傾斜面1bとを備え、一の平坦面1aは、一の画素領域に対向配置されており、この平坦面1aを囲むようにして傾斜面1bが形成され、この傾斜面1bによって、断面V字状の溝1dが形成されており、溝1dが信号線12や走査線13(或いはブラックマトリックス4)に対向し、傾斜面1bに対する平坦面1aの角度θは、225度より大きく270度未満(当審注:「225度より大きく270度未満」は、角度θの共役角における優角で表したものと認められ、この角度を劣角で表すと「90度より大きく135度より小さい」である。)となっており、透明基板1の厚さが許される限り、90度に近い程良く、傾斜面1b上には反射部1cが付着されており、この反射部1cによって傾斜面1bに鏡面が形成されるものであって、 透明基板1は、四角錐台形状でありガラス製のプリズム21をアレイ状に配列することによって、溝1dを形成しても良く、この場合では、プリズム21の側面が傾斜面1b、小さい底面が表示面14a、大きき底面が表示面14aとなり、この場合でも、傾斜面1bに反射部1cが付着して、傾斜面1bが鏡面が形成されており、 作用効果について説明すると、表示面14aに対して入射する光(この光の向きは、観察者の視線ベクトルと同じである。)は、表示面14aを透過して、透明基板の内部を通過し、透明基板1の内部を通過する光が平坦面1aに入射すると、平坦面1aを透過して、画素領域に対応するカラーフィルタ3に到達するので、言い換えれば、画素領域は明暗に変化する領域であり、画素領域から発せられた光は、表示面14aにおける画素領域に対応する領域W1に到達し、領域W1にはカラーフィルタ3の色が映し出され、一方、透明基板1の内部を通過する光(この光の向きは、観察者の視線ベクトルと同じである。)が傾斜面1bに入射すると、その傾斜面1bに反射部1bが形成されているため、光が傾斜面1bにて反射し、そして、傾斜面1bにて反射した光は、平坦面1aに向かって入射するので、言い換えれば、画素領域から発せられた光は、傾斜面1bにて反射して、表示面14aにおける画素領域以外(信号線12や走査線13)に対応する領域W2に到達し、領域W2にもカラーフィルタ3の色が映し出される、透明基板1。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 (2)引用例2 ア「【特許請求の範囲】 1.照明装置であって、 (a)光源と、 (b)光源に極めて近接して配置され且つ少なくとも1つのマイクロプリズムを含む光指向組立体であって、同マイクロプリズムは、光源から射出された光を受け入れる入射面と、同入射面から遠位にあり且つ同入射面と平行な射出面と、同入射面と射出面との間に配設され且つ同入射面及び射出面に隣接し、同入射面に対して鈍角の傾斜角度を形成しており、更に、同入射面によって受け入れられた光線を全反射させるように配置された、少なくとも1つの側壁と、を含む、光指向組立体と、 (c)前記側壁を光が通過するのを遮断するための少なくとも1つの遮光手段 と、 を含む照明装置。 2.請求項1に記載の照明装置であって、 少なくとも1つのレンズを含むレンズ組立体であって、前記マイクロプリズムの射出面に極めて近接しているレンズ組立体を更に含む、照明装置。 3.照明装置であって、 (a)光源と、 (b)前記光源に極めて近接して配置された反射装置と、 (c)光源に極めて近接して配置され且つ複数のマイクロプリズムを含む光指向組立体であって、同複数のマイクロプリズムの各々は、光源から射出された光を受け入れる入射面と、同入射面から遠位にあり且つ同入射面と平行な射出面と、同入射面と射出面との間に配設され且つ同入射面及び射出面に隣接し、同入射面に対して鈍角の傾斜角度を形成しており、更に、同入射面によって受け入れられた光線を全反射させるように配置され、前記マイクロプリズムの相互間の隙間領域を形成している、少なくとも1つの側壁と、を含む、光指向組立体と、 (d)前記側壁を光が通過するのを遮断するように配置された少なくとも1つの遮光手段と、 を含む照明装置。 4.請求項4に記載の照明装置であって、 前記光指向組立体が2つの面を有する底壁を更に含み、前記マイクロプリズムの射出面が前記底壁の1つの面に隣接している、照明装置。 5.請求項4に記載の照明装置であって、 少なくとも1つのレンズを含むレンズ組立体であって、前記マイクロプリズムの射出面に極めて近接しているレンズ組立体を更に含む、照明装置。 6.請求項4に記載の照明装置であって、 前記反射装置が、反射された光を、前記マイクロプリズムの入射面に向けて光指向するような向きに配置されている、照明装置。」