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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1271486
審判番号 不服2011-16721  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-04 
確定日 2013-03-15 
事件の表示 特願2008-531808「送信者の制御による電子メッセージ通知」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月29日国際公開、WO2007/034297、平成21年 3月 5日国内公表、特表2009-509260〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月20日(優先権主張2005年9月21日、米国)を国際出願日とする出願であり、平成22年12月1日付けで拒絶理由が通知され、平成23年3月4日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年4月5日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年8月4日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成23年8月4日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、少なくとも特許請求の範囲の請求項1は、
「送信者端末の動作方法であって、
電子メッセージを生成することと、
前記電子メッセージを、前記電子メッセージのためのメッセージ通知情報と関連付けることと、
移動通信ネットワーク上で受信者端末に伝送可能な信号であって、前記電子メッセージおよび前記メッセージ通知情報を含む信号を生成すること、ただし前記メッセージ通知情報は、前記電子メッセージの受信通知に用いられるデータであって、事前に定義され且つ前記移動通信ネットワーク上で利用可能な遠隔リソースに保存されるデータの参照先に関する情報である、前記生成することと、
を含み、前記信号が前記受信者端末に受信される際、前記電子メッセージの受信通知のために、前記受信者端末において前記メッセージ通知情報が用いられる、方法。」
と補正された。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記メッセージ通知情報」について「ただし前記メッセージ通知情報は、前記電子メッセージの受信通知に用いられるデータであって、事前に定義され且つ前記移動通信ネットワーク上で利用可能な遠隔リソースに保存されるデータの参照先に関する情報である」とするものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうかについて以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-278891号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
(実施の形態1)図1は、本発明に係るメール着信通知システムの構成を示す模式図であり、図中1は本発明に係る携帯電話などの携帯端末装置である。携帯端末装置1は、インタ-ネットなどの通信ネットワーク5から無線で情報を受信する構成となっている。電子メールを送信するメールクライアント装置である送信側クライアント3と、本発明に係る中央装置として機能するメールサーバ2とが通信ネットワーク5に接続しており、メールサーバ2には、公衆回線6を介してメールクライアント装置である受信側クライアント4が接続している。
【0027】図2は、携帯端末装置1の内部の構成を示すブロック図である。携帯端末装置1は、CPU11とRAM13とROM14とを備え、ROM14に記憶してあるプログラムに基づいて、CPU11は携帯端末装置1に必要な処理を実行し、実行の際に発生するデータをRAM13が記憶する。また、携帯端末装置1は、通信部12と、液晶ディスプレイ等の表示部15と、テンキー等の入力部16を備え、通信部12を介して無線にて外部との通信を行い、ユーザの操作により入力部16からデータの入力を受け付け、表示部15は、CPU11の処理の内容又は入力部16から入力されたデータ等の情報を表示し、文字以外に画像を表示することができる。
【0028】ROM14は、携帯端末装置1が販売される時点で既に記録されている、電子メールの着信の通知に使用される複数の画像を記録している画像データ14aと、ユーザによって設定される、電子メールの発信元などの電子メールに関するメール情報と前記画像とを関連づけてある画像設定情報14bを記録している。
【0029】図3は、電子メールに関するメール情報の内容の例を示す概念図である。メール情報の内容は、発信元のアドレス、電子メールのタイトル、又は添付ファイルの有無など、電子メールのヘッダ情報または本文から抽出された情報である。メール情報が含む夫々の情報に対して、画像データ14aに含まれる複数の画像の夫々が、ユーザの操作により関連付けられて設定され、画像設定情報14bに記録される。」(段落【0026】?【0029】)

