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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1270629
審判番号 不服2011-21622  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-06 
確定日 2013-02-27 
事件の表示 特願2005-149964号「抗増殖薬および配給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-334646号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は平成17年5月23日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2004年5月24日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年9月29日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成22年12月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年6月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成23年10月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年10月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「人間の脈管壁部におけるステント内の内膜過形成を治療するための薬物配給装置において、
内腔内医療装置を備えており、この内腔内医療装置が開窓型の構造を有するステントを含み、このステントが開口部を伴う実質的に管状の装置を定めている複数の帯域部分および連結部分を有しており、さらに
抗増殖性および抗炎症性を有しており、脈管壁部内の単核細胞の化学走性タンパク質の量の減少を含む人間の脈管の病巣における病態生理学的作用を目的とする多様な作用を有していて、ステント内の内膜過形成の治療のために前記内腔内医療装置に放出可能に取り付けられている治療的投薬量の薬剤を備えており、この薬剤が多層の非侵食性の高分子被膜の中に組み込まれていて前記帯域部分および連結部分に固定されており、この非侵食性の高分子被膜が前記薬剤を含む第1の層および拡散バリアとして作用する第2の層を含み、前記第1の層が8マイクロメートル乃至12マイクロメートルの範囲内の厚さを有しており、前記第2の層が1マイクロメートル乃至2マイクロメートルの範囲内の厚さを有している薬物配給装置。」と補正された。

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「薬剤を含む第1の層」と「拡散バリアとして作用する第2の層」のそれぞれの厚さについて、「第1の層が約8マイクロメートル乃至約12マイクロメートルの範囲内の厚さを有しており、前記第2の層が約1マイクロメートル乃至約2マイクロメートルの範囲内の厚さを有している」を、「第1の層が8マイクロメートル乃至12マイクロメートルの範囲内の厚さを有しており、前記第2の層が1マイクロメートル乃至2マイクロメートルの範囲内の厚さを有している」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.刊行物の記載事項
(刊行物1)
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、米国特許出願公開第2003/0216699号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「The drugs and drug delivery systems of the present invention utilize a stent or graft in combination with rapamycin or other drugs/agents/compounds to prevent and treat neointimal hyperplasia, i.e. restenosis, following percutaneous transluminal coronary angioplasty and stent implantation. It has been determined that rapamycin functions to inhibit smooth muscle cell proliferation through a number of mechanisms. It has also been determined that rapamycin eluting stent coatings produce superior effects in humans, when compared to animals, with respect to the magnitude and duration of the reduction in neointimal hyperplasia. Rapamycin administration from a local delivery platform also produces an anti-inflammatory effect in the vessel wall that is distinct from and complimentary to its smooth muscle cell anti-proliferative effect. In addition, it has also been demonstrated that rapamycin inhibits constrictive vascular remodeling in humans.
(本発明の薬物および薬物送達システムは経皮的で経内腔的な冠動脈血管形成術およびステント移植の後の新脈管内膜過形成、すなわち、再狭窄を予防および治療するためのラパマイシンまたはその他の薬物/物質/化合物との組み合わせにおけるステントまたは移植片を利用している。ラパマイシンが多数の機構を介して平滑筋細胞の増殖を阻害するために機能することが既に確定されている。また、ラパマイシンを溶出するステント被膜が、新脈管内膜の過形成における減少の程度および持続性に関して、動物に比較した場合に、人間において優れた作用効果を示すことも既に確定されている。さらに、局所的配給用のプラットフォームからのラパマイシンの投与はその平滑筋抗増殖性の作用効果とは異なる当該作用効果に対して補足的な脈管壁部における抗炎症性の作用効果も示す。加えて、ラパマイシンが人間における狭窄性の脈管再造形を阻害することも既に立証されている。)」(段落[0018] ()内は刊行物1のパテントファミリーである特開2004-154541号公報による訳文。以下同様。)

(イ)「FIG. 2 illustrates an exemplary stent 100 which may be utilized in accordance with an exemplary embodiment of the present invention. The expandable cylindrical stent 100 comprises a fenestrated structure for placement in a blood vessel, duct or lumen to hold the vessel, duct or lumen open, more particularly for protecting a segment of artery from restenosis after angioplasty. The stent 100 may be expanded circumferentially and maintained in an expanded configuration, that is circumferentially or radially rigid. The stent 100 is axially flexible and when flexed at a band, the stent 100 avoids any externally-protruding component parts.
