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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G01F
管理番号 1271336
審判番号 訂正2012-390170  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2012-12-20 
確定日 2013-03-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4291338号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4291338号に係る明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由
1.手続の経緯
特許第4291338号(請求項の数は1である。)に係る出願は、平成18年5月17日付けで特願2006-137475号として出願されたものであって、平成21年4月10日に特許権の設定登録がなされたものである。


2.請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、特許第4291338号の明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおりに、すなわち、下記(1)?(7)のとおりに訂正することを求めるものである。(下線部は訂正箇所を示す。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「 【請求項1】
被測定流体を流す流路が形成され筒状に形成され該流路に連続するケーシングと、前記ケーシングの中間をケーシング軸直交方向に膨らませる略長円形状に形成して上方に第1計量室を下方に第2計量室を備える計量室と、前記第1計量室と前記第2計量室に所定の間隔をあけて並ぶように配置形成される第1回転子軸と第2回転子軸のそれぞれに回転自在に軸支し前記計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1回転子及び第2回転子とを備え、前記第1回転子及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動するサーボモータと、前記計量室の差圧に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において,
前記第1回転子及び第2回転子を、それぞれ4つの凸部と凹部とを有し、ヘリカル歯車となるように形成され、1つの凸部と凹部が噛み合った状態で互いに反対方向に同期回転するように形成し,
前記第1回転子と第2回転子を跨り前記ケーシングの第1回転子と第2回転子の前記上流側流路と前記下流側流路間を連通して繋ぎ、前記流路の径に比べて十分に小さな径のバイパス管を形成し,
前記サーボ機構を、前記副流量計と、制御回路と、サーボパックと、サーボモータと、減速器とを備えて構成してなり,
前記副流量計は、前記バイパス管の中間に設置し該バイパス管内の被測定流体の流れ及びこの流れの方向を検出するもので、熱式流量計、超音波式流量計、容積式流量計のいずれかからなり,
前記制御回路は、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧の流量信号を前記サーボモータに対するコントローラである前記サーボパックに出力して、該サーボパックを制御するもので,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動する前記サーボモータには、前記減速器が連結されており、前記サーボパックによって該サーボモータを減速制御することにより前記第1回転子又は第2回転子の駆動速度を制御し、
前記サーボパックには、前記サーボモータの回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生する流量発信器が接続されており,
前記副流量計によって前記第1回転子及び第2回転子の上流と下流との圧力差の有無を検出し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御回路において生成された流量信号によって前記サーボモータを駆動し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御目標差圧がゼロになるように前記流量発信器から出力される前記サーボモータの回転数に相当する信号に基づき前記サーボモータを制御して前記容積流量計を最適な状態で作動するようにした
ことを特徴とする副流量計を用いたサーボ型容積流量計。」を
「 【請求項1】
被測定流体を流す流路が形成され筒状に形成され該流路に連続するケーシングと、前記ケーシングの中間をケーシング軸直交方向に膨らませる略長円形状に形成して上方に第1計量室を下方に第2計量室を備える計量室と、前記第1計量室と前記第2計量室に所定の間隔をあけて並ぶように配置形成される第1回転子軸と第2回転子軸のそれぞれに回転自在に軸支し前記計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1回転子及び第2回転子とを備え、前記第1回転子及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動するサーボモータと、前記計量室の差圧に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において,
前記第1回転子及び第2回転子を、それぞれ4つの凸部と凹部とを有し、ヘリカル歯車となるように形成され、1つの凸部と凹部が噛み合った状態で互いに反対方向に同期回転するように形成し,
