• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1270905
審判番号 不服2012-10315  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-04 
確定日 2013-03-04 
事件の表示 特願2007-297846「電子部品の圧縮成形方法及び金型」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月 4日出願公開、特開2009-124012〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成19年11月16日の出願であって,平成24年4月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2003-133350号公報
2.特開2001-160564号公報」

第3.平成24年6月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成24年6月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の概要
本件補正は,平成23年11月11日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するもので,特許請求の範囲については,補正前に
「【請求項1】
上型と下型とから成る電子部品の圧縮成形用金型を用いて,前記上型に設けた基板供給部に供給セットした基板に装着した電子部品を,前記下型に設けたキャビティ内で前記下型キャビティの形状に対応した樹脂成形体内に圧縮成形する電子部品の圧縮成形方法であって,
前記下型キャビティを所要複数個,設けると共に,前記下型の下方位置に前記したキャビティ底面部材とキャビティ側面部材とを加圧する加圧部材を設ける工程と,
前記所要複数個のキャビティの両端に設けられたキャビティ側面部材と加圧部材との間に第一弾性部材を設け且つ前記所要複数個のキャビティ間に設けたキャビティ側面部材と加圧部材との間に第一弾性部材を設ける工程と,
前記キャビティ底面部材と加圧部材との間に第二弾性部材を設ける工程と,
前記上下両型を型締めする工程と,
前記上下両型を型締時に,前記基板供給部に供給セットした基板の表面に前記キャビティ側面部材の先端面を弾性当接する工程と,
前記上下両型を型締時に,前記各キャビティ内の樹脂に前記基板に装着した電子部品を浸漬する工程と,
前記上下両型を型締時に,前記各キャビティ内の樹脂を所要の加圧力を均等に且つ各別に弾性加圧する工程とを含むことを特徴とする電子部品の圧縮成形方法。
【請求項2】
上型と,前記上型に対向配置した下型と,前記上型の型面に設けられ且つ電子部品を装着した基板を供給セットする基板供給部と,前記基板に装着した所要複数個の電子部品を圧縮成形する圧縮成形用の下型キャビティと,前記下型キャビティの底面に設けられ且つ前記下型キャビティ内の樹脂を所要の加圧力で加圧するキャビティ底面部材と,前記下型キャビティの側面に設けられたキャビティ側面部材と含む電子部品の圧縮成形用金型であって,前記下型キャビティを所要複数個,設けると共に,前記下型の下方位置に前記したキャビティ底面部材とキャビティ側面部材とを加圧する加圧部材を設け,前記所要複数個のキャビティの両端に設けられたキャビティ側面部材と加圧部材との間に第一弾性部材を設け且つ前記所要複数個のキャビティ間に設けたキャビティ側面部材と加圧部材との間に第一弾性部材を設けると共に,前記キャビティ底面部材と加圧部材との間に第二弾性部材を設けたことを特徴とする電子部品の圧縮成形用金型。」
とあるのを,次のとおりに補正するものである。

「【請求項1】
電子部品の圧縮成形用金型を用いて,基板に装着した電子部品を,圧縮成形用キャビティ内で前記キャビティの形状に対応した樹脂成形体内に樹脂封止成形する電子部品の圧縮成形方法であって,
前記金型を,上型と,前記上型に対向した下型とから構成する工程と,
前記下型に前記キャビティを有するキャビティ部材を所要複数個,設ける工程と,
前記上型に前記所要複数個のキャビティに対応した基板供給部を各別に設ける工程と,
前記所要複数個のキャビティのそれぞれを,キャビティ側面部材とキャビティ底面部材とから形成する工程と,
前記下型に設けた下型ベースに装設した下型チェイスホルダと前記キャビティ側面部材との間に第一弾性部材を設ける工程と,
前記下型チェイスホルダと前記キャビティ底面部材との間に第二弾性部材を設ける工程と,
前記下型チェイスホルダを含む下型全体を上動させることにより前記上下両型を所要の型締圧力で型締めする型締加圧機構を用意する工程と,
前記下型と前記上型との間に中間プレートを用意する工程と,
前記中間プレートと前記下型との間に離型フィルムを配置する工程とを含み,
前記上型における所要複数個の基板供給部に,電子部品を装着した基板を各別に供給セットする工程と,
前記中間プレートと前記下型キャビティ側面部材とで前記離型フィルムを挟持する工程と,
前記所要複数個のキャビティを前記離型フィルムにて被覆する工程と,
前記離型フィルムで被覆された所要複数個のキャビティのそれぞれに,溶融樹脂または液状樹脂となる樹脂材料を供給する工程と,
