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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1270603 |
審判番号 | 不服2011-97 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-04 |
確定日 | 2013-02-27 |
事件の表示 | 特願2006-236321「高度の光拡散能を有する反射部材」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日出願公開、特開2007- 86775〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続きの経緯 本願は平成18年8月31日(優先権主張 平成17年8月31日 台湾)の出願であって、平成22年8月9日付けで手続補正がなされ、同年8月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年1月4日付けで拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、平成24年2月28日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知されたものである。 なお、審判請求人は、平成24年9月6日付けで意見書を提出している。 2 本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成23年1月4日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成23年1月4日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「光を反射することのできる基板を備える反射部材であって、 前記基板は、凹凸状の微細構造を有するとともに1μm?50μmの範囲の直径を有する粒子と、結合剤と、無機物質とを有するコーティング層でコーティングされており、 前記粒子は光を散乱することができ、 前記粒子の量は、前記結合剤の重量に基づき10?200重量%の範囲にあり、 前記無機物質の粒子サイズが20nmから50nmの範囲であり、 60度の入射角においてASTM D523規格の標準方法に従って測定された10%以下の光沢度を呈する反射部材。」(以下「本願発明」という。) 3 刊行物の記載事項 当審拒絶理由で引用した「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-126345号公報(以下「引用例」という。)」には、以下の事項が記載されている。(下線は審決で付した。) (1)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、光反射部材用に使用される、内部に気泡を含有する白色フィルムの改良に関し、さらに詳しくは液晶画面用のエッジライトおよび直下型ライトの面光源の反射板、およびリフレクターに用いられる部材であって、長期間使用しても反射率、輝度及び輝度均一性に優れた光反射フィルムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 液晶画面の照明用器材として、導光板のエッジから冷陰極線管を照明光源とした、いわゆるエッジライト方式が広く使用されている(例えば、特許文献1参照。)。この照明方法において、より光を効率的に活用するため、冷陰極線管の周囲にリフレクターが設けられ、更に導光板から拡散された光を液晶画面側に効率的に反射させるために導光板の下には反射板が設けられている。これにより冷陰極線管からの光のロスを少なくし、液晶画面を明るくする機能を付与している。また、液晶テレビのような大画面用では、エッジライト方式では画面の高輝度化が望めないことから直下型ライト方式が採用されてきている。この方式は、液晶画面の下部に冷陰極線管を並列に設けるもので、反射板の上に平行に冷陰極線管が並べられる。反射板は平面状であったり、冷陰極線管の部分を半円凹状に成形したものなどが用いられる。 【0003】 このような液晶画面用の面光源に用いられるリフレクターや反射板(面光源反射部材と総称する)には、高い反射機能が要求され、従来、白色染料、白色顔料を添加したフィルムや内部に微細な気泡を含有させたフィルムが単独で、もしくはこれらのフィルムと金属板、プラスチック板などとを張り合わせたものが使用されてきた(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。 近年、液晶画面を使用した用途の拡大はめざましく、これらの光反射フィルムも、据え置き型のパソコン、液晶テレビ、携帯電話のディスプレイ、各種ゲーム機などで広く採用されてきている。このような用途拡大に応じて画面の高輝度化、高精細化が望まれており、照明光源も高出力化や光源ランプ数の増加などの改良が図られてきている。