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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1271411
審判番号 不服2012-11421  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-19 
確定日 2013-03-14 
事件の表示 特願2006-276258「基板保持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年5月10日出願公開、特開2007-116150〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年10月10日(パリ条約による優先権主張 平成17年10月18日、米国)の出願であって、平成24年3月27日付けで拒絶査定がなされたところ、同査定を不服として同年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2 本願に係る発明
1 本願発明
平成24年6月19日付け手続補正は、本願の請求項1ないし6に係る発明を特定する特許請求の範囲の記載について、明りようでない記載の釈明を目的としてなされたものであって、その補正後の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下とおりのものである。

「基板保持領域を有するCVD用の基板保持装置であって、
基板を載置する基準面を画成する連続面である基板保持面と、
前記基準面より低い底面を有する複数のディンプルと、から成り、
前記複数のディンプルのそれぞれは、前記基板保持面の一部により互いに離隔され、
前記基板保持面は前記基板保持領域の面積の20%またはそれ以下の面積を有する、ところの装置。」

2 引用例
(1)引用例1
ア 引用例1及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平9-232411号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子の製造工程において、CVD工程などで半導体ウェーハ(以下、単にウェーハと記す)を載置するサセプタに関する。」
(1b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】座ぐり面を鏡面仕上げした従来のサセプタを使用すると、ウェーハの反りによって温度ムラが生じ易いという問題点がある。又、物理的吸着や静電吸着により、ウェーハが座ぐり面に密着し、ウェーハの取り外しが困難になるという問題点もある。」
(1c)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のサセプタは、半導体ウェーハを載置する座ぐり面に同一寸法に設計された深さが少なくとも10μmの凹部が規則的に配列されているというものである。」
(1d)「【0011】座ぐり面に規則的に少なくとも10μmの高低差があるのでウェーハがサセプタより部分的に浮いた状態になるので、ウェーハの取り外しが容易となり、ウェーハの加熱ムラはサンドブラスト処理を施したサセプタを使用した時のように緩和される。」
(1e)「【0013】図1(a)は、本発明の一実施の形態を示す平面図、図1(b)は図1(a)のA-A線断面図、図1(c)は座ぐり部の部分拡大平面図、図1(d)は図1(c)のB-B線断面図である。Ni-Cr合金でなるサセプタ本体1の一部に、ウェーハ3を載置する座ぐり面2が設けてある。座ぐり面2には機械的なディンプル加工により、平面形状円形の凹部4が一定ピッチで規則的に設けられている。凹部4の深さは0.1?0.5mm程度の同一寸法に設計されている。凸部5の幅は例えば数百μmとする。ここで深さを0.1?0.5mm程度としたのは、凸部が高くなりすぎると、使用中に破壊され易くなるからである。又、凸部が低くなりすぎると、摩耗により凹凸が失なわれ易く寿命があまり長くできないからである。」
(1f)「【0015】又、ウェーハの取り外しは、吸着面積が小さくサンドブラスト処理したものと同様に容易に行える。」
(1g)「【0017】図2は本実施の形態の変形例を示す平面図である。図2(a)は凹部4どうしが接触したもの、図2(b)は凹部どうしが連結しそれによって凸部5が独立したもの、図2(c)は凹部を千鳥状に配置したものであり、これらのいずれものも使用可能である。」
(1h)「【図1】 【図2】



