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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1271647
審判番号 不服2012-8103  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-02 
確定日 2013-03-18 
事件の表示 特願2006-205603「スロット型光ファイバケーブル用光ファイバテープ心線の単心分離方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日出願公開、特開2007- 58206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成18年7月28日(優先権主張 平成17年7月28日)の出願であって、その請求項に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年5月2日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認められる。

「並列に配置された複数の光ファイバ心線の外周を一括被覆した一括被覆層を有するスロット型光ファイバケーブル用光ファイバテープ心線の単心分離方法であって、
前記光ファイバ心線の外径をd、両端の光ファイバ心線のそれぞれの側面を垂直に通過する直線で横切る前記一括被覆層の厚さをt sideとするとき、
t side≧d×2/3であり、
該光ファイバテープ心線の横断面における相対する2つの長辺側に位置する一括被覆層の最小厚さが、3μm?15μmの範囲内であり、
前記一括被覆層はテープ用紫外線硬化型樹脂からなり、前記テープ用紫外線硬化型樹脂の引張破断強度が10MPa?90MPaの範囲内であり、
前記光ファイバ心線は、その最外層に紫外線硬化型着色被覆層を有しており、前記光ファイバテープ心線の長さ約10mmの両端を把持して回転させたときに、前記紫外線硬化型着色被覆層と前記一括被覆層との間に剥離が発生する回転角が90°以上360°未満である、
スロット型光ファイバケーブル用光ファイバテープ心線を、
前記光ファイバテープ心線の幅広の面の両方に荷重0.1?2N/mm^(2)で粒度がJIS R6001に規定する♯320から♯800の範囲内である紙やすりを押圧し、前記光ファイバテープ心線を0.1?5cm/secの速度で前記紙やすりに対して相対移動させることを特徴とするスロット型光ファイバケーブル用光ファイバテープ心線の単心分離方法。」

なお、請求項1における「光ファイバ心線の外形」は「光ファイバ心線の外径」の誤記と認められるので、本願発明を上記のものとして認定した。

2 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-197213号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバテープ及び光ファイバテープからの光ファイバ単心線の分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の光ファイバテープとしては、図示省略しているが、最外被覆層が紫外線硬化樹脂からなる光ファイバ単心線の複数本を並列配置したうえ、これら光ファイバ単心線全体の外周囲を同種の紫外線硬化樹脂からなるテープ被覆層でもって一括的に外装した構造を有するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、光ファイバテープでは、システム構築などの都合上、複数本のうちから所要の光ファイバ単心線を分離したうえで取り出す必要が生じる。しかしながら、前記従来の光ファイバテープから光ファイバ単心線を分離する際には、光ファイバ単心線全体の外周囲上に形成されたテープ被覆層を引き裂いたうえで光ファイバ単心線を取り出さなければならず、特殊な工具を使用しながら手間を掛けてテープ被覆層を引き裂く必要があった。
【0004】本発明は、これらの不都合に鑑みて創案されたものであって、光ファイバ単心線の取り出し性に優れた光ファイバテープと、この光ファイバテープから光ファイバ単心線を容易に取り出すことができる分離方法との提供を目的としている。」、
「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0007】図1は本実施の形態にかかる光ファイバテープの横断面構造を示す説明図であり、図中の符号1は光ファイバテープを示している。
【0008】本実施の形態にかかる光ファイバテープ1は、最外被覆層2aが紫外線硬化樹脂からなる光ファイバ単心線2の複数本(図では、4本)を並列配置することによって構成されたものであり、これら光ファイバ単心線2全体の外周囲上には紫外線硬化樹脂製のテープ被覆層3が1μmないし15μm程度の厚みにわたって形成されている。そして、この際におけるテープ被覆層3を形成する紫外線硬化樹脂はウレタンアクリレート系やエポキシアクリレート系などであり、この紫外線硬化樹脂は、光ファイバ単心線2の最外被覆層2aとなる紫外線硬化樹脂よりもヤング率(縦弾性係数)及び破断伸びが小さいものとなっている。
【0009】すなわち、光ファイバ単心線2の最外被覆層2aとなる紫外線硬化樹脂の有するヤング率が70Kg/mm^(2 )(at23℃)程度であり、かつ、破断伸びが60%程度である場合には、テープ被覆層3となる紫外線硬化樹脂の有するヤング率が20Kg/mm^(2) (at23℃)程度以下、破断伸びが40%程度以下となるように調整されている。なお、紫外線硬化樹脂のヤング率を小さくするためには、この紫外線硬化樹脂に含まれるオリゴマーの分子量を引き上げて架橋点を減らすことになる。
【0010】しかしながら、オリゴマーの分子量を引き上げた際には破断伸びが大きくなってしまうので、本実施の形態では、2つ以上の架橋点を有する架橋モノマーと、架橋点が1つの単官能モノマーとの配分比率をそれぞれ調整することによって紫外線硬化樹脂の破断伸びを小さくすることが行われている。すなわち、本実施の形態にかかる光ファイバテープ1のテープ被覆層3を形成する紫外線硬化樹脂では、オリゴマーと架橋モノマー及び単官能モノマーとの分子量をそれぞれ調整したうえで両者のバランスをとることによってヤング率及び破断伸びを同時的に小さくしているのである。
【0011】そこで、この光ファイバテープ1における光ファイバ単心線2のそれぞれは、各光ファイバ単心線2の最外被覆層2aよりもヤング率及び破断伸びが小さくて容易に引き裂かれ得るテープ被覆層3を用いることによって一体化されていることになり、テープ被覆層3を人手などで引き裂いたうえで所要の光ファイバ単心線2を取り出すことは極めて容易となる。なお、本実施の形態にかかる光ファイバテープ1からテープ被覆層3を引き裂くことによって取り出された光ファイバ単心線2に生じる伝送損失が1dB以下であることは、本発明の発明者らによって確認されている。
【0012】ところで、本実施の形態では、テープ被覆層3を人手でもって引き裂くことによって光ファイバ単心線2を分離したうえで取り出すとしているが、例えば、光ファイバ単心線2の分離に先立って紫外線硬化樹脂製のテープ被覆層3を予め所要範囲にわたって削り取っておくようにしてもよい。すなわち、この光ファイバ単心線2の分離による取り出し作業に先立ち、少なくとも分離すべき位置に存在するテープ被覆層3を削り取っておけば、テープ被覆層3の厚みが薄くなる分だけテープ被覆層3を人手でもって引き裂くことが容易となる。なお、テープ被覆層3を削り取るには、400番ないし800番程度のサンドペーパーを用いるのが簡易な手段である。」