前記第1回転子と第2回転子を跨り前記ケーシングの第1回転子と第2回転子の前記上流側流路と前記下流側流路間を連通して繋ぎ、前記流路の径に比べて十分に小さな径のバイパス管を形成し,
前記サーボ機構を、前記副流量計と、制御回路と、サーボドライバと、サーボモータと、減速器とを備えて構成してなり,
前記副流量計は、前記バイパス管の中間に設置し該バイパス管内の被測定流体の流れ及びこの流れの方向を検出するもので、熱式流量計、超音波式流量計、容積式流量計のいずれかからなり,
前記制御回路は、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧の流量信号を前記サーボモータに対するコントローラである前記サーボドライバに出力して、該サーボドライバを制御するもので,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動する前記サーボモータには、前記減速器が連結されており、前記サーボドライバによって該サーボモータを減速制御することにより前記第1回転子又は第2回転子の駆動速度を制御し、
前記サーボドライバには、前記サーボモータの回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生する流量発信器が接続されており,
前記副流量計によって前記第1回転子及び第2回転子の上流と下流との圧力差の有無を検出し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御回路において生成された流量信号によって前記サーボモータを駆動し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御目標差圧がゼロになるように前記流量発信器から出力される前記サーボモータの回転数に相当する信号に基づき前記サーボモータを制御して前記容積流量計を最適な状態で作動するようにした
ことを特徴とする副流量計を用いたサーボ型容積流量計。」と訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0007】の
「 【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の副流量計を用いたサーボ型容積流量計は、被測定流体を流す流路が形成され筒状に形成され該流路に連続するケーシングと、前記ケーシングの中間をケーシング軸直交方向に膨らませる略長円形状に形成して上方に第1計量室を下方に第2計量室を備える計量室と、前記第1計量室と前記第2計量室に所定の間隔をあけて並ぶように配置形成される第1回転子軸と第2回転子軸のそれぞれに回転自在に軸支し前記計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1回転子及び第2回転子とを備え、前記第1回転子及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動するサーボモータと、前記計量室の差圧に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において,
前記第1回転子及び第2回転子を、それぞれ4つの凸部と凹部とを有し、ヘリカル歯車となるように形成され、1つの凸部と凹部が噛み合った状態で互いに反対方向に同期回転するように形成し,
前記第1回転子と第2回転子を跨り前記ケーシングの第1回転子と第2回転子の前記上流側流路と前記下流側流路間を連通して繋ぎ、前記流路の径に比べて十分に小さな径のバイパス管を形成し,
前記サーボ機構を、前記副流量計と、制御回路と、サーボパックと、サーボモータと、減速器とを備えて構成してなり,
前記副流量計は、前記バイパス管の中間に設置し該バイパス管内の被測定流体の流れ及びこの流れの方向を検出するもので、熱式流量計、超音波式流量計、容積式流量計のいずれかからなり,
前記制御回路は、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧の流量信号を前記サーボモータに対するコントローラである前記サーボパックに出力して、該サーボパックを制御するもので,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動する前記サーボモータには、前記減速器が連結されており、前記サーボパックによって該サーボモータを減速制御することにより前記第1回転子又は第2回転子の駆動速度を制御し、
前記サーボパックには、前記サーボモータの回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生する流量発信器が接続されており,
前記副流量計によって前記第1回転子及び第2回転子の上流と下流との圧力差の有無を検出し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御回路において生成された流量信号によって前記サーボモータを駆動し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御目標差圧がゼロになるように前記流量発信器から出力される前記サーボモータの回転数に相当する信号に基づき前記サーボモータを制御して前記容積流量計を最適な状態で作動するようにしたことを特徴としている。」を
