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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
管理番号 1270892
審判番号 不服2010-28567  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-17 
確定日 2013-03-04 
事件の表示 特願2007-519155「座標測定機に使用するための測定プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年1月5日国際公開、WO2006/001756、平成20年2月14日国内公表、特表2008-504554〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、2004年(平成16年)6月28日にスウェーデン王国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して、平成17年6月20日にされた国際特許出願である。そして、平成22年8月12日付けで拒絶査定がされ、同年同月17日に査定の謄本が送達された。これに対して、平成22年12月17日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正がされた。その後、平成24年4月25日付けで当審により拒絶の理由が通知され、同年7月26日付けで意見書が提出された。

2.本願に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
座標測定機に使用するための測定プローブであって、座標測定機に接続された基部(1)と、測定チップ・ホルダ(3)と、このホルダによって支持された測定チップ(4)とを有する測定プローブにおいて、
前記測定チップ・ホルダ(3)が少なくとも3つのリジッドな支持体(2)によって前記基部(1)によって支持され、それにより前記支持体(2)が球形の接続部によって前記測定チップ・ホルダ(3)に接続され、また前記支持体(2)は、前記基部(1)に対する前記測定チップ・ホルダ(3)の角度を変更することができるように、該支持体(2)の長さ方向に沿って前記基部(1)に対して移動させることが可能であり、それにより前記支持体(2)は、程度にかかわらず前記基部(1)の前記測定チップ・ホルダ(3)と反対の側に突出することによって、前記基部(1)を貫通すること、および該支持体(2)の長さ方向(L1、L2、L3)に沿って変位することができるように配置されていることを特徴とする測定プローブ。」

3.当審が通知した拒絶の理由
当審が平成24年4月25日付けで通知した拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

「(理由1)
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けことができない。
(理由2)
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物2及び3のそれぞれに記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平3-134501号公報
刊行物2:特開2000-337807号公報
刊行物3:特開平10-213403号公報」

4.刊行物に記載された事項
(1)刊行物1
刊行物1には、以下の記載がある。

ア.第2ページ左下欄第3行から第8行まで
「本発明は、例えば座標測定機用の検出ヘッドであって、検出ピンを担持する部材を備えており、該部材は、複数の案内部を介して三次元の全方向に可動的に支承されていて、そして該部材には変位運動を検出する測定システムが関係付けられている検出ヘッドに関する。」

イ.第4ページ右上欄第10行から右下欄第5行まで
「第1a図ないし第1b図に示された検出ヘッドは、1側面に向かって開口したシリンダ状のケーシング(1)を有しており、同ケーシング内に同心的に同じく不動のリング(2)が装着されている。前記リング(2)からは、周囲に角度的に120°ずらして取付けられた3つの案内部材(20a、20b、20c)がケーシング(1)の開口に向かって突き出ている。各2つの案内部材(20)の内側に向けられた側面は、検出機の縦軸線に沿って空気軸受を介して摺動する案内片(19a、19b、19c)のための直線案内部を構成している。前記案内片(19)は六角形の角柱であって、この場合同3つの案内片(19a?c)の、ケーシング(1)の下面の開口に面した各底面は、検出機の縦軸線に対してある角度で面取りされるとともに、1つの四面体形状の空間を限定している。前記各面には固有の検出ピン支持体(3)が隣接しており、同支持体の上側面はそれに応じて同様に四面体の形状又は六面体の角部の形状を有している。検出ピン支持体(3)は検出ヘッドの固有の可動部材であって、その下側面において検出ピン受容部(13)を担持している。前記検出ピン受容部には検出ピン(11)が交換円板(12)をもって隣接している。…(略)…
直線的に移動する案内片(19a?c)は、リング(2)内に装着された圧力媒体シリンダによって付勢されており、そのピストン(16a?c)は案内片(19a?c)の上側面に取付けられている。各ピストン(16a?c)をシリンダ内壁に対して密封するところのベローズが符号(17a?c)で示されている。」

ウ.第5ページ左上欄第13行から右上欄第2行まで
「案内片(19a?c)のケーシング(1)に面した側面にはガラススケール(15a?c)が接着されており、同ガラススケールは、ケーシング(1)の内側面の対応する走査ヘッド(14a?c)によって走査される。前記3つの長さ測定システム(14a/15a、14b/15b、14c/15c)に基づいて、検出機の縦軸線の方向に沿った案内片(19a?c)の下側における3つの四面体表面の位置が正確に特定される。」