イ 引用例1に記載された発明の認定
上記(1a)ないし(1h)の記載及び図示内容について検討する。
(ア) 「…本発明は、半導体素子の製造工程において、CVD工程などで半導体ウェーハ(以下、単にウェーハと記す)を載置するサセプタに関する。」((1a)参照)、「…半導体ウェーハを載置する座ぐり面…」((1c)参照)、及び、「…サセプタ本体1の一部に、ウェーハ3を載置する座ぐり面2が設けてある。…」((1e)参照)という記載事項からして、引用例1には、ウェーハを載置する座ぐり面を有する、CVD工程でウェーハを載置するサセプタ、が記載されているといえる。
(イ) また、前述のウェーハを載置する座ぐり面に関連して、「…半導体ウェーハを載置する座ぐり面に同一寸法に設計された深さが少なくとも10μmの凹部が規則的に配列されているというものである。」((1c)参照)、「座ぐり面に規則的に少なくとも10μmの高低差があるのでウェーハがサセプタより部分的に浮いた状態になる…」((1d)参照)、「…座ぐり面2には機械的なディンプル加工により、平面形状円形の凹部4が一定ピッチで規則的に設けられている。凹部4の深さは0.1?0.5mm程度の同一寸法に設計されている。凸部5の幅は例えば数百μmとする。」((1e)参照)と記載され、加えて、【図1】には、座ぐり面2が複数の凹部と、その間に形成された凸部5からなることが図示されている((1h)参照)ことからして、引用例1の座ぐり面には、同一寸法の凹部及び当該凹部相互間の凸部が規則的に配列され、その座ぐり面にウェーハが載置される場合、前記凸部上にウェーハが載置されるように、ウェーハを載置する部分を画成していることは明らかであるといえる。
(ウ) さらに、前記凸部と凹部の配置に関する、「…図2(b)は凹部どうしが連結しそれによって凸部5が独立したもの、図2(c)は凹部を千鳥状に配置したものであり、これらのいずれものも使用可能である。」((1g)参照)という記載、及び、【図2】には、凹部が連結し、凸部が独立した態様を示した「(b)」と、凹部を独立して千鳥状に配置し、凸部が連結している態様を示した「(c)」が図示されている((1h)参照)ことからして、引用例1には、複数の凹部は独立して千鳥状に配置されて、その凹部の間に凸部が連結して形成されることが記載されているといえる。
(エ) ここで、前記凹部及び凸部の作用について検討すると、「座ぐり面を鏡面仕上げした従来のサセプタを使用すると、ウェーハの反りによって温度ムラが生じ易いという問題点がある。又、物理的吸着や静電吸着により、ウェーハが座ぐり面に密着し、ウェーハの取り外しが困難になるという問題点もある。」((1b)参照)、「又、ウェーハの取り外しは、吸着面積が小さくサンドブラスト処理したものと同様に容易に行える。」((1f)参照)という記載事項からして、前記凹部及び凸部は、ウェーハの取り外しを容易にするために設けられたものであるということができる。

これらを総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「ウェーハを載置する座ぐり面を有する、CVD工程でウェーハを載置するサセプタであって、
ウェーハの取り外しを容易にするため、
前記座ぐり面には、同一寸法の複数の凹部が独立して千鳥状に規則的に配置されて、当該凹部相互間に凸部が連結して形成され、
その座ぐり面にウェーハが載置される場合、前記凸部上にウェーハが載置されるように、ウェーハを載置する部分を画成している、サセプタ」

(2)引用例2
ア 引用例2及びその記載事項
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平8-70034号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(2a)「【0014】隆起形状を有する特定の繰返しパターンからなる種々の実施態様が開示されている。各パターンは、ウェハにじかに接触するペディスタルの表面積を減少させる。」
(2b)「【0018】前記ウェハと接触している前記高い領域の表面積は、前記ウェハまたは前記サセプタの表面積よりかなり小さい。前記ウェハに面している前記サセプタの表面積に対する高い領域の面積の割合は、従来技術における実質100%から、実質50%以下まで、一定の構造(in certain configurations )では2%まで減らされる。」
(2c)「【0020】接触面積が非常に小さいと、効果的な熱伝達が、ウェハへのエネルギ流入の散逸を起こすことを妨げることとなる。このときウェハの温度は上昇し、ウェハに熱誘起応力差(differential thermal induced stress )を加え、もって、ウェハを破損する虞れがある。逆に、非常に大きい面積で前記ウェハと接触しており又はウェハに近接していると、そのとき静電固着力は実質上低減せず、前述したウェハの固着に関係する問題が起こるであろう。」

イ 引用例2に記載されている技術的事項の認定
上記(2a)ないし(2c)の記載について検討する。
(ア) 上記(2a)には、ウェハとサセプタとの接触面積に関して、隆起形状を有するパターンを形成することにより、面積を減少せしめることが記載され、上記(2c)の、「…逆に、非常に大きい面積で前記ウェハと接触しており…そのとき静電固着力は実質上低減せず、前述したウェハの固着に関係する問題が起こるであろう。」との記載からして、ウェハのサセプタへの固着に関係する問題を起こさないようにするためには、ウェハとサセプタの接触面積を小さくすべきことを示唆しているといえる。
(イ) そして、小さな接触面積の例示として、上記(2b)には、50%以下、一定の構造では2%まで減少せしめるという例示がなされている。

以上を総合すると、引用例2には、以下の技術的事項(以下「引用例2の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「ウェハとサセプタとの固着に関係する問題を起こさないようにするため、サセプタの表面に隆起形状を有するパターンを形成せしめ、ウェハとサセプタの接触面積を、サセプタの表面積に対して50%以下、一定の構造では2%まで小さく減らすこと」

3 対比
当業者の技術常識に照らして本願発明と引用発明を対比する。
(1)部材、用語の相当関係
引用発明の「ウェーハ」は本願発明の「基板」に相当し、引用発明の「座ぐり面」は「サセプタ」が具備するウェーハを載置する部分であるから、引用発明の「サセプタ」及び「座ぐり面」は、それぞれ、本願発明の「基板保持装置」及び「基板保持領域」に相当するといえる。

