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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1270640
審判番号 不服2011-20198  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-20 
確定日 2013-03-01 
事件の表示 特願2001- 62872「制限運転操作を表す方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月19日出願公開、特開2001-289658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年3月7日(パリ条約による優先権主張2000年3月7日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年7月21日付けで拒絶理由が通知され、平成22年11月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年5月16日付けで拒絶査定がなされ、平成23年9月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成24年3月19日付けで書面による審尋がなされたものである。

そして、平成23年9月20日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年11月29日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1における、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正を含むものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的として適法になされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成23年9月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】 地図データベースに対する複数接続道路区間を含む交通規制運転操作を表す方法であり、前記複数接続道路区間は、少なくとも3つの接続道路区間を含み、かつ前記複数接続道路区間は、単一の入口道路区間、単一の出口道路区間及び少なくとも一つの中間道路区間を含み、かつ前記中間道路区間を介して前記入口道路区間から前記出口道路区間までの連続走行が禁止される、前記方法であって、
前記入口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンスを形成する段階と;
前記出口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンスを形成する段階と;及び
前記中間道路区間を表すデータのマルチプル・インスタンスを形成する段階と;を具備し、
前記中間道路区間を表すデータの第1の前記マルチプル・インスタンスは、前記入口道路区間から前記中間道路区間までの有効運転経路の決定に使用可能である一方、前記中間道路区間から前記出口道路区間までの有効運転経路の決定に使用不能であり、かつ
前記中間道路区間を表すデータの第2の前記マルチプル・インスタンスは、前記中間道路区間から前記出口道路区間までの有効運転経路の決定に使用可能である一方、前記入口道路区間から前記中間道路区間までの有効運転経路の決定に使用不能である、
ことを特徴とする方法。」

2.引用文献
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-274545号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、経路選出方法およびシステムに関し、より特定的には、地図データ上の任意の2地点間の最適経路を選出する方法およびシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】周知のごとく、カーナビゲーションシステムは、車両の現在地を検出して表示すると共に、目的地までの最適経路を自動的に探索し、当該最適経路に沿って車両を、表示ガイダンスおよび/または音声ガイダンスにより、目的地まで誘導案内するシステムである。カーナビゲーションシステムにおいて、誘導案内する経路は、常に車両が通過可能である実用的な経路が求められている。そのため、一方通行規制や右左折禁止規制等の規制情報を反映した経路探索の方法が盛んに研究および提案されている。
【0003】従来、上記のような定常的な規制情報を用いて、交通規制を遵守した経路を選出するような車両用経路案内装置としては、例えば特開昭62-82316号公報に開示されているものがあった。この公開公報には、定常的な規制情報を反映する方法として、以下の方法が示されている。
【0004】図21は、従来の車両用経路案内装置の構成を示す図である。図21において、この車両用経路案内装置は、進入禁止や右左折禁止などの通行方向規制を考慮して、次に到達可能な隣接交差点及びそれまでの所要時間相関量が各交差点について記述された地図データを記憶する基本情報記憶手段22aと、基本情報記憶手段22aが記憶する地図データを参照して、一定の条件の下に、出発交差点から目的交差点へ至る最短経路を検索する経路検索手段22bとで構成されている。