エ.第5ページ右上欄第11行から左下欄第3行まで
「検出過程の途中で検出ピン支持体(3)は工作物と検出ピン(11)との接触により移動せしめられる。この場合検出ピン支持体は、一方では案内片(19a?c)の傾斜面に沿って摺動し、他方では同案内片をその直線案内部に沿って検出機の縦軸線の方向に移動せしめる。これは案内片(19a、19b)における相応の矢印によって示唆されている。測定システム(14a?c/15a?c)は、案内片(19a?c)の前記移動を測定する。この3つの測定値から、検出ピン支持体(3)の位置が、滑り面の傾斜によって与えられた線形関係に対応して常に一義的に算出される。」

オ.第9ページ左上欄第7行から第20行まで
「更に、検出ピン支持体が直線的な運動のみを実施し得るように、案内片の支承部を構成することも必ずしも必要ではない、検出ピンの旋回運動を3つの中間体ないし案内片の直線運動に変換するところの相応の実施例が第6図に示されている。表示を簡素化するために、固定の部材ないし検出ヘッドのケーシングは取り除かれている。
しかしながらケーシング内を直線的かつ平行に移動し得る中間体(59a、b、c)が示されている。この中間体はばね(60a?c)によって基本位置へ付勢されている。中間体(59a、b、c)の運動は、第1?3図に記載されているように、同中間体(59a?c)の測定システムによって検出されよう。」

カ.第9ページ右上欄第1行から第20行まで
「各中間体(59a?c)の端面には、それぞれ1対のシリンダ(58a、58b、58c)が半径方向に沿って埋設されている。前記3つのシリンダ対は検出ピン支持体(55)に軸受を提供している。検出ピン支持体は、120°の間隔で半径方向外側に突出する3本の腕(54a?c)と同腕の端部に取付けられたボール(56a?c)とによって前記シリンダ対に当接している。…(略)…第6図の実施例では、検出ピン(53)の旋回運動に際してもボール(56a?c)は常にシリンダ対(58a?c)と接触し続けるように配慮されている。そのために、関係付けられている付属の中間体(59a?c)に向けてその都度腕(54a?c)を引寄せるところの3つの引張りばね(57a?c)が備えられている。」

キ.第9ページ左下欄第1行から第13行まで
「前記構成は、検出ピン(53)の端部の検出球の位置と中間体(59a?c)の直線移動との一義的な関係を保証しており、この場合に検出ピン(53)の旋回運動は、検出ピン支持体と中間体との間の軸受の幾何学的構造に基づいて同3つの中間体(59a?c)の直線運動に変換される。それゆえ相応の逆算によって、ケーシングに対する中間体(59a?c)の移動量から検出球の位置が、ひいては旋回運動量が確実に求められる。それゆえ公知の切換え検出ヘッドとは対照的に、このような検出ヘッドを用いれば工作物表面の連続的な走査もまた可能である。」

ク.第9ページ左下欄第14行から第10ページ左上欄第13行まで
「第7図の実施例には、受動的に測定する検出ヘッドが示されている。この例では固定のケーシングは符号(61)で示されており、そして同シリンダ状のケーシング内に組込まれた同様に固定のシリンダ状のリング(62)は、検出ピンの軸線に沿って直線的に移動可能な3つの中間体(68a?c)のための案内部を含んでいる。前記中間体(68a?c)は、リング(62)の両側に配置された2つのばね対(70a/71a、70b/71b、70c/71c)によって中心位置に柔軟に保持されている。
中間体(68a?c)は、検出ピン(64)に面する側にそれぞれU字形状のヨーク(69a?c)を担持している。…(略)…
接触過程の間に、前記立方体状の検出ピン支持体(63)はヨーク(69a?c)の間で運動して、同ヨークを、ひいては中間体(68a?c)をも検出ピンの縦軸線に沿って移動せしめる。前記運動は、その他の実施例において説明しているように再び測定システムによって把握され、そして検出ピン(64)における検出線の実際の位置の算出に利用されることになる。」

