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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1270639
審判番号 不服2011-15464  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-16 
確定日 2013-02-28 
事件の表示 特願2007-268269「ネットワーク経由でメディアストリームを受信し再生する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月17日出願公開、特開2008- 92584〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯

[1]手続
本願は、平成17年6月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年6月7日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2007-527683号の一部を平成19年10月15日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願(特願2007-268269号)としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成22年 5月18日(起案日)
手続補正 :平成22年10月25日
拒絶査定 :平成23年 3月 4日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成23年 7月16日
手続補正 :平成23年 7月16日
前置審査報告 :平成23年12月28日
審尋 :平成24年 4月13日(起案日)
回答書 :平成24年 7月24日

[2]査定の理由
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。
本願の請求項1、3-9、10-15に係る発明(平成22年10月25日付け手続補正による)は、下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2004-15111号公報

第2 補正の却下の決定
平成23年7月16日付けの手続補正について次のとおり決定する。

《補正の却下の決定の結論》
平成23年7月16日付けの手続補正を却下する。

《補正の却下の決定の理由》
[1]本件補正の内容
平成23年7月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1に係る次の補正事項を含むものである。(アンダーラインは、補正箇所)
(補正事項)
補正前の請求項1について
「【請求項1】
ネットワーク経由で受信するメディアストリームをメディアプレーヤで再生するための方法であって、
前記メディアプレーヤにおいて、リアルタイムでメディアストリームを受信するステップと、
前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップと、
前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに、減速した再生速度で、前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの再生を開始するステップと、
を備える方法。」(補正前)
とあるのを、
「【請求項1】
ネットワーク経由で受信するメディアストリームをメディアプレーヤで再生するための方法であって、
前記メディアプレーヤにおいて、リアルタイムでメディアストリームを受信するステップと、
前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップと、
前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに、減速した再生速度で、前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの再生を直ちに開始するステップと、
を備える方法。」(補正後)
と補正する。

[2]本件補正の適合性
[2-1]補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

[2-2]補正の目的
上記補正事項は、「前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの再生を開始するステップ」について、その再生を開始するステップが「前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの再生を直ちに開始するステップ」と限定する補正を含むものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。

[2-3]独立特許要件
上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むので、独立特許要件について検討する。

1.補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、下記のとおりである。
記(補正後発明)
ネットワーク経由で受信するメディアストリームをメディアプレーヤで再生するための方法であって、
前記メディアプレーヤにおいて、リアルタイムでメディアストリームを受信するステップと、
前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップと、
前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに、減速した再生速度で、前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの再生を直ちに開始するステップと、
を備える方法。

2.引用刊行物の記載
(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2004-15111号公報(以下、刊行物1という。)には、「データ配信システム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ネットワークを介してデジタルコンテンツを配信するデータ配信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネット等のネットワークを介したデジタル動画像やデジタル音声等のデジタルコンテンツのリアルタイム配信が行われ始めている。
【0003】
ネットワークを利用したコンテンツのリアルタイム配信システム101は、図10に示すように、コンテンツを送信する送信装置102と、送信されたコンテンツを受信する受信装置103とにより構成される。送信装置102は、例えば、ネットワークを介してコンテンツを配信する例えばコンテンツプロバイダ側の装置である。受信装置103は、ネットワークを介して提供されるコンテンツを視聴するユーザ側の装置である。ネットワーク104は、例えば、インターネット、ケーブル放送、デジタル地上波放送、衛星通信システム等のデータ伝送が可能な媒体である。このようなコンテンツ配信システムでは、ネットワーク104を介して送信装置102から受信装置103にコンテンツがリアルタイムで配信される。
【0004】
送信装置102は、コンテンツをデータ配信用のデータストリームに符号化するエンコーダ111と、符号化されたデータストリームを一旦蓄積する送信バッファ112とを備えている。また、受信装置103は、受信したデータストリームを一旦蓄積する受信バッファ121と、データストリームからデジタルコンテンツを復号するデコーダ122とを備えている。