【0005】上記従来例で特徴的なのは、基本情報記憶手段22aに記録される地図データの道路ネットワークの表現法である。交通規制を考慮した上で、到達可能な交差点への道路のみを記憶することにより、経路検索手段22bで複雑な処理を行わないで、規制を遵守した経路を検索可能としている。
【0006】ここで、従来例の道路ネットワークの表現例を説明する。図22は、従来例の道路ネットワークの表現例(右左折禁止規制)を示している。図22において、(a)は交差点例を示しており、この様な交差点において各交差点進入方向に右折禁止規制が存在した場合、(b)のように道路ネットワークを表現する。すなわち、各交差点進入方向毎にノードを想定し、通行可能な直進/左折方向のみリンクがあるものと想定する。
【0007】このように、従来の車両用経路案内装置は、規制情報を反映した道路ネットワークを用いて地図データを記録することにより、通常の経路検索処理を適用し、定常的な交通規制を反映した経路を選出していた。
【0008】ところで、上記従来例は、一つの交差点内の交差点通行規制(例えば、右左折規制)のみを記述の対象としていた。しかしながら、一つの交差点内の通行規制のみでは表現できない複雑な通行規制も存在する。図23は、従来手法では表現できない複数の交差点に跨る交通規制(以下、複合交差点通行規制と称す)の一例を示している。図23において、A→B、B→Aのみが通行禁止であり、他は全て通行可能であるものと仮定する。図24は、図23の複合交差点通行規制を、一般的なネットワーク網上で通常の交差点通行規制を用いて表現しようとした一例を示している。この図24では、図23の道路網を2つのノード(N1、N2)と5本のリンク(L1?L5)とで表現している。図24に示すような交差点通行規制を入れた場合、例えばL1→N1→L2→N2→L5のような通行可能なルートも通行不可能となってしまう。
【0009】そこで、上記のような複合交差点通行規制を表現するため、複数の交差点を一つのノードに統合する手法(統合交差点手法)が特開平8-75491号公報に開示されている。図25は、統合交差点の一例を示す図である。ここでは、ノードN1とノードN2とを統合し、新たなノードNX1としている。このノードNX1に対して通常の通行規制(L4→L5、L5→L4への直進禁止規制)を記述することにより、図23の規制内容が表現できる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来のように統合交差点手法を用いた場合、通常の探索処理とは別に統合交差点内を通過するためのコスト情報を参照したり、経路表示時に統合交差点内のルート情報を参照しなければならず、処理が複雑になるという問題点があった。また、さらに、統合された交差点内のコストが大きくなると、選出される経路が必ずしも最短コスト経路ではなくなるという問題点があった。
【0011】ここで、統合交差点手法を用いた場合、最短コスト経路ではなくなる例を図を用いて説明する。図26は、従来の統合交差点手法を用いた場合、最短コスト経路ではなくなる道路ネットワークの一例を示す図である。図27は、図26の道路ネットワークを従来の統合交差点手法で表現した図である。図26において、出発地方面からノードN4への最短コスト経路はL1→N1→L4→N3→L7→N4で、ノードN5への最短コスト経路はL1→N1→L2→N2→L5→N5であるものとする。この場合、出発地方向から目的地方向への最短コスト経路は、L1→N1→L2→N2→L5→N5→L9となる。しかしながら、本道路ネットワークにおいてノードN4およびN5を統合化し、図27に示すように統合ノードNX1とした場合、出発地方面から統合ノードNX1までの最短コスト経路は、L1→N1→L4→N3→L7→NX1となる。その結果を基に、さらに探索を広げていくため、最終的に求められる出発地方面から目的地方面への経路はL1→N1→L4→N3→L7→NX1→L9となり、図26で示したような正確な最短コスト経路とは異なる経路を選出してしまう。
【0012】それ故に、本発明の目的は、複数の交差点に跨る複雑な規制情報を遵守した最短コスト経路を、最適経路として提供することができる経路選出方法およびシステムを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段および発明の効果】第1の発明は、地図データ上の任意の2地点間の最適経路を選出するための方法であって、地図データ上で探索する2地点を設定するステップと、地図データに基づいて、設定された2地点間の最適経路を探索するステップとを備え、地図データは、少なくとも、地図上の交差点をノードとして示すノードデータと、地図上の道路をリンクとして示すリンクデータとを含んでおり、地図データは、複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリアについては、地図上の各交差点をそれぞれ複数のノードに分離して得られる分離ノードデータと、地図上の各道路をそれぞれ複数のリンクに分離して得られる分離リンクデータとによって構成される道路ネットワーク網によって表現し、さらに分離リンクデータに対して一方通行規制を設定し、および/または分離ノードデータに対して右左折通行規制を設定することにより、複合交差点通行規制を表現することを特徴とする。