上記オ.に記載されているように、第6図に示された実施例は、表示が省略されているものの、「固定の部材ないし検出ヘッドのケーシング」を備えており、「中間体(59a、b、c)」は、「ケーシング内を直線的かつ平行に移動し得る」ようになっている。すなわち、第6図に示された実施例も、第1a図及び第1b図に示された実施例の「案内片(19a?c)」を直線移動可能に保持する「不動のリング(2)」(上記イ.からエ.まで参照)や、第7図に示された実施例の「中間体(68a?c)」を直線移動可能に保持する「シリンダ状のリング(62)」(上記ク.参照)に相当する、何らかの「固定の部材」を有しており、その「固定の部材」は、座標測定機に接続されて「中間体(59a、b、c)」を保持していると認められる。
以上の記載と第6図に示された事項とを総合すると、刊行物1には、第6図に示された実施例として、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「座標測定機用の検出ヘッドであって、座標測定機に接続された固定の部材と、検出ピン支持体(55)と、この検出ピン支持体(55)によって支持された検出ピン(53)とを有する検出ヘッドにおいて、
前記検出ピン支持体(55)が3つの中間体(59a、b、c)によって前記固定の部材によって支持され、前記中間体(59a、b、c)が前記検出ピン支持体(55)のボール(56a、b、c)と常に接触し続けるように配慮され、また前記検出ピン(53)が旋回運動できるように、前記中間体(59a、b、c)がその長さ方向に沿って直線移動可能に配置されている検出ヘッド。」

(2)刊行物2
刊行物2には、以下の記載がある。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、閉リンク機構を並列に連結したパラレルメカニズムにおける運動の精度を向上させる運動誤差補正方法およびその装置に関する。」

イ.段落0007及び0008
「【0007】本発明が導かれた一連の研究で、パラレルメカニズムを用いた新しい三次元座標測定器(以下パラレルCMMと言う)を提案してきた。…(略)…以下、図2?図4によって、本発明をなすに至ったパラレルメカニズムにおけるジョイントの回転誤差が機構の運動誤差に及ぼす影響を調べるため微小運動学を用いた誤差解析について以下に述べる。
【0008】<解析方法>先ず、図2に示すように、プローブチップ8が設置されたステージ4上の回転ジョイント3-4、3-5、3-6の回転誤差を、…(略)…に分解し、ベース1面上の球面ジョイント3-1、3-2、3-3の回転誤差を、…(略)…とする。」

ウ.段落0013
「【0013】以上の知見に基づき、図1に示すような本発明のパラレルメカニズムの運動誤差補正方法を実現した機構装置を作製した。図1(A)は一般的な6自由度のパラレルメカニズムであり、ベース1とアクチュエータにより伸縮可能なストラット2は球面ジョイント3により連結され、各球面ジョイント3はXYZ軸回りの3つの回転自由度を有する。ストラット2の他端には同様の球面ジョイント3を介してステージ4が連結される。このように構成された6自由度のパラレルメカニズムは、6本のストラット2を伸縮させることによりステージ4を6自由度方向(並進3方向、回転3方向)へ運動させることが可能となる。」

エ.段落0017
「【0017】図6(当審注:「図9」の誤り。)は本発明のパラレルメカニズムの運動誤差補正装置の第3実施の形態を示すもので、本実施の形態は3自由度パラレルメカニズムに採用された例である。このものはステージ4側の回転ジョイント7の回転自由度は1で、ベース1側の球面ジョイント3の回転自由度は3とされる。本実施の形態のものも、ステージ4側の回転ジョイント7のみならず、ベース1側の球面ジョイント3においてもストラット2の伸縮方向の誤差のみを変位センサーにて測定するように構成するだけでよいので、本来ならステージ4側に15個、ベース1側に9個の合計24個の回転誤差測定変位センサーを設置すべきところ、3個ずつ合計6個の変位センサーの設置のみにて済むことになる。」

オ.段落0018
「【0018】以上本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、パラレルメカニズムとしてのベースおよびステージの形状、それらの大きさの比率、アクチュエータであるストラットの形状、形式、本数およびそのベースおよびステージとの位置関係、球面ジョイントの形状、形式、球面ジョイントのベースおよびステージ並びにホルダーへの設置形態、変位センサーの形式および設置形態等については適宜選定できるものである。」