更に液晶テレビのような大画面で、長時間使用などの要求に応えるためには、より高い輝度と耐久性が求められており、特に直下型の光源を使用する場合等においては光源から発光される光が直接当たることとなるために、より高度な反射板の耐久性が求められる。この点、従来のフィルムを使用したリクレクターや反射板では、長時間使用するとフィルムの劣化に伴う黄変が発生し、反射特性が低下し、引いては画面の輝度を低下させるという問題が生じるため、フィルムそのものの劣化に伴う黄変を防止するために、フィルム中に光安定剤を添加する方法や、光安定剤を含有する塗布層を設けたものが開発されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、内部に気泡を含有する白色フィルム(白色基材フィルムということがある)に耐光性の塗布層を設ける場合、単に光安定剤を含有する塗布層を設けただけでは、表面光沢度が高いために、バックライトとして使用した際、極端に明るい部分(以下、輝線という)が一部発生するという問題があった。そこで本発明者らは、この問題について鋭意検討した結果、この原因が表面層が平滑化され、光拡散性が低下していることに起因するという知見を得た。また、この問題を解決するためには、塗布層に粒子を添加し表面光沢度を低減させることが有効であることを見出し、また、単に粒子を添加した光安定剤含有塗布層面を設けるだけでは、反射特性すなわちバックライトとしての輝度及び均一性が不十分であることを明らかとした。更に鋭意検討を進めた結果、光安定剤を含有する塗布層の表面粗さによって、光沢度および輝度が著しく変化することを突き止めた。また、この問題を解決するには、塗剤調合における粒子の分散方法や、塗工装置および塗工ロールの種類、塗膜の乾燥条件を選定することが有効であることを見出し、これらの方法によって塗布層面内での粒子の分散性をコントロールし、特定の光沢度と表面粗さを満足することで、従来の問題を一挙に解決し、より輝度均一性に優れ、かつ長時間使用においても輝度の経時的低下が少なく、高品質を長期にわたって維持できる光反射フィルムを提供することができることを見出したものである。 【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記課題を解決するために、主として以下の構成を有する。すなわち、内部に気泡を含有する白色フィルムの少なくとも片面に光安定剤を含有する塗布層が設けられており、該塗布面の60°光沢度が40%以下であり、かつ十点平均粗さRzが2500nm以上であることを特徴とする光反射フィルム、および、該光反射フィルムが用いられてなることを特徴とする画像表示用バックライト装置である。」 (3)「【0011】 【発明の実施の形態】 本発明においては、基材となるフィルムの内部に気泡を含有する白色フィルムの少なくとも片面に、光安定剤を含有する塗布層を設けることが必要である。光安定剤としては、ヒンダードアミン系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系などの有機系の光安定剤、あるいはゾルゲルなどの無機系の光安定剤を用いることができる。好適に用いられる光安定剤の具体例を以下に示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。」 (4)「【0014】 本発明においては、塗布層の形成をより容易にするために、塗布層中の光安定剤に対し、適宜他の樹脂成分を混合することが好ましい。すなわち、樹脂成分および光安定剤をそれぞれ溶解し得る有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に樹脂成分と光安定剤を溶解もしくは分散させて塗液状態にして用いることが好ましい態様である。もちろん、樹脂成分と光安定剤を予め別々に有機溶媒、水、有機溶媒混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に溶解または分散させたものを任意に混合して使用してもよい。また、予め光安定剤成分と樹脂成分との共重合体を、そのまま塗布材料として用いることも好ましい態様である。もちろん、該共重合体を有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に溶解せしめたものを用いてもよい。混合または共重合する樹脂成分は特に限定されないが、その一例を挙げれば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂などである。これらの樹脂は単独で用いても、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。 