前記型締加圧機構にて前記下型全体を上動させることにより前記上下両型を所要の型締圧力で型締めする工程と,
前記上下両型を型締めするときに,前記上型基板供給部に供給セットした基板の表面に前記離型フィルムを被覆したキャビティ側面部材の先端面を弾性当接する工程と,
前記上下両型を型締めするときに,前記基板供給部に供給セットされた基板に装着した電子部品を,前記キャビティ内で加熱された溶融樹脂または液状樹脂に浸漬する工程と,
前記上下両型を型締めするときに,前記キャビティ底面部材によって,前記キャビティ内で加熱された溶融樹脂または液状樹脂を均等に且つ各別に弾性加圧する工程と,
前記各下型キャビティ内で,前記電子部品を樹脂封止した樹脂成形体を各別に成形する工程とを備えたことを特徴とする電子部品の圧縮成形方法。
【請求項2】
少なくとも,溶融樹脂または液状樹脂を供給した所要複数個のキャビティ内を外気と遮断状態にして外気遮断空間部を形成する工程と,
前記外気遮断空間部から空気を強制的に吸引して排出することにより,前記外気遮断空間部を所要の真空度に設定する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の圧縮成形方法。
【請求項3】
外気遮断空間部を形成するときに,下型側に設けたシール部材と中間プレートとで離型フィルムを挟持する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子部品の圧縮成形方法。
【請求項4】
中間プレートに,下型キャビティ側面部材を各別に遊嵌した状態で挿通する挿通孔を設ける工程と,
前記中間プレートと前記下型キャビティ側面部材とで離型フィルムを挟持するとき,前記挿通孔に対して,前記離型フィルムを被覆した状態で,前記下型キャビティ側面部材を挿通する工程と,
前記上下両型を型締めするときに,前記上型基板供給部に供給セットした基板の表面に前記離型フィルムを被覆したキャビティ側面部材の先端面を弾性当接する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の圧縮成形方法。
【請求項5】
キャビティ内における下型キャビティ底面部材のキャビティ底面に,上型基板供給部に供給セットした基板に装着した電子部品に対応して小キャビティ凹部を各別に設ける工程と,
前記キャビティ底面の小キャビティ凹部の位置に対応して,前記上型基板供給部に供給セットした基板に装着した電子部品の位置を調整する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の圧縮成形方法。
【請求項6】
電子部品を装着した基板を供給セットする基板供給部と,前記基板に装着した電子部品を樹脂封止成形する圧縮成形用のキャビティと含む電子部品の圧縮成形用金型であって,前記金型を上型と前記上型に対向配置した下型とから構成し,前記下型に前記圧縮成形用キャビティを有するキャビティ部材を所要複数個設け,前記所要複数個のキャビティに各別に対応して設けられた所要複数個の基板供給部と,前記下型と前記上型との間に配置される中間プレートと,前記中間プレートと前記下型との間に配置され且つ前記所要複数個のキャビティを覆う離型フィルムとを備え,前記所要複数個のキャビティ部材のそれぞれを各別にキャビティ側面部材とキャビティ底面部材とから構成し,前記上型に設けた上型ベースと,前記下型に設けた下型ベースと,前記下型ベースに装設した下型チェイスホルダと前記キャビティ側面部材との間に設けた第一弾性部材と,前記下型チェイスホルダと前記キャビティ底面部材との間に設けた第二弾性部材と,前記下型全体を上動させることにより前記上下両型を所要の型締圧力で型締めする型締加圧機構とを備えたことを特徴とする電子部品の圧縮成形用金型。
【請求項7】
下型ベースに設けた下型チェスホルダの周囲に装設された下型外気遮断部材と,前記下型外気遮断部材の先端面に設けたシール部材と,前記下型ベースに設けられ且つ上型の周囲に装設される上型外気遮断部材と,前記下型外気遮断部材の先端面に設けたシール部材と,上下両型の型締時に少なくとも圧縮成形用キャビティから空気を強制的に吸引排出する減圧手段とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の電子部品の圧縮成形用金型。
【請求項8】
中間プレートに,圧縮成形用キャビティを有するキャビティを遊嵌した状態で各別に挿通する挿通孔を設けたことを特徴とする請求項6に記載の電子部品の圧縮成形用金型。
【請求項9】
上型の基板供給部に,下型のキャビティ底面に設けた小キャビティ凹部の位置に対応して,前記上型基板供給部に供給セットした基板に装着した電子部品の位置を調整する電子部品位置調整部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の電子部品の圧縮成形用金型。」
上記補正を,以下「本件特許請求の範囲の補正」という。

2.目的要件