(イ)「【0038】(実施の形態2)実施の形態2に係る電子メール着信通知システムにおいては、着信の通知に用いる画像を電子メールの送信側が指定する。本実施の形態の電子メール着信通知システムの構成は、図1に示した実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。携帯端末装置1が表示可能な画像の情報を、携帯端末装置1と送信側クライアント3とが共有しており、携帯端末装置1が電子メールの着信を通知するために表示する画像を指定する画像指定情報を、送信側クライアント3が携帯端末装置1へ送信し、携帯端末装置1は、指定された画像を表示する。
【0039】本実施の形態の携帯端末装置1の内部の構成は、図2に示した実施の形態1の構成と同様であり、その説明を省略する。携帯端末装置1のROM14が記憶している画像設定情報14bでは、画像データ14aに含まれる複数の画像を、メール情報と、電子メールの送信側が画像を指定する画像指定情報とに関連づけて設定している。図8は、実施の形態2に係る携帯端末装置1が記憶している画像設定情報14bの内容を示す概念図である。送信側が指定できる画像として、「くま」又は「いぬ」等のキャラクタ画像が設定されており、さらに夫々のキャラクタ毎に「通常」又は「急ぎ」などの複数の表情の画像が設定されている。電子メールの送信側が、キャラクタ及び表情を指定する画像指定情報を送信することで、指定した画像を携帯端末装置1に表示することができる。
【0040】また、メール情報が含む夫々の情報に対して、画像データ14aに含まれる複数の画像の夫々が、ユーザの操作により関連付けられて設定され、画像設定情報14bに記録される。添付ファイルの有無などのメール情報に対して、「手紙」又は「かばん」等の画像が関連付けられている。また、着信の通知の際にユーザ自身を示す自己画像がユーザの操作により、キャラクタ画像の中から選択されて設定され、画像設定情報14bに記録される。図8に示す例では「くま」の画像が設定されている。
【0041】図9は、実施の形態2に係るメールクライアント装置である送信側クライアント3の内部の構成を示すブロック図である。送信側クライアント3は、コンピュータであり、CPU31と、RAM32と、CD-ROMドライブ等の外部記憶装置33と、ハードディスク等の内部記憶装置34とを備えており、本発明に係るCD-ROM等の記録媒体38から本発明のクライアントプログラム39を外部記憶装置33にて読み取り、読み取ったクライアントプログラム39を内部記憶装置34に記憶し、RAM32にクライアントプログラム39をロードし、CPU31はクライアントプログラム39に基づいて本発明のメールクライアント装置に必要な処理を実行する。また、送信側クライアント3は、CRTディスプレイ又は液晶ディスプレイ等の表示部35と、キーボード又はマウス等の入力部36と、通信ネットワーク5に接続する通信部37とを備え、ユーザの入力を受け付ける画面を表示部35に表示し、入力部36にてユーザからの入力を受け付け、通信部37を介して電子メール及び画像指定情報を送信する。
【0042】なお、送信側クライアント3は、通信部37が接続している通信ネットワーク5から本発明のクライアントプログラム39をダウンロードし、ダウンロードしたクライアントプログラム39を内部記憶装置34に記憶し、CPU31にて処理を実行する形態であってもよい。
【0043】図10は、実施の形態2に係る中央装置であるメールサーバ2の内部の構成を示すブロック図である。メールサーバ2は、CPU21と、RAM22と、CD-ROMドライブ等の外部記憶装置27と、ハードディスク等の内部記憶装置23とを備え、本発明に係るCD-ROM等の記録媒体28から本発明の中央プログラム29を外部記憶装置27にて読み取り、読み取った中央プログラム39を内部記憶装置23に記憶し、RAM22に中央プログラム29をロードし、CPU21は中央プログラム29に基づいて本実施の形態の中央装置として必要な処理を実行する。また、メールサーバ2は、電子メールを記憶するメールボックス24と、通信ネットワーク5に接続する第1通信部25と、公衆回線6へ接続する第2通信部26とを備え、送信側クライアント3が送信した電子メールを通信ネットワーク5から受信し、受信した電子メールをメールボックス24に記憶し、ダイヤルアップ接続を利用して公衆回線6を介して接続した受信側クライアント4により電子メールを読み出される。
【0044】また、メールサーバ2は、電子メールに加えて送信側クライアント3が送信した画像指定情報を受信し、携帯端末装置1へメール情報および画像指定情報を送信する。内部記憶装置23は、受信した電子メールの宛先に関連付けられ、メール情報および画像指定情報を送信する携帯端末装置1の宛先を記録した宛先情報23aを記憶している。」(段落【0038】?【0044】)

