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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1271732
審判番号 不服2012-15223  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-07 
確定日 2013-03-21 
事件の表示 特願2005- 27740「二次元画像検出器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月17日出願公開、特開2006-214861〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成17年2月3日の出願であって、平成22年3月25日付けで手続補正がなされたが、平成24年4月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月7日に審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月25日付けの手続補正で補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「電磁波情報を電荷情報に変換する半導体層と一体化され前記電荷情報を読み出すアクティブマトリクス基板と、
筐体とを備えた二次元画像検出器において、信号処理回路及び電源回路を積載したベース板を更に有し、
前記アクティブマトリクス基板は、前記ベース板を介して前記筺体に保持されており、
前記筺体は、アクティブマトリクス基板を変形なく保持するのに必要な機械的強度を備える
ことを特徴とする二次元画像検出器。」

2.刊行物及びそれに記載された発明

引用文献1:特開平11-316281号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、以下の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線やγ線等の放射線を蛍光板により可視光などに変換し、この変換光を1次元あるいは2次元の画像として読取るための放射線撮像装置におけるセンサユニット運搬用収納ケースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の医療用放射線撮影は、フィルム撮影が主流であり、デジタル処理による画像読取り行うための放射線撮像装置は、あまり普及していなかった。また、このような放射線撮像装置は、存在していたが、主として、据置きタイプのであった。しかし、近年、より迅速かつ高精度な撮影を可能にするため、可搬型の撮像装置が要求されるようになってきた。
【0003】可搬型の放射線撮像装置においては、そのセンサユニットを持ち運ぶ際に、センサユニットの破損に対して、十分な配慮が必要になる。即ち、持ち運び時の耐圧・耐衝撃・耐振動性に優れたセンサユニットの構造を得るために、従来から、2通りの工夫がなされている。その第1の方策は、センサユニットの筐体を肉厚な面で構成し、頑強な構造とすることであり、その第2の方策は、前記筐体に外部の荷重がかかった時に、十分な撓み代を持たせて、外部の荷重が直接、内部の蛍光板や基板や装備部品に接触しないように構成することである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前者の方策を施したセンサユニットは、図5に模式的に示されており、後者の方策を施したセンサユニットは、図6に模式的に示されている。なお、図5および図6において、符号30はセンサユニットの筐体、11は光電変換素子を一次元あるいは二次元に配列したガラス基板、12は蛍光板、13は駆動信号を伝達するフレキシブル配線、14はガラス基板11を支持する基台、16は基台14の下側に設けた処理回路基板である。しかし、前者の方策では筐体が肉厚になるので、重量増が避けられず、後者の方策では、撓み代を考慮するために、筐体の大型化が避けられない。」
(2)「【図5】


(3)図5からは蛍光板12がガラス基板11上に配置されていることが見て取れる。
(4)同じく図5からは、基台14が筐体30上に配置されていることが見て取れる。

これらの記載を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「放射線を蛍光板により可視光などに変換し、この変換光を2次元の画像として読取るためのセンサユニットであって、
持ち運び時の耐圧・耐衝撃・耐振動性に優れたセンサユニットの構造を得るために肉厚な面で構成し頑強な構造とたセンサユニットの筐体(30)、光電変換素子を二次元に配列したガラス基板(11)、ガラス基板上に配置されている蛍光板(12)、駆動信号を伝達するフレキシブル配線(13)、筐体上に配置されガラス基板を支持する基台(14)及び基台の下側に設けた処理回路基板(16)からなるセンサユニット。」(以下「引用発明」という。)

3.対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「放射線」は本願発明の「電磁波」に相当し、引用発明の「光電変換素子」は放射線から変換された変換光を電気信号に変換する素子であって、当該素子が半導体層を有することは当業者の技術常識であるから、本願発明の「電磁波情報を電荷情報に変換する半導体層」に相当する。
したがって、引用発明の「光電変換素子を二次元に配列したガラス基板」と本願発明の「アクティブマトリクス基板」は、素子を二次元に配列する場合にマトリクス上に配列することが当業者の技術常識であることから、ともに「電磁波情報を電荷情報に変換する半導体層と一体化され前記電荷情報を読み出すマトリクス基板」である点で共通する。
(2)引用発明の「筐体」、「処理回路基板」、「基台」及び「センサユニット」は、それぞれ本願発明の「筐体」、「信号処理回路」、「ベース板」及び「二次元画像検出器」に相当する。
(3)引用発明は「筐体」上に「基台」が配置され、「基台」が「ガラス基板」を支持するから、ガラス基板が基台を介して筐体に保持されることは明らかである。

してみると両者は、
「電磁波情報を電荷情報に変換する半導体層と一体化され前記電荷情報を読み出すマトリクス基板と、
筐体とを備えた二次元画像検出器において、信号処理回路及びベース板を更に有し、
前記マトリクス基板は、前記ベース板を介して前記筺体に保持されている二次元画像検出器。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

(相違点1)
電荷情報を読み出すマトリクス基板が、本願発明は「アクティブマトリクス基板」のに対して、引用発明はアクティブマトリクス基板かどうか不明な点。
(相違点2)
本願発明が電源回路を有し、信号処理回路及び電源回路をベース板に積載したのに対して、引用発明はそのような構成を有するかどうか不明な点。
(相違点3)
筺体が、本願発明では「マトリクス基板を変形なく保持するのに必要な機械的強度を備える」のに対して、引用発明ではそのような強度を備えるかどうか不明な点。

上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
素子をマトリクス状に配列した基板において、素子を駆動するための回路を当該基板上に設けアクティブマトリクス基板として構成することは、ごく普通に行われる周知技術である。
そして、当該周知技術を用いて引用発明のマトリクス基板をアクティブマトリクス基板として構成することに格別の技術的困難性も阻害要因もない。
してみると、引用発明に上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点2について)
引用発明が電源回路を必要とすることは自明である。また、電源回路を他の回路に近接して配置することは、ごく普通に行われている周知技術であり、引用発明の基台の下側に設けた処理回路基板に電源回路を配置することは、当業者が適宜なし得る事項である。
その際に、処理回路基板をどこかに固定しなければならないことは当業者にとって自明であり、しかも、引用発明の処理回路基板を、その近傍にある基台に固定して載置することに格別の技術的困難性も阻害要因もないことから、引用発明に上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点3について)
引用発明がセンサユニットの破損を防止するためのものであること(上記摘記事項(1)の段落【0003】参照)、そして、そのためにセンサユニットの構造を耐圧・耐衝撃・耐振動性に優れたものとし、センサユニットの筐体を肉厚な面で構成し、頑強な構造としている(同摘記箇所参照)ことに照らせば、筺体が外力に対して損傷・変形することなく、その内部に保持したマトリクス基板を変形なく保持するのに必要な機械的強度を備えるように構成することは、当業者が当然考慮すべき事項である。

そして、本願発明の効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-15 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-05 
出願番号 特願2005-27740(P2005-27740)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木下 忠  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 昌哉
発明の名称 二次元画像検出器  
代理人 喜多 俊文  
代理人 江口 裕之  
代理人 阿久津 好二  

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