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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05D
管理番号 1271646
審判番号 不服2012-5178  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-19 
確定日 2013-03-18 
事件の表示 特願2009-512224「ポリマー封入した粒子の水性分散液、ならびに関連する塗料組成物およびコーティングされた基材」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日国際公開、WO2007/140131、平成21年11月 5日国内公表、特表2009-538224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、2007年5月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年5月25日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成24年3月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項11】
(a)第1の色を示す第1の透明な薄色コーティングと、
(b)該第1の透明な薄色コーティングの少なくとも一部分上に堆積させ、該第1の色と異なる第2の色を示す、第2の透明な薄色コーティングと
を含む多層複合材コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた反射表面であって、
該第1の透明な薄色コーティングおよび該第2の透明な薄色コーティングが、ポリマー封入した色供与性粒子を含む塗料組成物から堆積されており、
該透明な薄色コーティングの少なくとも1つが複数の厚さを有する、反射表面。」

第3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-62391号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0007】
【発明の実施の形態】・・・(中略)・・・本発明の第2の光輝性塗膜形成方法は、ロードホイール用基材の上に、(1’)粉体塗料から形成されるクリヤープライマー塗膜層、(1”)カラークリヤーベース塗膜層、(2)ホログラムクリヤー塗膜層、(3)トップクリヤー塗膜層を順次形成する光輝性塗膜形成方法である。」

「【0010】粉体塗料から形成されるクリヤープライマー塗膜層の形成
本発明の光輝性塗膜形成方法におけるプライマー塗膜層は、下地を隠蔽しないクリヤー塗膜からなる。このクリヤー塗膜を用いることにより、ロードホイールの素材感が、最終的に得られる塗膜において視認可能となる。
【0011】本発明の第1の方法では、上記プライマー塗膜層は、カラークリヤープライマー塗膜層であり、第2の方法では、クリヤープライマー塗膜層である。ここで、クリヤープライマー塗膜層はカラークリヤープライマー塗膜層を含むものとする。
【0012】上記カラークリヤープライマー塗膜層は、着色顔料を含む粉体カラークリヤー塗料により形成される。上記カラークリヤープライマー塗膜層を形成するための着色顔料を含む粉体カラークリヤー塗料は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂からなる塗膜形成樹脂、架橋剤、透明性を損なわない範囲の量の着色顔料、および必要に応じて硬化触媒、表面調整剤、その他の添加剤を配合して混練し、粉砕、分級して得られる粉体塗料である。」

「【0014】また、本発明の第2の方法におけるクリヤープライマー塗膜層は、着色顔料を含む粉体カラークリヤー塗料、または、含まない粉体クリヤー塗料いずれにより形成することができる。この着色顔料を含む粉体カラークリヤー塗料は、先に説明したものと同じものを用いることができる。・・・(中略)・・・本発明の第2の方法におけるクリヤープライマー塗膜層が、着色顔料を含む粉体カラークリヤー塗料から形成されるカラークリヤープライマー塗膜層である場合、上に位置するカラークリヤーベース塗膜層と組み合わせることにより、意匠のバリエーションを増大させることができる。」

「【0016】カラークリヤーベース塗膜層の形成
本発明の第2の方法におけるカラークリヤーベース塗膜層は、下地を隠蔽しないクリヤー塗膜からなる。このクリヤー塗膜を用いることで、ロードホイール用基材の素材感が、最終的に得られる塗膜において視認可能となる。上記カラークリヤーベース塗膜層は、塗膜形成樹脂および必要に応じて架橋剤とからなるビヒクルとホログラム顔料以外の中塗塗装または上塗り塗装に用いられる光輝性顔料(以下、光輝性顔料という)および/または着色顔料を、透明性が損なわれない範囲の量を分散して得られる溶剤型クリヤー塗料により形成してもよいし、または混練し、粉砕、分級して得られる粉体型クリヤー塗料により形成してもよい。」