(2)同じく、特開2003-337267号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバケーブルに関し、さらに詳しくは、螺旋状の溝が形成されたスロットと、溝内に積層された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆う押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備えた光ファイバケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光通信システムの需要が増加するにつれ、光伝送路である光ファイバケーブルを管路や屋外ラックに敷設することが多くなっている。一般に、管路や屋外ラック等の通信用基幹ルートに敷設される光ファイバケーブルには、図12に示すようなテープスロット型の光ファイバケーブルが広く用いられている。
【0003】図12に示すように、従来のテープスロット型の光ファイバケーブル50は、中心にテンションメンバ51を有するスロット52の溝53に、複数のテープ型光ファイバ心線60が収納されている。この光ファイバケーブル50は100心型の光ケーブルであり、5つの溝53のそれぞれに、4心のテープ型光ファイバ心線60が5枚づつ積層されている。また、5つの溝53は、長尺方向に沿って互いに平行な状態で、一方向の螺旋状に形成されている。また、テープ型光ファイバ心線60が溝53から外れるのを防ぐために、スロット52の周囲には押さえ巻き54が巻かれている。さらに、押さえ巻き54の外側にはプラスチック製の外被層55が被覆されている。」

(3)同じく、特開平6-313827号公報(以下「刊行物3」という。)には、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 最外被覆層を有する光ファイバ素線を複数本並列させ一括被覆層により一体化した光ファイバテープ心線であって、前記光ファイバ素線の最外被覆層と一括被覆層との間の密着力が90゜T-Peel強度で10g/cm以上であり、かつ前記一括被覆層の破断強度が0.2kg/mm^(2)以上2.5kg/mm^(2)以下であることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、単心分離可能な光ファイバテープ心線に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より光ファイバ素線を光ケーブル内に高密度に収納するために、複数本の光ファイバ素線をテープ状に一体化した光ファイバテープ心線を多数積層し、さらにこの積層体を複数個集合させ、これらを被覆して光ケーブルを構成する方法が行なわれている。このような光ケーブルにおいては、光ケーブルの多心-単心引き落としを行うために、図5に示すような単心分離可能な光ファイバテープ心線が用いられてきた。
【0003】図5中符号1は、光ファイバテープ心線である。この光ファイバテープ心線1は、光ファイバ素線2を複数本平行に並べて紫外線硬化型樹脂などからなる一括被覆層3にて被覆してなるもので、その断面形状は平坦となっている。上記光ファイバ素線2は、光ファイバ裸線4の外周表面に一次被覆層5を形成し、さらにこれの外周表面に着色紫外線硬化型樹脂からなる二次被覆層6を形成してなるものである。このような光ファイバテープ心線1においては、光ファイバ素線2・・・を単心分離可能とするために、光ファイバ素線2の最外被覆層である二次被覆層6の表面に離型剤を塗布したり、一括被覆層3中に離型剤を添加しておくことによって、図6に示すように一括被覆層3を引き裂くことで、一括被覆層3から光ファイバ素線2・・・をそれぞれ容易に取り出せるようになっていた。」