【0007】
送信装置102は、ネットワーク104にデータストリームを送出する際に、受信装置103の基準クロックを制御するための基準時間情報(STC:SystemTime Clock)、並びに、各アクセスユニットのデコード時刻を示すタイムスタンプ(DTS:Decoding Time Stamp)を、データストリームに付加する。送信装置102は、データストリームの到着時刻を想定し、その想定した到着時刻に基づき発生されたSTCをデータストリーム内に離散的に挿入しておく。すなわち、送信装置102は、受信側の基準時刻を符号化時に想定して、その想定した基準時刻に従ったSTCをデータストリームに挿入する。送信装置102は、各アクセスユニットのデコード時刻を想定し、各アクセスユニットに対してその想定したデコード時刻が記述されたDTSを付加する。なお、アクセスユニットは、単独でデータを復号することができるデータストリームの最小単位である。例えば、動画像のデータストリームであれば1フレームがアクセスユニットに該当することとなる。ネットワーク103を介して配信されるデータストリームは、複数のアクセスユニットが連続して形成されたデータ列である。
【0008】
受信装置103は、ネットワーク104を介してデータストリームを受信すると、そのデータストリームに付加されているSTCを抜き出す。受信装置103は、データストリーム上に離散的に配置されたSTCからPLL制御し、STCに記述された時刻情報に同期した基準クロックを再生する。受信装置103は、この基準クロックに基づき復号動作の時刻を制御する。
【0009】
受信装置103の受信バッファ121は、受信したデータストリームを一旦格納する。受信装置103のデコーダ122は、アクセスユニットに付加されているDTSを参照し、このDTSと基準クロックとが一致したときに、そのアクセスユニットを受信バッファ121から抜き出して復号を行う。

【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のようにネットワーク104のデータ伝送時間のジッタを考慮して、受信マージンを設定した場合、エンコードが開始されてからデコードが開始されるまでの遅延時間(エンドトゥエンドディレイタイム)が非常に長くなる。つまり、送信側でコンテンツの配信を開始してから、実際にユーザがコンテンツを鑑賞できるまでの遅延時間が、非常に長くなる。
【0017】
本発明は、データの送信を開始してからデコードを開始するまでの時間を短縮したデータ配信システム、データ配信方法、受信装置及び送信装置を提供することを目的とする。

【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態として、ネットワークを利用したコンテンツのリアルタイム配信システムについて説明をする。
【0023】
本発明の実施の形態のコンテンツのリアルタイム配信システムの構成図を図1に示す。リアルタイム配信システム1は、コンテンツを送信する送信装置2と、送信されたコンテンツを受信する受信装置3とにより構成される。送信装置2は、例えば、ネットワークを介してコンテンツを配信する例えばコンテンツプロバイダ側の装置である。受信装置3は、ネットワークを介して提供されるコンテンツを視聴するユーザ側の装置である。ネットワーク4は、例えば、インターネット、ケーブル放送、デジタル地上波放送、衛星通信システム等のデータ伝送が可能な媒体である。このようなコンテンツ配信システムでは、ネットワーク4を介して送信装置2から受信装置3にコンテンツがリアルタイムで配信される。
【0024】
送信装置2は、コンテンツをデータ配信用のデータストリームに符号化するエンコーダ11と、符号化されたデータストリームを一旦蓄積する送信バッファ12とを備えている。また、受信装置3は、受信したデータストリームを一旦蓄積する受信バッファ13と、データストリームからデジタルコンテンツを復号するデコーダ14とを備えている。

【0028】
受信装置3は、ネットワーク4を介してデータストリームを受信すると、そのデータストリームに付加されているSTCを抜き出す。受信装置3は、データストリーム上に離散的に配置されたSTCからPLL制御し、STCに記述された時刻情報に同期した基準クロックを再生する。受信装置3は、この基準クロックに基づき復号動作の時刻を制御する。
【0029】
受信装置3の受信バッファ13は、受信したデータストリームを一旦格納する。受信装置3のデコーダ14は、アクセスユニットに付加されているDTSを参照し、このDTSと基準クロックとが一致したときに、そのアクセスユニットを受信バッファ13から抜き出して復号を行う。
【0030】
ここで、受信装置3では、受信バッファ13に格納されているデータストリームの容量が受信マージンBRに達する前に、符号化時に想定されている通常の復号速度より遅い速度で、復号を開始する。つまり、受信したデータストリームに対する通常の符号開始時刻よりも早い時刻から復号を開始し、且つ、受信したデータストリームに対する通常の復号速度よりも遅い速度で、復号を行う。
【0031】
符号化時に想定されている通常の復号速度と、ネットワーク4上のデータ転送レートとはバランスがとられている。そのため、符号化時に想定されている復号速度より遅い速度で復号を行った場合、復号を連続して行っていったとしても、受信バッファ13のバッファ占有量は増加し続けることとなる。
【0032】
続いて、受信装置3は、受信バッファ13に対して受信マージン分のデータストリームが確保されると、復号速度を、符号化時に想定されている通常の復号速度に変更する。符号化時に想定されている通常の復号速度で復号を行った場合には、受信バッファ13のバッファ占有量は、受信マージンの状態を維持することとなる。