「 【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の副流量計を用いたサーボ型容積流量計は、被測定流体を流す流路が形成され筒状に形成され該流路に連続するケーシングと、前記ケーシングの中間をケーシング軸直交方向に膨らませる略長円形状に形成して上方に第1計量室を下方に第2計量室を備える計量室と、前記第1計量室と前記第2計量室に所定の間隔をあけて並ぶように配置形成される第1回転子軸と第2回転子軸のそれぞれに回転自在に軸支し前記計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1回転子及び第2回転子とを備え、前記第1回転子及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動するサーボモータと、前記計量室の差圧に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において,
前記第1回転子及び第2回転子を、それぞれ4つの凸部と凹部とを有し、ヘリカル歯車となるように形成され、1つの凸部と凹部が噛み合った状態で互いに反対方向に同期回転するように形成し,
前記第1回転子と第2回転子を跨り前記ケーシングの第1回転子と第2回転子の前記上流側流路と前記下流側流路間を連通して繋ぎ、前記流路の径に比べて十分に小さな径のバイパス管を形成し,
前記サーボ機構を、前記副流量計と、制御回路と、サーボドライバと、サーボモータと、減速器とを備えて構成してなり,
前記副流量計は、前記バイパス管の中間に設置し該バイパス管内の被測定流体の流れ及びこの流れの方向を検出するもので、熱式流量計、超音波式流量計、容積式流量計のいずれかからなり,
前記制御回路は、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧の流量信号を前記サーボモータに対するコントローラである前記サーボドライバに出力して、該サーボドライバを制御するもので,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動する前記サーボモータには、前記減速器が連結されており、前記サーボドライバによって該サーボモータを減速制御することにより前記第1回転子又は第2回転子の駆動速度を制御し、
前記サーボドライバには、前記サーボモータの回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生する流量発信器が接続されており,
前記副流量計によって前記第1回転子及び第2回転子の上流と下流との圧力差の有無を検出し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御回路において生成された流量信号によって前記サーボモータを駆動し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御目標差圧がゼロになるように前記流量発信器から出力される前記サーボモータの回転数に相当する信号に基づき前記サーボモータを制御して前記容積流量計を最適な状態で作動するようにしたことを特徴としている。」と訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0019】の
「 【0019】
サーボ機構4は、副流量計3と、制御回路20と、サーボパック21と、サーボモータ22と、減速器23とを備えて構成されている。このようなサーボ機構4の副流量計3は、バイパス管19の中間に直接又は間接的に取り付けられている(間接的とは、例えば測定管を別途設ける等のことである。尚、取り付け方法は、流量計に対しての公知の方法が採用されるものとする)。」を
「 【0019】
サーボ機構4は、副流量計3と、制御回路20と、サーボドライバ21と、サーボモータ22と、減速器23とを備えて構成されている。このようなサーボ機構4の副流量計3は、バイパス管19の中間に直接又は間接的に取り付けられている(間接的とは、例えば測定管を別途設ける等のことである。尚、取り付け方法は、流量計に対しての公知の方法が採用されるものとする)。」と訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0020】の
「 【0020】
副流量計3は、信号線24を介して制御回路20に接続されている。制御回路20は、信号線25を介してサーボパック21に接続されている。サーボパック21には、信号線26、27を介してサーボモータ22や流量発信器5が接続されている。サーボモータ22には、減速器23が連結されている。サーボモータ22は、減速器23を介在させて直接第1回転子8、或いは第2回転子9、又は上記図示しないパイロット歯車に連結されている。」を
「 【0020】
副流量計3は、信号線24を介して制御回路20に接続されている。制御回路20は、信号線25を介してサーボドライバ21に接続されている。サーボドライバ21には、信号線26、27を介してサーボモータ22や流量発信器5が接続されている。サーボモータ22には、減速器23が連結されている。サーボモータ22は、減速器23を介在させて直接第1回転子8、或いは第2回転子9、又は上記図示しないパイロット歯車に連結されている。」と訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の段落【0022】の
「 【0022】
制御回路20は、副流量計3で生成された流量信号に基づいてサーボパック21を制御するような構成を有している。サーボパック21は、サーボモータ22に対するコントローラであって、ここでは公知のものが用いられている。サーボモータ22の回転数は、サーボパック21を介して流量発信器5に入力されるようになっている。流量発信器5は、サーボモータ22の回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生するように構成されている。」を
「 【0022】