(4)同じく、特開平4-166808号公報(以下「刊行物4」という。)には、次の記載がある。

「この発明は、複数本の光ファイバを被覆材で被覆し、テープ状に形成した光ファイバテープ心線に係り、光ファイバテープ心線のテープ厚を光ファイバの外径と同程度に薄型化し、かつ光ファイバテープ心線に捻回を加えることにより容易に分割が可能な薄型光ファイバテープ心線に関する。」(1頁左下欄17行?右上欄1行)、
「次に、これら実施例1ないし3、比較例1,2の各テープ心線を用い、第6図に示す捻回装置により、通常取り扱い時において加わるおそれのある捻回力として、ピッチが200mmの捻回を加えた。またテープ心線を分割する際に加えられるファイバ破断に至らない程度の捻回力として、ピッチが30mmの捻回と、50mm捻回を加えた。」(4頁左上欄5行?11行)

3 引用発明
上記(1)によれば、刊行物1には、
「最外被覆層2aが紫外線硬化樹脂からなる光ファイバ単心線2の複数本を並列配置し、これら光ファイバ単心線2全体の外周囲上に紫外線硬化樹脂製のテープ被覆層3が1μmないし15μm程度の厚みにわたって形成されている光ファイバテープ1からの光ファイバ単心線2の分離方法であって、
400番ないし800番程度のサンドペーパーを用いて、紫外線硬化樹脂製のテープ被覆層3を予め所要範囲にわたって削り取った後に、テープ被覆層3を人手でもって引き裂くことによって光ファイバ単心線2を分離する光ファイバテープ1からの光ファイバ単心線2の分離方法」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「光ファイバ単心線2」、「テープ被覆層3」及び「光ファイバテープ1」がそれぞれ、本願発明の「光ファイバ心線」、「一括被覆層」及び「光ファイバテープ心線」に相当するところであって、本願発明と引用発明は、ともに「並列に配置された複数の光ファイバ心線の外周を一括被覆した一括被覆層を有する光ファイバテープ心線の単心分離方法」である点で一致する。

(2)引用発明の「テープ被覆層3」は、「光ファイバ単心線2全体の外周囲上に」「1μmないし15μm程度の厚みにわたって形成されている」から、本願発明の「光ファイバテープ心線」と引用発明の「光ファイバテープ1」は、「該光ファイバテープ心線の横断面における相対する2つの長辺側に位置する一括被覆層の最小厚さが、3μm?15μmの範囲内」である点で一致する。

(3)引用発明の「テープ被覆層3」は、「紫外線硬化樹脂製」であるから、本願発明の「一括被覆層」と同様に「テープ用紫外線硬化型樹脂」からなるものといえる。

(4)引用発明の「光ファイバ単心線2」は、「最外被覆層2aが紫外線硬化樹脂からなる」から、「その最外層に紫外線硬化型被覆層を有して」いる点で、本願発明の「光ファイバ心線」と一致する。

(5)引用発明は、「400番ないし800番程度のサンドペーパーを用いて、紫外線硬化樹脂製のテープ被覆層3を予め所要範囲にわたって削り取った後に、テープ被覆層3を人手でもって引き裂くことによって光ファイバ単心線2を分離する」ものであるところ、引用発明の「400番ないし800番程度のサンドペーパー」は、「粒度がJIS R6001に規定する♯400から♯800の範囲内である紙やすり」のことであるから、本願発明と引用発明は、「光ファイバテープ心線に粒度がJIS R6001に規定する♯320から♯800の範囲内である紙やすりを押圧し、前記光ファイバテープ心線を前記紙やすりに対して相対移動させる光ファイバテープ心線の単心分離方法」の点で一致するといえる。