【0037】
続いて、受信バッファ13に、少なくとも1アクセスユニット分以上のデータが蓄積されると、データストリームの復号が開始される。ここで、データストリームの復号の開始時刻は、データストリームの符号化時に想定されている時刻よりも、早いタイミングとする。つまり、受信バッファ13に対して受信マージン分のデータが確保された本来のタイミングよりも、早いタイミングで復号を開始する。さらに、このときの復号速度は、データストリームの符号化時に想定されている通常の復号速度よりも、遅い速度で復号を行っていく。低速で復号をする方法としては、例えば、受信装置3の基準クロックを遅くしたり、各アクセスユニットの復号間隔を広げたりすることにより実現できる。低速復号が開始された後は、受信バッファ13には、所定の伝送レートで連続的にデータが入力されるとともに、1つのアクセスユニットに対する復号間隔ごとに一定量のデータが抜き出されていく。ここで、通常の復号速度で復号を行っていった場合には、データの伝送レートと、復号で抜き出されるデータ量のバランスがとられているため、受信バッファ13のバッファ占有量は平均すると一定となるが、ここでは、復号速度が通常の速度よりも低速となっているので、受信バッファ13のバッファ占有量は増加していく。そして、受信装置3は、受信バッファ13に、受信マージン分のデータが確保されると、復号速度を通常の復号速度に変更する。復号速度を、通常の復号速度に変更したのちは、データ転送レートと復号速度とのバランスがとられた状態となり、受信バッファ13のバッファ占有量は受信マージンを下回らず一定となる。
【0038】
以上のように本発明の実施の形態のリアルタイム配信システムでは、データストリームの復号開始時刻を、符号化時に想定されている通常の復号開始時刻よりも早くすることができる。従って、本発明の実施の形態のリアルタイム配信システムでは、符号化が開始されてから復号が開始されるまでの遅延時間(エンドトゥエンドディレイタイム)を短くすることができる。つまり、送信側でコンテンツの配信を開始してから、実際にユーザがコンテンツを鑑賞できるまでの遅延時間を短くすることができる。

(2)刊行物1に記載された発明
以上の刊行物1の記載からみて、刊行物1には、次の構成を有する発明が記載されている。

(2-a)ネットワークを利用したコンテンツのリアルタイム配信システム
刊行物1の【0023】には「本発明の実施の形態のコンテンツのリアルタイム配信システムの構成図を図1に示す。・・・受信装置3は、ネットワークを介して提供されるコンテンツを視聴するユーザ側の装置である。」とあるから、刊行物1のリアルタイム配信システムは、「ネットワークを介して提供されるコンテンツをユーザ側の受信装置で視聴する配信システム」に関する発明であるということができる。

(2-b)受信装置
刊行物1の記載によれば
「本発明の実施の形態のコンテンツのリアルタイム配信システムの構成図を図1に示す。リアルタイム配信システム1は、コンテンツを送信する送信装置2と、送信されたコンテンツを受信する受信装置3とにより構成される。・・・受信装置3は、ネットワークを介して提供されるコンテンツを視聴するユーザ側の装置である。」(【0023】)、
「受信装置3は、ネットワーク4を介してデータストリームを受信すると」(【0028】)とあるから、
刊行物1に記載された発明は、「リアルタイム配信システムに用いられる、受信装置は、データストリームを受信」する構成を有しているということができる。