制御回路20は、副流量計3で生成された流量信号に基づいてサーボドライバ21を制御するような構成を有している。サーボドライバ21は、サーボモータ22に対するコントローラであって、ここでは公知のものが用いられている。サーボモータ22の回転数は、サーボドライバ21を介して流量発信器5に入力されるようになっている。流量発信器5は、サーボモータ22の回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生するように構成されている。」と訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0029】の
「【0029】
1 サーボ型容積流量計
2 容積流量計
3 副流量計
4 サーボ機構
5 流量発信器
6 ケーシング
7 計量室
8 第1回転子
9 第2回転子
10 流入口
11 流出口
12 流路
13 第1計量室
14 第2計量室
15 第1回転子軸
16 第2回転子軸
19 バイパス管
20 制御回路
21 サーボパック
22 サーボモータ
23 減速器
24?27 信号線」を
「【0029】
1 サーボ型容積流量計
2 容積流量計
3 副流量計
4 サーボ機構
5 流量発信器
6 ケーシング
7 計量室
8 第1回転子
9 第2回転子
10 流入口
11 流出口
12 流路
13 第1計量室
14 第2計量室
15 第1回転子軸
16 第2回転子軸
19 バイパス管
20 制御回路
21 サーボドライバ 22 サーボモータ
23 減速器
24?27 信号線」と訂正する。

(7)訂正事項7
図面の図1の中の説明における「サーボパック」を、「サーボドライバ」と訂正する。

これら訂正事項1ないし7は、要すれば、明細書、特許請求の範囲及び図面の中の説明において、「サーボパック」とあるのを、「サーボドライバ」と、いずれも訂正するものである。


3.当審の判断
これらの訂正事項について、訂正の適否を検討する。

「サーボパック」は、電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料を指定商品とする登録商標(商標登録第1209257号)であるところ、上記訂正事項1ないし7の各訂正は、登録商標名「サーボパック」を用いていることにより不明瞭となっている記載を、一般名称である「サーボドライバ」に置き換えることによって明瞭とするものである。
よって、上記各訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
また、上記各訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。


4.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
副流量計を用いたサーボ型容積流量計
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量室内に流入する被測定流体を一対の回転子の回転に応じて流出する容積流量計に関し、詳しくは、サーボモータで回転子に駆動力を与えるタイプのサーボ型容積流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
容積流量計は、流路内に設けられる計量室と、この計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の回転子とを備えて構成されている。容積流量計は、回転子の回転から流量を計測するように構成されている。具体的には、計量室と回転子とで形成される容積を基準容積とし、計量室内に流入する被測定流体を回転子の回転に応じて排出しつつ回転子の回転数から流量を求めることができるように構成されている。容積流量計は、直接、体積流量が測定できて精度も高いことから、産業用、取り引き用の流量計として広く使用されている。
【0003】
被測定流体の粘度や密度などの物性値に影響されずに安定した高精度の流量の測定が可能となるように、流量計の流出入口間の圧力損失を正確に検出して、この圧力損失が常にゼロとなるよう回転子に外部からサーボモータで駆動力を与えてやり、このときの回転子の動作回転数から流量を測定するように構成される容積流量計としては、下記特許文献1に開示されるようなサーボ型容積流量計が知られている。このサーボ型容積流量計では、サーボモータの駆動制御を行うサーボ機構の構成に、流量計の流出入口間の圧力差を計測するための差圧計が含まれている。差圧計は、広く一般的に使用されるものが用いられている。
【0004】
ところで、差圧計は、構造上、流量変動に対する応答性(追従性)が良くないという問題点を有している。この問題点を解消するためには、被測定流体(液体)と同じ比重のフリーピストンと、フリーピストンの移動を検知するための光学式センサとを含むサーボ機構を備えるようなサーボ型容積流量計(下記特許文献2参照)にすることが考えられる。
【特許文献1】特許第3331212号公報
【特許文献2】特開昭54-18775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーボ機構に差圧計を含む従来のサーボ型容積流量計は、上記の如く、流量変動に対する応答性が良好でないという問題点を有している。一方、サーボ機構にフリーピストン及び光学式センサを含む従来のサーボ型容積流量計においては、被測定流体が気体である場合に、構造上、計測に用いることができないという問題点を有している。また、被測定流体中に例えば不純物が存在して汚れている場合には、光学式センサの誤検知が発生してしまうという問題点を有している。さらに、光学式センサの光透過に不可欠なガラス窓を有するシリンダを必要とすることから、高温或いは高圧の被測定流体の測定に制限が生じてしまうという問題点を有している。