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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1271490
審判番号 不服2012-3479  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-23 
確定日 2013-03-15 
事件の表示 特願2005-157838「合成樹脂製ボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月 7日出願公開、特開2006-327677〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年5月30日の出願であって、平成23年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

2.平成24年2月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年2月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
2-1.本件補正
本件補正は、平成22年9月21日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉の合成樹脂製ボトルであって、
胴部は、横断面が多角形の角部を面取りした形状をなしており、当該多角形の辺を形成する平側壁面と当該面取りを形成する角部壁面とを具え、
平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に、衝突による壁面の変形を阻止するとともに変形時の復元性を向上させる縦リブを配設したことを特徴とする多面体角形ボトル。」を、
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉の合成樹脂製ボトルであって、
胴部は、横断面が多角形の角部を面取りした形状をなしており、当該多角形の辺を形成する平側壁面と当該面取りを形成する角部壁面とを具えるとともに、高さ方向中間付近のウェスト部に周溝が形成されており、
周溝をはさんで平側壁面と角部壁面が交差する稜線は、それぞれウェスト部側の一端が周溝の周縁部に接続するとともに、周溝内には連続しておらず、上下両端付近を除く中央付近には、稜線上に断面三角形状の溝を有する縦リブが配設されていることを特徴とする多面体角形ボトル。」とする補正を含んでいる。
上記請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1において(a)ボトルの胴部において「高さ方向中間付近のウェスト部に周溝」が形成されたことの限定事項を付加し、(b)「平側壁面と角部壁面が交差する」と規定された稜線を「周溝をはさんで平側壁面と角部壁面が交差し、それぞれウェスト部側の一端が周溝の周縁部に接続するとともに、周溝内には連続しておらず」と限定し、(c)縦リブに稜線の「上下両端付近を除く中央付近」に配設されること及び「断面三角形状の溝を有する」ことの限定事項を付加する補正事項を含んでおり、上記(a)(b)(c)に係る補正事項はいずれも本件補正前の請求項1に記載された事項を技術的に限定するものであり、また、これらの補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するものということができる。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認める。
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉の合成樹脂製ボトルであって、
胴部は、横断面が多角形の角部を面取りした形状をなしており、当該多角形の辺を形成する平側壁面と当該面取りを形成する角部壁面とを具えるとともに、高さ方向中間付近のウェスト部に周溝が形成されており、
周溝をはさんで平側壁面と角部壁面が交差する稜線は、それぞれウェスト部側の一端が周溝の周縁部に接続するとともに、周溝内には連続しておらず、上下両端付近を除く中央付近には、稜線上に断面三角形状の溝を有する縦リブが配設されていることを特徴とする多面体角形ボトル。」

2-3.引用例
本願出願前の平成1年12月14日に発行された意匠登録第777329号公報(以下、「引用例1」という。)には、意匠に係る物品を「包装用容器」とする以下の意匠が、正面図、右側面図、A-A’断面図、平面図、底面図、B-B’断面図で記載されている(符号「イ」及び「ロ」は当審により付加)。

上記各図面の記載から、「包装用容器」は、
(1a)全体形状は、口部と肩部、胴部とを具えたボトル形状であり、
(1b)A-A’断面図及びB-B’断面図からみて、各壁面は薄肉であり、
(1c)平面図、底面図及びB-B’断面図からみて、上記胴部は、横断面が四角形の角部を面取りした形状をなし、
(1d)正面図及び右側面図からみて、上記四角形の辺を形成する平側壁面と面取りを形成する角部壁面とを具え、
(1e)正面図、右側面図及びA-A’断面図からみて、正面図の符号ロで示された部分は、高さ方向中間付近であって、周溝が形成され、
(1f)平面図及びB-B’断面図からみて、正面図の符号イで示された部分には、対応するB-B’断面図の部分が凹みとなっていることから、溝が形成されているものと認められ、その溝は、上記周溝をはさんで平側壁面と角部壁面が交差する稜線上のそれぞれの上下両端付近を除く中央付近に形成されている。
以上より引用例1には、「包装用容器」に関して、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉のボトル形状であり、胴部は、横断面が四角形の角部を面取りした形状をなしており、上記四角形の辺を形成する平側壁面と面取りを形成する角部壁面とを具え、高さ方向中間付近に周溝が形成されており、上記周溝をはさんで平側壁面と角部壁面が交差する稜線上のそれぞれの上下両端付近を除く中央付近に溝が形成されている包装用容器。」