(ウ)「【0046】図11は、実施の形態2に係る電子メール着信通知システムの処理手順を示すフローチャートである。以下に、図11のフローチャートを用いて処理手順を説明する。携帯端末装置1は、ユーザの操作により、メール情報に関連付けた画像または自己画像の設定を受け付け(S201)、図8に示すごとき画像設定情報14bに受け付けた設定を登録する(S202)。
【0047】送信側クライアント3は、ユーザの操作により、電子メールの入力を受け付ける際に、電子メールの着信を通知するときに使用する画像の指定を受け付ける(S203)。図12は、画像の指定を受け付ける送信側クライアント3の入力画面の例を示す模式図である。送信側クライアント3は、ユーザの操作により、「画像を指定する」の指定を受け付け、「くま」又は「いぬ」等の使用できるキャラクタ画像の中から「いぬ」の指定を受け付け、キャラクタ名として「ぽち」の入力を受け付ける。また、キャラクタ画像の表情として「通常」を受け付ける。次に、送信側クライアント3は、電子メール及び画像指定情報を送信する(S204)。図13は、画像指定情報の内容の例を示す概念図である。ステップS203にて送信側クライアント3が受け付けた、キャラクタ、キャラクタ名および表情などの情報が記録されている。
【0048】本発明の中央装置であるメールサーバ2は、送信側クライアント3から受信側クライアント4宛に送信された電子メール、及び画像指定情報を受信して、電子メール及び画像指定情報の着信を検知し(S205)、宛先情報23aに記録されている、受信側クライアント3(当審注:「受信側クライアント4」の誤記と認められる。)に関連づけられた携帯端末装置1の宛先を検索し(S206)、携帯端末装置1へメール情報及び画像指定情報を送信する(S207)。メール情報の内容は、実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。
【0049】携帯端末装置1は、中央装置が送信したメール情報および画像指定情報を受信し(S208)、受信したメール情報および画像指定情報に関連付けられた画像を、画像設定情報14bから検索し(S209)、検索した画像を画像データ14aから読み出して表示部15に表示する(S210)。図14は、表示部15に画像を表示した携帯端末装置1の例を示す模式図である。指定された「ぽち」という名前の「いぬ」の画像が、自己画像の「くま」に「てがみ」を渡す画像が表示されていることにより、「ぽち」という名の「いぬ」の画像を使用している「×××」を発信元とする電子メールが着信していることが、ユーザは視覚的・直感的に認識することができる。電子メールの着信を確認したユーザは、受信側クライアント4からダイヤルアップ接続を利用して公衆回線6を介してメールサーバ2に接続し、着信している電子メールを読み出す。」(段落【0046】?【0049】)

(エ)「【0050】以上詳述した如く、本実施の形態に係る電子メール着信通知システムは、送信側クライアント3は、電子メールを送信する際に、電子メールの着信を通知する画像を指定する画像指定情報を送信し、本発明に係る中央装置であるメールサーバ2は、メール情報および画像指定情報を携帯端末装置1へ送信し、携帯端末装置1は受信したメール情報および画像指定情報に関連づけて登録してある画像を表示し、電子メールの着信をユーザへ通知する。これにより、電子メールを送信するユーザは、好みのキャラクタ画像を使用することで自己を他から差別化して電子メールの着信を通知させることができる。また、通常の内容の電子メールについては「通常」の表情をしているキャラクタ画像を用い、重要な電子メールについては「急ぎ」の表情をしているキャラクタ画像を用いる等、電子メールの内容などの通知したい情報に対応して画像を選択することにより、通知したい情報を画像で視覚的に認識させることができる。また、電子メールを受信するユーザは、受信側クライアント4からメールサーバ2へ接続することなく、リアルタイムで電子メールの着信を認識することが可能となり、電子メールの発信元または添付ファイルの有無などの情報を視覚的・直感的に認識することができる。
【0051】本実施の形態においては、送信側クライアント3は、コンピュータであるとしたが、携帯端末装置1と同様の、携帯電話またはPDAなどの携帯端末装置であってもよい。」(段落【0050】、【0051】)