【0014】第2の発明は、地図データ上の任意の2地点間の最適経路を選出するための方法であって、地図データ上で探索する2地点を設定するステップと、地図データに基づいて、設定された2地点間の最適経路を探索するステップとを備え、地図データは、少なくとも、地図上の交差点をノードとして示すノードデータと、地図上の道路をリンクとして示すリンクデータとを含んでおり、地図データは、複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリアについては、地図上の各交差点をそれぞれ複数のノードに分離して得られる分離ノードデータと、地図上の各道路をそれぞれ複数のリンクに分離して得られる分離リンクデータと、当該分離リンクデータの一部を統合して得られる統合リンクデータとで構成される道路ネットワーク網によって表現し、さらに分離リンクデータおよび統合リンクデータに対して一方通行規制を設定し、および/または分離ノードデータに対して右左折通行規制を設定することにより、複合交差点通行規制を表現することを特徴とする。
【0015】第3の発明は、地図データ上の任意の2地点間の最適経路を選出するための方法であって、地図データ上で探索する2地点を設定するステップと、地図データに基づいて、設定された2地点間の最適経路を探索するステップとを備え、地図データは、少なくとも、地図上の交差点をノードとして示すノードデータと、地図上の道路をリンクとして示すリンクデータとを含んでおり、地図データは、複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリアについては、地図上の各交差点をそれぞれ複数のノードに分離して得られる分離ノードデータと、地図上の各道路をそれぞれ複数のリンクに分離して得られる分離リンクデータと、1つの交差点から分離されたノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる仮想リンクデータとで構成される道路ネットワーク網によって表現し、さらに分離リンクデータおよび仮想リンクデータに対して一方通行規制を設定し、および/または分離ノードデータに対して右左折通行規制を設定することにより、複合交差点通行規制を表現することを特徴とする。
【0016】上記のように、第1?第3の発明によれば、地図データのネットワーク構成だけで複合交差点通行規制が表現でき、探索処理時に特別な処理を行わなくても複合交差点通行規制を遵守した経路を選出できる。」(段落【0001】ないし【0016】)

(イ)「【0041】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態に係るカーナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。図1において、本実施形態のカーナビゲーションシステムは、入力装置101と、ロケータ102と、記録装置103と、通信装置104と、ナビゲーション装置105と、出力装置106とを備えている。
【0042】入力装置101は、リモートコントローラ、タッチセンサ、キーボード、マウス等により、ナビゲーションシステムの機能選択(処理項目変更、地図切り替え、階層変更等)や地点設定、探索モード選択等を行う。ロケータ102は、GPS、車速センサ、角速度センサ、絶対方位センサ等であり、車両の現在位置を計算するための各種情報を収集する。記録装置103は、光ディスクドライブ(CD、DVD等)、ハードディスク、大容量メモリ等であり、交差点や道路の接続状況や座標・形状・属性・規制情報など、道路ネットワークに関する情報を記憶している。通信装置104は、FM多重通信装置/光・電波ビーコン装置等の各種無線通信装置からなり、交通情報や地図情報等各種情報の送受信を行う。ナビゲーション装置105は、通常CPUやメモリ(プログラムメモリ、ワーキングメモリ)等を含み、車両の現在位置検出や経路探索/誘導、各種情報(地図、交通情報、周辺情報等)の検索や提供などを行う。出力装置106は、表示装置(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等)やスピーカ等を含み、各種情報や誘導経路の画像表示や音声案内を行う。
【0043】ここで、記録装置103に記録される地図データについて説明する。図2は、記録装置103に記録される地図データの一構成例を示している。通常、地図データは、大きく分けて2つの構成要素からなる。第1の構成要素は、交差点に関する情報であるノードデータである。第2の構成要素は、交差点をつなぐ道路の情報であるリンクデータである。本実施形態では、一般的な上記データ以外に、複数の交差点に跨る複雑な通行規制であり、通常の交差点通行規制情報(右左折禁止情報等)や一方通行情報で表現できない、複合交差点通行規制を記録しているのであるが、その記録方法は後に詳述する。