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、気体はもとより高温或いは高圧の被測定流体の測定が可能であり、また、高速応答が可能であり、さらには、被測定流体に汚れがあったとしても高精度に計測をすることが可能な副流量計を用いたサーボ型容積流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の副流量計を用いたサーボ型容積流量計は、被測定流体を流す流路が形成され筒状に形成され該流路に連続するケーシングと、前記ケーシングの中間をケーシング軸直交方向に膨らませる略長円形状に形成して上方に第1計量室を下方に第2計量室を備える計量室と、前記第1計量室と前記第2計量室に所定の間隔をあけて並ぶように配置形成される第1回転子軸と第2回転子軸のそれぞれに回転自在に軸支し前記計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1回転子及び第2回転子とを備え、前記第1回転子及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動するサーボモータと、前記計量室の差圧に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において,
前記第1回転子及び第2回転子を、それぞれ4つの凸部と凹部とを有し、ヘリカル歯車となるように形成され、1つの凸部と凹部が噛み合った状態で互いに反対方向に同期回転するように形成し,
前記第1回転子と第2回転子を跨り前記ケーシングの第1回転子と第2回転子の前記上流側流路と前記下流側流路間を連通して繋ぎ、前記流路の径に比べて十分に小さな径のバイパス管を形成し,
前記サーボ機構を、前記副流量計と、制御回路と、サーボドライバと、サーボモータと、減速器とを備えて構成してなり,
前記副流量計は、前記バイパス管の中間に設置し該バイパス管内の被測定流体の流れ及びこの流れの方向を検出するもので、熱式流量計、超音波式流量計、容積式流量計のいずれかからなり,
前記制御回路は、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧の流量信号を前記サーボモータに対するコントローラである前記サーボドライバに出力して、該サーボドライバを制御するもので,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動する前記サーボモータには、前記減速器が連結されており、前記サーボドライバによって該サーボモータを減速制御することにより前記第1回転子又は第2回転子の駆動速度を制御し、
前記サーボドライバには、前記サーボモータの回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生する流量発信器が接続されており,
前記副流量計によって前記第1回転子及び第2回転子の上流と下流との圧力差の有無を検出し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御回路において生成された流量信号によって前記サーボモータを駆動し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御目標差圧がゼロになるように前記流量発信器から出力される前記サーボモータの回転数に相当する信号に基づき前記サーボモータを制御して前記容積流量計を最適な状態で作動するようにしたことを特徴としている。
【0008】
このような特徴を有する本発明によれば、第1回転子及び第2回転子の上流と下流とに圧力差があると、バイパス管内の被測定流体が上流から下流へ、或いは下流から上流側へ流れる。この時、バイパス管内の被測定流体の流れは、熱式、超音波式、又は容積式いずれかの流量計、すなわち本発明で言う副流量計により計測される。一般的に流量計は流量を計測するためのものであるが、本発明においての副流量計は、第1回転子及び第2回転子の上流と下流とに圧力差が生じているか否かを流れ及びこの流れの向きによって判別するために活用される。本発明によれば、サーボモータの駆動制御に関して、流量計の新たな活用が提案される。
【0009】
尚、上記副流量計の他に、第1回転子及び第2回転子の上流と下流とに圧力差が生じているか否かを判別できるものとして、流速計が挙げられる。流速計を用いる場合には、この流速計により生成される流速信号がバイパス管内の流れ及び流れ方向の判別用の信号となる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された本発明によれば、バイパス管内を流れる被測定流体の流れ及び流れ方向を判別するための熱式、超音波式、又は容積式いずれかの副流量計をサーボ機構に含んでいることから、気体はもとより高温或いは高圧の被測定流体を測定することができる。また、流量変動に対する応答性を高速化することができる。さらに、被測定流体に汚れがあった場合でも高精度に計測をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の副流量計を用いたサーボ型容積流量計の一実施の形態を示す模式的な構成図である。
【0012】
図1において、本発明のサーボ型容積流量計1は、容積流量計2と、本発明の要旨となる副流量計3を含むサーボ機構4と、流量発信器5とを備えて構成されている。以下、本発明のサーボ型容積流量計1の各構成について説明する。
【0013】
容積流量計2は、ケーシング6と、計量室7と、第1回転子8及び第2回転子9とを備えて構成されている。ケーシング6は、略筒状に形成されている。ケーシング6の中間には、計量室7が設けられている。ケーシング6は、図1の場合、左から右へ(矢印方向へ)被測定流体が流れるように形成されている。ケーシング6は、この左端が流入口10、右端が流出口11となっており、また、この内部が流路12となっている。流路12は、被測定流体がスムーズに流れるように形成されている。