(2-c)バッファ
刊行物1には「受信装置3の受信バッファ13は、受信したデータストリームを一旦格納する。」(【0029】)とあるから、刊行物1に記載された発明は、「受信装置は、データストリームをバッファに格納」する構成を有しているということができる。

(2-d)バッファからの復号化
刊行物1の【0030】には「ここで、受信装置3では、受信バッファ13に格納されているデータストリームの容量が受信マージンBRに達する前に、符号化時に想定されている通常の復号速度より遅い速度で、復号を開始する。」とあるから、刊行物1に記載された発明は、「受信バッファ13に格納されているデータストリームの容量が受信マージンBRに達する前に、符号化時に想定されている通常の復号速度より遅い速度で、復号を開始」する構成を有している。

(2-e)まとめ
以上の(2-a)ないし(2-d)によれば、刊行物1に記載された発明として、以下のとおりのものを認定することができる。

「ネットワークを介して提供されるコンテンツをユーザ側の受信装置で視聴する配信システムに関する発明であって、
リアルタイム配信システムに用いられる、受信装置は、データストリームを受信し、
受信装置は、データストリームをバッファに格納し、
受信バッファ13に格納されているデータストリームの容量が受信マージンBRに達する前に、符号化時に想定されている通常の復号速度より遅い速度で、復号を開始する、
配信システム。」

上記、刊行物1に記載された発明が有する各処理(受信、格納、復号等)は、「ネットワークを介して提供されるコンテンツをユーザ側の受信装置で視聴する配信システム」の受信装置において、受信したコンテンツを視聴するための各処理ステップであり、刊行物1に記載された発明は、上記処理ステップを有する、受信装置において、受信したコンテンツを視聴するための方法として捉えることができるので、刊行物1に記載された発明(以下、刊行物1発明という)は、受信装置において、受信したコンテンツを視聴するための方法として以下のとおりの発明を認定することができる。

「ネットワークを介して提供されるコンテンツをユーザ側の受信装置で視聴する配信システムの受信装置において、受信したコンテンツを視聴するための方法に関する発明であって、
リアルタイム配信システムに用いられる、受信装置は、データストリームを受信するステップを有し、
受信装置は、データストリームをバッファに格納するステップを有し、
受信バッファ13に格納されているデータストリームの容量が受信マージンBRに達する前に、符号化時に想定されている通常の復号速度より遅い速度で、復号を開始するステップを有する、
方法。」

3.対比
補正後発明と刊行物1発明とを対比してみると、次のことが認められる。

(3-a)「ネットワーク経由で受信するメディアストリームをメディアプレーヤで再生するための方法であって」
本願発明の詳細な説明を参酌すると、メディアストリームは、
「圧縮したオーディオ、およびビデオは、字幕放送、テレテキスト、ペアレンタルコントロール、およびマクロビジョン等の他のユーザーデータと併せて、単一メディアストリームに多重化する。」(【0033】)
「次いで、放送局100は、受け取ったビデオ信号をメディアストリームとして作製し、ユーザがメディアストリームを視聴するリモートまたはローカルのクライアントにネットワーク経由で送信される。」(【0044】)、
「ソースフィルタ、およびネットワークバッファ上の消去動作の後、メディアストリームの不連続が発生する。フィルタは、メディアストリーム内に何らかのパケットの不連続がある場合、次のIフレームを待つように組み込まれた機能を有する。」(【0076】)、
等の記載を参酌すると、
他のユーザーデータと併せて、単一メディアストリームに多重化されるようなものであって、
ビデオ信号をネットワーク経由で送信するために作成されたストリームであり、
パケット化されたもの、
といえるから、(例えば)ビデオ信号を、送信用にパケット化(すなわち、符号化)したデータストリームということができる。
刊行物1発明は「ネットワークを介して提供されるコンテンツをユーザ側の受信装置で視聴する配信システムの受信装置において、受信したコンテンツを視聴するための方法に関する発明」である。
刊行物1発明の「ネットワークを介して提供されるコンテンツ」について、刊行物1の【0002】に「デジタル動画像やデジタル音声等のデジタルコンテンツ」とあり、デジタル動画像はビデオ信号ということができる。
また、【0004】に「コンテンツをデータ配信用のデータストリームに符号化するエンコーダ111」とあるから、刊行物1発明のデータストリームは、コンテンツを(データ配信用に)符号化したデータストリームといえる。
したがって、刊行物1発明のデータストリームは、デジタル動画像(ビデオ信号)を送信用に符号化したデータストリームといえるから、この点で補正後発明のメディアストリームと相違がない。
刊行物1発明の受信装置は、「ネットワークを介して提供されるコンテンツをユーザ側の受信装置で視聴する」から、受信装置は、ネットワークを介して(経由して)コンテンツ(すなわち、コンテンツを符号化したメディアストリーム)を受信しているということができる。
刊行物1発明は「受信装置において、受信したコンテンツを視聴する」構成であるが、コンテンツを視聴するためには、受信装置において、(受信したメディアストリームの)再生が行われる必要があることは技術常識であり、受信装置は、コンテンツ(メディアストリーム)を再生しているということができる。また、コンテンツを再生する装置のことを、メディアプレーヤと称しても良いことは明らかであり、刊行物1発明の受信装置は、メディアプレーヤということができる。
すなわち、刊行物1発明の受信装置は、「ネットワークを経由して受信する、メディアストリームを再生するメディアプレーヤ」ということができ、刊行物1発明は、そのようなメディアプレーヤ(受信装置)が「受信したコンテンツを視聴するための方法」に関する発明であるから、「ネットワークを経由して受信する、メディアストリームを再生するメディアプレーヤが、受信したコンテンツを視聴(再生)するための方法」に関する発明であるいえる。
以上のことから、刊行物1発明は「ネットワーク経由で受信するメディアストリームをメディアプレーヤで再生するための方法」である点で補正後発明と相違がない。