(6)以上によれば、本願発明と引用発明は、
「並列に配置された複数の光ファイバ心線の外周を一括被覆した一括被覆層を有する光ファイバテープ心線の単心分離方法であって、
該光ファイバテープ心線の横断面における相対する2つの長辺側に位置する一括被覆層の最小厚さが、3μm?15μmの範囲内であり、
前記一括被覆層はテープ用紫外線硬化型樹脂からなり、
前記光ファイバ心線は、その最外層に紫外線硬化型被覆層を有している
光ファイバテープ心線を、
前記光ファイバテープ心線に粒度がJIS R6001に規定する♯320から♯800の範囲内である紙やすりを押圧し、前記光ファイバテープ心線を前記紙やすりに対して相対移動させる光ファイバテープ心線の単心分離方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

ア 本願発明の「光ファイバテープ心線」は、「スロット型光ファイバケーブル用」とされているのに対し、引用発明の「光ファイバテープ1」が「スロット型光ファイバケーブル用」であるか不明である点(以下「相違点1」という。)。

イ 本願発明の「光ファイバテープ心線」は、「前記光ファイバ心線の外外径をd、両端の光ファイバ心線のそれぞれの側面を垂直に通過する直線で横切る前記一括被覆層の厚さをt sideとするとき、t side≧d×2/3であり」とされるものであるのに対し、引用発明の「光ファイバテープ1」がこのようなものであるか不明である点(以下「相違点2」という。)。

ウ 本願発明では、「(一括被覆層の)テープ用紫外線硬化型樹脂の引張破断強度が10MPa?90MPaの範囲内」であるのに対し、引用発明の「テープ被覆層3」の「紫外線硬化樹脂」の引張破断強度がこのような範囲のものか不明である点(以下「相違点3」という。)。

エ 本願発明は、光ファイバ心線の紫外線硬化型被覆層が着色被覆層であるのに対し、引用発明において、光ファイバ単心線2の最外被覆層2aが着色被覆層であるか不明である点(以下「相違点4」という。)。

オ 本願発明は、「前記光ファイバテープ心線の長さ約10mmの両端を把持して回転させたときに、前記紫外線硬化型着色被覆層と前記一括被覆層との間に剥離が発生する回転角が90°以上360°未満である」のに対し、引用発明の光ファイバテープ1がこのようなものであるか不明である点(以下「相違点5」という。)。

カ 本願発明は、光ファイバテープ心線の幅広の面の両方に荷重0.1?2N/mm^(2)で紙やすりを押圧し、前記光ファイバテープ心線を0.1?5cm/secの速度で前記紙やすりに対して相対移動させるのに対し、引用発明がこのようなものであるか不明である点(以下「相違点6」という。)。

5 判断
(1)相違点1について
例えば、前記2(2)の刊行物2の記載にみられるとおり、引用発明の「光ファイバテープ1」のようなテープ型光ファイバ心線は、テープスロット型の光ファイバケーブルの溝に収納されて使用されることは、本願の優先日当時において周知であるから、引用発明における「光ファイバテープ1」を「スロット型光ファイバケーブル用」として上記相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは当業者が適宜なし得る程度のことである。

(2)相違点2について
引用発明における「光ファイバテープ1」の「テープ被覆層3」の厚さをどのようなものとするかは、当業者が設計上適宜設定すべき事項というべきところ、引用発明の「光ファイバテープ1」において、両端の光ファイバ単心線2は、幅方向の外力に対して弱く、幅方向の側圧力によってテープ型光ユニットの伝送損失が増加し易いこと、また、これに対処するには一括被覆層の幅方向の厚さを大きくすればよいことは当業者において明らかである(例えば、平成22年3月8日付け拒絶理由通知書に引用した特開昭62-165612号公報の「〔発明が解決しようとする問題点〕
第7図に示すような従来の構造のテープ型光ユニットは、5の厚み方向の外力(F_(1))に対しては、厚み方向の外力(F_(1))5を各UV素線12が分担するので、UV素線12単体に比較して強いと考えることができるが、6の幅方向の外力(F_(2))に対しては、幅方向の外力(F_(2))6が直接両端のUV素線12に加わるため、厚み方向の外力(F_(l))5に比べると非常に弱く、テープ型光ケーブル製造時に加わる幅方向の側圧力によってテープ型光ユニットの伝送損失が増加し易いという欠点があった。・・・
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は従来の欠点を解消し、問題点を解決して、幅方向の外力に対しても良好な側圧特性を有するテープ型光ユニットを提供するため、ガラスファイバに紫外線硬化型樹脂を2層被覆した直径Dの光ファイバ素線をn本一列に配列し、外周に紫外線硬化型樹脂による一括被覆層を施したテープ型光ユニットにおいて、一括被覆層は、直径Dの光ファイバ素線をn本一列に配列した光ファイバ素線列の幅n×Dの寸法に対し幅方向に1.5D以上、また厚さDの寸法に対し厚み方向にD/2以上の大きさの寸法を有する構造を備えたことを特徴とする。」(2頁左上欄7行?左下欄3行)」との記載にみられるとおりである。)。
したがって、引用発明における「光ファイバテープ1」にあっても、「テープ被覆層3」の幅方向の厚さを厚くすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことであり、その際、上記相違点2に係る本願発明の特定事項の要件を満たすものとすることに困難性は認められない。

