ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
---|---|
管理番号 | 1270971 |
審判番号 | 不服2011-21037 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-09-29 |
確定日 | 2013-03-06 |
事件の表示 | 特願2006-130715「電界発光表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月24日出願公開、特開2006-318910〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年5月9日(パリ条約による優先権主張2005年5月11日、2006年4月12日、韓国)の出願であって、平成22年1月29日及び同年11月11日付けで手続補正がなされたが、平成23年5月30日付けで、上記平成22年11月11日付けの手続補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成23年9月29日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 その後、平成24年3月30日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年7月3日付けで回答書が提出された。 また、合議体が上記平成23年9月29日付けの手続補正の補正事項に関連して、平成24年9月7日に電話による求釈明を行ったところ、同年9月18日付けでファクシミリによる釈明が行われた。 第2 平成23年9月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成23年9月29日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項に記載された発明 平成23年9月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。 「基板と、 該基板上の第1電極と第2電極との間に形成された発光部を含む画素回路部と、 前記第2電極と電気的に接続され、前記第2電極の一側端に沿って形成された配線部と、 該配線部上に形成され、前記配線部の一部が露出され、前記第2電極と前記配線部とを電気的に接続するコンタクトホールが形成された絶縁膜と、 前記配線部と交差し、前記第2電極を横切る方向に延長され、前記第2電極上に直接形成されると共に、前記画素回路部の非発光領域に形成され、前記コンタクトホールを通じて露出される前記配線部と前記第2電極を介在して接触する補助共通電極と を含むことを特徴とする電界発光表示装置。」(以下「補正発明」という。) そこで、上記補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.引用刊行物 引用文献1:特開2005-49808号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (a)「【0001】 本発明は平板表示装置に係り、より詳細には広い表示領域が得られ、ライン抵抗が減らせる平板表示装置に関する。」 (b)「【0014】 本発明の他の目的は、駆動電源供給ライン及び電極電源供給ラインなど電源供給ラインのライン抵抗を減らせる平板表示装置を提供することにある。」 (c)「【0041】 図3は、本発明の第1実施例によるアクティブマトリックス型の有機電界発光表示装置の全体的な構成を示す平面図であり、図4は、図3のII-IIに沿う断面図である。そして、図5?図8は、前記アクティブマトリックス型の有機電界発光表示装置のある特定副画素を示す図面である。」 (d)「【0056】 前記EL素子24は、電流の流れによって赤、緑、青の光を発光して所定の画像情報を示すものであって、第2TFT23のドレーン電極234に連結されてこれからプラス電源を供給されるアノード電極241と、全体画素を覆うように備えられてマイナス電源を供給するカソード電極243、及びこれらアノード電極241とカソード電極243間に配置されて発光する有機発光膜242で構成される。 【0057】 アノード電極241は、ITOなどの透明電極で形成され、カソード電極243は基板11の方向に発光する背面発光型の場合、Al/Caなどで全面蒸着して形成し、図4に示されるようなカバー部材12であるガラス基板の方向に発光する前面発光型の場合には、Mg-Agなどの金属によって薄い半透過性薄膜を形成した後、その上に透明なITOを蒸着して形成できる。前記カソード電極243は、必ずしも全面蒸着される必要はなく、多様なパターンに形成されうる。前記アノード電極241とカソード電極243とは互いに位置が反対に積層されることもある。」 (e)「【0078】 図9及び図10は、本発明の望ましい第2実施例によるアクティブマトリックス型の有機電界発光表示装置の構成を示す平面図及び断面図であって、本発明の望ましい第2実施例によるアクティブマトリックス型の有機電界発光表示装置は、その画素など基本的な構成は前述した第1実施例の場合と同じであるので、以下では電源供給ラインの配置について主に説明する。 【0079】 本発明の第2実施例によるアクティブマトリックス型の有機電界発光表示装置は、図9に示されるように、駆動電源供給ライン41と、電極電源供給ライン42とを密封部材13に沿って、基板11と密封部材13間に形成させたものである。この時、前記駆動電源供給ライン41は、駆動電源端子部31から前記密封部材13に沿って延び、密封部材13の一側にはカソード電極243と連結された電極電源供給ライン42が位置する。密封部材13の内側に、表示領域2と密封部材13間には垂直回路部51が配設されている。図9による本発明の第2実施例では、水平回路部52は基板11上に表示せず、カバー部材12に設置するか、または外部ICまたはCOGが水平回路部として使用されるが、必ずしもこれに限定されず、密封部材13の下の基板上に配設することもある。 【0080】 電極電源供給ライン42は、図10に示されるように、第1導電膜421と第2導電膜423によって形成されうるが、前記第1及び第2導電膜421,423と絶縁膜424とは前述した第1実施例の場合と同様に形成できる。すなわち、前記第1導電膜421をゲート電極と同じ材質で形成し、前記第2導電膜423はソース及びドレーン電極と同じ材質で形成したり、前記第1導電膜421を活性層と同一材質で、第2導電膜423をゲート電極またはソース及びドレーン電極と同時に形成したりすることもある。また、前記第1導電膜421をゲート電極またはソース及びドレーン電極と同じ材質で、第2導電膜423をアノード電極と同じ材質で形成できる。この他にも多様な方法によって形成できる。 【0081】 もちろん、このような第1導電膜421と第2導電膜423とは、絶縁膜424に形成された複数のコンタクトホール422によって連通する。 【0082】 一方、カソード電極243は、この電極電源供給ライン42に重なるように延び、このカソード電極243はパッシベーション膜114に形成された複数のコンタクトホール425によって前記電極電源供給ライン42と連通する。」 (f)「【図9】 ![]() 」 (g)「【図10】 ![]() 」 これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「プラス電源を供給されるアノード電極(241)と、全体画素を覆うように備えられてマイナス電源を供給するカソード電極(243)、及びこれらアノード電極とカソード電極間に配置されて発光する有機発光膜(242)で構成されるEL素子(24)を有し、 駆動電源供給ライン(41)と、電極電源供給ライン(42)とを密封部材(13)に沿って、基板(11)と密封部材間に形成させたものであって、 密封部材の一側にはカソード電極と連結された電極電源供給ラインが位置し、 カソード電極は、この電極電源供給ラインに重なるように延び、このカソード電極はパッシベーション膜(114)に形成された複数のコンタクトホール(425)によって前記電極電源供給ラインと連通する有機電界発光表示装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 補正発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「基板」、「アノード電極」、「カソード電極」及び「発光する有機発光膜」は、それぞれ、補正発明の「基板」、「第1電極」、「第2電極」及び「発光部」に相当する。 ここで、引用発明の有機発光膜が基板上のアノード電極とカソード電極との間に形成されていること、及び引用発明が有機発光膜を含む画素回路部を有することは、当業者にとって自明の事項である。 (2)引用発明の「電極電源供給ライン」は補正発明の「配線部」に相当し、引用発明の「カソード電極は、この電極電源供給ラインに重なるように延び」る構成は補正発明の「配線部」が「第2電極の一側端に沿って形成された」構成に相当する。 (3)引用発明の「パッシベーション膜」及び「コンタクトホール」は、それぞれ、補正発明の「絶縁膜」及び「コンタクトホール」に相当し、引用発明の「カソード電極はパッシベーション膜に形成された複数のコンタクトホールによって前記電極電源供給ラインと連通する」構成は、補正発明の「配線部上に形成され」た「絶縁膜」に形成された「コンタクトホール」から「配線部の一部が露出され、第2電極と前記配線部とを電気的に接続する」構成に相当する。 (4)引用発明の「有機電界発光表示装置」は補正発明の「電界発光表示装置」に相当する。 してみると両者は、 「基板と、 該基板上の第1電極と第2電極との間に形成された発光部を含む画素回路部と、 前記第2電極と電気的に接続され、前記第2電極の一側端に沿って形成された配線部と、 該配線部上に形成され、前記配線部の一部が露出され、前記第2電極と前記配線部とを電気的に接続するコンタクトホールが形成された絶縁膜と、 を含む電界発光表示装置。」 の点で一致し、次の点で相違している。 (相違点) 補正発明は「配線部と交差し、第2電極を横切る方向に延長され、第2電極上に直接形成されると共に、画素回路部の非発光領域に形成され、コンタクトホールを通じて露出される配線部と第2電極を介在して接触する補助共通電極」を含むのに対して、引用発明は、そのような補助共通電極を有していない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 上記相違点に係る構成は、請求人の釈明(上記「第1 手続の経緯」参照)によれば、補助共通電極と第2電極であるカソード共通電極が並列接続されることにより、カソード共通電極の面抵抗を減少させるためのもの(ファクシミリによる釈明第2頁12?13行)である。 一方、補正発明や引用発明の属する技術分野において、共通電極の面抵抗を低下させるために補助電極を共通電極上に直接形成させることは、ごく普通に行われている周知技術(特開2001-230086号公報の「補助電極18」、特開2004-281402号公報の「補助電極22」それぞれ参照)である。 また、補助電極を設ける上記目的を考慮すれば、補助電極を共通電極を横切る方向に延長することは、当業者が適宜採用しうる事項(上記各文献参照)である。 さらに、引用文献1には「前記アノード電極241とカソード電極243とは互いに位置が反対に積層されることもある」と記載(上記摘記事項(d)参照)されており、そのような場合に補助電極を画素回路部の非発光領域に形成することは、当業者であれば当然考慮すべき事項である。 してみると、引用発明に上記周知技術を適用し「配線部と交差し、第2電極を横切る方向に延長され、第2電極上に直接形成されると共に、画素回路部の非発光領域に形成される補助共通電極」を設けることは、当業者が容易になし得る事項である。 その場合、補助共通電極がコンタクトホールを通じて露出される配線部と第2電極を介在して接触することは、自明の事項である。 なお、上記相違点に係る構成が「配線部と補助共通電極とが、コンタクトホールを通じて露出される部分で接触する」という意味であると解釈しても、補助電極をコンタクトホール部に位置させるか否かは、種々の要因を総合的に勘案して、当業者が適宜選択しうるもの(必要なら特開2002-215063号公報参照)であり、請求人の上記釈明事項から、補助共通電極とコンタクトホールの位置関係に格別の技術的意味は認められないことから、上記判断に変わりはない。 そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び周知技術に基いて当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.小括 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 平成23年9月29日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成22年11月11日付けの手続補正は平成23年5月30日付けで補正の却下の決定がなされている(上記「第1 手続の経緯」参照)ので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年1月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「基板と、 該基板上の第1電極と第2電極との間に形成された発光部を含む画素回路部と、 前記第2電極と電気的に接続されるように形成された配線部と、 該配線部上に形成され、前記配線部の一部が露出され、前記第2電極と前記配線部とを電気的に接続するコンタクトホールが形成された絶縁膜と、 前記第2電極上に直接形成され、前記コンタクトホールと同一線上に位置する補助共通電極と を含むことを特徴とする電界発光表示装置。」 1.引用刊行物 原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。 2.対比 本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、少なくとも補助共通電極に関して「前記画素回路部の非発光領域に形成され、」という事項を削除することにより拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-26 |
結審通知日 | 2012-10-02 |
審決日 | 2012-10-15 |
出願番号 | 特願2006-130715(P2006-130715) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中山 佳美 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 吉川 陽吾 |
発明の名称 | 電界発光表示装置及びその製造方法 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 曾我 道治 |