特許請求の範囲について,請求項の数を増加する補正は,補正前に「複数の請求項」を引用する形式で記載されていた請求項を,該「複数の請求項」を複数に分けてその各々を引用する複数の請求項に分けて記載する場合や,補正前に発明特定事項が選択的に記載されていた請求項を,該選択肢毎に複数の請求項に分けて記載する場合を除いて,特許請求の範囲の減縮には該当しない。特許庁がホームページで公開する「特許・実用新案審査基準」の「明細書,特許請求の範囲又は図面の補正」にも同趣旨のことが記載されている。
本件特許請求の範囲の補正は,請求項の数を2から9に増加するものであって,上記のような特定の場合には該当しないから,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とはいえない。また,本件特許請求の範囲の補正が誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかである。
また,本件補正後の請求項6が本件補正前の請求項2に由来するとした場合,本件補正後の請求項6には,本件補正前の請求項2で特定されていた技術事項である,基板供給部が「上型の型面に設けられ」る点や,基板(一つの基板の意味と解される)に「所要複数個の電子部品」が装着される点が記載されておらず,本件補正後の請求項6に係る発明は,本件補正前の請求項2に係る発明の下位概念であるとはいえない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反する。

3.独立特許要件
上記のとおり,本件特許請求の範囲の補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないのであるが,仮に,本件特許請求の範囲の補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,本件補正後の請求項6に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく,したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。以下にその理由を述べる。

(1)引用刊行物
1a)本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-156796号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は,IC等の電子部品である半導体チップの樹脂封止成形用金型(トランスファーレス成形用金型)を用いて,基板に装着された所要複数個の半導体チップを樹脂材料にて封止成形(圧縮成形)する電子部品の樹脂封止成形方法,及び,装置の改良に関するものである。」
・「【0014】
さらに,金型5の型面間に供給する離型フィルムを張設して供給するフィルム供給機構ユニット13(以下,フィルムユニット13と示す。),及び,金型5の型面間にシール部材を介在させて樹脂封止成形時に前記金型5を外気遮断状態にして真空引きする真空引き機構ユニット(図示していないが,以下,真空ユニットと示す。)を設けることができるように構成されている。ただし,本実施形態ではフィルムユニット13,真空ユニットを用いずに説明している。つまり,離型フィルム成形,及び/又は,真空引き(減圧)成形を併用実施することができるように構成されている。この離型フィルム成形,真空引き成形を併用実施するような場合,二型5(5a・5b)構造ではなく,図示していないが,中間型を含む三型構造の金型5を用いて,プレス機構6とは別の中間型駆動用の中間型固定機構にて個別に中間型を上下動することが兼用実施できるように構成されている。」
・「【0019】
ここで,図2及び3を用いて,プレスユニット7のプレス機構6,及び,金型5(5a・5b)の構成要素を踏まえて,以下に詳細に説明する。
【0020】
プレス機構6には,上型5aを固定する固定盤29と,下型5bを載置する可動盤30と,固定盤29と可動盤30とを支持する所要複数本(この場合,四本)のポスト31と,ポスト31に沿って可動盤30を上下に摺動させる型締手段32とを設けており,型締手段32では下型5bを載置された可動盤30をポスト31に沿って上下に摺動することができるように構成されている。そして,型締手段32の駆動源となる,例えば,任意のシリンダーやモータ等を可動盤30の下部に形成された空間領域に任意に適宜選択して配置構成されている。
【0021】
上型5aには,成形前基板17のチップ15部分を下方に向けた状態で,上型の金型面(上型面33)の所定位置に二枚の基板14(17・20)を装着固定する基板装着部34と,下型5bには,二枚の基板14の外周囲(樹脂成形体19部分を除く)を各別にクランプするクランプ部材35と,各クランプ部材35を各別に且つ弾性的に摺動させる任意のスプリング等からなる適宜な弾性部材36と,各クランプ部材35と各別にキャビティ37を形成し,且つ,各キャビティ37内の水平面を各別に摺動させる摺動部材38と,各摺動部材38の底面には,図2に示す垂直方向に各別に付設された取付棒39と,各摺動部材38を弾性的に摺動させ,且つ,各取付棒39に巻き付けられた任意のスプリング等からなる適宜な弾性部材40と,を装設して構成されている。さらに,可動盤30には,下型5bに装設された各取付棒39の滑らかな曲線形状部分の先端部41と当接し,且つ,各キャビティ37内に供給された樹脂材料18を各摺動部材38を介して所要の圧力に調整させる調整手段42を装設して構成されている。