【0015】 上記の樹脂製分のうち、アクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂を選択して用いることが好ましく、さらにアクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂に光安定剤成分を共重合したものを塗布層に使用することが、より好ましい。共重合する場合には、光安定剤モノマー成分に対してアクリルモノマー成分あるいはメタクリルモノマー成分とを共重合することが好ましい。」 (5)「【0019】 光安定剤を含有する塗布層の厚みは、特に限定しないが、0.5?15μmが好ましく、より好ましくは1?10μm、更には2?7μmであることが最も好ましい。厚みがこの範囲内であれば、塗布層の耐久性が十分得られ、また、輝度が低下することもなく、好ましい。 【0020】 本発明においては、光安定剤を含有する塗布層を設けた面から測定した60°光沢度が40%以下であることが必要であり、好ましくは0?35%、さらには5%?30%であることが最も好ましい。60°光沢度が40%より大きい場合には、液晶ディスプレイに適用した際に、観る角度によって輝度が低下したりすることがある。塗布層を設けた面の光沢度を上記の範囲内とするには、塗布層中に有機および/または無機の微粒子を添加することが、最も容易で好ましい方法である。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ゼオライト、カオリン、タルクなどを用いることができ、有機粒子としては、シリコーン化合物、架橋スチレン、架橋アクリル、架橋メラミンなどを用いることができる。有機および/または無機の微粒子の粒子径は0.05?15μmが好ましく、0.1?10μmであることがより好ましい。0.05μm以上であれば光沢度低減の効果が十分得られ、15μm以下であれば表面が必要以上に粗面化されることもなく、また、粒子の脱落も起こりにくく好ましい。また、その含有量は、5?50重量%が好ましく、より好ましくは6?30重量%、さらには7?20重量%が最も好ましい。含有量がかかる範囲内にあれば、光沢度低減の効果が十分得られ、塗布が容易である上、表面が必要以上に粗面化されることもなく、粒子の脱落が起こりにくく、好ましい。 【0021】 本発明では、光反射フィルムの十点平均粗さRzは、2500nm以上である事が必要であり、好ましくは2700nm以上、さらには2900nm以上であることが最も好ましい。また、十点平均粗さRzの上限は特に規定されないが、微粒子の粒径、添加量の点から、好ましくは10000nm以下である。十点平均粗さRzが2500nmより小さい場合には、液晶ディスプレイに適用した際に、観る角度によって輝度が低下したりする場合がある。さらに、塗布面の中心山高さがRpが3000nm以上であることが、光拡散性が増すという点で好ましく、より好ましくは3100nm以上、さらには3200nm以上が最も好ましい。この場合も上限は特に規定されないが、微粒子の粒径、添加量の点から、好ましくは10000nm以下である。 かかる範囲内にあれば、塗布面の起伏が十分となり、光沢度が低減せず、輝度が低下することもない。 【0022】 上記の範囲を満たす方法としては、光安定剤を含有する塗布層に微粒子を添加し、基材となる白色フィルムに塗布すれば良いが、例えば、添加する微粒子には疎水処理あるいは疎水性表面を有する有機/無機微粒子が好ましく、その中でも疎水処理球状シリカ粒子については、塗剤中における均一分散性の点で最も望ましい。また、光安定剤を含有する塗剤に微粒子を分散させるには、任意の方法で行うことが出来る。例えば、ロールミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ケディイミルなどの方法を用いることが出来るが、本発明においては、凝集しやすい微粒子に強力なサンドミルを用いることが望ましい。」 (6)「【0040】 次に本発明の光反射フィルムの製造方法について、その一例を説明するが、かかる例に限定されるものではない。 【0041】 押出機Aと押出機Bを備えた複合製膜装置において、押出機Aには、乾燥したPET85重量部とポリメチルペンテン15重量部と、分子量約4000のポリエチレングリコール1重量部とを混合した材料を供給する。押出機Bには、PET90重量部と、平均粒子系約1μmの炭酸カルシウム10重量部と、蛍光増白剤0.03重量部とを混合した材料を供給する。もちろん押出機A,Bに供給する原料の各成分は事前にペレタイズなどの方法で混合しておいてもよい。押出機A、Bを280?300℃に加熱し、溶融押出しする。この時に押出機Aの原料が内層、押出機Bの原料が両表面に積層されるように複合化する。押し出されたシートを表面温度10?60℃の冷却ドラム上で固化させる。この時、均一なシートを得るために静電気を印加してドラムに密着させることが好ましい。冷却固化されたシートを70?120℃に加熱されたロール群に導き、長手方向に約2?5倍延伸し、20?40℃のロール群で冷却する。更に連続的にフィルムの端部をクリップで把持しつつテンター内に導き、90?120℃に予熱した後、幅方向に3?6倍延伸する。