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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D05B
管理番号 1270833
審判番号 不服2011-13754  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-29 
確定日 2013-03-07 
事件の表示 特願2000-358559「押え圧調整装置を備えたミシン及び押え上げ装置を備えたミシン」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 4日出願公開、特開2002-159769〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年11月24日を出願日とする出願であって、平成23年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。その後、平成24年7月2日付けで当審から拒絶理由を通知したところ、平成24年9月3日付けで特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を対象とする手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は、平成24年9月3日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】
ミシン機枠に上下動可能に支承され下端に布押えを装着する押え棒と、
該押え棒に固着される押え棒ホルダと、
該押え棒ホルダを昇降するための操作手段と、
前記押え棒を下方に付勢して押え圧を付与する押えバネと、
前記ミシン機枠に揺動ピンで揺動可能に支持され,一端で前記押えバネを押圧し,他端で位置決め部を有する揺動部材とを備え、
前記操作手段の操作に連携して前記揺動部材の位置決め部を動作させて前記押えバネの押え上げ動作時の押圧力を任意の圧力に調整可能にしたことを特徴とする押え圧調整装置を備えたミシン。」(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

3 当審が通知した拒絶理由
当審が、平成24年7月2日付けで通知した拒絶理由のうち、特許法第29条第2項に関する理由の概要は、以下のとおりである。

「理由1 この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.国際公開第85/04430号
2.特開平5-161771号公報
3.実願昭61-91056号
(実開昭62-202278号)のマイクロフィルム
4.登録実用新案第3057140号公報
5.特開昭62-120883号公報」

4 引用文献の記載事項
当審が通知した拒絶理由に引用された引用文献1(国際公開第85/04430号)には、図面と共に次の記載がある。
a「本発明はミシンの押え金上昇装置に関し、更に詳細にのべると、布地等の被縫製物を針板に対して押え付ける押え金を小さな力で且つ任意の高さ位置に上昇させることができるミシンの押え金上昇装置に関するものである。」(第1ページ第4行?第7行)
b「先ず、第2図を参照すると、本発明に係るミシンの押え金上昇装置の一実施例が示してあり、この装置は押え金100を針板101に向って付勢するばね手段102のばね力を軽減する加圧力軽減機構200と押え金100を持ち上げる押え金駆動機構300と作業者が操作する操作機構400とを含んでいる。
押え金100は押え棒102の下端に枢着されている。この押え棒はミシンのフレーム103に固定された軸受104内に上下方向に摺動自在に支持されている。押え棒の上端にはばね手段102が配置され、押え金100はこのばね手段によって常時針板101の上面に適宜の力で押しつけられている。」(第3ページ第7行?第16行)
c「押え金駆動機構300は図示の実施例ではリンクアセンブリから成る。即ち押え棒102に固定された横杆301とこの横杆に係合し且つ上下方向に移動可能な押え棒上昇杆302とこの押え棒上昇杆に連結された第1のベルクランク303と第2のベルクランク304とオイルパン305に摺動可能に設けられた押え杆306と第1のベルクランク303と第2のベルクランク304とを連結する第1の連結杆307と第2のベルクランク304と押え杆306との間に介在された第2の連結杆308とから成っている。」(第5ページ第3行?第10行)
d「操作機構400は作業者のひざで作動できるようになっている。この操作機構は押え金駆動機構300を作動する操作レバー401と加圧力軽減機構200を作動するスイッチ手段402とを備えている。」(第6ページ第3行?第6行)
e「更に、操作レバー401を反時計方向に回動させると……この第1のベルクランクの回動により押え棒上昇杆302が上方に移動しそのアーム310が横杆301に係合してこの横杆を上方に引き上げる。」(第7ページ第12行?第18行)
f「第4図を参照すると、本発明の更に他の実施例が示してある。この実施例ではばね手段を押えばねと補助ばねの2つから構成することに代えて一つの押えばね600から構成したものである。又、加圧力軽減機構の駆動手段として往復動式のソレノイド601を用いている。このソレノイドはそのシリンダ602がフレーム103の外壁に固定され、ピストンロッド603がこのフレームの外壁を貫通してフレーム内に延びその先端にばね保持体604が設けてある。押えばね600はこのばね保持体604と押え棒102の上端との間に張設されている。
操作機構400が作動されないとき即ちリミットスイッチ402がオイルパン305の下面に接触しているときにはソレノイド601はそのピストンロッド603が延びて第4図に示すように押えばね600を保持している。従って、押えばねの弾性力によって押え金100は針板101に押しつけられる。上述の実施例と同様に操作機構400を作動させると、リミットスイッチ402がオイルパンの下面から離れソレノイド601が励磁され、そのピストンロッド603が上方に移動し押えばねを所定量復元させその弾性力を弱める。従って、押え金100の針板101に対する付勢力は弱められる。
この状態で押え金駆動機構300を駆動すると、押え金を弱い力で且つ任意の高さ位置に上昇させることができる。
尚、上述した実施例におけるソレノイドをエアーシリンダー等に代えることもでき又操作レバーを足踏み式にしてもよい……
本発明によれば、押え金には常に押圧力が作用し、この押え金を上昇させたい時には加圧力軽減機構によりその押圧力を軽減することができるので押え金上昇時の作業者の作業疲労を大幅に軽減できると共に種々の厚さの被縫製物に合わせて押え金を任意の高さに保持できるという利点がある。」(第8ページ第17行?第9ページ第21行)