(3-b)「前記メディアプレーヤにおいて、リアルタイムでメディアストリームを受信するステップ」
刊行物1発明は「リアルタイム配信システムに用いられる、受信装置は、データストリームを受信するステップ」を有している。
刊行物1発明の「受信装置」、「データストリーム」が、補正後発明の「メディアプレーヤ」、「メディアストリーム」に対応することは、上記(3-a)で検討したとおりである。
刊行物1発明の受信装置は、「リアルタイム配信システムに用いられ」、「データストリームを受信する」のであるから、リアルタイムでデータストリームを受信していることは明らかである。
したがって、刊行物1発明の受信装置(メディアプレーヤ)は、リアルタイムでデータストリーム(メディアストリーム)を受信している点で、補正後発明と相違がなく、刊行物1発明は「前記メディアプレーヤにおいて、リアルタイムでメディアストリームを受信するステップ」を有しているということができる。

(3-c)「前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップ」
刊行物1発明は「受信装置は、データストリームをバッファに格納するステップを有し」ている。
刊行物1発明の「受信装置」、「データストリーム」が、補正後発明の「メディアプレーヤ」、「メディアストリーム」に対応することは、上記(3-a)で検討したとおりである。
したがって、刊行物1発明は「メディアプレーヤは、メディアストリームをバッファに格納するステップ」を有しているということができ、「前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップ」を有しているといえる。