引き続き連続的に180?230℃に加熱されたゾーンに導き、約3?20秒間熱処理を行いその後40℃以下に冷却して白色フィルムを得る。得られた白色フィルムの一方の面に紫外線吸収能を有する化合物、光安定剤、樹脂、添加剤を所定の比率で混合した塗液を塗布し乾燥する。 【0042】 このようにして得られる本発明の光反射フィルムは、輝線や輝度不均一性を発生させることなく初期輝度に優れ、かつ長期使用においても劣化が少なく、液晶画面の輝度を維持することができる。 【0043】 [特性の測定方法および評価方法] (1)表面粗さ フィルム表面の粗さを、3次元微細形状測定機ET-30HK(小坂研究所(株)製)を用い、JIS B-0601に準じて測定した。測定面積は2.0mm×0.3mmとした。 (2)塗布層の厚み フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡S-2100A形((株)日立製作所製)を用いて500?5,000倍に拡大観察して撮影した断面写真より、塗布層の長さを厚み方向に計測し、拡大倍率から逆算して塗布層の厚みを求めた。なお厚みを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真を使用し、その平均値として算出した。 (3)光沢度 デジタル変角光沢度計UGV-5B(スガ試験機(株)製)を用いて、光反射フィルムの表皮層側よりJIS Z-8741に準じて測定した。なお、測定条件は入射角=60゜、受光角=60゜とした。・・・(以下、略)」 (7)「【0049】 【発明の効果】 本発明の光反射フィルムでは、気泡を含有した白色基材フィルム上に、疎水性シリカ粒子を添加した光安定剤を含有する塗布層が設けられているので、光沢度が40%以下に低減され、かつ十点平均粗さRzが2500nm以上であり、平均反射率および輝度均一性に優れ、光源による経時的劣化が小さく、液晶ディスプレイの画質、明るさを長期に渡って維持することができる。」 (8)上記(1)ないし(7)から、引用例には、 「従来のフィルムを使用したリクレクターや反射板では、長時間使用するとフィルムの劣化に伴う黄変が発生し、反射特性が低下し、引いては画面の輝度を低下させるという問題が生じるため、フィルムそのものの劣化に伴う黄変を防止するために、フィルム中に光安定剤を添加する方法や、光安定剤を含有する塗布層を設けたものが開発されているが、内部に気泡を含有する白色フィルムに耐光性の塗布層を設ける場合、単に光安定剤を含有する塗布層を設けただけでは、表面層が平滑化され、光拡散性が低下していることに起因して、表面光沢度が高くなり、バックライトとして使用した際、極端に明るい部分(以下、輝線という)が一部発生するという問題があるので、塗布層に粒子を添加し表面光沢度を低減させ、また、単に粒子を添加した光安定剤含有塗布層面を設けるだけでは、光安定剤を含有する塗布層の表面粗さによって、光沢度および輝度が著しく変化し、反射特性すなわちバックライトとしての輝度及び均一性が不十分であるので、この問題を解決するために、塗剤調合における粒子の分散方法や、塗工装置および塗工ロールの種類、塗膜の乾燥条件を選定することが有効であることを見出し、これらの方法によって塗布層面内での粒子の分散性をコントロールし、特定の光沢度と表面粗さを満足することで、従来の問題を一挙に解決し、より輝度均一性に優れ、かつ長時間使用においても輝度の経時的低下が少なく、高品質を長期にわたって維持できる光反射フィルムであり、内部に気泡を含有する白色フィルムの少なくとも片面に光安定剤を含有する塗布層を設け、該塗布面の60°光沢度が40%以下であり、かつ該塗布面の十点平均粗さRzが2500nm以上であり、白色フィルムの一方の面に紫外線吸収能を有する化合物、光安定剤、樹脂、添加剤を所定の比率で混合した塗液を塗布し乾燥して製造し、輝線や輝度不均一性を発生させることなく初期輝度に優れ、かつ長期使用においても劣化が少なく、液晶画面の輝度を維持することができる光反射フィルムにおいて、 前記光安定剤として、ヒンダードアミン系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系などの有機系の光安定剤、あるいはゾルゲルなどの無機系の光安定剤を用い、塗布層の形成をより容易にするためには塗布層中の光安定剤に対し、適宜他の樹脂成分を混合すればよく、すなわち、樹脂成分および光安定剤をそれぞれ溶解し得る有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に樹脂成分と光安定剤を溶解もしくは分散させて塗液状態にして用い、 光安定剤を含有する塗布層の厚みを、塗布層の耐久性が十分得られ、また、輝度が低下することもなく、好ましい範囲である0.5?15μm、より好ましくは1?10μm、更には最も好ましい2?7μmの範囲内として、 