そして、上記fの記載から、引用文献1に記載された発明においては
、押え金上昇時における押えばね600の押圧力の軽減は、操作機構400の操作に連携して行われると認められる。

以上の記載及び第2図?第4図によれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「フレーム103に上下方向に摺動自在に支持され下端に押え金100を枢着する押え棒102と、
押え棒102に固定される横杆301と、
横杆301を上方に引き上げるための操作機構400と、
押え棒102を針板101に向って付勢して、押圧力を作用させる押えばね600と、
押えばね600を押圧するソレノイド601、シリンダ602、ピストンロッド603及びばね保持体604とを備え、
操作機構400の操作に連携して、ソレノイド601、ピストンロッド603及びばね保持体604を動作させて、押えばね600の押え金上昇時の押圧力を軽減するミシン。」

5 対比
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明の「フレーム103」、「上下方向に摺動自在に支持され」、「押え金100」、「枢着する」、「押え棒102」、「固定される」、「横杆301」、「針板101に向って」、「押圧力を作用させる」、「押えばね600」は、それぞれ本願発明1の「ミシン機枠」、「上下動可能に支承され」、「布押え」、「装着する」、「押え棒」、「固着される」、「押え棒ホルダ」、「下方に」、「押え圧を付与する」、「押えバネ」に相当する。
そして、引用文献1に記載された発明の「横杆301を上方に引き上げるための操作機構400」は、これを作動させないときに横杆301が降下した状態になることを考慮すると、本願発明1の「押え棒ホルダを昇降するための操作手段」に相当する。
また、引用文献1に記載された発明の「押えばね600の押え金上昇時の押圧力を軽減する」は、押えばね600の押圧力を軽減後の押圧力に調整するといえるので、本願発明1の「押えバネの押え上げ動作時の押圧力を調整可能にした」に相当する。
さらに、引用文献1に記載された発明のミシンは、ソレノイド601、ピストンロッド603及びばね保持体604を動作させて、押えバネの押圧力を調整するので、押え圧調整装置を備えているといえる。

そうすると、両者は、
「ミシン機枠に上下動可能に支承され下端に布押えを装着する押え棒と、
押え棒に固着される押え棒ホルダと、
押え棒ホルダを昇降するための操作手段と、
押え棒を下方に付勢して押え圧を付与する押えバネと、
操作手段の操作に連携して、押えバネの押え上げ動作時の押圧力を調整可能にした押え圧調整装置を備えたミシン。」
である点で一致し、次の点で相違する。

《相違点》
本願発明1では、ミシン機枠に揺動ピンで揺動可能に支持され、一端で押えバネを押圧し、他端で位置決め部を有する揺動部材の位置決め部を動作させることで、押えバネの押え上げ動作時の押圧力を任意の圧力に調整可能とするのに対し、引用文献1に記載された発明では、押えバネの押え上げ動作時の押圧力の調整を、ソレノイド601、シリンダ602、ピストンロッド603及びばね保持体604により行う点。

6 相違点の検討
上記相違点について検討する。

当審が通知した拒絶理由に引用された引用文献2(特開平5-161771号公報)の【0009】、【0010】、【図1】には、ミシン機枠に揺動ピン(支点軸14)で揺動可能に支持され、一端で押えバネを押圧し、他端に調節カム15及びステッピングモータ16によって駆動される位置決め部を有する揺動部材(押圧力調節レバー13)によって、押圧力の調整を行うミシンの発明が記載されている。
そして、引用文献1に記載された発明における、ソレノイド601、シリンダ602、ピストンロッド603及び保持体604と、引用文献2に記載された発明における、調節カム15、ステッピングモータ16及び揺動部材とは、押えバネの押圧力を調整する点において作用・機能が共通するものであるので、引用文献1に記載された発明における押えバネの押圧力の調整を、ソレノイド601、シリンダ602、ピストン603及びばね保持体604で行うことに代えて、引用文献2に記載された発明の調節カム15、ステッピングモータ16及び揺動部材により行うことは、当業者が容易になし得たことである。
また、引用文献2に記載された発明の調節カム15、ステッピングモータ16及び揺動部材を用いることで、押えバネの押え上げ動作時の押圧力は「任意の圧力」に調整可能となると認められる。

そして、本願発明1が奏する効果は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-28 
結審通知日 2013-01-08 
審決日 2013-01-21 
出願番号 特願2000-358559(P2000-358559)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (D05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西藤 直人  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
紀本 孝
発明の名称 押え圧調整装置を備えたミシン及び押え上げ装置を備えたミシン  
代理人 岩堀 邦男  

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