The stent 100 generally comprises first and second ends with an intermediate section therebetween. The stent 100 has a longitudinal axis and comprises a plurality of longitudinally disposed bands 102 , wherein each band 102 defines a generally continuous wave along a line segment parallel to the longitudinal axis. A plurality of circumferentially arranged links 104 maintain the bands 102 in a substantially tubular structure. Essentially, each longitudinally disposed band 102 is connected at a plurality of periodic locations, by a short circumferentially arranged link 104 to an adjacent band 102 . The wave associated with each of the bands 102 has approximately the same fundamental spatial frequency in the intermediate section, and the bands 102 are so disposed that the wave associated with them are generally aligned so as to be generally in phase with one another. As illustrated in the figure, each longitudinally arranged band 102 undulates through approximately two cycles before there is a link to an adjacent band.
The stent 100 may be fabricated utilizing any number of methods. For example, the stent 100 may be fabricated from a hollow or formed stainless steel tube that may be machined using lasers, electric discharge milling, chemical etching or other means. The stent 100 is inserted into the body and placed at the desired site in an unexpanded form. In one embodiment, expansion may be effected in a blood vessel by a balloon catheter, where the final diameter of the stent 100 is a function of the diameter of the balloon catheter used.
(図2は本発明の例示的な実施形態に従って利用可能な例示的なステント100を示している図である。この拡張可能な円筒形のステント100は血管内に配置するための開窓型構造体、血管を保持するための管路または内孔部分を有しており、この管路または内孔部分は開口していて、特に血管形成術後の再狭窄に対して動脈の一部分を保護する。このステント100は外周方向に拡張可能であり、拡張された形態、すなわち、外周方向または半径方向に剛性を有する形態で維持される。また、このステント100は軸方向に柔軟であり、1個の帯域部分において屈曲する場合に、このステント100はあらゆる構成要素の部分が外部に突出することを避けることができる。
上記ステント100は一般に第1および第2の各端部を有しており、これらの間に中間部分が存在している。また、このステント100は一定の長手軸を有しており、複数の長手方向に沿って配置されている帯域部分102を備えていて、各帯域部分102は上記長手軸に対して平行な一定の線状部分に沿う概ね連続的な波形を定めている。複数の外周方向に沿って配列されている連結部分104は各帯域部分102を実質的に管状の構造に維持している。本質的に、各長手方向に配置されている帯域部分102は隣接している帯域部分102に対して短い外周方向に沿って配置されている連結部分104を介して複数の周期的な場所において接続している。各帯域部分102に付随している波形は上記中間部分内においてほぼ同一の基本的な空間的周波数を有しており、これらの帯域部分102はそれぞれに付随している波形が概ね整合していて互いにほぼ同一位相になるように配置されている。図面において示されているように、それぞれの長手方向に沿って配置されている帯域部分102は隣接している帯域部分102に対する連結部分の存在位置までにほぼ2周期にわたり波打ち状になっている。
上記ステント100は任意数の方法により製造できる。例えば、このステント100はレーザー、放電切削、化学エッチングまたはその他の手段により加工できる中空のまたは成形処理したステンレス・スチール・チューブにより製造できる。このステント100は非拡張状態の形態で体内に挿入されて所望の部位に配置される。実施形態の一例において、この拡張はバルーン・カテーテルにより血管内において行なうことができ、この場合のステント100の最終的な直径は使用するバルーンの直径の関数である。)」(段落[0067]?[0069])

(ウ)「In an alternate exemplary embodiment, the entire inner and outer surface of the stent 100 may be coated with various drug and drug combinations in therapeutic dosage amounts. A detailed description of exemplary coating techniques is described below.
Rapamycin or any of the drugs, agents or compounds described above may be incorporated into or affixed to the stent in a number of ways and utilizing any number of biocompatible materials. In the exemplary embodiment, the rapamycin is directly incorporated into a polymeric matrix and sprayed onto the outer surface of the stent. The rapamycin elutes from the polymeric matrix over time and enters the surrounding tissue. The rapamycin preferably remains on the stent for at least three days up to approximately six months and more preferably between seven and thirty days.