つまり,調整手段42は,可動盤30と同様に上下動するのに加えて,金型5の型締時に,各摺動部材38が摺動すると,樹脂材料18を各摺動部材38を介して均等な圧力で押圧し且つ調整することにより,二枚の基板14に装着された樹脂成形体19(チップ15・ワイヤ16)部分を,各別に且つ略同時に,均等な圧力で圧縮成形して樹脂封止することができるように構成されている。このような各摺動部材38,及び,調整手段42によれば,図2に示す金型5の型開時に,各摺動部材38の天面(各キャビティ37の水平面)は,所要量の樹脂材料18を供給セットできる最も低い位置(樹脂材料供給位置Q)に待機し,且つ,各弾性部材40にて弾性的に支受して構成される。一方,図3に示す金型5の型締時に,各摺動部材38の天面(各キャビティ37の水平面)は,基板14の樹脂成形体19部分を形成する各キャビティ37を形成する位置(キャビティ形成位置P)まで,各摺動部材38が摺動すると共に,調整手段42によって,均等な圧力で押圧した状態で上動すると略同時に,各樹脂材料18の僅かな増減量に応じて各摺動部材38を介して,僅かに上下動して均等な圧力で調整することができるように構成されている。
従って,この調整手段42によれば,型締手段32の駆動源となるモータ・シリンダー等を必要とせず,可動盤30の空間領域に装設する構成としているので,非常にコンパクトに格納することができるので,本装置1(プレスユニット7)の大型化すること,コスト高になること,等を効率良く防止することができる。
【0022】
ここで,本実施形態の本装置1で,二枚の成形前基板17を二枚の成形済基板20に,各別に且つ略同時に,均等な圧力で圧縮成形して樹脂封止する実施方法を,図2及び図3を用いて,以下に説明する。
【0023】
まず,図2に示すように,上型5aと下型5bとが型開した状態においては,供給機構11で金型5内に供給された二枚の成形前基板17並びに二枚分の樹脂材料18を各別に且つ略同時に,上型面33の所定位置には,各成形前基板17のチップ15側を下方に向けた状態で,基板載置部34に各別に供給セットされると共に,下型の金型面(下型面43)側では,クランプ部材35と摺動部材38とで形成される各キャビティ37に樹脂材料18を各別に供給セットされる。このとき,各クランプ部材35は,各弾性部材36が復元した状態で,下型面43より突出状態で待機すると共に,各摺動部材38は,所要量の樹脂材料18を供給セットできる適宜な最も低い位置(樹脂材料供給位置Q)で,各弾性部材40にて弾性的に支受して待機する。
次に,各成形前基板17を上型面33の所定位置に装着固定した状態で,可動盤30に載置された下型5bが上動すると,各成形前基板17の外周囲を各クランプ部材35が当接する。このとき,各クランプ部材35は,各弾性部材36によって各成形前基板17を弾性的な作用が働かずに当接した状態となる。この状態になるまでに,各キャビティ37内に供給された所要量の樹脂材料18は,金型5全体が加熱溶融化するのに必要な所定温度まで加熱して,各樹脂材料18が加熱溶融化されて溶融樹脂44としておく。
次に,図3に示すように,さらに可動盤30に載置された下型5bが上動して金型5の型締時に,各クランプ部材35は各弾性部材36が縮んだ状態になって,各成形前基板17を弾性的に支受した(クランプした)状態で保持される。一方,各摺動部材38は,基板14の樹脂成形体19部分を形成する各キャビティ37を形成する位置(キャビティ形成位置P)まで摺動すると共に,調整手段42の作用によって,各摺動部材38を介し樹脂材料(溶融樹脂44)を均等な圧力で押圧した状態,図例の左側部分の樹脂材料18(溶融樹脂44)を,図例の左側部分の摺動部材35・取付棒36が僅かに下動すると,図例の左側部分の取付棒36の先端部41と当接する調整手段42が軸支部分を基準にして僅かに下方向に回動する。そして,調整手段42の右側部分が僅かに上方向に回動して僅かに傾斜する。このとき,傾斜した調整手段42と先端部41とで当接する図例の右側部分の取付棒36,及び,摺動部材38が僅かに上動して調整する。つまり,金型5の型締時に,各摺動部材38が摺動すると,樹脂材料18を各摺動部材38を介して均等な圧力で押圧し且つ調整することにより,基板14に装着された樹脂成形体19部分を,各別に且つ略同時に,均等な圧力で圧縮成形して樹脂封止する。
従って,各摺動部材38を摺動した状態で,二枚分の所要量の樹脂材料18に対応して,調整手段42の作用によって,各樹脂材料(溶融樹脂44)を均等な圧力で押圧し且つ調整することができるので,樹脂封止工程を長時間費やすこと,各摺動部材38を従前のクランプ手段にて個別に制御すること,等を効率良く防止することができる。
【0024】
次に,図示していないが,金型5を図3に示す型締状態を保持しながら,各樹脂成形体19部分の溶融樹脂44を硬化するための所要時間経過後に,硬化した各樹脂成形体19(硬化樹脂)が成形されて,最終的に,二枚の成形済基板11(製品)を完成させる。」

上記記載事項及び図面の記載によれば,引用例1には,次の発明が記載されているといえる(以下「引例1発明」という。)。