【0014】
計量室7は、ケーシング6の中間をケーシング軸直交方向に膨らませるような略長円形状に形成されている。計量室7は、この内部が流路12と連通するように形成されている。ここで、上記ケーシング軸の上方を第1計量室13、下方を第2計量室14と定義すると、第1計量室13には第1回転子軸15が形成されている。また、第2計量室14には、第2回転子軸16が形成されている。第1回転子軸15及び第2回転子軸16は、所定の間隔をあけて並ぶように配置形成されている。このような第1回転子軸15には、第1回転子8が回転自在に軸支されている。また、第2回転子軸16には、第2回転子9が回転自在に軸支されている。
【0015】
第1回転子8及び第2回転子9は、上記の如く、この中心が、対応する第1回転子軸15及び第2回転子軸16によって軸支されている。第1回転子8及び第2回転子9は、本形態において、歯数が4つのヘリカル歯車(一例であるものとする)となるように形成されており、第1回転子8及び第2回転子9が噛み合った状態で回転するようになっている。
【0016】
第1回転子8及び第2回転子9において、計量室7の外部にパイロット歯車(図示省略)を有する場合には、第1回転子8及び第2回転子9は、パイロット歯車の噛合によって互いに反対方向に同期回転するように配置されている。
【0017】
尚、図1では第1回転子8及び第2回転子9の各凸部先端と計量室7の壁内面との間の隙間が広く図示されている。しかしながら、実際には微小な隙間となるように設定されているものとする。図1では便宜上広く隙間が図示されているものとする。
【0018】
ケーシング6には、第1回転子8及び第2回転子9の上流と下流とに跨るバイパス管19が形成されている。バイパス管19は、流路12の径に比べて十分に小さな径で形成されている。本形態のバイパス管19は、計量室7の上流及び下流において流路12に連通するように接続されている(図1中の接続位置は一例であるものとする)。
【0019】
サーボ機構4は、副流量計3と、制御回路20と、サーボドライバ21と、サーボモータ22と、減速器23とを備えて構成されている。このようなサーボ機構4の副流量計3は、バイパス管19の中間に直接又は間接的に取り付けられている(間接的とは、例えば測定管を別途設ける等のことである。尚、取り付け方法は、流量計に対しての公知の方法が採用されるものとする)。
【0020】
副流量計3は、信号線24を介して制御回路20に接続されている。制御回路20は、信号線25を介してサーボドライバ21に接続されている。サーボドライバ21には、信号線26、27を介してサーボモータ22や流量発信器5が接続されている。サーボモータ22には、減速器23が連結されている。サーボモータ22は、減速器23を介在させて直接第1回転子8、或いは第2回転子9、又は上記図示しないパイロット歯車に連結されている。
【0021】
副流量計3は、熱式、超音波式、又は容積式いずれかの公知の流量計であって、第1回転子及び第2回転子の上流と下流とに圧力差が生じているか否かを、バイパス管19内の被測定流体の流れ及びこの流れの向きによって判別するために備えられている。副流量計3は、これにより生成される流量信号がバイパス管19内の流れ及び流れ方向の判別用の信号となるように設定されている。副流量計3は、コスト面、応答性、利便性等を考慮しつつ総合的に考えると、熱式流量計が最も好ましいものと考えている(超音波式流量計等も十分に好ましい)。
【0022】
制御回路20は、副流量計3で生成された流量信号に基づいてサーボドライバ21を制御するような構成を有している。サーボドライバ21は、サーボモータ22に対するコントローラであって、ここでは公知のものが用いられている。サーボモータ22の回転数は、サーボドライバ21を介して流量発信器5に入力されるようになっている。流量発信器5は、サーボモータ22の回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生するように構成されている。
【0023】
上記構成において、第1回転子8及び第2回転子9の上流と下流とに圧力差があると、バイパス管19内の被測定流体が上流から下流へ、或いは下流から上流側へ流れる。この時、バイパス管19内の被測定流体の流れは、副流量計3によって計測される。副流量計3では、流れ及び流れ方向判別用となる流量信号が生成される。本発明のサーボ型容積流量計1は、この生成された流量信号に基づいてサーボモータ22が駆動され、容積流量計2が最適な状態で作動する。
【0024】
以上、図1を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、バイパス管19内を流れる被測定流体の流れ及び流れ方向を判別するための熱式、超音波式、又は容積式いずれかの副流量計3をサーボ機構4に含んでいることから、サーボ機構にフリーピストン及び光学式センサを含む従来のサーボ型容積流量計では測定することができなかった気体も測定することができる。また、本発明によれば、サーボ機構にフリーピストン及び光学式センサを含まないことから、高温或いは高圧の被測定流体を測定することや、被測定流体に汚れがあった場合でも高精度に計測をすることができる。さらに、本発明によれば、サーボ機構に差圧計を含まないことから、流量変動に対する応答性を高速化することができる。
【0025】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0026】