以上の記載からみて、引用文献には、実施の形態2に関連して次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「携帯端末装置1は、インタ-ネットなどの通信ネットワーク5から無線で情報を受信する構成となっており、電子メールを送信するメールクライアント装置である送信側クライアント3と、中央装置として機能するメールサーバ2とが通信ネットワーク5に接続しているものであって、
送信側クライアント3は、ユーザの操作により、電子メールの入力を受け付ける際に、電子メールの着信を通知するときに使用する画像の指定、例えば、「画像を指定する」の指定を受け付け、画像データ14aに含まれる「くま」又は「いぬ」等の使用できるキャラクタ画像の中から「いぬ」の指定を受け付け、キャラクタ名として「ぽち」の入力を受け付け、それぞれのキャラクタ画像の表情として「通常」又は「急ぎ」を受け付け、メール情報が含む夫々の情報に対して、ユーザの操作により、例えば、添付ファイルの有無などのメール情報に対して、画像データ14aに含まれる「手紙」又は「かばん」等の画像が関連付けられて画像指定情報に記録され、
次に、送信側クライアント3は、電子メール及び記録された画像指定情報を送信し、
メールサーバ2は、送信側クライアント3から受信側クライアント4宛に送信された電子メール、及び画像指定情報を受信して、電子メール及び画像指定情報の着信を検知し、宛先情報23aに記録されている、受信側クライアント4に関連づけられた携帯端末装置1の宛先を検索し、携帯端末装置1へメール情報及び画像指定情報を送信し、
携帯端末装置1は、メールサーバ2が送信したメール情報および画像指定情報を受信し、受信したメール情報および画像指定情報に関連付けられた画像を画像設定情報14bから検索し、検索した画像を画像データ14aから読み出して表示部15に表示し、例えば、指定された「ぽち」という名前の「いぬ」の画像が、自己画像の「くま」に「手紙」を渡す画像が表示されて「ぽち」という名の「いぬ」の画像を使用している「×××」を発信元とする電子メールが着信していることが、ユーザは視覚的・直感的に認識することができ、
電子メールを送信するユーザは、好みのキャラクタ画像を使用することで自己を他から差別化して電子メールの着信を通知させることができ、また、通常の内容の電子メールについては「通常」の表情をしているキャラクタ画像を用い、重要な電子メールについては「急ぎ」の表情をしているキャラクタ画像を用いる等、電子メールの内容などの通知したい情報に対応して画像を選択することにより、通知したい情報を画像で視覚的に認識させることができる電子メール着信通知システムの処理手順。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「送信側クライアント3」は、本願補正発明の「送信者端末」に相当する。

(イ)引用発明の「電子メール」は、本願補正発明の「電子メッセージ」に相当するといえ、引用発明の「ユーザの操作により、電子メールの入力を受け付ける」ことは、本願補正発明の「電子メッセージを生成すること」に相当するといえる。

(ウ)引用発明の「送信側クライアント3が受け付け」「記録された画像指定情報」は、「電子メールの着信を通知するときに使用する」情報であるから、本願補正発明の「前記電子メッセージのためのメッセージ通知情報」に相当する。

(エ)引用発明の「電子メールの入力を受け付ける際に、電子メールの着信を通知するときに使用する画像の指定」を受け付け、画像指定情報を電子メールとともにメールサーバ2へ送信する構成は、インタ-ネットなどの通信ネットワーク5から無線で情報を受信する携帯端末装置1において、メールサーバ2が送信するメール情報、画像指定情報および電子メールを受信するためであるから、本願補正発明の「前記電子メッセージを、前記電子メッセージのためのメッセージ通知情報と関連付けること」及び「移動通信ネットワーク上で受信者端末に伝送可能な信号であって、前記電子メッセージおよびメッセージ通知情報を含む信号を生成すること」に相当するといえる。

(オ)引用発明の「携帯端末装置1は、メールサーバ2が送信したメール情報および画像指定情報を受信し、受信したメール情報および画像指定情報に関連付けられた画像を、画像設定情報14bから検索し、検索した画像を画像データ14aから読み出して表示部15に表示し、」表示されている「画像を使用している「×××」を発信元とする電子メールが着信していることが、ユーザは視覚的・直感的に認識することができ」、「電子メールを送信するユーザは、好みのキャラクタ画像を使用することで自己を他から差別化して電子メールの着信を通知させる」構成は、本願補正発明の「前記信号が前記受信者端末に受信される際、前記電子メッセージの受信通知のために、前記受信者端末において前記メッセージ通知情報が用いられる」点と「前記電子メッセージの受信通知のために、前記受信者端末において前記メッセージ通知情報が用いられる」点で共通するといえる。

(カ)引用発明の「電子メール着信通知システムの処理手順」は、ユーザの操作による送信側クライアント3の動作手順を含むものであるから、本願補正発明の「送信者端末の動作方法」に相当するといえる。