(2頁1行?3頁9行) イ「【発明の詳細な説明】 光再循環する背面結合型照明装置 発明の背景 現在利用可能な、直接照明及び他の応用のための照明装置は、望まない方向への光の吸収や放散のために光の損失を蒙っている。仮に望まない方向への吸収、放散によって損失した光線が捕捉されて利用された場合には、光源の利用可能な出力は増加する。これを達成する照明装置は熱望されるであろう。本発明は、これと、他の方法では損失するであろう光を再指向及び再循環する他の目的を達成する。」(4頁1?9行) ウ「発明の詳細な説明 本発明は(a)光源と、(b)この光源に極めて接近した光指向組立体とを備え、また(i)少なくとも1つのマイクロプリズムとを備え、このマイクロプリズムは、光源から光が放射するのを許す入力面と、この入力面から離れ且つ平行な出力面、及び入力面と出力面との間で且つ隣接して配置され、入力面に対して鈍角をなし、さらに入力面によって受け入れた光線を全反射するのに有効となるように配置された、少なくとも1つの側壁と、(ii)この側壁を通る光路を遮断する、少なくとも1つの遮断手段とを備える。 本発明の概念的な描写は、図1の略解ブロック図中の照明装置10である。この照明装置10は、照明組立体12と光指向組立体14の、2つのサブ・アッセンブリ(副組立体)に分割される。矢印20は照明源12から光指向組立体14を通って指向対象物(図示せず)に向かう光波の指向方向を示す。この図面は、単なる構造の略解表示であり、装置の要素又はその物理的配置の実際の又は相対的な寸法を示唆する意図ではないものと認識すべきである。 照明装置の特定の実施例100は、図2に示されている。この装置100は、照明組立体110と、ベース壁124の一側上に随意に支持された少なくとも1つのマイクロプリズム122の光指向組立体120とを有する。この光指向組立体120が、照明装置100の光出力の角分配を制御するために、ベース壁124の他の側にレンズあるいはレンズアレイを備えることは随意である。」(4頁29行?5頁18行) エ「照明装置組立体 照明装置組立体110は、光源112を有しており、その光源112は、白熱灯、光放射ダイオード(LED)、金属若しくはハロゲン高輝度放電ランプ、蛍光灯、又は使用に適した他の光源であっても良い。 好ましい実施形態では、照明装置組立体110は光源112の背後又はその周辺に、即ち、光指向組立体120から離隔して配置された反射器150を有している。反射器150は、光指向組立体120から離れる方向に伝播する光線を反射してマイクロプリズム122に戻す。別の適用例では高反射性の材料が好ましいけれども、反射器150は、磨かれたアルミニウム若しくは白色塗料のような、発散性の又は高反射性の金属から製造することができる。反射器として選択される金属は、約75%ないし90%の範囲の反射率を有し、90%以上であることが望ましい。」(5頁19行?6頁2行) オ「光指向組立体 第2図に示されるマイクロプリズム122は、四つの傾斜した側面を有する多面体である。これらの特定のマイクロプリズムの構造は、「マイクロプリズムの配列を使用したバックライティング装置」に対して、1995年3月7日にビーソン、その他(Beeson et al)に発行された米国特許第5,396,350号に詳細に述べられている。この米国特許は参考としてこの明細書に組み込まれている。第6図及び第7図に示されるように、各マイクロプリズム122は入力表面132、出力表面134及び対向する側壁136を有していて、その側壁の各々は入力表面132及び出力表面134と隣接する。側壁136と入力表面132との接合部は鈍角の傾斜角αを限定しする。第13図は、ベース壁220に支持された直線マイクロプリズム210の配列220を示している。 第6図のマイクロプリズムの幾何学形状に代わって、他の形状を使用できる。第8図ないし第12図は別のマイクロプリズム、すなわち、円錐形(第8図)、多面形(第9図)、多面曲線(polyhedronal curvilinear)(第10図及び第11図)、及び曲線マイクロプリズム(図12)である。上記の例示は説明のためだけであり、当業者には容易に思い浮かぶように、他の幾何学的な形状が使用され得る。更に、マイクロプリズム122の横断面は非対称(例えば、長方形)でもよい。 マイクロプリズム122の寸法は光指向組立体120の光出力分布に影響する。特に、入力表面132の面積、側壁表面136の高さ、及び側壁136の傾斜角αは互いに調整されてマイクロプリズム122を通る光の通路を変える。