Any number of non-erodible polymers may be utilized in conjunction with rapamycin. In the exemplary embodiment, the polymeric matrix comprises two layers. The base layer comprises a solution of ethylene-co-vinylacetate and polybutylmethacrylate. The rapamycin is incorporated into this layer. The outer layer comprises only polybutylmethacrylate and acts as a diffusion barrier to prevent the rapamycin from eluting too quickly and entering the surrounding tissues. The thickness of the outer layer or top coat determines the rate at which the rapamycin elutes from the matrix. Essentially, the rapamycin elutes from the matrix by diffusion through the polymer molecules. Polymers tend to move, thereby allowing solids, liquids and gases to escape therefrom. The total thickness of the polymeric matrix is in the range from about 1 micron to about 20 microns or greater.
The ethylene-co-vinylacetate, polybutylmethacrylate and rapamycin solution may be incorporated into or onto the stent in a number of ways. For example, the solution may be sprayed onto the stent or the stent may be dipped into the solution. In a preferred embodiment, the solution is sprayed onto the stent and then allowed to dry. In another exemplary embodiment, the solution may be electrically charged to one polarity and the stent electrically changed to the opposite polarity. In this manner, the solution and stent will be attracted to one another. In using this type of spraying process, waste may be reduced and more control over the thickness of the coat may be achieved.
(別の例示的な実施形態において、上記ステント100の内表面部および外表面部の全体が治療のための投薬量における種々の薬物、物質または化合物の組み合わせ物により被覆可能である。例示的な被覆技法の詳細な説明を以下に行なう。
ラパマイシンまたは上記の任意の薬物、物質または化合物は多数の方法で任意数の生体相容性の材料を利用することにより上記ステント内に含有させることができ、あるいは、当該ステントに固定できる。例示的な実施形態において、ラパマイシンは高分子基質内に直接的に混入されていて、ステントの外表面部上に噴霧される。このラパマイシンは上記高分子基質から経時的に溶出して周囲の組織内に移動する。好ましくは、このラパマイシンは少なくとも3日間から約6ヶ月間、さらに好ましくは7日間から30日間にわたり上記ステント上に残留している。
任意数の非腐食性のポリマーが上記ラパマイシンと共に利用できる。好ましい実施形態において、上記高分子基質は2個の層を有している。この基部層はエチレン-コ-ビニル・アセテート(EVA)およびポリブチルメタクリレート(BMA)の溶液により構成されている。ラパマイシンはこの基部層の中に含有されている。一方、外部層はポリブチルメタクリレートのみにより構成されていて、ラパマイシンが過度に速く溶出して周囲の組織内に移動することを防ぐための拡散バリヤーとして作用する。この外側層または上部被膜の厚さによりラパマイシンが上記基質から溶出する速度が決まる。本質的に、上記ラパマイシンは上記ポリマーの各分子を通過する拡散により上記基質から溶出する。これらのポリマーは透過性であり、固体、液体および気体がこれらから散出することを可能にする。上記高分子基質の合計の厚さは約1ミクロン乃至約20ミクロン以上の範囲内である。
上記エチレン-コ-ビニル・アセテート、ポリブチルメタクリレートおよびラパマイシンの溶液は多数の方法で上記ステントの内部または上部に含有させることができる。例えば、この溶液をステントの上部に噴霧することができ、あるいは、ステントをこの溶液中に浸漬することもできる。実施形態の一例において、この溶液は上記ステント上に噴霧された後に自然乾燥される。また、別の例示的な実施形態においては、この溶液は1種類の極性に帯電することが可能であり、ステントはその反対の極性に帯電できる。この様式において、上記溶液およびステントは互いに引き合うようになる。この種の噴霧方法を採用する場合に、材料のむだが減少でき、さらに正確な被膜の厚さの制御が達成できる。」(段落[0072]?[0075])

上記(ア)?(ウ)の記載事項、及び、FIG.2から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「人間のステント移植の後の新脈管内膜過形成、すなわち、再狭窄を予防及び治療するための薬物送達システムにおいて、