光安定剤を含有する塗布層を設けた面から測定した60°光沢度が40%より大きい場合には液晶ディスプレイに適用した際に観る角度によって輝度が低下したりすることがあるので、60°光沢度は40%以下であることが必要であり、最も容易で好ましい方法、すなわち塗布層中に有機および/または無機の微粒子を添加することにより、60°光沢度を40%以下、好ましくは0?35%、さらには最も好ましい5%?30%とし、 前記有機および/または無機の微粒子の粒子径は、0.05μm以上であれば光沢度低減の効果が十分得られ、15μm以下であれば表面が必要以上に粗面化されることもなく、また、粒子の脱落も起こりにくく好ましいので、0.05?15μm、より好ましくは0.1?10μmとし、 塗布層中の前記有機および/または無機の微粒子の含有量は、光沢度低減の効果が十分得られ、塗布が容易である上、表面が必要以上に粗面化されることもなく、粒子の脱落が起こりにくい5?50重量%、より好ましくは6?30重量%、さらに最も好ましくは7?20重量%とし、 前記十点平均粗さがRz2500nm以上である事が必要であるのは、前記十点平均粗さRzが2500nmより小さい場合には液晶ディスプレイに適用した際に観る角度によって輝度が低下したりする場合があるからであり、前記十点平均粗さは、好ましくは2700nm以上、さらには2900nm以上であることが最も好ましく、上限は特に規定されないが、微粒子の粒径、添加量の点から、好ましくは10000nm以下であり、上記の範囲を満たす方法としては、光安定剤を含有する塗布層に微粒子を添加し、基材となる白色フィルムに塗布すれば良いが、添加する微粒子には疎水処理あるいは疎水性表面を有する有機および/または無機の微粒子が好ましく、その中でも疎水処理球状シリカ粒子が塗剤中における均一分散性の点で最も望ましく、 前記光沢度は、デジタル変角光沢度計UGV-5B(スガ試験機(株)製)を用い、測定条件は入射角=60゜、受光角=60゜として、光反射フィルムの表皮層側よりJIS Z-8741に準じて測定するものである、 平均反射率および輝度均一性に優れ、光源による経時的劣化が小さく、液晶ディスプレイの画質、明るさを長期に渡って維持することができる光反射フィルム。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 4 対比 (1)引用発明の「白色フィルム」、「光反射フィルム」、「有機および/または無機の微粒子」、「樹脂成分」、「粒子径」、「塗布」及び「塗布層」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「反射部材」、「粒子」、「結合剤」、「直径」、「コーティング」及び「コーティング層」に相当する。 (2)引用発明の「反射部材(光反射フィルム)」は、「基板(白色フィルム)」の一方の面に塗液を塗布し乾燥して製造し、輝線や輝度不均一性を発生させることなく初期輝度に優れ、かつ長期使用においても劣化が少なく、液晶画面の輝度を維持することができるものであるから、本願発明の「反射部材」と、「光を反射することのできる基板を備える」点で一致する。 (3)引用発明において、「反射部材(光反射フィルム)」は、「基板(白色フィルム)」の一方の面に紫外線吸収能を有する化合物、光安定剤、樹脂、添加剤を所定の比率で混合した塗液を「コーティング(塗布)」し乾燥して製造するものであって、該「基板」の少なくとも片面に光安定剤を含有する「コーティング層(塗布層)」を設け、該「コーティング層(塗布面)」の十点平均粗さRzが2500nm以上であり、該「コーティング層」中には「粒子(有機および/または無機の微粒子)」を添加されており、該「粒子」の「直径(粒子径)」は、0.05μm以上であれば光沢度低減の効果が十分得られ、15μm以下であれば表面が必要以上に粗面化されることもなく、また、粒子の脱落も起こりにくく好ましいので、0.05?15μm、より好ましくは0.1?10μmとされ、前記「コーティング層」の形成をより容易にするために「コーティング層」中の光安定剤に対し、適宜他の「結合剤(樹脂成分)」が混合されるものであるから、引用発明の「基板」と本願発明の「基板」とは「凹凸状の微細構造を有する」点及び「コーティング層でコーティングされ」ている点で一致し、引用発明の「コーティング層」と本願発明の「1μm?50μmの範囲の直径を有する粒子と、結合剤と、無機物質とを有するコーティング層」とは、「粒子と、結合剤とを有する」点で一致し、引用発明の「粒子」の「直径」の範囲「0.05?15μm、より好ましくは0.1?10μm」と本願発明の粒子の直径の範囲「1μm?50μm」とは「1μm?15μmの範囲」で一致する。そして、引用発明の「粒子」と本願発明の「粒子」とは「光を散乱することができ」る点で一致することは当業者に明らかである。 (4)引用発明の「コーティング層(塗布層)」中の「粒子(無機および/または有機の微粒子)」の含有量の範囲「5?50重量%、より好ましくは6?30重量%、さらに最も好ましくは7?20重量%」と本願発明の結合剤の重量に基づく粒子の量の範囲「10?200重量%」とは「10?50重量%の範囲」で一致する。 (5)引用発明の光沢度は、デジタル変角光沢度計UGV-5B(スガ試験機(株)製)を用い、測定条件は入射角=60゜、受光角=60゜として、光反射フィルムの表皮層側よりJIS Z-8741に準じて測定するものであるところ、この規格JIS-Z8741は、規格ASTM D523に対応する(当審拒絶理由で引用した特開2005-36168号公報の段落【0030】、【0033】及び【0063】の記載参照。)から、引用発明の測定条件は入射角=60゜、受光角=60゜として、光反射フィルムの表皮層側よりJIS Z-8741に準じて測定した60°光沢度の範囲「40%以下、好ましくは0?35%、さらには最も好ましい5%?30%」と本願発明の60度の入射角においてASTM D523規格の標準方法に従って測定された光沢度の範囲「10%以下」とは「0?10%の範囲」で一致し、引用発明の「測定条件は入射角=60゜、受光角=60゜として、光反射フィルムの表皮層側よりJIS Z-8741に準じて測定」は本願発明の「60度の入射角においてASTM D523規格の標準方法に従って測定」に相当する。 (6)上記(1)ないし(5)からみて、本願発明と引用発明とは、 「光を反射することのできる基板を備える反射部材であって、 前記基板は、凹凸状の微細構造を有するとともに1μm?15μmの範囲の直径を有する粒子と、結合剤とを有するコーティング層でコーティングされており、 前記粒子は光を散乱することができ、 前記粒子の量は、10?50重量%の範囲にあり、 60度の入射角においてASTM D523規格の標準方法に従って測定された0?10%の光沢度を呈する反射部材。」である点で一致し、次の点で相違している。 相違点1: 本願発明では、粒子の直径が1μm?50μmの範囲であり、粒子の量が結合剤の重量に基づき10?200重量%の範囲内であるのに対し、 引用発明では、「粒子(微粒子)」の径は「0.05?15μm、より好ましくは0.1?10μm」であり、「コーティング層(塗布層)」中の「粒子(無機および/または有機の微粒子)」の含有量は「5?50重量%、より好ましくは6?30重量%、さらに最も好ましくは7?20重量%」であり、この場合の「コーティング層」中「結合剤(樹脂成分)」の重量は不明である点。 相違点2: 前記コーティング層が、本願発明では、「粒子サイズが20nmから50nmの範囲である無機物質を有する」のに対し、引用発明では、無機物質を有するかどうかも明らかでない点。 相違点3: 前記反射部材が呈する60度の入射角においてASTM D523規格の標準方法に従って測定された光沢度が、本願発明では「10%以下」であるのに対し、引用発明では「40%以下、好ましくは0?35%、さらには最も好ましい5%?30%」である点。 5 判断 上記相違点1ないし3について検討する。 (1)相違点1について 引用発明では、微粒子の径は「0.05?15μm、より好ましくは0.1?10μm」であり、塗布層中の無機および/または有機の微粒子の含有量は「5?50重量%、より好ましくは6?30重量%、さらに最も好ましくは7?20重量%」であるところ、引用発明において、微粒子の径を、そのより好ましいとされている0.1?10μmの範囲内の1?10μmの範囲内の特定の値とし、かつ、塗布層中の無機および/または有機の微粒子の含有量を、その最も好ましいとされている7?20重量%の範囲内の特定の値、例えば20重量%とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 一方、引用発明の塗布層は、紫外線吸収能を有する化合物、光安定剤、樹脂、添加剤を所定の比率で混合した塗液を塗布し乾燥して製造するに際して、樹脂成分および有機系の光安定剤あるいは無機系の光安定剤をそれぞれ溶解し得る有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に樹脂成分と光安定剤を溶解もしくは分散させて塗液状態にして用い、かつ、有機および/または無機の微粒子を添加するものであるから、塗布層中には、溶媒を除くと他に、有機および/または無機の微粒子、樹脂成分、有機系の光安定剤あるいは無機系の光安定剤、紫外線吸収能を有する化合物及び添加剤が含まれている可能性がある。 また、引用発明の白色フィルムは、内部に気泡を含有し、従来この気泡で光拡散性を付与していたものであること、すなわち引用発明の塗布層は表面で散乱反射もするが光透過性でもあり透過した光は引用発明の白色フィルムの内部の気泡でも光拡散するものであることが当業者に明らかである。 してみると、引用発明の塗布層中の有機および/または無機の微粒子、樹脂成分、有機系の光安定剤あるいは無機系の光安定剤、紫外線吸収能を有する化合物及び添加剤の合計重量における樹脂成分は、少なくとも光透過性を維持できる程度の大きな割合であるものと解され、このことからみて、また、引用例の実施例1ないし3からみて、引用発明の塗布層中の樹脂成分は少なくとも例えば50重量%程度は含有しているものと解される。 