狭い出力角度分布が、入力表面132の表面積を減少し、一方側壁136の高さを増加しかつ鈍角の傾斜角αを最小にすることによって達成される。代わりに、出力角度分布は、側壁136の高さを減少しかつ鈍角の傾斜角αの大きさを増加すると共に入力表面132の表面積を増加することによって、増加され得る 。 ベース壁124が使用されているところでは、照明装置100の出力の角度分散の追加の制御は、壁124の厚さを変えることによって達成され得る。レンズ142の与えられた正の曲率半径に対して、ベース壁124の厚さの増加は、マイクロプリズム122とレンズ配列140との間の隔たりを増加し、照明装置100の出力の角度分布を増加することになる。 第2図に示されたレンズ142は凸形であるが、それらは、球状凹形、非球面形、筒状凸形、筒状凹形、或いは特定の出願によって述べられ或いは当業者によって容易に思い浮かぶその他の適当な形状でもよい。また、レンズ142はベース壁124がない場合には、出力正面134に直接配置されてもよい。更に、レンズは、回折性要素であっても、屈折性要素であっても、或いは回折性要素と屈折性要素との組み合わせであってもよい。 背面結合(back-coupled)照明装置100の照明組立体110及び光指向組立体は、第14図の構造で示されるように、レンズなしで利用され得る。更に、第2図のレンズ142の軸線はここのマイクロプリズム122の幾何学中心126と整合されている。もし望むなら、レンズ142は、第15図に示されるように、マイクロプリズム122の幾何学中心126に関して片寄っていても或いは被い隠され(eclipsed)ていてもよい。最後に、レンズの横断面寸法はマイクロプリズム122の横断面に関して変化できる。 個々のマイクロプリズム122の幾何学中心126とレンズ142の幾何学中心との間の距離は、ゼロからマイクロプリズム122の出力表面134の幅の1/2まで変化され得る。レンズ142は、マイクロプリズム122の出力表面134に隣接して配置されても、或いはマイクロプリズム122の入力表面132と出力表面134との間の距離の1/2までの距離で配置されてもよい。 マイクロプリズム122及び関連する構造(光学レンズ配列を含む)は、前述の米国特許第5、396、350号、「マイクロプリズムの配列を使用する照明装置」に対して、1995年6月27日にチンマーマン、その他(Zimmerman et al)に発行された米国特許第5,248,468号及び「傾斜した導波管の配列を有する直視ディスプレー」と対して、1996年1月2日にチンマーマン、その他(Zimmerman et al)に発行された米国特許第5,481,385に示された方法にしたがって並びにそれらの特許に示された材料を使用してつくられ得る。これらの特許はこの明細書に参考として組み込まれている。参照した特許に示されるように、マイクロプリズム及びレンズの配列は、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ガラス、透明セラミック及び「傾斜した光重合された導波管」に対してビーソン、その他(Beeson et al)に1995年10月31日に発行された米国特許第5,462,700号に記載されたようなモノマー混合物を含む種々の材料から作られ得る。光源から発生される熱はこれらの構造体に対する構成材料を選ぶときに考慮されるべきである。もり望むなら、レンズ組立体は光指向組立体のベース壁に積層された別のシートとして設けられても、或いは射出成型又は当業者が容易に思いつく他の技術を使用して光指向組立体と共に一体構造として作られてもよい。」(6頁28行?9頁8行) カ「側壁に隣接した領域 光指向組立体120のマイクロプリズム122の側壁136は、側壁136に隣接する領域128を画成する。複数のマイクロプリズム122を有する光指向組立体120内において、これらの領域は、「隙間」領域と呼ばれる。これらの領域128には反射要素が設けられている。該反射要素は、図2に示すような形状をした、反射性の高い中実の詰め物160である。中実の詰め物160は、鏡のようなものでもよいし、また、光を散乱ないし乱反射させるようなものでもよい。」(9頁9?16行) キ「照明装置の作用 前記装置の作用を図33を参照して説明する。特別の構造体がないと、光源112は、光を、光指向組立体120や同様に他の方向に向けて放射する。これらの光線は、マイクロプリズム122の入力面132に直接的に移動し、Rs及びRpを計算する前記等式によって要求されたように反射する。