「固定盤29に固定される上型5a及び可動盤30に載置される下型5bからなる半導体チップの樹脂封止成形用金型であって,上型5aには,二枚の基板を装着固定する基板載置部34が装設され,下型5bには,二枚の基板の外周囲を各別にクランプするクランプ部材35と,該クランプ部材35とともに各別にキャビティ37を形成する摺動部材38とが装設され,各クランプ部材35は,弾性部材36により,下型5bに対して弾性的に摺動するように構成され,各摺動部材38は,その底面に付設された取付棒39に巻き付けられた弾性部材40により,下型5bに対して弾性的に摺動するように構成され,各取付棒39の先端部と当接する調整手段42が可動盤30に設けられているもので,上型5aと下型5bとが型開した状態において,二枚の成形前基板をチップ側を下方に向けた状態で各基板載置部34に供給するとともに,樹脂材料を各キャビティ37に供給し,金型全体を加熱して各キャビティ37内の樹脂材料を加熱溶融し,次に,下型5bを上動すると,まず,各成形前基板の外周囲に各クランプ部材35が当接し,さらに下型5bを上動すると型締めがなされ,各弾性部材36が縮んだ状態になって各成形前基板が弾性的にクランプされる一方,各摺動部材38がキャビティ形成位置まで摺動し,調整手段42の作用によって,各摺動部材38を介して各キャビティ37内の溶融樹脂を均等な圧力で押圧し,基板に装着された樹脂成形体部分を圧縮成形して樹脂封止をすることができるようにした半導体チップの樹脂封止成形用金型。」

1b)前置報告書で引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-305954号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
上型と該上型に対向配置した下型と前記上型と下型との間に配置した中間型との三型の構成を備えた樹脂封止成形用金型,および,少なくとも前記下型側に設けたキャビティ面を含む成形金型面の上面側と中間型の下面側とに被覆して張設する離型フィルムを用いると共に,前記した中間型と前記下型側に設けた離型フィルム用の狭持部材とで前記離型フィルムを狭持した状態で少なくとも前記下型キャビティ面を被覆し,更に,この状態で,前記上型と中間型とを型締めし,且つ,前記上型と中間型との間に外気遮断形成用のシール部材を介在させることによって,外気遮断空間部を形成して当該空間部内を真空引きした状態で,基板に装着される光素子を前記離型フィルムを被覆して形成されたキャビティ空間部内に嵌入させ,且つ,前記キャビティ空間部内に供給した加熱溶融化された樹脂材料にて前記光素子を封止成形する光素子の樹脂封止成形方法であって,
前記離型フィルムを前記成形金型面に被覆する際に,前記下型と中間型とを上下方向へ嵌装させて,前記下型キャビティ面の上面側と中間型の下面側とに前記離型フィルムを張設し,更に,この状態で,前記下型キャビティ面の外周囲となる該下型と中間型との間にキャビティ部材を嵌入させることによって,少なくとも前記した下型キャビティ面とキャビティ部材により構成されるキャビティ面とを含むキャビティ全面の形状に沿って,前記離型フィルムをフィットさせることを特徴とする光素子の樹脂封止成形方法。」

(2)対比・判断
本願補正発明と引例1発明とを対比する。
引例1発明の「半導体チップ」,「基板載置部34」,「キャビティ37」,「上型5a」,「下型5b」,「クランプ部材35」,「弾性部材36」,「弾性部材40」,「樹脂封止成形用金型」は,それぞれ本願補正発明の「電子部品」,「基板供給部」,「キャビティ」,「上型」,「下型」,「キャビティ側面部材」,「第一弾性部材」,「第二弾性部材」,「圧縮成形用金型」に相当し,引例1発明の「摺動部材38」及び「取付棒39」は,本願補正発明の「キャビティ底面部材」に相当する。
引例1発明が本願補正発明でいう「型締加圧機構」を備えることは明らかである。
したがって,本願補正発明と引例1発明は,本願補正発明の表記にできるだけしたがえば,
「電子部品を装着した基板を供給セットする基板供給部と,前記基板に装着した電子部品を樹脂封止成形する圧縮成形用のキャビティと含む電子部品の圧縮成形用金型であって,前記金型を上型と前記上型に対向配置した下型とから構成し,前記下型に前記圧縮成形用キャビティを有するキャビティ部材を所要複数個設け,前記所要複数個のキャビティに各別に対応して設けられた所要複数個の基板供給部を備え,前記所要複数個のキャビティ部材のそれぞれを各別にキャビティ側面部材とキャビティ底面部材とから構成し,前記下型と前記キャビティ側面部材との間に設けた第一弾性部材と,前記下型と前記キャビティ底面部材との間に設けた第二弾性部材と,前記下型全体を上動させることにより前記上下両型を所要の型締圧力で型締めする型締加圧機構とを備えた電子部品の圧縮成形用金型。」
の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は,下型と上型との間に配置される中間プレートと,該中間プレートと下型との間に配置され且つ複数個のキャビティを覆う離型フィルムを備えるのに対して,引例1発明は,中間プレートと離型フィルムを備えていない点。
[相違点2]