(3-d)「前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに、減速した再生速度で、前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの再生を直ちに開始するステップ」
刊行物1発明は「受信バッファ13に格納されているデータストリームの容量が受信マージンBRに達する前に、符号化時に想定されている通常の復号速度より遅い速度で、復号を開始するステップ」を有している。
刊行物1発明の「データストリーム」が、補正後発明の「メディアストリーム」に対応することは、上記(3-a)で検討したとおりである。
補正後発明の「前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに」とは、上記(3-c)の「前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップ」で、バッファにメディアストリームが格納されるとき、「上記バッファが所定のスレッショールドまで(格納されるメディアストリームで)満たされるのを待たずに」の意味であるといえ、「所定のスレッショールド」はバッファに格納されるメディアストリームの量について、基準を示す値といえる。
これに対して、刊行物1発明は「受信バッファ13に格納されているデータストリーム(メディアストリーム)の容量が受信マージンBRに達する前に」であり、上記受信マージンは、受信バッファに格納されるメディアストリームの量について、ある基準を示している値といえるから、補正後発明の「所定のスレッショールド」と相違がない。
刊行物1発明の「受信バッファ13に格納されているデータストリームの容量」は、いいかえると、受信バッファが(格納される)データストリームによって満たされる量といえ、「容量が受信マージンBR(所定のスレッショールド)に達する前に」、であるから、「受信バッファが(格納される)データストリームによって満たされる量が、所定のスレッショールドに達する前に」といえる。
「満たされる量が、所定のスレッショールドに達する前」は、いいかえると、「所定のスレッショールドまで満たされる前」、すなわち、「所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに」といえる。
以上まとめると、刊行物1発明は「受信バッファが(格納される)データストリームによって満たされる量が、所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに」、すなわち、「前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに」といえる。
補正後発明の「減速した再生速度」は、発明の詳細な説明を参酌すると、例えば、
【0067】に「メディアプレーヤは、リクエストされたコンテンツを通常の再生速度で(すなわち、1.0×)再生をスタートする。」、
【0068】に「通常の再生速度より僅かに遅くA/Vストリームを再生するので、メディアプレーヤは、メディアストリームを直ちに再生しながらも、バッファを満たすことができる。通常の再生速度より僅かに遅くストリームを再生することにより、再生されるストリームの前を行く受信メディアストリームの一部は、バッファに追加され、ゆっくりではあるが、A/Vバッファの蓄積を生じる。ユーザーは、コンテンツがバッファリングされるのを待たなくてもよく、直ちにコンテンツ視聴を開始できるので、体験は、通常のテレビの場合とよく似ている。」、
【0069】に「通常の再生速度より僅かに遅い、例えば、0.85×の速度で再生する」、
とあるから、「(通常の再生速度(すなわち、1.0×)と比較して)減速した再生速度」といえる。
これに対して、刊行物1発明は「符号化時に想定されている通常の復号速度より遅い速度で、復号を開始する」のであるから、通常の復号速度より減速した速度で復号を開始するといえる。
上記復号を行う装置は受信装置(メディアプレーヤ)であって、復号を行う対象は、受信装置(メディアプレーヤ)が受信したデータストリーム(メディアストリーム)、であるから、減速した復号速度で、メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの復号を開始しているといえるものの、上記「復号を開始」が、「直ちに」か否か明らかでない。
刊行物1発明の「バッファからの復号」は、補正後発明の「バッファからの再生」と、バッファからの信号を処理している点で共通する。
以上まとめると、刊行物1発明と補正後発明とは「前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに、減速した処理速度で、前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの信号処理を開始するステップ」で共通する。
もっとも、補正後発明の「減速した処理速度」、「バッファからの信号処理」は、「減速した再生速度」「バッファからの再生」であり、上記バッファからの再生を直ちに開始するのに対し、刊行物1発明では、「減速した処理速度」、「バッファからの信号処理」が、「減速した復号速度」、「バッファからの復号」であって、上記バッファからの復号を直ちに行っているか明らかでない点で相違する。

(3-e)一致点、相違点
上記(3-a)ないし(3-d)での対比結果によれば、補正後発明と刊行物1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
ネットワーク経由で受信するメディアストリームをメディアプレーヤで再生するための方法であって、
前記メディアプレーヤにおいて、リアルタイムでメディアストリームを受信するステップと、
前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップと、
前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに、減速した処理速度で、前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの信号処理を開始するステップと、
を備える方法。」

[相違点]
補正後発明の「減速した処理速度」、「バッファからの信号処理」は、「減速した再生速度」、「バッファからの再生」であり、上記バッファからの再生を直ちに開始するのに対し、刊行物1発明では、「減速した処理速度」、「バッファからの信号処理」が、「減速した復号速度」、「バッファからの復号」であって、上記バッファからの復号を直ちに行っているか明らかでない点。

4.判断
上記相違点は、
(1)「減速した処理速度」、「バッファからの信号処理」が、補正後発明では、「減速した再生速度」、「バッファからの再生」であるのに対し、刊行物1発明では、「減速した復号速度」、「バッファからの復号」である点(以下、相違点1ともいう)、
(2)補正後発明では、バッファからの再生を直ちに開始するのに対し、刊行物1発明では、バッファからの復号を直ちに行っているか明らかでない点(以下、相違点2ともいう)、
の二つに分けることができるから、上記二つに分けて検討する。