光の残りは、マイクロプリズム122を通って伝達され、光線Aによって示されるように、協働するレンズ142を最後に通過する。 光源112を離れる光が、光指向組立体120から離れる方向に最初に移動する場合、反射器150に出くわすことになるであろう。そこで、光は、光指向組立体120に向かって反射され、光線Bによって示されたように、マイクロプリズム122及びレンズ142を通過する。 いくつかの光線は、光源112から、光指向組立体120に向かって移動する。しかし、いくつかの光線は、側壁136に隣接した領域128に入り込む。そのような光線が前記経路上を継続して通過した場合、側壁136を通ってマイクロプリズム122に入り込むであろう。しかしながら、そのような光線は、光指向組立体120から外に適切に出ることはないであろう。そのような光線は、実際、前記光出力分布をゆがめるであろう。したがって、反射要素が、領域128に設けられており、これによって、そのような向きの不規則な光線を遮断し且つ向け直すことができるようになっている。図示されているように、光源112を離れる光線は、個体充填材160に到達する。個体充填材で、前記光線は、反射器150に向けて反射する。そこで、前記光線は、光線Cによって示されているように、光指向組立体120に向けて反射され、そして、光指向組立体120を通過する。反射材料の代わりに、非反射充填材が領域128で用いられた場合、前記光線は、前記充填材によって簡単に吸収されるであろう。あるいは、前記光は、光源に向けて反射される。しかし、これは、そのような光のほとんどが光源112によって吸収されるので、望ましくない。そのため、この反射モードは、例えば、より小さな光源を用いることによって、最小限度にすべきである。 なお、本願発明は、業務用、オフィス用、住宅向き用、野外用、自動車用、及び家庭器具用の用途での照明を含む、直接照明装置のような幅広い種類の装置に適用可能である。本願発明は、また、コンピューター用、自動車用、軍隊用、航空宇宙用、消費者用、業務用、及び産業用の用途のためのディスプレーと、照明源を必要とする他の任意の装置にも適用可能である。2つの例は、図34に図示された業務用のトロファー500と、図35に図示されたダウンライト600である。トロファー500は、T-5又はT-8蛍光灯のような2つの光源510と、反射器520と、マイクロプリズムからなる光指向組立体530とを備えている。ダウンライト600は、同様に、光源610(例えば、CFLランプ)、反射器620、及び光指向組立体630とを備えている。 本願発明の好適な実施例であると考えられるものが説明されたが、当業者は、本願発明の精神から離れることなしに前記実施例に他の変更や別の変更を加えることができることを認めるであろう。本願発明の範囲に含まれるそのような全ての実施例を請求するように意図されている。例えば、引用した特許に開示された構造を用いることによって、他の変更や組合せが可能であることを理解すべきである。」(13頁14行?15頁1行) ク 上記アないしキからみて、引用例2には、 「光源に極めて近接して配置され且つ複数のマイクロプリズムを含む光指向組立体であって、同複数のマイクロプリズムの各々は、光源から射出された光を受け入れる入射面と、同入射面から遠位にあり且つ同入射面と平行な射出面と、同入射面と射出面との間に配設され且つ同入射面及び射出面に隣接し、同入射面に対して鈍角の傾斜角度を形成しており、更に、同入射面によって受け入れられた光線を全反射させるように配置され、前記マイクロプリズムの相互間の隙間領域を形成している、少なくとも1つの側壁と、を含む、光指向組立体であって、 光指向組立体120は、ベース壁124の一側上に随意に支持された少なくとも1つのマイクロプリズム122からなり、 マイクロプリズム122は、四つの傾斜した側面を有する多面体であって、入力表面132、出力表面134及び対向する側壁136を有していて、その側壁の各々は入力表面132及び出力表面134と隣接しており、側壁136と入力表面132との接合部は鈍角の傾斜角αを限定し、 側壁136は、側壁136に隣接する領域128を画成し、領域128には反射要素が設けられ、 マイクロプリズム122の寸法は光指向組立体120の光出力分布に影響し、特に、入力表面132の面積、側壁表面136の高さ、及び側壁136の傾斜角αは互いに調整されてマイクロプリズム122を通る光の通路を変えるものであって、 狭い出力角度分布が、入力表面132の表面積を減少し、一方側壁136の高さを増加しかつ鈍角の傾斜角αを最小にすることによって達成され、代わりに、出力角度分布は、側壁136の高さを減少しかつ鈍角の傾斜角αの大きさを増加すると共に入力表面132の表面積を増加することによって、増加され得る、 概念的には、照明源12からの光は光指向組立体14を通って指向対象物に向かうものである、 損失するであろう光を再指向及び再循環することを目的とした、光指向組立体120。