上述の説明では、熱式、超音波式、又は容積式いずれかの公知の流量計が副流量計3となっているが、このような副流量計3の他に、第1回転子8及び第2回転子9の上流と下流とに圧力差が生じているか否かを判別できるものとして、流速計もあることを挙げておくことにする。流速計を用いる場合、この流速計により生成される流速信号がバイパス管内の流れ及び流れ方向の判別用の信号となるものとする。尚、流速計を用いる場合、図1は副流量計3と流速計とが入れ替わるものとする。
【0027】
流速計を用いる場合としては、「流路と、該流路に連続する計量室と、該計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1及び第2回転子とを備え、該第1及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって、前記第1及び第2回転子の上流と下流とに跨るバイパス管と、前記第1又は第2回転子の何れかを駆動するサーボモータと、該サーボモータを制御するサーボ機構とを更に備えるサーボ型容積流量計において、前記サーボ機構は流速計を含んで構成され、該流速計は生成される流速信号が前記バイパス管内の流れ及び流れ方向の判別用の信号となる」ということが特徴になる。流速計を用いたサーボ型容積流量計になり、サーボモータの駆動制御に関して、流速計の新たな活用が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の副流量計を用いたサーボ型容積流量計の一実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 サーボ型容積流量計
2 容積流量計
3 副流量計
4 サーボ機構
5 流量発信器
6 ケーシング
7 計量室
8 第1回転子
9 第2回転子
10 流入口
11 流出口
12 流路
13 第1計量室
14 第2計量室
15 第1回転子軸
16 第2回転子軸
19 バイパス管
20 制御回路
21 サーボドライバ
22 サーボモータ
23 減速器
24?27 信号線
【図面】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体を流す流路が形成され筒状に形成され該流路に連続するケーシングと、前記ケーシングの中間をケーシング軸直交方向に膨らませる略長円形状に形成して上方に第1計量室を下方に第2計量室を備える計量室と、前記第1計量室と前記第2計量室に所定の間隔をあけて並ぶように配置形成される第1回転子軸と第2回転子軸のそれぞれに回転自在に軸支し前記計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1回転子及び第2回転子とを備え、前記第1回転子及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動するサーボモータと、前記計量室の差圧に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において,
前記第1回転子及び第2回転子を、それぞれ4つの凸部と凹部とを有し、ヘリカル歯車となるように形成され、1つの凸部と凹部が噛み合った状態で互いに反対方向に同期回転するように形成し,
前記第1回転子と第2回転子を跨り前記ケーシングの第1回転子と第2回転子の前記上流側流路と前記下流側流路間を連通して繋ぎ、前記流路の径に比べて十分に小さな径のバイパス管を形成し,
前記サーボ機構を、前記副流量計と、制御回路と、サーボドライバと、サーボモータと、減速器とを備えて構成してなり,
前記副流量計は、前記バイパス管の中間に設置し該バイパス管内の被測定流体の流れ及びこの流れの方向を検出するもので、熱式流量計、超音波式流量計、容積式流量計のいずれかからなり,
前記制御回路は、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧の流量信号を前記サーボモータに対するコントローラである前記サーボドライバに出力して、該サーボドライバを制御するもので,
前記第1回転子又は第2回転子のいずれかを駆動する前記サーボモータには、前記減速器が連結されており、前記サーボドライバによって該サーボモータを減速制御することにより前記第1回転子又は第2回転子の駆動速度を制御し、
前記サーボドライバには、前記サーボモータの回転数に係る信号に基づいて、流量に比例したパルスを発生する流量発信器が接続されており,
前記副流量計によって前記第1回転子及び第2回転子の上流と下流との圧力差の有無を検出し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御回路において生成された流量信号によって前記サーボモータを駆動し、前記副流量計によって検出される前記計量室の差圧に基づいて前記制御目標差圧がゼロになるように前記流量発信器から出力される前記サーボモータの回転数に相当する信号に基づき前記サーボモータを制御して前記容積流量計を最適な状態で作動するようにした
ことを特徴とする副流量計を用いたサーボ型容積流量計。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-02-05 
結審通知日 2013-02-07 
審決日 2013-02-19 
出願番号 特願2006-137475(P2006-137475)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (G01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 小林 紀史
中塚 直樹
登録日 2009-04-10 
登録番号 特許第4291338号(P4291338)
発明の名称 副流量計を用いたサーボ型容積流量計  
代理人 小林 保  
代理人 小林 保  

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