【0044】以上のように構成されたカーナビゲーションシステムについて、以下にその動作を説明する。カーナビゲーションシステムの機能としては、経路選出/誘導機能、現在位置表示機能、情報検索/提供機能等があるが、ここでは本発明にとって興味のある経路選出/誘導機能について述べる。まず、入力装置101において、ユーザーは出発地および目的地の設定を行う。すなわち、ユーザーは、入力装置101を操作することにより、出力装置106に表示された地図の画像をスクロールさせ、希望する地点を出発地および目的地として入力する。なお、ロケータ102を用いて検出した車両の現在位置を出発地として使用してもよい。
【0045】次に、ナビゲーション装置105は、上記のように設定された出発地や目的地の位置に基づき、記録装置103に記憶された地図上の一番近いノードまたは一番近いリンクに接続するノードを出発ノード及び目的ノードとして採用する。さらに、ナビゲーション装置105は、周知のダイクストラ法などを用いて最短コスト経路を計算し、求められた経路をリンク列またはノード列または座標列に変換し、誘導経路とする。ただし、ナビゲーション装置105は、通常の交差点通行規制や一方通行規制だけでなく、複合交差点通行規制を遵守した経路を選出する。なお、このとき、通信装置104で得られた交通情報によりリンクコストを変更する等の手法を用いて、選出する経路を変更するようにしてもよい。ナビゲーション装置105は、このようにして選出された探索結果に基づいて誘導経路を設定し、ロケータ102で検出された位置情報から車両の現在位置を算出して、誘導経路上を目的地まで案内する。
【0046】最後に、出力装置106は、ナビゲーション装置105からの指示を受け、音声や表示により誘導情報をユーザーに提示する。
【0047】図3は、図1に示すナビゲーション装置105の一構成例を示す機能ブロック図である。図3において、このナビゲーション装置105は、位置検出部201と、情報検索・提供部202と、経路選出部203と、誘導部204とを備えている。
【0048】位置検出部201は、ロケータ102で検出した位置情報を基に、記録装置103に記録された地図データの道路網に対しマップマッチングを行ったり、入力装置101で入力された車両位置修正情報を用いて、車両の現在位置を特定する。情報検索・提供部202は、位置検出部201で検出された現在地に基づいて、記録装置103に記録された地図データを出力装置106に表示したり、入力装置101で入力されたユーザーの要求に従い、出力装置106における地図の表示範囲や詳細度を変更したり、通信装置104で得られた交通情報を出力装置106に表示する等、各種情報の検索や提供を行う。経路選出部203は、必要となる範囲の地図データを記録装置103から読み込み、位置検出部201で検出された車両の現在位置や入力装置101で入力された地点情報に基づいて出発地や目的地を決定し、通常の交差点通行規制や一方通行規制の他に、複数の交差点に跨る複合交差点通行規制を考慮して出発地から目的地間の最小コスト経路を選出する。さらに、誘導部204は、経路選出部203で選出した誘導経路に基づいて、記録装置103から取得した地図データと位置検出部201で検出した車両の現在位置とから、どちらの方向に進むべきか目的地までの誘導を行う。さらに、以降で経路選出処理を行う経路選出部203に関して詳述する。
【0049】(1)経路選出部203の第1の構成例
図4は、図3に示す経路選出部203の第1の構成例を示す機能ブロック図である。図4において、この経路選出部203は、探索用データ格納部301と、地点設定部302と、経路探索部303とを備えている。
【0050】探索用データ格納部301は、経路探索や地点設定に必要な範囲の地図データを記録装置103から読み込んで格納したり、探索時の中間データ等を記録する。地点設定部302は、位置検出部201で検出された車両の現在位置を出発地に、入力装置101で入力した地点を目的地にして、各々に対応する地図上の出発ノードおよび目的ノードを設定する。経路探索部303は、公知のダイクストラ法等を用いて、地点設定部302で設定した出発ノードから目的ノードまでの最小コスト経路を求める。
【0051】上記のように構成された第1の構成例の経路選出部203の動作を、フローチャートに従って以下に詳述する。
【0052】図5は、図4における地点設定部302の動作を示すフローチャートである。まず、図5のステップS501において、地点設定部302は、出発地(例えば、位置検出部201で検出された車両の現在位置)に一番近いノードを出発ノードとし、到達コスト(例えば、0)を設定する。次に、ステップS502において、地点設定部302は、目的地(例えば、入力装置101によりユーザーが入力した地点)に一番近いノードを目的ノードとし、到達コスト(例えば、0)を設定する。