そうすると、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
「送信者端末の動作方法であって、
電子メッセージを生成することと、
前記電子メッセージを、前記電子メッセージのためのメッセージ通知情報と関連付けることと、
移動通信ネットワーク上で受信者端末に伝送可能な信号であって、前記電子メッセージおよび前記メッセージ通知情報を含む信号を生成することと、
を含み、前記電子メッセージの受信通知のために、前記受信者端末において前記メッセージ通知情報が用いられる、方法。」

そして、両者は次の(1)、(2)の点で相違する。
・相違点(1)
本願補正発明は、「前記メッセージ通知情報は、前記電子メッセージの受信通知に用いられるデータであって、事前に定義され且つ前記移動通信ネットワーク上で利用可能な遠隔リソースに保存されるデータの参照先に関する情報である」のに対し、引用発明は、電子メールの着信の通知に使用される複数の画像が記録している画像データ14aをキャラクタ名、キャラクタの表情等で関連付けてある画像指定情報である点。

・相違点(2)
本願補正発明は、電子メッセージおよびメッセージ通知情報を含む信号である「前記信号が前記受信者端末に受信される際、前記電子メッセージの受信通知のために、前記受信者端末において前記メッセージ通知情報が用いられる」のに対し、引用発明は、メールサーバ2が送信したメール情報および画像指定情報が受信される際、前記電子メールの受信通知のために、前記受信者端末において前記画像指定情報が用いられる点。

(4)判断
・相違点(1)について
着信通知データの識別データに基づきネットワークを介してサーバから着信通知データを取得し、取得した着信通知データにより着信通知を行うことは、本願の優先権主張の日前周知技術(例えば、特開2002-27112号公報段落【0025】?【0028】「まず、発信処理部201から着信処理部202に対し識別データ204が通知され、着信処理部202はその識別データ204に基づきサーバ処理部203に対して着信通知データ要求205を送信する。・・・中略・・・着信通知データ8は端末とは別にネットワークに接続されたサーバ処理部2に蓄積される。データの形式は任意の形式でよく、・・・中略・・・なお、着信通知データ8はその他の形式の音声ファイル、画像・動画ファイル、振動パターンまたはLED表示パターン、あるいはその組み合わせであってもよい。・・・中略・・・着信通知データ8を指定する識別データ5は任意の形式でよく、たとえばアクセス方法、サーバ、ディレクトリおよびファイル名からなるURLでもよい。本実施の形態ではURLとする。URLの詳細については標準文書RFC1738を参照するとよい。これにより、任意のサーバに蓄積されている任意のデータを着信通知データとして使用することが可能となる。・・・中略・・・識別データ5をファイル名またはディレクトリを含むパス名としてもよい。」、段落【0029】「通信内容に識別データ5を含めて受信するようにしてもよい。たとえば、識別データ5を含む電子メールが着信した場合、その通信終了後に識別データ5で示された着信通知データ8を用いて着信を利用者に通知することができる。」の記載、特開2002-64658号公報段落【0010】、【0011】「本発明の他の形態によると、着呼時に受信される通話の呼を設定する呼設定メッセージに基づいて、着信を通知する通信端末であって、着呼時に呼設定メッセージを受信する受信部と、受信された呼設定メッセージに基づいて、着信通知用の着信通知用の画像データ又は音データの少なくとも一方を含むマルチメディアデータを受信部に受信させる制御部と、マルチメディアデータを用いて、着信を通知する出力部とを備える。【0011】制御部は、通信ネットワークを介して通信端末に接続する外部サーバから、マルチメディアデータを受信部に受信させてもよい。呼設定メッセージは、マルチメディアデータの識別情報を有し、・・・中略・・・呼設定メッセージは、マルチメディアデータの格納場所を示すインターネットのURLを有し、制御部は、受信された呼設定メッセージからURLを抽出し、URLに基づいてマルチメディアデータをインターネットを介して受信部に受信させてもよい。」の記載、特開2001-292226号公報段落【0056】「以上のように本発明によれば、音声通話手段が通話着信時に発信者番号取得手段に通知を行い、取得した発信者番号に対応した発信者データをデータ検索手段が発信者データベースから検索を行い、アプリケーションが発信者データに記述された発信者に対応したリソースを端末リソース取得手段またはネットワークリソース取得手段を用いてリソースを取得し、さらにリソースに対応したアプリケーションを選択し、表示手段がそのリソースを選択されたアプリケーションで表示を行うことにより、ユーザは例えば発信者の会社のインターネットリソース(URL)情報をデータベースに登録しておけば会社データが表示されたり、相手の顔写真等の画像データやメモ等をデータベースに登録しておけば、通話着信時にそのデータが表示される」の記載参照。)である。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、画像指定情報(本願補正発明の「メッセージ通知情報」に相当する。)を、事前に定義され且つ前記移動通信ネットワーク上で利用可能な遠隔リソースに保存されるデータの参照先に関する情報にすることは当業者が容易なし得ることである。