また、図2及び9には、ステージ4が伸縮可能な3本のストラット2によってベース1に支持された構造が示されている。そして、図9に示された構造が3自由度パラレルメカニズムである旨の記載(上記エ.参照)から、3本のストラット2を伸縮させることにより、ベース1に対するステージ4の角度が変更可能であることが分かる。
以上の記載と図2及び9に示された事項とを総合すると、刊行物2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「三次元座標測定器に使用するパラレルメカニズムであって、三次元座標測定器に接続されたベース1と、ステージ4と、このステージ4に設置されたプローブチップ8とを有するパラレルメカニズムにおいて、
前記ステージ4が伸縮可能な3本のストラット2によって前記ベース1によって支持され、前記3本のストラット2のそれぞれは、球面ジョイント3によって前記ベース1に接続され、回転ジョイント7によって前記ステージ4に接続され、また前記ストラット2は、前記ベース1に対する前記ステージ4の角度を変更することができるように、伸縮させることができるパラレルメカニズム。」

(3)刊行物3
刊行物3には、以下の記載がある。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複雑な形状を持つ機械部品等の三次元形状の精密測定において使用される三次元座標測定装置に係る。」

イ.段落0007
「【0007】なお、ベースプレートに対するエンドプレートの相対的な三次元位置を調整するために、上記の構成ではいずれも移動軸を使用しているが、これに代わって、伸縮制御が可能な少なくとも3本のリンク部材を用いてエンドプレートをベースプレートに対して接続した他の構造(パラレルメカニズムと呼ばれる)を使用してもよい。」

ウ.段落0008から0011まで
「【0008】
【発明の実施の形態】
(例1)図1及び図2に、本発明の実施の形態の一例を示す。図1は、測定プローブが搭載されるパラレルメカニズム構造の構成を示し、図2は、測定プローブの先端の三次元位置を検出するためのセンサ類の構成を示す。図中、7は測定対象物、8はベースプレート、9はエンドプレート、6は三自由度の自在継手(第一の自在継手)、5は二自由度の自在継手(第二の自在継手)、11は三自由度の自在継手(第三の自在継手)、1はボールネジなどからなる移動軸、2はボールナットなどを含む駆動部、3は測定プローブ、21は距離センサ、22及び23は角度センサ、24はタッチセンサを表す。
【0009】図1に示す様に、測定プローブ3はセンタシャフト4を備えたパラレルメカニズム構造に搭載され、測定プローブ3の三次元位置が制御される。この例において、パラレルメカニズム構造は、ベースプレート8、エンドプレート9、駆動部2及び移動軸1を備える移動機構、センタシャフト4、自在継手5、6、11などで構成される。エンドプレート9は、ベースプレート8に対して3個の移動機構の移動軸1及び1本のセンタシャフト4を介して連結される。エンドプレート9の前面側(ベースプレート8に対して反対側)には測定プローブ3が取り付けられ、測定プローブ3の先端には後述のタッチセンサ24が取り付けられる。7は測定対象物を表す。
【0010】ベースプレート8は、周縁部の三箇所に二軸回りの傾動が可能な二自由度の自在継手5を備え、中央部に二軸回りの傾動及びセンタシャフト4の軸方向の移動が可能な三自由度の自在継手6を備える。エンドプレート9は、周縁部の三箇所に二軸の傾動及び移動軸1の軸回りの回転が可能な三自由度の自在継手11を備える。ベースプレート8の中央部の自在継手6にはセンタシャフト4が貫通し、センタシャフト4の先端はエンドプレート9の中央に固定されている。ベースプレート8の周縁部の自在継手5の可動コア側には、ボールネジなどからなる移動軸1に軸方向に移動を与えるためのボールナットやこれに回転を与えるモータなどを含む駆動部2が固定され、移動軸1は自在継手5の可動コアの中を貫通している。移動軸1の先端は、自在継手11を介してエンドプレート9の周縁部に接続されている。
【0011】センタシャフト4は回転方向(ネジリ方向)に対して剛性を備えている。駆動部2を駆動して3本の移動軸1のストロークを独立に調整することによって、エンドプレート9を、自在継手6を中心とする同心球面上で任意の位置に移動させることができる。これによって、測定プローブ3の三次元位置が制御される。」

上記ウ.(特に段落0011)には、エンドプレート9を、ベースプレート8の中央部に設けられた自在継手6を中心とする同心球面状で任意の位置に移動させることができる旨の記載があるから、ベースプレート8に対するエンドプレート9の角度を変更可能であることは明らかである。
以上の記載と図1及び2に示された事項とを総合すると、刊行物3には、

「三次元座標測定装置に使用するパラレルメカニズム構造であって、ベースプレート8と、エンドプレート9と、このエンドプレート9に取り付けられた測定プローブ3とを有するパラレルメカニズム構造において、
前記エンドプレート9を3本の移動軸1によって前記ベースプレート8に連結し、前記移動軸1は、前記ベースプレート8に対する前記エンドプレート9の角度を変更することができるように、該移動軸1の長さ方向に沿って前記ベースプレート8に対して移動可能とし、かつ前記ベースプレート8の周縁部を貫通させる。」