4-1相違点1について
補正後発明の「再生」について、特許請求の範囲では「メディアストリームの前記バッファからの再生を直ちに開始する」とあり、発明の詳細な説明を参酌すると「こうすれば、例えば、チャンネルを変更した時、ユーザーはメディアプレーヤのA/Vバッファが満たされるのを待たなくてもよく、メディアプレーヤはなおそのバッファを作製して滑らかな再生を提供できる。」(【0068】)とある。
上記「再生を提供」するのは、ユーザに対して提供していることは明らかであるから、メディアストリームを、バッファから出力し、ユーザに提供するまでの一連の処理を、補正後発明では「再生」と称しているということができる。
そして、(符号化された)メディアストリームをユーザに提供するためには、符号化されたメディアストリームを復号(化)する処理を当然含み、さらに、ユーザが表示部で上記メディアストリームを視聴できるように他の処理を行い、表示(提供する)することが必要であることは当業者にとって技術常識である。
したがって、補正後発明の「再生」は、バッファからメディアストリームを出力し、符号化されたメディアストリームを「復号化」し、さらに視聴できるような他の処理を行いユーザが表示部で上記メディアストリームを視聴できるようにすることであるといえ、「減速した再生速度」、「バッファからの再生」は、それぞれ、「減速した速度」で、ユーザが視聴可能とすることであり、また、バッファからメディアストリームを出力し、ユーザが視聴可能とすることであるといえる。
これに対して、刊行物1の『「減速した復号速度」、「バッファからの復号」』について検討するに、刊行物1には以下のとおりの記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のようにネットワーク104のデータ伝送時間のジッタを考慮して、受信マージンを設定した場合、エンコードが開始されてからデコードが開始されるまでの遅延時間(エンドトゥエンドディレイタイム)が非常に長くなる。つまり、送信側でコンテンツの配信を開始してから、実際にユーザがコンテンツを鑑賞できるまでの遅延時間が、非常に長くなる。」(【0016】)
「本発明は、データの送信を開始してからデコードを開始するまでの時間を短縮したデータ配信システム、データ配信方法、受信装置及び送信装置を提供することを目的とする。」(【0017】)
以上の記載から、刊行物1発明において、「復号(デコード)」はユーザがコンテンツを鑑賞することを前提になされているから、復号した信号は、ユーザが視聴可能なるようにしていることは明らかであり、刊行物1発明の「バッファからの復号」を、バッファから(メディアストリームを出力し)復号し、ユーザが視聴可能とすることは当業者が、普通に想起し得たことである。
したがって、刊行物1発明の、「バッファからの復号」を、補正後発明の「バッファからの再生」とすることは、当業者が容易に想起し得たことである。
また、上記刊行物の記載からみて、刊行物1発明は、「送信側でコンテンツの配信を開始してから、実際にユーザがコンテンツを鑑賞できるまでの遅延時間が、非常に長くなる。」という課題を解決するために、「データの送信を開始してからデコードを開始するまでの時間を短縮した」といえるから、デコードされたデータは、遅れることなくユーザがコンテンツを鑑賞できるような状態としていると考えるのが普通である。
そして、刊行物1発明において、「減速した復号速度」で復号された信号が、遅れることなくユーザが鑑賞可能となるようにすると、「減速した復号速度」で復号されたコンテンツは、(復号されると、遅れることなく、ユーザが鑑賞可能となるのであるから、)上記減速された復号速度を保ったままユーザが鑑賞可能となるように処理される、すなわち、ユーザに対して減速した速度でコンテンツを視聴可能としているといえ、上記刊行物1に触れた当業者であれば、デコードされたデータを、遅れることなくユーザが鑑賞できるような状態とするため、減速された復号速度を保ったままユーザが鑑賞可能となるように処理し、「減速した復号速度」で復号された信号を、減速した速度で視聴可能とすることは容易に想起し得たことであるということができる。
そして、補正後発明の「減速した再生速度」は、「減速した速度」で、ユーザが視聴可能とすることであることは上記で検討したとおりであるから、刊行物1発明の「減速した復号速度」を「減速した再生速度」とすることは当業者が容易になし得たことであるということができる。