(2)引用発明の凹部と凸部について
また、引用発明の座ぐり面に配置、形成されている「凹部」は「凸部」より低い底面を有することは明らかであるし、引用発明は、「その座ぐり面にウェーハが載置される場合、前記凸部上にウェーハが載置されるように、ウェーハを載置する部分を画成している」ことからして、引用発明の凸部は、基板を載置した際の基準面になるといえるから、引用発明の「当該凹部相互間に」「連結して形成され」ている「凸部」は、本願発明の「基板を載置する基準面を画成する連続面である基板保持面」に相当し、引用発明の「複数の凹部」は、本願発明の「基準面より低い底面を有する複数のディンプル」に相当する。そして、引用発明の凹部は、「独立して千鳥状に規則的に配置されて」いて、「当該凹部相互間に凸部が連結して形成され」るのであるから、引用発明の凹部のそれぞれは、凸部によって互いに隔離されていることは明らかであるといえる。したがって、本願発明と引用発明は「複数のディンプルのそれぞれは、前記基板保持面の一部により互いに離隔され」ている点で一致しているといえる。

(3)一致点と相違点
以上の相当関係等からして、本願発明と引用発明は、
「基板保持領域を有するCVD用の基板保持装置であって、
基板を載置する基準面を画成する連続面である基板保持面と、
前記基準面より低い底面を有する複数のディンプルと、から成り、
前記複数のディンプルのそれぞれは、前記基板保持面の一部により互いに離隔される、ところの装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明の基板保持面は、「基板保持領域の面積の20%またはそれ以下の面積を有する」と特定されているのに対し、引用発明の基板保持面(凸部)は、その具体的な面積比率が不明である点(当審注:( )内は対応する引用発明の用語である)。

4 相違点の検討・判断
上記相違点について検討する。
引用発明が、凹部を配置し、当該凹部相互間に凸部を連結して形成したのは、「ウェーハの取り外しを容易にするため」である。そして、その凸部の形成態様は、【図2】に図示され、また【0017】に説明されているとおり(上記2(1)ア(1g)及び(1h)参照)、様々な態様を採用し得るものであって、ウェーハの取り外しは、「吸着面積が小さくサンドブラスト処理したものと同様に容易に行える」ものである(上記2(1)ア(1f)参照)。
そうであるならば、引用発明の凹部と凸部は、サンドブラスト処理した場合同じように吸着面積が小さいといえ、その吸着面積の小ささの程度を定めるにあたり、従来技術を参酌することは通常の事項であるところ、引用例2には、「ウェハとサセプタとの固着に関係する問題を起こさないようにする」という引用発明と同様の観点から、ウェハとサセプタの接触面積を、上記相違点に係る特定範囲を含む、「サセプタの表面積に対して50%以下、一定の構造では2%まで小さく減らす」という技術的事項が開示されている。
ここで、引用例1の【図2】(c)に例示されている連結された凸部が形成された態様について、「…図2(c)は凹部を千鳥状に配置したものであり、…」(上記2(1)ア(1g)参照)と記載され、【図2】(c)の図示内容(上記2(1)ア(1h)参照)を参酌すると、当該「千鳥状に配置」は、各凹部の中心を三角形状に配置することを意味すると解される。そして、引用発明の複数の凹部は「同一寸法」であって「独立して」「規則的に配置され」るものであるから、凹部を上述の千鳥状に最も密に配置した場合の座ぐり面の面積に対する凸部の面積の比率は(2√3-π)/2√3(≒9%)であって、引用発明の凹部の配置は、座ぐり面の面積に対する凸部の面積の比率を20%以下とすることを排除するものではない。
さらに、相違点に係る「20%」なる値の技術的意義について、本願の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌して検討するに、実施例として例示されているウエハ接触率は18%のみである上、【図6】に示されているウエハ接触率に対する吸着率の相関は、当該実施例と、ブラスト加工によってウエハ接触率を変化せしめたサセプタを対比したものにすぎず、ディンプルと当該ディンプルの底面より高い連続面である基板保持面を有するサセプタについて、ウエハ接触率と吸着率の相関を示したものでもないから、当該記載から、前記相違点に係る「20%」なる値の技術的意義を見いだすこともできない。
してみると、相違点2に係る事項によって奏される作用効果は、引用発明及び引用例2の技術的事項から当業者が予測し得る域を出るものではなく、格別のものともいえない。
以上検討のとおりであるから、引用発明に引用例2の技術的事項を適用し、相違点に係る本願発明の発明特定事項を具備せしめるようにすることは当業者が容易になし得たことである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、原査定の理由により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-10 
結審通知日 2013-01-15 
審決日 2013-01-29 
出願番号 特願2006-276258(P2006-276258)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川東 孝至  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 関谷 一夫
松下 聡
発明の名称 基板保持装置  
代理人 堀 明▲ひこ▼  

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