【0053】次に、経路探索部303は、最小コスト経路を求める経路探索処理を実行する。図6は、経路探索部303が実行する経路探索処理を示すフローチャートである。まず、図6のステップS601において、経路探索部303は、出発ノードを候補状態とする。次に、ステップS602において、経路探索部303は、候補状態ノードの内、到達コストが最小のものを基準ノードとして、候補状態から除外する。さらに、ステップS603において、経路探索部303は、基準ノードが目的ノードであるか否かを調べ、目的ノードであればステップS610の経路構成処理に進む。目的ノードでなければ、ステップS604に進む。ステップS604において、経路探索部303は、基準ノードに接続するリンクは全て調査したかどうかをチェックする。全て調査済みであれば、経路探索部303は、ステップS602に戻り、次の基準ノードを探す。未調査リンクがあれば、経路探索部303は、ステップS605で未調査リンクの1本を調査対象リンクとする。次に、ステップS606において、経路探索部303は、基準ノードでの交差点通行規制(右左折規制)や調査対象リンクの一方通行規制をチェックし、調査対象リンクの方向へ通過できなければステップS604に戻り、調査対象リンクの方向に通過できれば、次のステップS607に進む。ステップS607において、経路探索部303は、基準ノードへの到達コストに調査対象リンクのコストを加算して、調査対象リンクに接続するノードであって基準ノードとは逆側のノード(行き先ノード)への新到達コストとする。次に、ステップS608に進み、経路探索部303は、行き先ノードへの到達が初めてであるか、または、新到達コストが今まで求められた到達コスト中で最小であるかを判断し、当該判断が肯定であればステップS609に進み、否定であればステップS604に戻る。ステップS609において、経路探索部303は、行き先ノードを候補状態とする。さらに、経路探索部303は、探索用中間データとして、行き先ノードに対し、前リンクとして調査対象リンクを、到達コストとして新到達コストを探索用データ格納部301に記録してステップS604に戻る。経路探索部303は、上記処理を繰り返すことにより、経路探索処理を行う。
【0054】最後に、図6に示すサブルーチンステップS610の経路構成処理について説明する。図7は、図4の経路探索部303がステップS610で実行する経路構成処理を示すフローチャートである。まず、図7のステップS701において、経路探索部303は、調査対象ノードを目的ノードとする。次に、経路探索部303は、ステップS702に進み、調査対象ノードは出発ノードであるかどうかをチェックし、出発ノードであれば今までの経路リンク列を逆順にして誘導経路とする。一方、調査対象ノードが出発ノードでなければ、経路探索部303は、ステップS703に進み、探索用データ格納部301に探索用中間データとして記録された、調査対象ノードの前リンクを経路リンク列に加える。次に、経路探索部303は、ステップS704に進み、調査対象ノードに対して記録された前リンクに接続する2つのノードの内、現在の調査対象ノードではない方のノードを、新たな調査対象ノードとしてステップS702に戻る。経路探索部303は、上記処理を繰り返すことにより、経路構成処理を行う。
【0055】ここで、図1の記録装置103には、経路選出部203が上記したような従来と同様な経路探索手法を用いた場合であっても、複合交差点通行規制を遵守した経路の選出を可能とするために、次に説明するような地図データが記録される。以降、地図データのネットワーク構成例について説明する。
【0056】(1-A)ネットワークの分離
図8は、図23に示す複合交差点通行規制を表現するための第1のネットワーク構成例を示す図である。本構成例では、図24に示した従来の一般的なネットワーク網で用いるノードN1,N2、およびリンクL1?L5を、それぞれ複数のノードおよびリンクに分離している。例えば、ノードN1はノードN1a?N1cに分離され、リンクL1はリンクL1a?L1cに分離される。その上で、複合交差点通行規制が影響しない進入リンク(L1a、L3a)に注目した道路ネットワーク(リンク:L1a、L2a、L3a、L4a、L5a;ノード:N1a、N2a)と、複合交差点通行規制が影響する進入リンク(L4b、L5c)に注目した道路ネットワークα(リンク:L1b、L2b、L3b、L4b;ノード:N1b、N2b)およびβ(リンク:L1c、L2c、L3c、L5c;ノード:N1c、N2c)とに分けて全体の道路ネットワークを表現し、さらに通行可能な方向に一方通行規制を設定することにより、複合交差点通行規制が表現できるようにしている。
【0057】なお、第1のネットワーク構成例は、単純化することができる。図9は、図8のネットワーク構成を単純化した第2のネットワーク構成例を示している。本構成例では、複合交差点通行規制が影響する進入リンクに注目した場合、規制対象範囲内のリンク(L2c、L2b)の一方通行規制が逆方向であるだけで、その他の脱出リンク(L1b、L1c、L3b、L3c)の進行方向は同一なので、道路ネットワークαおよびβを合成して、ノードやリンクを分離する数を減らすようにしている。
【0058】さらに、一方通行規制の代わりに、従来の交差点通行規制(右左折規制)を用いて複合交差点通行規制を表現することもできる。図10は、図23に示す複合交差点通行規制を表現する第3のネットワーク構成例を示している。本構成例は、図9に示した第2のネットワーク構成例において、一方通行規制の代わりに従来の交差点通行規制(右左折規制)を用いて複合交差点通行規制を表現している。
【0059】このように、複合交差点通行規制が存在するノードやリンクを複数に分離し、分離したリンク上において通過可能な方向のみに一方通行規制を、または分離したノード上において通過不可能な方向のみに従来の交差点通行規制を設定することにより、地図データのネットワーク構成だけで複合交差点通行規制が表現でき、しかも探索処理時に特別な処理を行わなくても複合交差点通行規制を遵守した最適経路を選出できる。」(段落【0041】ないし【0059】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)及び(イ)並びに図面の記載から、以下の事項が分かる。