・相違点(2)について
電子メールが前記受信者端末に受信される際、前記電子メールの受信通知を行うために受信端末において電子メールに含まれる受信通知情報が用いられることは、本願優先権主張の日前周知技術(上記特開2002-27112号公報段落【0029】「通信内容に識別データ5を含めて受信するようにしてもよい。たとえば、識別データ5を含む電子メールが着信した場合、その通信終了後に識別データ5で示された着信通知データ8を用いて着信を利用者に通知することができる。」の記載、特開2002-271512号公報段落【0020】?【0022】「表示制御部16は、着信手段11がEメールを受信したときに、このEメールを受信したことを示す着信情報J1を受けて、Eメールを受信した旨の通知をディスプレイ14に表示させる受信通知手段として機能する。またこの表示制御部16は、受信メールの付加情報もディスプレイ14に表示させる付加情報通知手段としても機能する。【0021】付加情報通知手段は、着信情報J1を着信手段11から受けたとき、・・・中略・・・受信メールに対応する付加情報もディスプレイ14に表示させる。【0022】付加情報としては、例えば、メモリ12に保存された受信メールのヘッダ情報から抽出した送信者アドレス(From)や件名(Subject)、あるいは50文字程度のメール本文の一部を使用することもできる。」の記載、特開2002-297507号公報段落【0009】「この情報処理装置においては、電子メールが受信された際に、その電子メールからヘッダ情報が自動的に取得され、そのヘッダ情報に基づいて受信メールの属性が判別される。そして、受信メールの属性の判別結果に基づいて、着信通知メッセージとして出力すべき音声信号を得るためのパラメタ値が決定され、その決定されたパラメタ値を用いて音声合成処理が実行される。従って、例えば発信者や重要度などの受信メールの属性に応じて音声合成処理パラメタ値を変えることにより、発信者や重要度などの受信メールの属性に応じて、異なる声質、音量、または速度の着信通知メッセージを音声で出力することが可能になる。」、段落【0029】「表示出力部144は制御部143の制御の下にメールの着信をステータス表示部17にアイコンやLED点灯などによって表示する。また、受信メールの属性に併せて表示するアイコンやLEDの種類を変えることも出来る。」の記載参照。)である。
したがって、引用発明において、上記周知技術を採用し、電子メール(本願補正発明の「電子メッセージ」に相当する。)および画像指定情報(本願補正発明の「メッセージ通知情報」に相当する。)を含む信号が受信される際、前記電子メールの受信通知のために、前記受信者端末において前記画像指定情報が用いられるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、したがって、平成23年8月4日付けの本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成23年8月4日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年3月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「送信者端末の動作方法であって、
電子メッセージを生成することと、
前記電子メッセージを、前記電子メッセージのためのメッセージ通知情報と関連付けることと、
移動通信ネットワーク上で受信者端末に伝送可能な信号であって、前記電子メッセージおよび前記メッセージ通知情報を含む信号を生成することと、
を含み、前記信号が前記受信者端末に受信される際、前記電子メッセージの受信通知のために、前記受信者端末において前記メッセージ通知情報が用いられる、
方法。」

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2 (2)」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「ただし前記メッセージ通知情報は、前記電子メッセージの受信通知に用いられるデータであって、事前に定義され且つ前記移動通信ネットワーク上で利用可能な遠隔リソースに保存されるデータの参照先に関する情報である」を省いたものでる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 結論
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-10 
結審通知日 2012-10-15 
審決日 2012-10-30 
出願番号 特願2008-531808(P2008-531808)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 衣川 裕史
山田 正文
発明の名称 送信者の制御による電子メッセージ通知  
代理人 川守田 光紀  

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