本願補正発明は,上型に設けた上型ベース,下型に設けた下型ベース及び下型ベースに装設した下型チェイスホルダを備え,第一弾性部材は該下型チェイスホルダとキャビティ側面部材との間に,第二弾性部材は該下型チェイスホルダとキャビティ底面部材との間にそれぞれ設けられるのに対して,引例1発明は,上型ベース,下型ベース及び下型チェイスホルダを特に備えておらず,弾性部材36は単に下型5bとクランプ部材35との間に,弾性部材40は単に下型5bと取付棒39との間にそれぞれ設けられている点。

相違点1について検討する。
引用例2には,光素子の樹脂封止成形方法であって,上型と下型との間に中間型を配置した樹脂封止成形用金型と,下型側に設けた複数のキャビティ面を含む成形金型面の上面側と中間型の下面側とに被覆して張設する離型フィルムを用いる技術が記載されている。この「光素子」,「中間型」は,それぞれ本願補正発明の「電子部品」,「中間プレート」に相当するものである。相違点1は,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
なお,引用例1の段落【0014】には,離型フィルム成形を併用実施する場合,中間型を含む三型構造の金型を用いることが記載されており,引例1発明に引用例2に記載された技術を適用する動機付けは,引用例1に明確に記載されている。
相違点2について検討する。
本願補正発明の上型ベースは,上型と一体の部材であり(上型の一部ということもできる),同じく下型ベース及び下型チェイスホルダは,下型と一体の部材であり(下型の一部ということもできる),それらの形状等が特定されているものでもない。そうすると,相違点2に係る本願補正発明の構成は,上型や下型を単に複数の部材から構成したという程度のものに過ぎず,当業者が必要に応じてなし得た程度の事項に過ぎないというべきである。
以上のことから,本願補正発明は,引例1発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて,その出願前に,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.小括
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また,仮に,本件補正が特許法第17条の2第5項の規定に適合するものであるとしても,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項2に係る発明は,平成23年11月11日付けで補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)。

第5.引用刊行物
1.原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-133350号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】キャビティ凹部がマトリクス状に形成されたモールド金型のパーティング面がリリースフィルムにより覆われ,該リリースフィルムに覆われたキャビティ凹部にシート状樹脂が供給され,半導体チップが前記キャビティ凹部と同配置のマトリクス状に搭載された被成形品が搬入されて,前記モールド金型によりクランプして圧縮成形されることを特徴とする樹脂封止装置。」
・「【請求項4】前記キャビティ凹部の底部を構成するキャビティブロックは,前記モールド金型をクランプした後,更に上動可能に設けられていることを特徴する請求項1,2又は3記載の樹脂封止装置。
【請求項5】前記キャビティブロックは,弾性体を介して支持されていることを特徴とする請求項4記載の樹脂封止装置。」
・「【0008】先ず,樹脂封止装置の概略構成について図1?図4を参照して説明する。図1において,1はモールド金型であり,上型2と下型3とを有する。下型3にはキャビティ凹部4がマトリクス状に形成されており,上型2及び下型3のパーティング面はリリースフィルム5により覆われている(図1では上型2側のリリースフィルム5を省略した)。この下型3の各キャビティ凹部4にはシート状樹脂6が供給され,半導体チップ7がキャビティ凹部4と同配置のマトリクス状に搭載された回路基板8が,半導体チップ7をキャビティ凹部4に向けて搬入され,下型3と上型2とでクランプされて圧縮成形される。本実施例では,半導体チップ7のチップ電極部が回路基板8のチップパッドと4方向にワイヤボンディング接続されており,ゲート・ランナを配置するスペースのない場合について例示する。尚,半導体チップ7ははんだバンプなどにより回路基板8にフリップチップ接続され,マトリクス状に配置されているものでも良い。
【0009】シート状樹脂6は,例えばパッケージに応じて最適に計量カットされた状態でトレー9に積層収容されている。このシート状樹脂6は樹脂用ローダー10により最上側のものから一括して吸着保持されて図1の矢印Aに示すように,下型3の各キャビティ凹部4内に搬入される。また,回路基板8は,半導体チップ7を下側に向けて下型3に搬入される。尚,本実施例では,回路基板8を図示しない基板搬送機構により下型3に搬入しているが,上型2側のリリースフィルム5を省略する場合には,図1の矢印Bに示すように基板搬送機構により搬送された回路基板8を上型2のパーティング面に吸着保持するようにしても良い。」