(ウ)引用文献の第23図には、A→B及びB→Aが通行禁止である複数の交差点に跨る交通規制(複合交差点通行規制)が示されており、引用文献の第9図には、地図データにおいて、この複合交差点通行規制を表現するために二つのノードN1、N2がそれぞれ分離されたノードN1a、N1b及びノードN2a、N2b、規制対象範囲内の進入リンクL4b、L5b、リンクL2a、L2b、及び脱出リンクL5a、L4aよりなるネットワーク構成例が示されており、このネットワーク構成例により、一つの進入リンクL4bから、リンクL2a、L2bを介して、一つの脱出リンクL5aに至るまでの通行が禁止された態様を表現しているから、
複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリアは、少なくとも3つの接続道路を含み、かつ複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリアは、単一の進入リンクとして示される道路、単一の脱出リンクとして示される道路及び少なくとも一つの進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクとして示される道路を含み、かつ進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクとして示される道路を介して前記進入リンクとして示される道路から前記脱出リンクとして示される道路までの連続走行が禁止されていることが分かる。

(エ)引用文献の段落【0053】及び第6図を参照すると、経路探索処理において、交差点通行規制をチェックし、調査対象リンクの方向へ通過できるか否かを判断していることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)(ア)及び(イ)、図面の記載、並びに、(2)(ウ)及び(エ)から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 地図データに対する複合交差点通行規制を表現する方法であり、複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリアは、少なくとも3つの接続道路を含み、かつ複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリアは、単一の進入リンクとして示される道路、単一の脱出リンクとして示される道路及び少なくとも一つの進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクとして示される道路を含み、かつ進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクとして示される道路を介して前記進入リンクとして示される道路から前記脱出リンクとして示される道路までの連続走行が禁止されている方法であって
進入リンクL4bをリンクL4を分離して得ることと;
脱出リンクL5aをリンクL5を分離して得ることと;及び
進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2a、L2bをリンクL2を分離して得ること;で構成され
前記進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2bは、進入リンクL4bとして示される道路から進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2bまで通過できる一方、進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2bから脱出リンクL5aとして示される道路まで通過できず、かつ
前記進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2aは、進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2aから脱出リンクL5aとして示される道路まで通過できる一方、進入リンクL4bとして示される道路から進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2aまで通過できない