ラパマイシンを含有するステントを備えており、このラパマイシンを含有するステントが、開窓型の構造を有するステント100を含み、このステント100が、複数の長手方向に沿って配置され概ね連続的な波形を定めている帯域部分102と、複数の外周方向に沿って配列されている連結部分104によって、実質的に管状の構造を維持しており、さらに、
ステント100の外表面部上に、ラパマイシンが混入された高分子基質が被覆され、ラパマイシンは高分子基質から経時的に溶出して周囲の組織に移動され、非腐食性のポリマーの高分子基質は2個の層を有し、基部層はエチレン-コ-ビニル・アセテート(EVA)およびポリブチルメタクリレート(BMA)の溶液により構成され該基部層の中にラパマイシンが含有されており、外部層はポリブチルメタクリレートのみにより構成されていて、拡散バリヤーとして作用し、高分子基質の合計の厚さは約1ミクロン乃至約20ミクロン以上の範囲である、薬物送達システム。」

(刊行物2)
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、国際公開第03/082368号(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(エ)「Figure 1C illustrates medical substrate 20 having a first reservoir layer 32A disposed on a selected portion of surface 22 of medical substrate 20. First reservoir layer 32A contains a first active agent, e.g., 40-O-(2-hydroxy)ethyl-rapamycin. A second reservoir layer 32B can also be disposed on surface 22. Second reservoir layer 32B contains a second active ingredient, e.g., taxol. First and second reservoir layers 32A and 32B are covered by first and second barrier layers 28A and 28B, respectively. In accordance with one embodiment, the polymeric material in barrier layer 28B has been exposed to thermal treatment, whereas the polymeric material in barrier layer 28A has not. As a result, the polymeric material in barrier 28B has a higher percent crystallinity than the polymeric material in barrier layer 28 A. Accordingly, by producing a coating such as the one shown in Figure 1C, a wide array of release parameters can be obtained for any selected combination of active agents.
Barrier layer 28 can have any suitable thickness, as the thickness of barrier layer 28 is dependent on parameters such as, but not limited to, the desired rate of release and the procedure for which the stent will be used. For example, barrier layer 28 can have a thickness of about 0.1 to about 10 microns, more narrowly from about 0.25 to about 5 microns.
By way of example, and not limitation, the impregnated reservoir layer 32 can have a thickness of about 0.5 microns to about 1.5 microns. The particular thickness of reservoir layer 32 is based on the type of procedure for which medical substrate 20 is employed and the amount of the active agent to be delivered. The amount of the active agent to be included on the prosthesis can be further increased by applying a plurality of reservoir layers 32 on top of one another. The optional primer layer 30 can have any suitable thickness, examples of which can be in the range of about 0.1 to about 10 microns, more narrowly about 0.1 to about 2 microns.

Method of Use