という技術事項が記載されている。

5.理由1について
(1)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。
引用発明1の「座標測定機」、「検出ヘッド」、「固定の部材」、「検出ピン支持体(55)」及び「検出ピン(53)」は、それぞれ、本願発明の「座標測定機」、「測定プローブ」、「基部(1)」、「測定チップ・ホルダ(3)」及び「測定チップ(4)」に相当する。
引用発明1の「3つの中間体(59a、b、c)」は、変形が無視できる部材であることが明らかであるから、本願発明の「少なくとも3つのリジッドな支持体(2)」に相当する。
引用発明1の「ボール(56a、b、c)」は、本願発明の「球形の接続部」に相当し、引用発明1の「前記中間体(59a、b、c)が前記検出ピン支持体(55)のボール(56a、b、c)と常に接触し続ける」は、全体として、本願発明の「前記支持体(2)が球形の接続部によって前記測定チップ・ホルダ(3)に接続され」に相当する。
引用発明1の「前記検出ピン(53)が旋回運動できる」は、本願発明の「前記基部(1)に対する前記測定チップ・ホルダ(3)の角度を変更することができる」に相当し、引用発明1の「前記検出ピン(53)が旋回運動できるように、前記中間体(59a、b、c)がその長さ方向に沿って直線移動可能に配置されている」は、全体として、本願発明の「前記支持体(2)は、前記基部(1)に対する前記測定チップ・ホルダ(3)の角度を変更することができるように、該支持体(2)の長さ方向に沿って前記基部(1)に対して移動させることが可能であり、…該支持体(2)の長さ方向(L1、L2、L3)に沿って変位することができるように配置されている」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、

「座標測定機に使用するための測定プローブであって、座標測定機に接続された基部と、測定チップ・ホルダと、このホルダによって支持された測定チップとを有する測定プローブにおいて、
前記測定チップ・ホルダが少なくとも3つのリジッドな支持体によって前記基部によって支持され、それにより前記支持体が球形の接続部によって前記測定チップ・ホルダに接続され、また前記支持体は、前記基部に対する前記測定チップ・ホルダの角度を変更することができるように、該支持体の長さ方向に沿って前記基部に対して移動させることが可能であり、それにより前記支持体は、該支持体の長さ方向に沿って変位することができるように配置されていることを特徴とする測定プローブ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明の「前記支持体(2)は、程度にかかわらず前記基部(1)の前記測定チップ・ホルダ(3)と反対の側に突出することによって、前記基部(1)を貫通する」のに対し、引用発明1の「3つの中間体(59a、b、c)」(本願発明の「支持体(2)」に相当する。)は、「固定の部材」(本願発明の「基部(1)」に相当する。)を貫通するかどうか不明である点。

(2)相違点1についての判断
刊行物1(上記4.(1)ク.参照)には、第7図に示された実施例に関し、「固定のケーシング(61)」内に組み込まれた「固定のシリンダ状のリング(62)」が、直線的に移動可能な「3つの中間体(68a?c)」のための「案内部」を備えていることが記載されている。そして、第7図を参照すれば明らかなように、この「案内部」は、具体的には「固定のシリンダ状のリング(62)」を貫通する穴であり、したがって、その「案内部」に配置された「3つの中間体(68a?c)」は、「固定のシリンダ状のリング(62)」を貫通している。そして、「3つの中間体(68a?c)」は、「検出ピン(64)」を支持する「検出ピン支持体(63)」の運動に伴って直線的に移動する点で、引用発明1の「3つの中間体(59a、b、c)」と一致する。
刊行物1には、引用発明1の「固定の部材」が「3つの中間体(59a、b、c)」をどのように保持しているかについての記載はない。しかし、「3つの中間体(59a、b、c)」は、「検出ピン(53)」を支持する「検出ピン支持体(55)」の運動(旋回運動)に伴って直線的に移動する部材であるから、同じく「検出ピン(64)」を支持する「検出ピン支持体(63)」の運動に伴って直線的に移動する部材である「3つの中間体(68a?c)」に倣って、「3つの中間体(59a、b、c)」を保持する「固定の部材」を貫通する穴を設け、それを「3つの中間体(59a、b、c)」の「案内部」とすることは、当業者が容易に思い付くことである。
その結果、引用発明1において、「3つの中間体(59a、b、c)」(本願発明の「支持体(2)」に相当する。)が「固定の部材」(本願発明の「基部(1)」に相当する。)を貫通し、「検出ピン支持体(55)」(本願発明の「測定チップ・ホルダ(3)」に相当する。)と反対の側に突出することは明らかである。