なお、上記判断では、刊行物1の記載のみから検討したが、例えば、特開2001-54066号公報にあるように、「遅い復号速度で復号する」ことは、「遅い再生速度で再生する」ことを意味するものであることは当業者にとって周知の技術事項であるから、刊行物1発明の「減速した復号速度」を「減速した再生速度」とすることは、上記周知技術を参酌すれば、当業者が容易になし得たことであるということができる。

以上まとめると、刊行物1発明の、「減速した復号速度」、「バッファからの復号」を、補正後発明の、「減速した再生速度」、「バッファからの再生」とすることは、当業者が容易になし得たことであるということができる。

4-2相違点2について
刊行物1には、復号が開始されるタイミングについて、以下の記載がある。
「続いて、受信バッファ13に、少なくとも1アクセスユニット分以上のデータが蓄積されると、データストリームの復号が開始される。」(【0037】)
そして、アクセスユニットについては、「なお、アクセスユニットは、単独でデータを復号することができるデータストリームの最小単位である。」(【0007】)と記載されている。
すなわち、「受信バッファに、1アクセスユニット分データが蓄積されると、データストリームの復号が開始される」構成であれば、1アクセスユニットが、単独でデータを復号することができるデータストリームの最小単位であることを前提にすると、最も早く復号が開始される、すなわち、直ちに復号が開始されることであることが理解できる。
刊行物1の上記記載では、「少なくとも1アクセスユニット分以上のデータが蓄積されると、データストリームの復号が開始される。」との記載であるから、「1アクセスユニット分データが蓄積されると、データストリームの復号が開始される」こととは異なるが、上記4-1で検討した、刊行物1に記載された発明の解決しようとする課題「つまり、送信側でコンテンツの配信を開始してから、実際にユーザがコンテンツを鑑賞できるまでの遅延時間が、非常に長くなる。」(という課題)を解決するのであるから、なるべく早く鑑賞できる状態とするようにすることは、当業者であれば普通に想起することであり、「少なくとも1アクセスユニット分以上のデータが蓄積されると、データストリームの復号が開始される。」の「1アクセスユニット分以上のデータ」を「1アクセスユニット分のデータ」とすることは、上記解決する課題を前提にすれば、当業者が容易になし得たことであるといえる。
そして、「少なくとも1アクセスユニット分のデータが蓄積されると、データストリームの復号が開始される。」とすることは、「直ちに復号が開始される」ことと同じであることは、上記で検討したとおりであるから、刊行物1発明を「バッファからの復号を直ちに開始する」構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
また、刊行物1発明の、「バッファからの復号」を、補正後発明の「バッファからの再生」とすることは容易になし得たことであるといえることは、上記4-1で検討したとおりである。
よって、刊行物1発明の「バッファからの復号を開始する」構成を、補正後発明の「バッファからの再生を直ちに開始する」構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるということができる。

5.効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

6.まとめ(独立特許要件)
以上によれば、補正後発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

[2-4]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成23年7月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成22年10月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成22年10月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
ネットワーク経由で受信するメディアストリームをメディアプレーヤで再生するための方法であって、
前記メディアプレーヤにおいて、リアルタイムでメディアストリームを受信するステップと、
前記メディアプレーヤにおいて、前記メディアストリームをバッファに格納するステップと、
前記バッファが所定のスレッショールドまで満たされるのを待たずに、減速した再生速度で、前記メディアプレーヤによる前記受信したメディアストリームの前記バッファからの再生を開始するステップと、
を備える方法。

第4 査定の検討
1.刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-15111号公報には、上記第2[2][2-3]2.(1)にあるとおりの記載があり、刊行物1発明として、上記第2[2][2-3]2.(2)(2-e)にて認定したとおりの発明を認定できる。

2.対比・判断
本願発明は、その「バッファからの再生を開始するステップ」に関し、補正後発明では「バッファからの再生を直ちに開始するステップ」とあるのを、本願発明では「バッファからの再生を開始するステップ」としたものであって、「バッファからの再生を開始するステップ」について、(下線で示した)限定事項の一部を省いたものということができる。
そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が、前記「第2[2][2-3]4.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし18に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-10 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-10 
出願番号 特願2007-268269(P2007-268269)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 優  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 松尾 淳一
千葉 輝久
発明の名称 ネットワーク経由でメディアストリームを受信し再生する方法  
代理人 飯塚 義仁  

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