ロードホイール用基材の上に光輝性塗膜を形成することにより、光輝性塗膜が形成されたロードホイール用基材の表面が提供されることになるから、これらの記載によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「(1’)粉体塗料から形成されるクリヤープライマー塗膜層、
(1”)カラークリヤーベース塗膜層、
(2)ホログラムクリヤー塗膜層、
(3)トップクリヤー塗膜層
を順次形成した、光輝性塗膜が形成されたロードホイール用基材の表面であって、
クリヤープライマー塗膜層は、着色顔料を含む粉体カラークリヤー塗料により形成され、
カラークリヤーベース塗膜層は、着色顔料を含む粉体型クリヤー塗料により形成されている、
光輝性塗膜が形成されたロードホイール用基材の表面。」

第4 対比
引用発明の「光輝性塗膜が形成されたロードホイール用基材の表面」は、本願発明の「反射表面」に相当する。
引用発明の「(1’)粉体塗料から形成されるクリヤープライマー塗膜層」、「(1”)カラークリヤーベース塗膜層」は、いずれも「下地を隠蔽しないクリヤー塗膜からなる」(引用文献【0010】、【0016】)ものであり、それぞれ、本願発明の「第1の透明な薄色コーティング」、「第2の透明な薄色コーティング」に相当する。
引用発明において、「(1’)粉体塗料から形成されるクリヤープライマー塗膜層」の少なくとも一部分上に「(1”)カラークリヤーベース塗膜層」を堆積させていることは明らかである。そして、これらの塗膜層を合わせたものは、本願発明の「多層複合材コーティング」に相当する。そうすると、引用発明の「(1’)粉体塗料から形成されるクリヤープライマー塗膜層、(1”)カラークリヤーベース塗膜層・・・を順次形成した、光輝性塗膜が形成されたロードホイール用基材の表面」は、本願発明の「多層複合材コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた反射表面」に相当する。
引用発明の「着色顔料」は、本願発明の「色供与性粒子」に相当する。
引用発明の「粉体カラークリヤー塗料」及び「粉体型クリヤー塗料」は、引用文献の記載(【0012】、【0016】)によれば、少なくとも、塗膜形成樹脂と着色顔料を配合して混練し、粉砕、分級して得られるものである。そして、混練によって着色顔料が塗膜形成樹脂中に混ざり、この混ざったものが粉砕され、分級されて粉体となっていることから、着色顔料(色供与性粒子)は塗膜形成樹脂(ポリマー)に封入されていると認められる。この粉体を水性分散液に分散すれば着色顔料(色供与性粒子)が互いに分離した状態になることは明らかである。そうすると、引用発明の「粉体カラークリヤー塗料」及び「粉体型クリヤー塗料」は、いずれも、本願発明の「ポリマー封入した色供与性粒子を含む塗料組成物」に相当する。
なお、請求人は、引用文献には「ポリマー封入した色供与性粒子」が開示されていない旨を主張するが、上に説示したとおりであり、採用できない。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「(a)第1の透明な薄色コーティングと、
(b)該第1の透明な薄色コーティングの少なくとも一部分上に堆積させた第2の透明な薄色コーティングと
を含む多層複合材コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた反射表面であって、
該第1の透明な薄色コーティングおよび該第2の透明な薄色コーティングが、ポリマー封入した色供与性粒子を含む塗料組成物から堆積されている
反射表面。」

[相違点1]
本願発明は、第1の透明な薄色コーティングと第2の透明な薄色コーティングの色が、それぞれ「第1の色」及び「第1の色と異なる第2の色」と特定されているのに対し、引用発明は、クリヤープライマー塗膜層とカラークリヤーベース塗膜層が共に着色顔料を含むものの、それぞれの色が異なることまでは特定されていない点。

[相違点2]
本願発明が、「透明な薄色コーティングの少なくとも1つが複数の厚さを有する」と特定されているのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。