請求人は、この点について、意見書の(3)で「本願発明で規定したように、リジッドな支持体が貫通可能な基部を使用することによって、リジッドな支持体は正確な案内が可能になる。引例1(当審注:刊行物1)に開示されたデバイス(当審注:引用発明1)の場合、中間体を正確に案内するための他の手段が必要なはずであり、しかしそのような手段はデバイスの重量を増し、それによって測定誤差を引き起こす。にもかかわらず、引例1には中間体の案内がどのように行われるかが開示されておらず、したがってこれらの部品の厚さおよび長さが単なる設計事項であるとの認定は誤りである。この点で、本願請求項1にかかる発明は、引例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。」と主張している。
請求人が主張するとおり、引用発明1には、「3つの中間体(59a、b、c)」を正確に案内するための手段が必要であるが、刊行物1には、その案内がどのように行われるかが記載されていない。しかし、刊行物1には、「3つの中間体(59a、b、c)」と動作が共通する「3つの中間体(68a?c)」を案内するための手段が記載されており、その手段を採用することが当業者にとって困難であるとは認められない。また、その手段とは、具体的には「固定の部材」を貫通する穴を「案内部」とすることであるから、重量の増加という不都合が生じないことは明らかである。
請求人の主張は、採用することができない。

(3)理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明1)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.理由2について
(1)対比
本願発明と引用発明2とを対比すると、以下のとおりである。
引用発明2の「三次元座標測定器」、「パラレルメカニズム」、「ベース1」、「ステージ4」及び「プローブチップ8」は、それぞれ、本願発明の「座標測定機」、「測定プローブ」、「基部(1)」、「測定チップ・ホルダ(3)」及び「測定チップ(4)」に相当する。
引用発明2の「伸縮可能な3本のストラット2」と本願発明の「少なくとも3つのリジッドな支持体(2)」とは、「少なくとも3つの支持体」である点で共通する。したがって、引用発明2の「前記ステージ4が伸縮可能な3本のストラット2によって前記ベース1によって支持され」と、本願発明の「前記測定チップ・ホルダ(3)が少なくとも3つのリジッドな支持体(2)によって前記基部(1)によって支持され」とは、全体として、「前記測定チップ・ホルダが少なくとも3つの支持体によって前記基部によって支持され」る点で共通する。
引用発明2の「前記3本のストラット2のそれぞれは、球面ジョイント3によって前記ベース1に接続され、回転ジョイント7によって前記ステージ4に接続され」と、本願発明の「前記支持体(2)が球形の接続部によって前記測定チップ・ホルダ(3)に接続され」とは、「前記支持体が接続部によって前記測定チップ・ホルダに接続され」る点で共通する。
引用発明2の「伸縮可能な3本のストラット2」の「伸縮」は、当然、その長さ方向におけるものであるから、引用発明2の「前記ストラット2は、前記ベース1に対する前記ステージ4の角度を変更することができるように、伸縮させることができる」と、本願発明の「前記支持体(2)は、前記基部(1)に対する前記測定チップ・ホルダ(3)の角度を変更することができるように、該支持体(2)の長さ方向に沿って前記基部(1)に対して移動させることが可能であり、それにより前記支持体(2)は、程度にかかわらず前記基部(1)の前記測定チップ・ホルダ(3)と反対の側に突出することによって、前記基部(1)を貫通すること、および該支持体(2)の長さ方向(L1、L2、L3)に沿って変位することができるように配置されている」とは、「前記支持体は、前記基部に対する前記チップ・ホルダの角度を変更することができるように、該支持体の長さ方向に沿って駆動可能である」点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明2とは、