・「【0011】図3において,下型3にはキャビティ凹部4がマトリクス状に形成されたキャビティプレートを有している。キャビティプレートには,キャビティ凹部4を形成する仕切りブロック13,エンドブロック14などが設けられている。また,上端側が各キャビティ凹部4の底部を構成するキャビティブロック15が,キャビティプレートに嵌め込まれるように設けられている。各キャビティブロック15の下端側は,支持プレート16に弾性体の一例であるスプリング17を介して各々支持されている。支持プレート16は電動モータ18により回転駆動されるねじ軸19に連繋しており,該電動モータ18を所定方向に起動することでキャビティブロック15は上下動可能に設けられている。
【0012】モールド金型1をクランプした後,電動モータ18を起動させてキャビティブロック15のみをさらに上動させて,キャビティ凹部4に充填された封止樹脂6を押圧して残留エアーを追い出して圧縮成形される。」

上記記載事項及び図面の記載によれば,引用例3には,次の発明が記載されているといえる(以下「引例3発明」という。)。
「上型2と下型3を有するモールド金型による樹脂封止装置であって,下型3は,キャビティ凹部4がマトリクス状に形成されたキャビティプレートを有し,該キャビティプレートは,キャビティ凹部4を形成する仕切りブロック13とエンドブロック14を備え,上端側が各キャビティ凹部4の底部を構成するキャビティブロック15が該キャビティプレートに嵌め込まれるように設けられ,各キャビティブロック15の下端がスプリング17を介して支持プレート16に各々支持され,支持プレート16は電動モータ18により回転駆動されるねじ軸19に連繋し,電動モータ18を起動することでキャビティブロック15が上下動可能に設けられているもので,各キャビティ凹部4にシート状樹脂6を供給し,半導体チップ7がキャビティ凹部4と同配置のマトリクス状に搭載された回路基板8を搬送して上型2のパーティング面に吸着保持した後,モールド金型をクランプし,電動モータ18を起動してキャビティブロック15のみをさらに上動させて,キャビティ凹部4に充填された封止樹脂を押圧して圧縮成形するようにした樹脂封止装置。」

2.原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-160564号公報(以下「引用例4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は,モールド金型のキャビティ凹部に応じた金型面に被成形品を搬入すると共に封止樹脂を供給してこれらをクランプして加熱しながら圧縮成形する樹脂封止装置に関する。」
・「【0010】図1において,樹脂封止装置の全体構成について説明する。1はモールド金型であり,図示しない駆動機構により上下に移動可能な上型2と固定された下型3とを備えている。このモールド金型1は,上型2を上動させて型開きした状態で被成形品4を下型3へ搬入され封止樹脂5が供給された後で,上型2を下動させて型閉じするようになっている。本実施例では,被成形品4は,樹脂基板6上に半導体チップ7が搭載されたものが用いられている。
【0011】上型2を構成する上型プレート8にはキャビティ凹部9が形成されている。上型プレート8は上型取付プレート10に吊りボルト11により吊り下げ支持されている。また,上型プレート8と上型取付プレート10との間には,スプリング12が弾装されている。上型取付プレート10は,上型中間プレート13を介して上型ベースプレート14に一体に固定されている。
【0012】上型ベースプレート14には,キャビティ凹部9の一部をなすキャビティブロック15が可動に支持されている。キャビティブロック15は,その上端側に設けられたフランジ部15aと上型ベースプレート14との間に弾装されたスプリング16により支持されている。キャビティブロック15はスプリング16により下方に付勢されており,上型取付プレート10に形成された係止部10aにフランジ部15aが突き当たって支持されている。また,上型プレート8は,スプリング12により下方に付勢されている。
【0013】したがって,モールド金型1が非クランプ状態ではキャビティブロック15の下端面15bはキャビティ凹部9より上型プレート8側に退避した位置で支持されている。モールド金型1がクランプ状態では,上型プレート8は樹脂基板6に圧接して更に押動されると,スプリング12の付勢力に抗して上型プレート8は上型取付プレート10側に押し戻されるため,キャビティブロック15の下端面15bがキャビティ凹部9と面一となって樹脂圧が印加されるようになっている。」
・「【0018】上記樹脂封止装置の樹脂封止動作について説明すると,図1において,型開きしたモールド金型1の下型3に被成形品4を搬入すると共に該被成形品4上に封止樹脂5を供給する。モールド金型1はヒータ17,18により予めプレヒートされている。次いで,上型2を下動させて被成形品4をクランプする。このとき,先ず,上型プレート8が樹脂基板6に圧接して更に押動されると,スプリング12の付勢力に抗して上型プレート8は上型取付プレート10側に押し戻される。このため,キャビティ凹部9より退避していたキャビティブロック15の下端面15bがキャビティ凹部9と面一となって樹脂圧が印加され,封止樹脂5でキャビティ凹部9が均一に満たされるようになっている。」