In accordance with the above-described method, the active agent can be applied to a device, e.g., a stent, retained on the device during delivery and released at a desired control rate and for a predetermined duration of time at the site of implantation. A stent having the above-described coating layers is useful for a variety of medical procedures, including, by way of example, treatment of obstructions caused by tumors in bile ducts, esophagus, trachea/bronchi and other biological passageways. A stent having the above-described coating layers is particularly useful for treating occluded regions of blood vessels caused by abnormal or inappropriate migration and proliferation of smooth muscle cells, thrombosis, and restenosis. Stents may be placed in a wide array of blood vessels, both arteries and veins. Representative examples of sites include the iliac, renal, and coronary arteries.
( 図1Cは、医用基板20が、医用基板20の表面22の選択部分上に配置された第1貯蔵層32Aを有していることを図示している。第1貯蔵層32Aは、例えば40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシンのような第1有効薬剤を含有している。また、第2貯蔵層32Bも表面22上に配置することができる。第2貯蔵層は、例えばタキソールのような第2有効薬剤を含有している。第1及び第2の貯蔵層32A及び32Bは、それぞれ第1及び第2のバリア層28A及び28Bに覆われている。実施の一態様によれば、バリア層28B中のポリマー材料は熱処理にさらされる一方、28A中のポリマー材料はさらされない。結果として、バリア層28B中のポリマー材料はバリア層28A中のポリマー材料よりも高い結晶化度パーセントを有する。従って、図1Cにおいて図示されたもののような被覆を作ることにより、有効薬剤のいかなる選択された組み合わせについても、幅広い放出条件を得ることができる。
バリア層28は、任意の適した厚さを有することができるが、バリア層28の厚さは、限定されるものではないが、所望の放出率及びステントの使用される方法のような条件に左右される。例えば、バリア層28は約0.1?約10μm、より狭くは約0.25?約5μmの厚さを有することができる。
一例として、限定ではなく、含浸貯蔵層32は約0.5μm?約1.5μmの厚さを有する。貯蔵層32の個別の厚さは、医用基板20が使用される方法の種類や送達される有効薬剤の量に基づく。複数の貯蔵層32を重ねて塗布することによって、補綴具上に含有される有効薬剤の量を増加することができる。随意の下塗層30は任意の適した厚さを有し、例えば、約0.1?約10μm、より狭くは約0.1?約2μmの範囲にあってよい。
使用法
上記方法によれば、有効薬剤は、例えばステントなどの器具に塗布し、送達の間器具上に保持し、植え込み箇所において所定の時間、所望に制御された率で放出することができる。上記の被覆層を有するステントは、一例として胆道、食道、気管・気管支及び他の生体の通路の腫瘍により引き起こされる閉塞症の治療を含む、多様な医療処置に有益である。上記被覆層を有するステントは特に、平滑筋細胞の異常又は不適合な移動や増殖、血栓、及び再狭窄によって生じた血管の閉塞領域の治療に対して有益である。ステントは動脈及び静脈双方の幅広い血管において設置してよい。設置箇所の代表的な例としては、腸骨動脈、腎動脈および冠状動脈が挙げられる。)」(第36頁第3行?第37頁第20行 ()内は刊行物2のパテントファミリーである特表2005-521477号公報による訳文。)

上記(エ)の記載事項から、刊行物2には、次の事項が記載されている。
(オ)「複数の薬剤含浸層を重ねて備えたステントにおいて、バリア層として機能する、表面側のバリア層28の厚さを約0.1?約10μm、より狭くは約0.25?約5μmの厚さとすること。」

3-2.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能・構造からみて、後者の「ラパマイシンを含有するステント」は、前者の「内腔内医療装置」に相当する。以下同様に、「帯域部分102」は「帯域部分」に、「連結部分104」は「連結部分」に、「非腐食性のポリマーの2個の層を有する高分子基質」は「多層の非侵食性の高分子被膜」に、「ラパマイシンが含有されており」は「薬剤を含む」に、「基部層」は「第1の層」に、「外部層」は「拡散バリアとして作用する第2の層」に、「薬物送達システム」は「薬物配給装置」に、それぞれ相当する。
また、後者の「ステント移植の後の新脈管内膜過形成、すなわち、再狭窄を予防及び治療する」は、前者の「脈管壁部におけるステントステント内の内膜過形成を治療する」に相当し、後者の「複数の長手方向に沿って配置され概ね連続的な波形を定めている帯域部分102と、複数の外周方向に沿って配列されている連結部分104によって、実質的に管状の構造を維持して」いることは、前者の「開口部を伴う実質的に管状の装置を定めている複数の帯域部分および連結部分を有して」いることに相当している。
更に、後者における「ラパマイシン」は、「抗増殖性および抗炎症性を有しており、脈管壁部内の単核細胞の化学走性タンパク質の量の減少を含む人間の脈管の病巣における病態生理学的作用を目的とする多様な作用を有している」ことは当業者の技術常識に照らして明らかであり、また、後者の「ラパマイシンは高分子基質から経時的に溶出して周囲の組織に移動され」は、前者の「放出可能に取り付けられている薬剤を備えている」に相当するとともに、この「ラパマイシン」が「ステント内の内膜過形成の治療のための薬剤」に相当することも明らかであり、さらに、その薬剤の量を「治療的投薬量」とすることは、その機能発揮の観点から明らかである。
したがって、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「人間の脈管壁部におけるステント内の内膜過形成を治療するための薬物配給装置において、
内腔内医療装置を備えており、この内腔内医療装置が開窓型の構造を有するステントを含み、このステントが開口部を伴う実質的に管状の装置を定めている複数の帯域部分および連結部分を有しており、さらに