第5 判断
(1)相違点1について
引用文献には、上記のとおり、「クリヤープライマー塗膜層が、着色顔料を含む粉体カラークリヤー塗料から形成されるカラークリヤープライマー塗膜層である場合、上に位置するカラークリヤーベース塗膜層と組み合わせることにより、意匠のバリエーションを増大させることができる。」(【0014】)と記載されている。意匠のバリエーションとして、異なる色を組み合わせることは周知技術である。しかも、引用文献には、カラークリヤーベース塗膜層が粉体型クリヤー塗料から形成される例ではないものの、実施例12及び実施例13として、日本ペイント社製の「パウダックスA-400グリーンクリヤー」にてクリヤープライマー塗膜層を形成した基材1に、日本ペイント社製の「スーパーラックM-90シルバーメタリッククリヤー」(カラークリヤーベース塗料B2)にてカラークリヤーベース塗膜層を形成した例が記載されている(【0042】、【0043】、【表1】参照。)。すなわち、クリヤープライマー塗膜層を第1の色(グリーン)とし、カラークリヤーベース塗膜層を第1の色と異なる第2の色(シルバー)とした例が示されている。
したがって、上記周知技術や引用文献の記載を考慮すれば、引用発明のクリヤープライマー塗膜層とカラークリヤーベース塗膜層の色を、それぞれ「第1の色」及び「第1の色と異なる第2の色」と選択すること、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
塗料の膜厚を変化させることは、例えば、特開平10-137676号公報に「従来、濃度勾配を付ける場合には、濃度を濃くしたい領域は塗料の膜厚を相対的に厚くし、濃度を薄くしたい場合には相対的に膜厚を薄く形成していた。」(【0004】)と記載され、特開2004-351372号公報に「塗装の厚みを中塗り塗装2の塗装範囲の外側へ向けて減少させることにより、グラデーションをかけている。」(【0004】)と記載されているように、周知技術である。引用発明において、該周知技術を採用し、クリヤープライマー塗膜層又はカラークリヤーベース塗膜層の膜厚を変化させれば、その少なくとも1つが複数の厚さを有することとなる。
また、本願明細書の【0129】に「本発明のこのような実施形態において、透明なコーティングは複数の厚さを有する。これは、様々な方法のうちの任意の方法で達成することができる。例えば特定の実施形態において、これは、粗面化したまたは粗い質感を出した表面に沿ってコーティングの厚さが変化するように、粗面化したまたは粗い質感を出した表面を含む透明な製品へコーティングを塗布することによって達成される。」と記載されている。この記載は、粗面化した表面にコーティングを塗布すると、結果として表面に沿ってコーティングの厚さが変化するので、「複数の厚さ」を達成できるとの趣旨にも解し得る。そのように解するなら、引用文献に「【0015】・・・(中略)・・・プライマー塗膜層の形成に粉体塗料を用いることにより、表面粗度の粗いロードホイール用基材の粗度をカバーし、塗膜を平滑化することができる。」と記載されていることから、引用発明においても、粗面化した表面に沿ってプライマー塗膜層を塗装することにより、「複数の厚さ」を達成できるといえる。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、上記周知技術や引用文献の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。

なお、請求人は、平成24年9月25日付け回答書において補正案を提示するが、本件においては、拒絶査定あるいは審尋において新たな文献が提示された等の事情は無く、審判請求時において、上記補正案のとおりの補正が可能であったにも関わらず、そのような補正がなされなかったものである。
このような経緯に照らせば、上記補正案を考慮する必要性を認めないが、念のために付言すれば、上記補正案の[請求項10]は、要するに本願発明の塗料組成物について調製方法の限定を付加したものであるところ、当該調製方法は、本願明細書の【0091】、【0093】に公知の方法である旨が記載されているし、平成23年7月21日付け拒絶理由通知書に先行技術文献として提示した特開平11-80371号公報にも開示されているから、上記補正案によっても当審の判断は左右されない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-23 
結審通知日 2012-10-24 
審決日 2012-11-06 
出願番号 特願2009-512224(P2009-512224)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊地 則義鴨野 研一  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 栗林 敏彦
紀本 孝
発明の名称 ポリマー封入した粒子の水性分散液、ならびに関連する塗料組成物およびコーティングされた基材  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  

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