第6.対比・判断
本願発明と引例3発明とを対比する。
引例3発明の「上型2」,「下型3」,「半導体チップ7」,「回路基板8」,「キャビティ凹部4」,「キャビティブロック15」,「支持プレート16」,「スプリング17」,「モールド金型」は,それぞれ本願発明の「上型」,「下型」,「電子部品」,「基板」,「下型キャビティ」,「キャビティ底面部材」,「加圧部材」,「第二弾性部材」,「圧縮成形用金型」に相当し,引例3発明の「仕切りブロック13」及び「エンドブロック14」からなる「キャビティプレート」は,本願発明の「キャビティ側面部材」に相当する。
引用発明は,半導体チップ7が搭載された回路基板8を搬送して上型2のパーティング面に吸着保持するものであるから,本願発明における「上型の型面に設けられ且つ電子部品を装着した基板を供給セットする基板供給部」との要件を備える。
したがって,本願発明と引例3発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「上型と,前記上型に対向配置した下型と,前記上型の型面に設けられ且つ電子部品を装着した基板を供給セットする基板供給部と,前記基板に装着した所要複数個の電子部品を圧縮成形する圧縮成形用の下型キャビティと,前記下型キャビティの底面に設けられ且つ前記下型キャビティ内の樹脂を所要の加圧力で加圧するキャビティ底面部材と,前記下型キャビティの側面に設けられたキャビティ側面部材と含む電子部品の圧縮成形用金型であって,前記下型キャビティを所要複数個,設けると共に,前記下型の下方位置に前記したキャビティ底面部材を加圧する加圧部材を設け,前記キャビティ底面部材と加圧部材との間に第二弾性部材を設けた電子部品の圧縮成形用金型。」
の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は,下型の下方位置にキャビティ側面部材を加圧する加圧部材を設け,複数個のキャビティの両端に設けられたキャビティ側面部材と加圧部材との間及び複数個のキャビティ間に設けたキャビティ側面部材と加圧部材との間に第一弾性部材を設けるのに対して,引例3発明は,そのような構成を備えていない点。

上記相違点について検討する。
引用例4には,上下に移動可能な上型2と固定された下型3とを備えた樹脂封止装置のモールド金型であって,上型2を構成する上型プレート8にキャビティ凹部9が形成され,上型プレート8と上型取付プレート10との間にスプリング12が弾装され,キャビティ凹部9の一部をなすキャビティブロック15が,上型取付プレート10と一体の上型ベースプレート14に対して,スプリング16により下方に付勢されつつ可動支持されたものが記載されている。引用例4の「上型プレート8」,「キャビティブロック15」,「スプリング12」,「スプリング16」は,それぞれ本願発明の「キャビティ側面部材」,「キャビティ底面部材」,「第一弾性部材」,「第二弾性部材」に相当し,引用例4の「上型取付プレート10」と「上型ベースプレート14」は,本願発明の「加圧部材」に相当する。
引例3発明は,モールド金型をクランプした状態で,電動モータ18を起動し,支持プレート16とスプリング17を介してキャビティブロック15を上動させてキャビティ凹部14に充填された封止樹脂を押圧するもので,キャビティブロック15を上動させるときは,下型3を上型2に押し付けているものであるところ,下型3の一部であるキャビティプレート(本願発明のキャビティ側面部材に相当)を上型2に押し付けるため,クランプ手段に代えて,キャビティブロック15を上方に向けて加圧する支持プレート16によって弾性部材を介して仕切りブロック13及びエンドブロック14からなるキャビティプレートも上方に向けて加圧するように変更することは,引用例4を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。なお,引用例4では,樹脂封止される基板の金型に対する上下関係が,本願発明及び引例3発明とは逆であるため,上型にキャビティ凹部が形成される等の構成となっている。
したがって,本願発明は,引例3発明及び引用例4に記載された技術事項に基づいて,その出願前に,当業者が容易に発明できたものである。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引例3発明及び引用例4に記載された技術事項に基づいて,その出願前に,当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-12 
結審通知日 2012-12-18 
審決日 2013-01-07 
出願番号 特願2007-297846(P2007-297846)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正井上 由美子  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
発明の名称 電子部品の圧縮成形方法及び金型  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