抗増殖性および抗炎症性を有しており、脈管壁部内の単核細胞の化学走性タンパク質の量の減少を含む人間の脈管の病巣における病態生理学的作用を目的とする多様な作用を有していて、ステント内の内膜過形成の治療のために前記内腔内医療装置に放出可能に取り付けられている治療的投薬量の薬剤を備えており、この薬剤が多層の非侵食性の高分子被膜の中に組み込まれていて前記帯域部分および連結部分に固定されており、この非侵食性の高分子被膜が前記薬剤を含む第1の層および拡散バリアとして作用する第2の層を含む薬物配給装置。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明においては、「非侵食性の高分子被膜」の「第1の層が8マイクロメートル乃至12マイクロメートルの範囲内の厚さを有しており、第2の層が1マイクロメートル乃至2マイクロメートルの範囲内の厚さを有している」のに対し、引用発明においては、第1の層と第2の層との合計の厚さは約1マイクロメートル乃至約20マイクロメートル以上の範囲であり、第1の層及び第2の層の厚さのそれぞれの厚さが特定されていない点。

3-3.相違点の判断
刊行物2には、上記(オ)の事項のとおり、引用発明と同一の技術分野である薬剤含浸層を備えたステントにおいて、バリア層として機能するバリア層28の厚さを約0.1?約10μm、より狭くは約0.25?約5μmの厚さとすることが記載されている。
してみると、本願補正発明において限定する、第2の層の厚さが「1マイクロメートル乃至2マイクロメートルの範囲内」は、刊行物2に記載された範囲内のものであり、また、明細書の記載を参酌しても、「1マイクロメートル」及び「2マイクロメートル」という値に、臨界的意義を認めることもできないから、引用発明において、バリア層として機能する第2の層の厚さを1マイクロメートル乃至2マイクロメートルの範囲内の厚さとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、第1の層の厚さの値について、刊行物1の上記記載事項(ウ)には、第1の層及び第2の層の厚さの合計が、約1マイクロメートル乃至約20マイクロメートル程度のものである旨の記載があり、刊行物2の上記記載事項(オ)には、バリア層として機能する第2の層の厚さを約0.25?約5μmとすることが記載されていることから、第1の層の厚さを、8マイクロメートル乃至12マイクロメートルの範囲内とすることは、特異な範囲を採用したとはいえない点、刊行物2の上記記載事項(エ)に、「複数の貯蔵層32を重ねて塗布することによって、補綴具上に含有される有効薬剤の量を増加することができる。」と記載されており、第1の層の厚さを、必要とする薬剤の量に対応して増加する、即ち厚くすることが示唆されている点、さらに、明細書の記載を参酌しても、「8マイクロメートル」及び「12マイクロメートル」に臨界的意義を認めることもできない点を考慮すると、引用発明において、第1の層の厚さを、8マイクロメートル乃至12マイクロメートルの範囲内とすることは、当業者が適宜設定し得る設計的事項にすぎない。
そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び刊行物2に記載された事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものは認められない。
したがって、本願補正発明は引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「人間の脈管壁部におけるステント内の内膜過形成を治療するための薬物配給装置において、
内腔内医療装置を備えており、この内腔内医療装置が開窓型の構造を有するステントを含み、このステントが開口部を伴う実質的に管状の装置を定めている複数の帯域部分および連結部分を有しており、さらに
抗増殖性および抗炎症性を有しており、脈管壁部内の単核細胞の化学走性タンパク質の量の減少を含む人間の脈管の病巣における病態生理学的作用を目的とする多様な作用を有していて、ステント内の内膜過形成の治療のために前記内腔内医療装置に放出可能に取り付けられている治療的投薬量の薬剤を備えており、この薬剤が多層の非侵食性の高分子被膜の中に組み込まれていて前記帯域部分および連結部分に固定されており、この非侵食性の高分子被膜が前記薬剤を含む第1の層および拡散バリアとして作用する第2の層を含み、前記第1の層が約8マイクロメートル乃至約12マイクロメートルの範囲内の厚さを有しており、前記第2の層が約1マイクロメートル乃至約2マイクロメートルの範囲内の厚さを有している薬物配給装置。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1、刊行物2、及び、その記載事項は、上記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、本願補正発明において発明を特定するために必要な事項である「薬剤を含む第1の層」と「拡散バリアとして作用する第2の層」のそれぞれの厚さについて、「第1の層が8マイクロメートル乃至12マイクロメートルの範囲内の厚さ」を「第1の層が約8マイクロメートル乃至約12マイクロメートルの範囲内の厚さ」とし、「第2の層が1マイクロメートル乃至2マイクロメートルの範囲内の厚さ」を「第2の層が約1マイクロメートル乃至約2マイクロメートルの範囲内の厚さ」としてその数値範囲を広げているものである。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に発明特定事項の数値範囲を限定した本願補正発明が、上記II.3-3に記載したとおり、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-25 
結審通知日 2012-10-02 
審決日 2012-10-15 
出願番号 特願2005-149964(P2005-149964)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 寛  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 関谷 一夫
田合 弘幸
発明の名称 抗増殖薬および配給装置  
代理人 加藤 公延  
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