したがって、引用発明において、上記のように塗布層中の無機および/または有機の微粒子の含有量を20重量%とすることは、引用発明において、本願発明の「粒子の量が結合剤の重量に基づき10?200重量%の範囲内」との事項を備えることに相当する。 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 (2)相違点2について 粒径が0.05μm(50nm)以下の無機系紫外線吸収剤(酸化亜鉛微粒子など)は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.いずれも当審拒絶理由で引用した、特開2000-214310号公報(段落【0024】参照。)、特開平11-237506号公報(段落【0024】、【0025】、【0028】参照。))。 引用発明では、塗布層中には、溶媒を除くと他に、有機および/または無機の微粒子、樹脂成分、有機系の光安定剤あるいは無機系の光安定剤、紫外線吸収能を有する化合物及び添加剤を含ませてよいところ(上記(1)参照。)、無機系の光安定剤、紫外線吸収能を有する物質あるいは添加剤として、酸化亜鉛微粒子などの粒径が50nm以下の無機系紫外線吸収剤を引用発明の塗布層中に含有させることは、当業者が周知技術1に基づき適宜なし得た程度のことである。 (3)相違点3について ア 60°の入射角においてASTM D523規格の標準方法に従って測定した光沢度(Gs(60°))が10以下の光拡散性光学部材は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.いずれも当審拒絶理由で引用した、特開昭63-121001号公報(表1中の実施例1の光沢度を参照。)、特開平11-5241号公報(表1中の実施例3,4,5,7,8の光沢度を参照。))。 イ 引用発明は、内部に気泡を含有する白色フィルムに耐光性の塗布層を設ける場合、単に光安定剤を含有する塗布層を設けただけでは、表面層が平滑化され、光拡散性が低下していることに起因して、表面光沢度が高くなり、バックライトとして使用した際、極端に明るい部分(以下、輝線という)が一部発生するという問題があるので、塗布層に粒子を添加し表面光沢度を低減させ、また、単に粒子を添加した光安定剤含有塗布層面を設けるだけでは、光安定剤を含有する塗布層の表面粗さによって、光沢度および輝度が著しく変化し、反射特性すなわちバックライトとしての輝度及び均一性が不十分であるので、この問題を解決するために、塗剤調合における粒子の分散方法や、塗工装置および塗工ロールの種類、塗膜の乾燥条件を選定することが有効であることを見出し、これらの方法によって塗布層面内での粒子の分散性をコントロールし、特定の光沢度と表面粗さを満足することで、従来の問題を一挙に解決し、より輝度均一性に優れ、かつ長時間使用においても輝度の経時的低下が少なく、高品質を長期にわたって維持できる光反射フィルムであり、白色フィルムの一方の面に紫外線吸収能を有する化合物、光安定剤、樹脂、添加剤を所定の比率で混合した塗液を塗布し乾燥して製造する光反射フィルムにおいて、光安定剤を含有する塗布層を設けた面から測定した60°光沢度が40%より大きい場合には液晶ディスプレイに適用した際に観る角度によって輝度が低下したりすることがあるので、塗布層中に有機および/または無機の微粒子を添加することにより、60°光沢度を40%以下、好ましくは0?35%、さらには最も好ましい5%?30%とするものであるから、引用発明において、塗剤調合における粒子の分散方法や、塗工装置および塗工ロールの種類、塗膜の乾燥条件を実験等により種々検討し、選定して、60°光沢度を最も好ましい5%?30%範囲内の5%ないし10%の範囲内の特定の値となすことは、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得た程度のことである。 (4)効果について 本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から当業者が容易に予測できたものである。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-28 |
結審通知日 | 2012-10-02 |
審決日 | 2012-10-18 |
出願番号 | 特願2006-236321(P2006-236321) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G02B)
P 1 8・ 121- WZ (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 理弘 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 金高 敏康 |
発明の名称 | 高度の光拡散能を有する反射部材 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |