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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1271635
審判番号 不服2011-16505  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-01 
確定日 2013-03-18 
事件の表示 特願2006-537348「酸化および膜濾過により水性廃液を精製する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日国際公開、WO2005/047191、平成19年 4月19日国内公表、特表2007-509740〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2004年10月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年10月30日 フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月12日付けで拒絶理由が起案され、平成23年2月16日に意見書と手続補正書が提出され、同年3月28日付けで拒絶査定の起案がなされ、同年8月1日に拒絶査定不服審判の請求と手続補正書の提出がなされ、その後当審から、平成24年3月16日付けで特許法第164条第3項の規定に基づく報告書を引用した審尋の起案がなされ、期間を指定して請求人の意見を求めたところ、請求人からの回答書の提出が無かったものである。

第2.平成23年8月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.平成23年8月1日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された。
「 【請求項1】
有機物質を含有する水性廃液を精製するための装置であって、この精製装置は、少なくとも1つの反応容器(1)を備えており、この反応容器は、少なくとも1つの前記廃液用の入口(9)と、少なくとも1つの前記廃液用の出口(10)と、少なくとも1つの通気孔(5)と、少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)とを備えるとともに、この反応容器は、前記廃液中の前記有機物質の酸化反応を触媒し、および/または前記有機物質を吸収する物質(3)の床を備える精製装置において、
前記反応容器は、浸漬した膜(4)の濾過装置と前記物質(3)の床とを含む単一のチャンバを画定していることを特徴とし、前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)と前記廃液用の前記入口(9)は、前記反応容器の底部に設計されており、前記物質(3)の床は、前記浸漬した膜(4)の濾過装置と前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)の間に設計されており、これにより、前記廃液と前記酸化ガスとが、前記物質(3)の床へ向かい、次に前記膜(4)の濾過装置に向かって並流で噴射されることを特徴とする精製装置。」

2.上記請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に「前記反応容器の底部に設計されており、前記物質(3)の床は、前記浸漬した膜(4)の濾過装置と前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)の間に設計されており、これにより、」なる発明特定事項をさらに付け加えるものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正後発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか、以下に検討する。
(1)引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-182107号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載され、視認される。
(ア)「【請求項1】 供給管路を通して処理対象の原液が流入するとともに、吸着剤をスラリー状に貯留する反応槽を設け、反応槽内の吸着剤スラリーに浸漬してろ過装置を設け、ろ過装置のケーシング内にろ過膜を有する複数のろ過膜エレメントを上下方向に沿って平行に、かつ隣接するろ過膜エレメント相互のろ過膜面間に適当間隙をおいて配置し、ろ過膜エレメントに処理液吸引管を介して連通する吸引ポンプを設け、前記ケーシング内のろ過膜エレメントの下方に散気装置を配置し、散気装置に送気管を介して連通するブロワーを設けたことを特徴とする吸着・反応装置。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「【産業上の利用分野】本発明は、吸着剤、触媒、イオン交換樹脂を用いて接触ろ過を行う吸着・反応装置に関する。」(【0001】)
(ウ)「【作用】上記した構成により、ブロワーから送気管を通して散気装置に攪拌用気体を供給し、散気装置から上方に向けて攪拌用気体を散気する。散気した攪拌用気体のエアリフト作用によりろ過膜エレメントの膜面に対して平行流を生じさせるとともに、反応槽内に循環流を生じさせる。循環流によって反応槽内の吸着剤スラリーを懸濁状態に維持しながら吸着剤によって接触ろ過を行う。」(【0007】)
(エ)「【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。・・・・・・。、吸着剤としては超微粒子イオン交換樹脂、触媒粉末活性炭、超微粒ゼオライト、超微粒触媒等を用いている。・・・・・・。
このろ過装置5は、本体ケーシング7の内部に複数のろ過膜エレメント8を上下方向に沿って平行に、かつ隣接する相互のろ過膜面間に適当間隙(・・・・・・)をおいて配置している。ろ過膜エレメント8は、平板状のろ過板9の両面に限外ろ過膜ないし精密ろ過膜からなるろ過膜10を設けたもので・・・・・・ある。ろ過膜エレメント8の透過液流路11は分岐管12を介して処理液吸引管13に連通し、処理液吸引管13の途中には吸引ポンプ14を介装している。
ろ過装置5の下部ケーシング15の内部には、ろ過膜エレメント8の下方に位置して散気装置16を配置している。散気装置16は送気管17を介してブロワー18に連通し、ブロアー18の吸込側は吸気管19を介して反応槽1の上部に連通している。
・・・・・・
以下、上記構成における作用を説明する。原液ポンプ4により原液供給管3を通して原液槽2の原液を反応槽1に連続的に供給し、反応槽1に貯留する微粒子状の吸着剤をスラリー状に滞留させる。また、ブロワー18により反応槽1の上部空間に滞留する空気、用途によってはオゾン化空気等の反応対象気体を吸気管19を通して吸引する(新しい反応対象気体を供給してもよい)とともに、送気管17を通して散気装置16に攪拌用気体として供給し、散気装置16から上方に向けて攪拌用気体を散気する。散気した攪拌用気体のガス流によるエアリフト作用によりろ過膜エレメント8のろ過膜8の膜面に対して平行流を生じさせるとともに、反応槽1内に循環流を生じさせ、循環流によって反応槽1内の吸着剤スラリー6を懸濁状態に維持しながら吸着剤によって接触ろ過を行う。
一方、吸引ポンプ14によりろ過膜エレメント8を通して吸着剤スラリー中の吸着剤をろ過し、吸着剤と吸着処理された処理液に分離し、ろ過膜エレメント8のろ過膜10を透過した処理液を透過液流路11と分岐管12と処理液吸引管を通して吸引抽出する。このとき、ろ過膜エレメント8のろ過膜10は孔径が0.1μm以下であるので、吸着剤が超微粒子であってもプレコート剤を用いることなくろ過することができる。・・・・・・。」(【0011】?【0017】)
(オ)「本発明の一実施例における吸着・反応装置の全体構成図」とされる図1をみると、上記(エ)に記載された事項を窺うことができ、部材(3)である「原液供給管」及び部材(16)である「散気装置」が、共に、部材(1)である「反応槽」の底部に近い下部に設けられていることが見て取れる。
(2)引用例に記載された発明
引用例の(ア)には、「供給管路を通して処理対象の原液が流入するとともに、吸着剤をスラリー状に貯留する反応槽を設け、反応槽内の吸着剤スラリーに浸漬してろ過装置を設け、ろ過装置のケーシング内にろ過膜を有する複数のろ過膜エレメントを上下方向に沿って平行に、かつ隣接するろ過膜エレメント相互のろ過膜面間に適当間隙をおいて配置し、ろ過膜エレメントに処理液吸引管を介して連通する吸引ポンプを設け、前記ケーシング内のろ過膜エレメントの下方に散気装置を配置し、散気装置に送気管を介して連通するブロワーを設けた・・・・・・吸着・反応装置」が記載されているから、引用例には、
「供給管路を通して処理対象の原液が流入するとともに、吸着剤をスラリー状に貯留する反応槽を設け、反応槽内の吸着剤スラリーに浸漬してろ過装置を設け、ろ過装置のケーシング内にろ過膜を有する複数のろ過膜エレメントを上下方向に沿って平行に、かつ隣接するろ過膜エレメント相互のろ過膜面間に適当間隙をおいて配置し、ろ過膜エレメントに処理液吸引管を介して連通する吸引ポンプを設け、前記ケーシング内のろ過膜エレメントの下方に散気装置を配置し、散気装置に送気管を介して連通するブロワーを設けた吸着・反応装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
(3)対比・判断
ア 補正後発明と引用発明とを対比する。
イ 引用発明の「吸着剤」は、引用例の(エ)に、「吸着剤としては超微粒子イオン交換樹脂、触媒粉末活性炭、超微粒ゼオライト、超微粒触媒等を用いている。」との記載がなされており、有機物質を吸着するものである。そうすると、引用発明の「処理対象の原液」は、「有機物質を含有する水性廃液」ということができる。
ウ また、本願明細書の【0060】には、「本実施形態では、この触媒物質は、600℃未満の温度で焼結されたベーマイトアルミナ(γAl_(2)O_(3))である。ベーマイトアルミナは、純アルミナの形で、または金属物質と混合した形で(特に、有機物質を吸着する能力を向上させるために)使用できる点に留意されたい。」と記載されているから、補正後発明の「有機物質を吸収する物質」とは、「有機物質を吸着する物質」といえるから、引用発明の「吸着剤」は、補正後発明の「有機物質を吸収する物質」に相当する。
また、補正後発明の「床」とは、本願明細書の【0054】に「この反応容器内には、流動床の形式で物質3も収容されている。」と記載されていることからみて、「流動床」であるといえる。一方、引用例の(ウ)に「散気装置から上方に向けて攪拌用気体を散気する。散気した攪拌用気体のエアリフト作用により・・・・・・循環流を生じさせる。循環流によって反応槽内の吸着剤スラリーを懸濁状態に維持」と記載されているように、引用発明の「吸着剤」は、「エアリフト作用による懸濁状態のスラリー」といえ、流動床とみることができる。よって、引用発明は、「有機物質を吸収する物質の床を備え」ていると認める。
エ 引用発明の「反応槽」は、補正後発明の「少なくとも1つの反応容器」に相当する。
オ 引用発明の「供給管路を通して処理対象の原液が流入する」における「供給管路」は、引用例の(エ)の記載によれば、「原液供給管3」であり、同(オ)の視認事項によれば、反応槽の底部に近い下部に設けられている。
一方、本願の図1をみると、「入口パイプ(9)」が「反応容器(1)」の底部に近い下部に設けられていることが見て取れるから、補正後発明の「前記廃液用の前記入口(9)は、前記反応容器の底部に設計されており」とは、「前記廃液用の前記入口(9)は、前記反応容器の底部に近い下部に設けられている」ことを含むといえる。
そうすると、引用発明は、補正後発明の「反応容器は、少なくとも1つの前記廃液用の入口(9)・・・・・・を備える」「前記廃液用の前記入口(9)は、前記反応容器の底部に設計されており」なる発明特定事項を有しているといえる。
カ 補正後発明の「少なくとも1つの廃液用の出口(10)」は、本願の図1をみると「膜濾過装置(4)」に接続されていることが見て取れるから、引用発明の「処理液吸引管」は、補正後発明の「少なくとも1つの廃液用の出口(10)」に相当する。
キ 引用例の(エ)の「反応槽1の上部空間に滞留する空気、用途によってはオゾン化空気等の反応対象気体を吸気管19を通して吸引する」との記載をみると、引用発明は、発明特定事項として明言はされていないが、補正後発明の「少なくとも1つの通気孔(5)」に相当するものを有していることは明らかである。
ク 引用発明の「散気装置」は、引用例の(エ)の「反応槽1の上部空間に滞留する空気、用途によってはオゾン化空気等の反応対象気体を吸気管19を通して吸引する(新しい反応対象気体を供給してもよい)とともに、送気管17を通して散気装置16に攪拌用気体として供給し、散気装置16から上方に向けて攪拌用気体を散気する。」との記載をみると、酸化ガスを噴射しているとみることができるから、補正後発明の「少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)」に相当する。
また、引用発明の「散気装置」は、引用例(オ)の視認事項によれば、反応槽の底部に近い下部に設けられている。
一方、本願の図1をみると、「反応容器内へオゾンを連続的に噴射する手段(2)」が「反応容器(1)」の底部に近い下部に設けられていることが見て取れるから、補正後発明の「前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)・・・・・・は、前記反応容器の底部に設計され」とは、「前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)は、前記反応容器の底部に近い下部に設けられている」ことを含むといえる。
そうすると、引用発明は、補正後発明の「前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)・・・・・・は、前記反応容器の底部に設計され」なる発明特定事項を有しているといえる。
ケ 引用発明は「散気装置に送気管を介して連通するブロワーを設け」と特定されるように「ブロワー」を有しており、この「ブロワー」に相当する発明特定事項は補正後発明には見当たらないが、補正後発明において酸化ガスを噴射するためにはブロワーなどの送風手段を設けていることは、技術常識に照らし明らかである。
コ 引用発明の「ケーシング内にろ過膜を有する複数のろ過膜エレメントを上下方向に沿って平行に、かつ隣接するろ過膜エレメント相互のろ過膜面間に適当間隙をおいて配置し、ろ過膜エレメントに処理液吸引管を介して連通する吸引ポンプを設け」た「ろ過装置」は、補正後発明の「浸漬した膜(4)の濾過装置」に相当する。
サ 引用発明は、「反応槽内の吸着剤スラリーに浸漬してろ過装置を設け」ているから、上記ウの検討を併せみると、補正後発明の「反応容器は、浸漬した膜(4)の濾過装置と前記物質(3)の床とを含む」なる発明特定事項を有していることは明らかである。
シ 「チャンバ」とは、「室」のことと解されるから、引用発明の「反応槽」も「チャンバを画定している」といえる。
ス 引用発明の「前記ケーシング内のろ過膜エレメントの下方に散気装置を配置し、散気装置に送気管を介して連通するブロワーを設け」ることにより、引用例の(エ)の「散気した攪拌用気体のガス流によるエアリフト作用によりろ過膜エレメント8のろ過膜8の膜面に対して平行流を生じさせるとともに、反応槽1内に循環流を生じさせ、循環流によって反応槽1内の吸着剤スラリー6を懸濁状態に維持しながら吸着剤によって接触ろ過を行う。」のであるから、引用発明は、補正後発明の「前記物質(3)の床は、前記浸漬した膜(4)の濾過装置と前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)の間に設計されており、これにより、前記廃液と前記酸化ガスとが、前記物質(3)の床へ向かい、次に前記膜(4)の濾過装置に向かって並流で噴射される」なる発明特定事項を有していると認められる。
セ 引用発明は、「ろ過膜エレメントに処理液吸引管を介して連通する吸引ポンプを設け」と特定される「吸引ポンプ」を有しており、この吸引ポンプに相当する発明特定事項は補正後発明では見当たらない。しかし、本願明細書の【0065】に「本実施形態によれば廃液は、排出パイプ10に設けられたポンプ8を使用して、外部-内部構造において吸引され、濾過される。」と記載されているように、補正後発明も、この吸引ポンプに相当する発明特定事項を実質的に有しているといえる。
ソ 引用発明の「吸着・反応装置」は、上記ア?スの検討や引用例の(イ)の記載からみて、補正後発明の「有機物質を含有する水性廃液を精製するための」「精製装置」といえるものである。
タ そうすると、両者は、
「有機物質を含有する水性廃液を精製するための装置であって、この精製装置は、少なくとも1つの反応容器を備えており、この反応容器は、少なくとも1つの前記廃液用の入口と、少なくとも1つの前記廃液用の出口と、少なくとも1つの通気孔と、少なくとも1つの酸化ガス噴射手段とを備えるとともに、この反応容器は、前記廃液中は前記有機物質を吸収する物質の床を備える精製装置において、
前記反応容器は、浸漬した膜の濾過装置と前記物質の床とを含むチャンバを画定しており、前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段と前記廃液用の前記入口は、前記反応容器の底部に設計されており、前記物質の床は、前記浸漬した膜の濾過装置と前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段の間に設計されており、これにより、前記廃液と前記酸化ガスとが、前記物質の床へ向かい、次に前記膜の濾過装置に向かって並流で噴射される精製装置。」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点:反応容器に関し、補正後発明は、単一のチャンバーを画定しているのに対し、引用発明は、ろ過装置がケーシングを有してチャンバーを画定している点
チ そこで、この相違点について検討する。
ろ過装置にケーシングを設けることは、膜の保護、ろ過装置の交換を容易にする等の目的で適宜なされるものであり、引用発明において、ケーシングがなくなるろ過性能の低下、すなわち、有機物質を含有する水性廃液の精製が直ちに阻害されるものでもないから、当業者であれば、ケーシングをなくすことは適宜なし得ることである。
ツ したがって、補正後発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成23年8月1日付けの手続補正は前記第2.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年2月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
有機物質を含有する水性廃液を精製するための装置であって、この精製装置は、少なくとも1つの反応容器(1)を備えており、この反応容器は、少なくとも1つの前記廃液用の入口(9)と、少なくとも1つの前記廃液用の出口(10)と、少なくとも1つの通気孔(5)と、少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)とを備えるとともに、この反応容器は、前記廃液中の前記有機物質の酸化反応を触媒し、および/または前記有機物質を吸収する物質(3)の床を備える精製装置において、
前記反応容器は、浸漬した膜(4)の濾過装置と前記物質(3)の床とを含む単一のチャンバを画定していることを特徴とし、前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)と前記廃液用の前記入口(9)は、前記廃液と前記酸化ガスとが、前記物質(3)の床へ向かい、次に前記膜(4)の濾過装置に向かって並流で噴射されるように前記反応容器の底部に設計されていることを特徴とする精製装置。」

第4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例及びその記載事項は、前記第2.の3.(1)に記載したとおりである。

第5.対比・判断
本願発明は、前記第2.で検討した補正後発明に関し、「前記物質(3)の床は、前記浸漬した膜(4)の濾過装置と前記少なくとも1つの酸化ガス噴射手段(2)の間に設計されており」なる発明特定事項を有しておらず、補正後発明を概念的に拡張したものである。
してみると、補正後発明が、前記第2.(2)(3)に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正後発明と同様の理由により、本願発明も、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-25 
結審通知日 2012-10-26 
審決日 2012-11-06 
出願番号 特願2006-537348(P2006-537348)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 斉藤 信人
國方 恭子
発明の名称 酸化および膜濾過により水性廃液を精製する装置および方法  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

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