2-4.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「包装用容器」は、ボトル形状であり、胴部は横断面が四角形の角部を面取りした形状をなしていることから、本願補正発明の「多面体角形ボトル」ということができ、
引用発明1の周溝が形成された包装容器の高さ方向中間付近は、本願補正発明の「ウェスト部」ということができ、
引用発明1の平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に形成されている溝の部分は、薄肉の壁面が容器の内側に縦方向に突出するようになされていることから、本願補正発明の「縦リブ」といえる。
してみれば、両者は、
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉のボトルであって、
胴部は、横断面が多角形の角部を面取りした形状をなしており、当該多角形の辺を形成する平側壁面と当該面取りを形成する角部壁面とを具えるとともに、高さ方向中間付近のウェスト部に周溝が形成されており、
周溝をはさんで平側壁面と角壁面が交差する稜線上のそれぞれの上下両端付近を除く中央付近に溝を有する縦リブが配設されている多面体角形ボトル。」である点で一致しており、以下の各点で相違している。
[相違点1]本願補正発明では、ボトルは、「合成樹脂製」であるのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。
[相違点2]本願補正発明では、稜線は、「それぞれウェスト部側の一端が周溝の周縁部に接続するとともに、周溝内には連続しておらず」とされているのに対し、引用発明1では、稜線は、周溝内に連続しているか否か明確ではない点。
[相違点3]本願補正発明では、縦リブは、「断面三角形状の溝を有する」とされているのに対し、引用発明1では、溝の断面形状は特定されていない点。

2-5.判断
そこで、上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例1に記載された形状の容器として、いわゆるペットボトルなどの合成樹脂製のものは、ごく一般的に使用されているもので、本願出願前周知であることから、
引用発明1の容器を、合成樹脂製とすることは、当業者が容易になし得ることである。

[相違点2]について
本願の図1には、縦リブ16、17に沿って描かれている縦線がウエスト部3cの凹状の周溝15内で一部途切れているように記載されているのものの、当初明細書には、稜線について「それぞれウェスト部側の一端が周溝の周縁部に接続するとともに、周溝内には連続しておらず」とする点及びその作用効果は何ら記載されていない。
また、引用例1の正面図等には、平側壁面と角部壁面が交差する部分に線が容器の上下を通して記載されているものの、この線は作図上のものとも考えられ(例えば、必要と思われない溝内にも記載されているし、そもそも稜線とは概念的なもので、実際の容器では丸みを帯びているなど線として図面に記載できるものではない。)、本願補正発明でいう稜線が周溝内に形成されているか否かは明確でないものの、該稜線がウエスト部の周溝内で不連続になっている態様は、例えば、特開2003-104345号公報、特開2002-166916号公報、特開2003-104347号公報等にも図示されており、本願補正発明の稜線に係る事項は、本願出願前周知の事項ということができることから、
引用発明1の稜線を、上記周知の事項のように容器の高さ方向中間付近の周溝内で連続していないようになすことは、当業者が容易になし得る事項であり、それによる作用効果についても、当業者が容易に推測しうる程度のものに過ぎない。

[相違点3]について
本願明細書の段落番号【0023】に溝(縦リブ)の断面形状について、「断面形状については適宜選択できる」と述べているように、溝の断面形状は、当業者が設計上適宜に選択し得る事項と認められる。
また、薄肉の合成樹脂製ボトルの胴部に「断面三角形状(V字型)の溝を有する」縦リブを設けて、胴部の剛性を保持することは、例えば、実願昭56-174326号(実開昭58-79506号)のマイクロフィルムや特開2005-8158号公報に示されるように、本願出願前周知の事項であることから、
引用発明1の溝の断面形状を、上記周知の事項のように三角形状とすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。
なお、請求人が審判請求書において主張する断面形状を特定したことによる作用効果は、出願当初の明細書に何ら記載されていないことから、請求人の、当業者が予期し得ない作用効果との主張は採用できない。

以上のとおり、相違点1?3に係る事項は、何れも本願出願前周知の技術的事項に照らして格別の事項ではないことより、本願補正発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-6.むすび
上記のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることのできないものであるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
3-1.本願発明
平成24年2月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成22年9月21日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ請求項1の記載は、以下のとおりである(以下、これによって特定される発明を「本願発明」という。)。
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉の合成樹脂製ボトルであって、
胴部は、横断面が多角形の角部を面取りした形状をなしており、当該多角形の辺を形成する平側壁面と当該面取りを形成する角部壁面とを具え、
平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に、衝突による壁面の変形を阻止するとともに変形時の復元性を向上させる縦リブを配設したことを特徴とする多面体角形ボトル。」

3-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された意匠登録第77730号公報(平成1年12月14日発行、以下、「引用例2」という。)には、意匠に係る物品を「包装用容器」とする以下の意匠が、正面図、右側面図、A-A’断面図、平面図、底面図、B-B’断面図で記載されている(符号「イ」は当審により付加)。

上記各図面の記載から、「包装用容器」は、
(2a)全体形状は、口部と肩部、胴部とを具えたボトル形状であり、
(2b)A-A’断面図及びB-B’断面図からみて、各壁面は薄肉であり、
(2c)平面図、底面図及びB-B’断面図からみて、上記胴部は、横断面が四角形の角部を面取りした形状をなし、
(2d)正面図及び右側面図からみて、上記四角形の辺を形成する平側壁面と面取りによって形成される角部壁面とを具え、
(2e)平面図及びB-B’断面図からみて、正面図の符号イで示された部分には、対応するB-B’断面図の部分が凹みとなっていることから、溝が形成されているものと認められ、その溝は、平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に形成されている。

以上より、引用例2には、「包装用容器」に関して、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉のボトル形状であり、胴部は、横断面が四角形の角部を面取りした形状をなしており、上記四角形の辺を形成する平側壁面と面取りによって形成される角部壁面とを具え、平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に溝が形成されている包装用容器。」

3-3.対比・判断
本願補正発明と引用発明2とを対比すると、
引用発明2の「包装用容器」は、ボトル形状であり、横断面が四角形の角部を面取りした形状をなしていることから、本願補正発明の「多面体角形ボトル」ということができ、
引用発明2の平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に形成されている溝の部分は、薄肉の壁面が容器の内側に縦方向に突出するようになされていることから、本願補正発明の「縦リブ」といえる。
してみれば、両者は、
「口部と肩部、胴部とを具えた薄肉のボトルであって、
胴部は、横断面が多角形の角部を面取りした形状をなしており、当該多角形の辺を形成する平側壁面と当該面取りを形成する角部壁面とを具え、
平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に、縦リブが配設した多面体角形ボトル。」である点で一致しており、以下の各点で相違している。
[相違点1]本願発明では、ボトルは、「合成樹脂製」であるのに対し、引用発明2では、そのような特定がない点。
[相違点2]本願発明では、縦リブは、「衝突による壁面の変形を阻止するとともに変形時の復元性を向上させる」と規定しているのに対し、引用発明2では、そのような規定がされていない点。

そこで、上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
相違点1は、上記「2-4.対比」で検討した[相違点1]と同じであり、上記「2-5.判断」で述べたのと同じ理由により、
引用発明2の容器を、合成樹脂製とすることは、当業者が容易になし得ることである。

[相違点2]について
本願発明の縦リブについての「衝突による壁面の変形を阻止するとともに変形時の復元性を向上させる」という規定は、平側壁面と角部壁面が交差する稜線上に縦リブが配設されていることの作用あるいは効果を記載したものに過ぎず、また、薄肉の合成樹脂製ボトルにおいて胴部に縦リブを配設することによって「壁面の変形阻止」及び「変形時の復元性向上」を図ることは本願出願前周知の事項であり、特に稜線上に縦リブを配設することによって「衝突による壁面の変形」を阻止する点については、稜線が壁面より衝突の影響を受けやすいことは当業者に自明な事項であって、引用発明2の容器においても、稜線上に溝が形成されることにより縦リブが配設されているので、同様の作用効果が生じることは当業者が容易に予測しうる事項であることから、本願発明がそのような作用効果を発明特定事項として規定することに格別な技術的意義は認められない。

したがって、本願発明は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-04 
結審通知日 2012-12-25 
審決日 2013-01-07 
出願番号 特願2005-157838(P2005-157838)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 晋渡邊 豊英  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 仁木 浩
熊倉 強
発明の名称 合成樹脂製ボトル  
代理人 柴沼 雅樹  
代理人 吉村 眞治  

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