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 4 本願発明と引用発明1との対比・判断 (1)対比 ア 引用発明1の「透明基板1」、「プリズム21」、「プリズム11をアレイ状に配列」、「『表示面14aと反対側の面』であって『液晶層7に対向する面』」、「『プリズム21の小さい底面』である『平坦面1a』」、「『プリズム21の大きい底面』である『表示面14a』」、「『プリズム21の側面』である『傾斜面1b』」、「傾斜面1bに対する平坦面1aの角度θ」が、それぞれ本願発明の「明度上昇物品」、「プリズム要素」、「一連の相隔たるプリズム要素」、「光を受けるためのプリズム表面」、「表平面」、「基部平面」、「第1および第2の非平行面」、「非平行面と表平面との間の角度(β)」に相当する。 イ 引用発明1の透明基板1は、「ガラス製の透明な基板であり、その内部を光が通過することが可能であ」って、「表示面14aに対して入射する光(この光の向きは、観察者の視線ベクトルと同じである。)は、表示面14aを透過して、透明基板の内部を通過し、透明基板1の内部を通過する光が平坦面1aに入射すると、平坦面1aを透過して、画素領域に対応するカラーフィルタ3に到達するので、言い換えれば、画素領域は明暗に変化する領域であり、画素領域から発せられた光は、表示面14aにおける画素領域に対応する領域W1に到達し、領域W1にはカラーフィルタ3の色が映し出され、一方、透明基板1の内部を通過する光(この光の向きは、観察者の視線ベクトルと同じである。)が傾斜面1bに入射すると、その傾斜面1bに反射部1bが形成されているため、光が傾斜面1bにて反射し、そして、傾斜面1bにて反射した光は、平坦面1aに向かって入射するので、言い換えれば、画素領域から発せられた光は、傾斜面1bにて反射して、表示面14aにおける画素領域以外(信号線12や走査線13)に対応する領域W2に到達し、領域W2にもカラーフィルタ3の色が映し出される」ことから、本願発明の明度上昇物品と同様に、「入射光を透過し、見る方向内に当該光を選択的に向け直す」ものである。 ウ 引用発明の「プリズム21」は「四角錐台形状」であることから、その断面は本願発明の「プリズム要素」と同じく「実質的に台形断面」である。 エ 引用発明1の「平坦面1a」は、「一の画素領域に対向配置されている」ので、本願発明の「表平面」と同じく「入射光に向いて配置され」ているものである。 オ 引用発明1の「平坦面1a」と「表示面14a」は、それぞれ「プリズム21」の「小さい底面」と「大きい底面」であるので、本願発明の「表平面」と「基部平面」との大小関係と同じく、「表平面より大きい基部平面」である。 引用発明1の「傾斜面1bによって断面V字状の溝1dが形成されて」いることから、「表示面14a」は連結していると認められるので、引用発明1の「表示面14a」は、本願発明と同じく「プリズム要素の基部を接続」しているものである。 引用発明1の「透明基板1」において、「表示面14a」の反対側に「平坦面1a」が存在するので、上記ウから、引用発明1の「表示面14a」は本願発明の「基部平面」と同じく「入射光から離れて配置され」ている。 カ 上記オから、引用発明1の「表示面14a」は、本願発明の「基部平面」と、「入射光から離れて配置され、プリズム要素の基部を接続する、表平面より大きな」点で一致している。 キ 引用発明1の「傾斜面1b」は、「平坦面1aに対して傾斜」し、「平坦面1aを囲むように傾斜面1bが形成され、この傾斜面1bによって、断面V字状の溝1dが形成されて」いることから、引用発明1の「傾斜面1b」は、本願発明の「第1および第2の非平行面」と同様に、「表平面から後ろに基部平面まで延びる」ものである。 