(3)相違点3について
引用発明の「テープ被覆層3」の「紫外線硬化樹脂」の強度をどの程度とするかは、当業者が設計上適宜設定すべき事項というべきところ、前記2(4)のとおり、刊行物4に、単心分離可能な光ファイバテープ心線における一括被覆層の破断強度が0.2kg/mm^(2) 以上2.5kg/mm^(2) 、すなわち、約2MPa?約25MPaであることが記載されていることに照らせば、引用発明の「テープ被覆層3」の「紫外線硬化樹脂」の引張破断強度を相違点3に係る本願発明の特定事項の要件を満たすものとすることに困難性は認められない。

(4)相違点4について
例えば、前記2(3)の刊行物3の「上記光ファイバ素線2は、光ファイバ裸線4の外周表面に一次被覆層5を形成し、さらにこれの外周表面に着色紫外線硬化型樹脂からなる二次被覆層6を形成してなるものである。」(【0003】)との記載にみられるとおり、光ファイバ裸線の最外層を着色紫外線硬化型樹脂で形成することは、本願の優先日当時において周知であるから、引用発明の「光ファイバ単心線2」の「(紫外線硬化樹脂からなる)最外被覆層2a」を着色被覆層として、相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が適宜なし得る程度のことである。

(5)相違点5について
引用発明の「光ファイバテープ1」における「(光ファイバ単心線2の)最外被覆層2a」と「テープ被覆層3」との剥離性をどの程度とするかは、当業者が設計上適宜設定すべき事項というべきところ、前記2(4)のとおり、刊行物4に、テープ心線の分割に関し、ピッチが30mmの捻回や、50mmの捻回、すなわち、テープ心線の長さ10mmについていえば、回転角が120°の捻回や72°の捻回を行うことが記載されていることに照らせば、引用発明の「光ファイバテープ1」における「(光ファイバ単心線2の)最外被覆層2a」と「テープ被覆層3」との剥離性に関し、相違点5に係る本願発明の特定事項特定事項の要件を満たすものとすることに困難性は認められない。

(6)相違点6について
引用発明は、テープ被覆層3を人手でもって引き裂くことによって光ファイバ単心線2を分離するものであるから、サンドペーパーを用いて紫外線硬化樹脂製のテープ被覆層3を予め所要範囲にわたって削り取ることについても、人手でもって行うことが想定され、その態様としては、例えば、左手で引用発明の「光ファイバテープ1」を持ち、右手の指で該「光ファイバテープ1」をサンドペーパーで挟んで持ち、これらを相対移動させることが想定されるところである。
すなわち、サンドペーパーは、引用発明の「光ファイバテープ1」の幅広の面の両方に押圧されることになるものと考えられ、その際の押圧力ないし相対移動速度は適宜のものというべきところ、引用発明におけるサンドペーパーを用いた作業について、相違点6に係る本願発明の特定事項の要件を満たすものとすることに困難性は認められない。

(7)本願発明の効果について
相違点2、3、5及び6の本願発明の特定事項の意義についてみるに、設計上適宜の範囲を特定した以上の意義を生じるものとは認められず、本願発明の奏する効果全体についてみても、設計的事項の域を超える格別顕著なものとは認められない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明及び刊行物2ないし4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-18 
結審通知日 2013-01-25 
審決日 2013-02-05 
出願番号 特願2006-205603(P2006-205603)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 江成 克己
松川 直樹
発明の名称 スロット型光ファイバケーブル用光ファイバテープ心線の単心分離方法  
代理人 松下 亮  

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