方法。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明における「地図データ」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「地図データベース」に相当し、以下同様に、「複合交差点通行規制を表現する」は「複数接続道路区間を含む交通規制運転操作を表す」に、「複数の交差点にまたがる複合交差点通行規制が存在するエリア」は「複数接続道路区間」に、「接続道路」は「接続道路区間」に、「進入リンクとして示される道路」は「入口道路区間」に、「脱出リンクとして示される道路」は「出口道路区間」に、「進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクとして示される道路」は「中間道路区間」に、「進入リンクL4b」は「入口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンス」に、「脱出リンクL5a」は「出口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンス」に、「進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2a、L2b」は「中間道路区間を表すデータのマルチプル・インスタンス」に、「で構成され」は「を具備し」に、「進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2b」は「中間道路区間を表すデータの第1のマルチプル・インスタンス」に、「進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2a」は「中間道路区間を表すデータの第2のマルチプル・インスタンス」に、それぞれ相当する。
また、後者の「進入リンクL4bをリンクL4を分離して得る」段階は、前者の「入口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンスを形成する段階」に相当し、以下同様に、「脱出リンクL5aをリンクL5を分離して得る」段階は、「出口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンスを形成する段階」に、「進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2a、L2bをリンクL2を分離して得る」段階は「中間道路区間を表すデータのマルチプル・インスタンスを形成する段階」に、それぞれ相当する。
さらに、後者の「進入リンクL4bとして示される道路から進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2bまで通過できる一方、進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2bから脱出リンクL5aとして示される道路まで通過できず」という態様は、前者の「入口道路区間から中間道路区間までの有効運転経路の決定に使用可能である一方、中間道路区間から出口道路区間までの有効運転経路の決定に使用不能であ」る態様に相当し、以下同様に、「進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2aから脱出リンクL5aとして示される道路まで通過できる一方、進入リンクL4bとして示される道路から進入リンクと脱出リンクの間に位置するリンクL2aまで通過できない」態様は、「中間道路区間から出口道路区間までの有効運転経路の決定に使用可能である一方、入口道路区間から中間道路区間までの有効運転経路の決定に使用不能である」態様に相当する。

したがって、両者は、
「 地図データベースに対する複数接続道路区間を含む交通規制運転操作を表す方法であり、前記複数接続道路区間は、少なくとも3つの接続道路区間を含み、かつ前記複数接続道路区間は、単一の入口道路区間、単一の出口道路区間及び少なくとも一つの中間道路区間を含み、かつ前記中間道路区間を介して前記入口道路区間から前記出口道路区間までの連続走行が禁止される、前記方法であって、
前記入口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンスを形成する段階と;
前記出口道路区間を表すデータの1つのみのインスタンスを形成する段階と;及び
前記中間道路区間を表すデータのマルチプル・インスタンスを形成する段階と;を具備し、
前記中間道路区間を表すデータの第1の前記マルチプル・インスタンスは、前記入口道路区間から前記中間道路区間までの有効運転経路の決定に使用可能である一方、前記中間道路区間から前記出口道路区間までの有効運転経路の決定に使用不能であり、かつ
前記中間道路区間を表すデータの第2の前記マルチプル・インスタンスは、前記中間道路区間から前記出口道路区間までの有効運転経路の決定に使用可能である一方、前記入口道路区間から前記中間道路区間までの有効運転経路の決定に使用不能である、
方法。」
で一致し、両者の間に構成上の差異は存在しない。

したがって、本願発明は、引用発明であるといわざるを得ない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-06 
結審通知日 2012-09-13 
審決日 2012-10-22 
出願番号 特願2001-62872(P2001-62872)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 則夫  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 堀川 一郎
川口 真一
発明の名称 制限運転操作を表す方法及びシステム  
代理人 箱田 篤  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  

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