ク 上記アないしキからみて、本願発明と引用発明1とは、 「 入射光を透過し、見る方向内に当該光を選択的に向け直すための明度上昇物品であって、実質的に台形断面を有する一連の相隔たるプリズム要素を含む、前記光を受けるためのプリズム表面を含み、 前記台形プリズム要素が: (a) 入射光に向いて配置された表平面; (b) 入射光から離れて配置され、前記プリズム要素の基部を接続する、前記表平面より大きな基部平面;および (c) 前記表平面から後ろに前記基部平面まで延びる第1および第2の非平行面であって、前記プリズム要素内で、当該非平行面と前記表平面との間に角度(β)をそれぞれ形成する第1および第2の非平行面 を含んで成る、明度上昇物品。」 である点において一致し、次の2点で相違する。 〔相違点1〕 非平行面と表平面との間の角度(β)が、本願発明では、90度より大きく120度より小さいのに対し、引用発明1では、90度より大きく135度より小さい角度であり、90度に近い程良い点。 〔相違点2〕 本願発明においては、物品の隣接するプリズム内の同一点間のピッチ(P)または距離に対する表平面と基部平面との間の高さ(H)または垂直距離の比により出射光についてのカットオフ角度が規定され、該カットオフ角度は絶対値θc1、θc2、およびθc3の最大値として規定され、θc1、θc2、およびθc3は次式: 【数1】 (式中、α=180°-β度であり、nはプリズム要素物質の屈折率である) により規定されるが、引用発明1においては、カットオフ角度は規定されていない点。 (2)相違点1、2についての判断 ア 相違点1について 引用発明1における「非平行面と表平面との間の角度(β)」(傾斜面1bに対する平坦面1aの角度θ)は、「90度に近い程良い」ものである。 そして引用発明1において、上記「角度(β)」は、当業者が90度より大きく135度より小さい範囲内で適宜選択し得る事項であり、また本願発明において、上記「角度β」の上限を120度未満とすることに顕著な効果も認められないから、本願発明において、角度(β)の上限を120度未満とした点は、設計上の事項にすぎない。 よって、引用発明1における「角度(β)」を、より90度に近い90度より大きく120度より小さい範囲内の特定の角度とすることは、当業者が適宜なした程度のことである。 イ 相違点2について 引用発明1の「明度上昇物品(透明基板1)」は、「四角錐台形状でありガラス製」の「プリズム要素(プリズム21)」を「アレイ状に配列」しているので、「明度上昇物品(透明基板1)」が、「表平面(平坦面1a)」と「基部平面(表示面14a)」との間の高さ(H)または垂直距離、及び隣接する「プリズム要素(プリズム21)」内の同一点間ピッチ(P)または距離について、特定の値を持つことは明らかである。また、引用発明1の「明度上昇物品(透明基板1)」が特定の屈折率値を持つことも明らかである。 そして、本願発明において、上記ピッチ(P)または距離に対する高さ(H)または垂直距離の比及び屈折率を用い、カットオフ角度を式(i)、(ii)、(iii)により規定される絶対値θc1、θc2、およびθc3の最大値として規定した点は、単に明度上昇物品のカットオフ角度を上記のとおりに定義しただけであって、当業者が適宜なし得たものである。 ウ 効果について 本願明細書には、「従来技術のアプローチの1つの顕著な欠点は、光挙動とそれがどのように改質されるかを予測することが困難なことである。すなわち既存の設計は機能するかもしれないが、従来法は輝度曲線26の全体形状やカットオフ角度値θカットオフのような因子を超える充分な制御のための手段が無いようである。実際、いったんフィルムが作成されると、表面構造物の形や大きさに対する変化の効果は経験的に評価される。しかし試行錯誤の設計法は、具体的な用途で充分機能する明度上昇物品の設計に充分ではなく、かかる方法はこの目的の原型フィルムの開発コストが高くなる。」(段落【0020】)との解決すべき課題が記載され、そして「本発明のさらなる利点は、入射光のカットオフ角度を制御するための簡単な方法を提供することである。従って本発明の上昇物品は従来技術のフィルムタイプより有利であり、光取り扱い特性のためにある程度の予測性を持ってフィルム設計パラメータを改良することを可能にする。」(段落【0027】)と記載されており、「入射光のカットオフ角度を制御するための簡単な方法を提供する」との効果があると述べている。 しかしながら、上記効果は、カットオフ角度を制御するための設計方法における効果であって、「明度上昇物品」という物の発明である本願発明の効果とは認められない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものである。 