「座標測定機に使用するための測定プローブであって、座標測定機に接続された基部と、測定チップ・ホルダと、このホルダによって支持された測定チップとを有する測定プローブにおいて、
前記測定チップ・ホルダが少なくとも3つの支持体によって前記基部によって支持され、それにより前記支持体が接続部によって前記測定チップ・ホルダに接続され、また前記支持体は、前記基部に対する前記測定チップ・ホルダの角度を変更することができるように、該支持体の長さ方向に沿って駆動可能である測定プローブ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点2)
本願発明の支持体である「少なくとも3つのリジッドな支持体(2)」は、「球形の接続部」によって「測定チップ・ホルダ(3)」に接続されるのに対し、引用発明2の支持体である「伸縮可能な3本のストラット2」は、「回転ジョイント7」によって「ステージ4」(本願発明の「測定チップ・ホルダ(3)」に相当する。)に接続される点。

(相違点3)
本願発明の支持体は、「少なくとも3つのリジッドな支持体(2)」であり、その長さ方向に沿った駆動が「該支持体(2)の長さ方向に沿って前記基部(1)に対して移動させる」ことであり、そのために「前記支持体(2)は、程度にかかわらず前記基部(1)の前記測定チップ・ホルダ(3)と反対の側に突出することによって、前記基部(1)を貫通すること、および該支持体(2)の長さ方向(L1、L2、L3)に沿って変位することができるように配置されている」のに対し、引用発明2の支持体は、「伸縮可能な3本のストラット2」であり、その長さ方向に沿った駆動が「伸縮」である点。

(2)相違点2及び3についての判断
ア.相違点2
刊行物2には、球面ジョイントのベース及びステージへの設置形態は適宜選定できる旨の記載がある(上記4.(2)オ.参照)。したがって、引用発明2において、「ストラット2」と「ステージ4」とを、「回転ジョイント7」に代えて「球面ジョイント3」で接続することは、当業者が適宜行い得る事項にすぎない。その結果、引用発明2の支持体である「伸縮可能な3本のストラット2」が「球面ジョイント3」(本願発明の「球形の接続部」に相当する。)によって「ステージ4」(本願発明の「測定チップ・ホルダ(3)」に相当する。)に接続されることは明らかである。

イ.相違点3
引用発明2と刊行物3に記載された技術事項とは、三次元座標測定装置に使用するパラレルメカニズムに関するものである点で共通している。しかも、刊行物3には、この技術事項を、伸縮制御が可能な3本のリンク部材を用いてエンドプレートをベースプレートに接続したパラレルメカニズムに代えて使用することができる旨の記載もある(上記4.(3)イ.参照)。
引用発明2は、伸縮制御が可能な3本のリンク部材(ストラット2)を用いてエンドプレート(ステージ4)をベースプレート(ベース1)に接続したパラレルメカニズムにほかならない。したがって、引用発明2において、「伸縮可能な3本のストラット2」の代わりに、「ベース1」の周縁部を貫通し、その長さ方向に移動可能な3本の移動軸を設けることは、刊行物3に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に思い付くことである。そのようにして設けられた移動軸は、当然、「ベース1」の「ステージ4」と反対の側に突出することになるから、結果として、相違点3の構成が得られることは明らかである。

請求人は、この点について、意見書の(3)で「引例3(当審注:刊行物3)は、パラレルメカニズムに搭載される測定プローブを開示しており(段落0009)、図1に示されるようにその構造は2つのプレート8(ベースプレート)および9(エンドプレート)を互いに平行に維持するようになされ、したがって基部(ベースプレート8)に対する測定チップ・ホルダの角度は決して変わらない。すなわち、引例3において2つのプレート8および9の間の距離は変えることができるが、それらの間の角度は変えることができない。したがって測定プローブ3はベースプレートおよびエンドプレートに対して常に同じ角度である。ベースプレートを通過している移動軸1は、測定チップ・ホルダの角度には影響を与えない。」と主張している。
しかし、上記4.(3)で述べたとおり、刊行物3には、エンドプレート9を、ベースプレート8の中央部に設けられた自在継手6を中心とする同心球面状で任意の位置に移動させることができる旨の記載がある(上記4.(3)ウ.、特に段落0011参照)。したがって、ベースプレート8に対するエンドプレート9の角度を変更可能であることは明らかである。
請求人の主張は、採用することができない。

(3)理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物2に記載された発明(引用発明2)と刊行物3に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上に検討したとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明1)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、刊行物2に記載された発明(引用発明2)と刊行物3に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-09 
結審通知日 2012-10-12 
審決日 2012-10-23 
出願番号 特願2007-519155(P2007-519155)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 康文  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 小林 紀史
山川 雅也
発明の名称 座標測定機に使用するための測定プローブ  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 森 徹  
代理人 吉田 裕  

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