6 本願発明と引用発明2との対比・判断 (1)対比 ア 引用発明2の「光指向組立体120」及び「光指向組立体14」、「マイクロプリズム122」、「入力表面132」及び「入射面」、「出力表面134」及び「射出面」、「側壁136」、「側壁136と入力表面132との接合部は鈍角の傾斜角αを限定し」、「側壁136の高さ」が、それぞれ本願発明の「明度上昇物品」、「プリズム要素」、「プリズム表面」及び「表平面」、「基部平面」、「第1および第2の非平行面」、「非平行面と表平面との間の角度(β)」、「表平面と基部平面との間の高さ(H)または垂直距離」に相当する。 イ 引用発明2は、「概念的には、照明源12からの光は光指向組立体14を通って指向対象物に向かう」ので、引用発明2の「光指向組立体14」は、本願発明の「明度上昇物品」と同じく、「入射光を透過し、見る方向内に当該光を向ける」ものである。 次に、引用発明2の「光指向組立体120」は、「光指向組立体120」の「マイクロプリズム122」の「寸法は光指向組立体120の光出力分布に影響し、特に、入力表面132の面積、側壁表面136の高さ、及び側壁136の傾斜角αは互いに調整されてマイクロプリズム122を通る光の通路を変えるもの」であることから、本願発明の「明度上昇物品」と同じく「光を選択的に向け直す」ものである。 したがって、引用発明2の「マイクロプリズム122」を含む「光指向組立体120」は、本願発明の「明度上昇物品」と同じく、「入射光を透過し、見る方向内に当該光を選択的に向け直すための」ものである。 ウ 引用発明2の「マイクロプリズム122」は、「入射面」(「入力平面132」)と「射出面」(「出力平面134」)とは平行であって、「側面136と入力表面132との接合部は鈍角の傾斜角αを限定し」ていることから、「出力表面134」と「側面136」とは、鋭角をなしており、したがって、「マイクロプリズム122」の断面は、本願発明の「プリズム要素」の断面と同じく、台形断面である。 エ 引用発明2の複数の「マイクロプリズム122」は、ベース壁124の一側上に随意に支持されているので、本願発明の「プリズム要素」と同じく、「一連の相隔たる」ものである。 オ 引用発明2の「入射面」(「入力平面132」)は、「光源からの射出された光を受け入れる」ので、本願発明の「表平面」と同じく「入射光に向いて配置され」ている。 カ 引用発明2の「射出面」(「出力平面134」)は、「入射面(「入力平面132」)から遠位にあ」るので、入射光から離れて配置されている。 引用発明2において、「側壁136」は、「側壁136に隣接する領域128を画成し」ているので、「出力表面134」は、本願発明の「基部平面」と同じく「プリズム要素の基部を接続」している。 上記ウから、引用発明2の「出力平面134」は「入力表面132」より大きいものと認める。 したがって、引用発明2の「出力表面134」は、本願発明の「基部平面」と同じく「入射光から離れて配置され、プリズム要素の基部を接続する、表平面より大きな」ものである。 キ 引用発明2の「マイクロプリズム122」の「側壁の各々は入力表面132及び出力表面134と隣接して」いるので、引用発明2の「側壁」は、「本願発明」の「第1および第2の非平行面」と同じく「表平面から後ろに基部平面まで延び」ている。 ク 上記アないしキからみて、本願発明と引用発明2とは、 「 入射光を透過し、見る方向内に当該光を選択的に向け直すための明度上昇物品であって、実質的に台形断面を有する一連の相隔たるプリズム要素を含む、前記光を受けるためのプリズム表面を含み、 前記台形プリズム要素が: (a) 入射光に向いて配置された表平面; (b) 入射光から離れて配置され、前記プリズム要素の基部を接続する、前記表平面より大きな基部平面;および (c) 前記表平面から後ろに前記基部平面まで延びる第1および第2の非平行面であって、前記プリズム要素内で、当該非平行面と前記表平面との間に角度(β)をそれぞれ形成する第1および第2の非平行面 を含んで成る、明度上昇物品。」 である点において一致し、次の2点で相違する。 〔相違点3〕 非平行面と表平面との間の角度(β)が、本願発明では90度より大きく120度より小さいのに対し、引用発明2では、鈍角の傾斜角を最小にする点。 〔相違点4〕 本願発明においては、物品の隣接するプリズム内の同一点間のピッチ(P)または距離に対する表平面と基部平面との間の高さ(H)または垂直距離の比により出射光についてのカットオフ角度が規定され、該カットオフ角度は絶対値θc1、θc2、およびθc3の最大値として規定され、θc1、θc2、およびθc3は次式: 【数1】 (式中、α=180°-β度であり、nはプリズム要素物質の屈折率である) により規定されるが、引用発明2においては、カットオフ角度は規定されていない点。 (2)相違点3、4についての判断 ア 相違点3について 引用例2における「鈍角の傾斜角αを最小にすることによって達成される」旨の記載(上記3(2)オ参照)から、引用発明2において、傾斜角α(「非平行面と表平面との間の角度(β)」に相当)の下限値を鈍角として最小の値である90度とすることは、当業者が引用例2の上記記載に基づいて容易になし得ることである。そして、本願発明の角度(β)の上限値についても、当業者が設計上、適宜選択し得る事項であり、かつ本願発明の角度(β)の上限値を120度未満とすることに顕著な効果を認めることができないから、引用発明2において、「非平行面と表平面との間の角度(β)」を、90度より大きく120度より小さい範囲内の特定の角度とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 相違点4について 引用発明2の「明度上昇物品(光指向組立体120)」は、「四つの傾斜した側面を有する多面体」である「複数のプリズム要素(マイクロプリズム122)」を「ベース壁124の一側上に随意に支持」しているので、「明度上昇物品(光指向組立体120)」が、「表平面(入力表面132)」と「基部平面(出力表面134)」との間の高さ(H)または垂直距離、及び隣接する「プリズム要素(マイクロプリズム122)」内の同一点間ピッチ(P)または距離について、特定の値を持つことは明らかである。また、引用発明2の「明度上昇物品(光指向組立体120)」が特定の屈折率値を持つことも明らかである。 そして、本願発明において、上記ピッチ(P)または距離に対する高さ(H)または垂直距離の比及び屈折率を用い、カットオフ角度を式(i)、(ii)、(iii)により規定される絶対値θc1、θc2、およびθc3の最大値として規定した点は、単に明度上昇物品のカットオフ角度を上記のとおりに定義しただけであって、当業者が適宜なし得たものである。 ウ 効果について 本願明細書には、「従来技術のアプローチの1つの顕著な欠点は、光挙動とそれがどのように改質されるかを予測することが困難なことである。すなわち既存の設計は機能するかもしれないが、従来法は輝度曲線26の全体形状やカットオフ角度値θカットオフのような因子を超える充分な制御のための手段が無いようである。実際、いったんフィルムが作成されると、表面構造物の形や大きさに対する変化の効果は経験的に評価される。しかし試行錯誤の設計法は、具体的な用途で充分機能する明度上昇物品の設計に充分ではなく、かかる方法はこの目的の原型フィルムの開発コストが高くなる。」(段落【0020】)との解決すべき課題が記載され、そして「本発明のさらなる利点は、入射光のカットオフ角度を制御するための簡単な方法を提供することである。従って本発明の上昇物品は従来技術のフィルムタイプより有利であり、光取り扱い特性のためにある程度の予測性を持ってフィルム設計パラメータを改良することを可能にする。」(段落【0027】)と記載されており、「入射光のカットオフ角度を制御するための簡単な方法を提供する」との効果があると述べている。 しかしながら、上記効果は、カットオフ角度を制御するための設計方法における効果であって、「明度上昇物品」という物の発明である本願発明の効果とは認められない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 7 むすび 本願発明は、当業者が引用例1または引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-28 |
結審通知日 | 2012-10-01 |
審決日 | 2012-10-12 |
出願番号 | 特願2006-523879(P2006-523879) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 65- Z (G02B) P 1 8・ 537- Z (G02B) P 1 8・ 113- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 慎平 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 金高 敏康 |
発明の名称 | 明度上昇物品 |
代理人 | 特許業務法人センダ国際特許事務所 |